労働者派遣法第33条、第34条、第34条の2、第35条

2015年06月20日 16:41

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第33条(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であつた者を含む。次項において同じ。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先と

なろうする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣

元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならな

い。

 

第34条(就業条件等の明示)

 

 派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明示しなければならない。

一 当該労働者派遣をしようとする旨

二 第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項であつ

  て当該派遣労働者に係るもの

 三 第四十条の二第一項各号に掲げる業務以外の業務について労働者派遣をする

    場合につては、当該派遣労働者が従事する業務について派遣先が同項の規定に

    抵触することとなる最初の日

2 派遣元事業主は、派遣先から第四十条の二第五項の規定による通知を受けたと

きは、遅滞なく、当該通知に係る業務に従事する派遣労働者に対し、厚生労働省で

定めるところにより、当該業務について派遣先が同条第一項の規定に抵触すること

となる最初の日を明示しなければならない。

 

則第26条(就業条件の明示の方法等)

 法第三十四条第一項及び第二項の規定による明示は、当該規定により明示すべき事項を次のいずれかの方法により明示することにより行わなければならない。ただし、同条第一項の規定による明示にあつては、労働者派遣の実施について緊急の必要があるためあらかじめこれらの方法によることができない場合において、当該明示すべき事項をあらかじめこれらの方法以外の方法により明示したときは、この限りでない。

一 書面の交付の方法

二 次のいずれかの方法によることを当該派遣労働者が希望した場合における当

  該方法

イ ファクシミリを利用してする送信の方法

  ロ 電子メールの送信の方法 

2 前項ただし書の場合であつて、次の各号のいずれかに該当するときは、当該労

働者派遣の開始の後遅滞なく、当該事項を前項各号に掲げるいずれかの方法により

当該派遣労働者に明示しなければならない。

 

第34条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示)

 

 派遣元事業主は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める労働者に対し、

厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の

額として厚生労働省令で定める額を明示しなければならない。

一 労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合 当該労働者

二 労働者派遣をしようとする場合及び労働者派遣に関する料金の額を変更する場合 当該労働者派遣に係る派遣労働者

 

則第26条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示の方法等

 法第三十四条の二の規定による明示は、第三項の規定による額を書面の交付等の方法により行わなければならない。

2 派遣元事業主が労働者派遣をしようとする場合における次項の規定による額が労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合における法第三十四条の二の規定により明示した額と同一である場合には、同条の規定による明示を要しない。

3 法第三十四条の二の厚生労働省令で定める額は、次のいずれかに掲げる

額とする。

一 当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額

 二 当該労働者に係る労働者派遣を行う事業所における第十八条の二第二項に規

      定する労働者派遣に関する料金の額の平均額

 

第35条(派遣先への通知)

 

 派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、厚生労働省令で定めるところによ

り、次に掲げる事項を派遣先に通知しなければならない。

一 当該労働者派遣に係る派遣労働者の氏名

二 当該労働者派遣に係る派遣労働者が期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別

三 当該労働者派遣に係る派遣労働者に関する健康保険法第三十九条第一項の規定による被保険者の資格の取得の確認、厚生年金保険法第十八条第一項の規定による被保険者の資格の取得の確認及び雇用保険法第九条第一項の規定による被保険者となつたことの確認の有無に関する事項であつて厚生労働省令で定めるもの

四 その他厚生労働省令で定める事項

2 派遣元事業主は、前項の規定による通知をした後に同項第二号に掲げる事項に

変更があつたときは、遅滞なく、その旨を当該派遣先に通知しなければならない。

 

則第27条(派遣先への通知の方法等)

 法第三十五条第一項の規定による通知は、法第二十六条第一項各号に掲げる事項

の内容の組合せが一であるときは当該組合せに係る派遣労働者の氏名及び次条第一

項各号に掲げる事項を、当該組合せが二以上であるときは当該組合せごとに派遣労

働者の氏名及び同条第一項各号に掲げる事項を通知することにより行わなければな

らない。

2 法第三十五条第一項の規定による通知は、労働者派遣に際し、あらかじめ、同項により通知すべき事項に係る書面の交付等により行わなければならない。ただし、労働者派遣の実施について緊急の必要があるためあらかじめ書面の交付等ができない場合において、当該通知すべき事項をあらかじめ書面の交付等以外の方法により通知したときは、この限りでない。

3 前項ただし書の場合であつて、当該労働者派遣の期間が二週間を超えるとき(法第二十六条第一項各号に掲げる事項の内容の組合せが二以上である場合に限る。)は、当該労働者派遣の開始の後遅滞なく、当該事項に係る書面の交付等をしなければならない。

4 法第三十五条第二項の規定による通知は、書面の交付等により行わなければならない。

5 法第三十五条の二第二項の規定による通知は、派遣先への通知にあつては同項により通知すべき事項に係る書面の交付等により、派遣労働者への通知にあつては同項により通知すべき事項を次のいずれかの方法により通知することにより行わなければならない。

一 書面の交付の方法

二 次のいずれかの方法によることを当該派遣労働者が希望した場合における当該方法

イ ファクシミリを利用してする送信の方法

ロ 電子メールの送信の方法

 

則第27条の2(法第三十五条第一項第三号の厚生労働省令で定める事項)

 法第三十五条第一項第三号の厚生労働省令で定める事項は、当該労働者派遣に係る派遣労働者に関して、次の各号に掲げる書類がそれぞれ当該各号に掲げる省令により当該書類を届け出るべきこととされている行政機関に提出されていることの有無とする。

一 健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第二十四条第一項に規定する健康保険被保険者資格取得届

二 厚生年金保険法施行規則(昭和二十九年厚生省令第三十七号)第十五条に規定する厚生年金保険被保険者資格取得届

三 雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第六条に規定する雇用保険被保険者資格取得届

2 派遣元事業主は、前項の規定により同項各号に掲げる書類が提出されていないことを派遣先に通知するときは、当該書類が提出されていない具体的な理由を付さなければならない。

 

則第28条(法第三十五条第一項第四号の厚生労働省令で定める事項)

 法第三十五条第一項第四号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 派遣労働者の性別(派遣労働者が四十五歳以上である場合にあつてはその旨及び当該派遣労働者の性別、派遣労働者が十八歳未満である場合にあつては当該派遣労働者の年齢及び性別)

二 派遣労働者に係る法第二十六条第一項第四号、第五号又は第十号に掲げる事項の内容が、同項の規定により労働者派遣契約に定めた当該派遣労働者に係る組合せにおけるそれぞれの事項の内容と異なる場合における当該内容

 

業務取扱要領の記載事項

1.派遣元事業主が構図べき措置等(再掲)

 一般労働者派遣事業であると特定労働者派遣事業であるとを問わず、派遣元事業主は、次の措置等を講じなければならない。
 ① 有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(法第30条)
 ② 均衡を考慮した待遇の確保のための措置(法第30条の2)
 ③ 派遣労働者等の福祉の増進のための措置(法第30条の3)
 ④ 適正な派遣就業の確保のための措置(法第31条)
 ⑤ 待遇に関する事項等の説明(法第31条の2)
 ⑥ 派遣労働者であることの明示等(法第32条)
 ⑦ 派遣労働者に係る雇用制限の禁止(法第33条)
 ⑧ 就業条件の明示(法第34条)
 ⑨ 労働者派遣に関する料金の額の明示(法第34条の2)
 ⑩ 派遣先への通知(法第35条)
 ⑪ 派遣受入期間の制限の適切な運用(法第35条の2)
 ⑫ 派遣先及び派遣労働者に対する派遣停止の通知(法第35条の2)
 ⑬ 日雇労働者についての労働者派遣の原則禁止(法第35条の3)
 ⑭ 離職した労働者についての労働者派遣の禁止(法第35条の4)
 ⑮ 派遣元責任者の選任(法第36条)
 ⑯ 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存(法第37条)

 

2.派遣労働者に係る雇用制限の禁止(法第33条)

(1) 概要
  派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者(第8の4の(2)のイ参照)との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先若しくは派遣先であった者又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない(法第33条第1項)。
 例えば、「退職後6か月間は派遣先に雇用されないこと」等を定める契約は原則として締結できない。
  派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない(法第33条第2項)。
 例えば、「派遣先が労働者派遣を受けた派遣労働者について、当該労働者派遣の終了後、1年間は雇用しないこと」等を定める契約は原則として締結できない。
(2) 派遣労働者に係る雇用制限の禁止の意義
   派遣労働者に係る雇用を制限する契約の定めは、憲法第22条により保障されている労働者の職業選択の自由を実質的に制約し、労働者の就業機会を制限し、労働権を侵害するものであり、派遣元事業主と派遣労働者間における派遣先に雇用されない旨の定め、あるいは、派遣元事業主と派遣先間における派遣先が派遣労働者を雇用しない旨の定めをすることは禁止される。
  このような契約の定めは、一般の雇用関係の下にある労働者についても、公序に反し、民法第90条により無効とされており、仮に契約上そのような定めがあっても、契約の相手方である派遣労働者又は派遣先はこれに従う必要はない。
   なお、禁止されるのは雇用関係の終了後、雇用し、又は雇用されることを禁ずる旨の契約であって、雇用契約の終了以前(特に期間の定めのある雇用契約においては当該期間内)について、派遣労働者を雇用し、又は雇用されることを禁ずる旨の契約を締結すること自体は、許容することができるものである。
(3) 「正当な理由」の意義
 「正当な理由」は、競業避止義務との関係で問題となるが、雇用契約の終了後特定の職業に就くことを禁ずる定めについては、次のように考えられる。
   労働者が雇用関係継続中に習得した知識、技術、経験が普遍的なものではなく、特珠なものであり、他の使用者の下にあっては、習得できないものである場合には、当該知識、技術、経験は使用者の客体的財産となり、これを保護するために、当該使用者の客体的財産について知り得る立場にある者(例えば、技術の中枢部に接する職員)に秘密保持義務を負わせ、かつ、当該秘密保持義務を実質的に担保するため雇用契約終了後の競業避止義務を負わせることが必要である場合については、正当な理由が存在するといえる。
   具体的には、制限の時間、場所的範囲、制限の対象となる機種の範囲、代償の有無について、使用者の利益(企業秘密の保護)、労働者の不利益(職業選択の自由の制限)、社会的利害(独占集中のおそれ等)を総合的に勘案して正当な理由の存否を決定する。
   しかしながら、派遣労働者が、もともと他社に派遣され就業するという性格を有することからすると、このような正当な理由が存在すると認められる場合は非常に少ないと解される。
(4) 違反の場合の効果
 (1)に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
(5) 法第38条による準用
 派遣労働者に係る雇用制限の禁止は、派遣元事業主以外の事業主が労働者派遣をする場合も適
用される。

 

3.就業条件の明示(法第34条)

(1) 概要
 派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、労働者派遣をする旨及び当該派遣労働者に係る就業条件並びに派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならない(法第34条)。
(2) 意義
 派遣労働者に対する就業条件等の明示は、労働者派遣契約の締結に際しての手続等(第7の2の(1)参照)及び派遣先への通知(第8の11参照)と相まって派遣元事業主、派遣先、派遣労働者の三者間において就業条件等を明確化し、トラブルの発生を防止するとともに、派遣労働者が派遣先における派遣受入期間の制限を認識できるようにすることは派遣労働者のためにも望ましく、また、派遣受入期間の制限の規定を遵守させるためにも有用であると考えられるためのものである。
(3) 明示すべき就業条件等
   明示すべき具体的就業条件等
 具体的には、労働者派遣契約で定めた次に掲げる事項のうち当該契約により労働者派遣される個々の派遣労働者に係るものを明示しなければならない(法第34条)。
 ① 派遣労働者が従事する業務の内容
 ② 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所
 ③ 派遣先のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
 ④ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
 ⑤ 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
 ⑥ 安全及び衛生に関する事項
 ・ 派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関する事項(危険有害業務の内容)等の労働者派遣契約において定めた安全及び衛生に関する事項(第7の2の(1)のイの(ハ)の⑥参照)
 ⑦ 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項
 ⑧ 派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担に関する措置その他の労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
 ⑨ 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合にあっては、当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項として以下の事項・ 紹介予定派遣である旨
 ・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される労働条件
 【例】
 Ⅰ 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項
 Ⅱ 労働契約の期間に関する事項
 Ⅲ 就業の場所に関する事項
 Ⅳ 始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項
 Ⅴ 賃金の額に関する事項
 Ⅵ 健康保険法による健康保険、厚生年金保険法による厚生年金、労働者災害補償保険法によ
  る労働者災害保険及び雇用保険法による雇用保険の適用に関する事項
 ・ 紹介予定派遣を受けた派遣先が、職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合には、それぞれのその理由を、派遣労働者の求めに応じ、書面、ファクシミリ又は電子メール(ファクシミリ又は電子メールによる場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)により、派遣労働者に対して明示する旨
 ・ 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に、年次有給休暇及び退職金の取扱いについて、労働者派遣の期間を勤務期間に含めて算入する場合はその旨
 ⑩ 派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日((4)のイ参照)
 ⑪ 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
 ⑫ 派遣先が④の派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は⑤の派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めを労働者派遣契約において行った場合には、当該派遣就業させることができる日又は当該延長することができる時間数
 ⑬ 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与に関する事項派遣元事業主及び派遣先との間で、派遣先が当該派遣労働者に対し、診療所、給食施設等の施設であって現に派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用、レクリエーション等に関する施設又は設備の利用、制服の貸与、教育訓練その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する旨の定めをした場合には、当該便宜の供与に関する事項についても記載すること。
 ⑭ 派遣受入期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項
 ・ 第9の4の(3)のイの①に掲げる業務について労働者派遣を行う場合は、併せて当該業務の条番号及び号番号を必ず付す必要がある。
 ・ 第9の4の(3)のイの②に掲げる有期プロジェクトの業務について労働者派遣を行うときは、法第40条の2第1項第2号イに該当する旨を記載すること。
 ・ 第9の4の(3)のイの③に掲げる日数限定業務について労働者派遣を行うときは、①法第40条の2第1項第2号ロに該当する旨、②当該派遣先において、同号ロに該当する業務が1- 165 -か月間に行われる日数、③当該派遣先の通常の労働者の1か月間の所定労働日数を記載すること。
 ・第9の4の(3)のイの④に掲げる育児休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること。
 ・第9の4の(3)のイの⑤に掲げる介護休業等の代替要員としての業務について労働者派遣を行うときは、派遣先において休業する労働者の氏名及び業務並びに当該休業の開始及び終了予定の日を記載すること。
 (以上については、第7の2の(1)のイの(ハ)参照)
  就業条件の明示に関する留意点
 (イ) 労働者派遣契約においては、①から⑬までの内容の組合せごとに派遣労働者の人数を定めることとされているが、この就業条件の明示は個々の派遣労働者に係るこれらの事項であるため、労働者派遣契約に定めた派遣期間内等において派遣労働者を入れ替える等の場合には、労働者派遣契約に定めるこれらの事項の内容とこの就業条件の明示の内容が相違するものである。
 (ロ) 個々の派遣労働者に明示される就業条件は、労働者派遣契約の定めた就業条件の範囲内でなければならない。
(4) 派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の明示
 イ  派遣元事業主は、第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、派遣労働者に対して、当該派遣労働者が従事する業務について派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならない(法第34条第1項第3号)。
 派遣先が派遣受入期間の制限に抵触する日は、派遣労働者にとっても、当該抵触日が当該派遣先で就業することのできる上限であるため、当該抵触日をあらかじめ通知しておくことによって、派遣受入期間の制限の到来により労働者派遣が終了したことによる雇用契約の更新をめぐるトラブルを未然に防ぐことができる。こうしたことから、派遣元事業主に対し、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、期間制限抵触日を派遣労働者に明示する義務を課すものである。
   派遣先は、労働者派遣契約の締結後に当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る業務について1年を超える派遣受入期間を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないこととされている(第9の4の(6)参照)が、派遣元事業主は派遣先から当該通知を受けたときは、遅滞なく、当該通知に係る業務に従事する派遣労働者に対し、当該業務について派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を明示しなければならない(法第34条第2項)。
(5) 明示の方法
 就業条件等の明示は次により行うこととする(則第26条)。
   就業条件等の明示は、労働者派遣に際し、あらかじめ、明示すべき事項を書面、ファクシミリ又は電子メール(ファクシミリ又は電子メールによる場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)により個々の派遣労働者に明示することにより行わなければならない。
 また、(4)のロの明示については、派遣先から当該通知を受けた後、遅滞なく、明示すべき事項を書面、ファクシミリ又は電子メール(ファクシミリ又は電子メールによる場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)により個々の派遣労働者に明示することにより行わなければならない。
  ただし、就業条件等の明示については、当該労働者派遣の実施について緊急の必要があるため、あらかじめ、イのいずれかの方法によることができない場合は、明示すべき事項を、あらかじめ、イのいずれかの方法以外の方法で明示すればよいこととする。「緊急の必要があるため、あらかじめ、イのいずれかの方法によることができない」とは、社会通念上、イのいずれかの方法によるための時間的余裕がないことを意味するものであり、この取扱いはあくまで例外的な取扱いであることに十分留意すること。
   ロの場合でも、派遣労働者から労働者派遣の開始より前に個別の請求(その方法は問わない。)があったとき、又は当該請求がなくても当該労働者派遣の期間が一週間を超えるときは、当該労働者派遣の開始後、遅滞なく、当該明示すべき事項をイのいずれかの方法により個々の派遣労働者に明示しなければならない。
(6) 明示に関する留意点
   就業条件等の明示及び(4)の明示をファクシミリ又は電子メールにより行うことについては、当該派遣労働者が当該方法によることを希望することが条件となっている。派遣元事業主による派遣労働者の希望の確認は、事後のトラブルを防止する観点から、口頭により行うのではなく、派遣労働者が希望したことを事後的に確認できる方法(例えば、労働契約書等に記載欄を設け、ファクシミリ又は電子メールによる明示を希望する派遣労働者はその旨を同欄に記載することとする等)により行うことが望ましい。また、派遣元事業主がファクシミリ又は電子メールによる明示を希望するよう派遣労働者に強いてはならないことは、当然である。
   また、就業条件等の明示及び(4)の明示をファクシミリ又は電子メールにより行う場合にあっては、到達の有無に関して事後のトラブルが起きることを防止する観点から、派遣元事業主はファクシミリ又は電子メールの到達の有無について確認を行う(例えば、到達した旨の返信を派遣労働者に求め、当該返信がない場合は、再送することとする等)ことが望ましい。
   さらに、派遣元事業主は、派遣労働者のメールアドレスを取得した場合は、法第24条の3により、労働者の個人情報の適正な取扱いが求められていることに留意する必要がある。
   就業条件及び(4)の明示は個々の派遣労働者に就業条件等を明確にするためのものであり、就業条件の一部を変更して(例えば、派遣期間のみを変更して)再度労働者派遣をしようとする場合は、就業条件等のうち当該変更される事項及び変更内容が明確にされ、他の就業条件等は同一であることが明確にされていれば足りるものである。
   (5)のハの「当該労働者派遣の期間」とは、実際に派遣される期間であり、労働者派遣契約の派遣期間が一週間以内とされているものであっても、契約の更新等により、実質的に一週間を超えることとなる場合には(5)のイのいずれかの方法による明示が必要である。
  派遣労働者の請求がなく、かつ、労働者派遣の期間が一週間以内の場合であっても、派遣労働者の就業条件等の明確化のためには、可能な限り労働者派遣の開始の後、遅滞なく、(5)のイのいずれかの方法により就業条件等を明らかにすることが適当であり、その旨周知徹底、指導を図ること。特に、個々の派遣期間が一週間以内の就業であってもそれが継続的に続く場合は必ず(5)のイのいずれかの方法により就業条件等の明示を行わせるよう指導することとする。
  労働基準法第15条では、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないこととされているが、労働契約の締結の際と労働者派遣を行おうとする際が一致するような場合(いわゆる、登録型の場合に発生しやすい。)において、就業条件等の明示を書面の交付により行うときは、明示する事項が一致する範囲内で両方の明示を兼ねて行って差し支えないものである。
   派遣労働者の就業条件等の明確化を図るため、許可、届出書の受理の機会等をとらえて、労働者派遣を行う際にモデル就業条件明示書の様式(第15 様式集参照)により当該派遣労働者に係る就業条件の内容を明示するよう(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の6(第8の23)参照)、様式の利用を勧奨すること。
(7) 違反の場合の効果
   労働者派遣をしようとする場合に、あらかじめ、当該派遣労働者に就業条件等の明示を行わなかったときは、法第61条第3号に該当し、30万円以下の罰金に処せられる場合がある(第13の1参照)。
   また、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となり、イの司法処分を受けた場合は、許可の取消し、事業廃止命令(法第21条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
   就業条件等の明示義務違反は、イ及びロのように司法、行政処分の対象となるが、労働者派遣契約自体は有効に成立、存続するものである。
(8) 法第38条による準用
 就業条件(ただし、(4)のイ及びロを除く。)の明示は派遣元事業主以外の事業主が労働者派遣をする場合にも行わなければならない。
 
4.労働者派遣に関する料金の額の明示(法第34条の2)
(1) 概要
 派遣元事業主は、イ及びロに掲げる場合には、当該イ及びロに定める労働者に対し、当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額を明示しなければならない(法第34条の2)。
  労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合 当該労働者
   労働者派遣をしようとする場合及び労働者派遣に関する料金の額を変更する場合 当該労働者派遣に係る派遣労働者
(2) 意義
 派遣労働者による派遣元事業主の選択に資するよう、派遣元事業主に対し、派遣労働者の雇入れ時(労働契約を締結する場合)、派遣開始時(実際に派遣する場合)及び労働者派遣に関する料金の額の変更時に、当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額の明示義務を課すものである。
(3) 明示すべき労働者派遣に関する料金の額
   明示すべき労働者派遣に関する料金の額は、次のいずれかとする(則第26条の2第3項)。
 ① 当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額
 ② 当該労働者に係る労働者派遣を行う事業所における労働者派遣に関する料金の額の平均額
 ・ 具体的には、事業所ごとの情報提供を行う場合に用いる前事業年度における派遣労働者一人一日当たりの労働者派遣に関する料金の額の平均額をいう(第6の4の(2)参照)。なお、料金の額の単位についてはロを参照のこと。
 また、事業年度期間中に派遣料金の平均額が大きく変わる見込みがある場合には、再明示することが望ましい。
 ・ なお、法第23条第5項の規定による情報の提供を行うに当たり、当該事業所が労働者派遣事業を行う他の事業所と一体的な経営を行っている場合において、その範囲内で労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合(いわゆるマージン率)を算出している場合には、当該マージン率の算定に用いた労働者派遣に関する料金の額の平均額を明示することとして差し支えない(第6の4参照)。
   明示すべき労働者派遣に関する料金の額について、時間額・日額・月額・年額等は問わないが、その料金額の単位(時間額・日額・月額・年額等)がわかるように明示する必要がある。
(4) 明示の方法
  労働者派遣に関する料金の明示は、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信、又は電子メールの送信の方法により行わなければならない(則第26条の2第1項)。
   派遣元事業主が労働者派遣をしようとする場合における当該労働者に係る労働者派遣に関する料金が、労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合に明示した額(法第34条の2第1号)と同一である場合には、再度の明示は要しない(則第26条の2第2項)
(5) 違反の場合の効果
 (1)に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
 
5.法第35条(派遣先への通知
(1) 概要
 派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、当該労働者派遣に係る派遣労働者の氏名、当該労働者派遣に係る派遣労働者が期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別、当該派遣労働者の労働・社会保険への加入状況等を派遣先に通知しなければならない(法第35条第1項)。
 また、通知した後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者が期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別について変更があったときは、遅滞なく、その旨を当該派遣先に通知しなければならない(法第35条第2項)。
(2) 通知の趣旨
  派遣労働者を派遣先にいつ、どのように派遣するかは派遣元事業主が決定し、派遣先は、当該派遣元事業主が定めた派遣労働者を当該派遣労働者に係る派遣就業の条件に従って就業させることとなる。
  しかしながら、派遣元事業主と派遣先との間で締結された労働者派遣契約においては、当該労働者派遣に係る全体としての就業条件と派遣労働者の人数は定められるものの、実際の派遣就業に当たって、どのような派遣労働者が労働者派遣され、かつ、どのような就業条件で当該派遣労働者を就業させることができるのかは定められていない。
  このため、労働者派遣契約の適正な履行を確保する観点から、派遣元事業主から派遣先に対して、労働者派遣する派遣労働者の氏名のほか、当該派遣労働者の派遣就業に係る就業条件と当該労働者派遣契約に定めた就業条件の関係を明確にする等派遣先における適正な派遣労働者の雇用管理を確保するために必要な情報を通知させるものである。
   さらに、法第40条の5の規定により、派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(派遣可能期間の制限を受けない業務(第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務)に限る。)について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以降労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、労働契約の申込をしなければならないこととされているが、期間を定めないで雇用される派遣労働者である場合には、当該規定の適用を受けない。
 そのため、派遣先は、派遣労働者が期間を定めないで雇用される労働者であるか否かを事前に把握できるよう、当該情報を派遣元事業主から派遣先に対して通知させるとともに、通知後に当該事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を派遣先に通知させるものである。
(3) 通知すべき事項
 派遣先に通知しなければならない事項は、次に掲げるものである(法第35条、則第27条の2、則第28条)。
 ① 派遣労働者の氏名及び性別(派遣労働者が45歳以上である場合にあってはその旨並びに当該派遣労働者の氏名及び性別、派遣労働者が18歳未満である場合にあっては当該派遣労働者の年齢並びに氏名及び性別)
 労働者派遣をする際に、性別等を派遣先に通知する趣旨は、派遣先における労働関係法令の遵守を担保することにあることに留意すること。
 ② 労働者派遣に係る派遣労働者が期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別
 通知をした後に当該事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を派遣先に通知しなければならない(法第35条第2項)。
 ③ 派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無
(「無」の場合は、当該書類が提出されていない具体的な理由を付して派遣先へ通知しなければならない(則第27条の2))。
 具体的な理由としては、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の適用基準を満たしていない場合にあっては、単に「適用基準を満たしていないため」、「被保険者に該当しないため」等と記載するのでは足りず、「1週間の所定労働時間が15時間であるため」等、適用基準を満たしていないことが具体的にわかるものであることが必要である。
 また、被保険者資格の取得届の手続中である場合にあっては、単に「手続中であるため」等と記載するのでは足らず、「現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定」等と、手続の具体的な状況を記載することが必要である。
 なお、当該通知により、派遣先は当該労働者派遣に係る派遣労働者が派遣元において労働・社会保険に加入するか否かについての明確な認識を持った上で、当該労働者派遣の受入れを行う効果が期待できるものであることに留意すること。
 ④ 当該派遣労働者の派遣就業の就業条件の内容が当該労働者派遣に係る労働者派遣契約の就業条件(第7の2の(1)のイの(ハ)の④、⑤、⑩、⑪、⑫に係る就業条件に限られる。)の内容と異なる場合における当該派遣労働者の就業条件の内容
(4) 通知の方法
 通知は次の方法により行わなければならない(則第27条第1項)。
  労働者派遣契約に定める派遣労働者の就業条件の内容の組合せが一つである場合は、当該組合せに係る(3)の事項を通知すること。
   労働者派遣契約に定める派遣労働者の就業条件の内容の組合せが複数である場合には、当該組合せごとに当該組合せに係る(3)の事項を通知すること。
(5) 通知の手続
 通知は、次の手続により行わなければならない(則第27条第2項及び第3項)。
   通知は、労働者派遣に際し、あらかじめ、(3)の通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより行うこと。
  ただし、労働者派遣の実施について緊急の必要があるため、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信ができない場合は、通知すべき事項を、あらかじめ、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信以外の方法で通知すればよいこととする。
   この場合、労働者派遣契約に係る就業条件の組合せが複数ある場合であって当該労働者派遣の期間が2週間を超えるときは、当該労働者派遣の開始後、遅滞なく、当該事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をしなければならない。
   (3)の③の事項については、派遣労働者に係る次の各書類が関係行政機関に提出されていること(労働者派遣に当たって派遣労働者を新たに雇用する場合には、当該労働者派遣の開始の後速やかに提出すること)の有無とする(則第27条の2第1項)。ただし、「無」の場合は、その理由を具体的に記載することとする(則第27条の2第2項)。
 (イ) 健康保険法施行規則第24条第1項に規定する健康保険被保険者資格取得届
 (ロ) 厚生年金保険法施行規則第15条に規定する厚生年金保険被保険者資格取得届
 (ハ) 雇用保険法施行規則第6条に規定する雇用保険被保険者資格取得届
 「無」の場合の具体的理由としては、(3)の③のとおり、「一週間の所定労働時間が15時間であるため」「現在、必要書類の準備中であり、今月の○日には届出予定」等、適用基準を満たしていない具体的理由又は手続の具体的状況が明らかであることが必要である。また、具体的理由が適正でない場合には、13に従い派遣元事業主に対し、労働・社会保険に加入するよう所要の指導を行うこと。
 なお、この措置に関連して、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の4の(2)により、派遣元事業主は、労働・社会保険に加入していない派遣労働者については、派遣先に対して通知した当該派遣労働者が労働・社会保険に加入していない具体的な理由を、当該派遣労働者に対しても通知することが必要である(13の(2)参照)。
 また、派遣先は第9の10の考え方に従い対処する必要があり、適正でないと考えられる理由の通知を受けた場合には、派遣元事業主に対して、労働・社会保険に加入させてから派遣するよう求めることとされていることに留意すること。
 なお、労働者派遣の開始の後、加入手続中の派遣労働者について被保険者資格取得届が提出されたときは、派遣元事業主はその旨を派遣先に通知するものとすること。
  派遣元事業主は、第35条第1項第2号の通知(期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別)をした後に当該事項に変更があったときには、遅滞なくその旨を書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信により派遣先に通知する必要がある(則第27条第4項)。
(6) 通知に際しての留意点
  労働者派遣契約において就業条件の内容の組合せごとに派遣労働者の人数を定めなければならないため、同一の組合せの範囲内で派遣労働者が交代する場合を除き、派遣労働者の就業条件は、当該派遣労働者の属する組合せと同一となる。このため、同一の組合せの範囲内で派遣労働者が交代しない場合は、それぞれの組合せごとに(3)の①から③までを通知し、派遣労働者が交代する場合は、それぞれの組合せごとの(3)の①から③並びに当該交代することとなる派遣労働者の氏名及び当該交代により労働者派遣契約と異なることとなる就業条件の内容を明確にして通知すれば足りるものであり、全ての派遣労働者ごとにその就業条件を併せて通知する必要はない。
  (5)のハの「当該労働者派遣の期間」の意義は9の(6)のホと同様である。
   当該派遣先で就業することとなる業務の遂行について当該業務を行う労働者に免許、資格等を有することが法令により義務付けられている場合には、派遣元事業主は当該免許、資格等を有する者を派遣する必要があるので留意すること。
(7) 違反の場合の効果
   派遣先への通知を行わなかった又は通知を所定の方法で行わなかった場合又は虚偽の通知をした場合は、法第61条第4号に該当し30万円以下の罰金に処せられる場合がある(第13の1参照)。
   また、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となり、イの司法処分を受けた場合は、許可の取消し、事業廃止命令(法第21条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
   派遣先への通知義務違反は、イ及びロのように司法、行政処分の対象となるが、労働者派遣契約自体は有効に成立、存続するものである。
 
○逐条のまとめ
1.法第33条第1項(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)
 派遣元事業主は、派遣としての雇用が終了した後に派遣先に雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならないこと。例えば、「派遣先が労働者派遣を受けた派遣労働者について、当該労働者派遣の終了後、1年間は雇用しないこと」等を定める契約は原則として締結できない。
 ※派遣元と派遣労働者の間の上記契約の禁止
 なお、雇用契約の終了以前(特に期間の定めのある雇用契約においては当該期間内)については、派遣先に雇用されることを禁ずる旨の契約を締結すること自体は可能である。
 
2.法第33条第2項(派遣先への通知)

 派遣元事業主は、正当な理由がなく派遣労働者を派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用すること

を禁ずる旨の契約を締結してはならない。※派遣先と派遣元との前記契約の禁止

 
3.法第34条(派遣労働者への就業条件の明示)
 派遣元事業主が労働者派遣するときは、あらかじめ派遣労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明示しなければならない。
   明示すべき具体的就業条件等
 ① 派遣労働者が従事する業務の内容
 ② 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所
 ③ 派遣先のために、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
 ④ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
 ⑤ 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
 ⑥ 安全及び衛生に関する事項
 ⑦ 派遣労働者から苦情の申出を受けた場合における当該申出を受けた苦情の処理に関する事項
 ⑧ 派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を
  確保するための当該費用の負担に関する措置その他の労働者派遣契約の解除に当たって講ずる
  派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
 ⑨ 労働者派遣契約が紹介予定派遣に係るものである場合にあっては、当該職業紹介により従事
  すべき業務の内容及び労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項として以下の事項・ 
  紹介予定派遣である旨
 ⑩ 派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日((4)のイ参照)
 ⑪ 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
 ⑫ 派遣先が④の派遣就業をする日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は⑤の派遣就業
  の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めを労働者派遣契約に
  おいて行った場合には、当該派遣就業させることができる日又は当該延長することができる
  時間数
 ⑬ 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与に関する事項派遣元事業主及び派遣先との間で、
  派遣先が当該派遣労働者に対し、診療所、給食施設等の施設であって現に派遣先に雇用される
  労働者が通常利用しているものの利用、レクリエーション等に関する施設又は設備の利用、制服
  の貸与、教育訓練その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を供与する旨の定めをした場合
  には、当該便宜の供与に関する事項についても記載すること。
 ⑭ 派遣受入期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項
※派遣労働者を雇用するときに明示する事項
 イ  労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込み

   その他の当該労働者の待遇に関する事項

 ロ 事業運営に関する事項

 ハ  労働者派遣に関する制度の概要

※参考:労働基準法による明示事項(労働基準法第15条)

 一 労働契約の期間に関する事項

 一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

 一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

 二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに

   労働者を二組以上に分けて終業させる場合における就業転換に関する事項

 三 賃金(退職手当及び第5号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、

   計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期並びに昇給に関する事項

 四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定。計算及び支払の方法並びに

  支払いの時期に関する事項

 五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃

  金額に関する事項

 六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

 七 安全及び衛生に関する事項 

 八 職業訓練に関する事項

 九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

 十 表彰及び制裁に関する事項

 十一 休職に関する事項

 

4.法第34条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示

(1)派遣元事業主は、次のイ及びロ派遣労働者に対し労働者派遣に関する料金の額を明示しなければならない。

 イ  労働者を派遣労働者として雇い入れようとする場合 
   当該労働者
   労働者派遣をしようとする場合及び労働者派遣に関する料金の額を変更する場合 
   当該労働者派遣に係る派遣労働者

(2)明示すべき労働者派遣に関する料金の額は、次のいずれかとする(則第26条の2第3項)。

 ① 当該労働者に係る労働者派遣に関する料金の額
 ② 当該労働者に係る労働者派遣を行う事業所における労働者派遣に関する料金の額の平均額

※尚、明示すべき労働者派遣に関する料金の額について、時間額・日額・月額・年額等は問わないが、その料金額の単位(時間額・日額・月額・年額等)がわかるように明示する必要がある。

(3)明示の方法
 イ  労働者派遣に関する料金の明示は、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信、
   又は電子メールの送信の方法によること(義務)。
   派遣元事業主が労働者派遣をしようとする場合の料金が、労働者を派遣労働者として雇い入れ
   ようとする場合に明示した額と同一である場合には、再度の明示は要しない。
   (則第26条の2第2項)
(5) 違反の場合の効果
 明示義務に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となる。


5.法第35条(派遣先への通知)

(1)派遣先への派遣労働者への通知

 派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、当派遣労働者の氏名、派遣労働者が有期雇用か無期雇用かの別、労働・社会保険への加入状況等を派遣先に通知しなければならない(第1項)。

 また、通知した後に、労働者派遣労働者の有期・無期の雇用状況に変更があったときは、遅滞なく、派遣先に通知しなければならない(第2項)。

(2)通知すべき事項

 ① 派遣労働者の氏名及び性別

 ②派遣労働者が有期雇用か無期雇用かの別

 ③派遣労働者の健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無

 ④派遣労働者の派遣就業の就業条件の内容が労働者派遣に係る労働者派遣契約の就業条件の一部

  の内容と異なる場合における派遣労働者の就業条件の内容

(3)通知の方法

 通知は、次の手続により行わなければならない。

 ア 書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすること

 イ 緊急の必要があるため、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メール

   の送信ができない場合は、通知すべき事項を、あらかじめ、書面の交付若しくはファクシミリ

   を利用してする送信又は電子メールの送信以外の方法で通知すればよいこと

(4)その他

 当該派遣先で就業することとなる業務の遂行について、業務を行う労働者に免許、資格等を有することが法令により義務付けられている場合には、派遣元事業主はその免許、資格等を有する者を派遣する必要があるので留意すること。

(5)違反の場合

 派遣先への通知を行わなかった又は通知を所定の方法で行わなかった場合又は虚偽の通知をした場合は、法第61条第4号に該当し30万円以下の罰金に処せられる旨の規定がある。

 また、許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となり、上記の司法処分を受けた場合は、許可の取消し、事業廃止命令の対象となること。

 

 

 

以上で労働者派遣法第33条・第34条・第34条の2・第35条を終了します。