パートタイム労働法第1条
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
第1条(目的)
この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間労働者の果たす役割の重要性が増大していることにかんがみ、短時間労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
○短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について(以下「平成26年通達」)
①パートタイム労働者と有期契約労働者の実態(H24年)
すでに労働契約法の考察において、パートタイム労働について記述しました。労働契約法第20条では、無期契約労働者と有期契約労働者の労働条件が異なる場合には、一定の合理性を有していなければならない旨を規定しています。そして、本法第9条においては、通常の労働者と同視すべき短時間労働者については、短時間労働者であるが故の賃金差別等を禁止しています。
また一方では、従来の裁判例において、労働契約が異なれば付随して労働条件が異なることが是認されると判断されてきました。そこで、以下において短時間労働者の就労の実態を確認してみたいと思います。
出典:「平成24年就業構造基本調査(総務省)」
ア 短時間労働者の数
雇用形態 人数(人) 構成比(%)
総数 57,008,800
役員を除く就労者 53,537,500 100
正規職員(正社員) 33,110,400 61.8
非正規就労者計 20,427,100 38.2
パート労働者 9,560,800 17.9
契約社員 2,909,200 5.4
派遣労働者 1,187,300 2.2
イ 雇用契約の期間でみるパート労働者
期間の長さ パート労働者数(人) 構成比(%)
期間の定めがある計 4,384,300 45.9
1か月未満 26,100 0.3
1か月以上、6か月以下 1,440,200 15.1
6か月超、1年以下 1,920,800 20.1
1年超、3年以下 559,900 5.9
3年超、5年以下 93,600 1.0
その他 343,700 3.6
期間の定めなし 3,714,600 38.9
不明 1,348,000 14.1
ウ 年間就業日数別のパート労働者数
年間就業日数 パート労働者数(人) 構成比(%)
150日未満 2,131,300 22.3
150~199日 1,914,500 20.0
200~249日 3,455,200 36.1
250日以上 1,908,800 20.0
エ 収入別にみるパート労働者
所得階層 パート労働者数(人) 構成比(%)
50万円未満 865,300 9.1
50~99万円 3,818,700 39.9
100~149万円 3,064,600 32.1
150~199万円 994,400 10.4
200~249万円 497,600 5.2
250~299万円 129,700 1.4
300~399万円 65,100 0.7
400~499万円 14,700 0.2
500~599万円 5,400 0.1
600~699万円 2,100 0.0
700~799万円 2,300 0.0
800~899万円 700 0.0
900~999万円 2,400 0.0
1,000~1,249万円 1,700 0.0
1,250~1,499万円 500 0.0
1,500万円以上 400 0.0
オ パートタイム労働者の男女割合及び配偶者の有無の実態
性別 パートタイム労働者数(人) 構成比(%)
男性労働者 1,014,300 10.6
女性労働者 8,546,500 89.4
未婚労働者 1,168,500 12.2
既婚労働者 7,099,400 74.3
※パートタイム労働者のほとんどは、既婚の女性労働者であることが伺えます。
②まとめ
平成24年のパートタイム労働者の数は約950万人で、そのうち約35%が1年以下の有期労働契約を締結しています。また、パートタイム労働者の約20%が年間250日以上就労し、150日未満は22.3%となっています。さらに、年収が150万円未満のパート労働者が81.1%、同じく200万円未満が91.5%、300万円未満が98.1%となっており、9割を超えるパート労働者の年収が200万円未満という実態となっています。
平成24年の給与所得者全体の給与実態は以下のようになっています。
出典:国税庁「民間給与実態統計調査」
給与所得者数は、4,552 万人(対前年比 1.0%増、46 万人の増加)で、その平均給 与は 412 万円(同 1.5%増、61 千円の増加)となっている。 これを男女別にみると、給与所得者数は男性 2,729 万人(同 0.3%増、9万人の増 加)、女性 1,823 万人(同 2.1%増、37 万人の増加)で、その平均給与は男性 507 万円 (同 1.5%増、77 千円の増加)、女性 269 万円(同 2.4%増、62 千円の増加)となって いる。
このように、9割以上の短時間労働者の年間給与所得は、給与所得者全体の半分未満という実態があります。
○パートタイム労働者と有期契約労働者の混同
労働契約には次の種類があります。
a フルタイムかつ期間の定めがない労働契約 いわゆる正規職員・正社員
b フルタイムかつ有期契約の労働契約 いわゆる契約社員等
c 短時間かつ期間の定めのない労働契約 いわゆる短時間正社員等
d 短時間かつ有期労働契約 いわゆるパート・アルバイト等
一般に、非正規社員・非正規職員と言われる労働者とは期間の定めがない労働者をいいますが、フルタイムかつ無期契約以外は非正規労働者として扱われ、管理職任用や昇級(昇給)の対象外となる場合がほとんどと思われます。いわゆるパートタイム労働者の通称は、所定労働時間の長さではなく有期労働契約であるか否かで区分されてきた面があります。労働契約法の改正により、5年を超える有期労働契約の無期転換権が労働者に与えられたことで、将来的には有期労働契約の割合が減少することが予見されます。
○短時間労働者の雇用改善をすべき理由
短時間労働者の給与水準の実態は、上記のとおりいわゆる正規職員・正社員と明らかに乖離しています。その乖離を解消すべき理由は、基本方針で明らかにされています。
参考:短時間労働者対策基本方針(平成27年3月26日厚生労働省告示第142号)抜粋
我が国の人口は、少子高齢化の進行に伴い、平成20年をピークに減少傾向にある。経済成長と労働参加が適切に進まず、労働力人口が大幅に減少することとなれば、経済成長の供給側の制約要因となるとともに、需要面でみても経済成長にマイナスの影響を与えるおそれがある。このように、今後、ますます労働力供給が制約される日本では、全員参加の社会の実現に向け、若者、女性、高齢者、障害者を始め就労を希望する者が意欲と能力を生かしてそれぞれのライフスタイルに応じた働き方を通じて能力を発揮できるよう、多様な働き方を実現するための環境整備を進めていくことが重要である。