パートタイム労働法第14条

2015年05月28日 14:39

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)

 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、第九条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間労働者に説明しなければならない。

 

2 事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、第六条、第七条及び第九条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない。

 

第14条の分解解析
・事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、労働基準法第15条・本法第6条による労働条件の明示と併せて、本法第9条から第13条までの規定に基づく制度をその短時間労働者に説明しなければならない。(第1項)
・事業主は、雇用する短時間労働者から求めがあった場合には、本法第6条、第7条、第9条から第13条までの規定により講ずるべきとなっている措置の説明をしなければならない。(第2項)
 

通達による確認

・事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容等の説明(法第14関係)

(1) 短時間労働者は、通常の労働者に比べ労働時間や職務の内容が多様であり、その労働条件が不明確になりやすいことなどから、通常の労働者の待遇との違いを生じさせている理由がわからず、不満を抱く場合も少なくない状況にある。また、そもそも事業主が短時間労働者についてどのような雇用管理の改善等の措置を講じているのか、短時間労働者が認識していない場合も多いと考えられ、こうしたことが、短時間労働者の不安や不満につながっていると考えられる。短時間労働者がその有する能力を十分に発揮するためには、このような状況を改善し、その納得性を高めることが有効であることから、法第6条の文書の交付等と併せて、事業主に対し、短時間労働者の雇入れ時に当該事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないこととしたものであること。
(2) 法第14条第1項は、事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、法第9条から法第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
 労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び法第6条第1項の特定事項については、労働基準法又は法により、別途、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本項による説明義務の対象とはしていないこと。
(3) 法第14条第1項に基づく説明については、事業主が短時間労働者を雇い入れたときに、個々の短時間労働者ごとに説明を行うほか、雇入れ時の説明会等において複数の短時間労働者に同時に説明を行う等の方法によっても、差し支えないこと。
 また、本項に基づく説明は、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間労働者が的確に理解することができるよう、口頭により行うことが原則であるが、説明すべき事項を漏れなく記載した短時間労働者が容易に理解できる内容の文書を短時間労働者に交付すること等によっても、本項の義務の履行といえること。
 なお、口頭による説明の際に、説明する内容等を記した文書を併せて交付することは、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間労働者が的確に理解することができるようにするという観点から、望ましい措置といえること。
 短時間労働者の労働契約に期間の定めがある場合であって、その更新をするときについては、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度本項による説明が必要となるものであること。
(4) 法第14条第2項は、事業主は、雇い入れた後、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、法第6条、第7条及び第9条から第13条までの規定により措置を講ずべきとされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
 なお、11(5)ハ(ロ)にあるように、事業主は、短時間労働者が、本項に基づき説明を求めたことを理由として当該短時間労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。
 また、説明を求めることにより、事業主から不利益な取扱いを受けることをおそれて、短時間労働者が本項に基づき説明を求めることができないことがないようにするものであること。具体的には、説明を求めることにより、不利益な取扱いを受けると想起されかねないような言動をすべきでないこと。
 また、法第16条に基づく相談のための体制の整備を適切に実施すること等により、短時間労働者が不利益な取扱いを受けることへの危惧を持つことなく説明を求めることができるような職場環境としていくことが望まれること。
(5) 本条により事業主に説明義務が課されている事項には、第1項については法第10条及び第11条第2項の規定により、第2項については法第6条第2項、第7条、第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然含むものであること。
(6) 本条による説明は、本条による説明義務に係る各条項の規定により求められている措置の範囲内で足りるものであること。このため、本条第1項については、法第11条、第12条に関し、通常の労働者についても実施していない又は利用させていない場合は講ずるべき措置がないことから、この場合に同項により説明する内容は「ない」旨を説明しなくとも同項に違反するものではないこと。しかしながら、第2項については、通常の労働者にこうした措置がないためであることを説明する必要があること。
(7) 本条第1項の説明内容としては、事業所において法に基づき事業主が実施している各種制度等について説明することが考えられること。例えば、法第9条については、雇い入れる短時間労働者が通常の労働者と同視すべき短時間労働者の要件に該当する場合、通常の労働者との差別的な取扱いをしない旨を説明することが考えられること。
 法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素を勘案したどのような賃金制度となっているかを説明することが考えられること。法第11条については、短時間労働者に対しどのような教育訓練が実施されるかを説明することが考えられること。法第12条については、短時間労働者がどのような福利厚生施設を利用できるかを説明することが考えられること。法第13条については、どのような通常の労働者への転換推進措置を実施しているかを説明することが考えられること。
 第2項の説明内容としては、短時間労働者から求められた内容に応じて、事業主が実施している各種制度等がなぜそのような制度であるのか又は事業主が実施している各種制度等について説明を求めた短時間労働者にどのような理由で適用され若しくは適用されていないかを説明することが考えられること。例えば、法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素をなぜ勘案しているか、また、当該説明を求めた短時間労働者について当該要素をどのように勘案しているかを説明することが考えられること。
(8) 本条の規定による説明により短時間労働者が納得することについては、本条の義務の履行とは関係がないものであること。
 
通達抜粋
ア 趣旨
 どのような雇用管理の改善等の措置を講じているのか、短時間労働者が認識していない場合も多いため、法第6条の文書の交付等と併せて、事業主に対し、短時間労働者の雇入れ時に当該事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないこととしたもの
イ 労働基準法の明示
 労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び法第6条第1項の特定事項については、労働基準法又は法により、別途、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本項による説明義務の対象とはしていない
ウ 説明の方法
 口頭により行うことが原則であるが、説明すべき事項を漏れなく記載した短時間労働者が容易に理解できる内容の文書を短時間労働者に交付すること等によっても、本項の義務の履行といえる
エ 第2項の趣旨
 その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、法第6条、第7条及び第9条から第13条までの規定により措置を講ずべきとされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない
オ 新規採用短時間労働者(本条第1項)及び既存短時間労働者の求め(第2項)に応じた説明の内容
 事業主に説明義務が課されている事項には、第1項に ついては法第10条及び第11条第2項の規定により、第2項については法第6条第2項、第7条、第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然含む
・新規採用の短時間労働者向けの説明(第1項)
 (ア)通常の労働者と同一視できる短時間労働者の差別待遇の禁止(第9条)
 (イ)短時間労働者(通常の労働者と同一視出来る場合を除く)と通常の労働者との配慮決定の努力義務(第10条)
 (ウ)短時間労働者(通常の労働者と同一視出来る場合を除く)についての通常の労働者と同様の教育訓練の実施(第11条)
 (エ)短時間労働者についての通常の労働者と同様の福利厚生施設(更衣室等)の使用をみとめる(第12条)
 (オ)短時間労働者についての通常の労働者への転換機会(措置)(第13条)
・すでに就労している短時間労働者の求めに応じた説明(第2項)
 上記の(ア)~(オ)に加え、
 (カ)短時間労働者の採用時の特定事項(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口)の明示義務(労働基準法第15条の項目を除く)等(第6条)
 (キ)短時間労働者に関する就業規則の作成・変更時の短時間労働者の代表者からの意見聴取の努力義務(第7条)
 
法第14条まとめ
 正規社員・正規職員は幹部候補労働者、非常勤社員・非常勤職員はあくまで定形的な非常勤労働者といった、あたかも江戸時代の身分制度(士・農・工・商)のごとき両者の区分けを廃止し、一貫した総合的な人事制度の導入を促している規定と考えられます。
 たしかに、新入社員を年功制度の上で、長期的な視点で育成・配置する制度は、ある意味で合理性を有しています。一方で、現代のような、女性の就労期間の長期化の実現、家族介護を行う労働者等のワーク・ライフ・バランスの観点からは、一貫した総合的な人事制度(すなわち、一貫した資格・等級制度=賃金制度)の構築が最も合理的かつ労働者の納得を得られるものと考えます。また、定期採用以外の労働者や臨時採用の労働者に対し、将来の希望を与える制度とすることで、それらの労働者のモチベーションも維持向上できます。
 例えば、育児休業を取得する女性労働者は、育児休業後も従前と同一格付け(すなわち同一の基本賃金)で職場復帰できることが保障されているならば、安心して育児休業に入ることができます。この場合、仮に休業前の職位と異なる職位の職場復帰であっても、大幅に賃金が低下することは考えにくく(もちろん諸手当の設定によりますが)、女性労働者(男性労働者を含め)の育児休業の取得率の向上にも資すると考えます。また、労働契約法の改正により将来的に期間の定めのない労働者の割合が増加することが見込まれ、付随して育児・介護休業の対象となる労働者が増加することが予想されます。その際にも一貫した総合的人事制度の導入により、従来育児・介護休業の対象外であった雇用契約の労働者についての育児・介護制度の構築も、総合人事制度に関連した制度として設計することでその導入が容易になります。
 
 
 
 
以上でパートタイム労働法第14条を終了します。
 
 
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