パートタイム労働法第15条
2015年05月29日 09:46
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
第15条(指針)
厚生労働大臣は、第六条から前条に定めるもののほか、第三条第一項の事業主が講ずべ
き雇用管理の改善等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な
指針(以下この節において「指針」という。)を定めるものとする。
2 第五条第三項から第五項までの規定は指針の策定について、同条第四項及び第五項の
規定は指針の変更について準用する。
○通達による確認
・指針(法第15条関係)
(1) 法第15条第1項は、法第6条から第14条までに定めるもののほか、第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めることとしているものであること。
指針の策定については法第5条第3項から第5項までの規定が、指針の変更については法第5条第4項及び第5項の規定が準用されること。したがって、指針は短時間労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定めなければならず、指針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならないこと。
(2) 指針第1は、指針と法の関係を明らかにしようとするものであり、指針が法第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために法第6条から第14条までに定めるもののほかに必要な事項を定めたものであることを明らかにしたものであること。
(3) 指針第2は、事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっての基本的考え方を明らかにしたものであること。
イ 指針第2の1は、短時間労働者にも労働基準法、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働契約法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働に関する法令が適用され、事業主がこれを遵守しなければならないものであることを確認的に明記したものであること。
ロ 指針第2の2は、事業主は法の規定に従い、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずる必要があることを確認的に明記するとともに、事業主は、短時間労働者の多様な就業実態を踏まえ、その職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、待遇に係る措置を講ずるよう努めるものとしたものであること。本規定は、すべての短時間労働者に及ぶ基本的考え方を述べたものであり、事業主は、法及び指針において具体的に規定されていない場合においても、この考え方に基づき措置を講ずべきであること。
ハ 指針第2の3の前段は、法に基づく短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、その雇用する通常の労働者その他の労働者の労働条件を合理的な理由なく一方的に不利益に変更することは法的に許されないものであることを確認的に明記したものであること。「その他の労働者」には、短時間労働者をはじめ、当該事業所で雇用されるすべての労働者が含まれるものであること。
指針第2の3の後段は、法に基づく短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、所定労働時間が通常の労働者と同一である有期契約労働者は法の定める短時間労働者とはならないが、このような者についても、法の趣旨が考慮されるべきであることを明記したものであること。
(4) (3)イにおける労働に関する法令の主な内容は、以下のとおりであること。
イ 労働条件の明示
労働基準法第15条第1項の規定に基づき、事業主は、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、当該短時間労働者に対して、同項に規定する厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる労働条件に関する事項を明示する義務があること。
(イ) 労働契約の期間
(ロ) 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
(ハ) 就業の場所及び従事すべき業務
(ニ) 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
(ホ) 賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、一か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当を除く。以下この(ホ)において同じ。)の決定、計算及び支払いの方法並びに賃金の締切り及び支払の時期
(ヘ) 退職(解雇の事由を含む。)
ロ 就業規則の整備
短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法第89条の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則を作成する義務があること。
ハ 年次有給休暇
事業主は、短時間労働者に対しても、労働基準法第39条の定めるところにより、別表に定める日数の年次有給休暇を付与する義務があること。
なお、年次有給休暇の付与に係る「継続勤務」の要件に該当するか否かについては、勤務の実態に即して判断すべきものであるので、期間の定めのある労働契約を反復して短時間労働者を使用する場合、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではないことに留意すること。
ニ 期間の定めのある労働契約
事業主は、短時間労働者のうち期間の定めのある労働契約(以下この項において「有期労働契約」という。)を締結するものについては、労働基準法第14条第2項の規定に基づき定められた有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
(イ) 雇止めの予告
事業主は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。(ロ)の②において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
(ロ) 雇止めの理由の明示
① (イ)の場合において、事業主は、短時間労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
② 有期労働契約が更新されなかった場合において、事業主は、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(ハ) 契約期間についての配慮
事業主は、有期労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
ホ 解雇の予告
(イ) 事業主は、短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前にその予告をする義務があること。30日前に予告をしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払う義務があること。
(ロ) (イ)の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができること。
へ 退職時等の証明
事業主は、短時間労働者が、①退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合、②解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、労働基準法第22条の定めるところにより、遅滞なくこれを交付する義務があること。
ト 健康診断
事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第66条に基づき、次に掲げる健康診断を実施する必要があること。
(イ) 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ロ) 深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ハ) 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
(ニ) その他必要な健康診断
この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。
①の括弧書中の「引き続き使用」の意義については、上記ハのなお書の趣旨に留意すること。
チ 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申込みにより無期労働契約に転換されるものであること。
リ 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件が相違する場合において、職務の内容、人材活用の仕組み、運用等その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないも
のであること。
ヌ 妊娠中及び出産後における措置
事業主は、妊娠中及び出産後1年以内の短時間労働者に対し、労働基準法及び男女雇用機会均等法の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
(イ) 産前及び産後の休業の措置
(ロ) 健康診査等を受けるために必要な時間の確保及び健康診査等に基づく医師等の指導事項を守ることができるようにするために必要な措置
(ハ) その他必要な措置
なお、(ハ)の措置としては、労働基準法第64条の3に定める危険有害業務の就業制限、同法第65条第3項に定める軽易業務転換、同法第66条に定める時間外労働、休日労働及び深夜業の禁止並びに変形労働時間制の適用制限、同法第67条に基づく育児時間等があること。
ル 育児休業及び介護休業に関する制度等
事業主は、短時間労働者について、育児・介護休業法の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
(イ) 育児休業又は介護休業に関する制度
(ロ) 子の看護休暇に関する制度
(ハ) 介護休暇に関する制度
(ニ) 所定外労働の制限に関する制度
(ホ) 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者又は要介護状態にある家族を介護する者に対する時間外労働の制限又は深夜業の制限の措置
(ヘ) 3歳に満たない子を養育する者に対する所定労働時間の短縮措置又は育児休業に関する制度に準ずる措置若しくは始業時刻変更等の措置又は要介護状態にある家族を介護する者に対する所定労働時間の短縮その他の措置
なお、次の点に留意すること。
① 育児・介護休業法第6条第1項及び第2項並びに第12条第2項の規定により、雇用期間が1年に満たない労働者等であって労使協定で育児休業及び介護休業をすることができないものとして定められたものについては、(イ)の措置の対象とはならないこと。
また、育児・介護休業法第16条の3第2項及び第16条の6第2項の規定により、雇用期間が6か月に満たない労働者等であって労使協定で子の看護休暇及び介護休暇を取得することができないものとして定められたものについては、(ロ)及び(ハ)の措置の対象とはならないこと。
② 育児・介護休業法第5条第1項及び第11条第1項の期間を定めて雇用される者について、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号。以下「育介指針」という。)第2の1において、労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、育児休業及び介護休業の対象となるものであるが、その判断に当たっては、同指針第2の1の(1)の事項に留意することとされていること。
③ 育児・介護休業法第5条第1項の規定により、期間を定めて雇用される者のうち育児休業をすることができるものは、育児休業申出時点で当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、かつ、その養育する子の1歳到達日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者であり、この場合、当該子の1歳到達日から1年を経過する日までの間に、労働契約が完了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者は除くこととされているところであるが、期間を定めて雇用される者が育児・介護休業法第5条第1項各号に定める要件を満たす労働者か否かの判断に当たっては、育介指針第2の1の(2)の事項に留意することとされていること。
④ 育児・介護休業法第11条第1項の規定により、期間を定めて雇用される者のうち介護休業をすることができるものは、介護休業申出時点で当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、かつ、介護休業開始予定日から起算した93日経過日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者であり、この場合、93日経過日から1年を経過する日までの間に、労働契約が完了し、かつ、当該労働契約の更新が明らかである者は除くこととされているところであるが、期間を定めて雇用される者が育児・介護休業法第11条第1項各号に定める要件を満たす労働者か否かの判断に当たっては、育介指針第2の1の(2)の事項に留意することとされていること。
⑤ 育児・介護休業法施行規則第33条の2の規定及び平成21年12月28日付け職発1228第4号、雇児発第1228号第2号「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」の記の第9の7の(7)のイにおいて、所定労働時間が1日6時間以下の労働者については、(ヘ)の措置を講ずる必要は基本的にはないものとされていること。
ヲ 雇用保険の適用
事業主は、一定の要件を満たす短時間労働者は雇用保険の被保険者となるが、雇用保険の被保険者に該当する者であるにもかかわらず適用手続をとっていない短時間労働者については、雇用保険法に基づき必要な手続をとらねばならないものであること。
ワ 高年齢者の短時間労働の促進
少子高齢化社会において、経済社会の活力を維持し発展させていくためには、高年齢者の高い就業意欲を活かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要であり、今後特に高年齢者の雇用対策は重要となる。これらの者については、健康、体力等の状況によって個人差が大きくなり、就業ニーズも多様化し、短時間労働を希望する者も増大するので、これに対応して、事業主は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の趣旨にしたがい、短時間労働を希望する高年齢者に対して適切な雇用機会を提供するよう努める必要があること。
(5) 指針第3は、指針第2の基本的考え方に立って、次の点について適切な措置を講ずるべきとしたものであること。
イ 短時間労働者の雇用管理の改善等(指針第3の1関係)
(イ) 労働時間(指針第3の1の(1)関係)
短時間労働者の多くは、家庭生活との両立等のため、短時間かつ自己の都合に合う一定の就業時間帯を前提として勤務している者であり、事業主は、このような短時間労働者の事情を十分考慮して労働時間・労働日を設定するように努め、できるだけ所定労働時間外又は所定労働日外に労働させないように努めるものとしたものであること。
(ロ) 退職手当その他の手当(指針第3の1の(2)関係)
事業主は、法第9条及び第10条に定めるもののほか、短時間労働者の退職手当、通勤手当その他の職務の内容と密接な関連を有しない手当についても、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとしたものであること。
なお、通勤手当については、通勤手当という名称で支払われていても職務の内容に密接に関連して支払われるものについては、法第10条の対象であり、その旨は則第3条第1号括弧書において明確化されていること。
「均衡等」の「等」とは、就業の実態を前提として通常の労働者とのバランスを考慮しただけでは十分でない場合に必要に応じて同業他社の状況などを考慮することを指すものであること。
なお、就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した結果、通常の労働者と異なる定め方をすることは、合理的理由があれば許容されるものであること。
(ハ) 福利厚生(指針第3の1の(3)関係)
企業が行っている福利厚生について短時間労働者には適用しないなどの例があり、これが短時間労働者に不公平感を生んでいる場合がある。このため、法第9条において、通常の労働者と同視すべき短時間労働者については福利厚生の取扱いについて短時間労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないこととしているとともに、法第12条において、事業主は健康を保って働くための施設や業務を円滑に遂行するための施設である給食施設、休憩室、更衣室については、短時間労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければならないこととしている。指針においては、これら法第9条及び第12条に定めるもののほか、物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設その他これらに準ずる施設の利用及びそれ以外の事業主が行う福利厚生の措置(慶弔休暇の付与等)についても、短時間労働者に対してその就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするよう努めるものとしたものであること。
なお、就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した結果、通常の労働者と異なる取扱いをすることは、合理的理由があれば許容されるものであること。
ロ 労使の話合いの促進(指針第3の2関係)
企業内における労使の自主的な取組を促進する観点から、労使の話合いの促進のための措置の実施に係る規定を設けたものであること。
(イ) 待遇についての説明(指針第3の2の(1)関係)
事業主は、法第14条第2項に定めるもののほか、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者から本人の待遇について説明を求められたときには、当該短時間労働者の待遇に係るその他の事項についても、誠意をもって説明するように努めるものとしたものであること。
「説明」に当たっては、短時間労働者と通常の労働者の職務の内容等との関係についても説明をするなどにより納得性を高めることが重要であること。また、短時間労働者が待遇についての「説明」を求めたことを理由として、当該短時間労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないことは当然のことであること。
(ロ) 意見を聴く機会を設けるための適当な方法の工夫(指針第3の2の(2)関係)
事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっては、当該事業所における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとしたものであること。
「関係労使」とは、集団的労使関係に限定されるものではないこと。
また、「意見を聴く機会を設けるための適当な方法」は事業所の事情に応じ、各事業所において工夫されるべきものであるが、例として、職場での労使協議、職場懇談会、意見聴取、アンケート等が挙げられること。
(ハ) 苦情の自主的な解決(指針第3の2の(3)関係)
事業主は、法第22条に定めるもののほか、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した待遇に係るその他の事項についても、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとしたものであること。
「苦情処理の仕組みを活用する等」とは、事業所内の苦情処理制度や法第16条に基づく相談のための体制の活用のほか、短時間雇用管理者が選任されている事業所においては、これを活用すること等が考えられること。
このような苦情処理の仕組み等について、特定事項として文書の交付等により明示することとされている相談窓口以外のものについても、短時間労働者に対し、周知を図ることが望まれること。
ハ 不利益取扱いの禁止(指針第3の3関係)
(イ) 指針第3の3の(1)は、事業主は、短時間労働者が法第7条に定める過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしていたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことを明記したものであること。
(ロ) 指針第3の3の(2)の前段は、事業主は、短時間労働者が法第14条第2項に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことを明記したものであること。
これは、説明を求めた短時間労働者に対して事業主が法第14条第2項により求められる範囲の説明を行ったにもかかわらず、繰り返し説明を求めてくるような場合に、職務に戻るよう命じ、それに従わない場合に当該不就労部分について就業規則に従い賃金カットを行うようなこと等まで、不利益な取扱いとして禁止する趣旨ではないこと。
指針第3の3の(2)の後段は、法第14条第2項に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めることにより、事業主から不利益な取扱いを受けることをおそれて、短時間労働者が本項に基づき説明を求めることができなくなることがないようにすることを明記したものであること。
具体的には、説明を求めることにより、不利益な取扱いを受けると想起されかねないような言動及び行動をすべきでないこと。また、法第16条に基づく相談対応のための体制の整備を適切に実施すること等により、短時間労働者が不利益な取扱いを受けることへの危惧を持つことなく説明を求めることができるような職場環境としていくことが望まれること。
(ハ) 「理由として」とは、短時間労働者が「過半数代表であること若しくは過半数代表者になろうとしていたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたこと」又は「待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたこと」について、事業主が当該短時間労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
(ニ) 「不利益な取扱い」とは、解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、労働契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。
(ホ) 指針第3の3の(3)は、事業主は、短時間労働者が親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当でないことを明記したものであること。
「親族の葬儀等」とは、親族の死に際して行われる葬儀等の行事をいい、「親族」及び「葬儀等」の範囲や「勤務しなかった」日数等については、社会通念上勤務しないことが許容される範囲のものが該当するものと考えられること。
「理由として」とは、短時間労働者が「親族の葬儀等のために勤務しなかったこと」について、事業主が当該短時間労働者に対して解雇等を行うことと因果関係があることをいうものであること。
また、「解雇等」には、労働契約の更新拒否等が含まれるとともに、「親族の葬儀等のために勤務しなかったこと」を理由として直接的に解雇等を行う場合のみならず、出勤率、欠勤日数等を解雇等の判断基準として採用している場合に、当該勤務しなかった日を当該出勤率、欠勤日数等の算定に当たって計算に含めて、解雇等を行うことも含まれるものであること。
ニ 短時間雇用管理者の氏名の周知(指針第3の4関係)
事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、その氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとしたものであること。
なお、短時間雇用管理者の氏名の周知の方法としては、短時間雇用管理者の氏名及び短時間雇用管理者である旨を事業所の見やすい場所に掲示することのほか、例えば、これらの事項を書面に記載し短時間労働者に交付することでも差し支えないものであること。
また、短時間雇用管理者を法第16条に基づく相談体制とし、法第6条第1項の特定事項である相談窓口として文書の交付等により明示する場合においては、同項による文書の交付等による明示の際に、相談窓口となる者が短時間雇用管理者であることを併せて明示することでも差し支えないものであること。
○事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針の概要 (平成19年告示第326号)
通達は非常に長文ですので、基本指針の内容を以下で整理してまとめます。
第一 趣旨
事業主が講ずべき措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るため、短時間労働者法第六条から第十四条までに定めるもののほかに必要な事項を定めたもの
第二 基本的考え方
一 労働基準法、最低賃金法、労働契約法、均等法、育児介護休業法、労災保険法、雇用保険法の遵守
二 パートタイム労働法第6条~第14条の雇用管理の改善等に関する措置の実施、合理的な待遇に関する措置
三 パート労働者の労働条件の一方的不利益変更の禁止
第三 事業主が講ずべき措置
一 雇用管理の改善等
(一)労働時間
イ 労働時間・労働日の決定変更に関して、当人の事情を考慮すること
ロ 所定外労働及び休日労働の支持を控えること
(二)退職金等
通常の労働者との均衡を考慮して定める努力をすること
(三)福利厚生
通常の労働者との均衡を考慮して定める努力をすること
二 話し合いの促進
(一)雇い入れ時の説明
(二)短時間労働者の意見を聞く機会を設ける
(三)苦情の申出についての自主的な解決の促進
三 不利益取扱いの禁止
(一)就業規則意見書作成の過半数代表短時間労働者に対する不利益取扱いの禁止
(二)待遇決定についての説明を求めた短時間労働者に対する不利益取扱いの禁止
(三)親族の葬儀参列の短時間労働者に対する解雇等の禁止
四 短時間雇用管理者の氏名の周知
短時間雇用管理者を選任したときは、短時間労働者に指名を周知させるように努めること
○パートタイム労働法第15条まとめ
本条に関しては、特段記述する項目がありません。
以上でパートタイム労働法第15条を終了します。
パート労働法第15条