パートタイム労働法第18条、第19条、第20条、第21条

2015年05月29日 14:31

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第18条(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等)

 厚生労働大臣は、短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

 

2 厚生労働大臣は、第六条第一項、第九条、第十一条第一項、第十二条から第十四条まで及び第十六条の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

 

3 前二項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

 

則第8条(権限の委任)

 法第十八条第一項に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働大臣が全国的に重要であ

ると認めた事案に係るものを除き、事業主の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の

長が行うものとする。

 

第19条(事業主等に対する援助)

 国は、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るため、短時

労働者を雇用する事業主、事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用

理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができ

る。

 

第20条(職業訓練の実施等)

 国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び

短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するた

め、短時間労働者、短時間労働者になろうとする者その他関係者に対して職業能力の開発

及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の

配慮をするものとする。

 

第21条(職業紹介の充実等)

 国は、短時間労働者になろうとする者がその適性、能力、経験、技能の程度等にふさわしい職業を選択し、及び職業に適応することを容易にするため、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 

 

通達による確認 

報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等(法第18条関係)
(1) 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告(法第18条第1項関係)
 イ  法第18条第1項は、本法の目的を達成するため、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、短時間労働者の雇用管理の改善等を図るために必要があると認めるときは、事業主に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うことができることとしたものであること。
 ロ  本項の厚生労働大臣等の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。
 ハ  「短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるとき」とは、法及び指針によって事業主が講ずべき措置について、これが十分に講じられていないと考えられる場合において、その措置を講ずることが雇用管理の改善等を図るため必要であると認められるとき等をいうものであること。
 ニ  報告の徴収並びに助言、指導及び勧告は、おおむね(イ)~(ニ)のとおり実施するものであること。
 (イ) 報告の徴収
  報告の徴収は、法第18条第1項の助言、指導、勧告のために行う事実の調査として、文書の提出の要請、出頭を求めての事情聴取、事業所への現地実情調査等を行うことのほか、法の施行に関し必要な事項につき事業主から報告を求めることをいうものであること。
 (ロ) 助言
  法の規定(指針に規定された事項を含む。)に違反する状況を解消するために事業主に対して口頭又は文書により行うものであること。
 (ハ) 指導
  助言の対象となった事案のうち是正のためには強い要請が必要であると認められるものについて、事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により行うものであること。
 (ニ) 勧告
  指導の対象となった事案のうち是正のためには更に強い要請が特に必要であると認められるものについて、事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により行うものであること。
 また、勧告を行う場合であって、事業主が当該勧告に係る必要な是正措置を講じるまでに一定の期間を要すると認められるときは、必要に応じて、当該事業主に対し、当該勧告において是正措置の実施に至るまでのスケジュール等を明記した措置計画の作成を求めるものであること。
 なお、(ハ)の「是正のためには強い要請が必要であると認められるもの」とは、具体的には助言を行っても事業主に是正措置を講ずる意向が確認できないものを、また(ニ)の「是正のためには更に強い要請が特に必要であると認められるもの」とは、指導を行っても事業主に是正措置を講ずる意向が確認できないものをいうこと。
(2) 公表(法第18条第2項関係)
 短時間労働者について、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置を推進するためには、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いを禁止する等、事業主に一定の措置を義務付けるとともに、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果を高め、法の実効性を確保することが必要である。このような観点から、厚生労働大臣は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで及び第16条の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。
(3) 権限の委任(法第18条第3項関係)
 イ  法第18条第1項及び則第8条の規定に基づき、厚生労働大臣が助言、指導、勧告を行う全国的に重要である事案とは、おおむね以下のいずれかに該当する事案をいうものであること。
 (イ) 広範囲な都道府県にまたがり、事案の処理に当たり各方面との調整が必要であると考えられる事案
 (ロ) 事案の性質上広範な社会的影響力を持つと考えられる事案
 (ハ) 都道府県労働局長が勧告を行っても是正の意向がみられず、悪質かつ重大な事案
 なお、(ロ)については、企業の規模、事案に係るパートタイム労働者の数等を考慮すること。また、(ハ)における「悪質」とは、度重なる説得に応じない等遵法意識の見られない場合を、「重大」とは、事業主の措置により不利益を被る短時間労働者が多数いる場合や社会的影響が大きい場合をいうこと。
 ロ  法第18条第2項の規定に基づく厚生労働大臣による公表については、則第8条において、都道府県労働局長に権限の委任がなされていないものであること。
事業主等に対する援助(法第19条関係)
(1) 短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るためには、事業主に対する短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等の義務付け等の制度と相まって、短時間労働者の雇用管理の改善等の措置等を図る事業主等に対し、国が必要な援助を行うことが有効であると考えられる。
 このため、国は、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るため、短時間労働者を雇用する事業主、事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとしたものであること。
(2) 「その他の関係者」とは、事業主団体のほか、短時間労働者の雇用管理の改善等の支援を行っている団体を広く指すものであること。
(3) 「その他の必要な援助」としては、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての好事例等の情報提供や助成金の支給などが考えられること。
職業訓練の実施等(法第20条関係)
(1) 短時間労働者の中には、主要な仕事、高度な技術・技能が必要な仕事、責任のある仕事をしたいと希望する者がいるにもかかわらず、企業の対応は、教育訓練の実施率が低い等短時間労働者の能力をより有効に活用するための環境整備が十分になされているとはいえない。
 また、短時間労働者になろうとする者の中には、職業生活を一定期間中断していたこと等により、職業能力の減退、かつて習得した知識、技能の陳腐化等、就業しようとする職業に必要な能力に欠けるために希望する職業に従事できない者もいるところである。
 このようなことから、国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、職業能力の開発及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の配慮をすることとしたものであること。
(2) 「特別の配慮」とは、職業能力開発促進センター、都道府県立職業能力開発校における短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者等に対する普通職業訓練(短期課程)等の推進をいうものであること。
職業紹介の充実等(法第21条関係)
 短時間労働者になろうとする者については、職業生活を一定期間中断していた者が多く、職業に関する知識、自らの適性・能力等についての客観的な理解、就労に対する心構えが不十分であるとか、労働市場に関する知識・情報が不足している場合があることなどからきめ細かな配慮が必要とされる者が多いことにかんがみ、特に、その適性、能力、経験及び技能の程度等にふさわしい職業を選択し、並びに職業に適応することを容易にするため、国は、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めることとしたものであること。
 
罰則:パートタイム労働法第30条
 第十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
 
パートタイム労働法第18条~第21条のまとめ
1.第18条
 ・都道府県労働局長等は、必要があると認めるときは、事業主に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うことができる
 ・報告の徴収並びに助言、指導及び勧告の手順
 (イ)報告の徴収
   事実の調査として、文書の提出の要請、出頭を求めての事情聴取、事業所への現地実情調査等を行うことのほか、法の施行に関し必要な事項につき事業主から報告を求める
 (ロ)助言
   事業主に対して口頭又は文書により行う
 (ハ)指導
   事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により指導する
 (ニ)勧告
   事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により勧告する
   また、場合により当該勧告において是正措置の実施に至るまでのスケジュール等を明記した措置計画の作成を求める
 ・公表
  厚生労働大臣は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで及び第16条の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとした。
  ※都道府県労働局長は企業名を公表することができない。
2.第19条
 ・事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとしたもの
 ・「その他の必要な援助」としては、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての好事例等の情報提供や助成金の支給などが考えられる
3.第20条
 ・国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、職業能力の開発及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の配慮をすることとしたもの
4.第21条
 ・時間労働者になろうとする者については、職業生活を一定期間中断していた者が多く、職業に関する知識、自らの適性・能力等についての客観的な理解、就労に対する心構えが不十分であるとか、労働市場に関する知識・情報が不足している場合があることなどからきめ細かな配慮が必要とされる者が多いことにかんがみ、特に、その適性、能力、経験及び技能の程度等にふさわしい職業を選択し、並びに職業に適応することを容易にするため、国は、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めることとしたもの
 
 
第18条~第21条まとめ
 労働局長の指導・勧告については、労働局の均等室で短時間労働者の相談等を受けた後に、必要に応じて実施していると承知しています。これは、各都道府県労働局のホームページで相談事例等が確認できると思います。
 東京労働局のまとめでは、平成25年度において「295 事業所を対象にパートタイム労働法第 16 条(改正後第18条)に基づく報告徴収を実施し、このうち何 らかの違反があった 271 事業所に対して 725 件の是正指導を行った。」と公表しています。
 また、同じく東京労働局のまとめによれば、平成25年度の事業主からの相談件数は286件で全体の 63.2%を占めています。参考までに、労働者からの同相談件数は64件(14.2%)、その他の同相談件数は103件(22.7%)となっています。
 短時間労働者に対する職業訓練については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が主として実施しているようです。参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP https://www.jeed.or.jp/js/ このホームページによりその職業訓練内容等をご参照ください。
 さらに、短時間労働者に対する「雇用情報の提供」「職業指導及び職業紹介の充実」等必要な措置は、主として各ハローワーク及び都道府県労働局で行っていいます。
 例えば、短時間労働者向けの法令制度のパンフレットの作成、ハローワークの職業紹介時の説明、各都道府県労働局の雇用均等室での短時間労働者向けの相談指導の実施などがあります。また、事業主向けの助成金制度では、「キャリアアップ助成金(有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む。以下「有期契約労働者等」という)の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成をするもの)」「トライアル雇用助成金(職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成するものであり、それらの求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者および求人者の相互理解を促進すること等を通じて、その早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的とする)」等が設定されています。
 ただし、一般的に助成金等は年度により変更さたり(打切りもあります。)、窓口が複数存在しますので事前に詳しく調べる必要があります。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第18条、第19条、第20条、第21条を終了します。
 
 
 
パート労働法第18~21条