パートタイム労働法第22条・第23条

2015年05月29日 16:46

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第22条(苦情の自主的解決)

 事業主は、第六条第一項、第九条、第十一条第一項及び第十二条から第十四条までに定

める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を

代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦

情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を

図るように努めるものとする。

 

第23条(紛争の解決の促進に関する特例)

 

 前条の事項についての短時間労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第二十七条までに定めるところによる。 

 

通達による確認 

紛争の解決(法第4章)
 法第4章は、紛争を解決するための仕組みとして第1節において苦情の自主的解決、都道府県労働局長による紛争の解決の援助について、第2節において調停制度について定めたものであること。
苦情の自主的解決(法第22条関係)
(1) 企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。
 なお、この他の事項に関する苦情についても自主的解決が望ましいことについては、第3の11(5)ロ(ハ)のとおりであること。
(2) 「苦情処理機関」とは、事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関等をいうものであること。これは、労働者の苦情については、まずはこのような苦情処理機関における処理に委ねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。
(3) 「苦情の処理を委ねる等」の「等」には、法第16条に基づく相談のための体制の活用や短時間雇用管理者が選任されている事業所においてはこれを活用する等労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。
(4) 苦情処理機関等事業所内における苦情の自主的解決のための仕組みについては、短時間労働者に対し、周知を図ることが望まれるものであること。
(5) 法では、短時間労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第24条第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、法第25条第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局長の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことにかんがみ、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。
紛争の解決の促進に関する特例(法第23条関係)
(1) 法第6条第1項、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に係る事業主の一定の措置についての短時間労働者と事業主との間の紛争(以下「短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争」という。)については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号。以下「個別労働関係紛争解決促進法」という。)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第24条から第27条までの規定によるものとしたものであること。
(2) これは、個別労働関係紛争解決促進法に係る紛争は、解雇等労使間の個別の事情に関わるものが多いことから、あっせん委員が労使の間に入って、その話し合いを促進するあっせんの手法が効果的であるのに対し、短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争は、当該事業所における賃金制度等に由来するものであり、継続的な勤務関係にある中で、差別的取扱い等かどうかの認定を行った上で必要な制度の見直し案等の調停案を示し、受諾の勧告を行うことが有効であるという、両者の紛争の性格が異なるためであること。
(3) 「紛争」とは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置に係る事業主の一定の措置に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。
 
パートタイム労働法第22条、第23条のまとめ
1.第22条(自主的解決の促進)
 パートタイム労働法の規定は、努力義務規定と強行規定(義務規定)が混在します。そして、強行規定には罰則が設けられていません。(本法第18条第1項違反の際の過料のみ第30条に規定があります。)パートタイム労働法の趣旨の根底には、同一価値労働同一賃金という価値観があり、そして過去の裁判例では、均等法違反により不法行為を構成するとしたものや、本法でいう「通常の労働者」と同一視できる短時間労働者に当たらないとして、労働者の請求を退けたものもあります。
 従来の裁判所の考え方は、私が承知している限りでは、①「賃金等の労働条件は雇用形態により異なることがあり、その差異は当然には不法でも違法でもない。」、②「今現在の日本には、各労働に対する価値(賃金)が確定しているわけではない。」、③「そのため、労働契約法やパートタイム労働法においても、通常の労働者と同一視できる場合に、均衡考慮を義務付けているに留まる。」、➃「これらは、あくまで同じ事業所内での通常の労働者と有期契約又は短時間労働契約の労働者とを比較考量して、その両者間の均衡を判断もしくは両者の労働条件の差異の合理性を判断しなければならないと規定しているに留まる。」、⑤「労働契約法及びパートタイム労働法とも、非正規労働者の通常の労働者(正社員等)への転換請求権を認めていない。」となっています。
 以上を総合勘案しての現状の問題点の考察を行います。
ア 民事の限界
 民事上で、不法行為(民法第709条)による損害賠償(パートタイム労働法第8条違反等)は、原則として金銭の支払いにより行います。※民法第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
 従って、通常の労働者と同視できるにもかかわらず、短時間労働者の賃金が不合理に低かった場合には、パートタイム労働法施行後部分の差額請求ができるに留まります。
イ 無期労働契約かつフルタイムの非常勤労働者の救済
 無期契約かつフルタイムの労働条件であれば、原則的に通常の労働者と労働条件が異なっても、労働契約法及びパートタイム契約法の対象外となってしまいます。もっとも、民法第90条、その他の法律に照らして、どのような判断になるのかはまだ未検討です。
ウ 担当行政機関の一層の措置
 パートタイム基本方針(平成27年厚生労働省告示第142号)においても、第2,1(5)(6)において、「短時間労働者の均等・均衡待遇が確保され、短時間労働を選択することによって不合理な取扱いを受けることのないよう、法の実効性をより一層確保することが必要である。」さらに「短時間労働者に特有の課題だけでなく、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の基本的な労働に関する法令が遵守されていない場合も依然としてみられるため、それらの法令遵守の徹底が必要である。」とされているとおり、法の規定の周知及び遵守について、更なる措置が必要であると考えられます。
エ 契約は契約当事者の信頼関係によってのみ締結・維持・変更できる
 労働契約法の考察の際に、労働契約(雇用契約)とはそもそも何かについて記述しました。契約は、契約当事者の意思の合致にほかなりませんから、行政機関等の第三者に頼らずに契約当事者間で紛争解決を図ることがむしろ合理的です。
2.第23条
 パートタイム労働法に規定される内容の紛争は、個別紛争解決法の紛争解決の対象外としています。これは、均等法、育児介護休業法においても同様であることは、均等法の記述の際に既に述べました。
 パートタイム労働法に規定される紛争解決手段の詳細については、次条以降で記述します。
 
 
以上でパートタイム労働法第22条、第23条を終了します。
 
 
パート労働法第22・23条