パートタイム労働法第6条

2015年05月23日 15:38

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第6条(労働条件に関する文書の交付等)

  事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。

 2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する時効のうち特定事項及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように務めるものとする。

 パートタイム労働法施行規則

 則第2条(法第六条第一項の明示事項及び明示の方法)

   法第六条第一項の厚生労働省令で定める短時間労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。

一 昇給の有無

二 退職手当の有無

三 賞与の有無

四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

2 法第六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを当該短時間労働者が希望した場合における当該方法とする。

一 ファクシミリを利用してする送信の方法

二 電子メールの送信の方法(当該短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)

3 前項第一号の方法により行われた法第六条第一項に規定する特定事項(以下本項において「特定事項」という。)の明示は、当該短時間労働者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、前項第二号の方法により行われた特定事項の明示は、当該短時間労働者の使用に係る通信端末機器により受信した時に、それぞれ当該短時間労働者に到達したものとみなす。

 

通達による確認(平成26年)
 労働条件に関する文書の交付等(法第6条関係)
(1) 労働条件の明示については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条において、賃金、労働時間その他の労働条件について労働契約の締結に際し明示することが使用者に義務付けられているが、短時間労働者に対する労働条件は、通常の労働者とは別に、かつ、個々の事情に応じて多様に設定されることが多いことから、雇入れ後に疑義が生じやすくなっている。そのため、法第6条第1項においては、労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のもののうち、特に短時間労働者にとって重要な事項であるものを厚生労働省令で特定事項として定め、事業主が文書の交付等により明示しなければならないものとし、それ以外の事項は同条第2項において文書の交付等の努力義務を課したものであること。
 なお、法第6条第1項の文書の交付等の義務に違反した者に対して、都道府県労働局長による助言、指導、勧告を行っても履行されない場合には、公表の対象となるとともに、法第31条に基づき、10万円以下の過料に処するものとされていること。
(2) 「特定事項」とは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無及び相談窓口であること(則第2条第1項)。
(3) 「昇給」とは、一つの契約期間の中での賃金の増額を指すものであること。したがって、有期労働契約の契約更新時の賃金改定は、「昇給」に当たらないものであること。
 「退職手当」とは、①労使間において、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確になっていること、②その受給権は退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化する債権であること、の要件を満たすものであればよく、その支給形態が退職一時金であるか、退職年金であるかを問わないものであること。
 「賞与」とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうものであること。
 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」(以下「相談窓口」という。)とは、事業主が労働者からの苦情を含めた相談を受け付ける先をいうものであること。
 「昇給」等については、これらの要件に該当するものであれば、その名称は問わないものであること。
(4) 昇給及び賞与が業績等に基づき実施されない又は支給されない可能性がある場合や、退職手当が勤続年数に基づき支給されない可能性がある場合は、制度としては「有り」と明示しつつ、その旨が明示されるべきものであること。
(5) 「昇給」に係る文書の交付等に当たって、「賃金改定(増額):有」等「昇給」の有無が明らかである表示をしている場合には法第6条第1項の義務の履行といえるが、「賃金改定:有」と表示し、「賃金改定」が「昇給」のみであるか明らかでない場合等「昇給」の有無が明らかでない表示にとどまる場合には同項の義務の履行とはいえないこと。
(6) 「相談窓口」は法第16条に基づき相談のための体制として整備することとされているものであること。
(7) 「相談窓口」の明示の具体例としては、担当者の氏名、担当者の役職又は担当部署等が考えられること。
(8) 「文書の交付等」の「等」とは、ファクシミリを利用してする送信、電子メールの送信のいずれかの方法によることを当該短時間労働者が希望した場合における当該方法が含まれるものであること。ただし、電子メールの送信の方法による場合には、短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができる場合に限られるものであること(則第2条第2項)。
 なお、これらの方法による場合を短時間労働者が希望した場合に限定したのは、これらの方法が文書の交付に比べて簡便な側面がある一方で、誤送信等のリスクも高いことによる。この「希望した場合」とは、短時間労働者が自ら事業主に対して申し出た場合のみでなく、事業主から電子メールの送信等による方法もあることを提示して、短時間労働者がそれを選択した場合も含まれるが、選択を強制することになってはならないものであること。
 また、「当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができる」場合とは、短時間労働者が望めばプリンターに接続して書面を作成することが可能である場合を指すが、これは事業主が送信した労働条件の明示にかかる事項の全文が見えることが必要であり、その場合には、電子メールのソフト等を搭載したパソコンに限らず、電子メール機能を有する携帯電話等でも差し支えないものであること。さらに、チャットのように受信直後に内容が消えてしまうようなものは適当ではなく、電子メールのソフト等において保存が可能なものであることが必要であること。
(9) ファクシミリを利用してする送信の方法により行われた明示は、短時間労働者が使用するファクシミリ機器に受信された時に到達したものとみなされるものであること。また、電子メールの送信の方法により行われた明示は、短時間労働者が使用する通信端末機器に受信された時に到達したものとみなされるものであること(則第2条第3項)。この場合の「通信端末機器」には、前述のとおり、パソコンのほか、携帯電話等も含まれるが、POPサーバーや携帯電話会社のメールセンター等、事業主と短時間労働者の間で行われる電気通信の途中に介在する場所に到達しただけではこの要件を満たさないものであること。なお、ファクシミリ及び電子メールに係る通信端末機器は、短時間労働者が所有しているものに加え、短時間労働者以外の者が所有しているものも短時間労働者がその利用を希望している場合には含まれるものであること。
 なお、事業主はファクシミリを利用してする送信の方法又は電子メールの送信の方法により明示を行う場合には、短時間労働者との間で明示がなされたかどうか争いが起こることを避けるため、後日、短時間労働者に受信したかどうかを確認する、短時間労働者が電子メールを受信した後に電子メールを返信させる等によりその到達状況を確認しておくことが望ましいものであること。
(10) 法第6条第2項は、特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外の事項についても文書の交付等により明示するよう努めるものとしたものであること。
(11) 法第6条第2項により、明示するよう努めるべき事項のうち、主要なものとしては、以下のような事項が挙げられるものであること。
イ  昇給(特定事項を除く。)
ロ  退職手当(特定事項を除く。)、臨時に支払われる賃金、賞与(特定事項を除く。)、一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
ハ  所定労働日以外の日の労働の有無
ニ  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
ホ  安全及び衛生
へ  教育訓練
ト  休職
(12) 労働基準法第15条第1項に基づく明示については、「労働契約の締結に際し」て履行することが求められている一方、法第6条に基づく明示については、「短時間労働者を雇い入れたとき」が履行時点であるが、法第6条に基づく明示については、労働基準法第15条第1項に基づく明示の履行に併せて行うことによっても、履行したものとなること。また、法第6条に基づく明示事項が、労働基準法第15条第1項に基づく明示により、又は就業規則を交付することにより明らかにされている場合は、当該措置で足りるものであること。
(13) 短時間労働者の労働契約に期間の定めがある場合であって、その更新をするときについては、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度法第6条の明示が必要となるものであること。
 
労働契約法の復習
 労働契約法第4条 
 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

法令上の書面作成及び提示の義務又は要請

ア 職業安定法の規定

  職業安定法は、公共職業安定所(ハローワーク)の設置や有料・無料職業紹介事業、公共職業訓練、労働者を募集する者に関する規制、労働力の需給調整に関する事等を定めています。

 そこで、同法第5条の3に規定されている、労働条件の明示義務者は、「公共職業安定所」「職業紹介事業者」「労働者の募集を行う者(個人と法人)「求職者募集受託者」「労働者供給事業者(労働組合等)」とされています。また、明示する対象者は、「求職者」「募集に応じて労働者になろうとする者」「供給される労働者」となっています。※労働者供給事業は、同法で禁止されています(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。ただし、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けた場合には、無料の労働者供給事業を行えます。また、労働者派遣業も労働者供給事業の一つですが、労働者派遣法の規定に従って行うことができます。

 さらに、明示すべき労働条件としては、「従事すべき業務の内容」「賃金」「労働時間その他の労働条件」を明示しなければならないと規定されています。職業安定法施行規則第4条の2には、この労働条件の明示に関して、さらに詳細に規定しています。

 則第4条の2 法第5条の3第3項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

二 労働契約の期間に関する事項

三 就業の場所に関する事項

四 始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間に関する事項

五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第8条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項

六 健康保険法(大正11年法律第70号)による健康保険、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)による厚生年金、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法(昭和49年法律第116号)による雇用保険の適用に関する事項

2 法第5条の3第3項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項(以下この項及び事項において「明示事項」という。)が明らかとなる次のいずれかの方法とする。ただし、職業紹介の実施について緊急の必要があるためあらかじめこれらの方法によることができない場合において、明示事項をあらかじめこれらの方法以外の方法により明示したときは、この限りでない。

一 書面の交付の方法

二 電子情報処理組織(書面交付者(明示事項を前項の方法により明示する場合において、書面の交付を行うべきものをいう。以下のこ号において同じ。)の使用に係る電子計算機と、書面被交付者(明示事項を前号の方法により明示する場合において、書面の交付をうけるべき者をいう。以下この号および次項において同じ。)の使用に係る電子計算機とを電気通信回路で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法のうち書面交付者の使用に係る電子計算機と書面被交付者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、書面被交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法(書面被交付者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)によることを書面被交付者が希望した場合における当該方法

3 前項第2号の方法により行われた明示事項の明示は、書面交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されたときに当該書面交付者に到達したものとみなす。

4 求人者は、公共職業安定所から求職者の紹介を受けたときは、当該公共職業安定所に、その者を採用したかどうかを及び採用しないときはその理由を、速やかに、通知するものとする。

※上記第2項の規定は、求人者等は原則労働条件を書面で求職労働者に交付すること(第1号)、また求職労働者が希望しかつプリントアウトできる環境であれば、求職労働者宛の電子メールでも明示できる(第2号)旨規定しています。

イ 労働基準法の労働条件明示規定

 労働基準法では、採用する労働者に採用時(労働契約締結時)に労働条件の明示を義務付けています。では、労働契約法第4条第2項は、書面による明示をなぜ努力義務としているのかが疑問です。それは、労働基準法の明示義務が労働契約の締結時に限られていて、求職者(求人への応募者で採用未決者)や採用後の労働者向けの労働条件の明示が労働基準法の対象外のため、パートタイム労働法の規定も踏まえつつ、労働契約法でこのように定めたものです。

さて、労働基準法の第15条を確認します。

労働基準法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法施行規則第5条 使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする、ただし、第1号の2に掲げる事項については期間の定めがある労働契約であって当該労働契約の期間終了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第4号の2から第11号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りではない。

一 労働契約の期間に関する事項

一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて終業させる場合における就業転換に関する事項

三 賃金(退職手当及び第5号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期並びに昇給に関する事項

四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定。計算及び支払の方法並びに支払いの時期に関する事項

五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

七 安全及び衛生に関する事項 

八 職業訓練に関する事項

九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

十 表彰及び制裁に関する事項

十一 休職に関する事項

2 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める事項は、前段第1号から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

3 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。

 さて、労働基準法で義務付けられている労働者の採用時(労働契約の締結時)の書面の交付は、労働契約の効力に影響しません。従って、労働条件の明示を行っていない使用者もママ見受けられます。ただし、労働条件の明示義務違反は、30万円以下の罰金刑が規定(労働基準法第120条)されています。労働条件を書面で交付する場合に、その様式は自由であり、また、就業規則の関係規定を明示してそれを交付する方法でも差し支えありません。なお、就業規則の法定された記載事項(絶対・相対記載事項)は、上記の明示事項と内容が似ています。

ウ パートタイム労働法における労働条件の明示

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定る方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。

2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。

 パートタイム労働者に関しては、就業規則を別途作成すること、短時間労働管理者を設置すること、労基法の明示項目の規定に加え「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」について書面で明示する義務(罰則有り)があり、その他の労働条件についても書面で明示するように努めなければならないことになっています。

○労働条件の明示に関する問題点

ア 法の不知

 使用者が、労働者の採用時に労働基準法等の規定に従い、労働条件の明示を行うべきことは、大部分の事業主は承知していると思います。しかしながら、アルバイト等の労働者への文書の不交付や知っていてあえて文書交付を行わない場合もあるかと思います。そもそも、求職労働者側からすれば、採用決定時に会社から労働契約書(又は労働条件通知書)や就業規則等の交付、或いは提示がない場合には、その会社の就業管理他の管理状況に不安を持つかと思います。たかが文書、されど文書です。同じ会社で、何十年も勤務していれば労働条件が度々変更されることが通常かと思います。どうせ変わるものなら、労働条件の書面交付は「無駄」という観点もありますが、そこは、まずもって法令遵守です。一時が万事、几帳面に法令を守ろうとする態度こそが、企業の社会的信用を構築します。更には、法令遵守により、リスク管理の観点からも会社の大怪我防止につながります。

イ 募集時の労働条件(職業安定法)と採用時の労働条件(労働基準法)

 募集時の労働条件に虚偽の内容を書き込み、採用時には別の労働条件を提示し、または求職者に承諾させるケースがあります。また、募集時の労働条件と全く異なる労働条件で就労させるケースがあります。裁判になる場合もありますが、判決はケース・バイ・ケースです。会社の信用で求職者は判断せざるを得ないわけですが、募集時と異なる労働条件で働かされては、すぐに辞めざるを得ない場合も起こります。求職者としては、一般的に募集時と採用時の労働条件は、別物であると考えておく必要があります。他方、求人者側は、良い人材が応募してくれば労働条件の詳細の説明は後回しにして、まずは応募者の入社の意思確認を行うべきと考えるかと思います。昨今、離職率の問題が社会問題化していますが、新卒者であろうが中高年の再就職者であろうが、会社との信頼関係がその会社で長く勤務するための必要条件です。決して、雇ってやってる、置いてやっている訳ではなく、双務契約たる労働契約関係に基づいて、互いに債務の履行(労働者は使用者の定める合理的な規則や指揮命令に従って労務を提供し、使用者は契約内容以上の賃金を支払います。)を行っているということが本質です。繰り返しですが、契約である上は「信義則が根本原理」である旨が労働契約法第3条に規定されています。

パートタイム労働法第6条のまとめ

 パートタイム労働法第6条の規定により、労基法第15条及び同法則第5条の項目に加えて短時間労働者に明示しなければならない項目は次の通りです。

一 昇給の有無

二 退職手当の有無

三 賞与の有無

四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

 

同じく、パートタイム労働法第6条第2項の規定により、短時間労働者に明示するように務める

べき項目は次の事項です。 

 イ  昇給(特定事項を除く。)
 ロ  退職手当(特定事項を除く。)、臨時に支払われる賃金、賞与(特定事項を除く。)、一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
 ハ  所定労働日以外の日の労働の有無
 ニ  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
 ホ  安全及び衛生
 へ  教育訓練
 ト  休職
 
 法第6条第1項の明示義務がある項目については、短時間労働者への労働条件の明示を怠ると10万円以下の過料に処される規定(第47条)があります。
 
 
以上で、パートタイム労働法第6条を終了します。
 
 
パート労働法第6条