パートタイム労働法第8条

2015年05月24日 14:38

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第8条(短時間労働者の待遇の原則)

 事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

通達による確認(平成26年通達)

・短時間労働者の待遇の原則(法第8条関係)
(1) 平成19年の法改正により、短時間労働者と通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図るため、通常の労働者と就業の実態が同じ短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止が規定されるとともに、就労の実態が一定の類型に該当する短時間労働者ごとに、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して、事業主がどのような措置を講ずべきかを示す規定が整備された。しかしながら、短時間労働者の働き方が一層多様化してきている中で、依然として、その待遇が必ずしも働き・貢献に見合ったものとなっていない場合もあること、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)により、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」の規定(労働契約法(平成19年法律第128号)第20条)が新たに設けられたこと等を踏まえ、労働契約法第20条の規定にならい、法第8条において、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方として、すべての短時間労働者を対象とする短時間労働者の待遇の原則を規定したものであること。
(2) 法第8条は、事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないという短時間労働者の待遇の原則を明らかにしたものであること。
 したがって、短時間労働者と通常の労働者との間で待遇の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、当該待遇の相違が法第8条に列挙されている要素を考慮して、不合理と認められるかどうかが判断されるものであること。
 また、法第8条の不合理性の判断の対象となるのは、待遇の「相違」であり、この待遇の相違は、「短時間労働者であることを理由とする待遇の相違」であるが、法は短時間労働者について通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ろうとするものであり、法第8条の不合理性の判断の対象となる待遇の相違は、「短時間労働者であることを理由とする」待遇の相違であることが自明であることから、その旨が条文上は明記されていないことに留意すること。
(3) 短時間労働者と通常の労働者との「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同の判断は、第1の3の(2)ロ及びハに従い行うものであること。
 また、「その他の事情」については、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。
(4) 「待遇」には、すべての賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等労働時間以外の全ての待遇が含まれること。
(5) 法第8条の不合理性の判断は、短時間労働者と通常の労働者との間の待遇の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の待遇ごとに判断されるものであること。
(6) 法第8条は、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方を明らかにしたものであることから、法第18条に基づく事業主に対する報告の徴収並びに助言、指導及び勧告は、事業主が講ずべき措置を個々具体的に規定している法第9条から第12条までの規定について行い、直接法第8条について行うものではないこと。
 しかしながら、事業主は、法第8条で明らかにされた考え方を念頭に、短時間労働者の雇用管理の改善を図ることが期待されること。
(7) 本条は、労働契約法第20条にならった規定であること。労働契約法第20条については、平成24年8月10日付け基発第0810第2号「労働契約法の施行について」において「法第20条は民事的効力のある規定であること。法第20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、法第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、期間の定めのない労働契約(以下「無期契約」という。)を締結している労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。」とされていること。
(8) また、同通達において、労働契約法第20条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、「有期契約労働者が労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける事実を主張立証し、他方で使用者が当該労働条件が期間の定めを理由とする合理的なものであることを基礎づける事実の主張立証を行うという形でなされ、同条の司法上の判断は、有期契約労働者及び使用者双方が主張立証を尽くした結果が総体としてなされるものであり、立証の負担が有期契約労働者側に一方的に負わされることにはならないと解されるものであること」とされていること。
 
パートタイム労働法(以下「本法」)第8条の分解分析
 ① 差別待遇の合理性
  通常の労働者と短時間労働者の間の待遇の相違は、不合理と認められるものであってはならない
  ※不合理の指摘は、労働者側が行い、不合理に該当しない立証は使用者側が行うと想定される
 ② 通常の労働者と短時間労働者の区分
  通常の労働者と短時間労働者の区分けは、本法第2条の規定により判断されること
 ③ 待遇の相違の合理性判断の前提
  ア 当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をそれぞれ判断する
  イ 次に、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮する
  ウ ア及びイを判断した後、通常の労働者と短時間労働者間の待遇の相違の合理性の判断を行う
   従って、短時間労働者の労働条件が通常の労働者と異なる場合でも、直ちに不法行為となるわけではないこと
 
裁判例の考察
ア 平成18年(ワ)3346 京都地裁判決 判決文抜粋
・判示事項の要旨:嘱託職員に対して一般職員より低い賃金処遇をしたことが違法ではないとされた事案

・判決の理由抜粋:このような非正規雇用者の賃金について,一定の法律上の枠組みが設定されたのは短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年12月1日施行)が初めてであり,同法においては,「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短期時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし,もってその福祉の増進を図り,あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とすることを定め(1条),賃金等の待遇に関しては,「事業主は,業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事務所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって,当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれる者(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については,短時間雇用者であることを理由として,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,差別的取扱いをしてはならない」と規定し(8条),通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当しない短時間労働者については,通常の労働者との均衡を考慮して,その雇用する短時間労働者の職務の内容,職務の成果,意欲,能力又は経験等を勘案し,その賃金を決定するように務めるものとすることが規定された(9条)にすぎず,これらの定めにより通常の労働者と同視すべき短時間労働者については同一価値労働同一賃金の原則を貫徹するような規定が置かれたもののそこまでの事情が認められないパートタイマーについては努力義務規定が置かれたにすぎないことは明らかである

 また,近時制定された労働契約法においても,その3条2項で均衡処遇の原則(労働契約は,労働者及び使用者が,就業の実態に応じて,均衡を考慮しつつ締結し,又は,変更すべきものとする。)と規定されているにすぎず,同一価値労働同一賃金の原則の採用を正面から義務付けるような規定は置かれていない
 そして,低賃金を余儀なくされているパートタイマーへの対策として制定された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の規定内容及びその後制定された労働契約法の内容にかんがみると,これらの法律の施行後においても,いまだ労働基準法4条にILO100号条約等の条約の内容をそのまま反映させるような解釈をすることは困難である。
 しかしながら,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条,10条の趣旨を,私人間の雇用関係を律するにあたって参酌することは許されるものと解される。そして,本件全証拠によるも,現時点の日本において,特定の労働がいかなる価値を有するかを評価する基準が確立し,それに対していかなる水準の賃金が支払われるべきかの判断基準が確立しているとはいえないこのことは,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律及び労働契約法が同一価値労働に対して同一賃金の支払をすべき旨の文言を用いず,均衡を考慮するとの文言を用いていることからも窺える。
 さらに,本件全証拠によっても,日本において成果主義賃金の原則が貫徹されているとまでは認められず,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に反するという事情がある場合を除けば,社会通念上年功的要素を考慮した賃金配分が行われることが違法視されているとまでいうことは困難である。
 以上によれば,憲法14条及び労働基準法4条の根底にある均等待遇の理念,上記各条約等が締約されている下での国際情勢及び日本において労働契約法等が制定されたことを考慮すると,(公序というか否かはともかく)証拠から短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に反していることないし同一価値労働であることが明らかに認められるのに,給与を含む待遇については使用者と労働者の交渉結果・業績等に左右される側面があること及び年功的要素を考慮した賃金配分方法が違法視されているとまではいい難いことなどを考慮してもなお,当該労働に対する賃金が相応の水準に達していないことが明らかであり,かつ,その差額を具体的に認定し得るような特段の事情がある場合には,当該賃金処遇は均衡処遇の原則に照らして不法行為を構成する余地があるというべきである
 
参考ILO100号:同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約

        日本の批准状況:1967年8月24日批准

概要:この条約は同一の価値の労働に対しては性別による区別を行うことなく同等の報酬を与えなければならないと決めたものである。条約は報酬について定義を下し、金銭であると現物であるとを問わず、直接または間接に使用者が労働者に対して支払う報酬で労働者の雇用から生ずるものを含む、とする。

報酬を同一労働に対して男女同等に支払う、という原則を確立する方法として、

  1. 国内法令、
  2. 法令によって設けられまたは認められた賃金決定制度、
  3. 使用者と労働者との間で締結された労働協約、
  4. これらの各手段の組み合わせ、を規定している。

 更に、行うべき労働を基礎とする職務の客観的評価がこの条約の規定を実施するのに役立つ場合にはこれを促進する措置をとることとする。   

※労働基準法第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

イ 平成24年(ワ)557 大分地裁判決 判決文抜粋

事案の要旨

 本件は,使用者である被告との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者である原告が,被告が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶したこと(以下,更新の申込みを拒絶したことを「更新拒絶」,それによって賃金を得られなかった期間を「更新拒絶期間」ということがある。)は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,被告は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされたと主張して(労働契約法19条),被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,1),更新拒絶期間中の月額賃金(前記第1,2),更新拒絶期間中の賞与(前記第1,3),更新拒絶による慰謝料(前記第1,4)を請求するとともに,被告が原告に対して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」という。)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して,同項に基づき,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認(前記第1,5),被告の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,6),同項に違反する差別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している(前記第1,7ないし10)事案である。なお,原告は,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求(前記第1,5)の理由として,準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束が被告との間で成立したことも主張しており,また,パートタイム労働法8条1項の要件を充足する場合には,期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条も充足すると主張する。

 
判決の理由抜粋
 前記2(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の労働契約は,反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約(パートタイム労働法8条2項)に該当するものと認められる。そして,原告は,「事業の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって,当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)」(パートタイム労働法8条1項)に該当したものと認められる。
 前記(2)のとおり,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当すると認められ,年間賞与額について正社員と準社員に40万円を超える差を設けることについて合理的な理由があるとは認められず,このような差別的取扱いは,短時間労働者であることを理由として行われているものと認められる。
 正社員,準社員のいずれについても,休日は,就業規則により,日曜日,年末年始(12月31日ないし1月3日),国民の祝日,週休日とされている(乙10の14条,乙11の11条)。しかし,週休日の日数が,平成23年7月1日から平成24年6月30日までにおいて,正社員は39日であるのに対し,準社員は6日であり,30日を超える差がある(乙10の14条,乙11の11条)。この差の日数について,準社員が勤務した場合は通常の賃金しか得られないのに対し,正社員が勤務すれば時間外の割増賃金を得ることができるから,この点において,準社員は,賃金の決定について,正社員と比較して差別的取扱いを受けているものと認められる。
 しかし,上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上,パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり,同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから,上記の地位確認の請求はいずれも理由がないものと解される。
 なお,原告は,平成24年7月1日から,変更後の準社員就業規則,準社員賃金規程の適用を受け,1日の所定労働時間が正社員と同じ8時間となり,1年の勤務日数も正社員と同じ258日となったから(前記5(2)),パートタイム労働法2条の短時間労働者に該当しなくなったものと認められ,平成24年7月1日以降については,同法8条1項の適用の前提を欠くことになり,この点からも,同項に基づく地位確認の請求はできない。
 したがって,原告の上記地位確認の請求は,いずれも理由がない。
 
 パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ,原告は,被告に対し,その損害賠償を請求することができる。

 被告は,パートタイム労働法8条1項に違反したことによって不法行為が成立するとすれば,その損害は,通常の労働者の賃金と短時間労働者の賃金の差額であるとした上で,賃金請求権の消滅時効期間は2年であるから,パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効も2年と解すべきであると主張する(前記第3,7(1))。しかし,パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害の額が賃金の差額と同額となるとしても,不法行為に基づく賠償請求権の消滅時効は,民法724条により3年と解すべきであり,被告の上記主張は,採用することができない。

事実認定

① 会社の概要

 被告は,石油製品,同副製品その他の保管及び搬出入作業,貨物自動車運送事業,貨物利用運送事業等を目的とする株式会社である(当事者間に争いがない。)。被告の従業員は,就業規則等により,期間の定めのない労働契約を締結した正社員,期間の定めのある労働契約を締結した準社員,冬期需要増に対する業務遂行のために採用された,期間の定めのある労働契約を締結した期間社員などに分類されている

② 原告労働者

 原告は,平成16年10月15日,被告との間で,同日から平成17年4月14日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇用された。

 原告は,被告との間で,平成17年10月1日から平成18年3月31日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇用された(当事者間に争いがない。)。

 原告は,被告との間で,平成18年4月1日,同日から平成19年3月31日までの1年間を期間とする労働契約を締結し,準社員として被告に雇用され,以後,原告と被告はこの契約を更新し,平成24年4月1日には,同日から平成25年3月31日までの1年間を期間とする労働契約に更新した(当事者間に争いがない。)。
 
 期間社員,準社員であった原告の職務は,貨物自動車の運転手として,タンクローリーによる危険物等の配送及び付帯事業に従事することであり,正社員の職務と同じであった(当事者間に争いがない。なお,後記第3,5(2)のとおり,被告は,転勤等,役職への任命等の点において,準社員は正社員と異なると主張する。)。
 
 ③ 紛争調停、労働審判
 原告は,平成23年11月7日,前記アの紛争についてパートタイム労働法22条に基づいて調停の申請を行い,大分紛争調整委員会は,平成24年1月24日,被告に対し,調停案受諾の勧告をしたが(甲8),被告はこれを受諾しなかった。
 原告は,平成24年5月1日,当庁に労働審判を申し立て,同年8月2日,労働審判が行われ,被告は,同月9日,異議を申し立てた(当裁判所に顕著な事実)。
 
 ➃ 雇い止め
 被告は,平成25年3月23日,原告に対し,同月31日をもって労働契約を終了し,労働契約の更新をしないことを通知した。その通知書には,労働契約の更新をしない理由として,原告が本件訴訟において様々な点において事実と異なることを主張していること,本件訴訟と無関係の第三者である被告の従業員を多数本件訴訟に巻き込んでいることが記載されていた。
 
 原告は,平成25年3月25日,労働契約の更新をしないとの通知の撤回を求めたが,被告は,同日,原告に対し,撤回の意思はない旨回答した。
 
二つの裁判例から読み取れる本法第8条の要旨まとめ
 

一審判決ではありますが、パートタイム労働法の解釈について参考にできる判断がいくつかあります。

ア パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり,同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解される

イ 労働契約法においても,同一価値労働同一賃金の原則の採用を正面から義務付けるような規定は置かれていない

ウ 現時点の日本において,特定の労働がいかなる価値を有するかを評価する基準が確立し,それに対していかなる水準の賃金が支払われるべきかの判断基準が確立しているとはいえない

エ 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については同一価値労働同一賃金の原則を貫徹するような規定が置かれたもののこまでの事情が認められないパートタイマーについては努力義務規定が置かれたにすぎないことは明らかである

オ パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ,原告は,被告に対し,その損害賠償を請求することができる。


 

以上でパートタイム労働法第8条を終了します。

 

パート労働法第8条