今般の安保法制に関する考察
私は、特段の政治思想や宗教上の信仰を有する人間ではありませんが、今般の本法案に反対の野党や団体の主張があまりにも「不合理」「的外れ」であると判断しますので、以下に本法案について記述します。
なお、あえて述べれば、政治的にはリベラル(自由主義)であり、宗教的にはスピノザの神(自然そのものが神であるという信仰・思想)を持っています。ここでいう、リベラルとは日本で考えられている「左翼主義」的な思想とは異なります。
労働法とは、全く無関係の記述ですがご容赦ください。
砂川事件判決が日本国の最高裁判所が日本国憲法第九条について唯一判断した判例である。
そこで、砂川事件判決の判決文について、考察したいと考えたので以下に記述する。
判決文の出典は、最高裁判所HPの裁判例情報
「砂川事件」https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/816/055816_hanrei.pdf
主 文
原判決を破棄する。
本件を東京地方裁判所に差し戻す。
理 由(抜粋)
一、先ず憲法九条二項前段の規定の意義につき判断する。そもそも憲法九条は、わ
が国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去における
わが国の誤つて犯すに至つた軍国主義的行動を反省し、政府の行為によつて再び戦
争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制
定したものであつて、前文および九八条二項の国際協調の精神と相まつて、わが憲
法の特色である平和主義を具体化した規定である。すなわち、九条一項においては
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを宣言し、
また「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決
する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定し、さらに同条二項においては、
「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦
権は、これを認めない」と規定した。かくのごとく、同条は、同条にいわゆる戦争
を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、
しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定さ
れたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものでは
ないのである。
※自衛隊の合憲性の判断「日本国憲法第九条第二項は 『無防備、無抵抗』を
定めたものではない。自衛隊による国防は、憲法九条に反しない。」
憲法前文にも明らかなように、われら日本国民は、平和を維持し、専制と隷従、
圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとつとめている国際社会において、名誉あ
る地位を占めることを願い、全世界の国民と共にひとしく恐怖と欠乏から免かれ、
平和のうちに生存する権利を有することを確認するのである。
しからば、わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要
な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことと
いわなければならない。すなわち、われら日本国民は、憲法九条二項により、同条
項にいわゆる戦力は保持しないけれども、これによつて生ずるわが国の防衛力の不
足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼するこ
とによつて補ない、もつてわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。
そしてそれは、必ずしも原判決のいうように、国際連合の機関である安全保障理
事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではなく、わが国の平和と安全を
維持するための安全保障であれば、
「その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即
応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであつて、憲法九
条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、
何ら禁ずるものではないのである。」※安保条約の合憲性
そこで、右のような憲法九条の趣旨に即して同条二項の法意を考えてみるに、同
条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自ら
その主体となつてこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条一項において
永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないよ
うにするためであると解するを相当とする。
※日本国憲法第九条第二項は、我が国がいわゆる『侵略戦争』を行うことを禁じ
たものであると解するのが相当
従つて同条二項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否
かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつ
てこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の
戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにい
う戦力には該当しないと解すべきである。
※在日米軍は、日本国憲法第九条第二項の「陸海空軍その他の戦力」にあたらない
ところで、本件安全保障条約は、前述のごとく、主権国としてのわが国の存立の
基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、
その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを
承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。
それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判
所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従つて、一見極めて明白
に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであ
つて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認
権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に
委ねらるべきものであると解するを相当とする。
※最終的には国政選挙又は法に基づく国民投票等により判断されるべきである。
そして、このことは、本件安全保障条約またはこれに基く政府の行為の違憲なり
や否やが、本件のように前提問題となつている場合であると否とにかかわらないの
である。」
※集団的であれ、個別的であれ、「憲法の禁ずる侵略戦争以外の目的」たる自衛
(国防)という目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実
情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりである。
(判決文を抜粋、加筆)
以下、自著
1.最高裁判所の本法に関する違憲審査について(本法成立後の裁判)
日本国憲法 第八十一条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
最高裁判所の判例は、憲法・法令・条例等と同様に裁判規範をなすとされてい
るため、今般の安保関連法案の成立後、仮に反対する人々が裁判を起こしても砂
川事件判決の判旨が踏襲されると見込まれ、
ア 原審は、「裁判所の司法審査権の範囲を逸脱し同条項および憲法前文の解釈
を誤つた」ものであり無効(本判決の抜粋)
イ (国防)という目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情
勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる為、(安保条約
は)合憲である。※本法に関する違憲裁判も同様の判決が予測される。
ウ 最高裁の合憲違反の判断は、これを承認した国会の高度の政治的ないし自由
裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。(安保条約の合憲性判断について)
それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司
法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり従つて、一見
極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の
範囲外のものであるから、最高裁判所は違憲審査をしない。
※ここで、「一見極めて明白に違憲無効であると認められる」とは、上記の
判決文の抜粋に記述があるように、日本国政府が他国の侵略戦争を行う意図
(現在の中国のような意図を言います。)を持って自衛隊を国外に派遣するこ
とを指します。
2.中国脅威論の信憑性について
現在中国は、戦後すぐに行った「チベット、ウイグル、朝鮮半島北部(現在の北朝)
鮮」の侵略に加えて、南サ諸島及び西サ諸島(尖閣諸島をはじめとする沖縄県全体を
中国の領土とする意図を含む)について侵略の意思をもって軍事行動を始めています。
もちろん、彼らの言い分は「人民の解放」及び「歴史的に中国の領土・領海」ですが、
チベットやウイグルの人々の弾圧や人権無視は、多くの日本国民が知るところです。
そして場合によっては、本来の中国人も弾圧・粛清されています。
他方で、韓国人の一部も対馬(長崎県対馬市)が韓国の領土であると主張してい
る事実があります。これを放置すれば竹島と同様の状況になる恐れすらあります。
それらの事実を踏まえ、日本国の国防に反対し、またアメリカ海兵隊部隊の駐留
等に反対する一部の沖縄県民に、『本気で「チベット」になりたいのか』を一度聞
いてみたいと思っています。
蛇足ですが、長距離の展開能力を有するチルドローター機の配備に最も反対して
いるのは中国政府です。
参考 南シナ海の状況(防衛省HP)
https://www.mod.go.jp/j/approach/surround/pdf/ch_d-act_20150529.pdf
参考2:安保関連法案の新旧対照表等 出典:「日本国内閣官房HP」
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html
3.憲法学者の意見について
ある統計によれば、自衛隊の存在自体が違憲であると憲法学者の約六割が
主張していると言われています。本法案に反対する野党等の論拠として、
憲法学者の多数が本法案が違憲であると主張しているというものがありま
すが、そもそも自衛隊そのものが違憲であるとの見解を持っている憲法
学者も多く、本法の審査の前提を欠くと言わなくてはなりません。
さらに、今般の法案に反対する集団の反対デモ行進においては、日本国
の国旗を掲げている団体は皆無であり、真に日本国の将来を憂いて反対
運動を行っている人々であるとは、到底信じられません。
今週中(平成27年9月19日まで)の本法の成立を祈願いたします。