休日・休憩とは何か?

2015年05月03日 10:35

休日・休憩とは何か?

 「休日とは休みの日であり、休憩とは休み時間である」当たり前ですが、実は難しい問題を含んでいます。今回も、自著「労働基準法の研究」を引用しつつ記述します。

 

1 休日とは何か?

労働基準法

   第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

     2 前項の規定は、四週間を通じ四回以上の休日を与える使用者については適用しない。

○休日の定義

ア 休日とは何か?

 休日とは、労働契約上「就労義務のない日」とされており、使用者から特別の要請(就業規則に休日労働のを命じることがある旨、また必要に応じ休日の振替を行う旨が規定されていれば、その指示に従う義務があります。)が無い限り、労働者は休日に就労する義務がありません。※労働基準法の研究p293

 また、休日は原則として歴日とされており、午前0時から午後12時までの24時間が原則の休日とされています。従って、法定休日の前日の時間外労働が長引いて午後24時を超えた場合は、労働時間帯が休日に食い込んでいますから、日付を超えた時点で単なる時間外深夜労働ではなく休日深夜労働となります。

イ 法定休日と法定外休日(私定休日)

 法定休日とは、労働基準法第35条に規定されている通り、毎週1回の休日(同条第1項、少なくとも1日)又は4週を通じて4日の休日(同条第2項、4週間に4日以上)のことを法定休日と言います。

 一方、法定外 休日(私定休日)とは、毎週1回の休日若しくは4週4日を超える休日のことを意味しています。両者の違いは、割増賃金の支払義務の有無及び、そもそも、法定外休日労働の場合は法的な制限はありませんが、法定休日の場合には、労働基準法第35条により法定休日労働をさせることが禁止されているという点と法定の割増賃金の支払義務が生じる点が根本的に異なります。

 ※法定休日労働を命じるための手続きとして、36協定(いうまでもなく、労働基準法第36条に規定される労使協定のことを指します。)の締結と労働基準監督署への届出(刑事免責)と就業規則への休日労働命令への応諾義務の規定(民事効力の根拠)が必要です。

ウ 毎週1回の休日の意味は何か?

 「毎週」とは、歴週又は就業規則等で定められた週のことを言います。歴週とは、毎週日曜日から土曜日までの7日間のことを言います。また、就業規則で週の定義を「毎週月曜日から土曜日」等と定めれば、その7日間が「毎週」となります。その、毎週の7日間にかならず少なくとも1日(原則歴日)休日があれば、労基法第35条第1項の要件を満たします。

 具体的には、今月(平成27年5月)の例で言いますと、週を歴週、休日を○印とすると、次の暦の通りであれば法定休日の要件を満たします。

                          1 2

               3 4  5 6  ⑦  8 9

              10 11 ⑫ 13 14 15 16

              17 18 19 20 21 22 ㉓

              ㉔ 25 26 27 28 29 30

              31 1 2  3  4 5  ⑥

エ 4週4日の休日(労基法第35条第2項)とは何か?

 就業規則で4週4日の休日制をとる旨及び4週の起算日を定めることで、毎週1日の休日を与えなくとも良いことになっています。1か月単位の変形労働時間制を採用している場合などに、多くみられます。具体的には、次のような場合です。※平成27年5月の例、起算日は5月1日で休日は○印です。

                          1 2

               3 4  5 6  7  8 9

              10 11 12 13 14 15 16

              17 18 19 20 22 22 ㉓

              ㉔  ㉕  ㉖ 27 28 29 30

 上記の場合、4週とは5月1日を起算日とする5月1日から5月28日までの28日間です。その間に、23日、24日、25日の4日間を休日としていますので、労基法第35条第2項の規定を満たします。

○休日の歴日原則の例外は何か?

ア 三交替制の場合

 三交替制の勤務の場合は、三交替制が就業規則で定められており、かつ制度として運用されていれば、「継続する24時間」を休日として取り扱ってよいとされています。(昭和63年基発150号)

イ 旅館業の場合の例外

 原則は、歴日を以って休日とすべきであるが、「フロント係、調理係、仲番及び客室係」に限り、次の①及び②の要件を満たす場合には、ニ歴日にまたがる休日を例外として認めるとされています。(昭和57年基発446号他)

①正午から翌日の正午までの24時間を含む継続30時間の休憩時間が確保されていること。ただし、この休憩時間は、当分の間に限り、正午から翌日の正午までの24時間を含む継続27時間以上であっても差し支えないものとすること。

②休日をニ歴日にまたがる休日という形で与えることがある旨およびその時間帯があらかじめ労働者に明示されていること。

ウ 休日の歴日原則の例外、職業運転手の場合

 トラック、バス、タクシー運転手の労働時間に関する基準は、それぞれ告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、平成元年2月9日労働省告示第7号)の形で示されています。

 同改善告示によれば、職業運転手の休日は原則として連続する32時間以上(少なくとも30時間以上)が必要とされています。

○振替休日とは何か?

 就業規則にあらかじめ規定しておくことで、休日の振替をすることができます。休日の振替を行うと、本来、休日の予定とされた日は労働日に変わり、事前に指定された別の労働日が休日となります。この場合、法定休日労働が生じる恐れや一週の総労働時間が40時間を超えてしまう恐れが生じますので、労働時間管理を含めた休日の振替をする必要があります。ただし、休日の度々の変更は労働者にとって生活の予定が立たず好ましくありませんので、休日の予定はあくまで事前の勤務表等で確実に確定しておくべきものです。

 ところで、毎週1回の休日又は4週4日の法定休日は別の期間(週又は4週)に振替できませんので、法定休日に当たる日の労働はあくまで「法定休日労働」となります。逆に言えば、振替休日はあくまで法定外休日又は同じ週内或いは4週内に止め、毎週1回以上または4週4回以上の休日は必ず確保しておく必要があります。※確保できない場合には、36協定の手続き及び休日割増賃金の支払いが必須となります。

○代休とは何か?

 労基法第35条の解釈上、法定休日出勤を命じたのちに他の日を代わりに休日とする場合は「代休」といわれ、元々の休日出勤の性質はあくまで休日労働のままで変わりません。

○休日の出張(移動や宿泊)、国民の祝日・日曜日と労基法の休日

 休日の出張(電車等での移動や宿泊)はあくまで休日であり、休日労働ではないとされています。(昭和23年基発461号)ただし、労災上の取り扱いは異なります。

 一方、国民の祝日(「国民の祝日に関する法律」、昭和23年7月20日法律第178号)や日曜日は労基法第35条の休日とは無関係となります。(昭和41年基発739号)

○法定休日1週1日以上と1週40時間の法定労働時間の整合性について(労働基準法の研究p300より)

 ところで、1週の法定労働時間は40時間(又は44時間)ですので、1日の法定労働時間8時間とを考え合わせると、8時間×6日(7日ー1日)=48時間となります。

 つまり、1日8時間労働にこだわれば週休2日制をとらなければなりませんし、週6日勤務にこだわれば1日の労働時間は40時間÷6日=6.66・・・時間(6時間40分)以内としなければなりません。これは、戦後すぐの労基法制定時に、「1日8時間、1週48時間労働制」が法に規定されたことに由来します。つまり、労基法制定時には1日8週間1週48時間として、週休1日制と整合性がとれていたわけです。その後。昭和63年に1週46時間、平成3年から1週44時間制となり、平成5年に1週40時間制が実施されました。

 その結果特例措置対象事業(1週44時間)を除き、1週40時間の法定労働時間を1日8時間の法定の範囲内で、各日の所定労働時間として割り振るという考え方が現行労基法の考え方です。

○休日に30分のみ労働したらどうなるか?

 休日に30分労働したら、その日はもはや休日ではなくなります。ただし、法定休日に30分労働した場合は、あくまで法定休日労働です。休日とは、歴日の全部が「完全に労働義務が免除されている」のであり、一部でも労働すれば休日の要件を満たしません。

 ところで、休日は歴日(午前0時から午後12時までの24時間)といっても、実際は日付が変わって通勤のため家を出るまでの時間及び通勤を終わって帰宅してから午後12時までの間は、就労が免除されています。実労働時間が概ね8時間から10時間とすれば休憩時間1時間から1時間半、通勤時間往復1時間とすると、家を出てから帰宅まで概ね10時間(労働時間8時間、休憩1時間、通勤1時間)から12.5時間(実働10時間、休憩1.5時間、通勤1時間)となります。そうすると、休日には概ね38時間(=24時間+(24時間ー10時間))から35.5時間(24時間+(24時間ー12.5時間))の自由時間があることとなります。もちろん、睡眠時間(2回)食事時間(5回)入浴時間(2回)等の生活に不可欠な時間をその「35.5時間~38時間」から割かなくてはなりません。

 そうすると、休日に充当すべき時間は、単なる連続した24時間では足りないと思われます。

2 休憩とは何か? 

労働基準法

 第34条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少なくとも四十五分、八時間を超える場合においては少なくとも一時間の休憩時間を労働時間の途中にければならない。

   2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

   3 使用者は、第一項の休憩時間を事由に利用させなければならない。

○休憩時間とは何か?

 「「休憩時間」とは、単に作業に従事しないいわゆる手待時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう。すなわち、現実に作業はしていないが、使用者から就労の要求があるかもしれない状態で待機しているいわゆる「手待時間」は、就労しないことが使用者から保障されていないため休憩時間ではない。」

 そして、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと。(昭和22年基発17号)」とされています。

○休憩の原則のまとめ  ※労働基準法の研究p285より引用

1. 休憩は、労働者が自由に利用できる時間であり、例えば電話番などで必要時に対応が要求されている場合には、完全な休憩時間とはならない。また、作業と作業の合間のいわゆる「手待時間」は、原則労働時間である。

2.始業から終業までの労働時間が6時間を超える場合には45分以上、同じく8時間を超える場合には60分以上の休憩を与えなければならない。また、休憩時間は分割して与えてもよいし、更に休憩時間を与える位置(労働時間の途中に限る)に制限はない。なお、8時間を超える場合には、たとえ16時間の労働であっても60分の休憩を与えれば法違反とはならない。

3.休憩時間は、始業から終業までの間の途中に与えなければならない。休憩時間相当分を(始業前に充当し)始業時刻を遅らせることや終業時刻を繰り上げることで代えることはできない。

4.労働時間は、実労働時間主義であるから、例えば12:00~13:00の時間帯が休憩時間と定められている場合であっても、実際にはその時間帯の一部を就労した場合には、実際に休憩した時間帯のみが休憩時間とされる。一方、労働時間帯と定められている時間帯に休憩をとった場合には、その時間帯は休憩時間となる。

○休憩時間の自由利用

 「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害(ソコナ)わない限り差し支えないこと。(昭和22年基発17号)」

 休憩を会社所定の休憩場所でとることを義務付けても、労基法第34条違反とはならないとされています。

○休憩の一斉付与

 休憩の一斉付与の原則は、労使協定(届出不要)で排除できます。また、労基法第34条第2項は、次の業種については適用除外とされています。

 運送の事業、販売、理容、金融、保険、映画、演劇、通信、病院、診療所、保育所、料理、飲食、官公署他

○休憩についての裁判例

ア 昭和54年(ワ)1596 大阪地裁判決 判決文抜粋  立正運輸事件 労働者の請求を一部認容

 右勤務内容に照らすと、原告らは、右長距離勤務で社外にあっては、常に、右運転車両及び積荷の管理保管の責任を負っていた、というべきであり、右責任を免除されたとみられる特段の事情を負っていた、というべきであり、右責任を免除されたとみられる特段の事情のない限り、右食事休憩時間であっても、右管理保管上必要な監視等を免れえなかったもの、と解される。 

 そうでれば、本件では、後記フェリー乗船中の場合を除き、右食事休憩時間中右管理保管の責任を免除された(或いは自ら放棄した)といえる特段の事情についての主張立証はないから、社外における右食事休憩時間については、原告らは、その間も、車両についての一定の監視等の休憩時間については、原告らは、その間も、車両についての一定の監視業務に従事していたとみるべきである(なお、二人乗務のときには、一方が右責任を免除されていた可能性は存するが、二人の勤務分担等勤務の実情が不詳である以上、当然に交互に実質的な食事休憩時間を取っていた、とまでいうことはできない)。

 従って、右食事休憩時間を勤務時間から控除すべき休憩時間と認めることはできない。

イ 昭和47年(ワ)1789 名古屋地裁判決 判決文抜粋 住友化学工業事件(一部認容)

 労働者は、労働契約に基づいて労働力を一定の条件に従って使用者に提供することを義務づけられ、その限りにおいて拘束されるのにすぎず、したがって、右契約により定められた範囲内の時間だけ労働力を使用者に提供数するのが労働者の義務であって、それ以外の拘束時間、即ち休憩時間は使用者の指揮命令から解放されたまったく自由な時間であり、この時間をいかに利用するかは使用者の施設管理権等による合理的制限を受けるほかは労働者の自由な意思に委ねられているのである。この自由利用を担保するためには、休憩時間の始期、終期が定まっていなければならず、特に終期が定かになっていなければ、労働者は到底安心して自由な休息をとりえないことは明らかというべきである。  

 本件操炉現場が高温の職場であり、班員の休憩の必要性は特に高かったと考えられ、しかも相当長期間会社の右債務不履行が継続したこと、他面操炉班では比較的待機時間が長く昼休み時間帯などにバトミントンを楽しむこともあった等の事情を考慮すると、原告の蒙った精神的な損害を金銭に換算すればその額は20万円をもって相当とする。

 

以上で休日・休憩についての記述を終了します。

次回は、労働時間とは何か?を記述します。

 

休日・休憩