労働契約法の復習 第10条

2015年04月15日 15:14

労働契約法第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

○就業規則の変更により労働条件を包括的・一括的に変更する場合の要件

 就業規則の変更により労働条件を変更する場合の考え方は、既に記述したとおりですが、特に不利益に変更する場合には、幾つもの要件が必要とされます。そこで、労働契約法第10条の内容を厚生労働省の通達により、詳しくみてみたいと思います。

平成19年12月5日 発基第1205001号 抜粋

法第10条の内容

ア 法第10条は、「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たこと及び「就業規則の変更」が「合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定したものであること。

イ 法第10条は、就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となる場合に適用されるものであること。

 なお、就業規則に定められている事項であっても、労働条件でないものについては、法第10条は適用されないものであること。

ウ 法第10条の「就業規則の変更」には、就業規則の中にある現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれるものであること。

エ 法第10条の「就業規則」及び「周知」については、2(2)イ(エ)及び(オ)と同様であること。

オ 法第10条本文の合理性判断の考慮要素 (一部省略)

 第四銀行裁判(最高裁判決)の合理性判断の基準

①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度

②使用者側の変更の必要性の内容・程度

③変更後の就業規則の内容自体の相当性

➃代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況

⑤労働組合等との交渉の経緯

⑥他の労働組合又は他の従業員の対応

⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況

という7つの考慮要素が列挙されているが、これらの中には内容的に互いに関連し合うものもあるため、法第10条本文では、関連するものについては統合して列挙しているものであること。 (一部略)

カ 就業規則の変更が法第10条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、従来どおり、使用者側が負うものであること。

キ 法第10条本文の「当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」という法的効果が生じるのは、同条本文の要件を満たした時点であり、通常は就業規則の変更が合理的なものであることを前提に、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させたことが客観的に認められる時点であること。

ク 法第10条ただし書の「就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、同条ただし書により、法第12条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものであること。

ケ なお、法第7条ただし書の「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」については、将来的な労働条件について

①就業規則の変更により変更することを許容するもの

②就業規則の変更ではなく個別の合意により変更することとするもの

のいずれもがあり得るものあり、①の場合には法第10条本文が適用され、②の場合には同条ただし書が適用されるものであること。

 ここで、留意すべき点としては、ある就業規則の変更規定が労働者Aについては有利に改正されており、他方で労働者Bに関しては不利益に変更されているケースが起こり得ることです。いずれにしても、上記オの7つの要件を満たすことで、変更後の就業規則の合理性を証明できる訳です。

それでは、この続きは次回に・・・

第10条