労働者派遣法 重要事項のまとめ1

2015年06月27日 14:15

派遣労働者の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

[1] 企業名の勧告、公表

法第4条第3項、第24条の2、第40条の2第1項、第40条の4、第40条の5又は第40条の6第1項の規定に違反している者に対する勧告、公表
(1) 概要
 労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者において、法第4条第3項、第24条の2、第40条の2第1項、第40条の4、第40条の5又は第40条の6第1項の規定に違反する行為があった場合、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者は、勧告(法第49条の2第1項及び第2項)及び公表(法第49条の2第3項)の措置の対象となる。
(2) 法第4条第3項、第24条の2、第40条の2第1項の規定、第40条の4、第40条の5又は第40条の6第1項の規定に違反している者に対する勧告
   概要
 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に派遣労働者を適用除外業務に従事させている場合(法第4条第3項の規定違反)、派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主から、労働者派遣の役務の提供を受けている場合(法第24条の2の規定違反)若しくは派遣先を離職して1年以内の者(60歳以上の定年退職者を除く。)について、当該派遣先が当該者を派遣労働者として受け入れ、労働者派遣の役務の提供を受けていた場合(法第40条の6第1項違反)又は当該者に法の規定による指導又は助言(第12の4参照)をした場合において、当該者がなお、違法行為を行っており又は違法行為を行うおそれがあると認めるときは、当該者に対し、これらの規定に違反する派遣就業を是正するために必要な措置又はこれらの派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる(法第49条の2第1項)。
 また、厚生労働大臣は、派遣先の事業所その他の派遣就業の場所ごとの同一の業務(第9の4の(3) のイの①から⑤までに掲げる業務を除く。)について、派遣元事業主から派遣受入期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けている場合(法第40条の2第1項の規定違反)又は当該派遣先に法の規定による指導又は助言(第12の4参照)をした場合において、当該派遣先がなお、違法行為を行っており又は行うおそれがあると認めるときは、当該派遣先に対し、この規定に違反する派遣就業を是正するために必要な措置又は当該派遣就業が行われることを防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる(法第49条の2第1項)(法第49条の2第2項の規定に基づく、厚生労働大臣による派遣先への派遣労働者の雇入れ勧告制度については、第9の4の(7)参照)。
 厚生労働大臣は、派遣先が派遣停止の通知を受けながら派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の前日までに労働契約の申込みをせず、派遣受入期間に抵触することとなる最初の日以降継続して派遣労働者を使用した場合(法第40条の4違反)又は当該派遣先に法の規定による指導又は助言(第12の4参照)をしたにもかかわらず、当該派遣先がなお法第40条の4の規定に違反しており又は違反するおそれがあると認めるときは、当該派遣先に対し、法第40条の4の規定による労働契約の申込みをすべきことを勧告することができる(法第49条の2第1項、第9の5の(1)のホ参照)。
 また、厚生労働大臣は、第9の4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者(期間を定めないで雇用する派遣労働者である旨の通知を受けている場合を除く。)に係る労働者派遣の役務の提供を受けている派遣先が労働契約の申込み義務を果たさなかった場合(法第40条の5違反)又は当該派遣先に法の規定による指導又は助言(第12の4参照)をしたにもかかわらず、当該派遣先がなお法第40条の5の規定に違反しており、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該派遣先に対し、法第40条の5の規定による労働契約の申込みをすべきことを勧告することができる(法第49条の2第1項、第9の5の(2)のニ参照)。
   意義
 (イ) 勧告は、法益侵害性の高い行為、又は指導若しくは助言によっても、なお違法行為を是正しない、若しくは違法行為を行う可能性がある悪質な場合に行う。
 (ロ) 「派遣元事業主以外の労働者派遣事業を行う事業主」とは、許可を受けず又は届出を行わずに違法に労働者派遣事業を行う事業主のことである。
 (ハ) 「違法行為を行うおそれがあると認めるとき」とは、現時点では法違反の状態にはないが、例えば、これまでに不適正な派遣就業を行わせたことのある者であって、その者における業務の処理状況、派遣先責任者等の業務の遂行状況、労働者派遣契約の締結状況等から、今後、再び法違反を犯すおそれがあると判断される場合をいうものである。
 (ニ) 「是正するために必要な措置」とは、当該違法な派遣就業を行わせることを中止することである。
 (ホ) 「防止するために必要な措置」とは、具体的には、例えば、派遣労働者が従事していた業務の処理体制の改善、派遣先責任者等による適正な派遣就業を図るための業務遂行体制の確立等のことである。
   権限の委任
 勧告に関する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長が行うものとする。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことは妨げられない。
   勧告実施の手続等
 (イ) 厚生労働大臣は勧告を行うことを決定したときは、ただちに労働者派遣受入適正実施勧告書(第15 様式集参照)又は第9の5の(1)のホ及び(2)のニの様式による労働契約申込勧告書を作成し、管轄都道府県労働局を経由して当該勧告の対象となる者に対して交付する。
 都道府県労働局長は勧告を行うことを決定したときは、ただちに労働者派遣受入適正実施勧告書(第15 様式集参照)又は第9の5の(1)のホ及び(2)のニの様式による労働契約申込勧告書を作成し、当該勧告の対象となる者に対して交付する。
 (ロ) 労働者派遣受入適正実施勧告書及び雇用契約申込勧告書には、当該勧告に従わない場合は、その旨を公表することがある旨を記載する。
(3) 法第4条第3項、第24条の2、第40条の2第1項、第40条の4、第40条の5又は第40条の6第1項の規定に違反している者に対する公表
   概要
 厚生労働大臣は、(2)の勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(法第49条の2第3項)。
 ロ  意義
 公表は、公表される者に対する制裁効果に加え、派遣元事業主及び派遣労働者に対する情報提供
・注意喚起及び他の労働者派遣事業主より労働者派遣の役務の提供を受ける者に対する違法行為の抑止といった効果を期待することができる。
   公表を行う場合
 「勧告を受けた者がこれに従わなかったとき」とは、勧告された必要な措置を講じていない場合であって、指導によってもこれを改めようとしない場合をいう。
   公表の決定
 公表の決定は厚生労働大臣が行う。
 
[2] JV、派遣店員
○JVと労働者派遣 ジョイント・ベンチャー(JV)との関係
  JVの請負契約の形式による業務の処理
(イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667 条)の一種であり、JV自身がJV参加の各社(以下「構成員」という。)の労働者を雇用するという評価はできないが、JVが民法上の組合である以上、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に従事させたとしても、通常、それは自己のために行われるものとなり、当該法律関係は、構成員の雇用する労働者を他人の指揮命令を受けて、「自己のために」労働に従事させるものであり、法第2条第1号の「労働者派遣」には該当しない。
 しかしながら、このようなJVは構成員の労働者の就業が労働者派遣に該当することを免れるための偽装の手段に利用されるおそれがあり、その法的評価を厳格に行う必要がある。
 (ロ) JVが民法上の組合に該当し、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に労働に従事させることが労働者派遣に該当しないためには、次のいずれにも該当することが必要である。
  JVが注文主との間で締結した請負契約に基づく業務の処理について全ての構成員が連帯して責任を負うこと。
  JVの業務処理に際し、不法行為により他人に損害を与えた場合の損害賠償義務について全ての構成員が連帯して責任を負うこと。
  全ての構成員が、JVの業務処理に関与する権利を有すること。
  全ての構成員が、JVの業務処理につき利害関係を有し、利益分配を受けること。
  JVの結成は、全ての構成員の間において合同的に行わなければならず、その際、当該JVの目的及び全ての構成員による共同の業務処理の2点について合意が成立しなければならないこと。
  全ての構成員が、JVに対し出資義務を負うこと。
  業務の遂行に当たり、各構成員の労働者間において行われる次に掲げる指示その他の管理が常に特定の構成員の労働者等から特定の構成員の労働者に対し一方的に行われるものではなく、各構成員の労働者が、各構成員間において対等の資格に基づき共同で業務を遂行している実態にあること。
 ① 業務の遂行に関する指示その他の管理(業務の遂行方法に関する指示その他の管理、業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理)
 ② 労働時間等に関する指示その他の管理(出退勤、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)、時間外労働、休日労働における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。))
 ③ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理(労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理、労働者の配置等の決定及び変更)
  請負契約により請け負った業務を処理するJVに参加するものとして、a、b及びfに加えて次のいずれにも該当する実態にあること。
 ① 全ての構成員が、業務の処理に要する資金につき、調達、支弁すること。
 ② 全ての構成員が、業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての責任を負うこと。
 ③ 全ての構成員が次のいずれかに該当し、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
  業務の処理に要する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材を、自己の責任と負担で相互に準備し、調達すること。
  業務の処理に要する企画又は専門的な技術若しくは経験を、自ら相互に提供すること。
 (ハ) JVが(ロ)のいずれの要件をも満たす場合については、JVと注文主との間で締結した請負契約に基づき、構成員が業務を処理し、また、JVが代表者を決めて、当該代表者がJVを代表して、注文主に請負代金の請求、受領及び財産管理等を行っても、法において特段の問題は生じないと考えられる。
  JVによる労働者派遣事業の実施
 (イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667 条)であるが、法人格を取得するものではなく、JV自身が構成員の労働者を雇用するという評価はできないため(イの(イ)参照)、JVの構成員の労働者を他人の指揮命令を受けて当該他人のための労働に従事させ、これに伴い派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置を講ずるような労働者派遣事業を行う主体となることは不可能である。したがって、JVがイに述べた請負契約の当事者となることはあっても、法第26 条に規定する労働者派遣契約の当事者となることはない。
 (ロ)このため、数社が共同で労働者派遣事業を行う場合にも、必ず個々の派遣元と派遣先との間でそれぞれ別個の労働者派遣契約が締結される必要があるが、この場合であっても、派遣元がその中から代表者を決めて、当該代表者が代表して派遣先に派遣料金の請求、受領及び財産管理等を行うことは、法において特段の問題は生じないものと考えられる。
 (ハ) この場合、派遣先において、派遣元の各社が自己の雇用する労働者を派遣元の他社の労働者の指揮命令の下に労働に従事させる場合、例えば特定の派遣元(A)の労働者が特定の派遣元(B、C)の労働者に対し一方的に指揮命令を行うものであっても、派遣元(A)の労働者は派遣先のために派遣先の業務の遂行として派遣元(B、C)の労働者に対して指揮命令を行っており、派遣元(B、C)の労働者は、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事するものとなるから、ともに法第2条第1号の「労働者派遣」に該当し、法において特段の問題は生じない。
  その他
 JVの行う労働者派遣事業に類するものとして、次の点に留意すること。
 (イ) 派遣元に対して派遣先を、派遣先に対して派遣元をそれぞれあっせんし、両者間での労働者派遣契約の結成を促し、援助する行為は法上禁止されていないこと(5)のニ、第1-4図参照)。
 (ロ)また、派遣元のために、当該派遣元が締結した労働者派遣契約の履行について派遣先との間で保証その他その履行を担保するための種々の契約の締結等を行うことも、同様に法上禁止されていないこと(第1-4図参照)。
 
○派遣店員との関係
  デパートやスーパー・マーケットのケース貸し等に伴ってみられるいわゆる派遣店員は、派遣元に雇用され、派遣元の業務命令により就業するが、就業の場所が派遣先事業所であるものである。
  この場合において、就業に当たって、派遣元の指揮命令を受け、通常派遣先の指揮命令は受けないものは、請負等の事業と同様((3)参照)「他人の指揮命令を受けて当該他人のために労働に従事させる」ものではなく、労働者派遣には該当しないが、派遣先が当該派遣店員を自己の指揮命令の下に労働に従事させる場合は労働者派遣に該当することとなる(第1-5図参照)。
   現実にも、派遣店員に関する出退勤や休憩時間に係る時間の把握等については、派遣先の事業主や従業者等に委任される場合があるが、このことを通じて、実質的に労働者派遣に該当するような行為(例えば、派遣先の事業主や従業者から派遣元の事業とは無関係の業務の応援を要請される等)が行われることのないよう、関係事業主に対し、派遣店員に係る法律関係についての周知徹底等を行っていく必要がある。
(8) その他
 老人、身体障害者等に対する家庭奉仕員派遣事業、母子家庭等介護人派遣事業、盲人ガイドヘルパー派遣事業、手話奉仕員派遣事業、脳性マヒ者等ガイドヘルパー派遣事業その他これらに準ずる社会福祉関係の個人を派遣先とする派遣事業については、法施行前は職業安定法第44 条で禁止する労働者供給事業に該当しないものとして判断されてきたが、これらの事業が、今後従来と同様法第2条第1号の「労働者派遣」に該当しない態様により行われる限りにおいて、「派遣」という名称とは関わりなく、①派遣元が国、地方公共団体、民間のいずれであるかを問わず、また、②派遣先が不特定多数の個人であるか、特定の会員等であるかを問わず、労働者派遣事業とはならないものであること。

 

以上で労働者派遣法「重要事項のまとめ1」を終了します。