労働者派遣法 重要事項のまとめ2

2015年06月27日 14:42

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律

[3]性・年齢による差別的な取扱いの禁止等 
(1) 派遣労働者の性別の労働者派遣契約への記載の禁止等
 職業安定法第3条の規定は労働者派遣事業にも適用があるものであること(職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)第2条の1参照)。
 このため、派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに当たっては、職業安定法第3条の規定を遵守し、派遣労働者の性別を労働者派遣契約に記載し、これに基づき当該派遣労働者を当該派遣先に派遣してはならず、また、性別による不合理な差別的労働者派遣を行ってはならないので、その旨の周知、指導に努めること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の11の(2)(第8の23参照))。
 なお、職業安定法第3条による差別的取扱いの禁止の対象には、障害者であることも含まれるものであり、障害者であることを理由として差別的労働者派遣を行ってはならないものであることに留意すること。
(2) 年齢による不合理な差別的派遣に対する指導等
 派遣元事業主は雇用対策法(昭和41年法律第132号)第10条及び職業安定法第3条の趣旨に鑑み、年齢による不合理な差別的労働者派遣を行うことは不適当である旨、周知、指導に努めること。
(3) 派遣労働者の募集及び採用に係る年齢制限の禁止に向けた取組
 法に規定する労働者派遣に関し、派遣元事業主が行う派遣労働者の募集及び採用についても、原則として雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3の規定は適用されること。なお、以下の点について留意すること。
  いわゆる登録型派遣の場合における募集及び採用について
 派遣元事業主が登録された者の中から派遣労働者の募集及び採用を行うに当たっても、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3の規定は当然に適用されること。
   いわゆる登録型派遣の場合における「登録」の取扱い
 ① 具体的な雇用契約の締結を前提とした「登録」の場合
 具体的な雇用契約の締結を前提とし、派遣労働者になろうとする者に「登録」を呼びかける行為は、労働者の募集に該当するものであり、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3の規定が適用され、年齢の制限を行うことができるのは雇用対策法施行規則第1条の3第1項各号に掲げる例外事由(以下「例外事由」という。)に該当するときに限られるものであること。
 ② 具体的な雇用契約の締結を前提としない「登録」の場合
 具体的な雇用契約の締結を前提とせず派遣労働者になろうとする者に呼びかけて「登録」をさせる場合において、当該「登録」をした者から派遣労働者を募集又は採用するときには、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3の規定が適用され、年齢の制限を行うことができるのは例外事由に該当するときに限られるものであること。
 したがって、上記①及び②のいずれの「登録」であっても、例外事由に該当する条件の下で派遣労働者を募集又は採用することを最終的な目的とする「登録」でなければ、個人の年齢に関する情報を収集し、保管し、又は使用することは法第24条の3に基づき許容される「業務の目的の達成に必要な範囲内」を超えて個人情報を収集することに該当して同条の規定に違反することとなり、例外事由に該当する条件の下で派遣労働者を募集又は採用することを最終的な目的とするものでなければ派遣労働者の雇用に結びつけることはできないものであること。また、例外事由に該当することとなる条件の下で年齢制限をして派遣労働者を募集又は採用することを最終的な目的とする「登録」を行うときには、年齢情報を含む登録者の情報を収集し、保管し、又は使用するに当たり、当該年齢制限をした事由ごとに明確に区分して登録情報を取り扱わなければならないものであること。
(4) 紹介予定派遣における派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置
 上記の措置と関連して、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の18の(3)及び(4)において、派遣先は、紹介予定派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為又は派遣労働者の特定(以下「特定等」という。)を行うに当たっては、直接採用する場合と同様に、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3並びに男女雇用機会均等法に基づく「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)」の内容と同様の内容の措置を適切に講ずるものとすることとされている(第9の14の(3)参照)ことに十分に留意すること。
 
[2]紹介予定派遣
1.紹介派遣の定義
 紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、法第5条第1項の許可を受けた一般派遣元事業主又は法第16 条第1項の規定により届出書を提出した特定派遣元事業主が、労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び派遣先に対して、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含む(法第2条第6号)。
(2) 紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第26 条第7項)。
 紹介予定派遣を行う場合の取扱いについては、第1の4及び第7の2(1)によるほか、派遣元事業主は次の(1)から(6)に留意すること。
2.紹介派遣の留意点
(1) 紹介予定派遣の期間
 派遣元事業主は、紹介予定派遣を行うに当たっては、6か月を超えて、同一の派遣労働者の労働者派遣を行わないものとすること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の12の(1)、第8の23参照)。
(2) 派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示
   派遣元事業主は、紹介予定派遣を行った派遣先が職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受けた派遣労働者を雇用しなかった場合には、派遣労働者の求めに応じ、派遣先に対して、それぞれその理由について、書面、ファクシミリ又は電子メールにより明示するよう求めるものとすること。また、派遣先から明示された理由を、派遣労働者に対して書面、ファクシミリ又は電子メール(ファクシミリ又は電子メールによる場合にあっては、当該派遣労働者が希望した場合に限る。)により明示するものとすること(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の12の(2)、第8の23参照)。なお、この場合の派遣労働者に対するファクシミリ又は電子メールによる明示に関しては、9の(6)のイからハまでに掲げる留意点に十分留意する必要があること。
   イに関連して、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の18の(2)において、派遣先は、紹介予定派遣を受け入れた場合において、職業紹介を受けることを希望しなかった場合又は職業紹介を受けた派遣労働者を雇用しなかった場合には、派遣元事業主の求めに応じ、それぞれのその理由を、派遣元事業主に対して書面、ファクシミリ又は電子メールにより明示することとされているので、十分留意すること。
(3) 派遣就業期間の短縮
   当初予定していた紹介予定派遣の派遣期間については、三者(派遣労働者、派遣先、派遣元事業主)の合意の下これを短縮し、派遣先と派遣労働者との間で雇用契約を締結することが、可能であること。
 ロ  早期の職業紹介による派遣先の直接雇用を実現できるようにする観点から、三者の合意に基づき、当初の契約において、派遣就業期間の短縮(派遣契約の終了)がある旨及びその短縮される期間に対応する形で紹介手数料の設定を行うことが認められる旨を定めることは可能であり、この場合において派遣就業期間が短縮されたときには、当該契約に基づき派遣元事業主(職業紹介事業者)がこれに対応した手数料を徴収しても差し支えないこと。
   イ及びロの特約による派遣就業期間の短縮(派遣契約の終了)は、あくまで職業紹介による派
 遣先の直接雇用の早期実現を可能とするために認められるものであり、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約の中途解除が行われるような目的で行ってはならない旨派遣先に周知すること。
(4) 求人・求職の意思確認を行う時期、及び職業紹介を行う時期の早期化
   当初予定していた紹介予定派遣の求人・求職の意思確認を行う時期、及び職業紹介を行う時期については、三者(派遣労働者、派遣先及び派遣元事業主)の合意の下、これを早期化することが可能であること。
   早期の派遣先の直接雇用を実現できるようにする観点から、三者の合意に基づき、当初の契約において、求人・求職の意思確認及び職業紹介の早期化がある旨を定めることは可能であること。
   イ及びロの特約による求人・求職の意思確認及び職業紹介の早期化は、あくまで派遣先の直接雇用の早期実現を可能とするために認められるものであり、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約の中途解除が行われるような目的で行ってはならない旨派遣先に周知すること。
(5) 紹介予定派遣における派遣労働者を特定することを目的とする行為
  年齢・性別による差別の禁止
 紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為が可能であるが、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の18の(3)及び(4)において、派遣先は、紹介予定派遣に係る特定等を行うに当たっては、直接採用する場合と同様に、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3並びに男女雇用機会均等法に基づく「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」の内容と同様の内容の措置を適切に講ずるものとすることとされている(第9の14の(3)参照)こと
に派遣元事業主としても十分に留意すること。
   派遣労働者の特定
 紹介予定派遣について派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為が認められるのは、あくまで円滑な直接雇用を図るためであることに鑑み、派遣先が、試験、面接、履歴書の送付等により派遣労働者を特定する場合は、業務遂行能力に係る試験の実施や資格の有無等、社会通念上、公正と認められる客観的な基準によって行われることが必要であることに、派遣元事業主としても十分に留意すること。
(6) その他
   紹介予定派遣においては、派遣先及び派遣労働者の求人・求職の意思等を確認して職業紹介が行われるものであり、当該意思等のいかんによっては職業紹介が行われないこともあることを派遣労働者及び派遣先に明示すること。
  派遣受入期間の制限を免れる目的で紹介予定派遣を行うものではないこと。
   紹介予定派遣の場合に派遣元事業主が行う職業紹介についても、当然に職業安定法第3条(均等待遇)、第5条の4(求職者等の個人情報の取扱い)等の職業紹介に係る関係法令が適用されるものであり、その旨派遣元事業主に対して十分周知すること。
 
[3]労働関係法の派遣元・派遣先での適用関係
 労働基準法等の労働者保護法規の労働者派遣事業に対する適用については、原則として派遣中の労働者と労働契約関係にある派遣元の事業主が責任を負う立場にある。しかしながら、派遣中の労働者に関しては、その者と労働契約関係にない派遣先の事業主が業務遂行上の具体的指揮命令を行い、また実際の労働の提供の場における設備、機械等の設置・管理も行っているため、派遣中の労働者について、その保護に欠けることのないようにする観点から、派遣先における具体的な就業に伴う事項であって、労働者派遣の実態から派遣元の事業主に責任を問うことの困難な事項、派遣労働者保護の実効を期すうえから派遣先の事業主に責任を負わせることが適当な事項については、派遣先の事業主に責任を負わせることとし、労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律につき適用の特例等に関する規定を設けている(法第44条から第47条の2まで)。
 
・法律別の派遣元・派遣先の責任分担表
1.労働基準法
    派遣元                 派遣先
均等待遇                    均等待遇              
男女同一賃金の原則               強制労働の禁止
強制労働の禁止                 公民権行使の保障               
労働契約                    労働時間、休憩、休日
賃金                     
1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム  労働時間及び休日(年少者)
制、1年単位の変形労働時間制の協定の締結・届  深夜業(年少者)
出、時間外・休日労働の協定の締結・届出、事業  危険有害業務の就業制限
場外労働に関する協定の締結・届出、専門業務型   (年少者及び妊産婦等)
裁量労働制に関する協定の締結・届出       坑内労働の禁止(年少者)
時間外・休日、深夜の割増賃金          坑内業務の就業制限(妊産婦等)
年次有給休暇                  産前産後の時間外、休日、深夜業
最低年齢                    育児時間
年少者の証明書                 生理日の就業が著しく困難な
帰郷旅費(年少者)                女性に対する措置
産前産後の休業                 徒弟の弊害の排除
徒弟の弊害の排除                申告を理由とする不利益取扱禁止
職業訓練に関する特例              国の援助義務
災害補償                    法令規則の周知義務
就業規則                      (就業規則を除く)
寄宿舎                     
申告を理由とする不利益取扱禁止
国の援助義務
法令規則の周知義務
労働者名簿
賃金台帳
記録の保存                   記録の保存
報告の義務                   報告の義務
 
2.労働安全衛生法
    派遣元                 派遣先 
職場における安全衛生を確保する事業者の責務   職場における安全衛生を確保する事業者の責務
事業者等の実施する労働災害の防止に関する措   事業者等の実施する労働災害の防止に関す  
置に協力する労働者の責務             置に協力する労働者の責務
労働災害防止計画の実施に係る厚生労働大臣の   労働災害防止計画の実施に係る厚生労働大臣の
勧告等                      勧告等
総括安全衛生管理者の選任等           総括安全衛生管理者の選任等
衛生管理者の選任等               安全管理者の選任等
安全衛生推進者の選任等             衛生管理者の選任等
産業医の選任等                 安全衛生推進者の選任等
衛生委員会                   産業医の選任等
安全管理者等に対する教育等           作業主任者の選任等
安全衛生教育(雇入れ時、作業内容変更時)    統括安全衛生責任者の選任等
危険有害業務従事者に対する教育         元方安全衛生管理者の選任等
中高年齢者等についての配慮           店社安全衛生管理者の選任等
事業者が行う安全衛生教育に対する国の援助    安全委員会
健康診断(一般健康診断等、当該健康診断結果に  衛生委員会
ついての意見聴取)               安全管理者等に対する教育等
健康診断(健康診断実施後の作業転換等の措置)  労働者の危険又は健康障害を防止
健康診断の結果通知                するための措置
医師等による保健指導               ・事業者の講ずべき措置
医師による面接指導等               ・労働者の遵守すべき事項
健康教育等                    ・事業者の行うべき調査等
体育活動等についての便宜供与等          ・元方事業者の講ずべき措置
申告を理由とする不利益取扱禁止          ・特定元方事業者の講ずべき措置
報告等                     定期自主検査
法令の周知                   化学物質の有害性の調査
書類の保存等                  安全衛生教育(作業内容変更時、
事業者が行う安全衛生施設の整備等に対す      危険有害業務就業時)
る国の援助                   職長教育
疫学的調査等                  危険有害業務従事者に対する教育
                        就業制限
                        中高年齢者等についての配慮
                        事業者が行う安全衛生教育に対する国の援助
                        作業環境測定
                        作業環境測定の結果の評価等
                        作業の管理
                        作業時間の制限
                        健康診断(有害な業務に係る健康診断等、
                        当該健康診断結果についての意見聴取)
                        健康診断(健康診断実施後の作業転換等
                         の措置)
                        病者の就業禁止
                        健康教育等
                        体育活動等についての便宜供与等
                        快適な職場環境の形成のための措置
                        安全衛生改善計画等
                        機械等の設置、移転に係る計画の届出、審査等
                        申告を理由とする不利益取扱禁止
                        使用停止命令等
3.じん肺法
    派遣元                 派遣先 
じん肺健康診断の結果に基づく事業者の責務    事業者及び労働者のじん肺の予防に関する
粉じんにさらされる程度を軽減させるため      適切な措置を講ずる責務
 の措置                    じん肺の予防及び健康管   
作業の転換                    に関する教育     
転換手当                    じん肺健康診断の実施
作業転換のための教育訓練            じん肺管理区分の決定等
政府の技術的援助等               じん肺健康診断の結果に
申告を理由とする不利益取扱禁止          基づく事業者の責務
報告                      粉じんにさらされる程度を
                         軽減させるための措
                        作業の転換
                        作業転換のための教育訓練
                        政府の技術的援助等
                        法令の周知
                        申告を理由とする不利益取扱禁止
                        報告
 
4.作業環境測定法
    派遣元                 派遣先 
    なし                  作業環境測定士又は作業環境測定
                         機関による作業環境測定の実施
 
5.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
    派遣元                 派遣先 
妊娠・出産等を理由とする解雇その他       妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
 不利益取扱いの禁止              職場における性的な言動に起因する
職場における性的な言動に起因する問題に関す    問題に関する雇用管理上の措置
 る雇用管理上の措置              妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
 
 
 
 
以上で労働者派遣法「重要事項のまとめ2」
 および労働者派遣法の考察を終了します。
ご高覧ありがとうございました。