労働者派遣法第1条、第2条、第3条

2015年06月12日 12:35

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

 

第1条(目的

 

 

 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

 

第2条(用語の意義)

 

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

二 派遣労働者 事業主が雇用する労働者であつて、労働者派遣の対象となるものをいう。

三 労働者派遣事業 労働者派遣を業として行うことをいう。

四 一般労働者派遣事業 特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいう。

五 特定労働者派遣事業 その事業の派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいう。

六 紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「一般派遣元事業主」という。)又は第十六条第一項の規定により届出書を提出した者(以下「特定派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(以下この号において「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。

 

第3条(船員に対する適用除外)

 

 この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。

 

 

そもそも労働者派遣事業とは何か。

 労働者派遣法は、附則を除けばわずか62条までの法律ですが、昭和60年の成立以後何度もの改正を経ており、また経過措置も数多く存在する法律です。厚生労働省では、このような難解な労働者派遣法の正しい周知のために、401ページからなる「労働者派遣事業関係業務取扱要領(以後は取扱要領と言います。)」を作成し公表しています。今回の労働者派遣法においては専らこの取扱要領を資料として用いたいと思います。

 労働者派遣事業とは何かについては次項目に譲るとして、ここでは派遣労働者等の現状及び派遣労働の問題点(出典:厚生労働省作成資料等)を考察します。

 

1.派遣労働者の数及び全被用者に占める割合

 平成26年のデータ(総務省労働力調査)によれば、派遣労働者の数は約119万人で全被用者に占める割合は、約6.1%となっています。

2.派遣労働者の就業者数の時系列推移

 厚生労働省作成の労働者派遣事業報告によれば、派遣労働者の年度単位の数は年々減少傾向にあります。

  H20年 202万人  H21年 157万人  H22年 145万人  H23年 137万人

  H24年 135万人  H25年 127万人  H26年 126万人

  ※各年度の派遣労働者数は、特定及び一般の派遣労働者の合計人数

3.派遣労働者の平均賃金水準

 平成24年度の賃金構造基本統計調査等によれば、正社員等との一時間当たりの平均賃金の比較は次のようになっています。

   正社員       1,921円/1時間当たり

   派遣労働者     1,351円/1時間当たり

          契約社員等     1,198円/1時間当たり

          パート労働者    1,026円/1時間当たり

 上記の調査結果からすれば、パートタイム雇用で就労するよりも、派遣労働のほうが一時間当たりの賃金が高い実情となっています。

4.労働者派遣事業の課題

 労働者派遣事業は、昭和60年の本法の成立によって可能になった事業です。その意味するところは、本来は労働力の提供を受ける事業主(派遣労働で言えば、派遣先事業主)が労務の提供を行う労働者を直接雇用することが望ましいと言う点にあります。

 事業主は従来より、雇用調整の手立てとして非正規労働者(派遣労働者を含む。)としての有期労働契約の労働者を多数雇用し、業務の量に応じて新規採用と労働契約の更新の打ち切りを併用することによって、労働力の受給調整を行ってきたものと考えられます。そして、業種によっては日常的に労働者を募集・採用し、離職率も非常に高い状況が過去には見られました。先の労働契約法の改正により、労働者派遣事業の改正の如何にかかわらず、派遣元事業主は運用の変更を迫られることとなりますから、労働者派遣事業者にとってはビジネスモデルの再構築を迫られることとなります。

 また、労働者派遣事業を行うについては、詳細な基準が設けられており、実際に労働者派遣事業を行う事業主がその全てに適合することが困難になっている実情もあります。

5.今般(平成27年通常国会)の法改正案提出に際しての改正点のポイント

・全ての労働者派遣事業を許可制に変更する

・派遣期限

  <26業務か否かに関わりなく適用される共通ルールへ> 

 ◎個人単位の期間制限 ・派遣先の同一の組織単位における上限3年 ・派遣元は上限に達する派遣労働者に雇用安定措置(派遣先 への直接雇用の依頼等)を講ずる 

 ◎派遣先単位の期間制限 ・同一の事業所における継続した派遣労働者の受入れの上限 を原則3年 ・過半数組合等への意見聴取により延長可 ・過半数組合等が反対意見を表明した場合に対応方針を説明 する等適正な意見聴取の手続き ※無期雇用の派遣労働者等は上記2つの期間制限の例外とする 

・均等待遇の推進

 ◎ 現行の規定に加え、派遣元に対し、派遣労働者の均衡待遇 の確保の際に考慮した内容の説明義務

 ◎現行の規定に加え、派遣先に対し、同種の業務に従事する 派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生 施設の利用に関する配慮義務

・派遣労働者のキャリアアップ(新設) 

 ◎派遣元に対し、計画的な教育訓練やキャリア・コンサルティ ングを義務付け(実施内容を厚労省に毎年報告)  

 ◎ 許可要件に「キャリア支援制度を有する」を追加 

 ◎派遣先に派遣労働者の能力に関する情報提供の努力義務 

 

労働者派遣事業、派遣労働者とは何か(取扱要領中心)

(1) 「労働者派遣」の意義
 労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものをいう(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「法」という。)第2条第1号)。
 したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、①派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は派遣元から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令するというものである。
(2) 「労働者」及び「雇用関係」の意義
 「労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から賃金を支払われる者をいう。
 「雇用関係」とは、民法(明治29 年法律第89 号)第623 条の規定による雇用関係のみではなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に従属的地位において労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。労働者派遣に該当するためには、派遣元との間において当該雇用関係が継続していることが必要である。
(3) 「指揮命令」の意義
  労働者派遣は、労働者を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」であり、この有無により、労働者派遣を業として行う労働者派遣事業(3参照)と請負により行われる事業とが区分される。
 「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる」ものではないとして、労働者派遣事業に該当せず、請負により行われる事業に該当すると判断されるためには、
 第1に、当該労働者の労働力を当該事業主が自ら直接利用すること、すなわち、当該労働者の作業の遂行について、当該事業主が直接指揮監督のすべてを行うとともに、
 第2に、当該業務を自己の業務として相手方から独立して処理すること、すなわち、当該業務が当該事業主の業務として、その有する能力に基づき自己の責任の下に処理されることが必要であるが、具体的には、次のような基準に基づき判断を行う(昭和61 年労働省告示第37 号)。
 なお、労働者派遣を受け、当該派遣労働者を用いて、請負により事業を行うことが可能であるのは当然であるので留意すること。
 

 ※労働者派遣事業における雇用・指揮命令・派遣契約等は次のようになっています。

労働者←雇用契約(賃金の支払、使用者としての一部の措置や義務)→派遣元事業主

労働者←指揮命令(使用者としての一部の義務等)⇔労務の提供  →派遣先事業主

派遣元事業主(派遣会社)←労働者派遣契約(契約料の支払⇔労働者の受け入れ)→派遣先事業主

  ※労働者派遣禁止事業があります(建設業、港湾運送業、警備業、病院の一部の業務など)。

 

 まとめますと、労働者派遣事業とは、労働者派遣事業の許可等を受けた事業主(派遣元事業主)が自己の雇用する労働者を派遣契約に基づいて他の事業主(派遣先)に派遣し、その派遣先事業主の指揮命令の下でその労働者に労務の提供を行わせる事業を言います。※派遣元事業主は、労働者派遣契約に基づき自己の雇用する労働者に対する指揮命令権を派遣先事業主に委任しています。

 

労働者供給事業と労働者派遣事業

・職業安定法第44条

 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

 職業安定法でいう「労働者供給事業」

・労働者供給事業の意義 

(1) 労働者供給 

 イ  労働者供給の意義

  労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるこ とをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60 年法律第88号)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」をいう(職 業安定法(以下「法」という。)第4条第6項)。 したがって、労働者供給における供給元、供給先及び供給労働者の三者の関係は、次のいずれ かとなる。 

 (イ)① 供給元と供給される労働者との間に支配従属関係(雇用関係を除く。)があり、

     ② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に

      労働者 を供給し、 

     ③ 供給先は供給契約に基づき労働者を自らの指揮命令(雇用関係を含む。)の下に

      労働に 従事させる。   

 (ロ)① 供給元と供給される労働者との間に雇用関係があり

     ② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に

     労働者 を供給し、 

     ③ 供給先は供給契約に基づき労働者を雇用関係の下に労働に従事させる。

   労働者供給の意義における「労働者」及び「供給契約」の意義 

 (イ)「労働者」とは、対価を得て、一定の労働条件の下に雇用主との間に労働力を提供する関係 (使用従属関係)に立つ者、又は立とうとする者をいう。 

 (ロ)「供給契約」とは、契約の形式をいうものではなく、実体によって判断される。すなわち、 民法上の請負契約、さらに、具体的には商法の運送契約等の形式をもって行われる場合も含む ものであって、イの(イ)又は (ロ)の関係を生じさせる契約を総称するものである。この場 合の契約は、当事者に合意があれば足り、文書によると口頭によるとを問わない。

 ※まとめ

  労働者供給事業とは、次のA,Bをいいます。

  A 雇用関係が無いが、事実上支配関係がある労働者を供給先に提供し、雇用関係を

         結ばせて就労させるもの

  B 雇用関係がある自己の労働者を供給先に提供し、雇用関係を結ばせて就労させるもの

 

また、(厚生労働省作成文書を引用)

① 供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合のうち、供給 元と労働者との間に雇用関係がないものについては、すべて労働者供給に該当する。 当該判断は、具体的には、労働保険・社会保険の適用、給与所得の確認等に基づき行う。

 ② ①の場合とは異なり、供給元と労働者との間に雇用契約関係がある場合であっても供給先 に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、労働者派遣には該当せず、労 働者供給となる(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 (以下「労働者派遣法」という。)第2条第1項)。 

 ただし、供給元と労働者との間に雇用契約関係があり、当該雇用関係の下に、他人の指揮 命令を受けて労働に従事させる場合において、労働者が自由な意思に基づいて結果として供 給先と直接雇用契約を締結するようなケースについては、前もって供給元が供給先に労働者 を雇用させる旨の契約があった訳ではないため、労働者が供給先に雇用されるまでの間は労 働者派遣に該当することとなり、労働者派遣法(第3章第4節の規定を除く。)による規制 の対象となる。 

③ ②における「供給先に労働者を雇用させることを約して行われるもの」の判断については、 契約書等において供給元、供給先間で労働者を供給先に雇用させる旨の意思の合致が客観的 に認められる場合はその旨判断するが、それ以外の場合は、次のような基準に従い判断する ものとすること。 

(a)労働者派遣が法の定める枠組みに従って行われる場合は、原則として、派遣先に労働者 を雇用させることを約して行われるものとは判断しないこと。 

(b)派遣元が企業としての人的物的な実体(独立性)を有しない個人又はグループであり、 派遣元自体も当該派遣元の労働者とともに派遣先の組織に組み込まれてその一部と化し ている場合、派遣元は企業としての人的物的な実体を有するが、当該労働者派遣の実態は、 派遣先の労働者募集賃金支払の代行となっている場合その他これに準ずるような場合に ついては、例外的に派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものと判断するこ とがあること。

 

 ※自己の雇用しない労働者を供給する場合には、すべて労働者供給事業に該当すること。

  また、自己の雇用する労働者を提供する場合であっても、供給先に労働者を雇用させる意思があるものは労働者供給事業にあたる。ただし、自己の雇用する労働者を供給後にその労働者の自由な意思により供給先に雇用される場合には、労働者派遣事業にあたる。

 ※上記は労働者派遣を職業安定法の44条から除外するためのロジックですが、そもそも同法の第45条を改正してその適用とすれば、法理上すっきりしていると考えます。

参考:職業安定法第45条

 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

 

請負事業と労働者派遣事業

・労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

  (昭和六十一年四月十七日)(労働省告示第三十七号)

 

第2条 抜粋 以下に該当すれば「労働者派遣事業」に該当しない、即ち請負事業に該当するとされています。

 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。

イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

() 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

() 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。

ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

() 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

() 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。

(1) 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。

   () 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。 

 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。

イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

ハ 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

() 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。

() 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

 

※請負事業のポイント(労働者派遣に該当しない判断基準)は、次の通りです。

 ① 労働者に対しての指揮命令を自ら行い、業務発注元(施主等)が行っていないこと。

 ② 労働者の業務に関する評価・管理を自ら行うこと。

 ③ 労働者の労働時間管理等を自ら行うこと。

 ④ 労働時間延長の指示や休日の管理等(いつを休日にするかなど)を自ら行うこと。

 ⑤ 労働者の服務規律の定め管理等を自ら行うこと。

 ⑥ 労働者の配置決定等の決定を自ら行うこと。

 ⑦ 業務についての資金調達を自ら行うこと。

 ⑧ 法令に基づく事業主としての責任を負っていること。

 ⑨ 資材・機器・設備等を自ら調達すること。

 ⑩ 企画・知識・専門的技術・経験に基づいて業務を行うこと。

 

定義 労働者派遣法第2条関係

・派遣労働者

(1) 「派遣労働者」の意義
 派遣労働者とは、「事業主が雇用する労働者であって、労働者派遣の対象となるもの」をいう(法第2条第2号)。
労働者派遣事業
(1) 「労働者派遣事業」の意義
 労働者派遣事業とは、「労働者派遣を業として行うこと」をいう(法第2条第3号)。
(2) 「業として行う」の意義
 イ 「業として行う」とは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、1回限りの行為であったとしても反復継続の意思をもって行えば事業性があるが、形式的に繰り返し行われていたとしても、全て受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思をもって行われていなければ、事業性は認められない。
   具体的には、一定の目的と計画に基づいて経営する経済的活動として行われるか否かによって判断され、必ずしも営利を目的とする場合に限らず(例えば、社会事業団体や宗教団体が行う継続的活動も「事業」に該当することがある。)、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問わない。
   しかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業としての独立性があるか否かが反復継続の意思の判定の上で重要な要素となる。例えば、①労働者の派遣を行う旨宣伝、広告をしている場合、②店を構え、労働者派遣を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として、事業性ありと判断されるものであること。
一般と特定の二種類の労働者派遣事業
一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業
   労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の二者に分けられる。「一般労働者派遣事業」は、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいい(法第2条第4号) 、「特定労働者派遣事業」は、その事業の派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいう(法第2条第5号)。
  一般労働者派遣事業に該当するか、特定労働者派遣事業に該当するかについては、事業所ごとに判断されることとなるため、一つの事業所において一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業とが共存することはなく、常時雇用される労働者以外の派遣労働者が存在する場合は、一般労働者派遣事業を行う事業所となる(「事業所」の意義については第4の1の(2)参照)。
  「常時雇用される」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいう。具体的には、次のいずれかに該当する場合に限り「常時雇用される」に該当する。
 ① 期間の定めなく雇用されている者
 ② 一定の期間(例えば、2か月、6か月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
 ③ 日日雇用される者であって、雇用契約が日日更新されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、②の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
 なお、雇用保険の被保険者とは判断されないパートタイム労働者であっても、①から③までのいずれかに該当すれば「常時雇用される」と判断するものであるので留意すること。ニ派遣労働を希望する労働者を登録しておき、労働者派遣をするに際し、当該登録されている者の中から期間の定めのある労働者派遣をするいわゆる登録型の労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業の典型的な形態であり、当該登録型の事業が当該事業所において行われる事業に含まれている場合は、一般労働者派遣事業である。
  イのとおり、「常時雇用される」労働者以外の者が派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)の中に存在する場合は、一般労働者派遣事業となる。しかしながら、通常は常時雇用される労働者を労働者派遣することを業として行っている者については、臨時的な理由により、たまたま一時的に常時雇用される労働者以外の労働者を労働者派遣する場合であっても、今後とも、常時雇用される労働者以外の者を、反復して労働者派遣する意図が客観的に認められないときは特定労働者派遣事業としての取扱いを変える必要はないものであるので留意すること。
紹介予定派遣
(1)  紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、法第5条第1項の許可を受けた一般派遣元事業主又は法第16 条第1項の規定により届出書を提出した特定派遣元事業主が、労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び派遣先に対して、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含む(法第2条第6号)。
(2)  紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第26 条第7項)。
(3)  紹介予定派遣については、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として設けられたものであり、具体的には次の①から③までの措置を行うことができるものである。
 ①  派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等
 ②  派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示
 ③  派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定
(4)  紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先は次の措置等を講じなければならない。
 ①  労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第7の2の(1)の⑨参照)
 ②  紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守(第8の21 の(1)及び第9の14 の(1)参照)
 ③  派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示
   (第8の21 の(2)及び第9の14 の(2)参照)
 ④  派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置
   (第9の14 の(3)参照)
 ⑤  派遣労働者であることの明示等(第8の7の参照)
 ⑥  就業条件等の明示(第8の9の(3)のイの⑨参照)
 ⑦  派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること
   (第8の17 の(1)のホの⑨参照)
 ⑧  派遣先管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること
   (第9の9の(2)のハの⑩参照)
 
適用除外 法第3条関係
(1) 法の適用範囲の原則
 法は、(3)によりその適用を除外される「船員」を除き、公務員も含めたあらゆる労働者、あらゆる事業に適用される。
(2) 公務員等に対する法の適用
   国家公務員、地方公務員が派遣労働者となる場合にも、法の規制が適用される(国家公務員法(昭和22 年法律第120 号)附則第16 条、地方公務員法(昭和25 年法律第261 号)第58 条)。
 そのため、法第3章第4節の規定だけではなく、当該規定により適用される労働基準法等の規定も適用されることとなる。特定独立行政法人及び国有林野事業を行う国の経営する企業に勤務する職員や水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業等の地方公営企業及び特定地方独立行政法人の職員についても同様である(特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23 年法律第257 号)第37 条、地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27 年法律第289 号)第17 条、地方公営企業法(昭和27 年法律第292 号)第39 条、地方独立行政法人法(平成15 年法律第118 号)第53 条)
  国、地方公共団体が派遣先である場合についても、法(第3章第4節の規定及び当該規定により適用される労働基準法等の規定を含む。)は全面的に適用される。
(3) 船員に対する法の適用除外
   船員職業安定法(昭和23 年法律第130 号)第6条第1項に規定する船員については、法は適用されない(法第3条)。
  船員職業安定法第6条第1項に規定する船員とは船員法による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。
  (イ)  船員法(昭和22 年法律第100 号)による船員とは「日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶(船員法施行規則(昭和22 年運輸省令第23 号)第1条)に乗り組む船長及び海員並びに予備船員」のことをいう(船員法第1条第1項)。
  (ロ)  「船舶」には、①総トン数5トン未満の船舶、②湖、川又は港のみを航行する船舶、③政令の定める総トン数30 トン未満の漁船、④船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和26 年法律第149 号)第2条第4項に規定する小型船舶であって、スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他のその航海の目的、期間及び態様、運航体制等からみて、船員労働の特殊性が認められない船舶として国土交通省令で定めるものは含まれない(船員法第1条第2項)。
  (ハ)  「海員」とは、「船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者」をいう(船員法第2条第1項)。したがって、船内における酒場、理髪店、洗たく屋、売店、事務室内で働く労働者も、船舶内で使用される乗組員に該当する以上、直接に運航業務に従事しなくても、この海員に含まれる。
  (ニ)  「予備船員」とは、「船舶に乗り組むため雇用されている者で船内で使用されていないもの」をいう(船員法第2条第2項)。
  船員について法が適用除外されるとは、船員である者を派遣労働者として船員の業務以外の業務に就かせること及び船員以外の者を船員の業務に就かせることの双方について法の規定が適用されないという意味である。例えば船員以外の者が派遣先であるロの(ロ)の「船舶」内で就業する限りにおいて(ロの(イ)に該当する必要がある。)、派遣労働者は船員に該当することとなり、法の適用は受けない。
  なお、船員に係る労働者派遣事業に相当する事業については、船員職業安定法第55 条第1項により、国土交通大臣の許可を受けた者は、船員派遣事業を行うことができることとされている。
 「船員派遣」とは、船舶所有者が、自己の常時雇用する船員を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために船員として労務に従事させることをいい、当該他人に対し当該船員を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいう(船員職業安定法第6条第1項)。その旨に留意するとともに、必要な場合には、地方運輸局等運輸関係行政機関と相互に連携を保ちつつ、的確な行政運営を行うこと。
 
 
 
以上で労働者派遣法第1条・第2条・第3条を終了します。