労働者派遣法第27条、第28条、第29条
2015年06月19日 13:26
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
第27条(契約の解除等)
労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない。
第28条
労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該派遣就業に関し、この法律又は第四節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。第三十一条において同じ。)に違反した場合においては、当該労働者派遣を停止し、又は当該労働者派遣契約を解除することができる。
第29条
労働者派遣契約の解除は、将来に向かつてのみその効力を生ずる。
○業務取扱要領(労働者派遣契約の解除)
1.労働者派遣契約解除の制限(法第27条)
(1) 概要
労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由として、労働者派遣契約を解除してはならない(法第27条)。
(2) 解除の禁止の意義
イ 禁止されるのは、労働者派遣契約について、業として行われる労働者派遣であると否とを問わず、また、当該労働者派遣契約の一部であるか全部であるかを問わず、これを解除する行為である。
なお、労働者派遣の役務の提供を受ける者が労働者派遣をする者と合意の上、労働者派遣契約を解除する場合であっても、(3)の事由を理由とする限り、当該解除は、労働者派遣の役務の提供を受ける者について禁止されるものである。
ロ 法第27条に違反して、労働者派遣契約を解除した場合には、当該解除は公序良俗に反するものとして無効となる。したがって、労働者派遣の役務の提供を受ける者が当該解除を主張したとしても、労働者派遣をする者は解除の無効を主張して契約の履行を求めることができ、さらに、損害を被った場合には、損害賠償の請求をすることができる。
(3) 労働者派遣契約の解除が禁止される事由
イ 「国籍」とは、国民たる資格で、「信条」とは特定の宗教的又は政治的信念を、「社会的身分」とは生来的な地位をそれぞれいうものである。
ロ 「労働組合の正当な行為」とは、労働組合法上の労働組合員が行う行為であって、労働組合の社会的相当行為として許容されるものであるが、具体的には、団体交渉、正当な争議行為はもちろん、労働組合の会議に出席し、決議に参加し、又は組合用務のために出張する等の行為も含まれるものである。
これに該当しない行為としては、例えば、いわゆる政治ストや山猫ストがある。
なお、「労働組合の正当な行為」に該当するか否かは、主として派遣労働者が組合員となっている組合と労働者派遣をする事業主との間の問題として決定することとなると考えられる。
ハ 労働者派遣契約の解除が禁止される不当な事由は、労働関係において形成されている公序に反するものであり、その他には人種、門地、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産したこと、心身障害者であること、労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、法第40条第1項の規定により派遣先へ苦情を申し出たこと、労働者派遣の役務の提供を受ける者が法に違反したことを関係行政機関に申告したこと等も含まれるものである。
ニ 「理由として」とは、国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等の事由が労働者派遣契約の解除の決定的原因となっていると判断される場合をいう。この場合、当該事由が決定的原因であるものか否かについては、個々具体的事実に即して判断する。
2.派遣労働者の保護等のための労働者派遣契約の解除等(第28条)
(1) 概要
労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該派遣就業に関し、法又は法第3章第4節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)に違反した場合においては、当該労働者派遣を停止し、又は当該労働者派遣契約を解除することができる(法第28条)。
(2) 労働者派遣契約の解除の意義
イ 法第31条の規定による派遣元事業主の適正な派遣就業の確保を実質的に担保するためのものである。
ロ 解除を行うことができるのは、業として行われると否とを問わず、労働者派遣をする事業主であり、派遣元事業主以外の事業主であっても労働者派遣をする場合には、当該解除を行える。
ハ 当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除は、直ちに行うことができるものであり、当該労働者派遣契約において解除制限事由又は解除予告期間が定められていたとしても当該定めは無効となるものである。
ニ 一般に、契約は、解除事由につき別段の定めがあり、また、契約の当事者の合意がある場合を除き、法定の解除事由である債務不履行がある場合以外一方的に解除することはできず、一方的に解除した場合には、債務不履行で損害賠償の責を負うこととなるが、法第28条の規定により、当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除により当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が損害を被っても、解除又は停止を行った労働者派遣を行う事業主は債務不履行による損害賠償の責を負うことはない。
(3) 労働者派遣契約の解除等を行える具体的事由
労働者派遣の役務の提供を受ける者が次の規定に違反した場合である。
① 法第39条から第42条まで、第45条第10項及び第46条第7項
② 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法及び作業環境測定法の規定であって法第3章
第4節の規定により労働者派遣の役務の提供を受ける者に適用される規定(第10参照)
3.労働者派遣契約の解除の非遡及(法第29条)
(1) 概要
労働者派遣契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる(法第29条)。
(2) 意義
イ 労働者派遣契約は、労働契約と同様に継続的給付の実施を内容とするものであるため、契約の解除がなされた場合にその効果を遡及すると当該契約の当事者間に著しい不均衡が生じ、給付の返還を行うことが不可能となる等適当ではないことから、当該労働者派遣契約の解除の意思表示がなされたとき以後についてのみ解除の効果が生ずることとされたものである。
ロ 法第29条は、強制法規であり、当事者間において、労働者派遣契約においてこれに反する定めをしても無効となる。
○労働者派遣契約の解除のまとめ
1.労働者派遣契約を解除できない理由(法第27条)
一定の理由による労働者派遣契約を解除してはならないとされていること。
その理由としては、
①派遣労働者の『国民たる資格である「国籍」、特定の宗教的又は政治的信念である「信条」、生来的な地位である「社会的身分」』を理由とする労働者派遣契約の解除が禁止される。
②派遣労働者が行った、『団体交渉、正当な争議行為はもちろん、労働組合の会議に出席し、決議に参加し、又は組合用務のために出張する等の行為たる「労働組合の正当な行為」を理由とする解雇を行ってはならないこと。
なお、法第27条に違反して、労働者派遣契約を解除した場合には、当該解除は公序良俗に反するものとして無効となる。
2.労働者派遣契約の解除事由(法第28条)
一般に、契約は、解除事由につき別段の定めがあり、また、契約の当事者の合意がある場合を除き、法定の解除事由である債務不履行がある場合以外一方的に解除することはできず、一方的に解除した場合には、債務不履行で損害賠償の責を負うこととなるが、法第28条の規定により、当該労働者派遣の停止又は労働者派遣契約の解除により当該労働者派遣の役務の提供を受ける者が損害を被っても、解除又は停止を行った労働者派遣を行う事業主は債務不履行による損害賠償の責を負うことはない。
そして、労働者派遣契約においては原則的には、派遣先はあらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行う必要があること。また、解除に当たり、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るか、これができない時は派遣労働者の休業等により生じた派遣元事業主の損害(休業手当、解雇予告手当等)の賠償を行う必要があり、このことを労働者派遣契約に定めておく必要がある。
労働者派遣契約を停止又は解除するのは、労働者派遣をする事業主であり、派遣元事業主以外の事業主であっても労働者派遣をする場合には、当該解除を行えること。 ※この文章の意味が定かではありません。
法違反の具体的内容は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が次の規定に違反した場合である。
① 法第39条から第42条まで、第45条第10項及び第46条第7項
② 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法及び作業環境測定法の規定であって法第3章
第4節の規定により労働者派遣の役務の提供を受ける者に適用される規定。
3.労働者派遣契約解除の非遡及(法第29条)
一般に、契約の取り消しや無効とは、契約の締結時点に遡って、その契約が無かったこととなります。しかし、労働契約と同様に、派遣労働者が提供した労務の返還やそれに伴って派遣労働者が受け取った賃金等を返還して、契約前の時点に原状回復することは困難であり、かつ不合理でもある。
そこで、本条により労働者派遣契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる、すなわち解除前の双方の労働者派遣契約に基づく既存の債務履行は、契約解除によっても無効とはならないとされています。また、労働者派遣契約中に契約締結時点に遡及してその契約の効力が失われる特約を規定しても、その特約は本条により無効となります。
以上で労働者派遣法第27条・第28条・第29条を終了します。