労働者派遣法第29条の2、第30条、第30条の2、第30条の3

2015年06月19日 15:20

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第29条の2(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置

 労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。

 

第30条(有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等

 派遣元事業主は、その期間を定めて雇用する派遣労働者又は派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者(相当期間にわたり期間を定めて雇用する派遣労働者であつた者その他の期間を定めないで雇用される労働者への転換を推進することが適当である者として厚生労働省令で定める者に限る。以下この条において「有期雇用派遣労働者等」という。)の希望に応じ、次の各号のいずれかの措置を講ずるように努めなければならない。

一 期間を定めないで雇用する派遣労働者として就業させることができるように就業の機会を確保し、又は派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに、これらの機会を有期雇用派遣労働者等に提供すること。

二 当該派遣元事業主が職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして職業紹介を行うことができる場合にあつては、有期雇用派遣労働者等を紹介予定派遣の対象とし、又は紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れること。

三 前二号に掲げるもののほか、有期雇用派遣労働者等を対象とした期間を定めないで雇用される労働者への転換のための教育訓練その他の期間を定めないで雇用される労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

則第25条

 法第三十条の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者とする。

一 当該派遣元事業主に雇用された期間が通算して一年以上である期間を定めて雇用する派遣労働者

二 当該派遣元事業主に雇用された期間が通算して一年以上である派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者

 

第30条の2(均衡を考慮した待遇の確保

 

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先(当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者をいう。第四節を除き、以下同じ。)に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない。

2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派

遣先に雇用される労働者との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者について、教育訓練及び

福利厚生の実施その他当該派遣労働者の円滑な派遣就業の確保のために必要な措置を講ず

るように配慮しなければならない。

 

第30条の3(派遣労働者等の福祉の増進)

 

 前二条に規定するもののほか、派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働

者として雇用しようとする労働者について、各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機

会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置

を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない。

 

第31条(適正な派遣就業の確保)

 

 派遣元事業主は、派遣先がその指揮命令の下に派遣労働者に労働させるに当たつて当該

派遣就業に関しこの法律又は第四節の規定により適用される法律の規定に違反することが

ないようにその他当該派遣就業が適正に行われるように、必要な措置を講ずる等適切な配

慮をしなければならない。

 

業務取扱事項(派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置)

1.労働者派遣契約を解除した場合の派遣元労働者の措置(法第29条の2)

(1) 概要
 短期間の労働者派遣契約の反復更新に伴い、短期間の労働契約を反復更新することは、派遣労働者の雇用が不安定になる面があり、望ましくないため、派遣労働者の雇用の安定が図られるように、派遣元事業主及び派遣先は、労働契約及び労働者派遣契約の締結に当たり必要な配慮をするよう努めるとともに、労働者派遣契約の解除に際して、当該労働者派遣契約の当事者である派遣元事業主及び派遣先が協議して必要な措置を具体的に定めることとしている。
 また、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たっては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならないこととしている(法第26条第1項第8号、法第29条の2、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2(第8の23参照)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6(第9の16参照))。
(2) 派遣先の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
  労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
 派遣先は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを定めなければならないこと。また、労働者派遣の期間を定めるに当たっては、派遣元事業主と協力しつつ、当該派遣先において労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り長く定める等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
   労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
 派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。
  派遣先における就業機会の確保
 派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
  損害賠償等に係る適切な措置
 派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこと。例えば、当該派遣元事業主が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、当該派遣元事業主がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害賠償を行わなければならない。その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方に責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。
 なお、派遣元事業主が派遣労働者を休業させる場合における休業手当に相当する額、又は派遣元事業主がやむを得ない事由により派遣労働者を解雇する場合における解雇予告手当に相当する額(=派遣先による労働者派遣契約の解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより当該派遣元事業主が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額)については、派遣元事業主に生ずる損害の例示であり、休業手当及び解雇予告手当以外のものについても、それが派遣先の責に帰すべき事由により派遣元事業主に実際に生じた損害であれば、賠償を行わなければならない。
  労働者派遣契約の解除の理由の明示
 派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること。

 

2.派遣元事業主の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置

   労働契約の締結に際して配慮すべき事項
 派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、当該労働者の希望及び労働者派遣契約における労働者派遣の期間を勘案して、労働契約の期間を、当該労働者派遣契約における労働者派遣の期間と合わせる等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
   労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置
 派遣元事業主は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除が行われる場合には、派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること及びこれができないときには少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い当該派遣元事業主が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを定めるよう求めること。
   労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置
 派遣元事業主は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約に係る派遣先と連携して、当該派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受けること、当該派遣元事業主において他の派遣先を確保すること等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。また、当該派遣元事業主は、当該労働者派遣契約の解除に当たって、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。さらに、やむを得ない事由によりこれができない場合において、当該派遣労働者を解雇しようとするときであっても、労働契約法の規定を遵守することはもとより、当該派遣労働者に対する解雇予告、解雇予告手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと。
(4) その他
   労働者派遣契約の契約期間が満了する前に当該労働者派遣契約に基づく派遣就業をしている派遣労働者を交替させる場合は、当該派遣労働者について6(2)のロ、ハ及びホ並びに(3)のロに準じた取扱いをすること。
   労働者派遣契約の解除があった場合に、派遣元事業主が、当該労働者派遣をしていた派遣労働者との労働契約書を派遣労働者の同意なく差し換え、又はその同意を強要することは適切ではない旨指導すること。

 

業務取扱要領(派遣元事業主の講ずべき措置等)

1.派遣元事業主が構図べき措置等

 一般労働者派遣事業であると特定労働者派遣事業であるとを問わず、派遣元事業主は、次の措置等を講じなければならない。
 ① 有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(法第30条)
 ② 均衡を考慮した待遇の確保のための措置(法第30条の2)
 ③ 派遣労働者等の福祉の増進のための措置(法第30条の3)
 ④ 適正な派遣就業の確保のための措置(法第31条)
 ⑤ 待遇に関する事項等の説明(法第31条の2)
 ⑥ 派遣労働者であることの明示等(法第32条)
 ⑦ 派遣労働者に係る雇用制限の禁止(法第33条)
 ⑧ 就業条件の明示(法第34条)
 ⑨ 労働者派遣に関する料金の額の明示(法第34条の2)
 ⑩ 派遣先への通知(法第35条)
 ⑪ 派遣受入期間の制限の適切な運用(法第35条の2)
 ⑫ 派遣先及び派遣労働者に対する派遣停止の通知(法第35条の2)
 ⑬ 日雇労働者についての労働者派遣の原則禁止(法第35条の3)
 ⑭ 離職した労働者についての労働者派遣の禁止(法第35条の4)
 ⑮ 派遣元責任者の選任(法第36条)
 ⑯ 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存(法第37条)

 

2.有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(法第30条)

(1) 概要
 派遣元事業主は、その期間を定めて雇用する派遣労働者又は派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者(相当期間にわたり期間を定めて雇用する派遣労働者であった者その他の期間を定めないで雇用される労働者への転換を推進することが適当である者に限る。以下「有期雇用派遣労働者等」という。)の希望に応じ、次のイからハまでのいずれかの措置を講ずるように努めなければならない(法第30条)。
 この「有期雇用派遣労働者等」とは、次に掲げる者をいう(則第25条)。
 ① 当該派遣元事業主に雇用された期間が通算して1年以上である、期間を定めて雇用する派遣
 労働者
 ② 当該派遣元事業主に雇用された期間が通算して1年以上である、派遣労働者として期間を定
 めて雇用しようとする労働者
(派遣元事業主が講ずべき措置)
  期間を定めないで雇用する派遣労働者として就業させることができるように就業の機会を確保し、又は派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに、これらの機会を有期雇用派遣労働者等に提供すること。
   当該派遣元事業主が職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして職業紹介を行うことができる場合にあっては、有期雇用派遣労働者等を紹介予定派遣の対象とし、又は紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れること。
   イ又はロに掲げるもののほか、有期雇用派遣労働者等を対象とした期間を定めないで雇用される労働者への転換のための教育訓練その他の期間を定めないで雇用される労働者への転換を推進するための措置を講ずること。
 なお、この措置に関連して、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(第8の23参照)において、有期雇用派遣労働者等の希望の把握に関し次のような内容が盛り込まれているので十分留意すること。
(2) 意義
 本人が希望しないにもかかわらず、有期契約による派遣という働き方を選択している派遣労働者について、その希望に応じ、できる限り無期の労働契約で雇用されるようにしていくことは、派遣労働者の雇用の安定を図る上で重要である。そのため、派遣元事業主に対し、有期雇用派遣労働者等の希望に応じ、期間を定めないで雇用する労働者への転換推進措置を講ずるよう努力義務を課すものである。
(3) 有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置に関する留意点
  「派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者」とは、労働者派遣の対象となるものとして将来期間を定めて雇用しようとする労働者をいうこと。具体的には、いわゆる登録型で労働者派遣事業が行われる場合における登録状態にある労働者であって、派遣労働者として実際
に雇用しようとするものが該当すること。
   当該転換推進措置は、(1)のイ、ロ又はハのいずれかの事項について、講ずることが求められるものであること。
 「その他の期間を定めないで雇用される労働者への転換を推進するための措置」としては、例えば、期間を定めないで雇用される労働者への転換に資する各種講習・セミナー、キャリアコンサルティング等の実施や、これらの受講支援に資する措置の導入等が考えられること。
   「派遣元事業主に雇用された期間が通算して1年以上」とは、派遣元事業主に最初に雇用されてからその時点までの雇用期間が通算して1年以上であるかどうかで判断すること(派遣労働者が複数の事業所に所属していた場合であっても、契約の相手方である派遣元事業主が同一である場合には、その期間を通算する。)。
 ただし、労働基準法等の規定により関係書類の保存が義務付けられている期間を超える部分については、派遣元事業主の人事記録等により雇用関係の有無が実際に確認できる範囲で判断することとして差し支えない。
 なお、労働者が当該派遣元事業主から給与が支払われた事実が確認できる書類(給与明細等)を持参してきた場合には、当該給与の支払対象となった期間については、雇用関係があったものとして取り扱う。
   有期雇用派遣労働者等の無期雇用への転換に係る希望の把握については、派遣元事業主は対象者全員に希望の有無を聞くことが望ましいが、雇入時に無期雇用への転換推進措置の制度を説明し、無期雇用への転換を希望する場合の当該派遣元事業主における相談窓口等を紹介することでも差し支えない。
 
3.均衡を考慮した待遇の確保のための措置(法第30条の2)
(1) 概要
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない(法第30条の2第1項)。
 また、派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者について、教育訓練及び福利厚生の実施その他当該派遣労働者の円滑な派遣就業の確保のために必要な措置を講ずるように配慮しなければならない(法第30条の2第2項)。
 なお、この措置に関連して、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(第8の23参照)において、均衡を考慮した待遇の確保に関し次のような内容が盛り込まれているので十分留意するこ
(2) 意義
   派遣労働者の待遇については、実態として正社員との間で格差が存在すること等が指摘されている。このため、派遣元事業主に対し、派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準、当該派遣労働者の職務内容等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するよう配慮義務を課すものである。
   また、派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者との均衡を考慮しつつ、教育訓練・福利厚生の実施等の措置を講ずるよう配慮義務を課すものである。
  なお、均衡を考慮した待遇の確保のための措置が適切に講じられるよう、派遣先は、派遣元事業主からの求めに応じて、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の労働者に関する情報であって、当該措置に必要なものを提供するなど、必要な協力をするように努めなければならないものである(法第40条第3項)。
   この規定に関連して、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の9の(1)(第9の16参照)において、派遣先は、労働者派遣法第40条第3項の規定に基づき、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事している労働者等の賃金水準、教育訓練、福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を派遣元事業主に提供するとともに、派遣元事業主が当該派遣労働者の成果等に応じた適切な賃金を決定できるよう、派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者の職務の評価等に協力をするよう努めなければならないものとしていることにも十分留意すること。
(3) 均衡を考慮した待遇の確保のための措置に関する留意点
  「派遣労働者の従事する業務と同種の業務」に該当するか否かについては、業務内容等を勘案しつつ、個々の実態に即して判断する必要があるが、例えば、複数の労働者がチームを組んで作業する場合に、そのチームメンバーの一員として派遣労働者も参画し、かつ、派遣先に雇用される労働者と同様の業務に従事している場合等には、基本的には「同種の業務」に従事しているものとして取扱うことが考えられる。また、厚生労働省編職業分類の細分類項目を参考にすることも考えられる。一般の労働者との比較に際しても、このような取扱いを参考にすることが考えられる。
  均衡を考慮する必要がある「賃金」の範囲は、労働基準法の賃金に含まれるかどうかにより判断すること。
  「派遣労働者の円滑な派遣就業の確保のために必要な措置」とは、例えば、福利厚生施設の利用、職場内研修への参加等が考えられること。
   また、各種手当等の取扱いについても、派遣先に雇用される労働者等との均衡等を踏まえた措置を講ずることが望ましい。
  なお、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮した結果のみをもって、当該派遣労働者の賃金を従前より引き下げるような取扱いは、法第30条の2第1項の趣旨を踏まえた対応とはいえず、労働契約の一方的な不利益変更との関係でも問題が生じうる。
  「労働者派遣に係る業務を円滑に遂行する上で有用な物品の貸与や教育訓練の実施等」とは、例えばOA機器操作を円滑に行うための周辺機器の貸与や、着衣への汚れを防止するための衣服、手袋等の支給、業務を迅速に進めるための研修の受講等、様々なものが考えられ、派遣元事業主は、派遣先に対し、派遣労働者と同種の業務に従事している労働者等の福利厚生等の実状について情報提供を求める、派遣労働者に要望を聴取する等を通じて実状を把握し、必要な措置を講ずるよう努めなければならないものである。
 
4.派遣労働者等の福祉の増進(法第30条の3)
(1) 概要
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について、各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない(法第30条の3)。
 なお、この措置に関連して、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(第8の23参照)において、派遣労働者等の福祉の増進に関し次のような内容が盛り込まれているので十分留意すること。
(2) 意義
  「派遣労働者として雇用しようとする労働者」とは、労働者派遣の対象となるものとして将来雇用しようとする労働者をいう。具体的には、いわゆる登録型で労働者派遣事業が行われる場合における登録状態にある労働者が主に想定される。
 したがって、派遣元事業主は、現に雇用している労働者だけではなく、登録中の労働者等、派遣労働者として雇用しようとする労働者についても、以下ロからホまでの福祉の増進を図るよう努めなければならない。
  「各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機会の確保」とは、個々の労働者の適正、能力及び経験を勘案してこれに最も適合し、かつ、当該労働者の就業ニーズ、就業する期間、日、1日における就業時間、就業場所、派遣先の職場環境についてその希望に適合するような就業機会の確保のことである。
   「教育訓練の機会の確保」とは、職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第4条第1項の規定を満たすだけではなく、労働者の就業機会を確保するのに適した教育訓練の機会を確保することであり、具体的には、例えば、派遣元事業主が許可を受けようとする際に提出する事業計画書中の教育訓練に関する計画に基づいて、適切に教育訓練を実施することである。
   「労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置」とは、賃金、労働時間、安全衛生、災害補償等労働者の職場における待遇である労働条件について、よりよい条件の下における労働者の就業機会の確保、社会保険、労働保険の適用の促進、福利厚生施設の充実等に努めることである。
 
派遣労働者への配慮措置等逐条まとめ
1.労働者派遣契約を解除した場合の派遣先事業所等の措置(法第29条の2)
 ① 派遣先の派遣契約解除の際の措置
 派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により契約の途中で労働者派遣契約の解除を行う場合には、派遣労働者の休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額について損害の賠償を行うことを派遣契約に定めなければない。  
 また、派遣期間は、可能な限り長く定める等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
 ② 派遣契約解除の通告
 派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。
 ③ 派遣先による派遣労働者の就業の確保
 派遣先は、派遣先の都合により派遣契約の途中解除が行われた場合には、派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
 ④ 派遣先の損害賠償
 派遣先は、派遣先の都合により労働者派遣契約を解除した場合には、休業手当に相当する額以上の額、解雇予告手当等の相当額の途中契約解除にともなう損害の賠償を行わなければならないこと。
 ⑤ 労働者派遣契約の解除の理由の明示
 派遣先は、労働者派遣契約の途中解除を行う場合は、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除の理由を派遣元事業主に対し明らかにすること
 ※派遣労働者の休業手当(労働基準法第26条)及び解雇予告手当(同法第20条)等の規定による措置義務は、派遣元事業主に課されています。労働者派遣法においては、労働者派遣契約に途中解除の際の派遣先による派遣労働者の雇用の安定に関する措置に関する規定を設けるように義務付けています。
 そして、労働者派遣契約中に派遣先の都合による契約解除の際の派遣先が行うべき「派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」の規定が無い場合であっても、法第29条の2の規定により、派遣労働者の責任による場合を除き派遣先事業主は、派遣労働者に対する措置を行う義務があります。
 
2.派遣元事業主の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置(法第29条の2関連)
 ① 派遣労働者を採用時
 派遣元事業主は、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
 ② 労働者派遣契約の締結時
 派遣元事業主は、派遣先の都合により労働者派遣契約の途中解除を行う場合は、少なくとも派遣労働者の休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上について損害の賠償を行うことを定めるよう求めること
 ③ 派遣元事業主が労働者派遣契約の解除にともない行う措置 
 派遣元事業主は、派遣先と連携して同派遣先からその関連会社での就業のあっせんを受けること、同派遣先での派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること、就業先がない場合には休業手当の支払・解雇予告手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすこと
 
3.派遣元による有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(法第30条)
 派遣元事業主が派遣労働者の雇用の安定等のために行う措置(努力義務)
 ① 無期雇用への転換
 無期雇用の派遣労働者としての就業の機会を確保し、又は派遣労働者以外の無期雇用労働者としての雇用の機会を確保するとともに、これらの機会を有期雇用派遣労働者等に提供すること。
 ※有期雇用派遣労働者とは、雇用された期間が通算して1年以上である者又は通算して1年以上である派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする者
 ② 職業紹介を行う事業主の場合
 有期雇用派遣労働者につき、紹介予定派遣の対象とし又は紹介予定派遣対象の派遣労働者として雇用すること
 ③ 教育訓練等
 教育訓練その他の無期雇用労働者への転換を推進するための措置
 
4.均衡を考慮した待遇の確保のための措置(法第30条の2)
 ① 同一労働同一賃金の均衡配慮
 派遣元事業主は、同種の業務の労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない。
 また、教育訓練及び福利厚生の実施その他派遣労働者の円滑な派遣就業の確保のために必要な措置を講ずるように配慮しなければならない。具体的には、次の通り。
 ア 賃金
 派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準、当該派遣労働者の職務内容等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するよう配慮義務を課すもの 
 イ 教育訓練等
 教育訓練・福利厚生の実施等の措置を講ずるよう配慮義務課が課されること
 ウ 派遣先の協力
 派遣先は、派遣元事業主からの求めに応じて、均衡考慮に必要な協力をするように努めなければならない
 
5.派遣労働者等の福祉の増進(法第30条の3)
 派遣元事業主は、派遣労働者の福祉の増進を図るように努めなければならない。
 ① 各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機会の確保
 個々の労働者の適正、能力及び経験を勘案してこれに最も適合し、かつ、当該労働者の就業ニーズ、就業する期間、日、1日における就業時間、就業場所、派遣先の職場環境についてその希望に適合するような就業機会の確保 
 ② 教育訓練の機会の確保
 例えば、派遣元事業主が許可を受けようとする際に提出する事業計画書中の教育訓練に関する計画に基づいて、適切に教育訓練を実施すること
 
 
 
以上で労働者派遣法第29条の2・第30条・第30条の2・第30条の3を終了します。