2015年06月20日 15:21
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
第31条(適正な派遣就業の確保)
派遣元事業主は、派遣先がその指揮命令の下に派遣労働者に労働させるに当たつて当該派遣就業に関しこの法律又は第四節の規定により適用される法律の規定に違反することがないようにその他当該派遣就業が適正に行われるように、必要な措置を講ずる等適切な配慮をしなければならない。
第31条の2(待遇に関する事項等の説明)
派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、厚生労働省令で定
めるところにより、当該労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃
金の額の見込みその他の当該労働者の待遇に関する事項その他の厚生労働省令で定める事
項を説明しなければならない。
則第25条の2(待遇に関する事項等の説明)
法第三十一条の二の規定による説明は、書面の交付等その他の適切な方法により行わなければならない。ただし、次項第一号に規定する労働者の賃金の額の見込みに関する事項の説明は、書面の交付等の方法により行わなければならない。
2 法第三十一条の二の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込みその他の当該労働者の待遇に関する事項
二 事業運営に関する事項
三 労働者派遣に関する制度の概要
第32条(派遣労働者であることの明示等)
派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨(紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れようとする場合にあつては、その旨を含む。)を明示しなければならない。
2 派遣元事業主は、その雇用する労働者であつて、派遣労働者として雇い入れた労働者以外のものを新たに労働者派遣の対象としようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨(新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合にあつては、その旨を含む。)を明示し、その同意を得なければならない。
○業務取扱要領による確認
1.派遣元事業主が構図べき措置等(再掲)
一般労働者派遣事業であると特定労働者派遣事業であるとを問わず、派遣元事業主は、次の措置等を講じなければならない。
① 有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(法第30条)
② 均衡を考慮した待遇の確保のための措置(法第30条の2)
③ 派遣労働者等の福祉の増進のための措置(法第30条の3)
④ 適正な派遣就業の確保のための措置(法第31条)
⑤ 待遇に関する事項等の説明(法第31条の2)
⑥ 派遣労働者であることの明示等(法第32条)
⑦ 派遣労働者に係る雇用制限の禁止(法第33条)
⑧ 就業条件の明示(法第34条)
⑨ 労働者派遣に関する料金の額の明示(法第34条の2)
⑩ 派遣先への通知(法第35条)
⑪ 派遣受入期間の制限の適切な運用(法第35条の2)
⑫ 派遣先及び派遣労働者に対する派遣停止の通知(法第35条の2)
⑬ 日雇労働者についての労働者派遣の原則禁止(法第35条の3)
⑭ 離職した労働者についての労働者派遣の禁止(法第35条の4)
⑮ 派遣元責任者の選任(法第36条)
⑯ 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存(法第37条)
5.適正な派遣就業の確保(法第31条)
(1) 概要
派遣元事業主は、派遣先がその指揮命令の下に当該派遣元事業主が雇用する派遣労働者を労働させるに当たって当該派遣就業に関し法又は法第3章第4節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)に違反することがないよう、その他当該派遣就業が適正に行われるように、必要な措置を講じる等適切な配慮をしなければならない(法第31条)。
なお、この措置に関連して、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(第8の23参照)において、①派遣先との連絡体制の確立、②関係法令の関係者への周知に関し次のような内容が盛り込まれているので十分留意すること。
「派遣先との連絡調整」には、派遣労働者の適正な派遣就業の確保のために必要となる連絡調整が広く含まれるものであり、例えば、派遣労働者に対する年次有給休暇、産前産後休業、育児休業又は介護休業の付与は、派遣元事業主の義務となっているところであるが、派遣労働者が派遣先における業務遂行に気兼ねして休業の申出を行いにくいことがないよう、これらの休業の取得に関して十分な連絡調整を行うこと等、派遣労働者の適正な派遣就業の確保のために必要となる連絡調整が広く含まれるものである。
「関係者」とは、派遣労働者(登録中のものを含む。)、派遣先等がこれに該当するものである。
(2) 意義
「法又は法第3章第4節の規定により適用される法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)」は、第7の4の(3)と同じ規定である。
(3) 具体的配慮の内容
「適切な配慮」の内容は、具体的には、例えば、次のようなものである。
① 法違反の是正を派遣先に要請すること。
② 法違反を行う派遣先に対する労働者派遣を停止し、又はその派遣先との間の労働者派遣契約
を解除すること(第7の4参照)。
③ 派遣先に適用される法令の規定を習得すること。
④ 派遣元責任者に派遣先の事業所を巡回させ、法違反がないよう事前にチェックすること。
⑤ 派遣先との密接な連携の下に、派遣先において発生した派遣就業に関する問題について迅速
かつ的確に解決を図ること。
6.待遇に関する事項等の説明(法第31条の2)
(1) 概要
派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、当該労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込みその他の当該労働者の待遇に関する事項等を説明しなければならない(法第31条の2)。
(2) 意義
派遣労働者として就労しようとする労働者が、実際の就労時の賃金の額の見込み等を事前に把握し、安心・納得して働くことができるよう、派遣元事業主に対し、待遇に関する事項等の説明義務を課すものである。
(3) 説明すべき待遇に関する事項等
説明すべき事項は、次のとおりである(則第25条の2第2項)。
イ 労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込みその他の当該労働者の待遇に関する事項
・ 「賃金の額の見込み」とは、当該労働者の能力・経験・職歴・保有資格等を考慮し、当該労働者を派遣労働者として雇用した場合の現時点における賃金額の見込みであり、一定の幅があっても差し支えないこと。
・ 「その他の当該労働者の待遇に関する事項」とは、想定される就業時間や就業日・就業場所・派遣期間、社会保険・労働保険の適用の有無、教育訓練、福利厚生等が該当するが、当該時点において説明可能な事項について労働者に説明することで差し支えないこと。
ロ 事業運営に関する事項
具体的には、派遣元事業主の会社の概要(事業内容、事業規模等)を指しており、例えば、既存のパンフレット等がある場合には、それを活用して説明することで差し支えないこと。
ハ 労働者派遣に関する制度の概要
「労働者派遣に関する概要」の説明については、労働者派遣制度の大まかな概要が分かれば足りるものであり、例えば、派遣元事業主で作成している既存の資料や厚生労働省で作成している派遣労働者向けのパンフレットを活用して説明することで差し支えないこと。
(4) 説明の方法
イ 待遇に関する事項等の説明は、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信その他の適切な方法により行わなければならない。ただし、賃金の額の見込みを説明する場合には、書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信により行わなければならない。(則第25条の2第1項)。
ロ 「その他の適切な方法」としては、例えば、口頭やインターネットによる説明が考えられること。なお、インターネットにより説明する場合には、派遣元事業主のホームページのリンク先を明示するなど、労働者が確認すべき画面が分かるようにする必要があること。
ハ 賃金の額の見込みを電子メールの送信により説明する場合には、電子メールの本文の中で賃金の額の見込みを明示する必要があり、派遣元事業主のホームページのリンク先を明示することによって説明に代えることは原則として認められない。
ニ 「派遣労働者として雇用しようとする労働者」とは、例えば、いわゆる登録型で労働者派遣事業が行われる場合における登録状態にある労働者等が該当すること。
(5) 違反の場合の効果
(1)に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
7. 派遣労働者であることの明示等(法第32条)
(1) 雇入れの際の明示
イ 概要
派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨(紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れる場合にあっては、その旨を含む。)を明示しなければならない(法第32条第1項)。
また、派遣労働者の労働条件の明確化を図るため、モデル労働条件通知書により労働契約内容が明示されるようにする。
ロ 雇入れの際の明示の意義
(イ) 雇入れの際の明示は、労働者が派遣労働者という地位(第1の2参照)を取得して雇用されること(紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れる場合にあっては、その旨を含む。)を個々に明確にするために行うものである。このため、派遣労働者となるのかどうか(紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れる場合にあっては、紹介予定派遣に係る派遣労働者となるのかどうか)が不明確なものであってはならない。
(ロ) 明示は、労働契約の締結に際し、事前に行われなければならない。
(ハ) 労働者を派遣労働者として雇い入れようとする際に、あらかじめ、その旨(紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れる場合にあっては、その旨を含む。)を明示し、それを承知で当該労働者が雇い入れられた場合は、派遣労働者となることについて同意が得られたものと解され、それが労働契約の内容となっていると解される。
ハ モデル労働条件通知書の普及
派遣労働者の労働条件の明確化を図るため、許可、届出書の受理の機会等をとらえて、派遣労働者の雇入れの際にモデル労働条件通知書(第15 様式集参照)により当該派遣労働者との労働契約内容を明示するよう、様式の利用を勧奨すること。
ニ 登録型については、労働条件の通知と就業条件等の明示(第8の9参照)が同時に行われ、また、短期の雇用契約を繰り返し行う派遣労働者については、その都度行われるものであるが、労働条件通知書の雇用・社会保険の加入状況は派遣労働者と新たな雇用契約を締結して雇い入れ、労働条件通知書を明示する際に加入又は適用されていなくても、繰り返し雇用契約を締結し、被保険者資格を取得した際に加入又は適用とすればよく、その旨の徹底を図ることにより、この加入又は適用状況の明示ができないことを理由に通知、明示が遅れることのないよう努めること。
(2) 雇入れ後、派遣労働者とする場合の明示及び同意
イ 概要
派遣元事業主は、その雇用する労働者であって、派遣労働者として雇い入れた労働者以外のものを新たに労働者派遣の対象としようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨(新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合にあっては、その旨を含む。)明示し、その同意を得なければならない(法第32条第2項)。
ロ 意義
(イ) 「新たに労働者派遣の対象としようとする」とは、派遣労働者としての地位を取得していない労働者に対し新たに当該地位を取得させようとすることをいい、既に当該地位を取得している派遣労働者については労働者派遣を行うごとに同意を要するものではない。
ただし、派遣労働者として雇い入れた労働者を、新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合には、明示及び同意を要するものである。
(ロ) 明示及び同意は、労働者派遣の実施に際し、事前に行われなければならない。
(3) 派遣労働者であることの明示等に関する留意点
イ 雇入れの際の明示に当たって、労働協約又は就業規則に「労働者派遣の対象となる」旨(紹介予定派遣の対象となる場合にはその旨)の定めがある場合に当該労働協約等を明示し当該労働者が当該労働協約又は就業規則の適用対象であることが明確である場合は、当該労働協約等の明示をすれば雇入れの際の明示と解し得るものであること。
ロ 雇入れ後、派遣労働者とする場合の明示及び同意については、当該労働者を採用した後に、新たに労働協約又は就業規則に「労働者派遣の対象となる」旨の定めを設けた場合であっても、それだけでは、明示及び同意があったとは解されず新たに労働者派遣の対象とする際に個々の労働者について、あらかじめ、行わなければならないものである。
ハ 労働者を新たに派遣労働者とするに当たっての不利益取扱いの禁止
派遣元事業主は、労働者を新たに派遣労働者としようとする場合であって、当該労働者がその旨(新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合にあっては、その旨を含む。)同意をしないときにおいて、当該労働者に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の7(第8の23参照))。
ニ 労働者を派遣労働者として転籍させる場合の取扱い
事業主が自ら雇用する労働者を転籍させる場合における一般的な取扱いと同じく、事業主は雇用する労働者を当該事業主以外の派遣元事業主に雇用される派遣労働者として転籍させようとするときについても、あらかじめ労働者にその旨(新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合にあっては、その旨を含む。)を明示し、その同意を得なければならないものであり、その旨の周知、指導の徹底を図る。
ホ 紹介予定派遣の対象者として登録を行う場合の取扱い
派遣元事業主は紹介予定派遣の対象として登録しようとするときは、あらかじめその旨を当該労働者に明示しなければならないものであり、その旨の周知、指導の徹底を図ること(既に労働者派遣の登録を行い、又は求職の申込みをしている者を紹介予定派遣の対象とする場合も同様の取扱いとする。)。
(4) 違反の場合の効果
(1)及び(2)に違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
なお、(1)及び(2)は、派遣労働者という地位を取得する場合に労働者保護の観点から加えられた公法的な規制であり、これに反して明示又は明示及び同意を経ない労働者を労働者派遣した場合における労働契約又は労働者派遣契約の効果を直接規律するものではない。
○逐条まとめ
1.適正な派遣就業の確保(法第31条)
派遣元事業主は、派遣就業が適正に行われるように必要な措置を講ずる等適切な配慮をしなければならない。
「適切な配慮」の内容は、具体的には、例えば、次のようなものである。
① 法違反の是正を派遣先に要請すること。
② 法違反を行う派遣先に対する労働者派遣を停止し、又はその派遣先との間の労働者派遣契約
を解除すること。
③ 派遣先に適用される法令の規定を習得すること。
④ 派遣元責任者に派遣先の事業所を巡回させ、法違反がないよう事前にチェックすること。
⑤ 派遣先との密接な連携の下に、派遣先において発生した派遣就業に関する問題について迅速
かつ的確に解決を図ること。
2.待遇に関する事項等の説明(法第31条の2)
派遣元事業主は、派遣労働者の待遇に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項を説明しなければならない。
またこの説明は、書面の交付等(賃金の額の見込みに関する事項は必ず書面の交付等のよること。)その他の適切な方法により行わなければならない。
(ⅰ) 説明すべき事項は、次のとおり。
イ 労働者を派遣労働者として雇用した場合における当該労働者の賃金の額の見込み
その他の当該労働者の待遇に関する事項
ロ 事業運営に関する事項
ハ 労働者派遣に関する制度の概要
(ⅱ) 説明の方法は次のとおり。
イ 書面の交付、ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信その他の適切な方法
ただし、賃金の額の見込みを説明する場合には、書面の交付若しくはファクシミリを利用
してする送信又は電子メールの送信により行わなければならない
また、派遣元事業主のホームページのリンク先を明示することによって説明に代えることは
原則として認められない
ロ その他の適切な方法」としては、例えば、口頭やインターネットによる説明が考えられること
なお、インターネットにより説明する場合には、派遣元事業主のホームページのリンク先
を明示するなど
(ⅲ)その他
ア 派遣労働者として雇用しようとする労働者とは、例えば登録状態にある労働者等が
該当すること
イ 違反した場合、許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となること
7. 派遣労働者であることの明示等(法第32条)
(1)雇い入れ時の明示
派遣元事業主は、派遣労働者にその旨(紹介予定派遣の場合はその旨。)を明示しなければならない。
また、明示は、労働契約の締結に際し、事前に行われなければならない。
(2)雇い入れ後の明示
「新たに労働者派遣の対象としようとする」とは、新たに当該地位を取得させようとすることをいい、既に当該地位を取得している派遣労働者については除外される。また、労働者派遣を行うごとに同意を要するものではない。
ただし、派遣労働者として雇い入れた労働者を、新たに紹介予定派遣の対象としようとする場合には、明示及び同意を要する。
紹介予定派遣の対象として労働者を登録しようとするときは、あらかじめその旨を労働者に明示しなければならない(既に労働者派遣の登録を行い又は求職の申込みをしている者を紹介予定派遣の対象とする場合も同様の取扱いとすること。)。
(3)違反の場合の措置
違反した場合、派遣元事業主は、許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となる。
以上で労働者派遣法第31条・第31条の2・第32条を終了します。