労働者派遣法第38条、第39条、第40条

2015年06月24日 17:41

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第38条(準用)

 第三十三条及び第三十四条第一項(第三号を除く。)の規定は、派遣元事業主以外の労働者派遣をする事業主について準用する。この場合において、第三十三条中「派遣先」とあるのは、「労働者派遣の役務の提供を受ける者」と読み替えるものとする。

 

第39条(労働者派遣契約に関する措置)

 

 派遣先は、第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項に関す

る労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければならない。

 

第40条(適正な派遣就業の確保等)

 

 派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の

申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣

元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処

理を図らなければならない。

2 前項に定めるもののほか、派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者につ

いて、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、

診療所、給食施設等の施設であつて現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用してい

るものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるように努めなければならない。

3 派遣先は、第三十条の二の規定による措置が適切に講じられるようにするため、派遣

元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種

の業務に従事する当該派遣先に雇用される労働者に関する情報であつて当該措置に必要な

ものを提供する等必要な協力をするように努めなければならない。

 

法第38条の考察

 第三十三条及び第三十四条第一項(第三号を除く。)の規定は、派遣元事業主以外の労働者派遣をする事業主について準用する。

法第33条

 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であつた者を含む。次項において同じ。)は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

法第34条

 派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明示しなければならない。

 一 当該労働者派遣をしようとする旨

 二 第二十六条第一項各号に掲げる事項その他厚生労働省令で定める事項であつて当該派遣労働者に係るもの

 

※派遣労働者に係る雇用制限の禁止は、派遣元事業主以外の事業主が労働者派遣をする場合も適 用されるとされています。この派遣元事業主以外の事業主が労働者派遣をする場合の具体例が今のところ把握できません。

 

法第39条、第40条(派遣先の措置)

 派遣先事業主が講ずべき措置等

 労働者派遣事業は、派遣労働者がその雇用されている派遣元事業主ではなく、派遣先から指揮命令を受けて労働に従事するという形態で事業が行われる。
 このため、派遣労働者の保護を図るためには、現実の就業場所である派遣先において派遣労働者の適正な就業が確保され、派遣労働者が派遣先で指揮命令を受けることに伴い生じた苦情等が適切かつ迅速に処理されることが必要である。
 以上の観点から、一般労働者派遣事業であると特定労働者派遣事業であるとを問わず、派遣元事業主から労働者派遣を受けた派遣先は、次のような措置等を講じなければならない。
 ① 労働者派遣契約に関する措置(法第39 条)
 ② 適正な派遣就業の確保等のための措置(法第40 条)
 ③ 派遣受入期間の制限の適切な運用(法第40 条の2)
 ④ 派遣労働者の雇用の努力義務(法第40 条の3)
 ⑤ 派遣労働者への労働契約の申込み義務(法第40 条の4、法第40 条の5)
 ⑥ 離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止(法第40 条の6)
 ⑦ 派遣先責任者の選任(法第41 条)
 ⑧ 派遣先管理台帳の作成、記載、保存及び記載事項の通知(法第42 条)

 

1.労働者派遣契約に関する措置(法第39 条)

(1) 概要
 派遣先は、労働者派遣契約の定め(第7の2の(1)のイにおける定め)に反することのないように適切な措置を講じなければならない(法第39 条)。
(2) 労働者派遣契約に定める就業条件の確保
 派遣先は、労働者派遣契約を円滑かつ的確に履行するため、次に掲げる措置その他派遣先の実態に即した適切な措置を講ずるものとする(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の2(第9の16 参照))。
   就業条件の周知徹底
 労働者派遣契約で定められた就業条件について、当該派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に掲示する等により、周知の徹底を図ること。
  就業場所の巡回
 定期的に派遣労働者の就業場所を巡回し、当該派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認すること。
   就業状況の報告
 派遣労働者を直接指揮命令する者から、定期的に当該派遣労働者の就業の状況について報告を求めること。
   労働者派遣契約の内容の遵守に係る指導
 派遣労働者を直接指揮命令する者に対し、労働者派遣契約の内容に違反することとなる業務上の指示を行わないようにすること等の指導を徹底すること。
(3) 労働者派遣契約の定めに違反する事実を知った場合の是正措置等
 派遣先は、労働者派遣契約の定めに反する事実を知った場合には、これを早急に是正するとともに、労働者派遣契約の定めに反する行為を行った者及び派遣先責任者に対し労働者派遣契約を遵守させるために必要な措置を講ずること、派遣元事業主と十分に協議した上で損害賠償等の善後処理方策を講ずること等の適切な措置を講ずるものとする(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の5(第9の16 参照))。
(4) 法第43 条による準用
 労働者派遣契約に関する措置は、派遣元事業主以外の事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける場合も適用される。

 

2.適正な派遣就業の確保等のための措置(法第40 条)

(1) 概要
  派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない(法第40 条第1項)。
   その他、派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設等の施設であって現に当該派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるよう努めなければならない(法第40 条第2項)。
   派遣先は、第8の3の規定による措置が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先に雇用される労働者に関する情報であって当該措置に必要なものを提供する等必要な協力をするように努めなければならない(法第40 条第3項)。
(2) 苦情の適切な処理
  苦情の申出
 派遣労働者から出される派遣先における苦情の申出(例えば、指揮命令の方法の改善等)は、派遣先事業主、派遣労働者を直接指揮命令する者、派遣先責任者に限らず派遣先や派遣先に代わって派遣労働者を管理する職務上の地位にある者が認識し得るものであれば申出としての効果を持つものであり、その方法は、書面によると口頭によるとを問うものではない。
  苦情の内容の派遣元事業主への通知
 苦情の申出を受けた場合は、当該苦情の内容を、遅滞なく、派遣元事業主に通知しなければならない。ただし、派遣先において、申出を受けた苦情の解決が容易であり、現実的にその苦情を即時に処理してしまったような場合は、あえて派遣元事業主に通知するまでの必要はない。
   苦情の処理の方法
 (イ) 派遣労働者の苦情が、派遣先の派遣労働者への対処方法のみに起因する場合は派遣先のみで解決が可能であるが、その原因が派遣元事業主にもある場合は、単独では解決を図ることが困難であり、派遣元事業主と密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図っていくことが必要である。いずれの場合においても、中心となってその処理を行うのは派遣先責任者であり、後者の場合にあっては、派遣先責任者が派遣元責任者と連絡調整を行いつつ、その解決を図らなければならない。
 (ロ) 派遣先は、派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施して、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣先において苦情の処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携を図るための体制等労働者派遣契約の内容について派遣労働者に説明するものとする(「派遣先の講ずべき措置に関する指針」第2の7(第9の16 参照))。
   苦情の申出を理由とする不利益取扱いの禁止
 派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由として、当該派遣労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁じられている(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の7(第9の16参照))。この禁止される「不利益な取扱い」には、苦情の申出を理由として当該派遣労働者が処理すべき業務量を増加させる等のような派遣労働者に対して直接行う不利益取扱いのほか、苦情の申出を理由として派遣元事業主に対して派遣労働者の交代を求めたり、労働者派遣契約の更新を行わない等の間接的に派遣労働者の不利益につながる行為も含まれるものである。
 また、派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由とする労働者派遣契約の解除は、法第27 条に違反するものでもある(第7の3の(3)のハ参照)ので、これらについて十分に周知指導を行うこと。
(3) 適正な就業環境の確保
   適正な就業環境の確保
 (イ) 適切な就業環境の維持、福利厚生等
 派遣先は、その指揮命令の下に労働させている派遣労働者について、派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、セクシュアルハラスメントの防止等適切な就業環境の維持、その雇用する労働者が通常利用している診療所、給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るように努めなければならない。(「派遣先の講ずべき措置に関する指針」第2の9の(1)(第9の16 参照))
 (ロ)均衡を考慮した待遇の確保に必要な派遣先の協力
 派遣先は、労働者派遣法第40 条第3項の規定に基づき、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事している労働者等の賃金水準、教育訓練、福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を派遣元事業主に提供するとともに、派遣元事業主が当該派遣労働者の職務の成果等に応じた適切な賃金を決定できるよう、派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者の職務の評価等に協力するよう努めなければならないこと(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の9の(1)(第9の16 参照))
 (ハ)教育訓練、能力開発
 派遣先は、派遣元事業主が行う教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発等の派遣労働者の教育訓練・能力開発について、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならないこと(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の9の(2)(第9の16 参照))。
   派遣労働者に対する説明会等の実施
 派遣先は、派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施し、派遣労働者が利用できる派遣先の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、派遣労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係についての説明及び職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の12(第9の16 参照))。
  派遣元事業主との連絡体制の確立
 派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36 条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の11(第9の16 参照))。
(4) 雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストへの労働者派遣の受け入れ
 派遣先は、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストに、当該解雇後3か月以内に派遣労働者を受け入れる場合には、必要最小限度の労働者派遣の期間を定めるとともに、当該派遣先に雇用される労働者に対し労働者派遣の役務の提供を受ける理由を説明する等、適切な措置を講じ、派遣先の労働者の理解が得られるよう努めること(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の16(第9の15 参照))。
 この趣旨は、安易な雇用調整の結果、派遣を受け入れるということは許されるものでなく、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストへの派遣の受入れについては、特に慎重に判断すべきことにある。なお、労働者派遣の「臨時的・一時的」な労働力の適正・迅速な需給調整としての位置づけを踏まえると、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストへの派遣の受入れについては、解雇後3か月以内かどうかにかかわりなく、慎重に対応することが適当であること。
(5) 安全衛生に係る措置
 派遣先は、派遣元事業主が雇入れ時の安全衛生教育を適切に行えるよう、派遣労働者が従事する業務に係る情報提供を派遣元事業主に対し積極的に提供するとともに、派遣元事業主から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には可能な限りこれに応じるよう努める等、派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うこと(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の17(第9の16 参照))。
 なお、「派遣労働者が従事する業務に係る情報提供」の内容としては、例えば、派遣労働者が派遣先で使用する機械・設備の種類・型式の詳細、作業内容の詳細、派遣先の事業場における労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育を行う際に使用している教材、資料等が考えられる。

 

第39条、第40条まとめ

労働者派遣契約に定める就業条件の確保

 イ 就業条件の周知徹底

 ロ 就業場所の巡回

 ハ 就業状況の報告

 ニ 労働者派遣契約の内容の遵守に係る指導

派遣先は、労働者派遣契約の定めに反する事実を知った場合には、これを早急に是正するとともに、労働者派遣契約の定めに反する行為を行った者及び派遣先責任者に対し労働者派遣契約を遵守させるために必要な措置を講ずる

 

適正な派遣就業の確保等のための措置(法第40 条)

 ア 苦情の適切な処理

  苦情の申出を受けた場合は、当該苦情の内容を、遅滞なく、派遣元事業主に通知しなければならない。ただし、派遣先において、申出を受けた苦情の解決が容易であり、現実的にその苦情を即時に処理してしまったような場合は、あえて派遣元事業主に通知するまでの必要はない。

 イ 苦情の処理の方法

  中心となって苦情処理を行うのは派遣先責任者であり、派遣元にも原因がある場合にあっては、派遣先責任者が派遣元責任者と連絡調整を行いつつ、その解決を図らなければならない。

  派遣先は、派遣労働者の受入れに際し、苦情の処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携を図るための体制等労働者派遣契約の内容について派遣労働者に説明すること。

  派遣先は、苦情の申出を理由とする派遣労働者の不利益取扱いが禁止されている。

 

適正な就業環境の確保

 ア 福利厚生

  派遣先事業所は、派遣先が雇用する労働者が通常利用している診療所、給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るように努めなければならない。

 イ 均衡考慮

  賃金水準、教育訓練、福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を派遣元事業主に提供するとともに、派遣元事業主が当該派遣労働者の職務の成果等に応じた適切な賃金を決定できるよう、派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者の職務の評価等に協力するよう努めなければならない。

 ウ 教育訓練、能力開発

  教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発等の派遣労働者の教育訓練・能力開発について、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならない。

 エ 派遣労働者に対する説明会等の実施

  派遣先は、説明会等を実施し、福利厚生に関する措置の内容及び派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係の説明、職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと。

 オ 派遣元事業主との連絡体制の確立

  36協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと。

 

・雇用調整により解雇したポストへの労働者派遣の受け入れ

  派遣先は、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストに、当該解雇後3か月以内に派遣労働者を受け入れる場合には、派遣先の労働者の理解が得られるよう努める。

 

安全衛生に係る措置

  派遣先は、派遣元事業主が雇入れ時の安全衛生教育を適切に行えるよう、派遣労働者が従事する業務に係る情報提供を派遣元事業主に対し積極的に提供するとともに、派遣元事業主から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には可能な限りこれに応じるよう努める等、派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うこと。

 

 

 

 

 

以上で労働者派遣法第38条・第39条・第40条を終了します。