労働者派遣法第40条の2

2015年06月25日 13:43

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律

第40条の2(労働者派遣の役務の提供を受ける期間

 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(次に掲げる業務を除く。第三項において同じ。)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

 一 次のイ又はロに該当する業務であつて、当該業務に係る労働者派遣が労働者

     の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資す

     ると認められる雇用慣行を損なわないと認められるものとして政令で定める業

      務 

イ その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務

ロ その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務

二 前号に掲げるもののほか、次のイ又はロに該当する業務

イ 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているもの

ロ その業務が一箇月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の一箇月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務

三 当該派遣先に雇用される労働者が労働基準法第六十五条第一項及び第二項の規定により休業し、並びに育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業をする場合における当該労働者の業務その他これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合における当該労働者の業務

四 当該派遣先に雇用される労働者が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第二号に規定する介護休業をし、及びこれに準ずる休業として厚生労働省令で定める休業をする場合における当該労働者の業務

2 前項の派遣可能期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間とする。

一 次項の規定により労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間が定められている場合 その定められている期間

二 前号に掲げる場合以外の場合 一年

3 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から一年を超え三年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を定めなければならない

4 派遣先は、前項の期間を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合に対し、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に対し、当該期間を通知し、その意見を聴くものとする。

5 派遣先は、労働者派遣契約の締結後に当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る業務について第三項の期間を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について第一項の規定に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない。

6 厚生労働大臣は、第一項第一号の政令の制定若しくは改正の立案をし、又は同項第三号若しくは第四号の厚生労働省令の制定若しくは改正をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

 

令第5条(法第四十条の二第一項第一号の政令で定める業務)

 法第四十条の二第一項第一号の政令で定める業務は、前条第一項各号に掲げる業務及び次に掲げる業務とする。

一 映像機器、音声機器等の機器であつて、放送番組等(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第一号に規定する放送の放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成される作品であつて録画され、又は録音されているものをいう。以下同じ。)の制作のために使用されるものの操作の業務

二 放送番組等の制作における演出の業務(一の放送番組等の全体的形成に係るものを除く。)

三 建築物における清掃の業務

四 建築設備(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第三号に規定する建築設備をいう。次号において同じ。)の運転、点検又は整備の業務(法令に基づき行う点検及び整備の業務を除く。)

五 建築物に設けられ、又はこれに附属する駐車場の管理の業務その他建築物に出入りし、勤務し、又は居住する者の便宜を図るために当該建築物に設けられた設備(建築設備を除く。)であつて当該建築物の使用が効率的に行われることを目的とするものの維持管理の業務(第三号に掲げる業務を除く。)

六 建築物内における照明器具、家具等のデザイン又は配置に関する相談又は考案若しくは表現の業務(法第四条第一項第二号に規定する建設業務を除く。)

七 放送番組等における高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする原稿の朗読、取材と併せて行う音声による表現又は司会の業務(これらの業務に付随して行う業務であつて、放送番組等の制作における編集への参画又は資料の収集、整理若しくは分析の業務を含む。)

八 電話その他の電気通信を利用して行う商品、権利若しくは役務に関する説明若しくは相談又は商品若しくは権利の売買契約若しくは役務を有償で提供する契約についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくはこれらの契約の申込み若しくは締結の勧誘の業務

九 放送番組等の制作のために使用される舞台背景、建具等の大道具又は調度品、身辺装飾用品等の小道具の調達、製作、設置、配置、操作、搬入又は搬出の業務(法第四条第一項第二号に規定する建設業務を除く。)

十 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第八項に規定する水道施設の消毒設備その他の設備、下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道、同条第四号に規定する流域下水道若しくは同条第五号に規定する都市下水路の消化設備その他の設備若しくは廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第八条第一項に規定する一般廃棄物処理施設(同項に規定するごみ処理施設にあつては、一日当たりの処理能力が十トン以上のものに限る。)の焼却設備その他の設備の運転、点検若しくは整備の業務(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする運転、点検又は整備の業務に限る。)又は非破壊検査用の機器の運転、点検若しくは整備の業務

 


則第33条(法第四十条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める場合)

 法第四十条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める場合は、労働基準法第六十

五条第一項の規定による休業に先行し、又は同条第二項の規定による休業若しくは

育児休業に後続する休業であつて、母性保護又は子の養育をするためのものをする

場合とする。

 

第33条の2(法第四十条の二第一項第四号の厚生労働省令で定める休業)

 法第四十条の二第一項第四号の厚生労働省令で定める休業は、介護休業に後続す

る休業であつて育児・介護休業法第二条第四号に規定する対象家族を介護するため

にする休業とする。

 

第33条の3(労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に関する事項)

 法第四十条の二第三項の規定により労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を定めるに当たつては、次に掲げる事項を書面に記載し、当該労働者派遣の終了の日から三年間保存しなければならない。

一 意見を聴いた法第四十条の二第四項に規定する労働者の過半数で組織する労働組合(以下この条及び次条において「過半数組合」という。)の名称又は労働者の過半数を代表する者(以下この条及び次条において「過半数代表者」という。)の氏名

二 次条第四項の規定により過半数組合又は過半数代表者に通知した事項及び通知した日

三 過半数組合又は過半数代表者から意見を聴いた日及び当該意見の内容

四 意見を聴いて、次条第四項第二号の労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間又は変更しようとする期間を変更したときは、その変更した期間

 

第33条の4

 過半数代表者は、次の各号のいずれにも該当する者とする。

一 労働基準法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。

二 法第四十条の二第四項の規定により意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。

2 前項第一号に該当する者がいない事業所にあつては、過半数代表者は前項第二

号に該当する者とする。

3 派遣先は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうと

したこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱

いをしないようにしなければならない。

4 法第四十条の二第四項の規定により過半数組合又は過半数代表者に対し意見を

聴く場合は、当該過半数組合又は過半数代表者に、次に掲げる事項を書面により通

知しなければならない。

一 労働者派遣の役務の提供を受けようとする業務

二 労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を新たに定める場合にあつては当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間及び開始予定時期、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を変更しようとする場合にあつては当該変更しようとする期間

5 法第四十条の二第五項の規定による通知は、同項の規定により通知すべき事項

に係る書面の交付等により行わなければならない。

 

派遣受け入れ期間

(いわゆる26業務を除き、1年又は1年~3年の期間内で派遣契約で定める期間、期限がある業務は3年以内のその期間、産休・育休・介護休の代替期間等)

1.派遣受入期間の制限の適切な運用
(1) 概要
 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(一部の業務を除く。)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない(法第40 条の2)。
(2) 意義
 「臨時的・一時的」な労働力の適正・迅速な需給調整のために行う労働者派遣について、派遣先における常用雇用労働者の派遣労働者による代替の防止の確保を図るためである。
(3) 派遣受入期間の制限を受ける業務の範囲
  派遣先は、次の①から⑤までの場合を除いて、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から派遣可能期間((5)により意見聴取を経て3年以内の派遣受入期間が定められている場合は当該定められた期間、それ以外の場合は1年)を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。
 ① 次の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する業務であって、当該業務に係る労働者派遣が労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を損なわないと認められるものとしてニに掲げる業務
 (ⅰ) その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要と
       する業務
 (ⅱ) その業務に従事する労働者について、雇用形態の特殊性により、特別の雇用管理を行う
      必要があると認められる業務
 ② 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内に完了する
     ことが予定されているもの(「有期プロジェクト業務」)
 ③ その業務が1か月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の1か月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、月10 日以下である業務(「日数限定業務」)
 (ⅰ)「通常の労働者」の所定労働日数とは、原則として、派遣先のいわゆる正規の従業員(常用雇用的な長期勤続を前提として雇用される者)の所定労働日数が「通常の労働者」の所定労働日数に該当する。
 ただし、当該派遣先の正規の従業員の方が少数である場合には、労働者派遣を受け入れようとする業務が属する事業場その他派遣就業の場所に、主として従事する労働者の所定労働日数を、「通常の労働者」の所定労働日数とする。
 したがって、例えば、正規の従業員が約2割の場外馬券売場の事業場で、所定労働日数が月8日の有期雇用の労働者が主として従事する馬券販売の担当部門において、日数限定業務として派遣受入期間の制限なしに労働者派遣を受けようとする場合には、「通常の労働者」の所定労働日数は、月8日となる。
 (ⅱ)「相当程度少なく」とは半分以下である場合をいう。したがって、例えば、通常の労働者
       の所定労働日数が月20 日の場合には、月10 日以下しか行われない業務が対象となる。
 (ⅲ)日数限定業務に該当するためには、その業務が、通常の労働者の1か月間の所定労働日数
       の半分以下、かつ、月10 日以下しか行われない業務であることが必要である。
 したがって、「通常の労働者の1か月間の所定労働日数の半分以下、かつ、月10 日以下」を超える日数行われている業務を分割又は集約し、その一部を「通常の労働者の1か月間の所定労働日数の半分以下、かつ、月10 日以下」となる範囲において派遣労働者に従事させ、他の日は派遣先に雇用されている従業員のみで対応するような場合は、日数限定業務には該当せず、派遣受入期間の制限を受けることとなる。(例えば月15 日発生する業務について分割し、月10 日間を派遣労働者に従事させ、残りの月5日間を派遣先に雇用されている従業員に行わせるような場合は、その業務は月15 日間行われていることから、日数限定業務に当たらない。)また、「通常の労働者の1か月間の所定労働日数の半分以下、かつ、月10 日以下」を超える日数行われている業務について、繁忙対策として、業務量の多い日のみ派遣先に雇用されている従業員に加え派遣労働者にも従事させるような場合も、日数限定業務には該当せず、派遣受入期間の制限を受けることとなる。
 (ⅳ)なお、日数限定業務に該当する業務としては、例えば、書店の棚卸し業務や、土日のみに
      行われる住宅展示場のコンパニオンの業務が想定される。
 ④ 産前産後休業及び育児休業、並びに産前休業に先行し、又は産後休業若しくは育児休業に後続する休業であって、母性保護又は子の養育をするための休業をする場合における当該労働者の業務(則第33 条)
 ⑤ 介護休業及び介護休業に後続する休業であって、育児・介護休業法第2条第4号に規定する対象家族を介護するためにする休業をする場合における当該労働者の業務(則第33 条の2)
 なお、④及び⑤の業務については、休業に入る労働者が従事していた業務を、休業に入る前に派遣労働者に対して引継ぎを行う場合及び当該業務に従事していた派遣労働者が、休業を終えて当該業務に復帰する労働者に対して引継ぎを行う場合は、当該時間が必要最小限のものである限り、④及び⑤の業務に含めて差し支えない。
   イの①に該当する業務であっても、イの①から⑤までに掲げる業務以外の業務を併せて行う労働者派遣の場合は、派遣受入期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。
 ただし、イの①から⑤の派遣受入期間の制限がない業務の実施に伴い、付随的にイの①から⑤以外の派遣受入期間の制限のある業務を併せて行う場合であって、かつ、派遣受入期間の制限がある業務の割合が通常の場合の1日当たり又は1週間当たりの就業時間数で1割以下の場合には、全体として派遣受入期間の制限を受けない業務として取り扱って差し支えない。
 なお、この場合には、労働者派遣契約において、それぞれの業務の内容及びそれぞれの業務の通常の場合の1日当たり又は1週間当たりの就業時間数又はその割合を定めることが必要である(第7の2の(1)のイの(ハ)の①及び⑤参照)。
 また、派遣先は上記の制限を遵守するため就業時間の管理を的確に行う必要がある。
   イの②の「一定の期間内」とは、3年以内とする。
   イの①に該当する業務は、次に掲げる業務である。
(4) 派遣受入期間の制限の適切な運用
 派遣先は、法第40 条の2の規定に基づき常用雇用労働者の派遣労働者による代替の防止の確保を図るため、次に掲げる基準に従い、事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない(法第40 条の2、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の14(第9の16 参照))。
   事業所その他派遣就業の場所については、課、部、事業所全体等、場所的に他の部署と独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断する。
   同一の業務については、労働者派遣契約を更新して引き続き当該労働者派遣契約に定める業務に従事する場合は同一の業務に当たるものとする。
 上記のほか、派遣先における組織の最小単位において行われる業務は、同一の業務であるとみなす。なお、この場合における最小単位の組織としては、業務の内容について指示を行う権限を有する者とその者の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりのうち最小単位のものをいい、係又は班のほか、課、グループ等が該当する場合もあり、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものとする。
 ただし、派遣労働者の受入れに伴い係、班等を形式的に分ける場合、労働者数の多いこと等に伴う管理上の理由により係、班等を分けている場合、係、班等の部署を設けていない場合であっても就業の実態等からこれらに該当すると認められる組織において行われる業務については、同一の業務であるとみなすものとする。
 偽りその他不正の行為により労働者派遣の役務の提供を受けている又は受けていた係、班等の名称を変更し、又は組織変更を行うなど、従来の係、班等とは異なる係、班等に新たに労働者派遣の役務の提供を受け、又は受けようとする場合には、同一の業務について労働者派遣の役務の提供を受け、又は受けようとしているものと判断する。
 その他法第40 条の2の規定に照らし、就業の実態等に即して同一の業務であるか否かを判断する。
  「同一の業務」に係る判断の具体例は次のとおりである。(略)
 なお、「同一の業務」については、更新された労働者派遣契約に基づき従前と同じ業務に就く場合のように紛れなく「同一の業務」に該当すると判断できる場合もあるが、我が国の企業組織においては、一般に個々の労働者の業務が細分化されて定義されておらず、上司の日々の指揮命令により所属組織の所掌事務の範囲内で柔軟に業務を遂行している実態からすると、個々人の業務はめまぐるしく変わっていくため、いかなる範囲を「同一の業務」ととらえるか判断が難しい場合が多い。このため、業務の内容についての最小の指揮命令単位(指揮命令権者は通常何らかの役職者であるから、最小の指揮命令単位は最末端の役職者(「係長」、「班長」、「グループ・リーダー」等)及びその指揮命令を受ける労働者のまとまり=組織の最小単位となる。)における業務を「同一の業務」とみなすことを判断基準とするものである。
  労働者派遣の役務の提供を受けていた派遣先が新たに労働者派遣の役務の提供を受ける場合に、当該新たな労働者派遣と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣との間の期間が3か月を超えないときは、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなす。
 派遣受入期間の判断は第7の2の(2)のホの(ハ)とは異なり、継続していると判断される最初の契約の始期から最後の契約の終期までの期間により行う。
  なお、ここでいう事業所とは、雇用保険法等雇用関係法令における概念と同様のものであり、出張所、支所等で、規模が小さく、その上部機関等との組織的関連ないし事務能力からみて一の事業所という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱う。
(5) 派遣受入期間の設定方法等
   (3)のイの①から⑤以外の業務の派遣受入期間の制限は、次のとおりである(法第40 条の2第2項)。
 (イ) ロにより労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間が定められている場合
  ・・・ その定められている期間
 (ロ) (イ)以外の場合 ・・・ 1年
   派遣先は当該派遣先の事業所その他の派遣就業の場所ごとの同一の業務((3)のイの①から⑤まで以外の業務)について、派遣元事業主から1年を超え3年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、あらかじめ、ハにより、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を定めなければならない(法第40 条の2第3項)。
  派遣先はロの期間を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合(以下「過半数組合」という。)、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)に対し、当該期間を通知し、その意見を聴くものとする(法第40 条の2第4項)。
 派遣先が過半数組合又は過半数代表者(以下「過半数組合等」という。)の意見を聴くこととする趣旨は、臨時的・一時的な業務の処理にどの程度の期間が必要かは、派遣先が判断すべき事項であるが、この判断をより的確に行うため、派遣先が臨時的・一時的な業務の処理に必要な期間であると判断したものが適当であるかについて、現場の実状等をよく把握している派遣先の労働者の意見を聴くこととするものである。
 こうした趣旨や以下に掲げる内容を十分に踏まえ、意見聴取が確実に行われるよう、また意見が尊重されるよう、関係者に対する十分な周知及び指導を行うこと。
 なお、当該手続は、次によるものとする。
 (イ) 意見聴取の際に、過半数組合等に次に掲げる事項を書面により通知すること(則第33 条の4第4項)。
 ① 労働者派遣の役務の提供を受けようとする業務
 ② 労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を新たに定める場合にあっては、当該業務に労働者派遣を受けようとする期間及び開始予定時期(労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を変更する場合は、変更しようとする期間)
 なお、①及び②以外の項目、例えば労働者派遣を受けようとする人数等を通知することとについては、法令で求めるものではないが、関係労使間で通知するか否かを決定すべきものであること。
 (ロ) また、派遣先は、当該派遣受入期間を定めるに当たっては、次に掲げる事項を書面に記載し、当該労働者派遣の終了の日から3年間保存しなければならない(則第33 条の3)。
 ① (イ)により、意見を聴取した過半数組合の名称又は過半数代表者の氏名
 ② (イ)により過半数組合等に通知した事項及び通知した日
 ③ 過半数組合等から意見を聴いた日及び当該意見の内容
 ④ 意見を聴いて、(イ)の②の労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間又は変更しようとする期間を変更したときは、その変更した期間
 電磁的記録により当該書面の作成を行う場合は、電子計算機に備えられたファイルに記録する方法又は磁気ディスク等をもって調製する方法により作成を行わなければならない。
 また、電磁的記録により当該書面の保存を行う場合は、次のいずれかの方法によって行った上で、必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を作成できるようにしなければならない。
 a 作成された電磁的記録を電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
 b 書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
 (ハ) 過半数代表者は、以下のいずれにも該当する者とすること(則第33 条の4)。
 ① 労働基準法第41 条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
 ② 労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に係る意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
 なお、①に該当する者がいない事業所にあっては、②に該当する者とすること。
 また、派遣先は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
 なお、「投票、挙手等」の方法としては、「投票、挙手」のほか、労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する。
  労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に係る意見聴取の適切かつ確実な実施(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の15(第9の16 参照))
 (イ) 派遣先は、法第40 条の2第4項の規定に基づき、当該派遣先の事業所の過半数組合等に対し、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間について意見を聴くに当たっては、当該期間等を過半数組合等に通知してから意見を聴くまでに、十分な考慮期間を設けるものとすること。
 (ロ) 派遣先は、過半数組合等から、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間が適当でない旨の意見を受けた場合には、当該意見に対する派遣先の考え方を過半数組合等に説明すること、当該意見を勘案して労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間について再検討を加えること等により、過半数組合等の意見を十分に尊重するよう努めるものとすること。
  その他
 (イ) 意見聴取は、派遣を受け入れようとする業務ごとに行う必要があるが、一時に複数の業務についてまとめて意見聴取を行うことは可能である。
 (ロ) 意見聴取を行う時期については、1年を超える派遣を受け入れようとする業務の発生が事前に見込まれる場合には、派遣の受入れ日に近接した時点でなくとも、事前に意見聴取を行っておくことができる。
 (ハ) 1年以内の派遣受入期間の予定で派遣の受入れを開始した後に、過半数労働組合等からの意見聴取を行い、1年を超える派遣期間を定めることも可能である。
 (ニ) なお、意見聴取に当たっては、派遣先は、十分な考慮期間を設けた上であれば、過半数組合等の意見の提出に際して期限を付することが可能である。また、当該期限までに意見がない場合には意見がないものとみなす旨、過半数組合等に事前に通知した場合には、そのように取り扱って差し支えない。
(6) 派遣受入期間の制限の適切な運用のための留意点
  労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、(3)のイの①から⑤までに掲げる業務以外の業務について派遣元事業主から新たな労働者派遣契約に基づく労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、第7の労働者派遣契約の締結に当たり、あらかじめ、当該派遣元事業主に対し、当該労働者派遣の役務の提供が開始される日以後当該業務について派遣受入期間の制限に抵触する最初の日を通知しなければならない。また、派遣元事業主は、当該通知がないときは、当該者との間で、労働者派遣契約を締結してはならない(第7の2の(3)参照)。
   また、派遣先は、労働者派遣契約の締結後に当該派遣労働者に基づく労働者派遣に係る業務について、(5)のロの期間を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない(法第40 条の2第5項)。
   なお、イ及びロの通知については、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者又は派遣先から派遣元事業主に対して、通知すべき事項に係る書面の交付若しくはファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信をすることにより行わなければならない(則第24 条の2、則第33条の4第5項)が、イ又はロの通知である旨が明確になっていれば、他の連絡等と併せて一葉の書面等で通知することとしても差し支えない。
   これらの規定は、労働者派遣契約に基づき労働者派遣を行う派遣元事業主及び当該労働者派遣の役務の提供を受ける者の双方が、派遣受入期間の制限の規定を遵守できるようにすることを目的としているものである。
(7) 派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けた場合の取扱い
  概要
 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けている場合及び法第48 条第1項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、その者がなお当該期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けている場合には、当該者に対し、当該派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる(法第49 条の2第1項)。
 また、厚生労働大臣は、派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けており、かつ、当該労働者派遣の役務の提供に係る派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望している場合において、当該派遣先に対し、法第48 条第1項の規定により指導又は助言をしたにもかかわらず、当該派遣先がこれに従わなかったときは、当該派遣先に対し、当該派遣労働者を雇い入れるよう勧告することができる(法第49 条の2第2項)。
 厚生労働大臣はこれらの勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(法第49 条の2第3項、第13 の3参照)。
  雇入れの指導又は助言、勧告、公表の内容
 (イ) 法の規定により派遣先に対し派遣労働者を雇い入れるように指導又は助言、勧告する際には、当該派遣労働者の希望による場合を除き、期間の定めなき雇用によるよう指導又は助言、勧告する。
 (ロ) 勧告に従わなかったときの公表の際には、企業名及び所在地、事業所名及び所在地並びに指導、助言、勧告及び公表の経緯について公表する。
   権限の委任
 勧告に関する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長が行うものとする。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことは妨げられない。
   雇入れの指導又は助言、勧告、公表の手続
 (イ) 勧告の対象となる事案を把握してから原則として1か月以内に、指導又は助言を経て勧告すべく手続をとる。指導又は助言、勧告の決定は厚生労働大臣又は都道府県労働局長が行う。
 公表の決定は厚生労働大臣が行う。
 なお、最終的に勧告の前提となる段階における指導及び助言並びに勧告については、文書により期限を設けて行う。
 雇入勧告書には、当該勧告に従わない場合は、その旨を公表することがある旨を記載する。
 また、併せて公表方法を示すものとする。
 (ロ) 雇入勧告を行うことを決定した場合には、次の様式による雇入勧告書を作成し、当該雇入勧告の対象となる者に対して交付する。
 (ハ) また、勧告から原則として1か月以内に公表すべく手続をとる。公表の方法は、ロの(ロ)の内容からなる資料を作成し、新聞発表することによる。
 (ニ) なお、上記の目的はあくまで派遣労働者の雇用の安定を図ることであることに鑑み、個別の事案に即して弾力的な対応を図ること。
   雇入れ勧告の対象となった派遣先と派遣労働者の法的関係
 雇入れ勧告を行うケースは、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について労働者派遣契約が派遣受入期間を超えて締結されることが想定し難い中では、既に労働者派遣契約の根拠なく、また、派遣元事業主と派遣労働者の間の労働契約の根拠なく、事実上派遣先において就業を継続している状態であって、更に勧告の実施要件を満たしている場合と考えられる。
 このため、派遣先が、労働者派遣契約による授権がない中で、派遣労働者の指揮命令を継続している状態を前提として、以下のような法解釈が行えると考えられる。
 (イ) 派遣労働者が派遣元事業主との労働契約を解除したり、労働契約期間が満了する等派遣元事業主との雇用関係が既に終了している場合には、派遣先との雇用関係が成立していると推定でき、訴訟において、派遣労働者は、勧告の内容に従った雇用関係の確認や損害賠償請求を行うことが可能である。
 (ロ) 派遣元事業主との雇用関係が終了していない場合であっても、勧告の実施後派遣労働者が派遣元事業主との雇用関係を終了させれば、(イ)と同様の請求が可能である。
(注)
 派遣元事業主は、法律上派遣先の「同一の業務」について派遣受入期間を超えて労働者派遣を行ってはならない義務を課せられており(法第35 条の2)、違反に対しては、許可の取消し等の行政処分のみでなく、直接罰則も付されることから、派遣受入期間を超える労働者派遣の締結は想定し難い。

 

2.派遣労働者への労働契約の申込み義務

(1) 派遣受入期間の制限のある業務に係る労働契約の申込み義務
  概要
 派遣先は、第8の13 による派遣停止の通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば、4の(3)の派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日以降継続して派遣停止の通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、労働契約の申込みをしなければならない(法第40 条の4)。
   趣旨
 派遣受入期間の制限に抵触する前に、イの行為をすることを義務付けることにより、派遣受入期間の制限に違反して労働者派遣が行われることを未然に防止し、労働者派遣から派遣先の直接雇用へと移行させるためである。
   派遣労働者の希望の把握方法
 派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望しているかどうかは、派遣労働者が希望を申し出ている場合は明らかであるが、申し出ていない場合には、ロの趣旨に鑑み、労働契約の申込み義務が課せられている派遣先が、その義務を果たすために、自ら派遣労働者に希望の有無を確認することにより把握しなければならない。
  労働契約の申込みの時期及び方法
 労働契約の申込みは、4の(3)の派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の前日までに、任意の方法により行うことが必要である。
 なお、申込み義務に係る派遣労働者の労働条件は、当事者間で決定されるべきものであるが、派遣先と派遣労働者との間で、派遣就業中の労働条件や、その業務に従事している派遣先の労働者の労働条件等を総合的に勘案して決定されることが求められる。
   労働契約の申込み義務を果たさない場合の取扱い
 (イ) 厚生労働大臣は、派遣先が派遣停止の通知を受けながら派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の前日までに労働契約の申込みをせず、派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日以降継続して派遣労働者を使用した場合又は法第48 条第1項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、その者がなお当該規定に違反している場合には、当該者に対し、法第40 条の4の規定のよる労働契約の申込みをすべきことを勧告することができる(法第49 条の2第1項)。
 また、厚生労働大臣はこの勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(法第49 条の2第3項)(第13 の3参照)。
 (ロ) 勧告に関する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長が行うものとする。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことは妨げられない。
 (ハ) 指導、助言又は勧告の決定は厚生労働大臣又は都道府県労働局長が行う。公表の決定は厚生労働大臣が行う。
 なお、最終的に勧告の前提となる段階における指導及び助言並びに勧告については、文書により期限を設けて行う。
 労働契約申込勧告書には、当該勧告に従わない場合は、その旨を公表することがある旨を記載する。また、併せて公表方法を示すものとする。
 (ニ) 勧告を行うことを決定した場合には、労働契約申込勧告書(第15 様式集参照)を作成し、当該勧告の対象となる者に対して交付する。
 (ホ) また、勧告から原則として1か月以内に公表すべく手続をとる。勧告に従わなかったときの公表の際には、企業名及び所在地、事業所名及び所在地並びに指導、助言、勧告及び公表の経緯について公表する。公表はこれらの内容からなる資料を作成し、新聞発表することによる。
 (ヘ) なお、上記の目的はあくまで派遣労働者の雇用の安定を図ることであることに鑑み、個別の事案に即して弾力的な対応を図ること。
   派遣停止の通知がされなかった場合の取扱い
 派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の一月前の日から当該抵触することとなる最初の日の前日までの間に、派遣元事業主から派遣停止の通知がなされなかった場合については、派遣先は雇用申込みの義務の対象とはしないものである。
 なお、派遣停止の通知がなされずに、派遣受入期間の制限に抵触する日以後も労働者派遣が行われている場合には、派遣元事業主は法第35 条の2第1項違反に該当し(第8の12 参照)、派遣先は法第40 条の2第1項違反に該当しているものであり(4の(7)参照)、直ちに労働者派遣が中止されなければならない。
(2) 派遣受入期間の制限のない業務に係る労働契約の申込み義務
   概要
 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所(以下「事業所等」という。)ごとの同一の業務(4の(3)のイの①から⑤に掲げる業務に限る。)について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしなければならない。ただし、当該同一の派遣労働者について法第35 条の規定による期間を定めないで雇用する労働者である旨の通知を受けている場合は、この限りでない(法第40 条の5)。
 ① 「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」とは、課、部、事業所全体等、場所的に他の部署と独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断する。
 ② 「同一の業務(4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務に限る。)」とは、事業所等における4の(3)のイの①から⑤までに相当する業務のうち同種のものをいう。
 例えば、機械設計の業務(4の(3)のイの①の業務)に、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先については、当該派遣先において機械設計に主として従事する業務に新たに労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対して労働契約の申込みを行わなければならない。
 ③ 「3年を超える期間継続して」とは、当該3年を超える期間中に、労働者派遣の受入れを停止していた期間があった場合であっても、当該停止期間が3か月を超えない場合には、「3年を超える期間継続して」労働者派遣の役務の提供を受けている場合として取り扱う。
 ④ 「当該3年を経過した日以後労働者を雇い入れようとするとき」とは、派遣労働者の受入れが3年を超える日以後に雇用関係が開始される場合をいう。
 例えば、平成20 年4月1日に同一の派遣労働者の受入れが3年を超えることとなる業務があり、当該業務と同一の業務に平成20 年4月1日から労働者を雇用する場合には、当該労働者の募集・採用行為を平成19 年度中に行う場合であっても、当該派遣労働者に対して労働契約の申込みを行うことが必要である。
 ⑤ 「労働者を雇入れ」るとは、雇入れの形態は特に問わないものであり、常用雇用に限らないものである。
 なお、いわゆる在籍型出向の受入れについては、形式としては派遣先と出向労働者との間で雇用関係が生じるものであるが、一定期間経過後に出向元企業へ復職することが前提となっていること等から、労働者の「雇入れ」には該当しないものとする。
   趣旨
 派遣労働者の雇用の安定を図るため、派遣労働者の希望を踏まえて派遣先に直接雇用される機会をより多く確保するためである。
  労働契約の申込みの方法等
 ① 新たに労働者を雇い入れようとする業務について、3年を超えて受け入れている派遣労働者が、雇い入れようとする人数を超えて複数名いる場合については、3年を超えて受け入れている派遣労働者全員に対し、労働契約の申込みを受ける地位に対する応募の機会を与えた上で、試験等の公平な方法により、労働契約の申込みを受ける派遣労働者を選考することで足りる。
 ② 申込み義務に係る派遣労働者の労働条件は、当事者間で決定されるべきものであるが、派遣先と派遣労働者との間で、派遣就業中の労働条件や、その業務に従事している派遣先の労働者の労働条件等総合的に勘案して決定されることが求められる。
 ③ 派遣労働者が法第40 条の5に基づく派遣先からの労働契約の申込みを断った場合において、当該申込みを断った時点から1か月以内に、当該派遣先が同一条件で再度労働者を雇い入れようとするときは、再度の申込みをしなくても差し支えない。
  労働契約の申込み義務を果たさない場合の取扱い
 (イ) 厚生労働大臣は、3年を超えて派遣労働者を受け入れている派遣先が労働契約の申込み義務を果たさなかった場合又は法第48 条第1項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、その者がなお当該規定に違反している場合には、当該者に対し、法第40 条の5の規定による労働契約の申込みをすべきことを勧告することができる(法第49 条の2第1項)。
 また、厚生労働大臣はこの勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(法第49 条の2第3項)(第13 の3参照)。
 (ロ) 勧告に関する厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長が行うものとする。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことは妨げられない。
 (ハ) 指導、助言又は勧告の決定は厚生労働大臣又は都道府県労働局長が行う。公表の決定は厚生労働大臣が行う。
なお、最終的に勧告の前提となる段階における指導及び助言並びに勧告については、文書により期限を設けて行う。
労働契約申込勧告書には、当該勧告に従わない場合は、その旨を公表することがある旨を記載する。また、併せて公表方法を示すものとする。
 (ニ) 勧告を行うことを決定した場合には、労働契約申込勧告書(第15 様式集参照)を作成し、当該勧告の対象となる者に対して交付する。
 (ホ) また、勧告から原則として1か月以内に公表すべく手続をとる。勧告に従わなかったときの公表の際には、企業名及び所在地、事業所名及び所在地並びに指導、助言、勧告及び公表の経緯について公表する。公表の方法はこれらの内容からなる資料を作成し、新聞発表することによる。
 (ヘ) なお、上記の目的はあくまで派遣労働者の雇用の安定を図ることであることに鑑み、個別の事案に即して弾力的な対応を図ること。
(3) その他留意点
 常用型の派遣労働者の場合であっても、登録型の派遣労働者と同様に、派遣先による労働契約の申込み義務の対象となるものである。
 
3.派遣労働者の雇用の努力義務
(1) 概要
 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(4の(3)のイの①から⑤までに掲げる業務を除く。6において同じ。)について派遣元事業主から継続して1年以上派遣受入期間以内の期間労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該労働者派遣の役務の提供を受けた期間(以下「派遣実施期間」という。)が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した派遣労働者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければならない(法第40 条の3)。
(2) 目的
 派遣先における常用雇用労働者の派遣労働者による代替の防止を確保するとともに、常用雇用を希望する派遣労働者の常用雇用への移行を促進するためのものである。
(3) 雇用の努力義務が発生する要件
 イ 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について派遣元事業主から継続して1年以上派遣受入期間以内の期間労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、派遣実施期間が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した派遣労働者であって次の(イ)及び(ロ)を満たす者を、遅滞なく、雇い入れるよう努めなければならない。言い換えれば、労働者を雇用する場合には、当該業務について労働者派遣を受けていた労働者を優先的に雇い入れることを促進するための優先雇用の努力義務である。
 (イ) 派遣実施期間が経過した日までに、当該派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを希望する旨を当該派遣先に申し出たこと。
 (ロ) 派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了したこと。
 ロ  雇用の努力義務が発生するのは、同一の業務について継続して1年以上派遣受入期間以内の期間労働者派遣の役務の提供を受けた場合であって、かつ、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した派遣労働者についてであることから、たとえば、同一の業務であっても、派遣労働者が派遣実施期間の途中で代わった場合や、同一の派遣労働者であっても、業務が変わった場合には、努力義務は発生するものではない。
   また、同一の業務について、たとえば午前と午後に分けて異なる派遣労働者が従事していた場合であって、いずれも派遣実施期間継続して従事していた場合は、両者について雇用の努力義務が発生する。この場合、いずれの派遣労働者に対しても派遣実施期間従事していた就業時間に対し、発生するものであるから、たとえば、派遣先が派遣実施期間を経過した日以後、午前のみ労働者を雇い入れる必要があるのであれば、午前に従事していた派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならないこととなる。

 

4.離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止

(1) 概要
  派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合において、当該労働者派遣に係る派遣労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して1年を経過する日までの間は、当該派遣労働者(60 歳以上の定年退職者を除く。)に係る労働者派遣の役務の提供を受け入れてはならない(法第40 条の6第1項、則第33 条の5 第1項)。
   派遣先は、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば、イに抵触することとなるときは、速やかに、その旨を当該労働者派遣をしようとする派遣元事業主に通知しなければならない(法第40 条の6第2項)。
(2) 目的
 第8の15 を参照のこと。
(3) 通知の方法
 通知は、書面の交付、ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信により行わなければならない(則第33 条の5 第2 項)。
(4) 離職して1 年を経過していない労働者を派遣労働者として受け入れた場合の取扱い
 厚生労働大臣は、離職して1 年を経過していない労働者を派遣労働者として受け入れた場合及び法第48 条第1 項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、なお当該規定に違反している場合には、当該派遣先に対し、当該派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる(法第49 条の2 第1 項)
 また、厚生労働大臣は、当該勧告を行った場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかった場合には、その旨を公表することができる(法第49 条の2 第2 項)。

 

労働者派遣期間の制限

1.派遣期間の制限がない業務(26業務)

 1 ソフトウエア開発業務

・情報処理システム開発関係(令第4条第1項第1号)

  電子計算機を使用することにより機能するシステムの設計若しくは保守(これらに先行し、後続し、その他これらに関連して行う分析を含む。)又はプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。(17)及び(18)において同じ。)の設計、作成若しくは保守の業務

  情報処理システムの開発に係る次の業務をいう。
 ① 情報処理システム開発の可否を決定するための、又は既存のシステムのメンテナンス
      のための調査、分析、システム化計画書の作成
 ② 情報処理システムの設計(システム基本設計、システム詳細設計)
 ③ プログラムの設計、作成又は保守
 ④ ①から③までに付随して行われるプログラムテスト又はシステムテスト
 ⑤ 情報処理システム又はプログラムの使用マニュアルの作成の業務
 ⑥ 本稼働と同じ、又はそれに近い環境で、ユーザーの用いる条件下において運用できるか
     否かを検証、評価する運用テスト
  この場合において、電子計算機とは「演算、判別、照合などのデータ処理を高速で行う
     電子機器でプログラムの実行に最低限必要な機能を有しているもの」であり、データ入力
    機を含むものである((3)、(10)及び(17)において同じ。)。
 

 2 機械設計業務

・機械設計関係(令第4条第1項第2号)

  機械、装置若しくは器具(これらの部品を含む。以下この(2)及び(18)において「機械等」という。)又は機械等により構成される設備の設計又は製図(現図製作を含む。)の業務

  建築又は土木に係る設計・製図の分野以外の次のような機械等の設計又は製図(現図製作を含む。)の業務をいう。
 ① 電気、電子機器、加工機械、輸送用機械(車両、船舶)、クレーン、ボイラ-、労働
     安全衛生法施行令上の急停止措置、安全装置、タンク、タワ-、ベッセル(槽)、玩具、
    家具等の機械、装置、器具又はこれらの部品(IC、LSI、電線、プリント基板等を
    含む。)
 ② 原子力発電配管プラント、化学プラント等各種プラント
 ③ ①、②に係る配管、配線
  「設計」とは、機械等の製作に当たり、その目的に即して費用、材料及び構造上の諸点についての計画を立て、図面その他の方式で明示することをいい、必ずしも図面を用いるものに限らず、数表等を用いるものあるいはコンピュータを用いるもの(いわゆるCAD)も含む。
 また、自らの設計に基づき製作された機械等の機能、構造等が製作の目的に適合しない場合にその原因を検討し必要な設計の変更を行う等の作業を的確に遂行するために、当該機械等の①仕様、構造、能力等の検査、②据え着け、及び③他の装置、部品等との組立、に立合う業務は設計の業務に含まれるものである。
   「製図」とは、設計に基づき、製図機器(コンピュータを含む。)を使って機械等を図面を用いて紙面等に書き表すことをいう。
  建築設計・製図とは、建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に規定される「建築物」(建築設備そのものを除く。)に係る設計・製図である。このため、建築士法の一級、二級建築士はこの業務に含まれない。また、原子力プラント等における建屋の設計は含まれない。
  土木設計・製図とは、建設業法(昭和24年法律第100号)別表第一「土木工事業」に係るもので、道路、河川、鉄道、橋りょう、港湾、空港、都市計画等の設計、製図をいう。
 

 3 放送機器等操作業務

・放送機器操作関係(令第5条第1号)

  映像機器、音声機器等の機器であって、放送番組等(放送法(昭和25年法律第132号)第2条第1号に規定する放送の放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成される作品であって録画され、又は録音されているものをいう。以下同じ。)の制作のために使用されるものの操作の業務
  「放送番組等」とは、無線、有線のテレビ、ラジオの放送番組の他、映像若しくは音声その他の音響により構成される作品であって、録画又は録音されているものであり、具体的には、次のようなものをいう((2)、(7)及び(9)において同じ。)。
 ① テレビ、ラジオ番組
 ② 演劇、コンサート等を録画、録音したレコード、ビデオ、映画等の作品
 ③ 教育、宣伝用ビデオ、映画
 なお、テレビ、ラジオ番組以外で録画、録音しない作品(例えば録画、録音しない演劇)はここには含まれない。
  「制作」には、狭義の「制作」のみではなく、「中継」、「送出」(コントロールルームから送信施設、他局へ送り出す業務)も該当するが、送信所における送信の業務は含まれない((2)において同じ。)。
  「機器」とは、次のものをいう。
 ① 制作機器(狭義)- 照明機器(ライト、調光機器等)、映像機器(カメラ、カメラ制御器、VTR、フィルム送像装置、スィッチャー、効果機器等)、音声機器(マイク、ミキサー、効果機器、テープレコーダー、レコードプレーヤー等)
 ② 中継機器- 中継用無線機器(マイクロ波送信機等)その他中継用の制作機器
 ③ 送出機器 - コントロールルームの主調整卓の映像、音声のスィッチャー、ミキサー等、VTR、フィルム送像装置、テープレコーダー、APC(番組自動送出装置)、ネットワーク送出用卓のネットワークマスター、ネットワークスィッチャー、フィルム編集機等その他送出及び送出準備用の制作機器
   「操作」とは、機器の準備から撤収までの一連の行為(カメラのケーブルさばきのように機器の操作と密接不可分かつ、一体的に行われるものを含む。)をいうが、機器の保守、管理は含まれない。
 なお、中継車の運転は中継機器の操作には含まれない。

 

 4 放送番組等演出業務

・放送番組等の制作関係(令第5条第2号)

  放送番組等の制作における演出の業務(一の放送番組等の全体的形成に係るものを除く。)
  「演出」とは、ドラマ、ニュース番組、報道番組等の放送番組等における企画、計画、取材、技術指導、演技指導、編集、制作進行等をいう。具体的には次のような者の行う業務である。
 ① ディレクター(番組の演出担当責任者であるプログラムディレクター)
 ② アシスタントディレクター(ディレクターの補助を行う者、フロアディレクターともい
  う。)
 ③ テクニカルディレクター(技術スタッフを指揮し、ディレクターと協力して番組制作に
    当たる技術部門の責任者)
 ④ ライティングディレクター(照明の計画設計、照明関係の担当責任者)
 ⑤ オーディオディレクター(音声担当責任者)
 ⑥ アートディレクター(番組制作の美術部門全般の責任者)
  なお、大道具、小道具、衣裳、美術、結髪、メーク等の業務は含まれない。
  この場合において、「一の放送番組等の全体的形成に係るもの」とは、NHKのプロデューサー、ディレクター、民放のプロデューサー等の一つのまとまった番組全体の責任者と判断される者の行う業務をいい、いわゆる「コーナー」の制作責任者に係るものをいうものではない。

 

 5 事務用機器操作業務

・機器操作関係(令第4条第1項第3号)

  電子計算機、タイプライター又はこれらに準ずる事務用機器((17)において「事務用機器」という。)の操作の業務

   (1)のロに掲げる電子計算機、タイプライターほか、これらに準ずるワードプロセッサー、テレタイプ等の事務用機器についての操作の業務及びその過程において一体的に行われる準備及び整理の業務をいう。
  当該機器は、法第40条の2第1項第1号イの趣旨から迅速かつ的確な操作に習熟を必要とするものに限られるものであり、ファクシミリ、シュレッダー、コピー、電話機、バーコード読取器等迅速かつ的確な操作に習熟を必要としない機器は含まれない。
  機器の保守管理、中継車の運転等は、当該機器の操作でもなく機器の操作の「過程において一体的に行われる準備及び整理」とも解することができないので留意すること。
   電子計算機の操作を行う者が行う処理結果が印字された連続紙の切離し、仕分けの業務は、機器の操作の「過程において一体的に行われる準備及び整理」の業務に含まれる。ただし、当該連続紙を梱包し又は発送する業務はこれに含まれない。
 

 6 通訳、翻訳、速記業務

・通訳、翻訳、速記関係(令第4条第1項第4号)

 次のいずれかの業務をいう。
  通訳 一の言語を他の言語に訳して相手方に伝達する業務又は通訳案内士法(昭和24年法律第210号)第2条の通訳案内業務
  翻訳 一の言語を他の言語に訳す業務
  ロの翻訳業務の一環として行われる次の業務で主として、外国語の文書について行われるもの。
 ① 高度な技術により製作された機器の使用、操作、保守のためのマニュアル等の文書を使用
     目的に応じて的確かつ理解しやすく作成する業務(テクニカルライター業務)
 ② 翻訳文書を使用目的に応じて編集、修正する業務(エディター業務)
 ③ 翻訳文書を使用目的に応じて翻訳言語の発想に従って書き直す業務(リライター業務)
 ④ 翻訳文書の文法、表記上等の誤りを訂正する業務(チェッカー業務)
   速記 人の話を速記符号で書き取り、一般の人々に読めるよう書き直す業務
 

 7 秘書

・秘書関係(令第4条第1項第5号)

  法人の代表者その他の事業運営上の重要な決定を行い、又はその決定に参画する管理的地位にある者の秘書の業務

  取締役又はこれに準ずる者の秘書として文書の作成、受発信管理、資料・情報の整理及び管理、関係部門との連絡調整、スケジュール表の作成、来客の応対等を行う業務をいう。
 ロ  単に来客に対するお茶の接待、会議室の準備、文書の受発信等のみを行う庶務的な補助業務は含まれない。
 

 8 ファイリング(事務)

・ファイリング関係(令第4条第1項第6号)

  文書、磁気テープ等のファイリング(能率的な事務処理を図るために総合的かつ系統的な分類に従ってする文書、磁気テープ等の整理(保管を含む。)をいう。以下この(6)において同じ。)に係る分類の作成又はファイリング(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る。)の業務

  文書、図書、新聞、雑誌、帳簿、伝票、カード、ディスク、カタログ、地図、図面、フィルム、磁気テ-プ、写真、カルテ等についてファイリングの分類の作成又はファイリングを行う業務をいう。
 この場合において、「ファイリング」とは、事務の能率化を図るために、文書等の分類基準を作成した上で当該分類基準に従って文書等の整理保管を行う、文書等の整理、保管の組織化、能率化の意であり、例えば、全社的に統一された文書整理規定を作成し、キャビネット等の整理用の器具を配置し、この文書整理規定に基づいて文書等の整理、保管を行うことをいう。
 また、「高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る。」とは、文書等の整理のために当該文書等の内容又は整理の方法等について相当程度の知識、技術又は経験を必要とするものに限られ、単に機械的な仕分けを行うものではないことをいう。
   個人の机の周囲の片付けや文書等の番号順の並べ換えの業務はもとより、郵便物を発信元あるいは受信先別に仕分けする業務や売上、経理伝票等を取引先別に仕分けする業務等文書等の内容や整理の方法等について専門的な知識等を用いることのない業務は含まれない。
 

 9 調査業務

・調査関係(令第4条第1項第7号)

  新商品の開発、販売計画の作成等に必要な基礎資料を得るためにする市場等に関する調査又は当該調査の結果の整理若しくは分析の業務市場調査等の調査を企画若しくは実施し(電話又は面接による聴き取り調査を含む。)、又はその結果を集計若しくは分析し、最終的に統計表の作成を行う業務をいう(特定個人を対象として行われるものは含まれない。)。

 

 10 財務処理業務

・財務関係(令第4条第1項第8号)

  貸借対照表、損益計算書等の財務に関する書類の作成その他財務の処理の業務

   次のような財務に関する書類の作成その他財務の処理の業務をいう。
 ① 仕訳、仕入帳・売上帳・勘定科目別台帳等の会計帳簿の作成
 ② 保険証券の作成
 ③ 社会保険料・税金の計算及び納付手続
 ④ 医療保険の事務のうち財務の処理の業務
 ⑤ 原価計算
 ⑥ 試算表、棚卸表、貸借対照表、損益計算書等の決算書類の作成
 ⑦ 資産管理、予算編成のための資料の作成
 ⑧ 株式事務
  当該財務の処理、特に①から④まで及び⑧については、法第40条の2第1項第1号イの趣旨から専門的な業務、すなわち、その迅速かつ的確な実施に習熟を必要とする業務に限られるものであり、単なる現金、手形等の授受、計算や書き写しのみを行うようなその業務の処理について特に習熟していなくても、平均的な処理をし得るような業務は含まれないものである。
   なお、店頭における商品(有価証券を含む。)売買に伴う現金又はこれに準ずるものの授受の行為及びセールスマンの行う商品の勧誘の行為は財務の処理には当たらず、これらの行為を伴う業務は含まれない。
 また、銀行の貸金庫、セーフティケースの管理や社会保険の得喪手続も財務の処理とは解すことができないので留意すること。

 

 11 取引文書作成業務

・貿易関係(令第4条第1項第9号)

  外国貿易その他の対外取引に関する文書又は商品の売買その他の国内取引に係る契約書、貨物引換証、船荷証券若しくはこれらに準ずる国内取引に関する文書の作成(港湾運送事業法第2条第1項第1号に掲げる行為に附帯して行うもの及び通関業法(昭和42年法律第122号)第2条第1号に規定する通関業務として行われる同号ロに規定する通関書類の作成を除く。)の業務

  次の書類の作成及びそのために必要な資料の収集、電話照会等の業務をいう。
 ① 貿易、海外調達等対外取引に際しての商品又はサービスの受発注契約書又はインボイス、パッキング・リスト、船積指図書等船積・通関業務に必要な書類
 ② 国内取引に際しての商品又はサービスの受発注契約書又は船積等輸送に必要な書類
  なお、取引とは関係のない官庁等への申請、届出をするための書類の作成は含まれない。また、商品(有価証券を含む。)売買に伴う現金又はこれに準ずるものの授受の行為及びセールスマンの行う商品の勧誘の行為は、文書の作成には該当せず、これらの行為を伴う業務は含まれない。
  「港湾運送事業法第2条第1項第1号に掲げる行為に附帯して行うもの」とは、同法上の一般港湾運送事業を行う者が行うイの文書の作成のことであり、一般港湾運送事業を行う者に労働者を派遣し、当該文書を作成する業務は、令第4条第1項第9号の業務には含まれないものであるので留意すること。
  「通関業法第2条第1号に規定する通関業務として行われる同号ロに規定する通関書類の作成」とは、関税法等の規定に基づき税関官署又は財務大臣に対して提出する通関業法第2条第1号イの(1)に規定する通関手続又は同号イの(2)の不服申立てに係る申告書、申請書、不服申立書等の通関業法第2条第1号ロに規定する通関書類の作成をいい、通関業者に通関業務の従事者として労働者を派遣し、通関書類を作成する業務は、令第4条第1項第9号の業務には含まれないものであるので留意すること。

 

 12 デモンストレーション業務

・デモンストレーション関係(令第4条第1項第10号)

  電子計算機、自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする機械の性能、操作方法等に関する紹介及び説明の業務

  電子計算機、各種産業用機械(ワードプロセッサー、タイプライター等の事務用機器を含む。)又は自動車について紹介及び説明を行う業務(実演を含む。)をいう。これらは、通常は商品の販売促進のためのキャンペーン等におけるいわゆるデモンストレーション業務に対応する。
  当該機械は、用途に応じた的確な操作をするためには、高度の専門的知識、技術又は経験を必要とするものであり、ファクシミリ等の機器は、当然これには含まれず、また、民生用商品について紹介及び説明を行う業務は、パーソナルコンピューター等の例外を除き通常これには含まれない((2)参照)。
 また、家具、衣料品、食料品等機械に該当しないものは当然含まれるものではない。

 

 13 添乗業務

・添乗関係(令第4条第1項第11号)

  旅行業法(昭和27年法律第239号)第12条の11第1項に規定する旅程管理業務(旅行者に同行して行うものに限る。)若しくは同法第4条第1項第4号に規定する企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)以外の旅行の旅行者に同行して行う旅程管理業務に相当する業務(以下(11)において「旅程管理業務等」という。)、旅程管理業務等に付随して行う旅行者の便宜となるサービスの提供の業務(車両、船舶又は航空機内において行う案内の業務を除く。)又は車両の停車場若しくは船舶若しくは航空機の発着場に設けられた旅客の乗降若しくは待合いの用に供する建築物内において行う旅行者に対する送迎サービスの提供の業務

   次のいずれかの業務をいう。
 ① 添乗員の行う旅行業法第12条の11第1項に規定される旅程管理業務若しくは同法第4条第1項第4号に規定する企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)以外の旅行における旅程管理業務に相当する業務又はそれらに付随する旅行者のパスポートの紛失等の事故処理、旅行者の苦情処理等の業務
 この場合において、「旅程管理業務」とは、旅行者に対する運送又は宿泊のサービスの確実な提供、旅行に関する計画の変更を必要とする事由が生じた場合における代替サービスの手配その他の企画旅行を円滑に実施するための次の措置を講ずるために必要な業務を意味する(旅行業法施行規則第32条)。
   旅行に関する計画に定めるサービスの旅行者への確実な提供を確保するために旅行の開始前に必要な予約その他の措置
  旅行地において旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置(本邦内の旅行であって、契約の締結の前に旅行者にこれらの措置を講じない旨を説明し、かつ、当該旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付した場合を除く。)
  旅行に関する計画に定めるサービスの内容の変更を必要とする事由が生じた場合における代替サービスの手配及び当該サービスの提供を受けるために必要な手続の実施その他の措置(本邦内の旅行であって、契約の締結の前に旅行者にこれらの措置を講じない旨を説明し、かつ、当該旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付した場合を除く。)
  旅行に関する計画における2人以上の旅行者が同一の日程により行動することを要する区間における円滑な旅行の実施を確保するために必要な集合時刻、集合場所その他の事項に関する指示
 ② 空港、港湾、鉄道駅、バスターミナルに設けられた旅客の乗降又は待合いの用に供する建築物内(ロビー、待合室等)における送迎並びに送迎に付随する案内及び接遇の業務空港等の施設内において行う旅行者の集合の確認、乗車券等必要な書類の手渡し、海外渡航事務手続等必要な手続の実施、旅行日程及び注意事項についての説明、利用する交通機関の確認及び当該交通機関への案内、旅行に関する計画の変更を必要とする事由が生じた場合における代替サービスの手配等の業務を含む。
   なお、バスガイド、スチュワーデス等が業務として行う車両、船舶又は航空機内における案内の業務、旅行者に同行するのではない海外渡航事務手続、空港、港湾等とそれ以外の施設との間の送迎はイの業務の一部として行われる場合を除き含まれない。

 

 14 建築物清掃業務

・建築物清掃関係(令第5条第3号)

  建築物における清掃の業務

  次のいずれかの業務をいう。
 ① 床、天井、壁面、トイレ、洗面湯沸所、照明器具、窓ガラス、エレベーター、エスカレー
     ター等の建築物の内部の清掃
 ② 外壁、窓ガラス、屋上、建築物に付随するプール等の建築物の外部の清掃
 ③ ①又は②に付随するゴミの収集、焼却
 ④ 宿泊施設の客室整備(ベッドメーキング、備品の整備補充等)
   害虫、ねずみ等の防除(イの清掃に付随して行われるものは除く。)、各種の槽の清掃、下水処理場の清掃及び輸送機器(車両、船舶又は航空機)の清掃は、「建築物における清掃」には該当しないものである。

 

 15 建築設備、運転、点検、整備業務

(1)建築設備運転等関係(令第5条第4号)

  建築設備(建築基準法第2条第3号に規定する建築設備をいう。(5)において同じ。)の運転、点検又は整備の業務(法令に基づき行う点検及び整備の業務を除く。)

   建築基準法第2条第3号に規定する建築設備の運転、点検又は整備の業務をいう。
 この場合において、「建築設備」とは、建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう(建築基準法第2条第3号)。
  機械警備に用いられる機械の運転等や、下水処理場の設備の点検等は含まれない。
  なお、点検及び整備の中でも、建築基準法第12条の建築設備の調査又は検査の業務、浄化槽法(昭和58年法律第43号)第10条の浄化槽の保守点検、清掃の業務、消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3の防火対象物の点検等の法令に基づき定期に行う点検及び整備の業務は除かれる。
 また、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42年法律第149号)及び特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(昭和54年法律第33号)並びにこれらに基づく命令の定めるところにより選任する者が行うべき職務等に係る業務は含まれない。

(2)水道施設等の設備運転等関係(令第5条第10号)

 水道法(昭和32年法律第177号)第3条第8項に規定する水道施設の消毒設備その他の設備、下水道法(昭和33年法律第79号)第2条第3号に規定する公共下水道、同条第4号に規定する流域下水道若しくは同条第5号に規定する都市下水路の消化設備その他の設備若しくは廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第8条第1項に規定する一般廃棄物処理施設(同項に規定するごみ処理施設にあっては、1日当たりの処理能力が10トン以上のものに限る。)の焼却設備その他の設備の運転、点検若しくは整備の業務(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする運転、点検又は整備の業務に限る。)又は非破壊検査用の機器の運転、点検若しくは整備の業務
 次のいずれかの業務をいう。
   水道施設の設備運転等の業務
 具体的には、水道法第3条第8項に規定する水道施設における消毒設備、取水設備、沈砂池、着水井、沈殿池、ろ過池、配水池、ポンプ設備等の設備の運転、点検又は整備の業務が該当する。
   下水道の設備運転等の業務
 具体的には、下水道法第2条第3号に規定する公共下水道、同条第4号に規定する流域下水道又は同条第5号に規定する都市下水路における消化設備、水処理設備、焼却炉設備、汚泥処理設備等の設備の運転、点検又は整備の業務が該当する。
   一般廃棄物処理施設の設備運転等の業務
 具体的には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条第1項に規定する一般廃棄物処理施設における焼却設備、排ガス処理設備、生物処理設備、凝集沈殿処理設備等の廃棄物の設備の運転、点検又は整備の業務が該当する。
 この場合において、「一般廃棄物処理施設」とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条

 

 16 案内受付駐車場管理業務

・受付、案内関係(令第4条第1項第12号)

(1)建築物又は博覧会場における来訪者の受付又は案内の業務

   次のいずれかの業務をいう。
 ① 建築物の入り口又は建築物内の事業所の入り口等における受付又は案内
 ② 博覧会場の入退場口又は博覧会場内に設けられた案内所における受付又は案内
  この場合において「博覧会場」とは、国、地方公共団体又はそれらの設立した公益法人等
     が主催する博覧会のために設けられた展示等のための建築物、施設又は広場等からなる会
    場をいい、具体的には国際博覧会又は地方博覧会の会場をいう。

   イの①には、中高層分譲住宅等の建築物の管理業務は含まれない。 

(2)駐車場管理等関係(令第5条第5号) 

  建築物に設けられ、又はこれに附属する駐車場の管理の業務その他建築物に出入りし、勤務し、又は居住する者の便宜を図るために当該建築物に設けられた設備(建築設備を除く。)であって当該建築物の使用が効率的に行われることを目的とするものの維持管理の業務((3)に掲げる業務を除く。)

  次のいずれかの業務をいう。
 ① 駐車料金の徴収、機械式操作盤の操作、出入車両の記録等の駐車場(建築物及び専ら当該
     建築物の利用の用に供するために設けられているものに限る。)の管理
 ② 電話交換機、館内放送設備等の設備(建築設備であるものを除く。)の操作、点検、整備
  イの①には、中高層分譲住宅等の建築物の管理業務は含まれない。
   イの①には、車両の誘導は含まれない。
  イの②には、一般廃棄物及び産業廃棄物の処理の用に供される施設、設備は含まれない。
 

 17 研究開発業務

・研究開発関係(令第4条第1項第13号)

  科学に関する研究又は科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する新製品若しくは科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する製品の新たな製造方法の開発の業務((1)及び(2)に掲げる業務を除く。)

   研究又は開発に係る次のような業務をいう。
 ① 研究課題の探索及び設定
 ② 文献、資料、類例、研究動向等関連情報の収集、解析、分析、処理等
 ③ 開発すべき新製品又は製品の新たな製造方法の考案
 ④ 実験、計測、解析及び分析、実験等に使用する機器、装置及び対象物の製作又は作成、標
     本の 製作等
 ⑤ 新製品又は製品の新たな製造方法の開発に必要な設計及び試作品の製作等
 ⑥ 研究課題に関する考察、研究結果のとりまとめ、試作品等の評価、研究報告書の作成
 ⑦ 前記の業務に関して必要なデータベースの構築及び運用
   次の業務は含まれない。
 ① 専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務でないものを専ら行うもの
 ② 製品の製造工程に携わる業務を専ら行うもの
  科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する新製品の開発又は科学に関する知識若しくは科学を応用した技術を用いて製造する製品の新たな製造方法の開発を目的とした試作品の製作の業務はロの②に該当しない。
 

 18 事業の実施体制の企画立案

・事業の実施体制の企画、立案関係(令第4条第1項第14号)

  企業等がその事業を実施するために必要な体制又はその運営方法の整備に関する調査、企画又は立案の業務(労働条件その他の労働に関する事項の設定又は変更を目的として行う業務を除く。)
   企業等における事業の実施体制又は運営方法の整備に関する次の業務をいう。

 ① 自企業・ユーザー企業に対するアンケート、ヒアリング等、自企業・他の企業の現場視察

     及び事業内容の分析等を通じての実態把握並びに改善が必要と思料される事項に関する問題

    意識の提起

 ② 各種統計データ、他社の事例等資料の収集
 ③ 統計的手法を用いての調査結果の分析並びに自企業における事業の実施上の問題点の分析
     及び摘出
 ④ 事業の実施体制の改善策の策定
 ⑤ 実施すべき内容のとりまとめ及び提案
  「労働条件その他の労働に関する事項の設定又は変更を目的として行う業務」とは、①賃金、労働時間、福利厚生、安全衛生等の労働条件管理、②募集、採用、配置、昇進、能力開発等の人事管理、③人事相談その他の人間管理、④団体交渉、苦情処理等の労使関係管理等のいわゆる人事労務管理に係わる業務をいい、例えば、就業規則の作成又は変更に関する検討、個別の労働者に係わる具体的な配置の提案、労働組合及び個々の労働者に対する説明・説得等をいう。
 一方、例えば、新規事業等を開始するに当たり、業務量及びそれに必要な人員数についての試算を行う業務等は「労働条件その他の労働に関する事項の設定又は変更を目的として行う業務」には含まれない。
 ハ なお、アンケート、ヒアリングの実施又はその結果を集計する業務、統計データ、事例等の資料収集を専ら行う等の補助的な業務は含まれない。
 

 19 書類等の制作、編集

・書籍等の制作・編集関係(令第4条第1項第15号)

  書籍、雑誌その他の文章、写真、図表等により構成される作品の制作における編集の業務

  書籍等の制作における編集に係わる次の業務をいう。
 ① 書籍等の内容、読者層、価格、発売時期、発行部数等の企画及び決定
 ② 企画に沿った執筆者等の選定並びに執筆者等に対する執筆等の依頼及び交渉
 ③ 執筆者等(執筆者、写真家、画家、イラストレーター等のうち、編集者と交渉を行い、編
      集者から業務委託を受ける者)の補助(資料収集及び取材並びにそれらの補助)
 ④ 編集者自身が行う取材、資料収集及び執筆
 ⑤ 原稿等の点検及び原稿等の内容の調整並びに執筆者等との交渉及び調整
 ⑥ 書籍等の用紙、装丁、割付け等の考案及び決定
 ⑦ 上記に付随する校正及び校閲
   この場合において、「書籍、雑誌その他の文章、写真、図表等により構成される作品」とは、文章、写真、図表等により構成され、紙等(CD-ROM、マイクロフィルム等を含む。)に記録されるものをいう。
  なお、校正等を専ら行うような補助的な業務は含まれない。

 

 20 広告デザイン業務

・広告デザイン関係(令第4条第1項第16号)

  商品若しくはその包装のデザイン、商品の陳列又は商品若しくは企業等の広告のために使用することを目的として作成するデザインの考案、設計又は表現の業務(2の(6)に掲げる業務を除く。)

   商品若しくはその包装のデザイン又は商品若しくは企業等の広告のために使用することを目的とするデザインについての考案、設計、試作品の作成又はデザイン自体の作成の業務、ショールーム等における商品の陳列を考案し、設計し又は実施する業務をいう。
   「企業等」には、私企業、公企業の他、企業団体、一般社団法人又は一般財団法人、個人事業主が含まれる。
  この場合において、「広告」の媒体としては、テレビ、新聞、雑誌、パンフレット、カタログ、ポスター、看板等が想定される。
   また、この場合において、「設計」とは、あくまでデザインの設計及び作図のことをいい、(2)における設計とは異なる((2)のロ参照)。
  なお、次の業務は含まれない。
 ① 2の(6)に該当する業務
 ② デザイン作成に当たって、印刷又は決定されたデザインのとおりに彩色等を専ら行う業務
 ③ 決定された方法のとおりに商品の陳列を専ら行う業務

 

 21 インテリアコーディネーター

・インテリアコーディネータ関係(令第5条第6号)

  建築物内における照明器具、家具等のデザイン又は配置に関する相談又は考案若しくは表現の業務(法第4条第1項第2号に規定する建設業務を除く。)

   建築物内における照明器具、家具等(以下「インテリア」という。)のデザイン又は配置に関する次の業務をいう。

 ① インテリアに関する相談、説明又はインテリアの選定に係る助言

 ② インテリアのデザイン、配置等の考案
 ③ 提案書の作成(イメージの考案及び表現)及び模型の作成並びにそれらの提示
 ④ インテリアの販売業者との交渉、家具等の配置の際の立会い等
   この場合において、「建築物内における照明器具、家具等」には、照明器具、家具の他、建具、建装品(ブラインド、びょうぶ、額縁等)、じゅうたん・カーテン等繊維製品等が含まれる。
   なお、次の業務は含まれない。
 ① 法第4条第1項第2号に規定する建設業務に該当するもの(内装等の施工を含む。(第2
     の1の②、第2の2の(3)参照))
 ② 清書、模型の作成等を専ら行う業務
 

 22 アナウンサー

・アナウンサー関係(令第5条第7号)

  放送番組等における高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とする原稿の朗読、取材と併せて行う音声による表現又は司会の業務(これらの業務に付随して行う業務であって、放送番組等の制作における編集への参画又は資料の収集、整理若しくは分析の業務を含む。)
   放送番組等における次の業務をいう。
 ① ニュース番組その他の報道番組等におけるニュース等の原稿の朗読及びいわゆるナレーシ
     ョン
 ② ニュース番組、スポーツ番組、事件があった場合等の特別番組等における実況中継又は
     インタビュー
 ③ 報道番組の司会及び進行
 ④ 上記の業務に付随して行う編集会議への出席等編集への参画、資料収集、打合せ等の業務
 ⑤ 映画、ビデオ、CD等において前記の業務に該当するものを行う業務

 

 23 OAインストラクション業務

・OAインストラクション関係(令第4条第1項第17号)

  事務用機器の操作方法、電子計算機を使用することにより機能するシステムの使用方法又はプログラムの使用方法を習得させるための教授又は指導の業務

  (3)のイの事務用機器の操作方法の教授又は指導の業務又は(1)のロに掲げる電子計算機を使用することにより機能するシステム又はプログラムの使用方法の教授又は指導の業務並びにそれらに付随して行う指導方針等に係るユーザー企業との打合せ及びこれに基づくテキストの作成の業務をいう。
   この場合において、「事務用機器」は(3)における「事務用機器」と同一であり、ファクシミリ、シュレッダー、コピー、電話機、バーコード読取機等迅速かつ的確な操作に習熟を必要としない機器は含まない((3)参照)。
  なお、事務用機器の操作方法等に関するテキスト等の作成を専ら行う業務及びVTR、OHPその他教授のための教材の操作を専ら行う業務は含まれない。

 

 24 テレマーケティング業務

・テレマーケティングの営業関係(令第5条第8号)

  電話その他の電気通信を利用して行う商品、権利若しくは役務に関する説明若しくは相談又は商品若しくは権利の売買契約若しくは役務を有償で提供する契約についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくはこれらの契約の申込み若しくは締結の勧誘の業務

   電話その他の電気通信を利用して行う次の業務をいう。
 ① 顧客に架電する等により行う、商品等に対する関心の有無の確認、商品等の説明、売買契
      約等についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくはこれらの契約の申込み若しく
     は締結の勧誘の業務
 ② 顧客からの架電等に応対して行う、商品等の説明、商品等に関する相談、売買契約等につ
    いての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくはこれらの契約の申込み若しくは締結の勧
    誘の業務(購入後の商品等に関する問い合わせ、苦情への対応等を含む。) 
 ロ  イの①又は②の業務に付随して行われる予約内容に係る伝票作成、コンピュータ入力等の業務は含まれる。
  「その他の電気通信」には、ファクシミリ、パソコン通信等が含まれる。
   この場合において、商品とは売買契約の対象となる物品のことを、権利とは、例えば保養のための施設やスポーツ施設を利用する権利など役務を受ける等の権利を、役務とは、例えば保養のための施設やスポーツ施設を利用させることをいう。
   なお、次の業務は含まれない。
 ① 1の(7)に該当する業務
 ② 1の(12)に該当する業務
 ③ アポイント取りを行う業務(商品等の説明等を行っている際に直接面接して商品等に
      関する説明等を行う必要が生じた場合等を除く。)
 ④ 予め録音した音声により顧客からの架電への応対を行う業務
 ⑤ 放送番組において行うもの等不特定多数の者に向けての商品等の説明の業務
 ⑥ 予約内容の伝票作成、コンピュータ入力等を専ら行う業務
 

 25 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係(令第4条第1項第18号)

  顧客の要求に応じて設計(構造を変更する設計を含む。)を行う機械等若しくは機械等により構成される設備若しくはプログラム又は顧客に対して専門的知識に基づく助言を行うことが必要である金融商品(金融商品の販売等に関する法律(平成12年法律第101号)第2条第1項に規定する金融商品の販売の対象となるものをいう。)に係る当該顧客に対して行う説明若しくは相談又は売買契約(これに類する契約で同項に規定する金融商品の販売に係るものを含む。以下この号において同じ。)についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくは売買契約の申込み若しくは締結の勧誘の業務

   次のいずれかの業務をいう。
 ① 顧客の要求に応じて設計(構造を変更する設計を含む。)を行う機械等若しくは機械等に
     より構成される設備若しくはプログラムに係る次の業務
  顧客の要求の把握並びに顧客に対する説明又は相談及びそれらに必要な説明資料の作成
  顧客との交渉又は見積書作成
  売買契約の締結等売買契約についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくは売買
     契約の申込み若しくは締結の勧誘
  上記に付随する納入(運送業務を含む。)及びその管理
 ② 顧客に対して専門的知識に基づく助言を行うことが必要である金融商品に係る次の業務
  金融商品の特性、リスク等に関する説明(情報提供)又は相談及びそれらに必要な説明資
  料の作成
 顧客との交渉又は見積書作成
  ニーズの的確な把握等を踏まえ選定された金融商品についての売買契約の締結等売買契約
  についての申込み、申込みの受付若しくは締結若しくは売買契約の申込み若しくは締結
  の勧誘
   イの①には、既製品や既製品に既成の付属物を付加するものの営業に係わる業務は含まれないことに留意すること。
   イの①において、「機械等若しくは機械等により構成される設備」には、電気・電子機器、加工機器、輸送用機器、産業用機器(クレーン、ボイラー、タンク、タワー等)、原子力プラント、化学プラント等が該当する。
ニ イの①において、「プログラム」には、IT関連商品としてのシステム、ソフトウェア、ネットワーク等が該当する。
   イの②のiには、①企業調査、産業調査に基づき行う個別証券の分析、評価、②顧客のライフプラン等を踏まえたポートフォリオ(運用資産のもっとも有利な分散投資の選択)の作成等も含む。
 ヘ  イの②とは、具体的には、次のような資格を有する者(これに相当すると認められる者を含む。)の行う専門的知識を要する業務をいう。
 ① デリバティブに係る業務まで行い得る一種外務員資格を有する証券外務員
 ② 損害保険のほぼ全種目につき必要な知識を持ち、十分に自立して取り扱う能力があると
    認められていた従前の特級又は上級資格を有する損害保険外務員
 ③ ファイナンシャル・プランニング・サービスに必要な知識の習得を目的とする応用課程試
    験合格者である生命保険外務員
 ④ 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のAFP(Affiliated Financial Planner)資格審
    査試験に合格し同協会に個人正会員として入会している者(AFP認定者。)
 ⑤ (社)日本証券アナリスト協会の試験に合格し同協会の会員として登録している証券アナ
    リスト
   なお、次の業務は含まれない。
 ① 機械等の設計若しくは製造又はその管理の業務及びプログラムの設計若しくは作成又は
    その管理の業務
 ② 建築設計の業務((2)のニ参照)
 ③ 機械等又はプログラムの納入及びそれに付随する輸送を専ら行う業務
 ④ 機械等又はプログラムの保守及びアフターサービスの業務
 

 26 放送番組等の大道具、小道具業務

・放送番組等における大道具・小道具関係(令第5条第9号)

  放送番組等の制作のために使用される舞台背景、建具等の大道具又は調度品、身辺装飾用品等の小道具の調達、製作、設置、配置、操作、搬入又は搬出の業務(法第4条第1項第2号に規定する建設業務を除く。)

   次のいずれかの業務をいう。
 ① 放送番組等の制作のために使用される舞台背景、建具等の大道具の調達、製作、設置、操
  作、搬入又は搬出の業務(法第4条第1項第2号に規定する建設業務(第2の1の②、第
     2の2の(3)参照)に該当するものを除く。)
 ② 放送番組等の制作のために使用される調度品、身辺用装飾品等の小道具(衣装を除く。)
     の調達、製作、配置、搬入、搬出又は保管の業務
  ここで、①及び②においては、放送番組等のディレクター等の指示の下に、予め設定され
     た企画に基づいて行う次の業務が含まれる。
  大道具若しくは小道具の調達若しくは製作に関する計画の作成又は大道具若しくは小道具
     の調達
  大道具のデザイン又は設計
  大道具又は小道具の原材料の調達、製作(彩色を含む。)又は改造
 大道具又は小道具の搬入
  大道具の組立若しくは設置又は小道具の配置(放送番組等の本番中において行うものを含
  む。)
  放送番組等の本番中における、大道具の操作若しくは手直し又は小道具の手直し
  放送番組等の終了後における、大道具の解体若しくは搬出又は小道具の搬出若しくは保管
   この場合において、「放送番組等」とは、(1)及び(2)における「放送番組等」と同一である。
 また、「制作」には、(1)に掲げる「制作」のうち「中継」及び「送出」を除いたものが該当する((1)参照)。
   この場合において、「大道具」には、建具、背景、壁、窓、扉、植込み等が含まれ、「大道具」の製作には、建築物その他の工作物に該当するものの製作は含まれない。
   また、「小道具」には、①室内の調度品、家具、飾り物、日用品等、②出演者が持ってでるもの、はきもの、(いわゆる「持道具」と呼ばれるもの)等が含まれるが、衣装、かつら等は含まれない。
 また、小道具の業務には、メーク、結髪等は含まれない。
  なお、大道具又は小道具の搬入、搬出又は保管を専ら行う業務は含まれない。

 

2.派遣期間が1年~3年の制限業務

 派遣就業の場所ごとの同一の業務について、意見聴取を経て3年以内の派遣受入期間が定められている場合はその定められた期間、それ以外の場合は1年)を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

 以下は、上記から除外される業務

(1)いわゆる26業務

(2)有期プロジェクト業務(3年以内に限る。)

 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予定されているもの

(3)日数限定業務

 その業務の1か月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の1か月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、月10 日以下である業務

(4)休暇の代替業務

 産前産後休業・育児休業、並びに産前休業に先行し、又は産後休業若しくは育児休業に後続する休業であって、母性保護又は子の養育をするための休業をする際の代替業務(則第33 条)

 介護休業及び介護休業に後続する休業であって、育児・介護休業法第2条第4号に規定する対象家族を介護するためにする休業をする場合の代替業務(則第33 条の2)

 

3.派遣労働者を受け入れてはならない同一の業務

 事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

(1)事業所その他派遣就業の場所

 事業所その他派遣就業の場所については、課、部、事業所全体等、場所的に他の部署と独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断すること。

(2)同一の業務

 同一の業務については、労働者派遣契約を更新して引き続き当該労働者派遣契約に定める業務に従事する場合は同一の業務に当たるものとする。
 上記のほか、派遣先における組織の最小単位において行われる業務は、同一の業務であるとみなす
 なお、この場合における最小単位の組織としては、業務の内容について指示を行う権限を有する者とその者の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりのうち最小単位のものをいい、係又は班のほか、課、グループ等が該当する場合もあり、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものとする。

 

4.派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けた場合の取扱い

(1)派遣期間を超えて労働者派遣を行った場合の大臣の勧告

  厚生労働大臣は、派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けている場合及び法第48 条第1項の規定による指導又は助言をしたにもかかわらず、それらが改善されない場合には、派遣就業を是正するために必要な措置をとるべきことを勧告できる。

 派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けており、かつ、労働者派遣の役務の提供に係る派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望している場合において、派遣先に対し、法第48 条第1項の規定により指導又は助言をしたにもかかわらず改善されない場合には、当該派遣先に対し、その派遣労働者を雇い入れるよう勧告することができる。※勧告は都道府県労働局長が行うこととなる。

 厚生労働大臣は上記の勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

(2)勧告に従わなかった場合

 雇入れ勧告を行うケースは、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について労働者派遣契約が派遣受入期間を超えて締結されることが想定し難い中では、既に労働者派遣契約の根拠なく、また、派遣元事業主と派遣労働者の間の労働契約の根拠なく、事実上派遣先において就業を継続している状態であって、更に勧告の実施要件を満たしている場合と考えられる

 派遣労働者が派遣元事業主との労働契約を解除したり、労働契約期間が満了する等派遣元事業主との雇用関係が既に終了している場合には、派遣先との雇用関係が成立していると推定でき訴訟において、派遣労働者は、勧告の内容に従った雇用関係の確認や損害賠償請求を行うことが可能である

 

裁判例

・福岡高等裁判所 平成8年(ネ)555(労働者派遣事業の本質)

 右労働者派遣法の規定は、労働者の派遣が労働者供給事業の性質を有 し、強制労働や中間搾取等の問題を惹き起こす可能性があることに着目し、労働者 の自由意思を確保するために設けられた規定であり、営利目的はもとより事業とし て行われたものでもない本件出向をこれと同列に論ずることはできない。

 

・伊予銀行雇用関係確認事件 平成12年(ワ)757

 派遣法は,派遣労働者の雇用の安定だけでなく,常用代替防 止,すなわち派遣先の常用労働者の雇用の安定をも立法目的とし,派遣期間の制限 規定をおくなどして両目的の調和を図っているところ,同一労働者の同一事業所へ の派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは,常用 代替防止の観点から同法の予定するところではないといわなければならない(な お,本件で原告が行っていた事務用機器の操作業務に関しては,3年を超える同一 人の同一場所,同一業務への派遣を行わないよう行政指導がなされている。

 そうすると,仮に原告と被告ISS(いよぎんスタッフサービス株式会社)との雇用契約が期間の定めのない契 約と実質的に異ならない状態で存在しているということができ,あるいは上記の原告の雇用継続に対する期待になお合理性を認める余地があるとしても,当該雇用契 約の前提たる被告ISSと被告伊予銀行との派遣契約が期間満了により終了したと いう事情は,当該雇用契約が終了となってもやむを得ないといえる合理的な理由に 当たるというほかない。

 もっとも,労働契約といえども,黙示の意思の合致によっても成立しうる ものであり,これは,本件のように,別途派遣法に基づく明示の派遣契約が締結さ れている場合でも変わるところはない。すなわち,派遣元の存在が形式的名目的な ものに過ぎず,実際には派遣先において派遣労働者の採用,賃金額その他の就業条 件を決定しており,派遣労働者の業務の分野・期間が派遣法で定める範囲を超え, 派遣先の正規職員の作業と区別し難い状況となっており,また,派遣先において, 派遣労働者に対して作業上の指揮命令,その出退勤等の管理を行うだけでなく,そ の配置や懲戒等に関する権限を行使するなど実質的にみて,派遣先が派遣労働者 に対して労務給付請求権を有し,かつ賃金を支払っていると認められる事情がある 場合には,前記明示の派遣契約は有名無実のものに過ぎないというべきであり,派 遣労働者と派遣先との間に黙示の労働契約が締結されたと認める余地があるという べきである。

 本来,派遣対象業務以外の業務を行うことは派遣法の予定しないとこ ろである。もちろん,当該業務と密接に関連し、その遂行のため不可欠又は必要な 業務,あるいは当該業務に密接に関連するとはいえなくとも,業務の円滑な遂行の ため,職場での人間関係の維持を含めて必要な関連性のある業務などは,派遣労働 者において行うことが必要な業務というべきであり,原告が行ってきた業務のう ち,メール便処理業務の一部(取立手形や振込書類通知書の発送,文書為替や雑為 替の送付など),コピーやファックス操作,来客接待等は,これらに含まれるもの というべきである。       

 これに対し,端末操作に直接関わらない郵便物の発受,公務員給与の 袋入れ作業,大口集金先への同行,顧客獲得のためのセールス業務などは,上記に より許される範囲を超えているもので,派遣労働者が行うことは本来予定されてい ない対象外業務であるというべきである。

 以上によれば,(前述の)とおり,被告らによる原告の雇用及び派遣体 制には,派遣法の規定及び趣旨に照らして,少なからず問題があることは否めない というべきであるが,他方,(別に)示したところによれば,被告ISSは形式 のみでなく,社会的実体を有する企業であり,原告の就業条件,採用の決定,さら には原告に対する賃金(慰労金を含む)の支払いは,すべて被告ISSにおいて行 っているのであるから,原告と被告ISSとの雇用契約が有名無実のものであると はいい難い。     

 したがって,被告伊予銀行と原告との間で黙示の労働契約が成立したとは 認められない

 

・三都企画建設事件(平成18年1月6日大阪地裁判決)

  「原告の勤務状況が、被告と派遣先との間の派遣契約に照らして、債務不履行(不完全履 行)といえない場合は、派遣先は、被告に対して、原告の交代を要求したり、被告がこれに 応じないことを理由に、派遣契約を解除することはできない。この場合、派遣先が原告の交代を求め、原告の就労を拒否したとしても、債務不履行でない限り、被告が派遣先に対する 派遣代金の請求権を失うことはないと解する。もっとも、原告の勤務状況が、債務不履行といえない場合であっても、派遣先が原告の就労を拒絶する場合、原告の被告に対する賃金請 求権の帰趨については、別に検討する必要がある(また、被告が派遣先の要請に応じて、原 告を交代させた場合などについても同様の問題が生じる。)。」 

 「被告としては、派遣先から、原告の勤務状況が、被告と派遣先との労働者派遣契約上の 債務不履行事由に該当すると主張して、原告の就労を拒絶し、その交代を要請されたとして も、原告の勤務状況について、これをよく知る立場になく(その情報は、派遣先企業と原告 が有していることになる。)、派遣先の主張を争うことは極めて困難というべきである(派 遣先や原告から、被告にとって有利な情報を得ることは極めて困難と思われる。)。このような状況下において、派遣先から原告の就労を拒絶された場合、被告としては、乏しい資料 しかないにもかかわらず、派遣先による原告の交代要請を拒絶し、債務不履行事由の存在を 争って、派遣代金の請求をするか否かを判断することもまた困難というべきである。そうす ると、被告が、派遣先との間で、債務不履行事由の存否を争わず、原告の交代要請に応じた ことによって、原告の就労が履行不能となった場合、特段の事情がない限り、原告の被告に 対する賃金請求権(中略)は消滅すべきというべきである(中略)。 

 一方、被告の判断により、派遣先との紛争を回避し、派遣先からの原告の就労拒絶を受け 入れたことにより、派遣先における原告の就労が不可能となった場合は、原告の勤務状況か ら、被告と派遣先との労働派遣契約上の債務不履行事由が存在するといえる場合を除き、労働基準法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、原告は、被告に対し、休業手当の支給を求めることができると考える。」

 

労働者派遣期間のまとめのまとめ

(出典:厚生労働省作成 労働者派遣、許可・更新手続マニュアル)

 派遣期間の制限の整理

1.派遣期間の制限かつ日雇い派遣の制限の双方がない業務(施行令第4条第1項各号に掲げる業務)

 ・情報処理システム開発関係(令第4条第1項第1号)

 ・機械設計関係(令第4条第1項第2号)

 ・機器操作関係(令第4条第1項第3号)

 ・通訳、翻訳、速記関係(令第4条第1項第4号)

 ・秘書関係(令第4条第1項第5号)

 ・ファイリング関係(令第4条第1項第6号)

 ・調査関係(令第4条第1項第7号)

 ・財務関係(令第4条第1項第8 号)

 ・貿易関係(令第4条第1項第9号)

 ・デモンストレーション関係(令第4条第1 項第10 号)

 ・添乗関係(令第4条第1 項第11 号)

 ・受付・案内関係(令第4条第1項第12 号)

 ・研究開発関係(令第4条第1項第13 号)

 ・事業の実施体制の企画、立案関係(令第4条第1 項第14 号)

 ・書籍等の制作・編集関係(令第4条第1 項第15 号) 

 ・広告デザイン関係(令第4条第1 項第16 号)

 ・OAインストラクション関係(令第4条第1 項第17 号)

 ・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係(令第4条第1 項第18 号)

 

2.派遣期間の制限はないが日雇い派遣はできない業務(施行令第5条各号に掲げる業務)

 ・放送機器操作関係(令第5条第1号)

 ・放送番組等の制作関係(令第5条第2号) 

 ・建築物清掃関係(令第5条第3号)

 ・建築設備運転等関係(令第5条第4号)

 ・駐車場管理等関係(令第5条第5号)

 ・インテリアコーディネータ関係(令第5条第6号)

 ・アナウンサー関係(令第5条第7号)

 ・テレマーケティングの営業関係(令第5条第8号)

 ・放送番組等における大道具・小道具関係(令第5条第9号)

 ・水道施設等の設備運転等関係(令第5条第10 号)

 

 

 

 

 

以上で労働者派遣法第40条の2を終了します。