均等法第1条
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第1条(目的)
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
○通達で趣旨・解釈を確認してみます。
1.平成9年労働省発婦第16号(以下、「平成9年通達」)労働基準局、県、知事宛
募集・採用・配置・昇進について女性労働者に対する差別を禁止するとともに、職業能力の開発及び向上の促進等に係る女性労働者の就業援助規定を削除したこと等に伴い、この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を促進することを目的とするものとしたこと。
2.平成18年雇児発第1011002号(以下、「平成18年通達」)労働局宛
(1)法第1条は、法の目的が、第一に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図ること、第二に女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康を図る等の措置を推進することにあることを明らかにしたものであること。
(2)「法の下の平等等を保障する日本国憲法の理念」とは、国民の国に対する権利として「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定した日本国憲法第14条の考え方をいい、同規定自体は私人間に直接適用されるものではないものの、その理念は一般的な平等原則として法の基礎となる考え方であること。
(3)「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」には、企業の制度や方針における労働者に対する性別を理由とする差別を禁止することにより、制度上の均等を確保することのみならず。法第2章第3節に定める援助により実質的な均等の実現を図ることも含まれるものであること。
(4)「妊娠中及び出産後の健康の確保を図る」措置とは、具体的には、保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保(法第12条)及び当該保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするための措置(法第13条)をいうものであること。
(5)「健康の確保を図る等」の「等」は、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(法第11条)を指すものであること。
○均等法制定の背景・趣旨
1.女性労働者の人口及び労働力人口、被用者人口等の推移 (出典:厚生労働省「働く女性の実情」より)
(1)女性の労働力人口の推移
女性の労働力人口 労働力率 女性の構成比
S35 1,838万人 54.5% 40.7%
S55 2,185万人 47.6% 38.7%
H12 2,753万人 49.3% 40.7%
H17 2,750万人 48.4% 41.4%
H22 2,768万人 48.5% 42.0%
H25 2,804万人 48.9% 42.6%
※人口減少が続いている日本で、女性の労働力人口が増加し続けていることがわかります。
(2)配偶者の有無別被用者数の推移(非農林業)
女性総被用者数 既婚女性の被用者数 構成比
S55 1,345万人 772万人 57.4%
H12 2,125万人 1,210万人 56.9%
H17 2,213万人 1,258万人 56.8%
H22 2,305万人 1,319万人 57.2%
H25 2,384万人 1,372万人 57.6%
※配偶者を有する女性の被用者の人口と女性被用者内の構成比が増え続けていることがわかります。
(3)子供のいる世帯における母の労働状況
子供のいる世帯総数 母親の労働力人口 労働力率 就業者人口 率
H12 1,791万人 985万人 55.0% 962万人 53.7%
H22 1,687万人 966万人 57.3% 939万人 55.7%
H25 1,660万人 979万人 59.0% 958万人 57.7%
※少子化が進んでいる中で、母である女性の「労働力人口及び就労者人口と両者の比率」が増加していることがわかります。
平成25年版働く女性の状況(厚生労働省作成)によれば、平成25年の女性の労働力人口は2,804万人と増加し、男性は3,773万人と、16万人減少したとされ、この結果、労働力人口総数は前年より22万人増加し6,577万人となり、労働力人口に占める女性の割合は42.6%(前年比0.4ポイント上昇)となった、としています。
2.均等法立法の趣旨と目的
まとめると、統計情報でも明らかなように、女性の労働力により日本の産業の多くの部分は支えられており、年々この女性に支えられている傾向が顕著となっています。そして、女性は婚姻、妊娠、出産、子育て等の役割を専ら担っており、将来の日本を創る人材の育成も、初期(将来成人となる国民が乳幼児の時期)においては女性に背負っていただいているわけです。従って、多くの女性を雇用する企業(規模の大小に拘らず)においては、将来の日本社会を構成する根源(人材)の殆どをその雇用する女性たちが背負っていることを十分に考慮し、同時に女性が短期的に出産及び子育て等に一定の時間を割かなければならない(夫も多少参画するにしても)点を十分に配慮し、かつ均等法等の趣旨を損なわないような企業経営をする責務があると考察する次第です。
以上で、均等法第1条を終了します。次回は、第2条(基本理念)を記述します。
均等法第1条