均等法第15条・第16条・第17条
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第15条(苦情の自主的解決)
事業主は、第6条、第7条、第9条、第12条及び第13条第1項に定める事項(労働者の募集及び採用に係るものを除く。)に関し、労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表とする者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とする当該事業場の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。
○通達による確認(平成18年雇児発1011002号)
・苦情の自主的解決(法第15条)
(1)企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、法第6条、第7条、第9条、第12条及び第13条第1項に定める事項(労働者の募集及び採用に係るものを除く。)に関し、労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。
(2)本条は、苦情処理機関に苦情の処理をゆだねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。
(3)「苦情の処理をゆだねる等」の「等」には、事業場の人事担当者による相談等労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。
(4)苦情処理機関においては、労働者に対する差別に関する苦情のみを取り扱うのではなく、その他の事案についても、必要に応じ、関係部署との連携を保ちつつ、適切に対処することが望しいものであること。
(5)法では、労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第17条第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、法第18条第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決の努力を行うことが望しいものであること。
第16条(紛争の解決の促進に関する特例)
第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項、第12条及び第13条第1項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第120号)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、次条から第27条までに定めるとろによる。
※個別紛争の解決の促進に関する法律:第1条 この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含む。以下「個別労働関係紛争」という。)について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。
○通達による確認(平成18年雇児発1011002号)
・紛争の解決の促進に関する特例(法第16条)
(1)雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置につての労働者と事業主との間の紛争については、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第17条から第27条までの規定によるものとしたものであること。
(2)「紛争」とは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。
○第16条のまとめ
以下の事項に関する労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進する法律に基づく労働局長の助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせんの対象とはならず、均等法に基づく労働局長による紛争解決の援助及び機会均等調停会議による調停の対象となる。
① 募集・採用
② 配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練
③ 一定範囲の福利厚生
④ 職種・雇用形態の変更
⑤ 退職勧奨・定年・解雇・労働契約の更新
⑥ 一定範囲の間接差別
⑦ 婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等
⑧ セクシュアルハラスメント
⑨ 母性健康管理措置
※募集・採用については、調停の対象から除外される。
第17条(紛争の解決の援助)
都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。
2 事業主は、労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
○通達による確認(平成18年雇児発1011002号)
・紛争の解決の援助(法第17条)
(1)紛争の解決の援助(法第17条第1項)
法第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項、第12条及び第13条第1項に定める事項に係る事業主の一定の措置についての労働者と事業主との間の個別具体的な私法上の紛争の迅速かつ円滑な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当時者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。
イ 「紛争の当時者」とは、現に紛争の状態にある労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当時者にはなりえないものであること。
ロ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当時者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当時者にこれに従うことを強制するものではないこと。
(2)紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第17条第2項)
イ 法第17条第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当時者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が紛争の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
ロ 「理由として」とは、労働者が紛争の解決の援助を求めたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
ハ 「不利益な取扱い」とは、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。
なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務との総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。
○厚生労働省作成パンフレットより抜粋(均等法のあらまし)
労働局長による紛争解決の援助の対象となる紛争は、具体的には、募集・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、一定範囲の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職勧奨・定年・解雇・労働契約の更新、一定範囲の間接差別、婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等、セクシュアルハラスメント、母性健康管理措置についての紛争とされている。
労働局長は、援助を求められた場合には両当事者から事情を聴取し、必要なときは調査を行い、適切に助言、指導又は勧告をして紛争解決の援助を行うこととされている。この援助は、私法上の紛争である労働者と事業主間の紛争解決を、両当事者の意思を尊重しつつ迅速・簡便に行うことを目的とするものであり、両当事者以外の申立てや職権で行われることはないこと。
また、労働者が労働局長に紛争解決の援助を求めたことを理由として、事業主は、その労働者に対して解雇その他不利益取扱いをしてはならない旨が規定されている。「不利益取扱い」の内容としては、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否などが挙げられること。
○参考:公益通報者保護法(平成十六年六月十八日法律第百二十二号) 内閣府所管
第1条 (目的)
この法律は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。
第3条(解雇の無効)
公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。
一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該労務提供先等に対する公益通報
二 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報
三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
ホ 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
第5条(不利益取扱いの禁止)
第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に掲げる事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。
2 前条に規定するもののほか、第二条第一項第二号に掲げる事業者は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをしてはならない。
※公的機関に自己の法益を求める訴えを行うことは、日本の社会では従来忌避されて来た行いに該当します。そのため、実際に労働者が公的機関(均等法の場合は労働局や裁判所の労働審判等)に相談や援助を求めた場合には、事業主や同僚・上司の応対が悪化(ハラスメントの対象者となる等)することが想定されます。均等法による労働局への相談や援助の求めは、公益通報法ほど影響が大きい(均等法事案は自分自身の事柄に限られるため)わけではありませんが、本人にとっては通常それ相当の覚悟が必要となります。※注:ハラスメント=いやがらせ
そこで、均等法第17条第2項の規定により、労働局(雇用均等室)に相談や援助等を申し出た労働者について、少なくとも法規定上で保護しようとするものです。
以上で均等法第15条、第16条、第17条を終了します。
均等法第15条、第16条、第17条