均等法第19条・第20条・第21条・第22条・第23条
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
法第19条
前条第1項の規定に基づく調停(以下この節において「調停」という。)は、三人の調停委員が行う。
2 調停委員は、委員会の委員のうちから、会長があらかじめ指名する。
○均等法施行規則
則第3条(主任調停委員)
紛争調整委員会(以下「委員会」という。)の会長は、調停委員のうちから、法第18条第1項の規定により委任を受けて動向に規定する紛争についての調停を行うための会議(以下「機会均等調停会議」という。)を主任となって主宰する調停委員(以下「主任調停委員」という。)を指名する。
2 主任調停委員に事故があるときは、あらかじめその指名する調停委員が、その職務を代理する。
則第4条(機会均等調停会議)
機会均等調停会議は、主任調停委員が招集する。
2 機会均等調停会議は、調停委員二人以上が出席しなければ、開くことができない。
3 機会均等調停会議は、公開しない。
則第5条(機会均等調停会議の庶務)
機会均等調停会議の庶務は、当該都道府県労働局雇用均等室において処理する。
則第6条(調停の申請)
法第18条第1項の調停(以下「調停」という。)の申請をしようとする者は、調停申請書(別記様式)を当該調停に係る紛争の関係当時者(労働者及び事業主をいう。以下同じ。)である労働者に係る事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の長に提出しなければならばい。
調停申請書様式:あっせん申請書.doc (54784)
則第7条(調停開始の決定)
都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を会長及び主任調停委員に通知するものをする。
2 都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは関係当時者の双方に対して、調停を行わせないこととしたときは調停を申請した関係当時者に対して、遅滞なく、その旨を書面によって通知するものとする。
則第8条(関係当時者等からの事情聴取等)
法第20条第1項又は第2項の規定により委員会から出頭を求められた者は、機会均等調停会議に出頭しなければならない。この場合において、当該出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て、補佐人を伴って出頭することができる。
2 補佐人は、主任調停委員の許可を得て陳述を行うことができる。
3 法第20条第1項又は第2項の規定により委員会から出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て当該事件について意見を述べることができる。この場合において、法第20条第1項の規定により委員会から出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て他人に代理させることができる。
4 前項の規定により他人に代理させることについて主任調停委員の許可を得ようとする者は、代理人の氏名、住所及び職業を記載した書面に、代理権授与の事実を証明する書面を添付して、主任調停委員に提出しなければならない。
則第9条(文書等の提出)
委員会は、当該事件の事実の調査のために必要がある必要があると認めるときは、関係当時者に対し、当該事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
則第10条(調停手続の実施の委任)
委員会は、必要があると認めるときは、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせることができる。この場合において、第4条第1項及び第2項の規定は適用せず、第8条の規定の適用については、同条中「主任調停委員」とあるのは、「特定の調停委員」とする。
2 委員会は、必要があると認めるときは、当該事件の事実の調査を都道府県労働局雇用均等室の職員に委嘱することができる。
則第11条(関係労使を代表する者の指名)
委員会は、法第21条の規定により意見を聴く必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体に対して、期限を付して関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名を求めるものとする。
2 前項の求めがあつた場合には、当該労働者団体又は事業主団体は、当該事件につき意見を述べる者の指名及び住所を委員会に通知するものとする。
則第12条(調停案の受諾の勧告)
調停案の作成は、調停委員の全員一致をもつて行うものとする。
2 委員会は、調停案の受諾を勧告する場合には、関係当時者の双方に対し、受諾すべき期限を定めて行うものとする。
3 関係当時者は、調停案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印した書面を委員会に提出しなければならない。
法第20条
委員会は、調停のため必要があると認めるときは、関係当時者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
2 委員会は、第11条第1項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争に係る調停のために必要があると認め、かつ、関係当時者の双方の同意があるときは、関係当時者のほか、当該事件に係る職場において性的な言動を行ったとされる者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
法第21条
委員会は、関係当時者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から当該事件につき意見を聴くものとする。
法第22条
委員会は、調停案を作成し、関係当時者に対しその受諾を勧告することができる。
法第23条
委員会は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
2 委員会は、前項の規定により調停を打ち切ったときは、その旨を関係当時者に通知しなければならない。
○通達による確認(平成18年雇児発第1011002)
・調停(法第19条から第23条)
(1)法第19条第1項では、調停は、3人の調停委員が行うこととされているが、簡易迅速な手続の実施の観点から、則第10条第1項では、調停手続の一部を特定の調停委員に行わせることができることとしたものであること。
則第10条第1項の「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係等当時者等からの事情聴取等が該当するするものあること。
なお、調停案の作成及び受諾の勧告は引き続き調停委員会の全員一致をもって行うものであること。
(2)法第20条第1項の関係当事者の「出頭」及び第2項の職場において性的な言動を行ったとされる者(以下「行為者」という。)の「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当時者(法人である場合には、委員会が指定する者)又は行為者により行われることが必要であること。
(3)法第20条第2項は、職場におけるセクシャルハラスメントに係る事業主の雇用管理上の措置義務についての紛争に係る調停においては、職場におけるセクシャルハラスメントに係る事実関係の確認に関わる事項が紛争の対象となる場合もあることから、関係当時者に加え、行為者の出頭を求めることができることとしたものであること。
なお、調停は、本来、事業主と労働者の二者の紛争の解決を主張するため、行為者の出頭を求めるに当たっては、事業主と労働者の二者だけでは紛争を解決するために必要な事実関係の確認が行えない場合に、委員会が調停のために必要があると認め、かつ、関係当時者が同意をした場合においては出頭を求めるものであること。
(4)則第8条第1項「補佐人」は、関係当時者が事情の陳情を行うことを補佐することができるものであること。補佐人の陳述は、関係当時者が直ちに意義を述べ又は訂正しない限り、関係当時者とみなされるものであること。
なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。
(5)則第8条第3項の代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。
なお、行為者については、本人の意見を聴くことが出頭の制度を創設した趣旨であることから、代理はみとめないものであること。
(6)法第21条の「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」とは、主要な労働関係団体が氏名する関係労働者を代表する者又は主要な事業主団体が指名する関係事業主を代表する者の意であること。
(7)則第11条の関係労使を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。
(8)法第22条の「受諾を勧告する」とは、両関係当時者に調停案の内容を示し、その受諾を求めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。
則第12条第3項の「書面」は、関係当時者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当時者間において民事的効力をもつものではないこと。
(9)法第23条の「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当時者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当時者の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。
○通達の解釈に関する項目毎のまとめ(第19条~第23条)
(1)3人の調停委員
紛争調整委員会(個別紛争解決法第6条)の委員の数は、個別紛争解決法規則に規定があり以下の人数を厚生労働大臣が任命することとなっています。※任期は、2年となっています。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行規則(平成13年厚生労働省令第191号)
第2条 委員会の委員の数は、東京紛争調整委員会にあっては三十六人、大阪紛争調整委員会にあっては二十一人、愛知紛争調整委員会にあっては十五人、北海道紛争調整委員会、埼玉紛争調整委員会、千葉紛争調整委員会及び神奈川紛争調整委員会にあっては十二人、茨城紛争調整委員会、長野紛争調整委員会、静岡紛争調整委員会、京都紛争調整委員会、兵庫紛争調整委員会、奈良紛争調整委員会及び福岡紛争調整委員会にあっては九人、その他の委員会にあっては六人とする。
各都道府県の紛争調整委員会の委員から3名が会長に指名され、その内の1名が主任となります。そして、均等法施行規則第10条第1項により、委員の一人が「現地調査」「申請書・答弁書等の分析・調査」「関係当時者等からの事情聴取」等を行うことができるとされています。※一人でできるのは、下調べ等の事前準備のみです。
また、事実確認等の調査を労働局の雇用均等室の職員に行わせることができるとされています。
(2)出頭の求め
関係当時者及びセクハラ行為者の出頭の求めに対する応諾は任意となっています。委員の権限は関係当事者の応諾に基づくものに限られます。
(3)セクハラ行為者の出頭
セクハラ案件については、会社等の担当者及びセクハラの行為者の出頭を求めることが可能であると規定されています。この場合に事業主(会社の代表者や担当者・代理人)と行為者(上司や同僚など)の両者に申請人があっせんを求める内容としては、専ら雇い主の会社に対し原状回復等(雇止め無効及び契約更新、解雇無効、セクハラの排除)や賠償(損害賠償他の金員の請求)の請求を行う事例がほとんどです。この場合の請求の根拠は、会社の使用者責任や均等法の規定に拠る不法行為が理由です。もちろん、行為者が社長等の代表者であれば、社長は事業主とみなせますからこの限りではありません。
なお、申請者が事業主被申請者が労働者である案件もあります。
(4)補佐人
補佐人は、事前に主任調停員の許可を得て本人(申請者)に随行して紛争調停会議に出席し、また同じく許可を得てあっせん申請書等の内容である事実関係(あっせんを求める事項やその理由等)を陳述することができます。ただし、意見を述べることは出来ません。また、補佐人の陳述は関係当事者のその場の意義がない限り本人の陳述とみなされます。
(5)代理人
主任調停委員の許可を得た代理人は、紛争調停会議において、申請者の委任を受けて申請者に代わって意見を述べます。ただし、セクハラ行為者の代理は認められないとされています。代理人には資格は必要ありませんが、報酬を得て代理を行う場合には、弁護士資格又は特定社会保険労務士資格が必要とされています。
参考:代理及び代理人とは何か?
・代理とは、本人に代わって他人(代理人)が法律行為をして、その効果が本人に帰属する制度です。紛争調整会議の場合は、調停の申請書を代理人が代理作成作し紛争調停会議に出席して本人に代わり意見を述べることで、本人の紛争解決を成し遂げます。代理人は、本人から委任された代理権の及ぶ範囲内で本人に代わって法律行為を行います。
(6)労働者団体、事業主団体が指名する者
法第21条は、都道府県内の労働組合や事業主の所属団体(森林組合、建設業組合、医師会、理容組合など)が想定されると思われます。
(7)関係労使を代表する者の指名
調停のため必要と認められる範囲で指名を求めることが出来るとされます。
(8)調停案受諾の際の書面提出
均等法施行規則第12条第3項の書面は、関係当時者が調停案を受諾した事実を委員会に対して報告する意味に限られるとされています。他方、紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つことになります。従って、提示されたあっせん案が記載された文書2通に、それぞれ申請者及び被申請者が記名押印等を行えば和解契約書となります。※参考:民法第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
(9)調停の打切り
個別紛争解決法による紛争調整委員会が行うあっせんと均等法・育介法・パートタイム労働法による同委員会の調停は取り扱う事案が異なるだけで、手続等はほぼ同一ですから、個別紛争解決法の規定が参考にできると思います。
参考:個別紛争解決法施行規則(あっせんの打切り)
第十二条 あっせん委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、法第十五条の規定に基づき、あっせんを打ち切ることができる。
一 第六条第二項の通知を受けた被申請人が、あっせんの手続に参加する意思がない旨を表明したとき。
二 第九条第一項の規定に基づき提示されたあっせん案について、紛争当事者の一方又は双方が受諾しないとき。
三 紛争当事者の一方又は双方があっせんの打切りを申し出たとき。
四 法第十四条の規定による意見聴取その他あっせんの手続の進行に関して紛争当事者間で意見が一致しないため、あっせんの手続の進行に支障があると認めるとき。
五 前各号に掲げるもののほか、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるとき。
2 あっせん委員は、前項の規定によりあっせんを打ち切ったときは、様式第五号(第七条第一項の規定によりあっせんの手続の一部を特定のあっせん委員に行わせる場合にあっては、様式第五号の二)により、紛争当事者の双方に対し、遅滞なく、その旨を通知するものとする。
◎比較のために、厚生労働省作成パンフレット記載の均等法等の紛争調停会議の打切り事由を再確認します。
①本人の死亡、法人の消滅等があった場合
②申立てが取り下げられた場合
③被申立者が非協力的で度重なる要請にもかかわらず事情聴取に応じない場合
④対立が著しく強く、歩み寄りが困難である場合
○紛争調停委員会による調停制度のまとめ
裁判外紛争解決手続(ADR)は、アメリカで発展した制度です。もとより、訴訟は民事であれ刑事であれ相当の費用支出と時間が必要です。また、裁判になじまないとして裁判所が訴えを受け付けないことも想定されます。そこで、政府は平成16年にADR法を制定し、裁判外の紛争解決制度の促進を図りました。併せて都道府県労働局の紛争調整委員会をはじめ都道府県の労働委員会の個別紛争調停機能等様々な取扱機関が創設されました。
従来から、都道府県労働局や労働基準監督署は戦後の労働行政を所管する国の機関でした。そのため労働局の均等法等の紛争調停会議もそのながれの一環で創設されました。
また、法律ごとの様々な紛争解決のために、法務省(条文は法務大臣)の認証を受けて様々な民間(準公的機関)のADR機関が生まれました。
以上で均等法第19条~第23条を終了します。
均等法第19条~第23条