均等法第3条

2015年05月08日 12:36

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

第3条(啓発活動)

 国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。

○行政通達で第3条の趣旨等の確認を行います。

1.平成9年通達

 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」ことをこの法律の主たる目的としたことに伴い、国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとしたこと。

2.平成18年通達

(1)法第3条は、国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等についての関心と理解を広く国民の間に深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うべきことを明らかにしたものであること。

(2)「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等」の「等」は、法第2章のほか、法第3章の紛争の解決も含まれること。

(3)「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因」とは、主として、社会に根ざす固定的な男女の役割分担意識及びこの意識を背景にした職場環境や風土をいうものであり、「必要な啓発活動」は事業主、男女労働者その他広く国民を対象とするものであること。

○均等法の啓発活動について

 均等法の啓発活動は、都道府県各労働局を中心にPR活動が行われていると思います。そこで、平成18年通達にある、「主として社会に根ざす固定的な男女の役割分担及びこの意識を背景にした職場環境や風土」について、過去の統計情報で確認してみます。

平成7年版 働く女性の実情より抜粋

均等法施行10年にみる女性雇用における状況の変化と今後の課題

1.女性の働き方として望ましい形態

 女性がどのような働き方が望ましいと思っているかを総理府「男女共同参画に関する世論調査」(平成7年)によりみてみましょう。

 この調査は、全国20歳以上の男女5,000人を対象に実施されたものであるが、それによると、女性では、

  ①「子供ができたら職業をやめ、、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」とするものが最も多いが、

   S59年45.3% H7年39.8% H19年33.0% H24年30.8% 

  ②次いで「子供ができてもずっと職業を続ける方がよい」とするものも32.5%となっている。

   S59年20.1% H7年32.5% H19年43.4% H24年47.5%

 ただし、職業の有無別にみると、有識者では「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」とするものが最も多くなっており、無職者に比較してその割合が高くなっている。

 さらに、前出の「勤労意識調査に関する世論調査」において、女性の就業のあり方について「できるだけ長く働くのが最も望ましい」と答えた女性に対し、「女性の進むコース」として、どのようなコースが最も望しいと思うかとたずねた結果をみると、「専門家になる」のが望しいとする女性が43.0%と最も多く、次いで「管理職になる」のが望しいとする女性が38.4%となっている。

2.企業の雇用管理の変化(定年退職及び解雇)

 定年、退職及び解雇については、男女別定年制が民法の公序良俗に反し無効となることが判例によって確立していたことから、昭和61年度の「女子労働者の雇用管理に関する調査」でも、ほとんどの企業(97.1%)で男女別定年制は解消されていた。

 また、結婚・妊娠・出産退職についても、「法施行以前から、結婚・妊娠・出産退職制はなく、対応する必要はなかった」とする企業が92.7%に達しており、これに法施行を契機として「改善した」企業(3.8%)を加えると、制度上はほとんどの企業で解消したという結果となっている。

 しかしながら、女性労働者に対する調査(平成2年度「女子労働者労働実態調査」)では、職場において、女性が定年前に退職する慣行が「ある」と答えた者が46.4%にも達しており、制度としてなくなっても、慣行としては残っていることがうかがえる。その内訳としては、「社内結婚した(する)とき」「社外の人と結婚した(する)とき」「出産した(する)とき」がいずれも5割近くに達しているほか、「いわゆる結婚適齢期に達したとき」等もみられた。産業別では、女性が定年前に退職する慣行が「ある」としたのは、金融・保険業、卸売・小売業・飲食店、、鉱業及び不動産業の順で割合が高く、また、規模別には規模が大きいほどその割合が高くなっている。

3.均等法施行10年にみる女性雇用における状況の変化と今後の課題まとめ

 「均等法施行10年にみる女性雇用における状況の変化と今後の課題」と題し、(以下で)様々な角度からの分析を行った。

 このうち1の「女性の職業構造の推移」では、女性の職業選択を始めとする職業に対する意識や職業間の人材の過不足、さらには高学歴化の進展等を中心にみてきたところであるが、その結果を要約すると、以下の3点にまとめることができよう。

 第1に、女性の職業に対する意識が大きく変化し、結婚及び妊娠、出産後も継続して働き続けることを望む者が増加しており、特に有職女性では「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」が望しい就職(業)形態のトップにあげられているということである。

第Ⅰ部(省略)で示した女性の平均勤務年数の長期化、有配偶者の増加等は、これらの女性の意識を反映した結果ともみられるが、企業においては今後、このことを前提とした募集・採用計画や配置・昇進のあり方、さらには教育訓練の実施等、雇用管理の見直しを求められることとなろう。

 第2に、女性が職業を選択するに当たっては、企業規模や職種について、従来の枠にとらわれない柔軟な発想及び幅広い視点からの選択を行っていくことが求められるであろうということである。

すなわち、職業意識の高まり等を反映して、継続就業を望む女性が増加するということは、逆の見方からすると退職者、特に若年時における結婚・妊娠・出産等を理由として退職する者が減少し、また、退職した後においても非労働力化せずに、引き続き労働市場にとどまる女性が増加することにつながっていく。したがって、女性の職域の拡大等が図られない限り、単なる退職者の補充という形での新規参入は、今後厳しくなることが予想される。

現在、女性、特に新規学卒者には、事務職意識が根強く存在し、このことが希望する職業と企業が求める人材とのギャップを生じさせる一因となっていると考えられるが、以上の状況と今後の労働者の過不足の状況等とを併せて考えるならば、女性、特に新規学卒女子が、これまでどおり大量に事務職として採用され続けることは難しくなっているといえよう。

 第3は、女性の高学歴化の進展との関係である。

女性の進学率は年々上昇し、特に大学への進学率は大きく伸びており、その内訳としては、人文科学専攻の占める割合が最も高く、次いで社会科学専攻となっている。理学、工学、農学専攻は低いという状況が続いているが、女性が幅広い職種を視野に入れて職業を選択するという観点からは、進学時の専攻分野の決定に当たっても従来の固定的な考えにとらわれることなく、個性と能力を十分発揮できるような選択を行うことが必要であると思われる。そのためには、幼少時からの家庭や学校における、固定的な考え方にとらわれない発想の醸成や、学校教育における職業ガイダンスの実施等職域拡大のための支援を行っていくことも求められよう。

 

次に、2の「企業の雇用管理の変化」では、募集・採用から、定年・退職及び解雇の状況まで、均等法の各ステージに沿いつつ、均等法施行10年の変化をみてきたところである。

各ステージごとの状況は、末尾の別表「女子雇用管理基本調査等からみた均等法施行10年の企業の雇用管理の変化と今後の課題」で示しているところであるが、ここでは全体を統括して、以下の4点にまとめてみたい。

 第1に、均等法施行の効果は極めて大きいものがあり、女性の雇用における状況の変化は均等法の施行を景気とした企業の雇用管理の変化によりもたらされた面を持っているものと考えられることである。

例えば、女性の活用について、「補助的な業務で活用を図る」とするものが減少し、「能力や適性に応じてすべての職務に配置」するという流れに変わってきたとみられること、また、現実に「いずれの職場にも男女とも配置」している企業割合が高まっていることなどは、均等法施行の効果といえよう

 第2に、しかしながら、それでもなお、均等法本来の趣旨及び目的からみて、いまなお改善されるべき様々な課題が残されているということである。

例えば、均等法の施行を契機として最も改善が図られたとみられている女性の募集・採用についても、依然として企業の対応に問題のあることや、制度上はほとんどの企業で解消している女性の結婚・妊娠・出産等を理由とする定年前の退職慣行(あるいはそのような企業風土)が、いまだに一部に残っているとみられることなどが、その例としてあげられるであろう。

これらのことは、たとえ企業において、雇用管理全般について均等法に沿った制度の改善を行っても、運用する意識、運用の方法によってはそれがなお問題が残るということであり、制度と運用との間の乖離を解消する必要があるといえよう。

 

それでは、このような乖離はどこから生ずるのであろうか。まとめの第3として、ここでは企業(実際には企業の方針を決定する経営者及び管理職)と、女性労働者との間の意識のギャップに注目してみたい。

それが顕著にみられるのは、女性の活用のあり方及び女性の活用を妨げる要因についての考え方の相違であり、まず、企業では、女性の活用を阻害しているのは、一般的に勤続年数が短いことや女性が家事・育児などの負担をより多くになっており家庭責任を考慮する必要があること、さらには労働基準法上の保護規定等、企業の雇用管理のあり方よりはむしろ、女性労働者及び女性労働者を取り巻く社会的な環境に求める傾向にある

これに対し女性労働者は、「男性中心の業界慣行」や企業の「育成方針」、さらには「上司が女性社員にチャンスを与えたがらない」こと等、企業社会のあり方や企業の姿勢を問題としているかのように思える。

これらの意識の相違は、その背景として、長年にわたる女性の職業意識や職業構造及び企業の雇用管理の実態等、様々な要因があるとみられるだけに、一朝一夕に埋められないとも考えられるが、企業においては女性労働者の積極的な活用を図る中で、また、女性労働者においては明確な職業意識をもって様々な可能性にチャレンジしていくことによって解消されるべきものであろう。

なお、これに関連して3の「女性管理職の変化」で明らかになった女性管理職の増加を第4のまとめとしてあげておきたい。

ここで明らかとなったのは、女性の活用を図ることにより、結果として管理職への登用を図っていくという流れが緩やかではあるが着実に進みつつあるといえることである。もっともその内容については程度の違いがあり、要約すれば大企業よりもむしろ中堅、中小規模の企業において、係長職の伸びが著しくなっている。

したがって、今後は均等法の一層の定着とともに、これらがどのような広がりをみせるのか、また、より上位の課長職以上及び部長職等への昇進にどのように影響していくかをみていく必要があろう。

4.役職者に占める女性割合の推移(企業規模100人以上)

S60年  部長級 1.0%  課長級 1.6%  係長級 3.9%

H7年   部長級 1.3%  課長級 2.8%  係長級 7.3%

H12年  部長級 2.2%  課長級 2.8%  係長級 7.3%

H18年  部長級 3.7%  課長級 5.8%  係長級 10.8%

H25年  部長級 5.1%  課長級 8.5%  係長級 15.4%   

 

○まとめ

 均等法第3条は、上記のような社会状況、企業や女性労働者の意識状況を踏まえ、女性の女性としての特質(特に母性や家庭内の家事・育児等の負担)をふまえつつ、社会全般への啓発を行う旨の規定です。言い換えると、両立支援やワークライフバランスの用語に代表される「仕事も家庭・家族どちらも大切」という観点からの国民の意識改革を進めるための施策の実施の必要性を定めています。  

 

以上で均等法第3条の記述を終了します。

 

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