均等法第4条

2015年05月09日 11:08

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

第4条(男女雇用機会均等対策基本方針)

 厚生労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針(以下「男女雇用機会均等対策基本方針」という。)を定めるものとする。

2 男女雇用機会均等等対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

一 男性労働者及び女性労働者のそれぞれの職業生活の動向に関する事項

二 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項

3 男女雇用機会均等対策基本方針は、男性労働者及び女性労働者のそれぞれの労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。

4 厚生労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求めるものとする。

5 厚生労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表するものとする。

6 前二項の規定は、男女雇用機会均等対策基本方針の変更につき準用する。

行政通達の内容を確認します。

1.平成9年通達

 男女雇用機会均等対策基本方針の策定

イ 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」ことをこの法律の主たる目的としたことに伴い、これまでの「女子労働者福祉対策基本方針」に代わり、新たに、労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となる方針(以下「男女雇用機会均等対策基本方針」という。)を定めるものとしたこと。

ロ 男女雇用機会均等対策基本方針に定める事項は、次のとおりとするものとしたこと。

 (イ)女性労働者の職業生活の動向に関する事項

 (ロ)雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項

ハ 男女雇用機会均等対策基本方針は、女性労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならないものとしたこと。

ニ 労働大臣は、男女雇用均等対策基本方針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、政令で定める審議会の意見を聴くほか、都道府県の意見を求めるものとしたこと。

2.平成18年通達

 (1)法第4条は、厚生労働大臣が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針を定めることとし、これに定める事項、定めるに当たっての考慮事項、定める手続等について規定したものであること。

 (2)第3項の「就業の実態等」の「等」には、例えば、企業の雇用管理の実態、男性及び女性の就業に対する社会一般の意識が含まれるものであること。

「男女雇用機会均等対策基本方針」の項目別 ポイント抜粋

はじめに

 我が国は、急速な少子化と高齢化の進行により人口減少社会の到来という事態に直面している。そうした中にあって、以前にも増して、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、その能力を十分発揮することができる雇用環境を整備することが重要な課題となっている。

第1 男女労働者 それぞれの職業生活の動向

1.男女労働者を取り巻く経済社会の動向

 また、企業経営の動向は、グローバルな国際経済競争の強まり、技術革新等の進展等に伴い収益力を重視する傾向が強まってきている。(略)また、いわゆる「団塊の世代」が定年退職を迎え始める中、少子化も伴って、長期的に労働力人口が減少することが見込まれるなど、我が国の経済社会は大きな転換点を迎えている。こうした中、我が国経済が持続的に発展し、ひいては国民全体が豊かで質の高い生活を享受するために、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、能力を発揮しながら充実した職業生活を送ることができるような環境を早急に整備することが求められている。

2.男女労働者の職業生活の動向

(1)雇用の動向

ア 労働力の量的変化

 雇用者数は男性では減少傾向にあるが、女性では増加傾向にあり、雇用者総数に占める女性の割合は上昇を続けている。女性の雇用者数の増分により、雇用者数は全体としては増加傾向にある。

イ 労働力の質的変化

 均等法が施行されてから20年が経過し、女性の勤続年数は長期的には伸長してきているが、近年はほぼ横ばいで推移しており、男性の勤続年数との差も縮小していない。また、進学率の高まりに伴い、男女ともに雇用者の高学歴化が進んでいる。特に新規学卒就職者では女性の大卒者の割合が大幅に上昇しており、半数を超える者が大学卒となっている。

ウ 失業の状況

 完全失業率の水準は昭和60年以降概ね女性が男性を上回って推移していたが、平成9年以降は女性の水準が男性を下回っている。

エ 労働力需給の見通し

 このうち2030年時点では、性・年齢階級別の労働力率が平成16年の実績と同じ水準で推移する場合と比較し、女性について約270万人の増加が見込まれている。

オ 労働条件

 男女の平均賃金の格差は、(略)依然として欧米諸国と比較すると大きな差がある。労働時間について見ると(略)、特に子育ての時期に当たる30歳代及び40歳代前半の男性では、週60時間以上就業している者の割合が20%を超えている。

(2)企業の雇用管理

ア 均等法の定着状況等

 均等法が昭和61年に施行されて20年が経過し、企業において法律の内容に対する認識が広がったことから、企業内の雇用管理において制度面での男女の均等な取扱いは徐々に浸透しており、女性の職域も拡大しつつある。また、管理職に占める女性の割合についても、大企業を中心に上昇している。

 一方、近年、採用を行った企業について、各職種・コースにおいて男女とも採用したとする割合が減少し、ポジティブ・アクションについても取り組んでいるとする企業が減少するなど、男女の均等な取扱いのための取組に一部停滞が見られる。

イ 育児・介護休業制度の定着状況等

 育児・介護制度が義務化されてから10年を超える中、(略)制度の定着が進んでいる。しかしながら、事業所規模が小さくなるほどその割合は低くなっている。

ウ パートタイム労働者の雇用管理改善等の状況

 パートタイム労働者は年々増加し全雇用者数の2割強を占めており、このうち約7割が女性であるが、近年、男性も大きく増加している。

 勤続年数については、女性は横ばいで推移しているが、男性では平均で女性よりも短いもの長期化の傾向が見られる。

エ 企業の雇用管理の変化

 企業の非正規雇用の活用が進む中、パートタイム労働者、契約社員、派遣社員等の雇用形態別に雇用理由には差異が見られる。また、非正規雇用の中でも、契約社員・嘱託では男性が多く、パートタイム労働者や派遣社員では女性が多いという傾向がある。

(3)男女労働者の意識の変化と就業パターン

 女性が職業を持つことについての意見を見ると、男女ともに「子どもができても、ずっと職業を続けるほうがよい」とする割合が最も高く、かつ、近年上昇傾向にある。しかしながら、実際には第1子の出産を契機に約7割の女性が離職しており、女性労働者が就業を継続していくために必要な事項としては、「子育てしながらでも働きるづけられる制度や職場環境」と、「やりがいが感じられる仕事の内容」が最も多く指摘されている。

参考(加筆):厚生労働省作成 待機児童数集約表

都道府県     定員    利用児童数   待機児童数  

埼玉県     68,899人   67,765人     974人

千葉県     54,427人   51,518人     776人

東京都    181,390人   178,956人    7,855人

神奈川県    30,786人   30,830人     778人

山梨県     21,359人   19,493人      0人

長野県     51,149人   43,103人      0人

大阪府     67,521人   69,140人     557人

都道府県計  1,549,341人  1,459,975人   15,866人

政令指定都市計 367,651人   376,975人   7,932人

中核市計   2,204,393人  2,122,951人    25,556人

 ※市の合計と都道府県の合計が異なっていますが、詳細は https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q77g.html で確認できます。

3.まとめ

 均等法が昭和60年に公布、翌61年に施行されて以降、平成9年、平成18年と2度の改正を経て、法制度上は男女の均等な機会及び待遇の確保は大きな進展を見た。この間企業の雇用管理の男女均等な取扱いは改善されつつあるが、依然として、男性と比べて女性の勤続年数は短く、管理職比率も低い水準にとどまっている。また、出産を気に多くの女性が退職し、その中には就業継続を希望しながら離職を余儀なくされている者もいる。一方、男性労働者には、長時間労働のように職業人生を通じて企業からの拘束が強い働き方がみられ、実質的な機会均等が確保された状況とはなっていないといえる。また、少子高齢化が進展する中で、人生の各段階における生活の変化が職業生活に影響を与え、仕事と生活の関係に対する考え方も多様化している。

第2 講じようとする施策の基本となるべき事項

1.施策についての基本的な考え方

 過去2度の法改正を経て、努力義務規定から禁止規定への強化、男女双方に対する差別の禁止など均等法制定当時に指摘されていた法制上の課題についてはほぼ解決し、法制度の整備は大きく進展した。しかしながら、第1で見たように、均等法施行後20年を経てもなお実質的な機会均等が確保されたとは言い難い状況がみられ、特に近年均等確保に向けた改善の動きには鈍化が見られる。

 一方、今後の少子化の進展に伴う労働力人口の減少が見込まれる中、女性の就業率の向上や個人の職業生活期間の長期化は喫緊の課題である。また、仕事と生活の関係の有様やこれらに対する考え方が多様化している中、男女労働者が共に性別にかかわらず主体的に働き方やキャリアを選択することができることが考えられている。

2.具体的施策

(1)就業意欲を失うことなくその能力を伸長・発揮できるための環境整備

ア 公平な処遇の確保

(ア)均等法の履行確保

  改正均等法により、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いについては解雇以外のものも禁止されたところであるが、従来より当該不利益取扱いに係る相談は多く、またその内容も多種多様の把握を通じて事例収集に努め、不利益取扱いの判断基準の明確化を図る。

(イ)男女間賃金格差の縮小

 賃金は職務や職能等を公正に評価し決定されるべきものであるが、平均賃金の格差には性差別のみならず職種、職階、勤続年数等様々な要因が含まれており、それぞれの要因に応じた対策を講じるためにはその詳細な分析が必要である。

(ウ)コース別雇用管理の適正な運用の促進

  また、コース別雇用管理については、導入企業が増加傾向にあるとともに、コースの種類等も多様化が進んでいることから、コース別雇用管理の実態把握を行い、その適正な運用のための効果的な方策を検討する。

(エ)妊娠、出産、育児等による休業期間等に対する公平性及び納得性の高い評価及び処遇の推進

  産前産後休業、育児休業等を取得した場合に、これらを取得していない者に比して処遇上長期的に見ても取り返しが付かない差が付いてしまうことは、休業取得の阻害要因となり得るとともに、継続就業の意欲の喪失につながる。こうしたことから、休業取得を抑制することとならないような公平性・納得性の高い人事管理制度や能力評価制度等の在り方について調査研究し、企業における雇用管理の見直しに際して自主的な取組が促進されるよう支援を行う。

イ セクシャルハラスメント防止対策の推進

  企業におけるセクシャルハラスメントの防止対策については、指針に即して窓口の設置などの制度的な体制を整えることのみならず、それらが適切に機能することが重要である。こうした観点から、企業の対応の実情を把握しきめ細やかな情報提供を行っていく。

ウ 女性の能力発揮のための支援

(ア)女子学生に対する支援

 女子学生について、固定的な男女の役割分担意識に捕らわれることなく、個人の適性及び能力にあった進路選択・職業選択が適切になされるとともに、人生における職業生活のビジョンの形成に資するよう、就職活動を始める前の自己分析、職業生活と私的生活の将来設計、適切な進路選択等を始め、就職・就業に関する様々な情報提供を行う等の支援を行う。

(イ)在職中の女性に対する能力開発等の支援

  相談体制の整備などを行うとともに、キャリアアップのための能力開発機会の付与を引き続き行っていく。また、地方公共団体の女性関連施設職員等を対象としたセミナーを開催し、地域においてより充実した女性の能力発揮支援事業の実施を促進する。

エ 母性健康管理対策の推進

 改正均等法により、母性健康管理措置の請求等を理由とする不利益取扱いについても均等法違反とされたことから、これまでの母性健康管理措置の義務違反のみならず、不利益取扱いの禁止違反の可能性も視野に入れながら行政指導を行う。

(2)仕事と生活の調和の実現に向けた取組

ア 仕事と生活の調和の実現に向けた取組

  社会的気運の醸成を図る。

イ 育児休業や短時間勤務制度等、仕事と子育ての両立を図るための制度の一層の普及・定着

  特に、取組が進んでいない中小企業における行動計画策定の取組を促進・支援するとともに、企業の認定に向けた取組を支援する。

ウ 介護休業その他の仕事と介護の両立のための制度の定着促進等

  制度の在り方等について検討を行う。

エ 両立が容易になるような職場環境づくりの促進

  仕事と育児・介護の両立に向けた労使の取組を支援する。また、両立がしやすい企業文化をもつファミリー・フレンドリー企業を目指す企業の取組を支援する。

オ 地域等における支援サービスの充実

  育児に関する臨時的、突発的、専門的なニーズに対応する緊急サポートネットーワーク事業を推進する。

(3)ポジティブ・アクションの推進

  ポジティブ・アクションは女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組のみを言うものではないという認識も含め、上記のようなポジティブ・アクションの趣旨及び内容の正しい理解が促進されるよう、一層の周知徹底をを図る。(略)さらに、業種及び地域別の均等実施を把握・分析し。それぞれの業種・地域の実情に応じたポジティブ・アクションの実施について効果的な支援を行う。

(4)多様な就業パターンの選択が可能となるような条件整備

ア パートタイム労働対策

  パートタイム労働者について、通常の労働者との均等待遇等が確保されるよう行政指導を行っていく。(略)さらに、短時間正社員制度が一層普及・定着するよう務める。

イ 在宅就業対策

  在宅就業の実態把握を行い、必要な施策の検討を行う。

ウ 再就職支援

  特に、母子家庭の母については、その就業による自立と生活の向上が図られるよう、福祉事務所とハローワーク等の連携の下、就業相談、職業能力開発、常用雇用の促進等個々の母子家庭の実情に応じたきめ細やかな就業支援を行う。

エ 起業支援

  企業は、労働時間が柔軟であったり、家事や育児等の経験を生かしやすい等のメリットから、女性の働き方の選択肢の一つとして近年注目されているところである。(略)女性起業者等に対し、起業に係る情報提供、メンターからの助言、相談等の支援を引き続き行っていく。※メンター:助言者、指導者

(5)関係者・関係機関との連携

  地方公共団体の労働担当部局、男女共同参画担当部局、福祉担当部局等との協力関係を深め、地方公共団体が行う関係施策との連携を図りつつ、雇用均等行政をより効果的に推進する。

(6)行政推進体制の充実、強化

  行政サービスの質的向上に務めるとともに、業務効率化を図る。

※男女雇用機会均等対策基本方針の全文は次でご確認ください。

男女雇用機会均等対策基本方針.pdf (758590)

施策に関する考察と企業の労務管理のあり方の考察

ア 均等法の施策に関する考察

  労働契約法の改正により、通算5年を超える有期契約の更新時には、無期の労働契約に転換する仕組みが立法化されました。他方で、企業の業績が不振に陥った際にも、希望退職を募る以外の方法はなかなか採れない法体系になりました。そうすると、法令を遵守して労働条件の不利益変更や解雇を行わなかった場合には、最後は倒産寸前まで追い込まれることも想定されます。結局のところ出来る時には出来るし出来る会社は出来るという実情に陥り易いと思われます。

 均等法に立ち返ってみると、均等法や育介法の規定を100%実施することの困難さはそれぞれの会社の実情に応じて、或いはその時の会社の実情に応じて、その程度が異なることとなります。そういった、事情の変化に応じた柔軟な制度設計がそもそも根本にあり、「できない約束はしないことだな・・・(書家、相田みつお)」という思想が大事なことかと思います。※現実に運用可能な法整備や会社の労務管理の制度設計が重要です。

イ 企業の労務管理のあり方について

 視点を変えると、育児休業や子の養育時間を与えられた労働者とそうでない労働者の処遇が全く同一であれば、未婚の労働者を始め制度の恩恵を受けない労働者にとっては理不尽な制度となりかねません。他方で、育休他を取得した労働者に対し非常に冷たい処遇であれば、休暇取得等に抑制的な現実となりますし、それらの労働者の勤労意欲が著しく低下してしまいます。言うまでもなく、誰にとっても合理的だと感じる制度設計が重要で、法制度の趣旨や理念を達成するための不可欠な前提だと思料します。

ウ 出産後に70%の女性が離職する現状について

  例えば、看護職の例で言えば、結婚・妊娠・出産後に子が手が離れる年齢(例えば、小学校入学)まで、職を離れてしまえば、高度な内容の業務(職務)であるがゆえに、看護職としての職場復帰は非常に困難かと思います。そうすると、10代から苦労して取得した看護資格が生かせる期間は、人生のほんの一部に過ぎないことになります。まして、第2子、第3子を出産・養育しようと思えば、その困難さは増すばかりです。そこで、完全に離職せずに、言ってみれば不合理を避けて出産前の業務に近い仕事に関わり続けることが、誰にとっても好ましいと言えます。制度が無いために離職を余儀なくされているのであれば、制度さえ整えば良いことになります。もっとも、看護職の出産を理由とする離職率は30%程度(看護協会調べ)とされていますが、大変な勤務がゆえに新卒者の就労開始直後の離職率も10%をはるかに超えていますから、医療現場の人手不足解消には離職防止がもっとも重要な課題となっています。※看護協会も同じ問題意識を持っている旨の広報がされています。

 昨今、男女を問わず、仕事の困難さではなく職場の人間関係により離職するケースが多いと推察します。長引いたデフレ不況により、人あまりの時代が長く続きました。辞めさせても、すぐに別の労働者の補充が可能であると、企業(雇用主)も考えて来たと思います。過去、高度成長期においては、人・物・金として、経営資源の最も重要な位置づけであった「人=労働者」も不況の時代、言い換えると「人あまりの時代」がここ数十年続いたが故に、職場のパワハラなどという風潮が生まれ、職場に大切な原点を忘れてしまったものと思います。いずれにしても、労・使・顧客・地域社会、誰にとっても良い職場環境をこれから構築してゆくことが必要かと思います。

 

以上で均等法第4条を終了します。

 

均等法第4条