均等法第7条
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
第7条(性別以外の事由を要件とする措置)
事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事情に関する措置であって労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
均等法施行規則
第2条(実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置)
法第7条の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
ニ 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
三 労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
○通達による確認
・平成18年通達 性別以外の事由を要件とする措置(法第7条)
(1)法第7条は、諸外国で広く性差別に含むとされている間接差別について規定したものであること。
(2)間接差別は、直接差別となる性別要件を別とすれば、およそどのような要件でも俎上(ソジョウ)に載り得る広がりのある概念であるが、我が国においては、現時点では、どのようなものを間接差別として違法とすべきかについて十分な社会的合意が形成されているとはいえない状況にあることをかんがみると、本法に間接差別を規定し、これを違法とし、指導等の対象にするに当たっては、対象となる範囲を明確にする必要がある。このため、本条では、対象となる性以外の事由を要件とする措置を厚生労働省令で定めることとたものであること。
したがって、則第2条に定められる措置は、あくまでも本法の間接差別の対象とすべきものを定めたものであって、これら以外の措置が一般法理としての間接差別法理の対象にならないとしたものではなく、司法判断において、民法等の適用に当たり間接差別法理に照らして違法とされることはあり得るものであること。
(3)則第2条に定める措置の実施について「合理的な理由」があるか否かについては、当該措置の要件が適用される労働者の範囲を特定した上で判断するものであること。
(4)則第2条に定める措置は、間接差別についての判例の動向、都道府県労働局への相談等の状況、関係審議会における審議の状況等を踏まえ、機動的に対象事項の追加、見直しを図るものであること。
(5)「特に必要である場合」とは、当該措置を講じなければ業務上、又は企業の雇用管理上不都合が生じる場合であり、単にあった方が望しいという程度のものではなく、客観的にみて真に必要である場合をいうものであること。
(6)指針第3の2(2)ロの「通常の作業において筋力を要さない場合」とは、日常の業務遂行において筋力を要しない場合をいい、突発的な事故の発生等予期せざる事態が生じた場合に筋力を要する場合は、通常の作業において筋力を要するとは認められないものであること。
(7)指針第3の3(2)イの「計画等」とは、必ずしも書面になっている必要はなく、取締役会での決定や、企業の代表が定めた方針等も含むが、ある程度の具体性があることが必要であり、不確実な将来の予測などは含まれないものであること。
ハの「組織運営上」とは、処遇のためのポストの確保をする必要性がある場合や、不正行為の防止のために異動を行う必要性がある場合などが含まれるものであること。
○事業主対処指針(平成18年告示第614号)
第3 間接差別(法第7条関係)
1.雇用の分野における性別に関する間接差別
(1)雇用の分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由を要件とする措置であって、②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、③合理的な理由がないときに講ずることをいう。
(2)(1)の①の「性別以外の事由を要件とする措置」とは、男性、女性という性別に基づく措置ではなく、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等(以下第3において「基準等」という。)に基づく措置をいうものである。
(1)の②の「他の性の構成員と比較して、一方の構成員に相当程度の不利益を与えるもの」とは、当該基準等を満たすことができる者の比率が男女で相当程度異なるものをいう。
(1)の③の「合理的な理由」とは、具体的には、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務び遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上に特に必要であること等をいうものである。
(3)法第7条は、募集、採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇並びに労働契約の更新に関する措置であって、(1)の①及び②に該当するものを厚生労働省令で定め、(1)の③の合意的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならないこととするものである。
厚生労働省令で定めている措置は、具体的には、次のとおりである。
(均等則第2条各号に掲げる措置)
イ 労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること(均等則第2条第1条関係)
ロ コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(均等則第2条第2号関係)
ハ 労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること(均等則第2条第3号関係)
2.労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること(法第7条・均等則第2条第1号関係)
(1)均等則第2条第1号の「労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの」とは、募集又は採用に当たって、身長若しくは体重が一定以上若しくは一定以下であること又は一定以上の筋力や運動能力があることなど一定以上の体力を有すること(以下「身長・体重・体力要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。
(身長・体重・体力要件を選考基準としていると認められる例)
イ 募集又は採用に当たって、身長・体重・体力要件を満たしている者のみを対象とすること。
ロ 複数ある採用の基準の中に、身長・体重・体力要件が含まれていること。
ハ 身長・体重・体力要件を満たしている場合については、採用選考において平均的な評価がなされている場合に採用するが、身長・体重・体力要件を満たしていない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。
(2)合理的な理由の有無については、個別具体的な事業ごとに、総合的に判断が行われているものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。
(合理的な理由がないと認められる例)
イ 荷物を運搬する業務を内容とする職務について、当該業務を行うために必要な筋力より強い筋力があることを要件とする場合
ロ 荷物を運搬する業務を内容とする職務ではあるが、運搬等するための設備、機会等が導入されており、通常の作業において筋力を要さない場合に、一定以上の筋力があることを要件とする場合
ハ 単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的としていない警備員の職務について、身長又は体重が一定以上であることを要件とする場合。
3.コース別雇用管理における総合職の労働者の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第2号関係)
(1)均等則第2条第2号の「当該事業主の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコース」(以下「総合職」という。)に該当するか否かの判断に当たっては、単なるコースの名称などの形式ではなく、業務の内容等の実態に即して行う必要がある。
(2)均等則第2条第2号の「労働者の募集又は採用に関する措置(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行う場合において、当該複数のコースのうち当該事業主の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う労働者が属するコースについて行うものに限る。)であって、労働者が住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」とは、コース別雇用管理を行う場合において、総合職の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができること(以下「転勤要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。
(転勤要件を選考基準としていると認められる例)
イ 総合職の募集又は採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること。
ロ 複数ある総合職の採用の基準の中に、転勤要件が含まれていること。
(3)合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。
(合理的な理由がないと認められる例)
イ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、長期間にわたり、家庭の事情その他の特別な事情により本人が転勤を希望した場合を除き、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合
ロ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店、支社等で管理者としての経験を積むこと、生産現場の業務を経験すること、地域の特殊性を経験すること等が幹部として能力の育成・確保に特に必要であるとは認められず、かつ、組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合
4.労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第3条号関係)
(1)均等則第2条第3号の「労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの」とは、一定の役職への昇進に当たり、労働者に転勤の経験があること(以下「転勤経験要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。
(転勤経験要件を選考基準としていると認められる例)
イ 一定の役職への昇進に当たって、転勤の経験がある者のみを対象とすること。
ロ 複数ある昇進の基準の中に、転勤経験要件が含まれていること。
ハ 転勤の経験がある者については、一定の役職への昇進の選考において平均的な評価がなされている場合に昇進の対象とするが、転勤の経験がない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。
ニ 転勤の経験がある者についてのみ、昇進のための試験を全部又は一部免除すること。
(2)合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。
(合理的な理由がないと認められる例)
イ 広域にわたり展開する支店、支社がある企業において、本社の課長に昇進するに当たって、本社の課長の業務を遂行する上で、異なる地域の支店、支社における勤務経験が特に必要であるとは認められず、かつ、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合に、転居を伴う転勤の経験があることを要件とする場合
ロ 特定支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合
○まとめ
間接差別が争点の裁判は、今日現在ほとんどありません。均等法の目的としては、まずは第6条の社会的な浸透が優先されるべきものと思います。
以上で均等法第7条を終了します。
均等法第7条