女性に関する労働条件 

2015年05月06日 09:29

女性に関する労働条件のまとめ

○法令の女性に関する規定

1.日本国憲法  第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2.民 法 第2条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

3.ILO条約 産前産後に於ける婦人使用に関する条約(3号) 批准なし

      夜業に於ける婦人使用に関する条約(4号) 批准なし

        すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(45号)批准

        同一価値の労働についての男女労働者の同一報酬に関する条約(100号)批准

      母性保護に関する条約(103号)批准なし

      1952年の母性保護条約(改正)に関する改正条約(183号)批准なし  他

4.労働基準法 第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として

           賃金について、男性と差別的取使いをしてはならない。

       第64条の2 妊産婦の坑内労働の制限

       第64条の3 妊産婦他の危険有害業務の制限

       第65条   産前産後の休業

       第66条   妊産婦の労働時間の制限

       第67条   乳児の育児時間の付与

       第68条   生理休暇

5.女性労働基準規則(昭和61年1月27日労働省令第3号)

 第1条 (女性の坑内労働の制限)

  労働基準法(以下「法」という。)第64条の2第2号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。(以下略)

 第2条 (妊産婦の危険有害業の制限)

  法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。(以下略)

 第3条 (妊産婦以外の女性の有害業務の制限)

  法第64条の3第2項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第1項第1号及び第18号に掲げる業務とする。

※女性労働基準規則の内容は次をご参照ください。 女性労働基準規則.doc (129360) 

6.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律

       第2条 性別均等待遇、母性保護の基本理念  第5条 募集、採用時の性差別の禁止

       第6条 配置,昇進,降格,教育訓練等の差別禁止 第7条 間接差別(身長,体重,体力等)

       第8条 女性労働者の特例容認        第9条 婚姻,妊娠,出産時の差別禁止

       第11条 セクハラ防止措置          第11条、第12条 妊産婦の健康管理

・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律施行規則

       第13条 深夜業に従事する女性労働者への配慮(使用者の措置努力義務)

※均等法の規定の詳細は、別の機会に記述するとしまして、次の厚生労働省作成のパンフレットをご参照ください。 

  均等法.pdf (1131024)  

 また、均等法の趣旨は、母性保護及び性差別の禁止ですから、男性を差別する場合も法の趣旨に含まれます。

7.労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

       第47条の2 均等法の派遣先事業主への適用

 

○裁判例でみる性差別関連の事案

ア 平成13年(受)1066 最高裁第一小法廷判決 判決文抜粋 東朋学園事件

 上告申立て理由:本件は、上告人の従業員である被上告人が、産後8週間休業し、これに引き続き子が1歳になるまでの間、1日につき1時間15分の勤務時間短縮を受けたところ、出勤率が90%以上であることを必要とする旨を定めた就業規則所定の賞与支給要件を満たさないとして、平成6年度年末賞与及び平成7年度夏期賞与(以下「本件賞与」という。)が支給されなかったため、上記取扱いの根拠となった就業規則の定めは、労働基準法(平成9年法律第92号による改正前のもの。以下同じ。)65条、67条、育児休業等に関する法律(平成7年法律第107号による改正前のもの。以下「育児休業法」という。)10条の趣旨に反し、公序に反する、あるいは就業規則を不利益に変更するもので被上告人に対して効力を生じないなどと主張して、上告人に対し、本件各賞与並びに債務不履行による損害賠償として上記と同額の支払いを請求している事案である。なお、上告人は、第1審判決に基づく仮執行の原状回復を申し立てている。

 労働基準法65条は、産前産後休業を定めているが、産前産後休業中の賃金については何らの定めを置いていないから、産前産後休業が有給であることまでも保障したものではないと解するのが相当である。そして、同法39条7項は、年次有給休暇請求権の発生要件である8割出勤の算定に当たっては産前産後休業期間は出勤したものとみなす旨を、同法12条3項2号は、平均賃金の算定に当たっては、算定期間から産前産後休業期間の日数を、賃金の総額からその期間中の賃金をそれぞれ控除する旨を規定しているが、これらの規定は、産前産後休業期間は本来欠勤ではあるものの、年次有給休暇の付与に際しては出勤したものとみなすことによりこれを有利に取り扱うこととし、また、産前産後休業期間及びその期間中の賃金を控除しない場合には平均賃金が不当に低くなることがあり得ることを考慮して定められていたものであって、産前産後休業期間を一般に出勤として取り扱うべきことまでも使用者に義務付けるものではない。また、育児休業法10条は、事業主は1歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものに関して、労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない旨を規定してしるが、上記措置が講じられた場合に、短縮された勤務時間を有給とし、出勤として取り扱うべきことまでも義務付けているわけではない。したがって、、産前産後休業を取得し、又は勤務時間の短縮措置を受けた労働者は、その間就労していないのであるから、労使間に特段の合意がない限り、その不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず、当該不就労期間を出勤として取り扱うかどうかは原則として労使間の合意にゆだねられるというべきである。

 ところで、従業員の出勤率の低下防止の観点から、出勤率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする措置ないし制度を設けることは、一応の経済的利益を有するものである。上告人の給与規程は、賞与の支給の詳細についてはその都度回覧にて知らせるものとし、回覧に具体的な賞与支給の詳細を定めることを委任しているから、本件各回覧文書は、給与規程と一体となり、本件90%条項等の内容を具体的に定めたものと解される。本件各回覧文書によって具現化された90%条項は、労働基準法65条で認められた産前産後休暇を取る権利及び育児休業法10条を受けて育児休職規程で定められた勤務時間の短縮措置を請求し得る法的利益を含めて出勤率を算定するものであるが、上述のような労働基準法65条及び育児休業法10条の趣旨に照らすと、これにより上記権利等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が上記権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り、公序に反するものとして無効となると解するのが相当である 

※上告人就業規則規定、備考⑤:育児休業規程第13条の勤務時間の短縮を受けた場合には、短縮した分の総労働時間数を7時間45分(7.75)で除した勤務日数に加算する(ただし、0.5未満の端数日については切り捨てる。)

 そうすると、本件90%条項のうち、出勤すべき日数に産前産後の日数を算入し、出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分は上記権利等の行使をを抑制し、労働基準法等が上記権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから、公序に反し無効であるというべきである。そして、本件90%条項は、賞与支給対象者から例外的に出勤率の低い者を除外する旨を定めるのであって、賞与支給の根拠条項と不可分一体のものであるとは認められず、出勤率の算定にあたり欠勤扱いとする不就労の範囲も可分であると解される。また、産前産後休業を取得し、又は勤務時間短縮措置を受けたことによる不就労を出勤率算定の基礎としている点が無効とされた場合に、その残余において本件90%条項に効力を認めたとしても、労使双方に反するものではないというべきであるから、本件90%条項の上記一部無効は、賞与支給の根拠条項の効力に影響をおよぼさないものと解される。

※上記の出勤率の算定の歳に、例えば所定労働時間の一部が未就労で(遅刻、早退等の際)足りない場合に、その日の出勤を1.0を欠けるものとして取り扱うことは解釈の誤りです。少なくとも、年次有給休暇の出勤率の算定の際には、所定の労働日を分母とし、例えば1時間のみ就労した場合であっても出勤日数1(出勤とみなす日を含む)として分子に積算します。注:ただし、法定休日労働は前記の分子分母から控除します(カウントしない)

 備考⑤は、上記のとおり、欠勤とは区別される育児短時間勤務による短縮時間を、賞与の支給に関しては欠勤扱いするという規程である。欠勤扱いの結果、育児短時間勤務をすれば、その期間により賞与の支給を受けられない場合が生じる。被上告人のような女性従業員の場合、賞与の額が年間総収入額の中で占める割合は、前述のとおり高率である。育児短時間勤務をする従業員は、ほとんどが女性と考えられる。備考⑤は、被上告人が上告人の女性従業員として初めて育児短時間勤務をしたという事態に対応するため、平成7年度回覧文書から挿入された。したがって、備考⑤も、その挿入時期、趣旨、内容からして、実質的に女性のみを対象とし、育児短時間勤務の短縮時間を労働者の責めに帰すべき欠勤と同視して、これを取得した女性従業員に欠勤同様の不利益を被らせ、その不利益も効率の賃金減額であって、女性従業員がこのような不利益を受けることをおもんばかって権利の行使を控えるという事態を生じさせる規定であり、育児休業法10条が労働者に勤務時間短縮の措置を受ける権利を実質的に失わせるものである。

 しかも、備考⑤は、被上告人が育児短時間勤務をした賞与の対象期間(平成6年11月16日から平成7年5月15日まで)後の同年6月8日になって挿入されたものであって、実際上は、被上告人1人を対象とした一種の遡及適用規定である。このような遡及適用は、法規不遡及の法理、就業規則の周知義務(労働基準法106条参照)に違反する。したがって、備考⑤は、公序良俗違反により無効というほかない。

イ 平成18年(ワ)1955 名古屋地裁判決 判決文抜粋 協立総合病院(育児休業復職)

 また、原告(労働者)は、復職時に師長に復職させなかったことは旧育児休業法9条に反し違法である、また、裁量権を逸脱した行為であると主張する。しかし、同法が事業主に現職復帰の義務を課していないことは明らかである。また、仮に、短期間に復職した者が引き続き師長職にありつづけたとしても、前記認定の事実、特に原告が外来勤務の平看護師として復職しながら勤務を継続できなかったこと、原告が師長就任直後に妊娠し、病休し、その後1年以上職場を離れたこと、師長のポストはかぎられていること等に照らし、原告を師長に復帰させなかったことが裁量権を逸脱した行為であることも認められない。

 また、原告は、被告に旧育児休業法10条及び11条違反の行為があったと主張するが、原告が旧育児休業法10条の定める「一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしない者」に該当した期間は1か月足らずしかなく、かつ、原告が勤務時間の短縮等の措置を申し出たという事情は窺えず、11条については、事業主に努力義務を負わせるに過ぎない。さらに、原告は、職場の人員配置が十分ではなく、被告が24時間保育や病児保育の態様もとられないため、他の職員に負担をかけることから、思うように休みが取れないなどと被告の育児支援策の乏しさにつき種々指摘するが、そのような措置を講じなければ、旧育児休業法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせて、違法な状態となるとまでは解されない。

 これによれば、自宅待機命令は、上記のような業務上の必要から発令されたものであると認められ、原告が深夜業の制限を請求したこと自体を理由としたものであるとは認め難い。また、このような賃金を支払う旨の自宅待機命令は使用者が労働者に対し労務提供義務を免除したにすぎず、直ちに不利益な取扱いであるとはいい難い。

※労働契約の性質から、労働者には明示・默示の使用者の指示に基づき労務の提供義務を有しています。これは、労働者の債務であり使用者の債権であると言えます。一方、使用者は、労働者に提供を受ける労務の内容を指揮命令し、代償として労働者に決められた賃金を支払う義務があります。賃金の支払いは使用者の債務であり、労務の受領が使用者の債権であると言えます。

筆者注:ところで、上記から、使用者には「労務の受領義務」がないこと及び労働者には「賃金の受領義務がないこと」がよみとれます。従って、使用者が決められた賃金を支払った上で労働者に労務の提供の免除(自宅待機)を命じても、直ちに労働契約上及び法令上の違反であるとは言えないこととなります。勿論、例えばある労働者を特定の部屋に閉じ込めて(その部屋の中に始業から就業まで居ることを命じ)何日間も終日何も行うべき業務を与えずに時間を消費させるがごとき取り扱いは「人間の尊厳や人格の否定」に該当しますから使用者の不法行為が成立します。

 既に病棟に配置された原告を病棟に配置し続けることが違法であるというには、被告に原告を他の部署に異動させる作為義務があることが前提となり、上記合理的必要性がないというだけでは、被告にそのような作為義務があると解することはできない。また、原告の能力・経験からして、3交代勤務ができないからといって、原告を病棟に配置する合理的必要性がないとまでは認め難い。さらに、6西病棟への職場復帰が不利益取扱いであるとも指摘するが、自宅待機命令を取り消せば、さらに異動を命じない限り、6西病棟へ職場復帰することになるのであって、そのような作為義務がないことは上記のとおりである。

ウ 平成5年(ワ)53 盛岡地裁一関支部判決 判決文抜粋 岩手県交通事件(生理休暇の不正取得)

 原告の主張するとおり、何人とうえども趣味を持ち、人間らしく生きる権利を有することは近代ないし現代社会においては当然のこととして承認されているが、他方において、人は労働すべき契約上、社会生活上の義務も負っており、これとの調和も計られなければならないことも当然であって、年休請求者の担当する業務の性質、その繁閑及び人員配備の難易とうを考慮して時季変更権の行使を認めることは右幸福追求権に対する不当な制限とはいえない。

 もっとも、生理日の就業が著しく困難であるか否かは業務によって差異があり、バスガイドの業務は生理日の女子にとっては比較的心身の負担を伴うものであると考えられ、また、その困難性につきその都度厳格に証明することを要するとすれば正当に休暇を取得する権利が抑制されかねない反面、請求すれば必ず取得を認め、取得した以上は何の目的にこれを使用しようと干渉し得ないものとすれば、事実上休暇の不正取得に対する抑制が困難となり、これが横行すれば、使用者に対する労働義務の不履行あるいはこれを取得しない従業員との関係において不公正を生じることとなり(本件のように2日間は有給休暇とされ、処遇上出勤扱いされている場合は特にそのことが顕著となる。)、ひいては女子労働に対する社会の信頼ないし評価が損なわれるおそれがあるので、生理休暇制度の運用は難しい面が存する。しかしながら、少なくとも、取得者が月経困難症であるとの証拠もなく、生理休暇を取得した経緯、右休暇中の取得者の行動及び休暇を取得しなければ就業したであろう業務の苦痛の程度等から、就業が著しく困難でない明らかに認められる場合などは、当該生理休暇の取得は不正取得として許されないというべきである。

 そこで、本件について検討すると、原告は、前示のとおり、民謡大会に出場する目的で年休取得を請求してしたが、貸切バス運行業務が数口入っていたため同日は就労要請を受けていたところ、たまたま生理となったので自己の判断で生理休暇を取得する旨連絡をし、そして、夫の運転する自動車に乗車しながらとはいえ、深夜遠隔地へ長時間をかけて旅行し、翌日の民謡大会に出場したというものである一方、原告が月経困難症であったとの証拠もないうえ、同日入っていた業務にはそれほど苦痛でないことは明らかである。

 

以上で、女性に関する労働条件を終了します。

次回から「パートタイム労働法」について、逐条分析を致します。

 

 

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