賃金、賃金制度に関する考察 2(最賃法1条~4条)

2015年07月01日 12:53

最低賃金法

第1条(目的)

 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 

第2条(定義)

 

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 労働者 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。

二 使用者 労働基準法第十条に規定する使用者をいう。

三 賃金 労働基準法第十一条に規定する賃金をいう。

 

第3条(最低賃金額)

 

 最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。)は、時間によつて定めるものとする。

 

第4条(最低賃金の効力)

 

 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

3 次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。

一 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

二 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

三 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

4 第一項及び第二項の規定は、労働者がその都合により所定労働時間若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。

 

施行規則 第一条 (算入しない賃金)

 最低賃金法(以下「法」という。)第四条第三項第一号の厚生労働省令で定める賃金は、臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金とする。

2 法第四条第三項第二号の厚生労働省令で定める賃金は、次のとおりとする。

一 所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金

二 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

三 午後十時から午前五時まで(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条第四項の規定により厚生労働大臣が定める地域又は期間については、午後十一時から午前六時まで)の間の労働に対して支払われる賃金のうち通常の労働時間の賃金の計算額をこえる部分

 

第二条(法第四条の規定の適用についての換算)

 賃金が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によつて定められている場合は、当該賃金が支払われる労働者については、次の各号に定めるところにより、当該賃金を時間についての金額に換算して、法第四条の規定を適用するものとする。

一 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異なる場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額

二 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異なる場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額

三 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額

四 時間、日、週又は月以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前三号に準じて算定した金額

五 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、当該賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間。以下この号において同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によつて労働した総労働時間数で除した金額

2 前項の場合において、休日手当その他同項各号の賃金以外の賃金(時間によつて定められた賃金を除く。)は、月によつて定められた賃金とみなす。

 

○最低賃金法関連通達

法第一条関係

 本件は、本法の目的及び本法における最低賃金制度の基本的なあり方について定めたものであること。

最低賃金法は、労働者保護法として賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障することによつて、その労働条件を改善し、もつて労働者の生活の安定に資するとともに、労働力の質的向上及び事業の公正な競争を確保し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものである。

今回施行されることとなつた最低賃金法は、わが国経済の複雑な構成、就中、中小零細企業の実情に鑑み、最低賃金は業種別、職種別、地域別にそれぞれの実態に即して決定することとし、その決定の方法についても四方式を採用し、もつて最低賃金の円滑にして有効な実施の確保を期するとともに、最低賃金の実施に関連して家内労働に関して最低工賃を決定できることとしているのであるが、これらの決定は労働大臣又は都道府県労働基準局長が最低賃金審議会に諮つて行い、またその実施の監督については労働基準監督機関が当ることとなつている。

 

法第二条(法附則第九条)関係

1 本法の適用を受ける使用者及び労働者は、原則として労働基準法又は船員法の適用を受ける者であること。ただし、一般職に属する地方公務員のうち、地方公営企業(地方公営企業労働関係法第三条第一項に規定するものをいう。)の職員及び地方公営企業労働関係法附則第四項によりこれに準ずる取扱を受ける単純労務職員を除く者については、労働基準法は一部の規定を除き適用があるが、給与が条例で定められているので本法については適用を除外しているものであること。

2 本法において「委託」の対象となる業務は、おおむね労働基準法第八条第一号に掲げるものと同一範囲の業務に限定されているものであること。

3 「委託者」とは、問屋、製造業者、仲介人等をいうものであること。「委託者」には、委託契約の当事者である委託者のみならず、その者の代理人、使用人その他の従業者であつて、委託者のために家内労働者との委託契約に関して行為をする者を含むものであること。

 

法第四条(最低賃金法施行規則(以下「則」という。)第一条)関係

1 最低賃金額は、原則として時間、日、週又は月を単位として定めるものであること。(改正後新法で時間単位に統一された)

2 賃金が出来高払制その他の請負制で定められている場合であつても、労働時間の把握ができる場合は、特別の事情のない限り、最低賃金額は、時間、日、週又は月を単位として定めるべきものであること。

最低賃金額の表示単位の改正(新法第3条関係)

旧法第4条及び改正省令による改正前の最低賃金法施行規則(以下「旧則」という。)第1条においては、最低賃金額の表示単位について、時間、日、週又は月のほか、出来高又は業績の一定の単位によることとしていたが、賃金支払形態、所定労働時間等の異なる労働者間の公平の観点や就業形態の多様化への対応の観点、さらにはわかりやすさの観点から、最低賃金額の表示単位を時間に一本化したものであること。

 

 

○最低賃金法の条文別の整理

1.第1条

 賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障することによつて、労働者の生活の安定に資するとともに、労働力の質的向上及び事業の公正な競争を確保し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする

 

2.第2条

 本法の適用を受ける使用者及び労働者は、原則として労働基準法又は船員法の適用を受ける者及び一部の地方公務員であること

 

3.第3条

 最低賃金額は、時間によつて定める 

 (このほかに特定最低賃金(特定の製造業等)が定められている。)

 参考:全国地域別最低賃金額 ( 括弧書きは、平成25年度地域別最低賃金額)

北海道 748 (734) 平成26年10月8日
青森 679 (665) 平成26年10月24日 
岩手 678 (665) 平成26年10月4日
宮城 710 (696) 平成26年10月16日
秋田 679 (665) 平成26年10月5日
山形 680 (665) 平成26年10月17日
福島 689 (675) 平成26年10月4日
茨城 729 (713) 平成26年10月4日
栃木 733 (718) 平成26年10月1日
群馬 721 (707) 平成26年10月5日
埼玉 802 (785) 平成26年10月1日
千葉 798 (777) 平成26年10月1日
東京 888 (869) 平成26年10月1日
神奈川  887 (868) 平成26年10月1日
新潟 715 (701) 平成26年10月4日
富山 728 (712) 平成26年10月1日
石川 718 (704) 平成26年10月5日
福井 716 (701) 平成26年10月4日
山梨 721 (706) 平成26年10月1日
長野 728 (713) 平成26年10月1日
岐阜 738 (724) 平成26年10月1日
静岡 765 (749) 平成26年10月5日
愛知 800 (780) 平成26年10月1日
三重 753 (737) 平成26年10月1日
滋賀 746 (730) 平成26年10月9日
京都 789 (773) 平成26年10月22日
大阪 838 (819) 平成26年10月5日
兵庫 776 (761) 平成26年10月1日
奈良 724 (710) 平成26年10月3日
和歌山 715 (701) 平成26年10月17日
鳥取 677 (664) 平成26年10月8日
島根 679 (664) 平成26年10月5日
岡山 719 (703) 平成26年10月5日
広島 750 (733) 平成26年10月1日
山口 715 (701) 平成26年10月1日
徳島 679 (666) 平成26年10月1日
香川 702 (686) 平成26年10月1日
愛媛 680 (666) 平成26年10月12日
高知 677 (664) 平成26年10月26日
福岡 727 (712) 平成26年10月5日
佐賀 678 (664) 平成26年10月4日
長崎 677 (664) 平成26年10月1日
熊本 677 (664) 平成26年10月1日
大分 677 (664) 平成26年10月4日
宮崎 677 (664) 平成26年10月16日
鹿児島 678 (665) 平成26年10月19日
沖縄 677 (664) 平成26年10月24日
全国加重平均額 780 (764)
 

 

4.第4条

2以上の最低賃金が競合する場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより新法第4条第1項を適用するものであり、こうした優先関係は従来と変わるものではないが、この場合においても、地域別最低賃金については、新法第4条第1項(最低賃金の効力)及び第40条(罰則)の規定の適用があることとしたものであること。したがって、特定最低賃金が適用される場合においても、地域別最低賃金において定める最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった使用者については、新法第4条第1項違反として処罰することが可能であること。

 

ア 第4条第1項

 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対して、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。この場合の労働者とは、労働基準法第9条で定められる労働者をいい、かつ、労働基準法の適用を受けない家事使用人等は除外されます。

 

イ 第4条第2項

 最低賃金額に達しない賃金支払条件を定める労働条件は、その部分については本法により無効となり、最低賃金額を支払うものと定められたものとみなすこととされています。そのため、労働契約に定められた額にその差額を加算して支払う義務がありますし、かりに支払わなかった場合には、民事上でその差額の支払義務があり、かつ刑事上では「第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。」(本法第40条)とされています。

 

ウ 第4条第3項

 一 一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

   臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金(則第1条第1項)

二 通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

 a 所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金(所定時間外労働賃金)

 b  所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(所定休日労働部分の賃金) 

三 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

  c  深夜労働の間の労働に対して支払われる賃金のうち割り増し賃金部分

エ 出来高払い制等における最低賃金の換算方法

 賃金が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によつて定められている場合は、次の方法に

より賃金を時間の金額に換算して、最低賃金額に達しているか否かを判断する。

一 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異なる場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額

二 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異なる場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額

三 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額

四 時間、日、週又は月以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前三号に準じて算定した金額

五 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、当該賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間。以下この号において同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によつて労働した総労働時間数で除した金額

2 前項の場合において、休日手当その他同項各号の賃金以外の賃金(時間によつて定められた賃金を除く。)は、月によつて定められた賃金とみなす。

 

オ 第4条第4項

 ノーワーク・ノーペイの原則の規定です。遅刻や早退及び欠勤により、労働者が予定された労働時

間(所定労働時間)を就労しなかった場合には、その就労しなかった時間分の賃金を控除することが

可能です。この場合、不合理に不就労部分の賃金額を超えて、賃金を減額することはできません。

 例えば、1時間遅刻をした場合に、就業規則の懲罰の規定(法令の範囲内に限る)がないにも拘わ

らず、半日分の賃金を控除することは、労働基準法第24条違反に該当します。また、早退して4時間

のみ勤務した労働者のその日の賃金をすべて無給とすることはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上で、最低賃金法第1条~第4条を終了します。