賃金、賃金制度に関する考察 6(最賃法20条~26条)
最低賃金法
第20条(最低賃金審議会の設置)
厚生労働省に中央最低賃金審議会を、都道府県労働局に地方最低賃金審議会を置く。
第21条(権限)
最低賃金審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項をつかさどるほか、地方最低賃金審議会にあつては、都道府県労働局長の諮問に応じて、最低賃金に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を都道府県労働局長に建議することができる。
第22条(組織)
最低賃金審議会は、政令で定めるところにより、労働者を代表する委員、使用者を代表する
委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。
第23条(委員)
委員は、政令で定めるところにより、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が任命する。
2 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまでその職務を行うものとする。
4 委員は、非常勤とする。
第24条(会長)
最低賃金審議会に会長を置く。
2 会長は、公益を代表する委員のうちから、委員が選挙する。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめ第二項の規定の例により選挙された者が会長の職務を代理する。
第25条(専門部会等)
最低賃金審議会に、必要に応じ、一定の事業又は職業について専門の事項を調査審議させる
ため、専門部会を置くことができる。
2 最低賃金審議会は、最低賃金の決定又はその改正の決定について調査審議を求められたと
きは、専門部会を置かなければならない。
3 専門部会は、政令で定めるところにより、関係労働者を代表する委員、関係使用者を代表
する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。
4 第二十三条第一項及び第四項並びに前条の規定は、専門部会について準用する。
5 最低賃金審議会は、最低賃金の決定又はその改正若しくは廃止の決定について調査審議を
行う場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、関係労働者及び関係使用者の意見
を聴くものとする。
6 最低賃金審議会は、前項の規定によるほか、審議に際し必要と認める場合においては、関
係労働者、関係使用者その他の関係者の意見をきくものとする。
第26条(政府への委任)
この法律に規定するもののほか、最低賃金審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
○通達による確認
1.昭和34年通達
・法第二六条(法附則第二条及び第七条)関係
本条は中央及び地方に最低賃金審議会を設置し、これに伴い従来の労働基準法第二九条の規定に基く賃金審議会を廃止したものであること。
・法第二七条関係
法第一五条、法第一六条又は法第二〇条の規定によるものを除き、法第二七条の規定により最低賃金又は最低工賃に関する重要事項について労働大臣又は都道府県労働基準局長の諮問に応じて最低賃金審議会が調査審議した結果提出した意見及び最低賃金審議会の建議については、法第一五条第二項の規定の適用はないが、本法の趣旨から十分尊重すべきものであること。
・法第三一条関係
第六項の意見聴取は、最低賃金審議会が必要と認めた場合に行うものであるが、これは必ずしも審議会に出席を求めて行う必要はなく、文書で提出させ、職員をして関係者のもとに出向いて聴取せしめること等もできるものであること。
2.平成19年通達
第10 その他
1 最低賃金審議会の委員の任期(新法第23条第2項関係)
最低賃金審議会の委員の任期を2年としたものであること。
○最低賃金審議会の議事録
最低賃金審議会では、何を議論しているのかについて、議事録を抜粋して考察します。
1.東京都最低賃金審議会 (平成26年7月30日開催議事録抜粋)
東京労働局賃金課長
「しかしながら」以降になりますが、賃金改定状況調査が重視され、その賃金 上昇率での引上げ議論が中心となっている。賃金上昇率を重視すること は、「生活できる賃金」「ナショナルミニマムとしての水準」議論を深化 させることにはつながらない。これまでの「成長力底上げ戦略推進円卓 会議合意」や「雇用戦略対話合意」を踏まえつつ、審議会として最低賃 金の適切な水準や、それへの実現に向けた目安審議のあり方について、 議論を深化させるべきであると主張したという記載をされています。 続いて次の 3 番は使用者側の見解です。最初の段落ですが、中小企業・ 小規模事業者では、円安による原材料価格や燃料費の高騰などによるコ スト増や、人手不足による人件費の増大への対応に苦慮していることに 加えて、取引先企業の海外進出による受注の減少や、地域における人口 減少などのマイナス要因もあり、景況感に大きな改善が見られるまでに は至っていないとしています。 さらにその下になりますが、このページの下から 5 行目になります。 最低賃金引上げが企業経営に与えるインパクトが従来以上に高まってい るという主張をされました。引き続きその次ですが、賃金水準の引上げ は生産性向上に裏付けられた付加価値の増加を伴うものでなければなら ない。ベアに相当する最低賃金の引上げは、生産性向上とセットで考え るべきである。したがって、中小企業・小規模事業者に対する生産性向 上のための政府の支援策の成果や生産性の上昇という明確な形で認めら れることが大変重要であり、十分な生産性の上昇が確認できないまま、 最低賃金の大幅な引き上げだけが求められることになれば、引上げの具 体的な根拠が説明できない目安を地方最低賃金審議会に示すことになる。 そうなれば、地方での審議において大きな混乱を招くことになり、ひい ては目安そのものに対する信頼が失われることになりかねないという主 張をされました。 さらにその 3 行ほど下ですが、消費税の引上げについては、規模が小 さい事業所ほど価格転嫁が出来ておらず、経営を圧迫しているという実 態があるということです。さらにその下ですが、自社の支払い能力を超 える引上げの目安を示すことは、雇用への悪影響だけではなく、事業の 存続をも危うくするという主張です。 今年度のランク別の目安につきましては、「法の原則」である、地域に おける労働者の生計費、賃金、および通常の事業の賃金支払い能力の 3 要素を総合的に表している「賃金改定状況調査結果」の特に第 4 表のデ ータを重視した審議を行うとともに、最低賃金の張り付き状況などを踏 まえたランクごとの実態を反映した目安とすべきである。なお、第 4 表
は消費税率の引き上げに伴う物価上昇分も踏まえ、個々の中小企業・小 規模事業者が決定した賃上げ結果を集約したものである。よって第 4 表 の数値に基づいた審議を行うことが何よりも重要であると主張したとい うことです。 以上労働側、使用者側の見解を記載で、さらに 4 番としてその結果と して意見の不一致ということで、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾な がら目安を定めるには至らなかったということです。 最後に公益見解及びその取扱いですが、公益委員としましてはそこに ありますように、目安審議のあり方等を踏まえて、公益委員の見解を取 りまとめたという内容になっています。 以上、内容を読み上げたところもありますが、中賃の目安に関する答 申内容についてのご説明をしました。
課長補 佐
資料 No.2(2)の 9 ページから 21 ページまでが意見書です。申出受付 けの日付順で綴らせていただいています。また資料 8 ページに意見書提 出者一覧表を載せています。意見を集約しますと、大きく分けて次の 5 7 点です。
1 点目は最低賃金額等に関して、早急に時間額 1,000 円以上とすること。 時間額 1,200 円とすること。
2 点目は厚生労働省の生活保護値の算定基準が低すぎること。
3 点目は全国一律最低賃金制の実現に向けて最大限の努力を行い、国に 働きかけること。全国一律賃金1,000円の早期実現を図ること。
4 点目は、最低賃金審議会に関して、労働者代表委員は特定系統の労働 組合候補のみに独占的に任命されている現状を改善すること。意見書を 提出した者、および関係労働者に審議会での意見陳述を行わせること。 専門部会の審議の公開をはじめ、審議の完全公開を行うこと。
5 点目は中小企業への支援策の拡充を政府に要望すること、です。 それぞれの意見書としましては、いずれも地域別の東京都最低賃金の 改正に関するものとして、 自交総連東京地連から、東京の最低賃金を 1,000 円以上とすること。 東京春闘共闘会議が推薦する者を招き、意見陳述の場を保障すること。 世界では常識となっている全国一律の制度の必要性を国に要望すること。 公立大学法人首都大学東京労働組合からは、経済の好循環実現のため にも、広範な非正規労働者の生活に大きな影響を持つ東京の最低賃金を 時給 1,000 円以上に速やかに引き上げること。多くの労働組合が結集す る東京春闘共闘会議が推薦する者を招き、意見陳述の場を保障すること。 世界では常識となっている全国一律の最低賃金制度の必要性を国に要望 すること。 東京春闘共闘会議からは、貴審議会において、中央最低賃金審議会で 示された政府メッセージに応えるべく時給 1,000 円以上の答申を行うよ う要望する。審議会において私たちが推薦する参考人による意見聴取の 場を設けること。陳述に当たっては、公開の場とすることを強く希望す る。 全日本家内労働者組合総連合東京靴工組合からは、家内労働者をはじ め、広範な非正規労働者の生活に影響を与える東京の最低賃金について 大幅な引き上げを図るとともに、少なくとも時間あたり 1,000 円以上と すること。東京春闘共闘会議が推薦する関係労働者から審議会・専門部 会での意見陳述の場を保障すること。地域別格差解消を図るためにも、 全国一律最低賃金制の導入について政府に強く要望すること。 東京自治労連からは、全国一律制の早期実現を小見出しに、一刻も早 く全国一律最低賃金制度の確立と、当面全国一律の最低賃金 1000 円の実 現を求めます。東京における最低賃金 1,000 円をただちにを小見出しに、早急に東京の最低賃金 1,000 円以上とすることを求めます。東京春闘共 闘が推薦する者を招いた意見陳述の場を保障すること。 民放労連関東地方連合会からは、非正規労働者が 4 割に近づき、年収 200 万円以下の労働者が 1,000 万人を超えるなど、雇用環境は悪化して います。東京の最低賃金を時給 1,000 円以上にしていただきたい。最低 賃金審議会の委員には、連合推薦の委員で独占するのではなく、当面、 東京春闘共闘委員会が推薦している労働者の意見陳述の場所を設けてい ただきたい。最低賃金を引き上げるために、中小企業への支援策の拡充 と全国一律最低賃金制度の確立を政府に強く要望することを求めます。 全国一般労働組合全国協議会東京協議会から、東京都の最低賃金を時 給 1,200 円とすること。厚労省の生活保護基準の算定は低すぎる。以下 の点を踏まえること。実質的な審議がおこなわれる専門部会の審議の公 開をはじめ、審議の完全公開をおこなうこと。意見書による意見聴取だ けではなく、非正規雇用労働者、中小零細企業の労働者を組織し、彼ら の賃金・労働条件の改善に取り組んでいる全国一般労働組合全国協議会 東京協議会より、審議会で直接意見表明を行わせること。との意見です。 以上です。
賃金課 長
意見書とは別になりますが、平成 26 年 7 月 23 日に日本共産党東京都 都議会議員団から「最低賃金の時間給 1,000 円以上へのすみやかな引き 上げを求める申し入れ」が、東京労働局長および東京地方最低賃金審議会 会長宛てに通知されていますので、参考 1 として本日お配りしている資料の最後になりますが、こちらのほうに写しを添付しています。 また同じく 26 年 7 月 23 日、東京春闘共闘会議より内閣総理大臣、厚 生労働大臣、中央最低賃金審議会会長、東京地方最低賃金審議会会長、 東京労働局長にあてた「全国一律時間額 1,000 円以上の最低賃金の実現 を求める要請」として、個人署名 9,818 筆分が提出されていますので、 本日会場中央に置いています。 これは 7 月 2 日に開催した 376 回の本審においてご紹介した東京春闘 共闘会議からの要請の追加分です。累計の個人署名は 3 万 7,330 筆に上 るということです。
賃金課長
今年度に実施しました最低賃金に関する実態調査等の報告結果の内容 がまとまっていますので、本日お配りしている資料 3 の 22 ページ以降に なりますが、こちらについてご説明したいと思います。 まず資料 No.3、平成 26 年度の最低賃金に関する基礎調査結果です。 これは毎年、私ども東京労働局として実施しているものです。調査産業 はアからクにありますように、製造業 100 人未満、卸・小売 30 人未満、 以下クまでの業種について調査を実施しています。調査事業所ですが、 26 年 6 月 1 日現在の民営事業所で総数が 6,625 事業所です。その内容に ついて、そこの調査対象項目は 5 にありますが、その事項について 6 月 分の賃金の調査ということで実施しています。その結果を取りまとめた のが 23 ページ以降ということになります。この表の見方ですが、一番左 側が時間額当たりに賃金を直した金額です。月給者で、あるいは月の所 定労働時間で割り込んで時間給に直したものです。 ここで例えば一番上から 2 つ目に 861~861 という欄がありますが、こ の欄で説明しますと、時間額 861 円相当の方、これは 1 円刻みで出して いますので 861 円以下の方が合計で、その右側ですが、4 万 1,861 名い るということです。そしてその下の(1.7)ですが、これはこの表の一番 上の合計のところに 246 万という数字がありますが、ここに占める割合 が 1.7%ということです。従いまして 861 円以下の方が 1.7%いらっしゃ るということになります。実際にはすぐ上に 860 円というものがありま す。これは 860 円以下の方が 4 万 1,258 人ということになります。従い まして、この上と下の差は 4 万 1,861 と 4 万 1,258、この差が 861 円で 払われている方の人数という形になります。 この下の以下はすべて累計という数字になっています。この数字で申 し上げますと、現在東京都の最低賃金は 869 円ですので、この下段のち ょうど真ん中辺りの 869 というところをご覧いただきますと、ここまで の数字で 5 万 8,088 人の方ということになります。869 円は最低賃金額 になりますので、最低賃金を下回る方は 868 円以下ということになりま す。従いまして、その上の数字をご覧いただくと、4 万 2,697 名の方が現在最低賃金を下回る金額の支払いをされています。この数字はカッコ内 が 1.7 となっていますので、全体の 1.7%の方が最低賃金額未満で支払い を受けているという数字です。なおこの数字は先ほど申し上げた対象業 種につきまして抽出調査をしていますので、それを基に復元した数字を こちらの数字として計上しています。このページがいわゆる全労働者で す。右側に見ていただきますと、規模別、年齢別という形で分けて、そ れぞれ給料、時間額当たりの労働者の分布状況を示しています。 続いて 26 ページをご覧いただきたいと思います。こちらは同じ調査で すが、このうちパートタイム労働者の方、このページは通常より労働時 間が短い方をパートタイムと定義していますが、パートタイムの方だけ を抽出したものです。同じく 869 円のところをご覧いただきますと 2 万 7,217 名ということになります。その上の数字、868 円のところが 1 万 3,851 となっています。従いましてここまでの方が最低賃金未満、全体の 1.6%という数字でございます。 ちなみに 870 円のところをご覧いただきますと、カッコ内の数字が 3.2 から 15.7 ということで、数字が一気に増えています。つまりこれは 870 円に、ここにある 13 万 3,282-2 万 7,217、この 10 万余りの方が 870 円 の支払いを受けていることを示したものがこの表ということになります。 同じく金額に従いまして右側にいきますと、さらに年齢別に分けて調 査した結果がこの表です。以下同じような表がありまして、最終的にこ の内容をグラフにしたものが 35 ページです。35 ページはパートの方の 1 円刻みということです。35 ページの一番下の横軸は時間額になります。 縦軸は復元をした場合の労働者数ということです。先ほど申し上げまし たように、870 のところに非常に集中しています。870 円台を払われてい る方が非常に多いというのがこのグラフからお分かりいただけると思い ます。 36 ページ以降ですが今度は全体です。先ほどはパートの方に絞った形 ですが、36 ページのところは同じく横軸に時間額、縦軸に復元した数、 労働者数を入れています。同じように 870 のところに 1 つ大きな集中が あります。その後 900、さらに 921 円以上というような形の分布です。 続いて 37 ページは 10 円刻みということで、刻み方を 1 円単位から 10 円単位に刻んでスパンを広く取ったものがこちらの表にあります。以上 示しましたのが今年の 6 月について、私ども東京労働局が実施した賃金 調査の結果です。 続いて 39 ページ以降について説明します。こちらは 26 年の賃金改定 状況調査結果です。その対象はそこにある全国調査ということになります。先ほど説明した実態調査は、6 月分の賃金の調査になりますが、こち らの改定状況調査は今年の 6 月と去年の 6 月の両方について調査をした ということで、調査の内容が若干異なっています。これは資料 No.4 とし て 39 ページ以降に添付しています。時間の関係もありますので、この中 で説明をするのは、44 ぺージのところをご覧いただければと思います。 先ほど来、第 4 表ということがありましたが、43 ページになります。失 礼しました。いわゆるこれが第 4 表ということで、説明しますと一番上 の欄に男女計がありまして、その横にランクがあります。東京は A ラン クということです。25 年 6 月、これは昨年の 6 月に支払われた賃金の時 間額に換算したものです。これが 1,499 円、それに対して今年の 6 月に 払われた賃金が 1,521 円、従って賃金上昇率が 1.5%ということで、これ が A ランクの今年度の第 4 表の数字ということです。以下 A、B、C、D ということで、トータルで申し上げますと賃金上昇率は 1.1 ということで す。以下右に従ってご覧いただきますと、業種別等に分けてそれぞれの 賃金引き上げ率を示している表です。こちらのほうが賃金改定状況調査 です。以上です。
以上で賃金に関する考察6(最賃法20条~26条)を終了します。