賃金、賃金制度に関する考察 7 (最賃法27条~30条)
最低賃金法
第27条(援助)
政府は、使用者及び労働者に対し、関係資料の提供その他最低賃金制度の円滑な実施に必要な援助に努めなければならない。
第28条(調査)
厚生労働大臣は、賃金その他労働者の実情について必要な調査を行い、最低賃金制度が円滑
に実施されるように努めなければならない。
第29条(報告)
厚生労働大臣及び都道府県労働局長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、厚生労働省令で定めるところにより、使用者又は労働者に対し、賃金に関する事項の報告をさせることができる。
第30条(職権等)
第十条第一項、第十二条、第十五条第二項及び第十七条に規定する厚生労働大臣又は都道府県労働局長の職権は、二以上の都道府県労働局の管轄区域にわたる事案及び一の都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案で厚生労働大臣が全国的に関連があると認めて厚生労働省令で定めるところにより指定するものについては、厚生労働大臣が行い、一の都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案(厚生労働大臣の職権に属する事案を除く。)については、当該都道府県労働局長が行う。
2 厚生労働大臣は、都道府県労働局長が決定した最低賃金が著しく不適当であると認めるときは、その改正又は廃止の決定をなすべきことを都道府県労働局長に命ずることができる。
3 厚生労働大臣は、前項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ中央最低賃金審議会の意見を聴かなければならない。
4 第十条第二項の規定は、前項の規定による中央最低賃金審議会の意見の提出があつた場合について準用する。
最低賃金法施行規則
則第12条(報告)
使用者又は労働者は、最低賃金に関する決定又はその実施について必要な事項に関し厚生労働大臣又は都道府県労働局長から要求があつたときは、当該事項について報告しなければならない。
則第13条(職権)
都道府県労働局長は、当該都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案について、法第十条
第一項、法第十二条、法第十五条第二項又は法第十七条の規定により地方最低賃金審議会の調
査審議を求めようとする場合において、当該事案が全国的に関連があると認めるとき、又は全
国的に関連があるかどうか判断し難いときは、遅滞なく、意見を付してその旨を厚生労働大臣
に報告しなければならない。
2 厚生労働大臣は、法第三十条第一項の指定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該都道府
県労働局長に通知するものとする。前項の報告があつた事案について法第三十条第一項の指定
をしないことを決定したときも、同様とする。
3 都道府県労働局長は、第一項の報告をした事案については、前項の通知があるまでは、法
第十条第一項、法第十二条、法第十五条第二項又は法第十七条の規定による調査審議を求めて
はならない。
4 都道府県労働局長は、第二項前段の通知を受けたときは、遅滞なく、申出書その他の関係
書類を厚生労働大臣に送付しなければならない。
5 都道府県労働局長は、法第十五条第一項の申出に係る事案について第二項前段の通知を受
けた場合においては、遅滞なく、当該申出をした者にその旨を通知しなければならない。
6 第十条第三項の規定により都道府県労働局長に対してなされた申出に係る事案について、
厚生労働大臣が法第三十条第一項の指定をしたときは、当該申出は、厚生労働大臣に対してな
されたものとみなす。
○逐条まとめ
第27条から第30条までの条文は専ら、行政の事務に関する規定ですので大まかな記述に留め
ます。
1.第27条(労働者及び使用者への情報の提供等)
都道府県労働局には、労働基準部内に「賃金課」又は「賃金室」が設けられており、賃金に
関する行政事務を担当しています。そして、最低賃金法制の告知及び関係資料の提供等を行っ
ています。
また、「賃金構造基本統計調査」等の統計調査を毎年実施しており、地域別及び特定最低賃
金の改定に事務局として直接かかわっています。
2.第28条(賃金に関する調査)
国が行う統計調査は、総務省所管の「統計法」等により実施されています。
参考:統計法
(基本理念)
第三条 公的統計は、行政機関等における相互の協力及び適切な役割分担の下に、体系的に
整備されなければならない。
2 公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるよう
に作成されなければならない。
3 公的統計は、広く国民が容易に入手し、効果的に利用できるものとして提供されなければ
ならない。 4 公的統計の作成に用いられた個人又は法人その他の団体に関する秘密は、保護されなけれ
ばならない。
厚生労働大臣が実施する統計調査例は次の通りです。
・人口移動調査(5年毎) ・出生動向基本調査(5年毎) ・世帯動態調査(5年毎)
・全国家庭動向調査(5年毎) ・人口動態調査(毎年)
他多数の統計調査を実施しています。
また、賃金に関する統計調査は次の通りです。
・毎月勤労統計調査(毎月) ・賃金構造基本統計調査(毎年)
・労働基準監督年報(毎年) ・月例労働経済報告(毎月)
・賃金引上げ等に関する実態調査(毎年)・最低賃金に関する実態調査(毎年)
・民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況(毎年)
・民間主要企業夏季一時金妥結状況(毎年)
・民間主要企業年末一時金妥結状況(毎年)
・就労条件総合調査(毎年) ・労務率調査(3年毎)
3.第29条(報告)
都道府県労働局長が、労働者又は使用者に報告の要求を行うことができる。
罰則:法第41条(三十万円以下の罰金に処する。)
二 第二十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
参考:賃金台帳の提出を求めた際に、虚偽の記載をした賃金台帳を監督官に提出した事件。
被疑会社は,東京都羽村市内で,婦人服等の販売業を営む事業主,被疑者は同会社の代表取締役であるが,労働者Aに対し,平成25年3月18日から平成26年6月30日までの賃金をその所定支払日に,東京都最低賃金(平成25年3月18日から平成25年10月18日までは1時間あたり850円,平成25年10月19日から平成26年6月30日までは1時間あたり869円)以上の賃金を支払わなかったもの。
また,同会社は,平成26年1月21日,労働基準監督官が賃金台帳の提出を求めたことに対し,虚偽の記載をした賃金台帳を提出し,最低賃金法違反の事実を隠蔽したもの。
4.第30条(職権)
ア 厚生労働大臣と都道府県労働局長の分担(第1項)
厚生労働大臣:二以上の都道府県労働局の管轄区域にわたる事案及び一の都道府県労働局
の管轄区域内のみに係る事案で厚生労働大臣が全国的に関連があると認め
て厚生労働省令で定めにより大臣が指定したもの
労働局長 :一の都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案については、原則都道府
県労働局長が行う
イ 最低賃金の改定命令(第2項)
厚生労働大臣は、都道府県労働局長が決定した最低賃金が著しく不適当であると認めると
きは、その改正又は廃止を命ずることができる。
ウ 中央最低賃金審議会への諮問
厚生労働大臣が都道府県労働局長に最低賃金の改正又は廃止を命ずる際には、事前に審議
会に諮問する必要がある。
エ 再審議の求め
労働局長が決定した最低賃金の改定又は廃止の際に、事前に中央最低賃金審議会に諮問し
た際、その答申が不適切な場合には、再審議を求めなければならないとされている。
(法第10条第2項の準用)
以上で賃金に関する考察7(最賃法27条~30条)を終了します。