賃金、賃金制度に関する考察 9(最賃法35条~42条)
最低賃金法
第35条(船員に関する特例)
第六条第二項、第二章第二節、第十六条及び第十七条の規定は、船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員(以下「船員」という。)に関しては、適用しない。
2船員に関しては、この法律に規定する厚生労働大臣、都道府県労働局長若しくは労働基準監
督署長又は労働基準監督官の権限に属する事項は、国土交通大臣、地方運輸局長(運輸監理部長
を含む。)又は船員労務官が行うものとし、この法律中「厚生労働省令」とあるのは「国土交通
省令」と、第三条中「時間」とあるのは「時間、日、週又は月」と、第七条第四号中「軽易
な」とあるのは「所定労働時間の特に短い者、軽易な」と、第十九条第二項中「第十五条第二
項」とあるのは「第十五条第二項並びに第三十五条第三項及び第七項」と、「同条第二項及び
第十七条」とあるのは「第十五条第二項及び第三十五条第七項」と、第三十条第一項中「第十
条第一項、第十二条、第十五条第二項及び第十七条」とあるのは「第十五条第二項並びに第三
十五条第三項及び第七項」と、「都道府県労働局の管轄区域」とあるのは「地方運輸局又は運
輸監理部の管轄区域(政令で定める地方運輸局にあつては、運輸監理部の管轄区域を除く。)」
と読み替えるものとする。
3 国土交通大臣又は地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、賃金の低廉な船員の労働条件
の改善を図るため、船員の生計費、類似の船員の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮し
て必要があると認めるときは、交通政策審議会又は地方運輸局に置かれる政令で定める審議会
(以下「交通政策審議会等」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、船員に適用され
る特定最低賃金の決定をすることができる。
4 第十条第二項及び第十一条の規定は、前項の規定による交通政策審議会等の意見の提出が
あつた場合について準用する。この場合において、同条第二項中「地域」とあるのは、「事業
若しくは職業」と読み替えるものとする。
5 国土交通大臣又は地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、第三項の決定をする場合にお
いて、前項において準用する第十一条第二項の規定による申出があつたときは、前項において
準用する同条第三項の規定による交通政策審議会等の意見に基づき、当該特定最低賃金におい
て、一定の範囲の事業について、その適用を一定の期間を限つて猶予し、又は最低賃金額につ
いて別段の定めをすることができる。
6 第十条第二項の規定は、前項の規定による交通政策審議会等の意見の提出があつた場合に
ついて準用する。
7 国土交通大臣又は地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、第十五条第二項又はこの条第
三項の規定により決定された船員に適用される特定最低賃金について、船員の生計費、類似の
船員の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の
例により、その改正又は廃止の決定をすることができる。
8 船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第八十九条第一項に規定する乗組み派遣船
員については、その船員派遣の役務の提供を受ける者の事業又はその船員派遣の役務の提供を
受ける者に使用される同種の船員の職業について特定最低賃金が適用されている場合にあつて
は、当該特定最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する。
第36条
船員に関しては、この法律に規定する最低賃金審議会の権限に属する事項は、交通政策審議
会等が行う。
第37条
交通政策審議会等に、必要に応じ、一定の事業又は職業について専門の事項を調査審議させ
るため、最低賃金専門部会を置くことができる。
2 交通政策審議会等は、最低賃金の決定又はその改正の決定について調査審議を求められた
ときは、最低賃金専門部会を置かなければならない。
3 第二十五条第五項及び第六項の規定は、交通政策審議会等について準用する。
第38条(省令への委任)
この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第39条(罰則)
第三十四条第二項の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第40条
第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係る
ものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。
第41条
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第八条の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)
二 第二十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第三十二条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第42条(両罰規定)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
最低賃金法施行規則
則第16条(公示事項の周知)
厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、法又はこの省令の規定により公示した事項につい
て、適当な方法により関係者に周知させるように努めるものとする。
則第17条(提出すべき申請書等の数)
第四条の許可申請書、第八条の異議申出書及び第十条第一項の申出書は二通提出しなければならない。
則第18条(様式の任意性)
この省令に定める申請書の様式は、必要な事項の最少限度を記載すべきことを定めるもので
あつて、これと異なる様式を用いることを妨げるものではない。
○船員の一部適用除外
船員に関する特例について所要の整備を行うものとしたこと。(第35条から第37条まで関係)
○罰則(平成20年通達)
罰則(新法第40条から第42条まで関係)
(1) 地域別最低賃金等に係る不払い(新法第40条)
地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係る不払いについては、最低賃金制度の実効性を確保するため、労働基準法(昭和22年法律第49号)第24条(賃金の全額払い)の違反に係る同法第120条の罰金額の上限が30万円となっていることとの均衡を考慮し、罰金額の上限を50万円に引き上げたものであること。
(2) 特定最低賃金に係る不払い(新法第40条)
特定最低賃金については、最低賃金法の罰則の適用はないこととしたものであること。ただし、特定最低賃金が適用される場合においても、支払賃金額が当該使用者の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額未満であるときは、新法第6条第2項の規定により、罰則の適用があるものであること。
(3) その他(新法第41条及び第42条関係)
① 下記②、③等に係る罰金額の上限について、労働基準法第101条(労働基準監督官の権限)、第106条(法令等の周知義務)等の違反に係る同法第120条の罰金額の上限が30万円となっていることとの均衡を考慮し、30万円に引き上げたものであること。(新法第41条関係)
② 特定最低賃金に係る新法第8条に規定する周知義務違反については、すべての労働者の賃金に関する安全網として厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定義務を負う地域別最低賃金に係る周知義務違反に比して、使用者にとって非難されるべき程度が小さいと考えられることから、新法の罰則は適用しないこととしたものであること。(新法第41条第1号関係)
③ 新法第32条の規定による立入りの拒否及び質問への不陳述についても処罰の対象とすることとしたものであること。(新法第41条第3号関係)
以上で賃金に関する考察(最賃法35条~42条)の逐条部分を終了します。