高齢者雇用法第3条

2015年06月04日 09:40

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第3条(基本的理念)

 高年齢者等は、その職業生活の全期間を通じて、その意欲及び能力に応じ、雇用の機会その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする。

 

2 労働者は、高齢期における職業生活の充実のため、自ら進んで、高齢期における

職業生活の設計を行い、その設計に基づき、その能力の開発及び向上並びにその健康の

保持及び増進に努めるものとする。

 

高齢者雇用法第3条の趣旨

1.基本指針抜粋 

 少子高齢化の急速な進行により、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国経済の活力を

維持していくためには、若者、女性、高年齢者、障害者など働くことができる全ての人の就労促進を

図り、そうした全ての人が社会を支える「全員参加型社会」の実現が求められている。高年齢者につ

いても、その能力の有効な活用を図ることが重要な課題であることから、高年齢者の厳しい雇用環境

が依然として続いている現状への的確な対応を図りつつ、高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り

年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(以下「生涯現役社会」という。)の実現を目指す

必要がある。

 平成24年6月1日現在、常用労働者が31人以上の企業のうち97.3%が年金支給開始年齢(平成24

年現在、64歳)までの改正前の法第9条第1項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置(定年の引上

げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き

続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下第1において同

じ。)を実施済みである。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は2.7%、定年の引

上げの措置を講じた企業の割合は14.7%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は82.5%

なっている。継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とする制度を導入した企業の割

合は42.8%、制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた企業の割合は57.2%となっている。

 また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は48.8%となっている(厚生労働省「高年齢者
雇用状況報告」(平成24年))。
 定年到達前の労働者が継続雇用時に希望する働き方と実際の状況を比較すると、正社員を希望する者の割合が44.2%と最も多いが、実際には正社員となる(または正社員の可能性が高い)者の割合は18.6%、嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる(または嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる可能性が高い)者の割合は45.7%となっている。また、フルタイムを希望する者の割合が51.6%であるのに対し、フルタイムとなる(またはフルタイムとなる可能性が高い)者の割合は33.2%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」(平成22年))。
2.高年齢者の勤労意欲の調査(出典:平成26年度内閣府高齢社会白書)
・就労に関する備え 
(1)65歳を超えても働くことを希望する人は 約半数 
 60歳以降の収入を伴う就労の意向と就労希 望年齢についてみると、「65歳くらいまで」と する人が 31.4%と最も多く、次いで「働けるう ちはいつまでも」が 25.7%、「70歳くらいまで」 が 20.9%となっている。 65歳を超えても働きたい人(「70歳くらいま で」、「75歳くらいまで」、「76歳以上」及び「働 けるうちはいつまでも」の合計)は、50.4%となっている。
(2)働きたい主な理由は「生活費を得たいか ら」 
 60歳以降に働くことを希望する理由につい ては、「生活費を得たいから」とする人が 76.7%と最も多く、次いで「自由に使えるお金 が欲しいから」が 41.4%、「仕事を通じて、友 人、仲間を得ることができるから」が 30.1%、 「生きがいが得られるから」が 28.9%となって いる。
(3)60歳以降は「パートタイム」を希望する 者が多い 
 60歳以降の希望する就労形態については、 「パートタイム(短時間勤務など)の社員・職 員」とする人が 53.9%と最も多く、次いで「フ ルタイムの社員・職員」が 24.2%、「自営業・個人事業主・フリーランス(家族従業者を含 む)」が 15.9%となっている。
 
高齢者雇用対策法第3条まとめ
 60歳を過ぎて一旦定年退職をしたのちは、悠々自適に趣味の世界に生きるなどしたいと思うことは、叶えたい夢の一つです。しかし、公的年金受給開始は原則65歳に引き上げられ、現在特別支給の老齢厚生年金を受給できる場合でも、生年月日により年々その支給開始年齢が引き上げられています。
 平成27年度の公的年金制度の財政見通しをみると、国民年金の支出見込みが約5.4兆円、厚生年金の支出見込みが約42.6兆円であり、両者合計が約48兆円となっています(出典:厚生労働省年金局作成、平成25年度年金制度のポイント)。
 比較のために平成27年度の国の予算をみると、税収が約54兆円、公債が約37兆円、支出予算の総額が約96兆円となっています。同じく平成27年度の国の特別会計の歳出純計額は約195兆円で、内社会保障関係給付費は約63兆円となっています。※出典:財務省発行、平成27年度予算のポイント及び特別会計の歳出(平成27年度予算)
 以上をもとに考察しますと、年金収入のみで余裕が有る生活を営むことができる社会制度は、今年予算で年金給付額が税収に匹敵する現状をみますと、今後はより一層の困難が予測されます。実際の年金受給額の平均をみても、老齢厚生年金額が約14万8千円/月、老齢基礎年金額が約1万8千円/月(出典:厚生労働省、厚生年金保険・国民年金事業年報)となっており、年金収入のみでは生活費が十分ではない実態があります。
 そこで、現状における最も合理的な生活設計の一般例としては、60歳~65歳は勤務先の継続雇用制度を希望して就労を続け、65歳以降であっても何らかの副収入を得るためわずかでも就労する必要があります。この現状をどのように見るかですが、健康なうちは無理がない範囲で就労することで健康維持にも役立ち、年金収入と併せて生活費にも余裕が出来るわけですから、働けるうちは働くという前提で60歳前から60歳以降の生活設計を模索しておくことが重要になります。
 以上のとおり、働けるうちは働くということを総合的に勘案して条文化したものが、本法第3条第2項であると言えるかと思います。
 
 
 
以上で高齢者雇用法第3条を終了します。