高齢者雇用法第4条、第5条
2015年06月04日 12:40
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
第4条(事業主の責務)
事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施
設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再
就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の
機会の確保等が図られるよう努めるものとする。
2 事業主は、その雇用する労働者が高齢期においてその意欲及び能力に応じて就
業することにより職業生活の充実を図ることができるようにするため、その高齢期
における職業生活の設計について必要な援助を行うよう努めるものとする。
第5条(国及び地方公共団体の責務)
国及び地方公共団体は、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊
重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な援助等を行うとともに、高年齢
者等の再就職の促進のために必要な職業紹介、職業訓練等の体制の整備を行う等、
高年齢者等の意欲及び能力に応じた雇用の機会その他の多様な就業の機会の確保等
を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする。
○平成24年通達
・事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項(法第4条)
1 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針
事業主は、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意欲及び能力に応じて働き続けることができる社会の実現に向けて企業が果たすべき役割を自覚しつつ、労働者の年齢構成の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために次の⒧から⑺までの諸条件の整備に努めるものとする。
⒧ 募集・採用に係る年齢制限の禁止
労働者の募集・採用に当たっては、労働者の一人ひとりに、より均等な働く機会が与えられるよう、雇用対策法(昭和41年法律第132号)において、募集・採用における年齢制限が禁止されているが、高年齢者の雇用の促進を目的として、60歳以上の高年齢者を募集・採用することは認められている。
なお、雇用対策法施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3第1項各号に該当する場合であって、上限年齢を設定するときには、法第18条の2に基づき、求職者に対してその理由を明示する。
⑵ 職業能力の開発及び向上
高年齢者の有する知識、経験等を活用できる効果的な職業能力開発を推進するため、必要な職業訓練を実施する。その際には、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関において実施される職業訓練も積極的に活用する。
⑶ 作業施設の改善
作業補助具の導入を含めた機械設備の改善、作業の平易化等作業方法の改善、照明その他の作業環境の改善、福利厚生施設の導入・改善を通じ、身体的機能の低下等に配慮することにより、体力等が低下した高年齢者が職場から排除されることを防ぎ、その職業能力を十分発揮できるように努める。
その際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)が有する高年齢者のための作業施設の改善等に関する情報等の積極的な活用を図る。
⑷ 高年齢者の職域の拡大
企業における労働者の年齢構成の高齢化に対応した職務の再設計を行うこと 等により、身体的機能の低下等の影響が少なく、高年齢者の能力、知識、経験等が十分に活用できる職域の拡大に努める。
また、合理的な理由がないにもかかわらず、年齢のみによって高年齢者を職場から排除することのないようにする。
⑸ 高年齢者の知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
高年齢者について、その意欲及び能力に応じた雇用機会を確保するため、職業能力を評価する仕組みや資格制度、専門職制度等の整備を行うことにより、その知識、経験等を活用することのできる配置、処遇を推進する。
⑹ 勤務時間制度の弾力化
高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制等を活用した勤務時間制度の弾力化を図る。
⑺ 事業主の共同の取組の推進
高年齢者の雇用機会の開発を効率的に進めるため、同一産業や同一地域の事業主が、高年齢者の雇用に関する様々な経験を共有しつつ、労働者の職業能力開発の支援、職業能力を評価する仕組みの整備、雇用管理の改善等についての共同の取組を推進する。
2 再就職の援助等に関する指針
事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の⒧から⑸までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする。
⒧ 再就職援助等の対象者
再就職の援助の対象となる高年齢者は、離職日において45歳以上65歳未満の者であって、解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)又は改正法附則第3項の規定によりなおその効力を有することとされる改正法による改正前の法第9条第2項の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における、当該基準に該当しなかったことその他事業主の都合により離職する者をいう。
⑵ 再就職の援助等に関する措置の内容
⒧に該当する高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、次の①から⑤までの援助を必要に応じて行うよう努める。
① 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
② ①の休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援
③ 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
④ 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
⑤ 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
⑶ 求職活動支援書の作成等
離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、当該者の能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定者についても、当該離職予定者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める。
求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。
なお、求職活動支援書を作成する際には、交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができる「職業キャリアが長い方向けのジョブ・カード」の様式を積極的に活用する。
⑷ 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等
求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
また、公共職業安定所の求めに応じ、当該離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等公共職業安定所との連携、協力に努める。
⑸ 助成制度の有効な活用
求職活動支援書の作成及び交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。
3 職業生活の設計の援助に関する指針
事業主は、その雇用する労働者が、様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、次の⒧及び⑵の事項の実施を通じて、その高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう努めるものとする。
この場合において、労働者が就業生活の早い段階から将来の職業生活を考えることができるよう、情報の提供等に努める。
⒧ 職業生活の設計に必要な情報の提供、相談等
職業生活の設計に関し必要な情報の提供を行うとともに、職業能力開発等に関するきめ細かな相談を行い、当該労働者自身の主体的な判断、選択によるキャリア設計を含めた職業生活の設計が可能となるよう配慮する。
また、労働者が職業生活の設計のために企業の外部における講習の受講その他の活動を行う場合に、勤務時間等について必要な配慮を行う。
⑵ 職業生活設計を踏まえたキャリア形成の支援
労働者の職業生活設計の内容を必要に応じ把握しつつ、職業能力開発に対する援助を行う等により、当該労働者の希望や適性に応じたキャリア形成の支援を行う。
・高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
1 高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項
国は、高年齢者雇用確保措置が各企業の労使間での十分な協議の下に適切かつ有効に実施されるよう、次の⒧から⑷までの事項に重点をおいて施策を展開する。
⒧ 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の周知徹底
65歳未満定年の定めのある企業において、65歳までの高年齢者雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第9条第3項に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年厚生労働省告示第560号)の内容について、その周知徹底を図る。
⑵ 高年齢者雇用確保措置に係る指導等
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において高年齢者雇用確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組む。
その際、特に、企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者雇用確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。
また、高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる。
⑶ 高年齢者雇用アドバイザーとの密接な連携
企業が高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずるに当たり高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において、機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーが専門的・技術的支援を有効に行えるよう、公共職業安定所は、適切な役割分担の下で、機構と密接な連携を図る。
⑷ 助成制度の有効な活用等
高年齢者の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主等に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、必要に応じて、当該助成制度について必要な見直しを行う。
2 高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項
⒧ 再就職の援助等に関する指針の周知徹底
企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。
⑵ 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導
離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用状況報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談や本人からの再就職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
さらに、交付が義務付けられていない定年退職等の離職予定者についても、求職活動支援書の自主的な作成及び交付並びにこれに基づく計画的な求職者支援を実施するよう事業主に対して啓発を行う。
なお、離職予定高年齢者の的確な把握に資するため各事業所における定年制の状況や解雇等の実施に係る事前把握の強化を図るほか、法において高年齢者雇用状況報告や多数離職届の提出が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
⑶ 助成制度の有効な活用等
在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、高年齢者の円滑な労働移動の支援を図る。また、高年齢者の雇用の実情を踏まえた当該助成制度の必要な見直しに努める。
⑷ 公共職業安定所による再就職支援
公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。
また、在職中に再就職先が決定せず失業するに至った高年齢者については、その原因について的確な把握に努めつつ、必要に応じて職業生活の再設計に係る支援や担当者制による就労支援を行うなど、効果的かつ効率的な職業指導・職業紹介を実施し、早期の再就職の促進に努める。
特に、有期契約労働者であった離職者については、離職・転職が繰り返されるおそれがあることから、公共職業安定所におけるマッチング支援、担当者制によるきめ細かな支援等の活用により、早期の再就職の促進に努める。
さらに、事業主に対して、機構と連携し、求職活動支援書の作成等に必要な情報提供等を行う。
⑸ 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等
高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
⒧ 生涯現役社会の実現に向けた取組
生涯現役社会の実現を目指すため、高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理について、労働者自身の意識と取組や企業の取組への支援を行うほか、多様な就業ニーズに対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を図る。
また、生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。
このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう周知するなど必要な支援に積極的に取り組む。
また、機構その他の関係団体においては、年齢にかかわりなく働ける企業の普及及び促進を図るため、都道府県労働局等との連携を図りつつ、事業主のほか国民各層への啓発などの必要な取組を進める。
⑵ 高齢期の職業生活設計の援助
労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発、指導に努める。
また、個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、相談援助体制の整備に努める。
⑶ 各企業における多様な職業能力開発の機会の確保
労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、長期教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保する。
⑷ 職業能力の適正な評価等の促進
高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われることを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な情報の収集、整理、提供に努める。また、技能検定制度等労働者の職業能力の公正な評価に資する制度の整備を図る。
⑸ 教育訓練給付制度等の周知徹底及び有効な活用
高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため、雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
また、高年齢者の雇用の継続を促進するため、雇用保険制度に基づく高年齢雇用継続給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
⑹ 労働時間対策の推進
高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策を推進する。
⑺ 高年齢者の安全衛生対策
高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり、高年齢者の健康確保対策を推進する。
⑻ 多様な形態による雇用・就業機会の確保
定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。
⑼ 高年齢者の起業等に対する支援
高年齢者の能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、高年齢者が起業等により自ら就業機会を創出する場合に対して必要な支援を行う。
⑽ 地域における高年齢者の雇用・就業支援
事業主団体と公共職業安定所の協力の下、企業及び高年齢者のニーズに合ったきめ細かな技能講習や面接会等を一体的に実施することにより、高年齢者の雇用・就業を支援する。
⑾ 雇用管理の改善の研究等
高年齢者の雇用機会の着実な増大、高年齢者の雇用の安定を図り、また、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、企業において取り組まれている高年齢者の活用に向けた積極的な取組事例を収集、体系化し、各企業における活用を促進する。また、高年齢者雇用状況報告等に基づき、高年齢者の雇用の状況等の毎年度定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。さらに、国際的に高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進するとともに、年齢差別禁止など、高年齢者の雇用促進の観点について、さらに検討を深める。
○高齢者雇用法第4条、第5条まとめ
本法第4条及び第5条では、事業主・都道府県等・国(公共職業安定所)の実施すべき措置等の努力義務を規定しています。
若年者の失業対策、労使紛争、個別労働紛争、男女均等対策、労働基準、安全衛生、雇用保険、労災保険、障害者就労対策等々、旧労働省関係の施策は数多くあります。時の社会情勢や報道機関の注視など、クローズアップされる施策が時々遷り変わるわけですが、中長期の課題としての「少子高齢化」とこれに付随する「労働力人口の減少」に対応する施策としては、①女性の雇用環境の改善(均等法、育介法等の履行環境の整備・啓発)、②短時間労働者・有期雇用労働者等の雇用環境の改善(今般の労働契約法改正の改正点の実効性の担保)、③高年齢者等の就業環境の整備や生きがい・やりがいの創設、➃就労以外の生活で事情がありフルタイム就労が困難な仕事と他の項目の両立を希望する労働者への対応(いわゆるワーク・ライフ・バランス)、の以上四点が最も重点となるべき施策です。もちろん、少子高齢化等は従来から予測されていた社会状況ですから、各法制度により対応策はすでに取られてきたものと思います。
近年長らく継続した経済の低成長及びデフレ下においては、それらの施策の重要度はおのずと相対的に下がってしまいます。しかし、現政権施策により、株価上昇、大企業を中心とした業績の改善、徐々に始まった賃金上昇、一部の人手不足による就職環境の改善等々により、ようやく高齢者雇用対策等への施策に力点を置く環境が整いつつあります。
本法第4条・第5条とも、事業主・行政機関の努力義務として来た背景も上記のような事情によるものと推測しますが、今後は「豊富な人生経験や高いスキルをもつシニア労働者の活躍の場の創設」がより一層求められています。
以上で高齢者雇用法第4・5条を終了します。