高齢者雇用法第1条
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
第1条(目的)
この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
○法制定の経緯
昭和46年施行の本法は、定年年齢の引き上げ(55歳⇒60歳⇒65歳)、継続雇用制度の導入(現行制度は、希望者全員を継続雇用すること、再就職の促進、定年退職者等の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置、その結果高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図り、経済及び社会の発展に寄与することが目的とされています。
※高年齢者とは55歳以上、中高年齢者とは45歳以上の労働者をいいます。(施行規則第1条・第2条)
○健康寿命の伸びと年金受給開始年齢の引き上げ
1.公的年金制度の改正
昭和61年の厚生年金法・国民年金法等の大改正により、昭和36年4月2日以降生(女性は昭和41年4月2日以降生)の方は原則65歳以降に年金の受給ができることになりました。昭和16年4月1日以前(女性は昭和21年4月1日以前)生の方(男性は今日現在74歳以上、女性は69歳以上)は60歳から例外的に(特別支給の老齢厚生年金として)年金を受給されています。
このように、今後60歳を迎える労働者は65歳までの生活設計を立てておく必要があります。そこで、この公的年金制度の改正を踏まえ、本法では第9条により①「定年年齢の引き上げ」又は②「継続雇用制度の導入」若しくは③「定年制度の廃止」のうちいずれかの措置を講ずるように義務付けています。
2.健康寿命の伸び
日本人の平均寿命は、平成24年時点で男性79.94歳、女性86.41歳となっています。※出典厚生労働省「簡易生命表」
一方、平成22年の健康寿命の平均は男性70.42歳、女性73.62歳となっています。※出典:「健康寿命の指標化に関する研究」藤田保健衛生大学医学部衛生学講座教授 橋本 修二氏ほか
健康寿命の定義は、「日常生活に制限のない期間、すなわちADL制限がない期間」とされています。その後、日常生活に制限のある期間の平均は、男性9.22年、女性12.77年となっており、男性は平均的に70歳まで概ね健康で過ごしその後約10年体に支障を持ちながら生活を続け、女性は73歳まで健康で過ごしその後約13年体に支障を持ちながら生活を続けるという統計結果となっています。
このように、男性は70歳まで女性は73歳まで何らかの就労を行うことが可能であると推測され、65歳までどころか70歳まで、働けるものであれば働きたいと考えている人も多いと推測されます。
特に、世代人口が多い「『団塊の世代 』(平成25年10月時点、60歳170万人、61歳179万人、62歳190万人、63歳204万人、64歳223万人、65歳221万人)出典:総務省統計局、年齢各歳別人口」が一斉に定年年齢を迎える今日、本法の目的達成は日本社会にとって意義深いものと考えます。
○年齢別就労人口の実態
平成27年4月時点の年齢階層別の就労者の人口は、15~24歳494万人、25~34歳1,119万人、35~44歳1,501万人、45~54歳1,383万人、55~64歳1,129万人、65歳以上710万人となっています。※出典:総務省統計局長期時系列データ
若年者よりも65歳以上の高年齢者の就労人口が多く、時代に沿った実態が見て取れます。同じデータを昭和43年1月で見てみると。15~24歳1,086万人、25~34歳1,242万人、35~44歳1,148万人、45~54歳757万人、55~64歳492万人、65歳以上220万人となっています。昭和43年(1963年)当時は、労働力は明らかに若年層が担っており、15~24歳の年齢層では約2倍、一方の65歳以上の年齢層では就労人口は現在の約3割のみ就労しているに過ぎません。勿論、第二次大戦に出征した世代ですので人口そのものが少ないことも関係しています。
参考までに、昭和50年の統計データは、15~24歳815万人、25~34歳1,357万人、35~44歳1,260万人、45~54歳973万人、55~64歳539万人、65歳以上247万人となっています。
参考:年齢階層別人口比較表:総務省統計局年齢各歳別人口(単位万人、すべて各年の1月度の数値)
昭和43年 昭和50年 昭和60年 平成15年 平成25年 平成27年
15~24歳 1,086 815 710 613 486 491
25~34歳 1,242 1,357 1,255 1,434 1,177 1,135
35~44歳 1,148 1,260 1,550 1,258 1,506 1,505
45~54歳 757 973 1,269 1,477 1,325 1,375
55~64歳 492 539 734 1,047 1,177 1,139
65歳以上 220 247 294 469 616 730
計 4,722 4,947 5,518 5,830 5,670 6,374
※15~24歳の就労人口は単純減少、65歳以上の就労人口は単純増加していることがわかります。
以上で高齢者雇用法第1条を終了します。