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労働者派遣法第7条、第8条、第9条、第10条、第11条

2015年06月14日 15:39

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第7条(許可の基準等

 厚生労働大臣は、第五条第一項の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

一 当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの(雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として厚生労働省令で定める場合において行われるものを除く。)でないこと。

二 申請者が、当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものであること。

三 個人情報(個人に関する情報であつて、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。以下同じ。)を適正に管理し、及び派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。

四 前二号に掲げるもののほか、申請者が、当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること。

2 厚生労働大臣は、第五条第一項の許可をしないときは、遅滞なく、理由を示してその旨を当該申請者に通知しなければならない。

 

則第1条の3(法第七条第一項第一号の厚生労働省令で定める場合

 法第七条第一項第一号の厚生労働省令で定める場合は、当該事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、十分の三以上の者が六十歳以上の者(他の事業主の事業所を六十歳以上の定年により退職した後雇い入れた者に限る。)である場合とする。

 

第8条(許可証

 

 厚生労働大臣は、第五条第一項の許可をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、一般労働者派遣事業を行う事業所の数に応じ、許可証を交付しなければならない。

2 許可証の交付を受けた者は、当該許可証を、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとに備え付けるとともに、関係者から請求があつたときは提示しなければならない。

3 許可証の交付を受けた者は、当該許可証を亡失し、又は当該許可証が滅失したときは、速やかにその旨を厚生労働大臣に届け出て、許可証の再交付を受けなければならない。

 

則第2条(許可証)

 法第八条第一項の許可証は、一般労働者派遣事業許可証(様式第四号。以下単に「許可証」という。)のとおりとする。

 

則第3条(許可証の再交付)

 法第八条第三項の規定により許可証の再交付を受けようとする者は、許可証再交付申請書(様式第五号)を、厚生労働大臣に提出しなければならない。

 

則第4条(許可証の返納等)

 許可証の交付を受けた者は、次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、第一号又は第二号の場合にあつては一般労働者派遣事業を行うすべての事業所に係る許可証、第三号の場合にあつては発見し又は回復した許可証を厚生労働大臣に返納しなければならない。

一 許可が取り消されたとき。

二 許可の有効期間が満了したとき。

三 許可証の再交付を受けた場合において、亡失した許可証を発見し、又は回復したとき。

2 許可証の交付を受けた者が次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することと

なつたときは、当該各号に掲げる者は、当該事実のあつた日の翌日から起算して十

日以内に、一般労働者派遣事業を行うすべての事業所に係る許可証を厚生労働大臣

に返納しなければならない。

一 死亡した場合 同居の親族又は法定代理人

 二 法人が合併により消滅した場合 合併後存続し、又は合併により設立された法人の代表者

 

第9条(許可の条件

 

 第五条第一項の許可には、条件を付し、及びこれを変更することができる。

2 前項の条件は、当該許可の趣旨に照らして、又は当該許可に係る事項の確実な実施を図るために必要な最小限度のものに限り、かつ、当該許可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。

 

第10条(許可の有効期間等

 

 第五条第一項の許可の有効期間は、当該許可の日から起算して三年とする。

2 前項に規定する許可の有効期間(当該許可の有効期間についてこの項の規定により更新を受けたときにあつては、当該更新を受けた許可の有効期間)の満了後引き続き当該許可に係る一般労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、許可の有効期間の更新を受けなければならない。

3 厚生労働大臣は、前項に規定する許可の有効期間の更新の申請があつた場合に

おいて、当該申請が第七条第一項各号に掲げる基準に適合していないと認めるとき

は、当該許可の有効期間の更新をしてはならない。

4 第二項の規定によりその更新を受けた場合における第五条第一項の許可の有効期間は、当該更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して五年とする。

5 第五条第二項から第四項まで、第六条(第四号から第七号までを除く。)及び第

七条第二項の規定は、第二項に規定する許可の有効期間の更新について準用する。

 

則第5条(許可の有効期間の更新の申請手続)

 法第十条第二項の規定による許可の有効期間の更新を受けようとする者は、当該許可の有効期間が満了する日の三月前までに、一般労働者派遣事業許可有効期間更新申請書(様式第一号)を、厚生労働大臣に提出しなければならない。

一 申請者が法人である場合にあつては、第一条の二第二項第一号イ、ロ、ニ、ホ、ヘ及びトに掲げる書類

 二 申請者が個人である場合にあつては、第一条の二第二項第一号ホ及びトに掲げる書類

3 法第十条第五項において準用する法第五条第三項の規定により添付すべき事業計画書は、一般労働者派遣事業計画書(様式第三号)のとおりとする。

4 法第十条第二項の規定による許可の有効期間の更新は、当該更新を受けようとする者が現に有する許可証と引換えに新たな許可証を交付することにより行うものとする。

 

第11条(変更の届出)

 

 一般派遣元事業主は、第五条第二項各号に掲げる事項に変更があつたときは、遅

滞なく、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。この場合において、当

該変更に係る事項が一般労働者派遣事業を行う事業所の新設に係るものであるとき

は、当該事業所に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなけれ

ばならない。

2 第五条第四項の規定は、前項の事業計画書について準用する。

3 厚生労働大臣は、第一項の規定により一般労働者派遣事業を行う事業所の新設

に係る変更の届出があつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該新設

に係る事業所の数に応じ、許可証を交付しなければならない。

4 一般派遣元事業主は、第一項の規定による届出をする場合において、当該届出

に係る事項が許可証の記載事項に該当するときは、厚生労働省令で定めるところに

より、その書換えを受けなければならない。

 

則第8条(変更の届出等)

 法第十一条の規定による届出をしようとする者は、法第五条第二項第四号に掲げる事項の変更の届出にあつては当該変更に係る事実のあつた日の翌日から起算して三十日以内に、同号に掲げる事項以外の事項の変更の届出にあつては当該変更に係る事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、当該届出に係る事項が許可証の記載事項に該当しない場合にあつては一般労働者派遣事業変更届出書(様式第五号)を、当該届出に係る事項が許可証の記載事項に該当する場合にあつては一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第五号)を厚生労働大臣に提出しなければならない。

2 法第十一条第一項の規定による届出のうち、事業所の新設に係る変更の届出を行う場合には、前項の一般労働者派遣事業変更届出書には、法人にあつては当該新設する事業所に係る第一条の二第二項第一号ホ、ト及びチに、個人にあつては当該新設する事業所に係る同項第二号ハに掲げる書類(一般労働者派遣事業に関する資産の内容を証する書類を除く。)を添付しなければならない。ただし、法第二条第六号に規定する一般派遣元事業主(以下「一般派遣元事業主」という。)が一般労働者派遣事業を行つている他の事業所の派遣元責任者を当該新設する事業所の派遣元責任者として引き続き選任したときは、法人にあつては第一条の二第二項第一号チに掲げる書類のうち履歴書(選任した派遣元責任者の住所に変更がないときは、住民票の写し及び履歴書。以下この条において同じ。)を、個人にあつては同項第二号ハに掲げる書類のうち履歴書を添付することを要しない。

3 法第十一条第一項の規定による届出のうち、事業所の新設に係る変更の届出以外の届出を行う場合には、第一項の一般労働者派遣事業変更届出書又は一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書には、第一条の二第二項に規定する書類のうち当該変更事項に係る書類(事業所の廃止に係る変更の届出にあつては、当該廃止した事業所に係る許可証)を添付しなければならない。

4 法第五条第二項第四号に掲げる事項のうち派遣元責任者の氏名に変更があつた

場合において、当該一般派遣元事業主が一般労働者派遣事業を行つている他の事業

所の派遣元責任者を当該変更に係る事業所の変更後の派遣元責任者として引き続き

選任したときは、法人にあつては第一条の二第二項第一号チに掲げる書類のうち履

歴書を、個人にあつては同項第二号ハの書類のうち履歴書を添付することを要しな

い。

 

則第9条(事業所の新設に係る変更の届出があつた場合の許可証の交付)

 法第十一条第三項の規定による許可証の交付は、当該新設に係る事業所ごとに交

付するものとする。

 

業務取扱要領(許可基準)

 次に掲げる1から4までのすべてに適合していると認めるときでなければ一般労働者派遣事業の許可をしてはならないこととすること(法第7条第1項)。
 
法第7条第1項第1号の要件
(当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと。)
 労働力需給の適正な調整を図るため、特定企業への労働者派遣に関して、次のとおり判断する。
 ・ 当該要件を満たすためには、法第48 条第2項の勧告の対象とならないものであること、すなわち、当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるもの
 (雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合として厚生労働省令で定める場合において行われるものを除く。)でないことが必要である(第13 の4参照)。
 ・ 「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的とする」とは、特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであって、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合である。
 ・ 「厚生労働省令で定める場合」とは、当該労働者派遣事業を行う派遣元事業主が雇用する派遣労働者のうち、10 分の3以上の者が60 歳以上の者(他の事業主の事業所を60 歳以上の定年により退職した後雇い入れられた者に限る。)である場合である。
 ・ なお、「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行うものではないこと」を、一般労働者派遣事業の許可条件として付することに留意すること。
 
法第7条第1項第2号の要件
(申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものであること。)
 派遣労働者を雇用する者と指揮命令する者が分離するという特性に鑑み、派遣労働者に 対する適切な雇用管理能力を要求することにより、派遣労働者の保護及び雇用の安定を図るため、次のような事項につき判断する。
(1) 派遣元責任者に関する判断
  派遣元責任者として雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切に選任、配置されていること。
 ・当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 法第 36 条の規定により、未成年者でなく、法第6条第1号から第8号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないこと。
 ② 則第29 条で定める要件、手続に従って派遣元責任者の選任がなされていること(第8の16 の(3)参照)。
 ③ 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定なものでないこと。
 ④ 適正な雇用管理を行う上で支障がない健康状態であること。
 ⑤ 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
 ⑥ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
 ⑦ 派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとするものでないこと。
 ⑧ 次のいずれかに該当する者であること。
 (ⅰ)成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者
 この場合において、「雇用管理の経験」とは、人事又は労務の担当者(事業主(法人の場合はその役員)、支店長、工場長その他事業所の長等労働基準法第41 条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」を含む。)であったと評価できること、又は労働者派遣事業における派遣労働者若しくは登録者等の労務の担当者(法施行前のいわゆる業務処理請負業における派遣的労働者の労務の担当者を含む。)であったことをいう。
 (ⅱ) 成年に達した後、職業安定行政又は労働基準行政に3年以上の経験を有する者
 (ⅲ)成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
 (ⅳ)成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者
 ⑨ 職業安定局長に開催を申し出た者が実施する「派遣元責任者講習」を受講(許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限る。)した者であること。
 ⑩ 外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の一及び二の表並びに別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者であること。
 ⑪ 派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること。
  派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること。
  一般派遣元事業主が一般労働者派遣事業を行う事業所の新設に係る届出をする場合における派遣元責任者に関する判断に係る許可基準の取扱いについては、第4の3の(5)参照。
(2) 派遣元事業主に関する判断
 派遣元事業主(法人の場合はその役員を含む。)が派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれる等適正な雇用管理を期待し得るものであること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 労働保険、社会保険の適用等派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれるものであること。
 ② 住所及び居所が一定しない等生活根拠が不安定なものでないこと。
 ③ 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であること。
 ④ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのない者であること。
 ⑤ 派遣元事業主となり得る者の名義を借用して許可を得るものではないこと。
 ⑥ 外国人にあっては、原則として、入管法別表第一の二の表の「投資・経営」若しくは別表第二の表のいずれかの在留資格を有する者、又は資格外活動の許可を受けて派遣元事業主としての活動を行う者であること。
なお、海外に在留する派遣元事業主については、この限りではない。
(3) 教育訓練に関する判断
  派遣労働者(登録者を含む。)に対する能力開発体制(適切な教育訓練計画の策定、教育訓練の施設、設備等の整備、教育訓練の実施についての責任者の配置等)が整備されていること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 派遣労働者に係る教育訓練に関する計画が適切に策定されていること。
 ② 教育訓練を行うに適した施設、設備等が整備され、教育訓練の実施について責任者が配置される等能力開発体制の整備がなされていること。
  派遣労働者に受講を義務付けた教育訓練について費用を徴収するものでないこと。
 
法第7条第1項第3号の要件
(個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。)
 業務の過程で得た派遣労働者等の個人情報を管理する能力を要求することにより、派遣労働者等の個人情報を適正に管理し、秘密を守るため、次のような事項につき判断する。
(1) 個人情報管理の事業運営に関する判断
 派遣労働者となろうとする者及び派遣労働者(3において「派遣労働者等」という。)の個人情報を適正に管理するための事業運営体制が整備されていること。
  当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当し、これを内容に含む個人情報適正管理規程を定めていることが必要である。
 ① 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確にされていること。
 ② 業務上知り得た派遣労働者等に関する個人情報を業務以外の目的で使用したり、他に漏らしたりしないことについて、職員への教育が実施されていること。
 ③ 派遣労働者等から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。以下同じ。)の取扱いに関する事項についての規定があり、かつ当該規定について派遣労働者等への周知がなされていること。
 ④ 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する派遣元責任者等による事業所内の体制が明
確にされ、苦情を迅速かつ適切に処理することとされていること。
 ・ ③において開示しないこととする個人情報としては、当該個人に対する評価に関する情報が考えられる。
 ・ ④として苦情処理の担当者等取扱責任者を定めること。
   個人情報適正管理規程については、以下の点に留意するものとする。
 ① 派遣元事業主は、イの①から④までに掲げる規定を含む個人情報適正管理規程を作成するとともに、自らこれを遵守し、かつ、その従業者にこれを遵守させなければならないものとする。
 ② 派遣元事業主は、本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して不利益な取扱いをしてはならないものとする。
 ・ ②の「不利益な取扱い」とは、具体的には、例えば、以後派遣就業の機会を与えないこと等をいう。
  「個人情報の収集、保管及び使用」については、以下の点に留意するものとする。
 ① 派遣元事業主は、派遣労働者となろうとする者の登録をする際には当該労働者の希望及び能力に応じた就業の機会の確保を図る範囲内で、派遣労働者として雇用し労働者派遣を行う際には当該派遣労働者の適正な雇用管理を行う目的の範囲内で、派遣労働者等の個人情報(以下ハにおいて単に「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないものとする。ただし、特別な業務上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではない。
 (ⅰ) 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
 (ⅱ) 思想及び信条
 (ⅲ) 労働組合への加入状況
 ・ (ⅰ)から(ⅲ)については、具体的には、例えば次に掲げる事項等が該当する。
 (ⅰ)関係
  ① 家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取扱い等労務管理を適切に実施するために必要なもの及び日雇派遣の禁止の例外として認められる場合の収入要件を確認するために必要なものを除く。)
  ② 容姿、スリーサイズ等差別的評価に繋がる情報
 (ⅱ)関係 人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
 (ⅲ)関係 労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
 ・ 「業務の目的の達成に必要な範囲」については、雇用することを予定する者を登録する段階と、現に雇用する段階では、異なることに留意する必要がある。前者においては、例えば労働者の希望職種、希望勤務地、希望賃金、有する能力・資格など適切な派遣先を選定する上で必要な情報がこれに当たり、後者においては、給与事務や労働・社会保険の手続上必要な情報がこれに当たるものである。
 ・ なお、一部に労働者の銀行口座の暗証番号を派遣元事業主が確認する事例がみられるが、これは通常、「業務の目的の達成に必要な範囲」に含まれるとは解されない。
 ② 派遣元事業主は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないものとする。
 ・ 「等」には本人が不特定多数に公表している情報から収集する場合が含まれる。
 ③ 派遣元事業主は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校の新規卒業予定者である派遣労働者となろうとする者から応募書類の提出を求めるときは、職業安定局長の定める書類(全国高等学校統一応募用紙又は職業相談票(乙))により提出を求めるものとする。
 ・ 当該応募書類は、新規卒業予定者だけでなく、卒業後1年以内の者についてもこれを利用することが望ましいこと。
 ④ 個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られる。なお、派遣労働者として雇用し労働者派遣を行う際には、労働者派遣事業制度の性質上、派遣元事業主が派遣先に提供することができる派遣労働者の個人情報は、法第35 条第1項の規定により派遣先に通知すべき事項のほか、当該派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られるものであるものとする。
 ただし、他の保管又は使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合は、この限りではない。
(2) 個人情報管理の措置に関する判断
 派遣労働者等の個人情報を適正に管理するための措置が講じられていること。
   当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置が講じられていること。
 ② 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置が講じられていること。
 ③ 派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員以外の者による派遣労働者等の個人情報へのアクセスを防止するための措置が講じられていること。
 ④ 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が講じられていること。
 ・ ④の措置の対象としては、本人からの破棄や削除の要望があった場合も含むものである。
   「適正管理」については以下の点に留意するものとする。
 ① 派遣元事業主は、その保管又は使用に係る個人情報に関し適切な措置(イの①から④まで)を講ずるとともに、派遣労働者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないものとする。
 ② 派遣元事業主等が、派遣労働者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならな
いものとする。
 ・ 「個人情報」とは、個人を識別できるあらゆる情報をいうが、このうち「秘密」とは、一般に知られていない事実であって(非公知性)、他人に知られないことにつき本人が相当の利益を有すると客観的に認められる事実(要保護性)をいうものである。具体的には、本籍地、出身地、支持・加入政党、政治運動歴、借入金額、保証人となっている事実等が秘密に当たりうる。
 
法第7条第1項第4号の要件
(2及び3の他、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること。)
 一般労働者派遣事業を的確、安定的に遂行するに足りる財産的基礎、組織的基礎や当該事業に適した事業所の確保等一定以上の事業遂行能力を要求することにより、労働者派遣事業を労働力需給調整システムの一つとして適正かつ有効に機能させ、派遣労働者の保護及び雇用の安定を図るため、次のような事項につき判断する。
(1) 財産的基礎に関する判断(事業主(法人又は個人)単位で判断)
  資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が2,000 万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
 ・厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表又は一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「7 資産等の状況」欄により確認する。
 ・ 「繰延資産」とは、会社計算規則(平成18 年法務省令第13 号)第106 条第3 項第5 号に規定する繰延資産をいい、「営業権」とは、無形固定資産の一つである会社計算規則第2 編第2 章第2 節の「のれん」をいう。
  イの基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
 ハ 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500 万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
 ・厚生労働省令により提出することとなる貸借対照表又は一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)の「7 資産等の状況」欄により確認する。
   基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てがあったときは、公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算又は月次決算による場合に限り、基準資産額、負債の総額及び自己名義の現金・預金の額のいずれについても当該中間決算又は月次決算により確認するものとする。
 ただし、個人の場合に限り、基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加する旨の申し立てがあったときは、①市場性のある資産の再販売価格の評価額が、基礎価額を上回る旨の証明があった場合(例えば、固定資産税の評価額証明書等による。)、②提出された預金残高証明書により普通預金、定期預金等の残高を確認できた場合(複数の預金残高証明書を用いる場合は、同一日付のものに限る。)に限り、当該増加後の額を基準資産額又は自己名義の現金・預金の額とする。
   職業安定法第45 条に規定する厚生労働大臣の許可を受け、労働者供給事業を行う労働組合等から供給される労働者を対象として、一般労働者派遣事業を行うことを予定する場合については、イにおいて「2,000 万円」を「1,000 万円」と、ハにおいて「1,500 万円」を「750 万円」と読み替えて適用する。
   一般派遣元事業主が一般労働者派遣事業を行う事業所の新設に係る届出をする場合における財産的基礎に関する判断に係る許可基準の取扱いについては、第4の3の(5)参照。
(2) 組織的基礎に関する判断
 一般労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、登録者数に応じた適当な数の職員が配置される等組織体制が整備されていること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 一般労働者派遣事業に係る組織における指揮命令の系統が明確であり、指揮命令に混乱の生ずるようなものではないこと。
 ② 登録制を採用している場合にあっては、登録者数(1年を超える期間にわたり雇用されたことのない者を除く。)300 人当たり1人以上の登録者に係る業務に従事する職員が配置されていること。
当該職員は、派遣元責任者と兼任であっても差し支えないものとする。
(3) 事業所に関する判断
 事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20 ㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、一般労働者派遣事業を行うのに適切であること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23 年法律第122 号)で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと。
 ② 事業に使用し得る面積がおおむね20 ㎡以上あること。
(4) 適正な事業運営に関する判断
 一般労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用しないこと、登録に際しいかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収しないこと等法の趣旨に沿った適切な事業運営を行うものであること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 労働者派遣事業において事業停止命令を受けた者が、当該停止期間中に、許可を受けようとするものではないこと。
 ② 法人にあっては、その役員が、個人事業主として労働者派遣事業について事業停止命令を受け、当該停止期間を経過しない者ではないこと。
 ③ 一般労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものではないこと。
 許可申請関係書類として提出された定款又は寄附行為及び登記簿の謄本については、その目的の中に「一般労働者派遣事業を行う」旨の記載があることが望ましいが、当該事業主の行う事業の目的中の他の項目において一般労働者派遣事業を行うと解釈される場合においては、一般労働者派遣事業を行う旨の明示的な記載は要しないものであること。
 なお、定款又は寄附行為及び登記簿の謄本の目的の中に適用除外業務について労働者派遣事業を行う旨の記載がある場合については、そのままでは許可ができないものであるので留意すること。
 ④ 登録制度を採用している場合において、登録に際し、いかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収するものではないこと。
 ⑤ 自己の名義をもって、他人に一般労働者派遣事業を行わせるために、許可を得ようとするものではないこと。
 ⑥ 法第 25 条の規定の趣旨に鑑み、人事労務管理業務のうち、派遣先における団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行おうとするものではないこと。
 なお、当該業務について労働者派遣を行おうとするものではないことを一般労働者派遣事業の許可条件として付するものであることに留意すること。
 
民営職業紹介事業と兼業する場合の許可の要件
 一般労働者派遣事業と民営職業紹介事業の許可の要件をともに満たす限りにおいて兼業が認められるものであるが、同一の事業所内において兼業を行おうとする場合は、更に次の事項につき併せて判断すること。
[事業運営の区分に関する判断]
 派遣労働者に係る個人情報と求職者に係る個人情報が別個に管理されること等事業運営につき明確な区分がなされていること。
 ・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当することが必要である。
 ① 労働者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、同一の者について労働者派遣に係る登録と求職の申込みの受付を重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
 ② 派遣の依頼者又は求人者の希望に基づき個別の申込みがある場合を除き、派遣の依頼と求人の申込みを重複して行わず、かつ、相互に入れ換えないこと。
 ③ 派遣労働者に係る個人情報と求職者に係る個人情報が別個に作成され別個に管理されること。
 ④ 派遣の依頼者に係る情報と求人者に係る情報が別個に管理されること。
 ⑤ 労働者派遣の登録のみをしている派遣労働者に対して職業紹介を行わないこと、かつ、求職申込みのみをしている求職者について労働者派遣を行わないこと。
 ⑥ 派遣の依頼のみを行っている者に対して職業紹介を行わないこと、かつ、求人申込みのみをしている求人者について労働者派遣を行わないこと。
 ⑦ 紹介予定派遣を行う場合を除き、求職者に対して職業紹介する手段として労働者派遣をするものではないこと。
 
海外派遣を予定する場合の許可の要件
 1から4までに掲げる要件の他、更に次の事項につき併せて判断すること(これは法第7条第1項各号の要件に基づくものである。)。
(1) 派遣元責任者が派遣先国の言語及び労働事情に精通するものであること。
 ・ 派遣先国の言語とは、派遣先国で一般的に通用する言語(例、英語、仏語等)を含み、必ずしも派遣先の現地語に限られない。
(2) 海外派遣に際し派遣労働者に対してガイダンスを実施すること、海外の事業所との連絡体制が整備されていること等派遣労働者の海外における適正な就業のための体制が整備されていること。
 ・ 海外の事業所とは派遣先の事業所をいう。
 
業務取扱要領
労働政策審議会への諮問
 一般労働者派遣事業の許可申請については、労働政策審議会(労働力需給制度部会)へ諮問のうえ、許可又は不許可の処分を行うこととなるが(法第5条第5項)、同審議会は原則として毎月1回開催することとしているため、これに応じて、前月末までに本省に到達した許可申請は、当月の労働政策審議会(労働力需給制度部会)へ諮問する。
(7) 許可及び不許可処分
  許可申請の許可を行ったときは、一般労働者派遣事業許可証(様式第4号)を作成し事業主管轄労働局を経由して、一般労働者派遣事業を行う事業所の数に応じ申請者に交付する(法第8条第1項、則第2条)。
  許可申請につき、不許可とした時は、遅滞なく、一般労働者派遣事業不許可通知書を作成し、事業主管轄労働局を経由して申請者に交付する(法第7条第2項)。
  イ又はロに際しては、併せて一般労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)の写し及び一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)の写しそれぞれ一通を申請者に控えとして交付する(第3の2の(2)参照)。
(8) 許可番号の付与
   許可事業主については、次の一般労働者派遣事業許可番号設定要領に従い、当該事業主固有の許可番号を付与する。
   当該許可番号はその後、住所の変更等により事業主管轄労働局が変更される場合を除き、変更されることのないこと。
   一般労働者派遣事業許可証(様式第4号。(7)のイ参照)には、当該許可番号を必ず記載すること。

 

逐条考察

 一般労働者派遣事業の許可申請は、業務取扱要領の記載をみても直ちには理解し難く、また、要点を抜粋したパンフレットの内容をみても尚概要がつかみにくいものです。そこで、逐条で分解することにより、少しでもアウトラインを明らかにしたいと思います。

 

1.法第7条第1項

 一般労働者派遣事業の許可は、以下の1号から4号まで、すべてに適合している場合でなければ、許可してはならないこととなっています。

(ⅰ)第1号(派遣先が単一でないこと)※一の子会社又は系列会社からの派遣は禁止

 専ら特定の者に派遣することを目的として行われるものでないこと(政令で例外を規定)。

 ※特定の者に対してのみ当該労働者派遣を行うことを目的として事業運営を行っているものであって、それ以外の者に対して労働者派遣を行うことを目的としていない場合は許可されないという趣旨です。

 ※例外は、3割以上が60歳以上の派遣労働者である場合であり、継続雇用制度に類する制度として企業が派遣会社を設立する場合等です。(則第1条の3)

(ⅱ)第2号(管理者の配置)

 ア 一般労働者派遣事業の申請者が適正に一般労働者派遣事業を行う能力を有すること。

 ※則第29 条で定める要件、手続に従って派遣元責任者(補足1)の選任がなされ、かつ当該の雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件及び手続に従って適切配置(補足2)されていることです。

 補足1:派遣元責任者は、職業安定局長に開催を申し出た者が実施する「派遣元責任者講習」を受講(許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限る。)した者であること。

 補足2:派遣元責任者が苦情処理等の場合に日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行い、かつ、派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること。

 イ 派遣労働者(登録者を含む。)に対する適切な教育訓練計画の策定教育訓練の施設設備等の整備教育訓練の実施についての責任者の配置等が整備されていること。

(ⅲ)第3号(守秘義務保持体制)

 個人情報を適正に管理し及び派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置(補足1、2)が講じられていること

 補足1:派遣労働者等の個人情報を取り扱う事業所内の職員の範囲が明確であり、職員への教育が実施されていること等

 補足2:個人情報適正管理規程を作成するとともに、自らこれを遵守し、かつ、その従業者にこれを遵守させなければならないこと

(ⅳ)第4号(経営状況等の基準)

 1号~3号のほか、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有すること。

 ア 資本金

  資産の総額から負債の総額を控除した額が2,000 万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(事業所の数を乗じた額以上であり、かつの基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること

 イ 純資金

  自己名義の現金・預金の額が1,500 万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること

(ⅴ)海外派遣を行う場合

 上記の要件の他、更に次の事項につき併せて判断すること。

 ア 派遣元責任者が派遣先国の言語及び労働事情に精通するものであること。
 イ 海外派遣に際し派遣労働者に対してガイダンスを実施すること、海外の事業所(補足1)との連絡体制が整備されていること等派遣労働者の海外における適正な就業のための体制が整備されていること。
 補足1:海外の事業所とは派遣先の事業所をいう。
 
2.法第7条第項
 厚生労働大臣は、許可をしないときは、遅滞なく、理由を示してその旨を申請者に通知しなければならない。
※許可申請につき、不許可とした時は、遅滞なく、一般労働者派遣事業不許可通知書を作成し、事業主管轄労働局を経由して申請者に交付する。
 
3.法第8条第1項
(ⅰ)許可申請の許可を行ったときは、一般労働者派遣事業許可証を作成し事業主管轄労働局を経由して、一般労働者派遣事業を行う事業所の数に応じ申請者に交付する。
(ⅱ)許可・不許可の通知に際しては、併せて一般労働者派遣事業許可申請書の写し及び一般労働者派遣事業計画書の写しそれぞれ一通を申請者に控えとして交付する。
(ⅲ)許可事業主については、次の一般労働者派遣事業許可番号設定要領に従い、当該事業主固有の許可番号を付与する。

 

4.法第8条第2項(許可証の具備・提示)

 許可証の交付を受けた者は、当該許可証を、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとに備え付けるとともに、関係者から請求があつたときは提示しなければならない。 

 

5.法第8条第3項(再交付申請)

 許可証の交付を受けた者が、許可証を亡失し又は許可証を滅失したときは、速やかに許可証再交付申請書(様式第5号)を事業主管轄労働局を経て厚生労働大臣に提出し、許可証の再交付を受けなければならない。なお、一事業所において許可証を亡失又は滅失した場合には、当該事業所に係る事業所管轄労働局へ申請を行っても差し支えない。

 

6.法第9条第1項(一般労働者派遣事業の許可の要件)

 一般労働者派遣事業の許可に当たっては、条件を付し、及びこれを変更することができる。

(ⅰ)許可の条件を付す場合
 具体的には、例えば
 ア 専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行うものではないこと
 イ 派遣先における団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行うものではないこと
 ウ 労働保険・社会保険の適用基準を満たす派遣労働者の適正な加入を行うものであること
   といった条件が付される。
 また、許可後に届出により新設される一般労働者派遣事業所においても、適正な事業運営がなされるよう、「許可基準」の所定の要件を満たすことが許可条件として付される
 この他にも、例えば、
 エ 同一事業所において一般労働者派遣事業と民営職業紹介事業を兼業して行おうとする場合において、当該許可の後においても、「許可基準」の5の事項を遵守すること
 オ 特定企業に対する一般労働者派遣事業の許可をする場合において、当該許可の後においても、同「許可基準」の厚生労働省令で定める条件を維持し続けること
 カ 登録型で事業を行う場合において、当該許可の後においても、同「許可基準」の4の(4)の④の事項
を遵守することを条件に付すこと
(ⅱ)許可条件通知書の交付
 許可の条件を付す場合は、一般労働者派遣事業許可証とは別の様式による一般労働者派遣事業許可条件通知書を作成し、事業主管轄労働局を経由して、申請者に交付する

 

7.法第9条第2項(許可条件の制限)

 許可条件は、許可の趣旨に照らして又は許可に係る事項の確実な実施を図るために必要な最小限度のものに限り、かつ、許可を受けようとする者に不当な義務を課すこととなってはならない。

 

8.法第10条第1項(許可の有効期間)

 一般労働者派遣事業の新規許可の有効期間は、許可の日から起算して3年であること。

 

9.法第10条第2項(許可の更新)

(ⅰ)許可の有効期間の更新の申請は、当該許可の有効期間が満了する日の3月前までに、許可有効期間更新申請関係書類(補足1)を、事業主管轄労働局に提出することにより行わなければならないこと。

 補足1:許可更新時の提出書類(許可申請者が法人の場合)

   ・一般労働者派遣事業許可有効期間更新申請書(様式第1号

   ・事業所(許可後に届出により新設した事業所を含む。以下じ。)ごとの事業計画書(様式第3号

   ・定款又は寄附行為

   ・変更があった場合は登記事項証明書

   ・変更があった場合は一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの個人情報適正管理規程

   ・最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書等

   ・一般労働者派遣事業に関する資産の内容を証する書類

(ⅱ)許可の有効期間の更新とは、更新時前と許可内容の同一性を存続させつつ、その有効期間のみを延長するものであり、併せて従前の許可内容変更の届出を要する事項につき変更をしようとするときは、許可の有効期間の更新の手続と併せて、変更届出等の手続を行う必要がある。

 

10.法第10条第3項、第5項(更新許可の要件)

 有効期間の更新については、法第6条の許可の欠格事由が原則的に準用されている。また、許可の有効期間の更新については、原則的に新規許可申請の際の「許可基準」によることとされている。

 

11.法第10条第4項(更新後の許可の有効期間)

(ⅰ)更新後の許可の有効期間は5年であり、以後それが繰り返されること。

 

12.法第11条第1項(変更届)

(ⅰ)変更届

 一般派遣元事業主が次に掲げる事項(補足1)を変更したときは、事業主管轄労働局を経て、厚生労働大

臣に対して、変更の届出をしなければならない。

 補足1:届出が必要となる事項

  ① 氏名又は名称② 住所③ 代表者の氏名④ 役員(代表者を除く。)の氏名⑤ 役員の住所

 以下の⑥から⑫までに掲げる個々の事業所の変更事項の変更のみを届け出るときは、当該変更に係る事業所管轄労働局へ届出を行っても差し支えない。

  ⑥ 事業所の名称⑦ 事業所の所在地⑧ 事業所の派遣元責任者の氏名⑨ 事業所の派遣元責任者の住所⑩ 事業所における特定製造業務(補足2)への労働者派遣の開始・終了⑪ 事業所の新設(事業所における一般労働者派遣事業の開始)⑫ 事業所の廃止(事業所における一般労働者派遣事業の終了)

 補足2:特定製造業務とは、製造業務のうち以下の又はに該当するものをいう

  「産前産後休業及び育児休業、並びに産前休業に先行し、又は産後休業若しくは育児休業に後 続する休業であって、母性保護又は子の養育をするための休業をする場合における当該労働者の 業務

   介護休業及び介護休業に後続する休業であって、育児・介護休業法第2条第4号に規定す る対象家族を介護するためにする休業をする場合における当該労働者の業務」以外の製造業務
(ⅱ)変更届に添付書類
 ①氏名又は名称の変更(法人)
   ・一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第5号)
   ・定款又は寄附行為

   ・登記事項証明書

 ②住所の変更(法人)

   ・一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第5号)

   ・ 定款又は寄附行為(ただし、法人の所在地に変更が加えられた場合に限る。)
   ・登記事項証明書

 ③代表者の氏名の変更

   ・ 一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・ 登記事項証明書
   ・代表者の住民票の写し及び履歴書(氏名のみの変更の場合、不要。)

 ④役員(代表者を除く。)の氏名の変更

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号) 

   ・登記事項証明書

   ・代表者の住民票の写し及び履歴書(氏名のみの変更の場合、不要。)

 ⑤役員(代表者を除く。)の氏名の変更

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・登記事項証明書
   ・役員の住民票の写し及び履歴書(氏名のみの変更の場合、不要。)

 ⑥役員の住所(法人の場合のみ)の変更

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・ 登記事項証明書(代表者を除く役員の変更の場合、不要)
   ・役員の住民票の写し

 ⑦一般労働者派遣事業を行う事業所の名称の変更

   ・ 一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第5号)

   ・ 定款又は寄附行為(事業所の名称の変更に伴い変更が加えられた場合に限る。)
   ・登記事項証明書(事業所の名称の変更に伴い変更が加えられた場合に限る。)

 ⑧一般労働者派遣事業を行う事業所の所在地の変更

   ・ 一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第5号)

   ・定款又は寄附行為(事業所の所在地の変更に伴い変更が加えられた場合に限る。)
   ・ 登記事項証明書(事業所の所在地の変更に伴い変更が加えられた場合に限る。)
   ・ 事業所の使用権を証する書類
    (不動産の登記事項証明書又は不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写し)

 ⑨一般労働者派遣事業を行う事業所の派遣元責任者の氏名の変更

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書

 ⑩一般労働者派遣事業を行う事業所の派遣元責任者の住所

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・派遣元責任者の住民票の写し

 ⑪一般労働者派遣事業を行う事業所における特定製造業務への労働者派遣の開始・終了

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

 ⑫一般労働者派遣事業を行う事業所の新設(事業所における一般労働者派遣事業の開始)

   ・ 一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・新設する事業所ごとの一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)
   ・ 新設する事業所ごとの個人情報適正管理規程
   ・最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書等
   ・一般労働者派遣事業に関する資産の内容及びその権利関係を証する書類
   ・新設する事業所ごとの派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書

 ⑬一般労働者派遣事業を行う事業所の廃止

   ・一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)

   ・廃止する事業所ごとの許可証 

(ⅲ)変更の届出の受理 

 a 当該変更の届出を受理した事業主管轄労働局又は事業所管轄労働局において、一般労働者派遣事業変更届出書(様式第5号)又は一般労働者派遣事業変更届出書及び許可証書換申請書(様式第5号)の写し一通を届出者に控として交付する。

 

13.法第11条第2項(準用)

 一般労働者派遣事業の事業所新設の届出に添付する事業計画書については、厚生労働省令で定めるところにより、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣に関する料金の額その他労働者派遣に関する事項を記載しなければならない。

 

14.法第11条第3項(許可証の交付数)

 厚生労働大臣は、事業所の新設に係る変更の届出があつたときは、当該新設に係る事業所の数に応じ許可証を交付しなければならない。

 

15.法第11条第4項(許可証の書き換え)

 b 一般労働者派遣事業の変更の届出と併せて許可証の書換申請が行われたときは、一般労働者派遣事業許可証を新たに作成し、当該変更の届出を受理した労働局を経由して、申請者に、当該申請者が所持していた許可証と引き換えに交付する。

 c 変更の届出と併せて許可証の書換え申請が行われたときは、一般労働者派遣事業を行う事業所の数に応じた一般労働者派遣事業許可証を新たに作成し、当該事業主が所持していた許可証と引き換えに交付する。

 

16.則第4条(許可証の返納)

 次のいずれかに該当することとなつたときは、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に一般労働者派遣事業を行うすべての事業所に係る許可証又は回復した許可証を厚生労働大臣に返納しなければならないこと。

 ① 許可が取り消されたとき

 ② 許可の有効期間が満了したとき
 (許可の有効期間の更新が行われず許可の有効期間が満了し、許可が失効した場合である。)
 ③ 許可証の再交付を受けた場合、亡失した許可証を発見し、又は回復したとき
 ④ 一般労働者派遣事業を行う事業所を廃止したとき

 

 

 

以上で労働者派遣法第7条・第8条・第9条・第10条を終了します。

 

 

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労働者派遣法第5条、第6条

2015年06月13日 15:02

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第5条(一般労働者派遣事業の許可

 一般労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければな

ない。

2 前項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生

大臣に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

二 法人にあつては、その役員の氏名及び住所

三 一般労働者派遣事業を行う事業所の名称及び所在地

 四 第三十六条の規定により選任する派遣元責任者の氏名及び住所

3 前項の申請書には、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る

事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。

4 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣に関する料金の額その他労働者派遣に関する事項を記載しなければならない。

5 厚生労働大臣は、第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

 

則第1条の2(許可の申請手続)

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「法」という。)第五条第二項の申請書は、一般労働者派遣事業許可申請書(様式第一号)のとおりとする。

2 法第五条第三項の厚生労働省令で定める書類は、次のとおりとする。

一 申請者が法人である場合にあつては、次に掲げる書類

イ 定款又は寄附行為

ロ 登記事項証明書

ハ 役員の住民票の写し(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第十九条の三に規定する中長期在留者にあつては住民票の写し(国籍等(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の四十五に規定する国籍等をいう。以下この号において同じ。)及び在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。)を記載したものに限る。)とし、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者にあつては住民票の写し(国籍等及び同法に定める特別永住者である旨を記載したものに限る。)とし、出入国管理及び難民認定法第十九条の三第一号に掲げる者にあつては旅券その他の身分を証する書類の写しとする。以下同じ。)及び履歴書

ニ 役員が未成年者で一般労働者派遣事業に関し営業の許可を受けていない場合にあつては、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める書類

(1) 当該役員の法定代理人が個人である場合 当該法定代理人の住民票の写し及び履歴書

(2) 当該役員の法定代理人が法人である場合 当該法定代理人に係るイからハまでに掲げる書類(法定代理人の役員が未成年者で一般労働者派遣事業に関し営業の許可を受けていない場合にあつては、当該役員の法定代理人(法人に限る。)に係るイからハまでに掲げる書類又は当該役員の法定代理人(個人に限る。)の住民票の写し及び履歴書を含む。)

ホ 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの個人情報の適正管理及び秘密の保持に関する規程(以下「個人情報適正管理規程」という。)

ヘ 最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書

ト 一般労働者派遣事業に関する資産の内容及びその権利関係を証する書類

チ 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとに選任する派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書

二 申請者が個人である場合にあつては、次に掲げる書類

イ 住民票の写し及び履歴書

ロ 申請者が未成年者で一般労働者派遣事業に関し営業の許可を受けていない場合にあつては、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める書類

(1) 当該申請者の法定代理人が個人である場合 当該法定代理人の住民票の写し及び履歴書

(2) 当該申請者の法定代理人が法人である場合 当該法定代理人に係る前号イからハまでに掲げる書類(法定代理人の役員が未成年者で一般労働者派遣事業に関し営業の許可を受けていない場合にあつては、当該役員の法定代理人(法人に限る。)に係る前号イからハまでに掲げる書類又は当該役員の法定代理人(個人に限る。)の住民票の写し及び履歴書を含む。)

ハ 前号ホ、ト及びチに掲げる書類

3 法第五条第三項の規定により添付すべき事業計画書は、一般労働者派遣事業計画書

(様式第三号)のとおりとする。

4 法第二条第六号に規定する特定派遣元事業主(以下「特定派遣元事業主」という。)が

法第五条第一項の規定による一般労働者派遣事業の許可を申請するときは、法人にあつて

は第二項第一号イからハまでに掲げる書類を、個人にあつては同項第二号イに掲げる書類

を添付することを要しない。

 

第6条(許可の欠格事由)

 次の各号のいずれかに該当する者は、前条第一項の許可を受けることができない。

一 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定その他労働に関する法律の規定(次号に規定する規定を除く。)であつて政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第五十条(第二号に係る部分に限る。)及び第五十二条の規定を除く。)により、若しくは刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪若しくは出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第七十三条の二第一項の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

二 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第二百八条、第二百十三条の二若しくは第二百十四条第一項、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第百五十六条、第百五十九条若しくは第百六十条第一項、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第五十一条前段若しくは第五十四条第一項(同法第五十一条前段の規定に係る部分に限る。)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第百二条、第百三条の二若しくは第百四条第一項(同法第百二条又は第百三条の二の規定に係る部分に限る。)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第四十六条前段若しくは第四十八条第一項(同法第四十六条前段の規定に係る部分に限る。)又は雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第八十三条若しくは第八十六条(同法第八十三条の規定に係る部分に限る。)の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

三 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

四 第十四条第一項(第一号を除く。)の規定により一般労働者派遣事業の許可を取り消され、又は第二十一条第一項の規定により特定労働者派遣事業の廃止を命じられ、当該取消し又は命令の日から起算して五年を経過しない者

五 第十四条第一項の規定により一般労働者派遣事業の許可を取り消された者が法人である場合(同項第一号の規定により許可を取り消された場合については、当該法人が第一号又は第二号に規定する者に該当することとなつたことによる場合に限る。)又は第二十一条第一項の規定により特定労働者派遣事業の廃止を命じられた者が法人である場合(当該法人が第一号又は第二号に規定する者に該当することとなつたことによる場合に限る。)において、当該取消し又は命令の処分を受ける原因となつた事項が発生した当時現に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この条において同じ。)であつた者で、当該取消し又は命令の日から起算して五年を経過しないもの

六 第十四条第一項の規定による一般労働者派遣事業の許可の取消し又は第二十一条第一項の規定による特定労働者派遣事業の廃止の命令の処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条の規定による通知があつた日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に第十三条第一項の規定による一般労働者派遣事業の廃止の届出又は第二十条の規定による特定労働者派遣事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から起算して五年を経過しないもの

七 前号に規定する期間内に第十三条第一項の規定による一般労働者派遣事業の廃止の届出又は第二十条の規定による特定労働者派遣事業の廃止の届出をした者が法人である場合において、同号の通知の日前六十日以内に当該法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員であつた者で、当該届出の日から起算して五年を経過しないもの

八 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下この条において「暴力団員等」という。)

九 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であつて、その法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの

十 法人であつて、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの

十一 暴力団員等がその事業活動を支配する者

十二 暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある者

 

業務取扱要領の関連項目 抜粋

 労働者派遣事業のもっとも重要な項目は、「派遣事業の許可基準及び法に即した運用・管

」といえますが、それらは次条以降に譲るとして、ここでは「許可手続一般」及び「欠格事

由」について記述、考察します。

2 事業主の手続の原則
(1) 書類の提出の経由
   1に掲げた労働者派遣事業に係る許可、届出等の手続を行うに際し、事業主が厚生労働大臣に提出する書類(申請書、届出書等だけではなく、これらに添付すべきこととされている書類を含む。)は、原則として当該事業主の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局(以下「事業主管轄労働局」という。)を経て厚生労働大臣に提出される(則第19 条)。
 ただし、事業所における次に掲げる事項のみを申請又は届け出るときは、当該事項に係る事業所の所在地を管轄する労働局(以下「事業所管轄労働局」という。)へ書類を提出しても差し支えない。
 ① 一般労働者派遣事業及び特定労働者派遣事業の変更の届出
  (第4の3の(1)のイ、第5の2の(1)のイ参照)
 ② 許可証再交付の申請(第4の4の(2)参照)
 ③ 許可証の返納(第4の4の(3)参照)
   したがって、各手続において、書類の提出期限が定められている場合における期限内か否かの判断は、原則として事業主管轄労働局に提出された時点を基準に行う。
(2) 提出すべき書類の部数
   (1)のイについて提出すべき書類(許可証を除く。)の部数は、正本一通及びその写し二通であり、原則として事業主管轄労働局に提出する。ただし、各手続における申請書、届出書等以外の添付書類(一般労働者派遣事業計画書及び特定労働者派遣事業計画書を除く。)(第4の1の(3)のニ等参照)については、正本一通及びその写し一通で足るものである(則第20 条)。
   このうち、正本一通については本省に送付するとともに、写し一通は管轄労働局が保管する(第4の7の(3)及び第5の5の(2)参照)。残りの写し一通(イのただし書による添付書類は含まないもの)は、書類の提出者に控えとして渡すこととする。
3) 許可権者等
  1に掲げた労働者派遣事業に係る許可、届出等の手続に際し、書類の提出は原則として事業主管轄労働局を経由して行われるが、許可、許可の有効期間の更新等の権限は全て厚生労働大臣が有するものである。
  したがって、許可等の申請については、都道府県労働局を経由する段階では関係書類の「受付」が行われるのであって、都道府県労働局は、①必要な書類が添付されていること、②書面に記入もれがないこと及び記入事項に誤りがないこと等を確認した上で、関係書類を本省に送付し、最終的に本省に到達した段階で「申請に対する処分(許可等)」が行われる
   なお、届出については、届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、都道府県労働局において「受理」が行われる。
 
手数料の納付
(1) 概要
 1に掲げた手続のうち次表①欄に掲げる手続を行おうとする者はそれぞれ同表②欄に定める手数料を納付しなければならない(法第54 条、令第9条)。
 一般労働者派遣事業の許可申請(様式第1号)  
  120,000円+55,000円×(一般労働者派遣事業を行う事業所の数から一を減じた数)
 許可証の亡失または滅失の際の許可証の再交付申請(様式第5号
  許可証1枚につき1,500円
 一般労働者派遣事業の許可の有効期間の更新申請(様式第1号
  55,000円×(一般労働者派遣事業を行う事業所の数)
 許可証の書換申請(様式第5号
(一般労働者派遣事業において氏名若しくは名称、所在地、事業所の名称又は事業所の所在地を変更する場合。)
  許可証1枚につき3,000円
(2) 手数料の納付方法
 手数料は上表①欄に掲げる手続を行う者がそれぞれ同表③欄に掲げる申請書に、同表②欄に掲げる額に相当する額の収入印紙を貼って納付しなければならない(則第54 条第1項)。
(3) 手数料の返還
 手数料は、それぞれの申請書を受理し、受理印を押印し当該収入印紙に消印した後は返還しないものであること(則第54 条第2項)。

 

4 登録免許税の課税
(1) 概要
   1に掲げた手続のうち、一般労働者派遣事業の許可申請を行おうとする者は登録免許税を納付しなければならない(登録免許税法(昭和42 年法律第35 号)第3条)。ただし、国及び登録免許税法別表第2に掲げる者については、登録免許税が課されないこと(登録免許税法第4条第1項)。
  納税額として、許可一件当たり9万円が課されること(登録免許税法別表第1第81 号)。
(2) 登録免許税の納付方法
 登録免許税については、登録免許税の納付に係る領収証書を申請書(様式第1号の第1面の裏面)に貼って提出するものとすること(登録免許税法第21 条)。納付方法は、現金納付が原則であり、国税の収納機関である日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行等や郵便局)又は都道府県労働局の所在地を管轄する税務署において、登録免許税の相当額を現金で納付するものであること(国税通則法(昭和37 年法律第66 号)第34 条)。
(3) 納期限について
 登録免許税の納期限(許可日(登録免許税第27 条))までに、領収証書の提出がなく、納付の確認ができない場合には、許可を受けた者の当該登録免許税に係る同法第8条第2項の規定による納税地の所轄税務署長に対し、その旨を次の様式例(略)により通知すること。
(4) 還付について
 登録免許税の納付をして許可の申請をした者につき当該申請が却下された場合及び当該申請の取り下げがあった場合には、納付された登録免許税の額及び登録免許税法施行令第31 条に規定する事項を許可の申請をした者の当該登録免許税に係る同法第8条第2項の規定による所轄税務署長に対し、次の様式例(略)により通知すること。

 

一般労働者派遣事業の許可等

 
1 許可手続
(1) 一般労働者派遣事業の許可
  一般労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣に対して、許可を申請しなければならない(法第5条第1項)。
  イの許可の申請は、(3)に掲げる許可申請関係書類を事業主管轄労働局に提出することにより行う(法第5条第2項から第4項まで、則第19 条)。
 なお、許可は「事業主」ごとに行うものであるが、事業主は申請に際して一般労働者派遣事業を行おうとする各事業所の名称等について申請書に記載するとともに、事業所ごとに事業計画書等の書類を提出することが必要である(法第5条第2項から第4項まで)。
   申請を受けた事業主管轄労働局及び事業所管轄労働局においては、速やかに(5)の許可要件について、(3)に掲げる許可申請関係書類、実地調査等により確認し、その結果を事業主管轄労働局を経由して本省に報告する(7の(3)参照)。
  なお、事業主としては、一般労働者派遣事業を行う事業所と特定労働者派遣事業を行う事業所の双方を持ちうるが、同一の事業所において一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の双方を行いうるものではない(第1の3の(4)参照)。
  許可の申請に際し、特定製造業務(物の製造の業務で、第9の4の(3)のイの④及び⑤以外のもの)を行う場合には、その旨を記載した申請書を提出しなければならない。(法附則第4項)なお、物の製造の業務とは、具体的には、物を溶融、鋳造、加工、又は組み立て、塗装する業務、製造用機械の操作の業務及びこれらと密接不可分の付随業務として複数の加工・組立て業務を結ぶ場合の運搬、選別、洗浄等の業務をいうものである。
 したがって、例えば、製品の設計、製図の業務、物を直接加工し、又は組み立てる業務等の工程に原料、半製品等を搬入する業務、加工、組立て等の完了した製品を運搬、保管、包装する業務、製造用機械の点検の業務、製品の修理の業務はこれに含まれない。林業の業務は、造林作業(①地ごしらえ、②植栽、③下刈り、④つる切り、⑤除伐、⑥枝打、⑦間伐)及び素材(丸太)生産作業(①伐採(伐倒)、②枝払い、③集材、④玉切り(造材))に分けることができるが、このうち素材(丸太)生産作業については、立木を伐採し、最終的に丸太という人工物に「加工」するものであり、製造業務に該当するものであること、①から④までの業務が時間的にも空間的にも連続的・一体的に営まれる業務であることから、素材(丸太)生産作業のすべての業務が製造業務に該当するものである。
 また、造林作業の③から⑦までの業務は労働者派遣の対象となるものである(第2の2の(3)のハ参照)が、これらの業務と素材(丸太)生産作業の業務を同一の派遣労働者が同時に併せて行う場合は、当該労働者派遣に製造業務が含まれているため、全体として製造業務に該当するものである。
 なお、林業における労働災害の発生頻度は、他産業に比べ高い水準にあることに鑑み、労働者派遣の受け入れに当たっては、労働安全衛生法等に十分に留意すること。
 また、労働者派遣事業の対象となる業務については、安全衛生の徹底を図るため、以下の措置等を講ずることとしているので、十分留意すること。
 ① 労働者派遣契約に安全及び衛生に関する事項を記載すること(第7の2の(1)のイの(ハ)の⑥参照)。
 ② 物の製造の業務に労働者派遣を行う場合には、製造業務専門派遣元責任者及び製造業務専門派遣先責任者を選任すること(第8の16 の(3)のニ、第9の8の(4)のニ参照)。
 ③ 派遣元責任者及び派遣先責任者は、派遣労働者の安全及び衛生に関し、必要な連絡調整を行うこと(第8の16 の(4)の⑩、第9の8の(5)のホ参照)。
 ④ 派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うこと(第9の3の(5)参照)。
 
(2) 「事業所」の意義
   「事業所」とは、労働者の勤務する場所又は施設のうち、事業の内容としての活動が有機的、組織的に行われる場所のことであり、作業組織上相当の独立性を有するものである。
  具体的には雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的には同一であり、次の要件に該当するか否かを勘案することによって判断する。
 ① 場所的に他の(主たる)事業所から独立していること。
 ② 経営(又は業務)単位としてある程度の独立性を有すること。すなわち、人事、経理、経営(又は業務)上の指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること。
 ③ 一定期間継続し、施設としての持続性を有すること。労働者の勤務する場所又は施設が①、②及び③の全てに該当する場合並びに事業主が法人である場合であってその登記簿上の本店又は支店に該当するときは、もとより、一の事業所として取り扱うものであるが、それ以外の場合であっても、他の社会保険の取扱い等によっては、一の事業所と認められる場合があるから、実態を把握の上慎重に事業所か否かの判断を行う。
   事業主が許可を受け、及び届け出る必要があるのは、イ及びロにより「事業所」とされたもののうち、「一般労働者派遣事業を行う事業所」であるが、これについては、次のように判断する。
 (イ) 実質的に一般労働者派遣事業の内容となる業務処理の一部又は全部を行っている事業所であること。すなわち、派遣労働者に対し派遣就業の指示を行い労働に従事させていると評価できる事業所であって、具体的には、法第34 条の就業条件の明示、派遣労働者に係る労働契約の締結若しくは派遣労働者となろうとする者の登録、派遣労働者に係る雇用管理の実施等の事務の処理機能を有しているいわば、派遣労働者が帰属する事業所である(ロの①に該当する事業所(特に異なった都道府県に所在する事業所)については、このように判断される蓋然性が極めて高くなるので留意すること。)。
 一般労働者派遣事業の事業所の事業主が法人である場合の登記簿上の本店又は支店であっても同様の基準により判断する。
 (ロ) なお、(イ)の基準により一般労働者派遣事業の内容となる業務処理を行っている場所又は施設がイ及びロにより「事業所」に該当しないと認められる場合(そのようなことは通常考えられない。)は、当該施設が他の一般労働者派遣事業を行う事業所に附属し一般労働者派遣事業を行っているものとして取り扱う。この場合において、事業主が許可を受け及び届け出る必要があるのは、当該「他の一般労働者派遣事業を行う事業所」である。
 (ハ) 派遣労働者の教育訓練のみを行う事業所、派遣労働者の募集のみを行う事業所、派遣先の開拓のみを行う事業所、一般労働者派遣事業に係る会計、財務の処理のみを行っている事業所等については、一般労働者派遣事業を行う事業所ではないと判断されるものである。
 (ニ) (イ)の派遣労働者となろうとする者の登録申込みについて、真に偶発的にこれを受理するに過ぎない場合には一般労働者派遣事業の許可を要するものではないが、(ハ)のような業務を行う事業所については、その事業内容からも、登録申込みの受理を行う場合には業として労働者派遣事業(の一部)を行っていると解される蓋然性が高く、一般労働者派遣事業を行う事業所として許可を受け、及び届け出ることが適当である。また、当該事業所において、登録の申込みの受理が繰り返し行われる場合には、業として労働者派遣事業(の一部)を行っていると解されるものであることから、一般労働者派遣事業を行う事業所としての許可及び届出が必要である。
 (ホ) (イ)により、一般労働者派遣事業を行う事業所と判断した事業所が現実の雇用保険の取扱いにおいては、事業所非該当施設とされている場合にあっては、雇用保険部門にその旨連絡し、同一の行政機関が行う「事業所」に関する判断に矛盾が生じない整理を行うこと。
              
(3) 許可申請関係書類
 一般労働者派遣事業の許可申請関係書類は法人及び個人の区分に応じ次のイ及びロのとおりとする(法第5条第2項から第4項まで、則第1条の2第1項から第3項まで)(一般労働者派遣事業関係手続に要する書類の総括については8参照)。
   法人の場合
 (イ) 一般労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)(4欄の⑤には、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講した年月日及び場所に加えて、派遣元責任者講習受講証明書(様式第18 号)に記載された番号を付記すること。)
 (ロ)一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書(様式第3号)
 (ハ) 定款又は寄附行為
 (ニ) 登記事項証明書
 (ホ) 役員の住民票の写し(本籍地の記載のあるものに限る。出入国管理及び難民認定法(昭和26 年政令第319 号。以下「入管法」という。)第19 条の3に規定する中長期在留者にあっては、住民票の写し(国籍等(住民基本台帳法(昭和42 年法律第81 号)第30 条の45 に規定する国籍等をいう。以下同じ。)及び在留資格(入管法第2条の2第1項に規定する在留資格をいう。)を記載したものに限る。)とし、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年法律第71 号)に定める特別永住者にあっては、住民票の写し(国籍等及び同法に定める特別永住者である旨を記載したものに限る。)とし、入管法第19 条の3第1号に掲げる者にあっては、旅券その他の身分を証する書類の写しとする。以下同じ。)及び履歴書(職歴、賞罰及び役職員への就任解任状況を明らかにしたものであることが必要。以下同じ。)
 (ヘ) 役員(以下この(ヘ)において「役員甲」とする。)が未成年者のため、労働者派遣事業に関し法定代理人から営業の許可を受けていない場合は、a・b の区分に応じ、それぞれa・b の書類(ただし、役員甲が法定代理人から営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書))
 a 役員甲の法定代理人が個人である場合
  役員甲の法定代理人の住民票の写し及び履歴書
 b 役員甲の法定代理人が法人である場合
  役員甲の法定代理人の定款又は寄附行為、登記事項証明書並びに役員の住民票の写し及び履歴書(ただし、役員甲の法定代理人の役員(以下この(ヘ)において「役員乙」とする。)が未成年者のため、労働者派遣事業に関し法定代理人から営業の許可を受けていない場合は、a・bの区分に準じ、それぞれa・bの書類(役員乙が法定代理人から営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書))を含む。さらに、法定代理人の役員について、同様の事例が続く限り、前記と同様に取り扱うこと。)
 (ト) 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの個人情報適正管理規程(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の10 の(2)のハの(イ)から(ニ)までの内容が含まれていることが必要(第8の23 参照)。)
 (チ) 最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書(持分会社にあっては、社員資本等変動計算書。以下「株主資本等変動計算書等」という。)(税務署に提出したもの。ただし、最近の事業年度における決算が終了しているが株主総会の承認を得られていないため未だ税務署に提出していない場合については、当該決算に係る貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書等が確実に税務署に提出される場合には、当該貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書等であっても差し支えない。また、この場合(リ)のaの①及び②を提出させる必要はない。設立後最初の決算期を終了していない法人の申請に係る場合は、会社法(平成17 年法律第86 号)第435 条第1項に規定する会社成立時の貸借対照表、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18 年法律第48 号)第123 条第1項(同法第199 条において準用する場合を含む。)に規定する法人成立時の貸借対照表等のみでよい。)
 (リ) 一般労働者派遣事業に関する資産の内容及びその権利関係を証する書類
 ① 最近の事業年度における法人税の納税申告書の写し(税務署の受付印のあるもの(電子申請の場合にあっては、税務署に受け付けられた旨が確認できるもの。以下同じ。)に限る。法人税法施行規則別表1及び4は、必ず提出させること。)
(なお、連結納税制度を採用している法人については次に掲げる書類
・ 最近の連結事業年度における連結法人税の納税申告書の写し(連結親法人の所轄税務署の受付印のあるものに限る。法人税法施行規則別表1の2「各連結事業年度分の連結所得に係る申告書」の写し及び同申告書添付書類「個別帰属額等の一覧表」の写しのみでよい。ただし、別表7の2付表2「連結欠損金個別帰属額に関する明細書」が提出される場合には、その写しを併せて提出させること。)
・ 最近の連結事業年度の連結法人税の個別帰属額の届出書(申請法人に係るものに限る。)の写し(税務署に提出したもの。ただし当該届出書の別表にあっては別表4の2付表「個別所得の金額の計算に関する明細書」の写しのみでよい。))
 ② 納税証明書(国税通則法施行令第41 条第1項第3号ロに係る同施行規則別紙第8号様式(その2)による法人の最近の事業年度における所得金額に関するもの)(なお、連結納税制度を採用している法人については納税証明書(国税通則法施行令第41条第1項第3号ロに係る同施行規則別紙第8号様式(その2)による最近の連結事業年度における連結所得金額に関するもの))(設立後最初の決算を終了していない法人の申請に係る場合は、①及び②は不要。)
   一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書又は不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写し(転貸借の場合にあっては、その所有者の転貸借に係る同意書その他権利関係を証する書類を含む。以下同じ。))
 (ヌ) 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書(派遣元責任者と役員が同一である場合においては、提出を要しない。)ロ個人の場合
 (イ) 一般労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)(4欄の⑤には、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講した年月日及び場所に加えて、派遣元責任者講習受講証明書(様式第18 号)に記載された番号を付記すること。)
 (ロ)一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書(様式第3号)
 (ハ) 住民票の写し及び履歴書
 (ニ) 申請者が未成年者のため、労働者派遣事業に関し法定代理人から営業の許可を受けていない場合は、a・bの区分に応じ、それぞれa・bの書類(ただし、申請者が法定代理人から営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書))
  申請者の法定代理人が個人である場合
 申請者の法定代理人の住民票の写し及び履歴書b 申請者の法定代理人が法人である場合申請者の法定代理人の定款又は寄附行為、登記事項証明書並びに役員の住民票の写し及び履歴書(ただし、申請者の法定代理人の役員(以下この(ニ)において「役員丙」とする。)が未成年者のため、労働者派遣事業に関し法定代理人から営業の許可を受けていない場合は、a・bの区分に準じ、それぞれa・bの書類(ただし、役員丙が法定代理人から営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書))を含む。さらに、法定代理人の役員について、同様の事例が続く限り、前記と同様に取り扱うこと。)
 (ホ) 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの個人情報適正管理規程(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の10 の(2)のハの(イ)から(ニ)までの内容が含まれていることが必要(第8の23 参照)。)
 (ヘ) 一般労働者派遣事業に関する資産の内容及びその権利関係を証する書類
 ① 最近の納税期における所得税の納税申告書の写し(税務署の受付印のあるもの)
  ② 納税証明書(国税通則法施行令第41 条第1項第3号イに係る同施行規則別紙第8号様式(その2)による最近の納税期における金額に関するもの)
  ③・ 青色申告の場合(簡易な記載事項の損益計算書のみ作成する場合を除く。)は、最近の納税期における所得税法施行規則第65 条第1項第1号の貸借対照表及び損益計算書(所得税青色申告決算書(一般用)の写し(税務署の受付印のあるもの))
  ・ 白色申告又は青色申告で簡易な記載事項の損益計算書のみ作成する場合は、(ロ)の一般労働者派遣事業計画書の「7 資産等の状況」欄に記載された土地・建物に係る不動産の登記事項証明書及び固定資産税評価額証明書
④ 預金残高証明書(納税期末日のもの)(事業開始後最初の納税を終了していない個人の申請に係る場合は、①から④までの書類に代えて、(ロ)の一般労働者派遣事業計画書の「7 資産等の状況」欄(近接する適当な日の状況につき記載する。)に記載された土地・建物に係る不動産の登記事項証明書及び固定資産税評価額証明書並びに現金・預金に係る預金残高証明書を提出する。)
  一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書又は不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写し)
 (ト) 一般労働者派遣事業を行う事業所ごとの派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書(派遣元責任者と申請者が同一である場合においては、提出を要しない。)
  特定派遣元事業主(法第16条第1項の規定により特定労働者派遣事業の届出書を提出した者をいう。以下同じ。)が、一般労働者派遣事業の許可を申請するに際しては、イの(ハ)から(ホ)までに掲げる書類及びロの(ハ)に掲げる書類を添付することを要しない(則第1条の2第4項)。ニイ及びロに掲げる書類のうち、イの(イ)及び(ロ)並びにロの(イ)及び(ロ)に掲げる書類は、正本一通及びその写し二通を提出することを要するが、それ以外の書類については、正本一通及びその写し一通で足りる(則第20条)(第3の2の(2)参照)。

 

(4) 法人の「役員」の意義等
   法人の役員とは、おおむね次に掲げる者をいう。
 ① 株式会社については、代表取締役、取締役(会計参与設置会社である場合は会計参与、監査役設置会社である場合は監査役、委員会設置会社である場合は執行役)
 ② 合名会社及び合同会社については、総社員(定款をもって業務を執行する社員を定めた場合は、当該社員)
 ③ 合資会社については、総無限責任社員(定款をもって業務を執行する無限責任社員を定めた場合は、当該無限責任社員)
 ④ 特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17 年法律第87号)第3条第2項に規定する特例有限会社をいう。)については、取締役、監査役を置いた場合には監査役
 ⑤ 一般社団法人及び一般財団法人については、理事及び監事
 ⑥ 特殊法人、独立行政法人及び地方独立行政法人については、総裁、理事長、副総裁、副理事長、専務理事、理事、監事等法令により役員として定められている者
   中小企業団体の組織に関する法律(昭和32 年法律第185 号)第3条第1項に規定する事業協同組合、事業協同小組合、企業組合、協業組合、商工組合や組合等登記令(昭和39 年政令第29号)第1条に規定する組合等(以下単に「組合等」という。)のように法律上法人格を与えられているものは、組合等を構成する法人とは独立した別個の法人であり、当該組合等が許可を受け一般労働者派遣事業を行う主体となる(JVとの関係については第1の1の(6)参照)。
 
(5) 許可要件
   一般労働者派遣事業については、当該事業が法の趣旨に沿って、適正に運営され、労働力需給の適正な調整が図られるとともに、派遣労働者の保護及び雇用の安定が確保されることが必要である。
   このため、許可制を採用し、一定の要件を満たす者に限り許可することとしているが、この場合、労働者保護と雇用の安定のためのルールを遵守し、適正な事業運営を行い得る資質を有する者に限り事業の実施を認めるとともに、当該事業について、
 ① 専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行うものでないこと。
 ② 派遣労働者に対し適切な雇用管理を行うこと。
 ③ 個人情報を適正に管理し、及び派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること
 ④ 一定水準の事業遂行能力を有すること。
 を事前に確認した上で事業を行わせることが必要である。
  このような観点から、以下のとおり、許可の欠格事由(法第6条)及び許可基準(法第7条第1項)を定めているところであり、許可の申請に係る事業が、許可の欠格事由に該当せず、許可基準を全て満たすと認められる場合にのみ許可されるものである。
   一般労働者派遣事業の許可を受けた後、許可の欠格事由に該当するに至ったときは、許可が取り消されることになる(法第14 条第1項第1号。第13 の2の(2)のイ参照)。

 

一般路労働者派遣事業の許可申請及び欠格事由

 一般労働者派遣事業を行おうとする、法人又は個人は、所定の申請様式に記入し添付書類を

付し、かつ手数料を収めることで申請が可能です。業務取扱要領においては、可能な限り、許

可申請等に関する詳細を記述してあります。許可申請については、以下に概略をまとめ、併せ

て欠格事由の概略を記入します。

 

1.労働者派遣事業の概要 ※出典は、厚生労働省作成「許可・更新手続マニュアル」より

 ア 労働者派遣事業の種類

  ・一般労働者派遣事業~派遣元で雇用している労働者は非常勤

  ・特定労働者派遣事業~派遣元で雇用している労働者はすべて常勤

 注意一般労働者派遣事業に該当するか、特定労働者派遣事業に該当するかについては、

    事業所ごとに判断されることとなるため、一つの事業所において一般労働者派遣事業

    特定労働者派遣事業とが共存することはなく、常時雇用される労働者以外の派遣労

    働者が存在する場合は、一般労働者派遣事業を行う事業所となる

 イ 紹介予定派遣

  ・ 紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、派遣元事業主が労働者派遣の開始前又は開始後

   に、派遣労働者及び派遣先に対して、職業紹介(派遣労働者・派遣先の間の雇用関係の

   成立のあっせん)を行い、又は行うことを予定してするものです。

  ※ 職業紹介を行うに当たっては、厚生労働大臣の許可又は届出が必要です。
  ・紹介予定派遣を行うと、派遣先・派遣労働者双方にとって、派遣期間中にお互いの見極
   めができ、安定的な直接雇用につながりやすいというメリットがあります。
  ・紹介予定派遣では、通常の労働者派遣と異なり、
   ①派遣就業開始前又は派遣就業期間中の求人条件の明示、
   ②派遣期間中の求人・求職の意思の確認及び採用内定、
   ③派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為
   (派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等)を行うことができます。

2.許可申請の手続

 ア  申請方法

  ・ 一般労働者派遣事業を行おうとする場合は、下記(2)の書類を事業主の主たる事務所を
   管轄する都道府県労働局(以下「事業主管轄労働局」という。)に提出してください。
   申請は、事業主単位(会社単位)で行います
  ・ 許可申請は、事業開始予定時期のおおむね2か月前までに行う必要があります。
   申請を希望する場合、お早めに事業主管轄労働局に御相談ください。
  ・ 許可を受けるためには、欠格事由(法第6条)に該当せず、許可基準(法第7条)を
   満たす必要があります。
  ・ 申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があります(15
   ページ2の⑨を参照)。この講習は、派遣元事業所の雇用管理及び事業運営の適正化に
   資することを目的とするものです。
   講習は、厚生労働省に開催を申し出た団体が実施しています。

 イ 提出書類

  ① 一般労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)3通(正本1通、写し2通)
  ② 一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)3通(正本1通、写し2通)※
  ③ 添付書類2通(正本1通、写し1通)※申請者が法人と個人の場合は異なる
 ウ 許可手数料
  ・ 申請書には、手数料[12万円+5万5千円×(一般労働者派遣事業を行う事業所数
   -1)]に相当する額の収入印紙を貼付する必要があります(法第54 条、令第10 条)。
  ・ 収入印紙の消印後は、手数料は返却されませんのでご留意ください。

 エ 登録免許税の課税

  ・ 申請に当たっては、登録免許税[許可一件当たり9万円]を納付し、領収書を許可申
    請書に貼付しなければなりません(登録免許税法第2 条、別表第1第81 号)。
  ・ 登録免許税は、国税の収納機関である日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行等や郵便
    局)又は都道府県労働局の所在地を管轄する税務署に現金で納付してください(国税通
   則法第34 条)。

 オ 許可までのプロセス

  ・ 申請書類の受付後、都道府県労働局で申請書類の審査がなされるとともに、事業の実
   施を予定する事業所に対し現地での調査が行われます。
  ・ 当該労働局は、申請に対する審査・調査の結果を厚生労働本省に送付します。
  ・ 厚生労働本省において、更に審査内容を精査の上、厚生労働大臣から労働政策審議会
   に諮問します。
  ・ 労働政策審議会からの答申を踏まえ、厚生労働大臣により申請に対する許可又は不許
   可が決定されます。
  ・ 許可の場合は許可証が、不許可の場合は不許可通知書が発行され、当該労働局を通じ
   て申請者に交付されます。
  ・ 事業者は、交付された許可証を受領することにより事業を開始します。
3.欠格事由
欠格事由
 次のいずれかに該当する事業者は、一般労働者派遣事業の許可を受けられず、また、特定
労働者派遣事業を行ってはなりません。
(Ⅰ) 法人の場合
 (1) 次のイ~ハ、ト~ヲの規定に違反し、又はニ~への罪を犯したことにより、罰金の刑
  に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して
  年を経過していない場合(法第6条第1号、第2号)
  イ 労働者派遣法の規定
  ロ 労働に関する以下の法律の規定
  (イ) 労働基準法第117条、第118条第1項(同法第6条及び第56条に係る部分に限る。)、
    第119条(同法第16条、第17条、第18条第1項及び第37条に係る部分に限る。)及び
   第120条(同法第18条第7項及び第23条から第27条までに係る部分に限る。)並びに
   当該規定に係る同法第121条(これらの規定が労働者派遣法第44条(第4項を除く。)
   により適用される場合を含む。)
  (ロ) 職業安定法第63条、第64条、第65条(第1号を除く。)及び第66条並びにこれら
   の規定に係る同法第67条
  (ハ) 最低賃金法第40条及び同条に係る同法第42条
  (ニ) 建設労働者の雇用の改善等に関する法律第49条、第50条及び第51条(第2号及び
    第3号を除く。)並びにこれらの規定に係る同法第52条
  (ホ) 賃金の支払の確保等に関する法律第18条及び同条に係る同法第20条
  (ヘ) 港湾労働法第48条、第49条(第1号を除く。)及び第51条(第2号及び第3号に
    係る部分に限る。)並びにこれらの規定に係る同法第52条
  (ト) 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の
   改善の促進に関する法律第19条、第20条及び第21条(第1号に係る部分に限る。)
   並びにこれらの規定に係る同法第22条
  (チ) 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第62条、
   第63条及び第65条並びにこれらの規定に係る同法第66条
  (リ) 林業労働力の確保の促進に関する法律第32条、第33条及び第34条(第1号に係る
   部分に限る。)並びにこれらの規定に係る同法第35条
  (ヌ) 労働者派遣法第44条第4項により適用される労働基準法第118条、第119条及び第
   121条並びに労働者派遣法第45条第7項により適用される労働安全衛生法第119条及
   び第122条
  ハ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第50条(第2号に係る部分に限
   る。)及び第52条を除く。)
  ニ 刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条又は第247条
  ホ 暴力行為等処罰に関する法律
  へ 出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項
  ト 健康保険法第208条、第213条の2又は第214条第1項
  チ 船員保険法第156条、第159条の3又は第160条第1項
  リ 労働者災害補償保険法第51条前段又は第54条第1項(第51条前段に係る部分に限る。)
  ヌ 厚生年金保険法第102条第1項、第103条の2、第104条第1項(第102条第1項又は
   第103条の2に係る部分に限る。)、第182条第1項若しくは第2項又は第184条(第
   182条第1項又は第2項に係る部分に限る。)
  ル 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第46条前段又は第48条第1項(第46条前段
   に係る部分に限る。)
  ヲ 雇用保険法第83条又は第86条(第83条に係る部分に限る。)
 (2) 破産者で復権していない場合(法第6条第3号)
 (3) 一般労働者派遣事業の許可を取り消され、又は特定労働者派遣事業の廃止を命じられ、
  当該取消し又は命令の日から起算して5年を経過していない場合(法第6条第4号)
 (4) 一般労働者派遣事業の許可の取消し又は特定労働者派遣事業の廃止の命令の処分に係
  る行政手続法第15条による通知(以下「聴聞の通知」という。)があった日から当該処
  分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に一般労働者派遣事業の廃止の
  届出又は特定労働者派遣事業の廃止の届出をした場合(当該事業の廃止について相当の
  理由がある場合を除く。)で、当該届出の日から起算して5年を経過しない場合(法第
  6条第6号)
 (5) 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又
  は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)に
  その事業活動を支配されている場合(法第6条第11号)
 (6) 暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのあ
  る場合(法第6条第12号)
 (7) 当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、
  相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行
  する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認
  められる者を含む。)のうちに、上記(1)~(4)又は次のいずれかに該当する者がある場
  合(法第6条第10号)
  イ 一般労働者派遣事業の許可を取り消された者が法人である場合(法第14条第1項第
   1号の規定により許可を取り消された場合については、当該法人が(1)に規定する者の
   いずれかに該当することとなったことによる場合に限る。)又は特定労働者派遣事業
   の廃止を命じられた者が法人である場合(当該法人が(1)に規定する者のいずれかに該
   当することとなったことによる場合に限る。)において、当該取消し又は命令の処分
   を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員であった者で、当該取
   消し又は命令の日から起算して5年を経過しないもの(法第6条第5号)
  ロ (4)に規定する期間内に一般労働者派遣事業の廃止の届出又は特定労働者派遣事業の
   廃止の届出をした者が法人である場合において、(4)の聴聞の通知の日前60日以内に
   当該法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員であった
   者で、当該届出の日から起算して5年を経過しないもの(法第6条第7号)
  ハ 暴力団員等(法第6条第8号)
  ニ 一般労働者派遣事業について法定代理人から営業の許可を受けていない未成年者で
  あって、その法定代理人(法人である場合は、当該法人の役員)が上記(1)~(4)又は
 (7)イ~ハのいずれかに該当する者又はその法定代理人(法人である場合に限る。)が
  上記(1)~(4)のいずれかに該当する者(法第6条第9号)

(Ⅱ)個人の場合

  上記1(1)~(6)又は当該個人が(7)イ~ニのいずれかに該当する者

 

 

一般労働者派遣事業のまとめ

 一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の許可・届出件数を見ると次のようになっています。

 

  平成27年5月現在                   平成11年度

   一般労働者派遣事業(許可等件数)   17,652件   4,065件

   特定労働者派遣事業(届出等件数)   67,631件   8,588件

   一般+特定派遣事業(許可、届出数)  85,283件   12,653件

 

  出典: 一般社団法人 日本人材派遣協会 調査資料

  URL https://www.jassa.jp/corporation/permission/suii/2015_05suii.pdf 

 

 上記の資料から、労働者派遣事業は常用雇用のみの特定労働者派遣事業の事業所数が(統計

上)上回っていること。

 また、労働者派遣事業者数が時系列でみると減少していることがわかります。

 

 一般労働者派遣事業の許可については、定められたものを履行するのみですから、特段の検

討・考察の必要はないかと思います。

 

 

 

 

以上で労働者派遣法第5条・第6条を終了します。

 

 

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労働者派遣法第4条

2015年06月13日 09:27

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

 

第4条

 

 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。

一 港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)

二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)

三 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節、第二十三条第二項、第四項及び第五項並びに第四十条の二第一項第一号において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務

2 厚生労働大臣は、前項第三号の政令の制定又は改正の立案をしようとするときは、

あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

3 労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指

揮命令の下に当該労働者派遣に係る派遣労働者を第一項各号のいずれかに該当する業

務に従事させてはならない。

 

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令

 

施行令第1条(法第四条第一項第一号の政令で定める業務)

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「法」という。)第四条第一項第一号の政令で定める業務は、港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第一号に規定する港湾以外の港湾で港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)第二条第四項に規定するもの(第三号において「特定港湾」という。)において、他人の需要に応じて行う次に掲げる行為に係る業務とする。

一 港湾運送事業法第二条第一項に規定する港湾運送のうち、同項第二号から第五号までのいずれかに該当する行為

二 港湾労働法施行令(昭和六十三年政令第三百三十五号)第二条第一号及び第二号に掲げる行為

三 船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送された貨物の特定港湾の水域の沿岸からおおむね五百メートル(水島港にあつては千メートル、鹿児島港にあつては千五百メートル)の範囲内において厚生労働大臣が指定した区域内にある倉庫(船舶若しくははしけにより又はいかだに組んでする運送に係る貨物以外の貨物のみを通常取り扱うものを除く。以下この条において「特定港湾倉庫」という。)への搬入(上屋その他の荷さばき場から搬出された貨物の搬入であつて、港湾運送事業法第二条第三項に規定する港湾運送関連事業のうち同項第一号に掲げる行為に係るもの若しくは同法第三条第一号から第四号までに掲げる事業又は倉庫業法(昭和三十一年法律第百二十一号)第二条第二項に規定する倉庫業のうち特定港湾倉庫に係るものを営む者(以下この条において「特定港湾運送関係事業者」という。)以外の者が行うものを除く。)、船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送されるべき貨物の特定港湾倉庫からの搬出(上屋その他の荷さばき場に搬入すべき貨物の搬出であつて、特定港湾運送関係事業者以外の者が行うものを除く。)又は貨物の特定港湾倉庫における荷さばき。ただし、冷蔵倉庫の場合にあつては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入、冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出及び冷蔵室における荷さばきを除く。

四 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号) 第二条第一項に規定する道路運送車両若しくは鉄道(軌道を含む。)(以下この号において「車両等」という。)により運送された貨物の特定港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場への搬入(特定港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬入を除く。)又は車両等により運送されるべき貨物の特定港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場からの搬出(特定港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬出を除く。)。ただし、冷蔵倉庫の場合にあつては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入及び冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出を除く。

施行令第2条(法第四条第一項第三号の政令で定める業務)

 法第四条第一項第三号の政令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務について紹介予定派遣をする場合、当該業務が法第四十条の二第一項第三号又は第四号に該当する場合及び第一号に掲げる業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にあり、又は地域における医療の確保のためには同号に掲げる業務に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(へき地にあるものを除く。)である場合を除く。)とする。

一 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十七条に規定する医業(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院若しくは同条第二項に規定する診療所(厚生労働省令で定めるものを除く。以下この条において「病院等」という。)、同法第二条第一項に規定する助産所(以下この条において「助産所」という。)、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十七項に規定する介護老人保健施設(以下この条において「介護老人保健施設」という。)又は医療を受ける者の居宅(以下この条において「居宅」という。)において行われるものに限る。)

二 歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十七条に規定する歯科医業(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

三 薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第十九条に規定する調剤の業務(病院等において行われるものに限る。)

四 保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第二条、第三条、第五条、第六条及び第三十一条第二項に規定する業務(他の法令の規定により、同条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として行うことができることとされている業務を含み、病院等、助産所、介護老人保健施設又は居宅において行われるもの(介護保険法第八条第三項に規定する訪問入浴介護及び同法第八条の二第二項に規定する介護予防訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る。)

五 栄養士法(昭和二十二年法律第二百四十五号)第一条第二項に規定する業務(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導に係るものであつて、病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

六 歯科衛生士法(昭和二十三年法律第二百四号)第二条第一項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

七 診療放射線技師法(昭和二十六年法律第二百二十六号)第二条第二項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)

八 歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第一項に規定する業務(病院等において行われるものに限る。)

2 前項のへき地とは、次の各号のいずれかに該当する地域をその区域に含む厚生労働省令で定める市町村とする。

一 離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第二条第一項の規定により離島振興対策実施地域として指定された離島の区域

二 奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)第一条に規定する奄美群島の区域

三 辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(昭和三十七年法律第八十八号)第二条第一項に規定する辺地

四 山村振興法(昭和四十年法律第六十四号)第七条第一項の規定により指定された振興山村の地域

五 小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和四十四年法律第七十九号)第四条第一項に規定する小笠原諸島の地域

六 過疎地域自立促進特別措置法(平成十二年法律第十五号)第二条第一項に規定する過疎地域

七 沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第三条第三号に規定する離島の地域

 

則第1条(令第二条第一項の厚生労働省令で定める場所等)

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令(昭和六十一年政令第九十五号。以下「令」という。)第二条第一項の厚生労働省令で定める場所は、次に掲げる場所とする。

一 都道府県が医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の二十三第一項の協議を経て同項の必要な施策として地域における医療の確保のためには令第二条第一項第一号に掲げる業務に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認めた病院等(同号に規定する病院等をいう。次号において同じ。)であつて厚生労働大臣が定めるもの

 二 前号に掲げる病院等に係る患者の居宅

2 令第二条第一項第一号の厚生労働省令で定めるものは、次のとおりとする。

一 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設の中に設けられた診療所

二 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第三十八条第一項第一号(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)第十四条第四項(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成十九年法律第百二十七号)附則第四条第二項において準用する場合を含む。)においてその例による場合を含む。)に規定する救護施設の中に設けられた診療所

三 生活保護法第三十八条第一項第二号(中国残留邦人等支援法第十四条第四項においてその例による場合を含む。)に規定する更生施設の中に設けられた診療所

四 独立行政法人労働者健康福祉機構法(平成十四年法律第百七十一号)第十二条第一項第七号に規定するリハビリテーション施設の中に設けられた診療所

五 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の四に規定する養護老人ホームの中に設けられた診療所

六 老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホームの中に設けられた診療所

七 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)第三十九条に規定する養護事業を行う施設の中に設けられた診療所

 

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第一条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める病院等(平成二十一年一月三十日)(厚生労働省告示第十九号)

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号)第一条第一項第一号の規定に基づき、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則第一条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める病院等を次のように定める。

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第一条第一項第一号の厚生労働大臣が定める病院等は、都道府県が次の表の第一欄に掲げる日に、同表の第二欄に掲げる協議の場において医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の十二第一項の協議を経て認めた同表の第三欄に掲げる期間における同表の第四欄に掲げる病院等とする。

認めた日

協議の場

期間

病院等の名称

平成二十二年二月九日

大阪府医療対策協議会

平成二十二年四月一日から平成二十五年三月三十一日まで

泉大津市立病院

平成二十三年一月六日

大阪府医療対策協議会

平成二十三年四月一日から平成二十四年二月六日まで

りんくう総合医療センター

※いずれも、定められた期間が経過しています。

 

業務取扱要領による確認

適用除外業務の範囲

(1) 港湾労働法第2条第1号に規定する港湾(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸及び関門)における同
条第2号に規定する港湾運送業務
   港湾労働法第2条第2号に規定する港湾運送業務の範囲
 1の①に掲げる港湾運送業務のうち港湾労働法第2条第2号に規定する港湾運送の業務とは、
次に掲げる行為であること。
 (イ) 港湾運送事業法(昭和26年法律第161号)第2条第1項第2号から第5号までに規定する、船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役及びいかだ運送の各行為(港湾労働法第2条第2号イ)
 (ロ) (イ)の行為と本質的機能を同じくするとともに、港湾運送の波動性の影響を受ける等労働の態様が港湾運送と類似し、実際に港湾運送との間に労働者の相互の流動が見られる行為である次に掲げる行為であって、他人の需要に応じて行うもの(港湾労働法第2条第2号ロ)
 a 船舶に積み込まれた貨物の位置の固定若しくは積載場所の区画又は船積貨物の荷造り若しくは荷直し
 b (イ)の行為に先行し、又は後続する船倉の清掃
 c 船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送された貨物の港湾の水域の沿岸からおおむね500メートル(東京及び大阪の港湾にあっては 200メートル)の範囲内において厚生労働大臣が指定した区域内にある倉庫(船舶若しくははしけにより又はいかだに組んでする運送に係る貨物以外の貨物のみを通常取り扱うものを除く。以下「港湾倉庫」という。)への搬入(上屋その他の荷さばき場から搬出された貨物の搬入であって、港湾運送事業法第2条第3項に規定する港湾運送関連事業のうち同項第1号に掲げる行為に係るもの若しくは同法第3条第1号から第4号までに掲げる事業又は倉庫業法(昭和31年法律第121号)第2条第2項に規定する倉庫業のうち港湾倉庫に係るものを営む者(以下「港湾運送関係事業者」という。)以外の者が行うものを除く。)、船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送されるべき貨物の港湾倉庫からの搬出(上屋その他の荷さばき場に搬入すべき貨物の搬出であって、港湾運送関係事業者以外の者が行うものを除く。)又は貨物の港湾倉庫における荷さばき。ただし、冷蔵倉庫の場合にあっては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入、冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出及び冷蔵室における荷さばきを除く。
 d 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第1項に規定する道路運送車両若しくは鉄道(軌道を含む。)(以下「車両等」という。)により運送された貨物の港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場への搬入(港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬入を除く。)又は車両等により運送されるべき貨物の港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場からの搬出(港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬出を除く。)。ただし、冷蔵倉庫の場合にあっては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入及び冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出を除く。
   イの(ロ)のaの「船舶に積み込まれた貨物の位置の固定若しくは積載場所の区画」とは、船舶に積み込まれた貨物の移動又は荷くずれ等を防止するために行う支持または固縛の行為であって、通常ラッシング又はショアリングと呼ばれているものをいい、「船積貨物の荷造り若しくは荷直し」とは、船内、岸壁又は上屋等の荷さばき場において行われる船積貨物の梱包、袋詰め等の荷造り若しくは荷の詰めかえ又は包装の修理等の荷直しの行為をいうものである。
   イの(ロ)のbの「(イ)の行為に先行し、又は後続する船倉の清掃」とは、船倉(タンクを含む。)の清掃をいい、船員の居住区域、機関区域、燃料タンク、飲料水タンク等直接港湾運送事業の業務と関連のない区域の清掃の行為は含まないものであること。
  イの(ロ)のc及びdにおける「港湾倉庫」については、昭和63年労働省告示第101号(港湾労働法施行令第2条第3号の規定に基づいて厚生労働大臣が指定する区域)により厚生労働大臣が指定する区域(具体的には別表1のとおり。)にある倉庫のうち、船舶若しくははしけにより又はいかだに組んでする運送になる貨物以外の貨物のみを通常取り扱うもの以外のものであること。
   イの(ロ)のc のいわゆる海側倉庫荷役については、次のとおりとする。
 (イ) 「船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送された貨物の港湾倉庫への搬入」には、単に港湾倉庫に運び入れる作業だけでなく、港湾倉庫にはいつける作業まで含まれるものであること。
 (ロ) 「船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送された貨物の港湾倉庫への搬出」には、単に港湾倉庫から運び出す作業だけでなく、港湾倉庫にはいくずす作業まで含まれるものであること。
 (ハ) 「上屋その他の荷さばき場から搬出された貨物の搬入」及び「上屋その他の荷さばき場へ搬入すべき貨物の搬出」については、港湾運送関係事業者が行う場合に限り対象となるが、港湾運送関係事業者であることの判断は、港湾労働法施行通達により判断された事業者をもって港湾運送関係事業者とすること。
 (ニ) 「貨物の港湾倉庫における荷さばき」とは、はい替え、仕訳け、看貫及び庫移しの作業を指すこと。
  この場合において「貨物」とは、船舶若しくははしけにより又はいかだに組んでする運送に係る貨物だけではなく、当該倉庫にあるすべての貨物をいうものであること。
 (ホ) 冷蔵倉庫に係る海側倉庫荷役については、冷蔵倉庫に附属する荷さばき場(冷蔵倉庫にプラットホーム等冷蔵室における作業に従事する労働者がその作業の一環として従事する場所をいう。以下同じ。)と冷蔵室との間における荷役作業及び冷蔵室における荷さばきの作業に限り、港湾運送の業務に入らないのであって、いわゆる水切りをした貨物をプラットホームに搬入する作業、冷蔵室外における荷さばき等それ以外の作業については、港湾運送の業務となること。
 (ヘ) 港湾倉庫以外の倉庫に係る寄託契約による貨物についてのはしけへの積込み又ははしけからの取卸し(いわゆる水切り作業)については、当該倉庫に係る倉庫荷役として取り扱うものであること。
ヘ イの(ロ)のdのいわゆる山側倉庫荷役については、次のとおりとすること。
 (イ) 「貨物の港湾倉庫又は上屋その他の荷さばき場への搬入」には、単に港湾倉庫又は上屋その他の荷さばき場に運び入れる作業だけでなく、はいつける作業まで含まれるものであること。
 (ロ) 「貨物の港湾倉庫又は上屋その他の荷さばき場への搬出」には、単に港湾倉庫又は上屋その他の荷さばき場から運び出す作業だけでなく、はいくずす作業まで含まれるものであること。
 (ハ) 冷蔵倉庫に係る山側倉庫荷役については、ホの(ホ)と同様であること。
   港湾運送事業法第2条第1項に規定する港湾運送の中には、検数(第6号)、鑑定(第7号)及び検量(第8号)の各行為が含まれているが、これらについては法第4条第1項に規定する港湾運送の業務には含まれないので留意すること。また、元請(第1号)の行為のうち、港湾運送事業法第2条第1項第2号から第5号までに掲げる行為については、法第4条第1項に規定する港湾運送業務に含まれるものであること。
(2) 港湾労働法第2条第1号に規定する港湾以外の港湾における港湾運送業務
 (1)以外の業務であって、港湾運送事業法の指定港湾(6大港を除く。具体的には別表2の港湾)において行われる同様の業務を定めるものである。
  港湾労働法第2条第1号に規定する港湾以外の港湾における港湾運送の業務に相当する業務の範囲
 1の①掲げる港湾運送業務のうち、港湾労働法第2条第1号に規定する港湾以外の港湾における港湾運送の業務とは、次に掲げる行為に係る業務とする。
 (イ) 港湾運送事業法第2条第1項第2号から第5号までに規定する、船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役及びいかだ運送の各行為
 (ロ) (イ)の行為と本質的機能を同じくするとともに、港湾運送の波動性の影響を受ける等労働の態様が港湾運送と類似し、実際に港湾運送との間に労働者の相互の流動が見られる行為である次に掲げる行為であって、他人の需要に応じて行うもの
 a 船舶に積み込まれた貨物の位置の固定若しくは積載場所の区画又は船積貨物の荷造り若しくは荷直し
 b (イ)の行為に先行し、又は後続する船倉の清掃
 c 船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送された貨物の特定港湾の水域の沿岸からおおむね500メートル(水島港にあっては1,000メートル、鹿児島港にあっては1,500メートル)の範囲内において厚生労働大臣が指定した区域(別表2参照)内にある倉庫(船舶若しくははしけにより又はいかだに組んでする運送に係る貨物以外の貨物のみを通常取り扱うものを除く。以下「特定港湾倉庫」という。)への搬入(上屋その他の荷さばき場から搬出された貨物の搬入であって、港湾運送事業法第2条第3項に規定する港湾運送関連事業のうち同項第1号に掲げる行為に係るもの若しくは同法第3条第1号から第4号までに掲げる事業又は倉庫業法第2条第2項に規定する倉庫業のうち特定港湾倉庫に係るものを営む者(以下「特定港湾運送関係事業者」という。)以外の者が行うものを除く。)、船舶若しくははしけにより若しくはいかだに組んで運送されるべき貨物の特定港湾倉庫からの搬出(上屋その他の荷さばき場に搬入すべき貨物の搬出であって、特定港湾運送関係事業者以外の者が行うものを除く。)又は貨物の特定港湾倉庫における荷さばき。ただし、冷蔵倉庫の場合にあっては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入、冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出及び冷蔵室における荷さばきを除く。
 d 道路運送車両法第2条第1項に規定する道路運送車両若しくは鉄道(軌道を含む。)(以下「車両等」という。)により運送された貨物の特定港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場への搬入(特定港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬入を除く。)又は車両等により運送されるべき貨物の特定港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場からの搬出(特定港湾運送関係事業者以外の者が行う当該貨物の搬出を除く。)。ただし、冷蔵倉庫の場合にあっては、貨物の当該倉庫に附属する荷さばき場から冷蔵室への搬入及び冷蔵室から当該倉庫に附属する荷さばき場への搬出を除く。
   各語の定義は(1)のロ以下と同様とすることとする。
 
(3) 建設業務
  1の②の建設業務は、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務」をいうが、この業務は建設工事の現場において、直接にこれらの作業に従事するものに限られる。したがって、例えば、建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにはならないので留意すること。
   土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるものであるので留意すること。
 なお、工程管理、品質管理、安全管理等に遺漏が生ずることのないよう、請負業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、建設業法(昭和24年法律第100号)の趣旨に鑑み、適切な資格、技術力等を有する者(工事現場に常駐して専らその職務に従事する者で、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る。)を配置することとされていることから、労働者派遣の対象とはならないものとされていることに留意すること。
   林業の業務は、造林作業(①地ごしらえ、②植栽、③下刈り、④つる切り、⑤除伐、⑥枝打、⑦間伐)及び素材(丸太)生産作業(①伐採(伐倒)、②枝払い、③集材、④玉切り(造材))に分けることができるが、このうち造林作業の①地ごしらえの業務については建設現場における整地業務と作業内容が類似していること、②植栽の業務については土地の改変が行われることから、いずれも労働者派遣法の解釈としては建設業務に該当するものである。一方、造林作業の③下刈り、④つる切り、⑤除伐、⑥枝打及び⑦間伐の各業務及び素材(丸太)生産作業の各業務については、いずれも建設業務と類似する点は認められないため、建設業務に該当せず、労働者派遣事業の対象となるものである。ただし、同一の派遣労働者が同時に、造林作業のうちの①又は②の業務と、造林作業のうちの③から⑦までの業務又は素材(丸太)生産作業の各業務のうちのいずれかの業務を併せて行う場合のように、当該労働者派遣に適用除外業務が一部含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となるものである。
 また、造林作業のうちの③から⑦までの業務又は素材(丸太)生産作業の各業務を実施するに当たっては、作業場・土場の整備、集材機の架設等建設業務に該当する業務を併せて行う場合があるが、同一の派遣労働者が同時に素材(丸太)生産作業の各業務のうちのいずれかの業務と作業道・土場の整備、集材機の架設等建設業務に該当する業務を併せて行う場合のように、当該労働者派遣に適用除外業務が一部含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となるものである。
   また、派遣労働者が従事する業務の一部に「建設業務」に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣となるものである。
 
(4) 警備業務
   1の③の警備業務に相当する業務は、次に掲げる業務をいう。
 (イ) 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
 ・ 「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等」とは、警備業務を行う対象となる施設を例示的に列記しているものである。施設とは、建物その他の工作物等の物的設備のほか、事業活動の全体を指す総合的な概念であるが、ある施設が警備業務対象施設に該当するかどうかの判断は、その施設における事故の発生の警戒、防止の業務について、警備業法による規制を行う社会的必要性が一般的に認められるかどうかという観点に基づいて行われるものである。
 「事故の発生を警戒し、防止する業務」とは、施設における異常の有無を確認し、不審者を発見したときに警察へ通報したり、倒れている負傷者を救出するなどの活動を行う業務をいう。「事故」とは、施設における事業活動の正常な運行を妨げ、又は施設の正常な状態を損なうような出来事をいう。「警戒し、防止する」とは、事故の発生につながるあらゆる情報を把握する目的を持って巡回、監視等の活動を行い、事故の発生につながる情報を把握した場合には、事故の発生を防止するために必要な措置を行い、又は事故が発生した場合には被害の拡大を防止するために必要な措置を行う一連の活動を意味するが、この一部分を行う業務であっても、「警戒し、防止する業務」に該当する。
 (ロ) 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
 ・ 祭礼、催し物等によって混雑する場所での雑踏整理、道路工事等現場周辺での人や車両の誘導等を行う業務をいう。
 (ハ) 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
 ・ 現金、貴金属、美術品等の運搬に際し、その正常な運行を妨げるような事故の発生を警戒し、防止する業務をいう。「現金、貴金属、美術品等」とは、運搬中の事故が及ぼす社会的、経済的影響の大きい物品を例示的に列記しているものである。この業務としては、現金等の運搬に際し警備員を運搬車両に添乗させる等して事故の発生を警戒し、防止する業務のほか、現金等を運搬すると同時に事故の発生を警戒、防止するという形態の業務が含まれる。
 (ニ) 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
 ・ 人の身体に対する危害の発生をその身辺において警戒、防止するいわゆるボディーガード等の業務をいう。
 ロ  また、派遣労働者が従事する業務の一部にイの(イ)から(ニ)までの業務のうちいずれかの業務が含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となるものである。
  なお、警備業務に係る労働者派遣事業が行われることのないよう労働者派遣事業を行う事業主に対する指導監督の強化を図るとともに、警備業務について労働者派遣事業を行っているおそれがあることを認知した場合には、都道府県公安委員会に対し速やかに通報するなどの必要な措置を講ずること。

 

(5) その他の業務
  1の④に該当する業務は、次に掲げる業務(当該業務について紹介予定派遣をする場合、当該業務が法第40条の2第1項第3号又は第4号に該当する場合(第9の4の(3)の④又は⑤参照。以下同じ。)及び医師法(昭和23年法律第201号)第17条に規定する医業(以下単に「医業」という。)に係る派遣労働者の就業の場所がへき地(※1)にあり、又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)(へき地にあるものを除く。)である場合を除く。)である(令第2条)。
 (イ)医業(病院等、助産所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る。)
 (ロ) 歯科医師法(昭和23年法律202号)第17条に規定する歯科医業(病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る。)
 (ハ) 薬剤師法(昭和35年法律第146号)第19条に規定する調剤の業務(病院等において行われるものに限る。)
 (ニ) 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第2条、第3条、第5条、第6条及び第31条第2項に規定する業務(※3)(他の法令の規定により、保健師助産師看護師法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、診療の補助として行うことができることとされている業務(※4)を含み、病院等、助産所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるもの(訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る。)
 (ホ) 栄養士法(昭和22年法律第245号)第1条第2項に規定する業務(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導に係るものであって、病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る。)
 (ヘ) 歯科衛生士法(昭和23年法律第204号)第2条第1項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る。)
 (ト) 診療放射線技師法(昭和26年法律第226号)第2条第2項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る。)
 (チ) 歯科技工士法(昭和30年法律168号)第2条第1項に規定する業務(病院等において行われるものに限る。)
※1)へき地とは、以下の①から⑦の法律に規定された地域をその区域に含む市町村として、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令第2条第2項の市町村を定める省令(平成18年厚生労働省令第70号)により指定された地域であること。
 ① 離島振興法(昭和28年法律第72号)第2条第1項の規定により離島振興対策実施地域として指定された離島の区域
 ② 奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号)第1条に規定する奄美群島の区域
 ③ 辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(昭和37年法律第88号)第2条第1項に規定する辺地
 ④ 山村振興法(昭和40年法律第64号)第7条第1項の規定により指定された振興山村の地域
 ⑤ 小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和44年法律第79号)第2条第1項に規定する小笠原諸島の地域
 ⑥ 過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)第2条第1項に規定する過疎地域
 ⑦ 沖縄振興特別措置法(平成14年法律第14号)第3条第3号に規定する離島の地域
※2)厚生労働省令で定める場所は、次に掲げる場所とする。
 ① 都道府県が医療法(昭和23年法律第205号)第30条の12第1項の協議を経て同項の必要な施策として地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認めた病院又は診療所(以下「病院等」という。)であって、厚生労働大臣が定めるもの
 ② ①の病院等に係る患者の居宅
※3)「保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第2条、第3条、第5条、第6条及び第1条第2項に規定する業務」とは、具体的には、保健師、助産師、看護師及び准看護師の業務である保健指導、助産、療養上の世話及び診療の補助をいう。
※4)「他の法令の規定により診療の補助として行うことができることとされている業務とは、歯科衛生士、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士及び認定特定行為業務従事者の行う業務が含まれる。
  労働者派遣事業(紹介予定派遣による場合、労働者派遣に係る業務が法第40条の2第1項第3号又は第4号に該当する場合及び労働者派遣に係る業務が医業に該当する場合であって、当該業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にあり、又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)(へき地にあるものを除く。)である場合を除く。)を行うことができない医業等の医療関連業務は、イに掲げるとおり、①病院、診療所(厚生労働省令で定めるものを除く。※5)、助産所、②介護老人保健施設又は③医療を受ける者の居宅において行われるものに限られる。
 このため、①から③以外の施設等(社会福祉施設等)において行われる医業等の医療関連業務は労働者派遣事業の対象となる。
 
【 労働者派遣事業の対象となる施設の例 】
・ 養護老人ホーム ・ 特別養護老人ホーム ・ 軽費老人ホーム
・ 老人デイサービスセンター ・ 老人短期入所施設 ・ 老人介護支援センター
・ 障害者支援施設 ・ 乳児院 ・ 保育所 ・ 福祉型障害児入所施設
・ 福祉型児童発達支援センター 等
注)これらの施設は例示であって、これらの施設以外の施設であっても、上記の①~③以外の施設等において行われる医業等の医療関連業務は、労働者派遣事業の対象となる。
※5)診療所において行われる医業等の医療関連業務については、原則として労働者派遣事業(紹介予定派遣による場合、労働者派遣に係る業務が法第40条の2第1項第3号又は第4号に該当する場合及び労働者派遣に係る業務が医業に該当する場合であって、当該業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にあり、又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)(へき地にあるものを除く。)である場合を除く。)の対象とならないが、以下の診療所において行われる医業等の医療関連業務については、労働者派遣事業の対象となる。
 ① 障害者支援施設の中に設けられた診療所
 ② 救護施設の中に設けられた診療所
 ③ 更生施設の中に設けられた診療所
 ④ 労災リハビリテーション施設の中に設けられた診療所
 ⑤ 養護老人ホームの中に設けられた診療所
 ⑥ 特別養護老人ホームの中に設けられた診療所
 ⑦ 原子爆弾被爆者養護ホームの中に設けられた診療所
   なお、社会福祉施設であっても、以下の施設は医療法上の病院、診療所又は助産所である場合がほとんどであり、その場合は労働者派遣事業(紹介予定派遣による場合、労働者派遣に係る業務が法第40条の2第1項第3号又は第4号に該当する場合及び労働者派遣に係る業務が医業に該当する場合であって、当該業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にあり、又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)(へき地にあるものを除く。)である場合を除く。)の対象とならないので留意すること。
 ① 医療型障害児入所施設
 ② 医療型児童発達支援センター
 ③ 助産施設
 ④ 医療保護施設
 ニ  「医療を受ける者の居宅」において行われる医療関連業務については、一般の住居において行われるものに限らず、労働者派遣事業の対象となる社会福祉施設等において行われる往診・訪問看護についても該当するので留意すること。
 ホ  訪問入浴介護において看護師又は准看護師が行うサービス利用者の身体の状況の把握等の業務は、居宅において行われる療養上の世話及び診療の補助の業務に該当するが、上記イのとおり労働者派遣事業の対象となる。
   病院等における看護補助の業務についてはイに掲げる業務には含まれず、労働者派遣を行うことができるので留意すること。
   また、ホームヘルパー等介護の業務についてはイに掲げる業務には含まれず、労働者派遣を行うことができるので留意すること。
 なお、介護業務の労働者派遣の形態としては個人家庭に対するもの、病院、福祉施設等に対するもの、介護業務の受託業者に対するものが想定される。
   医業に係る派遣労働者の就業場所がへき地にある場合(以下「へき地の場合」という。)又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)の場合(以下「地域医療の場合」という。)に労働者派遣を行うにあたっては、派遣労働者である医師による適正な医療を確保するため、派遣後に医業を円滑に行うために必要な研修(以下「事前研修」という。)をあらかじめ受けた医師を派遣すべきであり、派遣先となる病院等が派遣労働者として医師を受け入れるに当たっては、事前研修を受けた医師を受け入れるべきであること。(※6)
 この点については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行について」(平成18年3月31日医政発第0331022号・職発第0331028号・老発第0331011号)及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令等の施行について」(平成19年12月14日医政発第1214004号・職発第1214001号)において、派遣先である病院等に対しても、派遣労働者として医師を受け入れる場合には、事前研修を受けた医師であるか確認した上で受け入れるよう求めていること。
 なお、医師を派遣する派遣元事業主が、派遣労働者に事前研修を受けさせてから派遣しているか否かの確認は、事前研修を修了した旨の証明書又はこれに準ずるものを確認することにより行うこととし、事前研修を受けさせず医師の派遣を行っていることが判明した場合には、派遣元事業主及び派遣先の双方に対し、事前研修を受けさせてから就業させるよう、指導及び助言を行うこと。
※6)事前研修
 事前研修の実施主体、内容等については、一般的には、以下のようなものが望ましいと考えられる。ただし、派遣先となる病院等の意向を十分に確認した上で、派遣される医師の個人的な属性(専門分野、派遣勤務経験等)や労働者派遣契約の内容(勤務場所、派遣期間、業務内容の特約等)等に応じた取扱いをしても差し支えないこと。
 ① 事前研修の実施主体
 へき地の場合は各都道府県のへき地医療支援機構が、地域医療の場合は各都道府県が設ける医療対策協議会の協力の下で派遣元事業主が中心となって行うものであること。
 ② 事前研修の内容
 ・ 派遣先である病院等と医療機能の連携体制を図っている医療機関や消防・警察等の関係機関との連携体制のあり方について
 ・ 派遣先である病院等に係る医療圏における医療提供体制や、救急医療・在宅医療等に関する知識及び手技等について
 ・ 派遣先である病院等の地域固有の自然環境や生活環境(気候・地形、疾病構造・風土病、ライフラインの整備状況等)について
 ③ 事前研修の期間について
 最低6時間以上であることが望ましいこと。
 ④ 事前研修を修了した旨の証明について
 当該医師が事前研修を修了したと認められる場合には、へき地の場合はへき地医療支援機構、地域医療の場合は派遣元事業主において、その旨の証明書を発行又はこれに準ずる取扱いをもって明らかにすること。
 ⑤ 事前研修を実施する必要のない者について
 事前研修の実施については、上記のとおり、派遣先となる病院等の意向を十分に確認した上で、一定の柔軟な取扱いをすることも可能であるが、へき地の場合又は地域医療の場合にそれぞれ医師不足病院等へ派遣労働者として派遣され、1年以上勤務した経験を有する者又はそれと同等以上の経験を有すると認められる者に対しては、事前研修を実施する必要はないものとして取り扱って差し支えないこと。
(6) 違反の場合の効果
  適用除外業務について労働者派遣事業を行った者は、法第59条第1号に該当し1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる場合がある。
 また、許可の取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項、法第21条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となり、イの司法処分を受けた場合は、許可の取消し、事業廃止命令(法第21条第1項)の対象となる(第13の2参照)。
  また、その指揮命令の下に派遣労働者を適用除外業務に従事させた者は、勧告(法第49条の2第1項)、公表(法第49条の2第2項)の対象となり(第13の3参照)、また、派遣労働者を適用除外業務に従事させる者へ労働者派遣を行った派遣元事業主は、労働者派遣の停止命令(法第49条第2項)の対象となる(第13の2の(5)参照)。
 
適用除外業務以外の業務に係る制限
 以下の①から⑤の業務については、次のような観点から労働者派遣事業を行ってはならず、また、労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指揮命令の下に当該労働者派遣に係る派遣労働者をこれらの業務に従事させてはならないものであるので留意すること。
 ① 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務(許可基準により、当該業務への労働者派遣を行う場合は許可しないこととしており、また当該業務への労働者派遣を行わない旨を許可条件として付すこととしている)であること(第4の1の(5)及び(9)参照)。
 ② 弁護士法(昭和24年法律第205号)、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和61年法律第66号)、司法書士法(昭和25年法律第197号)及び土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号)に基づく弁護士、外国法事務弁護士、司法書士及び土地家屋調査士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。
 ③ 公認会計士法(昭和23年法律第103号)に基づく公認会計士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。ただし、派遣元が監査法人(公認会計士を含む。)以外の者である場合であって、かつ、当該派遣の対象となる公認会計士が公認会計士法第2条第1項に規定する業務を行わない場合には、労働者派遣は可能であること。
 なお、公認会計士が、公認会計士法第2条第3項の規定により、監査証明に補助者として従事する業務は、同条第1項に規定する業務に該当するものであること。
 ④ 税理士法(昭和26年法律第237号)に基づく税理士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。ただし、派遣元が税理士及び税理士法人以外の者である場合であって、かつ、当該派遣の対象となる税理士が派遣先の税理士又は税理士法人の補助者(同法第2条第3項に規定する補助者をいう。)として同条第1項又は第2項に規定する業務を行う場合には、税理士の労働者派遣は可能であること。なお、派遣される税理士は、派遣先の補助税理士として登録しなければならないとされていること。
 ⑤ 弁理士法(平成12年法律第49号)に基づく弁理士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。ただし、弁理士法第4条第1項及び第3項に規定する業務のうち同法第75条で規定する業務以外の業務となる、相談に応ずること(いわゆるコンサルティング)に係るものに関し、特許業務法人以外を派遣元とする場合には、労働者派遣は可能であること。
 ※ なお、当該弁理士の労働者派遣については、その業務が適正に実施されるよう、特許庁長官より職業安定局長あてに参考のとおり留意事項が示されているので留意されたい。
 ⑥ 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)に基づく社会保険労務士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。ただし、社会保険労務士法第2条に規定する業務に関し、社会保険労務士法人が派遣元となり、社会保険労務士法人の使用人である社会保険労務士を労働者派遣の対象とし、かつ、他の開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人(社会保険労務士法施行規則(昭和43年厚生省・労働省令第1号)第17条の3第2号イ~ニのいずれかに該当するものを除く。)を派遣先とする場合には、社会保険労務士の労働者派遣は可能であること。
 ⑦ 行政書士法(昭和26年法律第4号)に基づく行政書士の業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。ただし、行政書士法第1条の2及び第1条の3に規定する業務に関し、行政書士又は行政書士法人が派遣元となり、他の行政書士又は行政書士法人を派遣先とする場合には、行政書士の労働者派遣は可能であること。
 ⑧ 建築士法(昭和25年法律第202号)第24条第1項に規定する建築士事務所の管理建築士については、同法により「専任」でなければならないとされていることから、労働者派遣の対象とはならないものであること。
 
派遣禁止業務のまとめ
 業務取扱要領には、派遣が禁止される具体的かつ詳細な事業・業務の記述がされています。しかし、非常に長文であり、一般に派遣禁止業務等を理解するには若干細かすぎますので、以下でポイントをまとめます。
 
派遣が禁止される業務等のまとめ
1.港湾運送業務         法第4条第1項第1号
 船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役及びいかだ運送の各行為及び船舶に積み込まれた貨物の位置の固定若しくは積載場所の区画又は船積貨物の荷造り若しくは荷直し、船倉の清掃、港湾区域にある倉庫への搬入、貨物の港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場への搬入
2.建設業務           法第4条第1項第2号
 建設業務は、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務」をいう(建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにはならない)
 林業の業務は、造林作業の①地ごしらえの業務については建設現場における整地業務と作業内容が類似していること、②植栽の業務については土地の改変が行われることから、いずれも労働者派遣法の解釈としては建設業務に該当する
 当該労働者派遣に適用除外業務が一部含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となる
 また、派遣労働者が従事する業務の一部に「建設業務」に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣となる
3.警備業務           法第4条第1項第3号
 警備業務対象施設における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務(事務所、住宅、駐車場等)
 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
 また、派遣労働者が従事する業務の一部に警備業務が含まれているときは、全体として違法な労働者派遣となる
4.政令で定める業務       法第4条第1項第3号
 4-1 医業           施行令第2条第1項第1号
  病院等、助産所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る
 4-2 歯科医師業        施行令第2条第1項第2号
  病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る
 4-3 薬剤師の業務       施行令第2条第1項第3号
  病院等において行われるものに限る
   4-4 保健師・助産師・看護師・準看護師の業務   施行令第2条第1項第4号
  病院等、助産所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるもの(訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る
  この場合、診療の補助として行うことができることとされている業務を含み、病院等、助産所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるもの(訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る
  また、診療の補助として行う、、歯科衛生士、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士及び認定特定行為業務従事者の行う業務を含む
 4-5 栄養士の業務       施行令第2条第1項第5号
  傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導に係るものであって、病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る
 4-6 歯科衛生士の業務     施行令第2条第1項第6号
  病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る
 4-7 放射線技師の業務     施行令第2条第1項第7号
  病院等、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われるものに限る
 4-8 歯科技工士の業務     施行令第2条第1項第8号
  病院等において行われるものに限る
 
 ※病院内等の業務であっても介護業務(介護福祉士他)の業務は、労働者派遣業務が可能であることに留意が必要です。
 
例外規定
派遣労働者の就業の場所がへき地にあり、又は地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所(※2)(へき地にあるものを除く。)である場合を除く
 ① 僻地派遣の禁止の除外(病院、診療所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅が僻地にある場合)
  僻地とは、離島振興対策実施地域、奄美群島の区域、振興山村の地域、小笠原諸島の地域、過疎地域、沖縄振興特別措置法に規定する離島の地域のこと。
 ② 厚生労働省で定める場所(病院、診療所、介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅が次の場所にある場合)
   次の施設等への看護師等の派遣は禁止される。
  a 医療型障害児入所施設
   b 医療型児童発達支援センター
     c 助産施設
     d医療保護施設
 また、医療関連業務については、一般の住居において行われるものに限らず、労働者派遣事業の対象となる社会福祉施設等において行われる往診・訪問看護についても該当するため労働者派遣が禁止される。


他法等により労働者派遣が禁止されると解される業務等

 以下の業務については、労働者派遣が出来ないとされています。

 a 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務(派遣事業の許可基準に抵触)

  b 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士及び土地家屋調査士の業務   ※当該業務については、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行う(当該業務については指揮命令を受けることがない)こととされているため

  c 公認会計士の業務  ※ただし、派遣元が監査法人(公認会計士を含む。)以外の者である場合であって、かつ、当該派遣の対象となる公認会計士が公認会計士法第2条第1項に規定する業務を行わない場合には、労働者派遣が可能

  d  税理士の業務   ※ただし、派遣元が税理士及び税理士法人以外の者である場合であって、かつ、当該派遣の対象となる税理士が派遣先の税理士又は税理士法人の補助者(同法第2条第3項に規定する補助者をいう。)として同条第1項又は第2項に規定する業務を行う場合には、税理士の労働者派遣が可能。 なお、派遣される税理士は、派遣先の補助税理士として登録しなければならない 

 e  弁理士の業務   ※相談に応ずること(わゆるコンサルティング)に係るものに関し、特許業務法人以外を派遣元とする場合には、労働者派遣が可能
 
 f  社会保険労務士の業務   ※ただし、社会保険労務士法人が派遣元となり、社会保険労務士法人の使用人である社会保険労務士を労働者派遣の対象とし、かつ、他の開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人を派遣先とする場合には、社会保険労務士の労働者派遣が可能
 
 g  行政書士の業務   ※ただし、行政書士法第1条の2及び第1条の3に規定する業務に関し、行政書士又は行政書士法人が派遣元となり、他の行政書士又は行政書士法人を派遣先とする場合には、行政書士の労働者派遣が可能
 
 h  建築士事務所の管理建築士
 
その他
下記①~②に該当する場合は、医療関係業務に労働者派遣を行うことが認められています。 
 ① 紹介予定派遣をする場合
 ② 当該業務が産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した労働者の業務である場合
※詳細は、関係条文のところで考察します。
 
 
 
 
以上で労働者派遣法第4条を終了します。
なお、紹介予定派遣については、後の関係条文の際に記述します。
 
 
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労働者派遣法第1条、第2条、第3条

2015年06月12日 12:35

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

 

第1条(目的

 

 

 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

 

第2条(用語の意義)

 

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

二 派遣労働者 事業主が雇用する労働者であつて、労働者派遣の対象となるものをいう。

三 労働者派遣事業 労働者派遣を業として行うことをいう。

四 一般労働者派遣事業 特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいう。

五 特定労働者派遣事業 その事業の派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいう。

六 紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「一般派遣元事業主」という。)又は第十六条第一項の規定により届出書を提出した者(以下「特定派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(以下この号において「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。

 

第3条(船員に対する適用除外)

 

 この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。

 

 

そもそも労働者派遣事業とは何か。

 労働者派遣法は、附則を除けばわずか62条までの法律ですが、昭和60年の成立以後何度もの改正を経ており、また経過措置も数多く存在する法律です。厚生労働省では、このような難解な労働者派遣法の正しい周知のために、401ページからなる「労働者派遣事業関係業務取扱要領(以後は取扱要領と言います。)」を作成し公表しています。今回の労働者派遣法においては専らこの取扱要領を資料として用いたいと思います。

 労働者派遣事業とは何かについては次項目に譲るとして、ここでは派遣労働者等の現状及び派遣労働の問題点(出典:厚生労働省作成資料等)を考察します。

 

1.派遣労働者の数及び全被用者に占める割合

 平成26年のデータ(総務省労働力調査)によれば、派遣労働者の数は約119万人で全被用者に占める割合は、約6.1%となっています。

2.派遣労働者の就業者数の時系列推移

 厚生労働省作成の労働者派遣事業報告によれば、派遣労働者の年度単位の数は年々減少傾向にあります。

  H20年 202万人  H21年 157万人  H22年 145万人  H23年 137万人

  H24年 135万人  H25年 127万人  H26年 126万人

  ※各年度の派遣労働者数は、特定及び一般の派遣労働者の合計人数

3.派遣労働者の平均賃金水準

 平成24年度の賃金構造基本統計調査等によれば、正社員等との一時間当たりの平均賃金の比較は次のようになっています。

   正社員       1,921円/1時間当たり

   派遣労働者     1,351円/1時間当たり

          契約社員等     1,198円/1時間当たり

          パート労働者    1,026円/1時間当たり

 上記の調査結果からすれば、パートタイム雇用で就労するよりも、派遣労働のほうが一時間当たりの賃金が高い実情となっています。

4.労働者派遣事業の課題

 労働者派遣事業は、昭和60年の本法の成立によって可能になった事業です。その意味するところは、本来は労働力の提供を受ける事業主(派遣労働で言えば、派遣先事業主)が労務の提供を行う労働者を直接雇用することが望ましいと言う点にあります。

 事業主は従来より、雇用調整の手立てとして非正規労働者(派遣労働者を含む。)としての有期労働契約の労働者を多数雇用し、業務の量に応じて新規採用と労働契約の更新の打ち切りを併用することによって、労働力の受給調整を行ってきたものと考えられます。そして、業種によっては日常的に労働者を募集・採用し、離職率も非常に高い状況が過去には見られました。先の労働契約法の改正により、労働者派遣事業の改正の如何にかかわらず、派遣元事業主は運用の変更を迫られることとなりますから、労働者派遣事業者にとってはビジネスモデルの再構築を迫られることとなります。

 また、労働者派遣事業を行うについては、詳細な基準が設けられており、実際に労働者派遣事業を行う事業主がその全てに適合することが困難になっている実情もあります。

5.今般(平成27年通常国会)の法改正案提出に際しての改正点のポイント

・全ての労働者派遣事業を許可制に変更する

・派遣期限

  <26業務か否かに関わりなく適用される共通ルールへ> 

 ◎個人単位の期間制限 ・派遣先の同一の組織単位における上限3年 ・派遣元は上限に達する派遣労働者に雇用安定措置(派遣先 への直接雇用の依頼等)を講ずる 

 ◎派遣先単位の期間制限 ・同一の事業所における継続した派遣労働者の受入れの上限 を原則3年 ・過半数組合等への意見聴取により延長可 ・過半数組合等が反対意見を表明した場合に対応方針を説明 する等適正な意見聴取の手続き ※無期雇用の派遣労働者等は上記2つの期間制限の例外とする 

・均等待遇の推進

 ◎ 現行の規定に加え、派遣元に対し、派遣労働者の均衡待遇 の確保の際に考慮した内容の説明義務

 ◎現行の規定に加え、派遣先に対し、同種の業務に従事する 派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生 施設の利用に関する配慮義務

・派遣労働者のキャリアアップ(新設) 

 ◎派遣元に対し、計画的な教育訓練やキャリア・コンサルティ ングを義務付け(実施内容を厚労省に毎年報告)  

 ◎ 許可要件に「キャリア支援制度を有する」を追加 

 ◎派遣先に派遣労働者の能力に関する情報提供の努力義務 

 

労働者派遣事業、派遣労働者とは何か(取扱要領中心)

(1) 「労働者派遣」の意義
 労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものをいう(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「法」という。)第2条第1号)。
 したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、①派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は派遣元から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令するというものである。
(2) 「労働者」及び「雇用関係」の意義
 「労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から賃金を支払われる者をいう。
 「雇用関係」とは、民法(明治29 年法律第89 号)第623 条の規定による雇用関係のみではなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に従属的地位において労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。労働者派遣に該当するためには、派遣元との間において当該雇用関係が継続していることが必要である。
(3) 「指揮命令」の意義
  労働者派遣は、労働者を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」であり、この有無により、労働者派遣を業として行う労働者派遣事業(3参照)と請負により行われる事業とが区分される。
 「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる」ものではないとして、労働者派遣事業に該当せず、請負により行われる事業に該当すると判断されるためには、
 第1に、当該労働者の労働力を当該事業主が自ら直接利用すること、すなわち、当該労働者の作業の遂行について、当該事業主が直接指揮監督のすべてを行うとともに、
 第2に、当該業務を自己の業務として相手方から独立して処理すること、すなわち、当該業務が当該事業主の業務として、その有する能力に基づき自己の責任の下に処理されることが必要であるが、具体的には、次のような基準に基づき判断を行う(昭和61 年労働省告示第37 号)。
 なお、労働者派遣を受け、当該派遣労働者を用いて、請負により事業を行うことが可能であるのは当然であるので留意すること。
 

 ※労働者派遣事業における雇用・指揮命令・派遣契約等は次のようになっています。

労働者←雇用契約(賃金の支払、使用者としての一部の措置や義務)→派遣元事業主

労働者←指揮命令(使用者としての一部の義務等)⇔労務の提供  →派遣先事業主

派遣元事業主(派遣会社)←労働者派遣契約(契約料の支払⇔労働者の受け入れ)→派遣先事業主

  ※労働者派遣禁止事業があります(建設業、港湾運送業、警備業、病院の一部の業務など)。

 

 まとめますと、労働者派遣事業とは、労働者派遣事業の許可等を受けた事業主(派遣元事業主)が自己の雇用する労働者を派遣契約に基づいて他の事業主(派遣先)に派遣し、その派遣先事業主の指揮命令の下でその労働者に労務の提供を行わせる事業を言います。※派遣元事業主は、労働者派遣契約に基づき自己の雇用する労働者に対する指揮命令権を派遣先事業主に委任しています。

 

労働者供給事業と労働者派遣事業

・職業安定法第44条

 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

 職業安定法でいう「労働者供給事業」

・労働者供給事業の意義 

(1) 労働者供給 

 イ  労働者供給の意義

  労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるこ とをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60 年法律第88号)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」をいう(職 業安定法(以下「法」という。)第4条第6項)。 したがって、労働者供給における供給元、供給先及び供給労働者の三者の関係は、次のいずれ かとなる。 

 (イ)① 供給元と供給される労働者との間に支配従属関係(雇用関係を除く。)があり、

     ② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に

      労働者 を供給し、 

     ③ 供給先は供給契約に基づき労働者を自らの指揮命令(雇用関係を含む。)の下に

      労働に 従事させる。   

 (ロ)① 供給元と供給される労働者との間に雇用関係があり

     ② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に

     労働者 を供給し、 

     ③ 供給先は供給契約に基づき労働者を雇用関係の下に労働に従事させる。

   労働者供給の意義における「労働者」及び「供給契約」の意義 

 (イ)「労働者」とは、対価を得て、一定の労働条件の下に雇用主との間に労働力を提供する関係 (使用従属関係)に立つ者、又は立とうとする者をいう。 

 (ロ)「供給契約」とは、契約の形式をいうものではなく、実体によって判断される。すなわち、 民法上の請負契約、さらに、具体的には商法の運送契約等の形式をもって行われる場合も含む ものであって、イの(イ)又は (ロ)の関係を生じさせる契約を総称するものである。この場 合の契約は、当事者に合意があれば足り、文書によると口頭によるとを問わない。

 ※まとめ

  労働者供給事業とは、次のA,Bをいいます。

  A 雇用関係が無いが、事実上支配関係がある労働者を供給先に提供し、雇用関係を

         結ばせて就労させるもの

  B 雇用関係がある自己の労働者を供給先に提供し、雇用関係を結ばせて就労させるもの

 

また、(厚生労働省作成文書を引用)

① 供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合のうち、供給 元と労働者との間に雇用関係がないものについては、すべて労働者供給に該当する。 当該判断は、具体的には、労働保険・社会保険の適用、給与所得の確認等に基づき行う。

 ② ①の場合とは異なり、供給元と労働者との間に雇用契約関係がある場合であっても供給先 に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、労働者派遣には該当せず、労 働者供給となる(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 (以下「労働者派遣法」という。)第2条第1項)。 

 ただし、供給元と労働者との間に雇用契約関係があり、当該雇用関係の下に、他人の指揮 命令を受けて労働に従事させる場合において、労働者が自由な意思に基づいて結果として供 給先と直接雇用契約を締結するようなケースについては、前もって供給元が供給先に労働者 を雇用させる旨の契約があった訳ではないため、労働者が供給先に雇用されるまでの間は労 働者派遣に該当することとなり、労働者派遣法(第3章第4節の規定を除く。)による規制 の対象となる。 

③ ②における「供給先に労働者を雇用させることを約して行われるもの」の判断については、 契約書等において供給元、供給先間で労働者を供給先に雇用させる旨の意思の合致が客観的 に認められる場合はその旨判断するが、それ以外の場合は、次のような基準に従い判断する ものとすること。 

(a)労働者派遣が法の定める枠組みに従って行われる場合は、原則として、派遣先に労働者 を雇用させることを約して行われるものとは判断しないこと。 

(b)派遣元が企業としての人的物的な実体(独立性)を有しない個人又はグループであり、 派遣元自体も当該派遣元の労働者とともに派遣先の組織に組み込まれてその一部と化し ている場合、派遣元は企業としての人的物的な実体を有するが、当該労働者派遣の実態は、 派遣先の労働者募集賃金支払の代行となっている場合その他これに準ずるような場合に ついては、例外的に派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものと判断するこ とがあること。

 

 ※自己の雇用しない労働者を供給する場合には、すべて労働者供給事業に該当すること。

  また、自己の雇用する労働者を提供する場合であっても、供給先に労働者を雇用させる意思があるものは労働者供給事業にあたる。ただし、自己の雇用する労働者を供給後にその労働者の自由な意思により供給先に雇用される場合には、労働者派遣事業にあたる。

 ※上記は労働者派遣を職業安定法の44条から除外するためのロジックですが、そもそも同法の第45条を改正してその適用とすれば、法理上すっきりしていると考えます。

参考:職業安定法第45条

 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

 

請負事業と労働者派遣事業

・労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

  (昭和六十一年四月十七日)(労働省告示第三十七号)

 

第2条 抜粋 以下に該当すれば「労働者派遣事業」に該当しない、即ち請負事業に該当するとされています。

 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。

イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

() 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

() 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。

ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

() 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

() 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。

(1) 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。

   () 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。 

 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。

イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

ハ 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

() 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。

() 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

 

※請負事業のポイント(労働者派遣に該当しない判断基準)は、次の通りです。

 ① 労働者に対しての指揮命令を自ら行い、業務発注元(施主等)が行っていないこと。

 ② 労働者の業務に関する評価・管理を自ら行うこと。

 ③ 労働者の労働時間管理等を自ら行うこと。

 ④ 労働時間延長の指示や休日の管理等(いつを休日にするかなど)を自ら行うこと。

 ⑤ 労働者の服務規律の定め管理等を自ら行うこと。

 ⑥ 労働者の配置決定等の決定を自ら行うこと。

 ⑦ 業務についての資金調達を自ら行うこと。

 ⑧ 法令に基づく事業主としての責任を負っていること。

 ⑨ 資材・機器・設備等を自ら調達すること。

 ⑩ 企画・知識・専門的技術・経験に基づいて業務を行うこと。

 

定義 労働者派遣法第2条関係

・派遣労働者

(1) 「派遣労働者」の意義
 派遣労働者とは、「事業主が雇用する労働者であって、労働者派遣の対象となるもの」をいう(法第2条第2号)。
労働者派遣事業
(1) 「労働者派遣事業」の意義
 労働者派遣事業とは、「労働者派遣を業として行うこと」をいう(法第2条第3号)。
(2) 「業として行う」の意義
 イ 「業として行う」とは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、1回限りの行為であったとしても反復継続の意思をもって行えば事業性があるが、形式的に繰り返し行われていたとしても、全て受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思をもって行われていなければ、事業性は認められない。
   具体的には、一定の目的と計画に基づいて経営する経済的活動として行われるか否かによって判断され、必ずしも営利を目的とする場合に限らず(例えば、社会事業団体や宗教団体が行う継続的活動も「事業」に該当することがある。)、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問わない。
   しかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業としての独立性があるか否かが反復継続の意思の判定の上で重要な要素となる。例えば、①労働者の派遣を行う旨宣伝、広告をしている場合、②店を構え、労働者派遣を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として、事業性ありと判断されるものであること。
一般と特定の二種類の労働者派遣事業
一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業
   労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の二者に分けられる。「一般労働者派遣事業」は、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業をいい(法第2条第4号) 、「特定労働者派遣事業」は、その事業の派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業をいう(法第2条第5号)。
  一般労働者派遣事業に該当するか、特定労働者派遣事業に該当するかについては、事業所ごとに判断されることとなるため、一つの事業所において一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業とが共存することはなく、常時雇用される労働者以外の派遣労働者が存在する場合は、一般労働者派遣事業を行う事業所となる(「事業所」の意義については第4の1の(2)参照)。
  「常時雇用される」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいう。具体的には、次のいずれかに該当する場合に限り「常時雇用される」に該当する。
 ① 期間の定めなく雇用されている者
 ② 一定の期間(例えば、2か月、6か月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
 ③ 日日雇用される者であって、雇用契約が日日更新されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、②の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
 なお、雇用保険の被保険者とは判断されないパートタイム労働者であっても、①から③までのいずれかに該当すれば「常時雇用される」と判断するものであるので留意すること。ニ派遣労働を希望する労働者を登録しておき、労働者派遣をするに際し、当該登録されている者の中から期間の定めのある労働者派遣をするいわゆる登録型の労働者派遣事業は、一般労働者派遣事業の典型的な形態であり、当該登録型の事業が当該事業所において行われる事業に含まれている場合は、一般労働者派遣事業である。
  イのとおり、「常時雇用される」労働者以外の者が派遣労働者(業として行われる労働者派遣の対象となるものに限る。)の中に存在する場合は、一般労働者派遣事業となる。しかしながら、通常は常時雇用される労働者を労働者派遣することを業として行っている者については、臨時的な理由により、たまたま一時的に常時雇用される労働者以外の労働者を労働者派遣する場合であっても、今後とも、常時雇用される労働者以外の者を、反復して労働者派遣する意図が客観的に認められないときは特定労働者派遣事業としての取扱いを変える必要はないものであるので留意すること。
紹介予定派遣
(1)  紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、法第5条第1項の許可を受けた一般派遣元事業主又は法第16 条第1項の規定により届出書を提出した特定派遣元事業主が、労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び派遣先に対して、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含む(法第2条第6号)。
(2)  紹介予定派遣については、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に係る規定を適用しない(法第26 条第7項)。
(3)  紹介予定派遣については、円滑かつ的確な労働力需給の結合を図るための手段として設けられたものであり、具体的には次の①から③までの措置を行うことができるものである。
 ①  派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等
 ②  派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示
 ③  派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定
(4)  紹介予定派遣を行う場合には、派遣元事業主及び派遣先は次の措置等を講じなければならない。
 ①  労働者派遣契約に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること(第7の2の(1)の⑨参照)
 ②  紹介予定派遣を受け入れる期間の遵守(第8の21 の(1)及び第9の14 の(1)参照)
 ③  派遣先が職業紹介を希望しない場合又は派遣労働者を雇用しない場合の理由の明示
   (第8の21 の(2)及び第9の14 の(2)参照)
 ④  派遣労働者の特定に当たっての年齢、性別等による差別防止に係る措置
   (第9の14 の(3)参照)
 ⑤  派遣労働者であることの明示等(第8の7の参照)
 ⑥  就業条件等の明示(第8の9の(3)のイの⑨参照)
 ⑦  派遣元管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること
   (第8の17 の(1)のホの⑨参照)
 ⑧  派遣先管理台帳に当該紹介予定派遣に関する事項を記載すること
   (第9の9の(2)のハの⑩参照)
 
適用除外 法第3条関係
(1) 法の適用範囲の原則
 法は、(3)によりその適用を除外される「船員」を除き、公務員も含めたあらゆる労働者、あらゆる事業に適用される。
(2) 公務員等に対する法の適用
   国家公務員、地方公務員が派遣労働者となる場合にも、法の規制が適用される(国家公務員法(昭和22 年法律第120 号)附則第16 条、地方公務員法(昭和25 年法律第261 号)第58 条)。
 そのため、法第3章第4節の規定だけではなく、当該規定により適用される労働基準法等の規定も適用されることとなる。特定独立行政法人及び国有林野事業を行う国の経営する企業に勤務する職員や水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業等の地方公営企業及び特定地方独立行政法人の職員についても同様である(特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23 年法律第257 号)第37 条、地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27 年法律第289 号)第17 条、地方公営企業法(昭和27 年法律第292 号)第39 条、地方独立行政法人法(平成15 年法律第118 号)第53 条)
  国、地方公共団体が派遣先である場合についても、法(第3章第4節の規定及び当該規定により適用される労働基準法等の規定を含む。)は全面的に適用される。
(3) 船員に対する法の適用除外
   船員職業安定法(昭和23 年法律第130 号)第6条第1項に規定する船員については、法は適用されない(法第3条)。
  船員職業安定法第6条第1項に規定する船員とは船員法による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。
  (イ)  船員法(昭和22 年法律第100 号)による船員とは「日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶(船員法施行規則(昭和22 年運輸省令第23 号)第1条)に乗り組む船長及び海員並びに予備船員」のことをいう(船員法第1条第1項)。
  (ロ)  「船舶」には、①総トン数5トン未満の船舶、②湖、川又は港のみを航行する船舶、③政令の定める総トン数30 トン未満の漁船、④船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和26 年法律第149 号)第2条第4項に規定する小型船舶であって、スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他のその航海の目的、期間及び態様、運航体制等からみて、船員労働の特殊性が認められない船舶として国土交通省令で定めるものは含まれない(船員法第1条第2項)。
  (ハ)  「海員」とは、「船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者」をいう(船員法第2条第1項)。したがって、船内における酒場、理髪店、洗たく屋、売店、事務室内で働く労働者も、船舶内で使用される乗組員に該当する以上、直接に運航業務に従事しなくても、この海員に含まれる。
  (ニ)  「予備船員」とは、「船舶に乗り組むため雇用されている者で船内で使用されていないもの」をいう(船員法第2条第2項)。
  船員について法が適用除外されるとは、船員である者を派遣労働者として船員の業務以外の業務に就かせること及び船員以外の者を船員の業務に就かせることの双方について法の規定が適用されないという意味である。例えば船員以外の者が派遣先であるロの(ロ)の「船舶」内で就業する限りにおいて(ロの(イ)に該当する必要がある。)、派遣労働者は船員に該当することとなり、法の適用は受けない。
  なお、船員に係る労働者派遣事業に相当する事業については、船員職業安定法第55 条第1項により、国土交通大臣の許可を受けた者は、船員派遣事業を行うことができることとされている。
 「船員派遣」とは、船舶所有者が、自己の常時雇用する船員を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために船員として労務に従事させることをいい、当該他人に対し当該船員を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいう(船員職業安定法第6条第1項)。その旨に留意するとともに、必要な場合には、地方運輸局等運輸関係行政機関と相互に連携を保ちつつ、的確な行政運営を行うこと。
 
 
 
以上で労働者派遣法第1条・第2条・第3条を終了します。
 
 
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高齢者労働法第54条、第55条、第56条、第57条

2015年06月11日 14:39

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第54条(権限の委任

 この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一

部を都道府県労働局長に委任することができる。

2 前項の規定により都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定

るところにより、公共職業安定所長に委任することができる。

 

則第34条(権限の委任)

 法第五十四条第一項の規定により、次に掲げる厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任する。ただし、厚生労働大臣が第一号から第三号まで及び第七号に掲げる権限を自ら行うことを妨げない。

一 法第十条に規定する厚生労働大臣の権限

二 法第十七条の二に規定する厚生労働大臣の権限

三 法第十八条の二第二項に規定する厚生労働大臣の権限

四 法第四十二条第二項(法第四十五条において準用する場合を含む。)に規定する厚生労働大臣の権限

五 法第四十二条第五項(法第四十五条において準用する場合を含む。)に規定する厚生労働大臣の権限

六 法第四十二条第六項において読み替えて適用する労働者派遣法第五条第二項並びに法第四十二条第六項において適用する労働者派遣法第十一条第一項、第十三条第一項及び第二十三条第一項に規定する厚生労働大臣の権限

七 法第五十二条第二項に規定する厚生労働大臣の権限

2 法第五十四条第二項の規定により、前項第一号から第三号まで及び第七号に掲げる権限は、管轄公共職業安定所の長に委任する。ただし、都道府県労働局長が前項第一号から第三号までに掲げる権限を自ら行うことを妨げない。

 

第55条 

 第四十九条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、五十万円以下

の罰金に処する。

 

第56条

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人

の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対

しても、同条の刑を科する。

 

第57条

 第十六条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(法人であるときは、その代表者)は、十万円以下の過料に処する。

 

厚生労働大臣の権限の委任

 法第54条に規定により本法による一定の厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長に委任(一部の権限は公共職業安定所長に再委任)されるとしています。ただし、則第34条により管轄公共職業安定所長に再委任した権限(則第34条第1項第1~3号及び第7号に定める権限)を厚生労働大臣又は労働局長が自らその権限を行使してもよいとされています。

則第34条第1項に規定される厚生労働大臣の権限の委任

・第1号(法第10条の権限)厚生労働大臣、労働局長、公共職業安定所長に再委任

 定年の引き上げ・廃止又は継続雇用制度の導入を行っていない事業主に対する助言指導等、勧告・企業名の公表 

・第2号(法第17条の2の権限)厚生労働大臣、労働局長、公共職業安定所長に再委任

 離職労働者が希望しているにも拘わらず、求職活動支援書を作成しない事業主に対する助言・指導及び勧告

・第3号(法第18条の2第2項の権限)厚生労働大臣、労働局長、公共職業安定所長に再委任

 求人年齢制限の理由を付さない事業主に対する報告を求めること及び助言・指導・勧告

・第4号(法第42条第2項他の権限)

 シルバー人材センターが行う有料職業紹介事業に関する届出に係る権限

・第5号(法第42条第5項他の権限)

 シルバー人材センターが行う労働者派遣事業に関する届出に係る権限

・第6号(法第42条第6項に規定される労働者派遣事業関連の権限)

 読み替え規定による労働者派遣法第十一条第一項、第十三条第一項及び第二十三条第一項に規定する権限

・第7号(法第52条第2項に規定される権限)厚生労働大臣、労働局長、公共職業安所定長に再委任

 必要に応じて事業主に報告を求める権限

第55条 罰則規定(法第49条第3項違反)

 機構が行う給付金の支給に関連し、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、再就職の援助等高年齢者等の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主又はその事業主の団体に対して、必要な報告を求めた際、報告をしなかった場合若しくは虚偽の報告を行った場合には、50万円以下の罰金に処せられる旨規定されています。

 

第56条 両罰則規定

 第55条違反については、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者等の自然人及び法人の双方を罰する旨規定されています。

第57条 第16条第1項違反に対する過料

 多数離職届けの未提出の再には、10万円以下の過料に処される旨規定されています。

 参考:科料~1万円未満の財産刑(刑事罰)、過料~行政罰である財産刑(刑事罰ではない)

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の総まとめ

 高齢者雇用法は、以下の点について規定しています。

1.定年の最低年齢の定め

  60歳未満の定年年齢を定めた就業規則又は労働契約等の規定は、その定年の規定は無効となります。

2.65歳までの雇用を促す規定

  事業主は、65歳までの定年年齢の引き上げ、60歳以降の継続雇用制度の導入、定年制度の廃止のいずれかの措置を講じなければなりません。また、継続雇用制度においては希望者全員を原則的に継続して雇用しなければなりません。

3.事業主への相談・指導・勧告・企業名の公表

 年金制度の改正により、定年後の60歳から65歳までの国民の生活を設計する必要性から、企業に対しても本質的な人事制度の変更を求める必要があり、その観点から事業主に対し定年前後の労働者に対しいくつかの措置を講じるように求め、併せて労働局を中心として事業主に対する相談・指導等を行うこととしています。

4.高年齢求職者に対する就職援助等

 ハローワークが中心となって、45歳以降の労働者、特に60歳以降の労働者に対し、就職の支援等を行うこととしています。

5.高齢者雇用に関する調査研究の実施

 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」及び「高齢・障害・求職者雇用支援機構」などの関連機関を中心として、厚生労働省においても高年齢者等の雇用状況他について、調査研究をおこなうこととされています。

6.シルバー人材センター等の設置

 全国のシルバー人材センターにおいて、定年退職後の求職者等に対し、個別の仕事の斡旋、有料職業紹介事業の実施、労働者派遣事業の実施等を行うことといしています。

7.多数離職届その他の報告義務を規定

 雇用状況の安定及び離職者の早期の就職の実現、高年齢者等の雇用状況の把握のため、事業主に対し所定の報告書を求めることとしています。

8.給付金等の支給

 高年齢者等の就職の促進等のため、各種の給付金等を支給することとしています。

 

 

以上で、高齢者雇用法第54条・第55条・第56条・第57条を終了します。なお、附則については割愛します。

 

 

 

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高齢者雇用法第52条、第53条、第53条の2

2015年06月11日 11:39

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第52条(雇用状況の報告

 事業主は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の毎年一回の報告のほか、この法律を施行するため

に必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業主に対

し、同項に規定する状況について必要な事項の報告を求めることができる。

 

則第33条(高年齢者の雇用状況の報告)

 事業主は、毎年、六月一日現在における定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況を翌月十五日までに、高年齢者雇用状況報告書(様式第二号)により、その主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規則第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公共職業安定所とする。以下「管轄公共職業安定所」という。)の長を経由して厚生労働大臣に報告しなければならない。

2 厚生労働大臣は、法第五十二条第二項の規定により、事業主から同条第一

項に規定する状況について必要な事項の報告を求めるときは、当該報告すべき事項

を書面により通知するものとする。

 

参考:厚生労働省組織規則第七百九十二条(公共職業安定所及び公共職業案例所の出張所の名称、位置及び管轄区域)公共職業安定所(分庁舎を含む。以下同じ)の名称、位置及び管轄区域並びに公共職業安定所の出張所の名称及び位置は、別表第五のとおりとする。       ※別表第五は略

2 公共職業安定所の出張所の管轄区域は、別に厚生労働大臣が定める。

 

第53条(指定の条件)

 

 この法律の規定による指定には、条件を付け、及びこれを変更することができる。

2 前項の条件は、当該指定に係る事項の確実な実施を図るために必要な最小限度のものに限り、かつ、当該指定を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。

 

第53条の2(経過措置)

 

 この法律の規定に基づき政令又は厚生労働省令を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ政令又は厚生労働省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 

高齢者雇用状況報告書 様式等

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第52条第1項に基づき、事業主は毎年6月1日現在における定年及び継続雇用制度の状況、その他高年齢者の雇用に関する状況をハローワークを経由して厚生労働大臣に提出することが義務付けられています。

・提出先   事業主の主たる事業所の所在地を管轄する公共職業安定所

・提出時期  毎年6月1日の状況を6月1日~7月15日の間に提出

・様式第2号  file:///C:/Users/USER/Downloads/a495000001244001.pdf からダウンロードして下さい。

※なお、報告の単位は事業所ごとではなく、企業(事業主)単位となっています。

 

高齢者雇用法による指定 第53条関係

第41条 市町村シルバー人材センターの指定(指定者:都道府県知事)

第44条 都道府県シルバー人材センター連合の指定(   同上   )

第46条 全国シルバー人材センター事業協会(指定者:厚生労働大臣)

 

経過措置

 法制度においては、激変緩和措置として通常経過措置を設けます。

経過措置例:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律附則

 (国、地方公共団体等における中高年齢者の雇用に関する暫定措置)

 第三条 国及び地方公共団体並びに法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人又は特別の法律により地方公共団体が設立者となつて設立された法人(これらの法人のうち、その資本金の全部若しくは大部分が国若しくは地方公共団体からの出資による法人又はその事業の運営のために必要な経費の主たる財源を国若しくは地方公共団体からの交付金若しくは補助金によつて得ている法人であつて、政令で定めるものに限る。)が行う第二条第二項第一号に規定する中高年齢者の雇用については、当分の間、なお身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律(昭和五十一年法律第三十六号)第二条の規定による改正前の第七条から第九条までの規定の例による。この場合において、同法第二条の規定による改正前の第七条第一項及び第九条中「労働大臣」とあるのは、「厚生労働大臣」とする。

経過措置例の2:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則附則

 (第七条の規定の適用に関する経過措置)

 2 この省令の施行の際現に法による改正前の職業安定法(以下「旧職業安定法」という。)第二十七条第一項の認定を受けている者(同項の指示を受けている者に限り、法第二十条の規定により手帳の発給を受けた者を除く。)及びこの省令の施行の日前に同項の認定を受けたことがある者は、第七条第二項第三号の規定の適用については、手帳の発給を受けたことがある者とみなす。この場合において、これらの者に係る認定がその効力を失つた日は、手帳がその効力を失つた日とみなす。

 (第八条の規定の適用に関する経過措置)

 3 この省令の施行の際現に旧職業安定法第二十七条第一項の指示を受けている者であつて、法第二十条の規定に該当するものに発給する手帳の有効期間は、第八条第一項の規定にかかわらず、手帳の発給の日から当該指示に係る旧職業安定法第二十六条第一項の就職促進の措置が終了するまでの間とする。ただし、当該指示に係る同項の就職促進の措置の期間が六月未満であるときは、手帳の発給の日から当該就職促進の措置が開始された日から起算して六月が経過する日までの間とする。

 

 

 

 

以上で高齢者雇用法第52条、第53条、第53条の2を終了します。

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高齢者雇用法第49条、第50条、第51条

2015年06月10日 14:57

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第49条(事業主等に対する援助等

 国は、高年齢者等(厚生労働省令で定める者を除く。以下この項において同じ。)の職業の安定その他福祉の増進を図るため、高年齢者等職業安定対策基本方針に従い、事業主、労働者その他の関係者に対し、次に掲げる措置その他の援助等の措置を講ずることができる。

一 定年の引上げ、継続雇用制度の導入、再就職の援助等高年齢者等の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主又はその事業主の団体に対して給付金を支給すること。

二 高年齢者等の雇用に関する技術的事項について、事業主その他の関係者に対して相談その他の援助を行うこと。

 三 労働者がその高齢期における職業生活の設計を行うことを容易にするため、労働者

  に対して、必要な助言又は指導を行うこと。

2 厚生労働大臣は、前項各号に掲げる措置の実施に関する事務の全部又は一部を機構に行わせるものとする。

3 機構は、第一項第一号に掲げる措置の実施に関する事務を行う場合において当該事務に関し必要があると認めるときは、事業主に対し、必要な事項についての報告を求めることができる。


則第32条(法第四十九条第一項の厚生労働省令で定める者)

 法第四十九条第二項に規定する独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が同条第一項各号の業務を行う場合における同条第一項の厚生労働省令で定める者は、法第二条第二項第二号に規定する中高年齢失業者等であつて、五十五歳未満のものとする。

 

第50条(雇用管理の改善の研究等

 国は、高年齢者の雇用の安定その他福祉の増進に資するため、高年齢者の職域の拡大そ

の他の雇用管理の改善、職業能力の開発及び向上等の事項に関し必要な調査、研究及び資

料の整備に努めるものとする。

 

第51条(職業紹介等を行う施設の整備等)

 国は、高年齢者に対する職業紹介等を効果的に行うために必要な施設の整備に努めるも

のとする。

2 国は、地方公共団体等が、高年齢者に対し職業に関する相談に応ずる業務を行う施設を設置する等高年齢者の雇用を促進するための措置を講ずる場合には、必要な援助を行うことができる。

 

機構について 「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」 機構HPより引用

 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の推進、求職者その他労働者の職業能力の開発及び向上のために、高齢者、障害者、求職者、事業主等の方々に対して総合的な支援を行っています。

沿革:

1.名称 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

2.所在地 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番2号 高度訓練センター内

3.設立年月日  平成15年10月1日

4.根拠法  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構法(平成14年法律第165号)

5.機構の目的

 高年齢者等を雇用する事業主等に対する給付金の支給、高年齢者等の雇用に関する技術的事項についての事業主等に対する相談その他の援助、障害者の職業生活における自立を促進するための施設の設置及び運営、障害者の雇用に伴う経済的負担の調整の実施その他高年齢者等及び障害者の雇用を支援するための業務並びに求職者その他の労働者の職業能力の開発及び向上を促進するための施設の設置及び運営の業務等を行うことにより、高年齢者等及び障害者並びに求職者その他の労働者の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
 
業務の概要:
  1. (1) 高年齢者等の雇用促進のための給付金の支給
  2. (2) 高年齢者等の雇用に関する事業主への相談・援助
  3. (3) 高齢期の職業生活設計に必要な助言・指導
  4. (4) 障害者職業センターの設置及び運営
  5. (5) 障害者職業能力開発校の運営
  6. (6) 障害者雇用納付金関係業務(納付金の徴収、助成金等の支給、障害者の技能に関する競技大会、障害者雇用に関する講習・啓発等)
  7. (7) 職業能力開発短期大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発促進センター、職業能力開発総合大学校等の設置及び運営
  8. (8) 求職者支援訓練の認定及び訓練の実施に必要な助言・指導
  9. (9) 雇用促進住宅を譲渡又は廃止する業務及び譲渡等するまでの間の管理運営業務
行動規範抜粋:
 私たちの使命は、年齢や障害の有無にかかわらず誰もが能力を発揮し、意欲を持って安心して働ける社会の実現に向け、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の推進、求職者をはじめとする労働者の職業能力の開発及び向上の促進のために、高齢者、障害者、求職者、事業主といった利用者に対し総合的な支援を行うことです。
 このような使命と責任の重さを認識し、いかなる社会経済情勢の下においても、独立行政法人の基本を踏まえつつ、常に社会の信頼に応え、使命を果たしていくため、その行動理念を「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構行動規範」として定め、役職員全てが、誠心誠意、実践します。
 
高齢者雇用アドバイザーの配置:
 高年齢者の雇用問題に関する専門家(高年齢者雇用アドバイザー)を全国に配置し、企業に対し高齢者雇用に関するアドバイス(相談・援助)を行いました。※全国に約491名配置(平成26年3月末時点)
 
アドバイザーによる相談実績:
 平成25年実績で、42,160件の相談件数となっています。
 
事業主に対するアンケート:
 高年齢者雇用アドバイザーが相談・援助を実施した事業主等に対するアンケート調査の結果、90.4%の方から
「課題改善効果」があった旨の評価をいただきました。
 
給付金支給実績:
 機械設備の導入や定年の引上げ等を実施した企業に対する給付金(高年齢者雇用安定助成金等)を支給しました。
 
参考:機構HP URL https://www.jeed.or.jp/
 
 
 
以上で高齢者雇用法第49条・第50条・第51条を終了します。
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高齢者雇用法第46条、第47条、第48条

2015年06月10日 13:40

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第46条(指定)

 厚生労働大臣は、シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の健全な発展を図るとともに、定年退職者その他の高年齢退職者の能力の積極的な活用を促進することにより、高年齢者の福祉の増進に資することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であつて、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。

 

第47条(業務)

 前条の指定を受けた者(以下「全国シルバー人材センター事業協会」という。)は、次に掲げる業務を行うものとする。

 

一 シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の業務に関し啓発活動を行うこと。

二 シルバー人材センター又はシルバー人材センター連合の業務に従事する者に対する研修を行うこと。

三 シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の業務について、連絡調整を図り、及び指導その他の援助を行うこと。

四 シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の業務に関する情報及び資料を収集し、並びにシルバー人材センター、シルバー人材センター連合その他の関係者に対し提供すること。

五 前各号に掲げるもののほか、シルバー人材センター及びシルバー人材センター連合の健全な発展並びに定年退職者その他の高年齢退職者の能力の積極的な活用を促進するために必要な業務を行うこと。

 

第48条(準用)

 第四十一条第三項から第五項まで及び第四十三条から第四十三条の三までの規定は、全

国シルバー人材センター事業協会について準用する。この場合において、第四十一条第三

項から第五項まで及び第四十三条から第四十三条の三までの規定中「都道府県知事」とあ

るのは「厚生労働大臣」と、第四十一条第三項中「第一項」とあるのは「第四十六条」

と、「、事務所の所在地並びに当該指定に係る地域」とあるのは「並びに事務所の所在

地」と、第四十三条の二中「この節」とあるのは「第六章第三節」と、「第四十二条第一

項」とあるのは「第四十七条」と、第四十三条の三第一項中「第四十一条第一項」とある

のは「第四十六条」と、同項第一号中「第四十二条第一項」とあるのは「第四十七条」

と、同項第三号中「この節」とあるのは「第六章第三節」と、同項第四号中「前条」とあ

るのは「第四十八条において準用する前条」と読み替えるものとする。

 

則第31条(指定の基準等)

 法第四十六条の規定による指定の基準は、次のとおりとする。

一 職員、業務の方法その他の事項についての業務の実施に関する計画が適正なものであり、かつ、その計画を確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有すると認められること。

二 前号に定めるもののほか、業務の運営が適正かつ確実に行われ、高年齢者の福祉の増進に資すると認められること。

 

則第32条2

 第二十四条の二の規定は法第四十六条の規定による指定を受けようとする者について、

第二十四条の三及び第二十五条の規定は法第四十七条に規定する全国シルバー人材センタ

ー事業協会について準用する。この場合において、第二十四条の二第一項中「法第四十一

条第一項」とあるのは「法第四十六条」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大

臣」と、同条第二項第三号中「法第四十二条第一項」とあるのは「法第四十七条」と、第

二十四条の三中「法第四十一条第四項」とあるのは「法第四十八条において準用する法第

四十一条第四項」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生労働大臣」と、第二十五条第一

項中「法第四十三条第一項前段」とあるのは「法第四十八条において準用する法第四十三

条第一項前段」と、同条第二項中「法第四十三条第一項後段」とあるのは「法第四十八条

において準用する法第四十三条第一項後段」と、「都道府県知事」とあるのは「厚生労働

臣」と、同条第三項中「法第四十三条第二項」とあるのは「法第四十八条において準用

る法第四十三条第二項」と読み替えるものとする。

 

公益社団法人 全国シルバー人材事業協会

事業協会の沿革 HPより

 急速な高齢化の進展の中で高齢期を有意義にしかも健康に過ごすためには、定年等で現役引退した後でも、なんらかの形で就業し続けたいと希望する高年齢者が増えてきたことを背景に、昭和50(1975)年東京都においてシルバー人材センターのさきがけとなる「高齢者事業団」が創設されました。「自主・自立、共働・共助」の理念の下に、高齢者の知識、経験、能力を生かしながら、社会参加していこうという発想が多くの人の共感を得て、全国に広がりました。

 昭和55(1980)年度から国の補助事業として「シルバー人材センター」の名のもと全国的に事業展開され、各市区町村での設置が相次ぐなか、昭和 55(1980)年12月情報交換・経験交流等を図ることを目的としたシルバー人材センターの全国組織として「全国高齢者事業団・シルバー人材センター等連絡協議会」(全高シ連)が発足しました

 昭和57(1982)年7月全高シ連を発展的に改組し、「社団法人全国シルバー人材センター協議会」(全シ協)が発足しました。 

 昭和61(1986)年には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の成立によりシルバー人材センター事業が法制化され、名称を「社団法人全国シルバー人材センター協会」に変更、同法に基づく法人として労働(厚生労働)大臣の指定を受けました。

 平成8(1996)年同法の改正によって「社団法人全国シルバー人材センター事業協会」と改めました。 

 さらに、公益法人制度改革により、平成24(2012)年、「公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会」と改め、現在に至っております

全シ協 平成26年度事業計画 抜粋

現状:しかし、センターの現状は、契約金額においては 5 年連続で減少し会員 数においても 3 年連続で減少している厳しい状況にある。センターの安定的 な財政・事業運営を図るためには、特に「就業機会の拡大」及び「会員の拡 大」が急務となっている。 シルバー事業が、急増する高齢者の受け皿としての機能を十分果たし、「社 会の支え手」を実践できるよう、センター、シルバー人材センター連合本部 (以下「連合本部」という。)(センター及び連合本部を「シルバー連合」と いう。)及び全シ協は、相互にこれまで以上の緊密な連携を図り、シルバー 事業検討会が提言している具体的取組等について、検討・実施していくこと が重要である。 

 会員の状況 全シ協の平成 26 年 3 月末現在における会員数は、正会員 1,122 団体、賛助会 員 694 団体、合計 1,816 団体となっている。 しかしながら、連合本部に加入し全シ協に加入していないセンターが 225 あ り、総数の約 16.7%を占めている。このため、今後、引き続き連合本部と連携 して、新規設置センター及び既存の未加入センターの加入促進を図るとともに、 連合制度等を活用したセンター未設置地域の解消、サービス地域の拡大に努め る。 

研修等:研修事業

 (1) 中央研修 全シ協は、少子高齢化が急速に進展し、労働力人口の大幅な減少が見込ま れており、特に団塊の世代が高齢期を迎える中で、今後は、高年齢者が生涯 現役で社会参加することが求められており、高齢者の多様な社会参加の受け 皿として、今後ますますシルバー事業は重要な役割を担っていることから、 シルバー連合の役職員に対して、シルバー事業の理念、組織運営及び業務運 営等について専門的又は実践的な知識を付与するとともに、それぞれの役割 に応じた指導・企画力等の向上を図ることを目的とし、「平成 26 年度シルバ ー人材センターに係る研修・業務会議指針」に基づき、次の中央研修を実施 する。 

ア  シルバー連合  ① 新任理事長(会長)研修 ② 新任事務局長研修 

イ  連合本部  ① 指導者研修 ② シルバー派遣事業実務担当者研修 

(2)ブロック別シルバー人材センター等連絡協議会等が開催する研修への 支援 

ア  ブロック別シルバー人材センター等連絡協議会(以下「ブロック協議 会」という。)及び連合本部が共同で開催する研修を支援するため、要 請に応じて講師派遣や講師の情報提供を行う。 

イ  ブロック協議会が開催する研修への支援を行う。

指導事業

  平成 21 年度及び 22 年度に実施された事業仕分けによる大幅な予算削減は、 その後のシルバー事業を運営する上で財政基盤に深刻な影響を与えている が、全シ協は、シルバー事業の進展を停滞させないよう、業務の効率化、財 政基盤の強化を図るための取組への積極的な支援を行う。また、新公益法人 への移行後の適正な法人運営に取組むための支援を行う。このような観点に 立って策定した「平成 26 年度シルバー人材センター指導実施要綱、実施要 領」に基づき、シルバー事業の適正かつ効果的な推進を図る。 センターに対する個別指導は、原則として、連合本部が実施し、全シ協は それらの指導を支援するため、随時指導を行うとともに連合本部への定期指 導を実施する。 連合本部並びにブロック協議会と調整の上、連合本部への指導に併せてセ ンターに対する個別指導を実施する。 なお、全シ協は、連合本部の指導担当者(事務局長)から、センター指導 の年間計画及び指導結果の提出を求め、必要に応じフォローアップを実施す る。 また、全シ協に「スーパーバイザー」を配置し、シルバー派遣事業、就業 開発・開拓及び適正就業の実施に関して、専門的・実践的な助言・援助を行 う。全シ協が受けた相談等について事例集を作成する。 

(1) 連合本部に対する指導 全シ協の行う指導事業については、連合本部のセンターへの指導を軸に高 齢者の多様な就業及び社会参加ニーズに対応したシルバー事業を推進する ため、次の事項を重点に指導・援助を行う。

 ① 中長期計画を策定し、地域ニーズに沿った就業開発・開拓、会員の事業 への参加促進、事務処理の共同化等の促進 

② 安全・適正就業委員会によるセンターの安全就業基準等の策定・見直し、 受託事業の総点検による適正就業の推進、見積書、契約書等締結の励行 

③ 地方自治体の施策や地域ニーズに対応し、センターの特性を生かした企 画提案方式による事業及び地域ニーズ対応事業について、事業の拡大や 将来性を視野にした事業の推進

 ④ シルバー派遣事業を適切・着実に進めるため、全シルバー連合での実施 及び未届センターの届出を促進し、職域開発・拡大の調査及び実務担当 者研修の実施など、連合におけるシルバー派遣事業の拡充に向けた取組 を支援

 ⑤ 職業紹介事業の円滑な運営に向けた支援 

⑥ 会計処理体制(内部けん制体制等)の確立と会計処理の適正化を図るた め、「会計点検チェック票」の活用及び公認会計士等外部専門家による 指導監査制度の導入等による会計事故の防止の徹底 

⑦ シルバー連合における広域的な需給調整業務の積極的な実施や事業の 共同化など連合制度を活用した事業の主体的な展開 

⑧ 会員の資格や、専門能力等を生かし、事業性をもった独自事業の積極的 な推進

 ⑨ 地域における「働く」高齢者のためのワンストップサービスセンターを めざす総合就労支援事業への支援

⑩ 各種会議の開催 ・安全・適正就業指導員会議 ・地域ニーズ対応事業実務担当者会議 ・福祉・家事援助サービス担当者会議

 (2) センターに対する指導 センターに対する指導は、連合本部が原則として行うこととし、全シ協 作成の個別指導実施要綱、実施要領に基づく「シルバー人材センター指導 マニュアル」により、社会経済環境の変化に対応したセンター機能の強化 に向けた自主・自立的な取組と効率的な業務の推進を基本に、公益法人と しての適正・効果的な事業運営が確保されるよう、全シ協と連携協力して 業績評価の手法も取り入れ、指導・援助を行う。

 (3) 派遣元責任者講習 シルバー派遣事業派遣元責任者講習を実施する。(4 か所)

 (4) 職業紹介責任者講習会 シルバー連合が行う職業紹介事業の適正な運営のために、職業紹介責任者講習会を実施する。(4 か所) 

情報の収集・提供等 

 高齢者の多様な形態による就業機会の拡大・生きがいの創出や地域社会の 活性化への様々なアプローチが図られるよう、シルバー事業関係情報の収 集・提供等を行う。 

(1) 統計情報・調査の整備・提供 

① シルバー事業の企画運営に迅速・的確に活用できるよう、各種の統計 情報を整備・提供

 ② 「シルバー人材センター事業統計(年報・月次報)」の作成、提供 

③ 厚生労働省と連携し、適宜、シルバー事業に係る調査を実施

 ④ ホワイトカラー層の希望就業内容と就業のマッチング状況等を検証 し、センターがホワイトカラー層の受け皿となるための対応等を検討

 (2) シルバーしごとネットの利用促進 就業範囲の拡大と事務の効率化を図るため、シルバーしごとネットを活 用した利用を促進する。

 (3) 全シ協会員専用ページによる情報提供 

① シルバー事業関係施策情報の提供 シルバー事業に関連する施策や報告書などの所在情報について、タイ ムリーに提供する。

 ② 「全シ協ニュース」の情報提供 全シ協会員専用ページ等を活用して、シルバー事業に関する活動状況 等の情報を適宜提供する。 

③ シルバー事業事例情報の提供 シルバー連合発行の会報等記事の中から、シルバー事業の有意な情報 について、随時、情報提供することにより、事業の共同化、効率化の検 討及び地域ニーズ対応事業等の企画立案等の効果的な情報として活用を 図る。 

(4) シルバー事業拡大のための「アイデア」募集 運営体制の改善や運営に携わる者の意識改革を図り、自治体や他の関係 機関とも連携・協働しながら、地域が求めるニーズにマッチし、かつ、高 齢者のニーズにマッチする新たな分野への就業開拓や就業機会の創出を 行っていくことが求められている。これに対応して、実行可能な「アイデ ィア」を募集する。 

普及啓発事業 

 シルバー事業の意義を社会に広く周知するとともに、高齢者の加入を促進す るため、全シ協はシルバー連合と連携し、次の事項を重点に、効果的な普及啓 発活動を推進する。

 (1) 普及啓発促進月間(10 月)の設定 シルバーの日を中心に、シルバーフェアの開催、各種ボランティア活動の 実施等、各シルバー連合で一斉にかつ集中的に普及啓発活動を展開する。

 (2) 年間を通じた広報・普及啓発活動の推進 

① 様々なメディアを通じた広報活動の推進 シルバー事業の活動事例情報を新聞、テレビ、ラジオ等報道機関に提 供するなど積極的な広報活動を推進する。

 ② ホームページを活用した広報活動の推進 センターの活躍事例、各センターの会員及び発注者からの感想等を紹 介するなど利用者の視点に立った親しみやすいホームページへの改善に 努めるとともに、ホームページ未開設センターに対する開設の促進を図 る。

 ③ リーフレット等の作成・配布 シルバー事業の積極的な周知広報を図るため、就業開拓及び入会促進 用リーフレットを作成・配布する。 また、国・地方自治体の議員向けに、シルバー事業を案内するための リーフレットを作成・配布する。

 ④ 地方自治体等のイベントへの積極的な参加 地方自治体や各種団体などが開催するイベントへ積極的に参加し、シ ルバー事業の広報活動を実施する。

 ⑤ 「月刊シルバー人材センター」を活用した普及啓発活動の推進 掲載内容の一層の充実を図るため、企画編集に積極的に協力するとと もに、シルバー事業の普及啓発活動の展開に有効活用を図る。 

PDFーURL https://www.zsjc.or.jp/kyokai/acv_pdf?id=18

 

以上で高齢者雇用法第46条・第47条・第48条を終了します。

 

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高齢者雇用法第44条、第45条

2015年06月10日 11:47

高年齢者の雇用の安定等に関する法律

第44条(指定等

 都道府県知事は、その会員に二以上のシルバー人材センターを有する高年齢者就

援助法人であつて、次条において準用する第四十二条第一項に規定する業務に関

し第四十一条第一項各号に掲げる基準に適合すると認められるものを、その申請に

より、当該高年齢者就業援助法人の会員であるシルバー人材センターに係るセンタ

ーの指定区域と当該地域における臨時的かつ短期的な就業の機会の状況その他の事

情を考慮して厚生労働省令で定める基準に従つて必要と認められる市町村の区域を

併せた区域ごとに一個に限り、次条において準用する第四十二条第一項に規定する

務を行う者として指定することができる。ただし、当該指定をするに当たつて

は、当該市町村の区域から、当該指定に係る申請をした高年齢者就業援助法人の会

員でないシルバー人材センターに係るセンターの指定区域及び連合の指定区域を除

外するものとする。

2 シルバー人材センターがシルバー人材センター連合の会員となつたときは、当該シルバー人材センター連合は、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。当該届出があつたときは、当該シルバー人材センター連合に係る連合の指定区域と当該シルバー人材センターに係るセンターの指定区域を併せた区域を当該シルバー人材センター連合に係る連合の指定区域とするものとする。

3 第一項の指定又は前項の届出があつたときは、当該指定又は届出に係る

シルバー人材センター連合の会員であるシルバー人材センターに係る第四十一条

第一項の指定は、その効力を失うものとする。

4 都道府県知事は、第二項の届出があつた場合において、シルバー人材センター連合からその連合の指定区域の変更に関する申出があつたときは、当該連合の指定区域を変更し、当該連合の指定区域と第一項の厚生労働省令で定める基準に従つて必要と認められる市町村の区域を併せた区域を当該シルバー人材センター連合に係る連合の指定区域とすることができる。ただし、当該変更をするに当たつては、当該市町村の区域から、センターの指定区域及び連合の指定区域を除外するものとする。

 

則第26条

 法第四十四条第一項の厚生労働省令で定める基準は、都道府県知事が法第四十一条第一項に規定するシルバー人材センター連合(以下「シルバー人材センター連合」という。)に係る法第四十四条第一項の指定に係る区域(次条第一項第四号において「連合の指定に係る区域」という。)としようとする市町村の区域が次に掲げる要件に該当することとする。

一 当該市町村の区域と法第四十四条第一項の規定による指定を受けようとする者の会員であるシルバー人材センターに係る法第四十一条第一項の指定に係る区域が近接し、又は当該市町村の区域若しくは近接する二以上の当該市町村の区域に定年退職者その他の高年齢退職者が相当数存在すること。

二 当該市町村の区域においてシルバー人材センター連合により法第四十五条において準用する法第四十二条第一項に規定する業務が行われる場合には、当該市町村の区域においてシルバー人材センターにより法第四十二条第一項に規定する業務が行われる場合に比し、臨時的かつ短期的な就業及びその他の軽易な業務に係る就業の機会の状況等にかんがみ、当該業務がより効率的に行われる見込みがあること。

 

則第27条(指定の申請)

 法第四十四条第一項の規定による指定を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 名称及び住所

二 代表者の氏名

三 事務所の所在地

四 連合の指定に係る区域とされることを求める区域

2 前項の申請書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

2 前項の申請書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一 定款及び登記事項証明書

二 資産の総額並びにその種類及びこれを証する書類

三 法第四十五条において準用する法第四十二条第一項に規定する業務に関する基本的な計画

四 役員の氏名及び略歴を記載した書面

五 会員であるシルバー人材センターの名称及び住所を記載した書面

 

則第28条(シルバー人材センター連合の会員の追加の届出)

 シルバー人材センター連合は、法第四十四条第二項の規定による届出をしようとするときは、会員となつたシルバー人材センターの名称及び住所を記載した書面を都道府県知事に提出しなければならない。

 

則第29条(シルバー人材センター連合の指定区域の変更に関する申出)

 シルバー人材センター連合は、法第四十四条第四項の規定による申出をしようと

するときは、変更により法第四十一条第一項ただし書に規定する連合の指定区域と

されることを求める区域を記載した申出書に当該変更後の連合の指定区域における

第二十七条第二項第三号に規定する書面を添付して都道府県知事に提出しなければ

ならない。

 

第45条(準用)

 第四十一条第三項から第五項まで及び第四十二条から第四十三条の三までの規定

は、シルバー人材センター連合について準用する。この場合において、第四十一条

第三項中「第一項の指定をしたとき」とあるのは「第四十四条第一項の指定をした

とき並びに同条第二項の連合の指定区域の変更があつたとき及び同条第四項の連合

の指定区域の変更をしたとき」と、「所在地並びに当該指定に係る地域」とあるの

は「所在地並びに当該指定に係る地域(当該変更があつたときは、当該変更後の地

域)」と、第四十二条第一項中「前条第一項の指定に係る区域(以下「センターの指

定区域」という。)」とあるのは「第四十四条第一項の指定に係る区域(同条第二項

又は第四項の変更があつたときは、その変更後の区域)」と、同条第三項中「第四

十二条第二項」とあるのは「第四十五条において準用する同法第四十二条第二項」

と、同条第五項中「その構成員である高年齢退職者のみ」とあるのは「その直接又

は間接の構成員である高年齢退職者のみ」と、同条第六項の表第五条第二項の項中

「第四十二条第五項」とあるのは「第四十五条において準用する同法第四十二条第

五項」と、同表第六条第五号の項及び第六条第七号の項中「シルバー人材センター

」とあるのは「シルバー人材センター連合」と、第四十三条の二中「この節」とあ

るのは「第六章第二節」と、「第四十二条第一項」とあるのは「第四十五条におい

て準用する第四十二条第一項」と、第四十三条の三第一項中「第四十一条第一項」

とあるのは「第四十四条第一項」と、同項第一号中「第四十二条第一項」とあるの

は「第四十五条において準用する第四十二条第一項」と、同項第三号中「この節」

とあるのは「第六章第二節」と、同項第四号中「前条」とあるのは「第四十五条に

おいて準用する前条」と読み替えるものとする。

 

則第29条の2(労働者派遣法施行規則の特例)

 法第四十五条において準用する法第四十二条第五項の規定による一般労働者派遣事業に関する労働者派遣法施行規則第二十九条第一号の規定の適用については、同号中「自己の雇用する労働者の中から選任すること」とあるのは、「選任すること」とする。

 

則第30条(準用)

 第二十四条の三から第二十五条までの規定は、シルバー人材センター連合

ついて準用する。この場合において、第二十四条の三中「法第四十一条第四項」と

るのは「法第四十五条において準用する法第四十一条第四項」と、第二十四条の四第

一項及び第五項並びに第二十四条の五第一項中「法第四十二条第二項」とあるのは

「法第四十五条において準用する法第四十二条第二項」と、第二十四条の七及び第

十四条の九第六項中「法第四十二条第五項」とあるのは「法第四十五条において準

する法第四十二条第五項」と、第二十四条の八及び第二十四条の九第一項中「法第四

二条第六項」とあるのは「法第四十五条において準用する法第四十二条第六項」

と、二十四の九第六項の表第一条の二第四項の項中「第四十二条第六項」とある

は「第四十五条において準用する第四十二条第六項」と、同表第八条第二項の項及び

第八条第三項の項中「第二十四条の九第三項」とあるのは「第三十条において準用

する同令第二十四条の九第三項」と、第二十五条第一項中「法第四十三条第一項前

段」とあるのは「法第四十五条において準用する法第四十三条第一項前段」と、同

条第二項中「法第四十三条第一項後段」とあるのは「法第四十五条において準用す

る法第四十三条第一項後段」と、同条第三項中「法第四十三条第二項」とあるのは

「法第四十五条において準用する法第四十三条第二項」と読み替えるものとする。

 

シルバー人材センター連合会

ア 都道府県シルバー人材連合とは 出典:全国事業協会HPより

 都道府県シルバー人材センター連合(シルバー連合)は、知事の指定を受けた公益法人で、 都道府県が行う高齢社会対策と円滑な連携の下に、管内におけるシルバー人材センター事業の効果的な運営と 発展を図ることを目的としています。シルバー連合は、連合本部及び市(区)町村に置かれているシルバー人材センター(センター)で構成されています。連合本部は、センターの活動を支援する とともに、都道府県全域にわたる事業活動として、シルバー人材センター事業の普及啓発、新しい就業分野の企画・開発、広域的な仕事の調整 (シルバーしごとネット https://shigoto.sjc.ne.jp)、 センター未設置市町村への設置促進などにより高年齢者がどこに住んでいてもこの事業に参加できる体制づくり、 さらに無料職業紹介事業、一般労働者派遣事業など、高年齢者の能力を生かした活力ある地域社会づくりに向けて さまざまな事業を展開しています。

シルバー人材センターの組織

 全国   公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会    

      ※高齢者雇用法 第四十六条第四十八条

 都道府県 公益社団法人 静岡県シルバー人材センター連合会

      ※高齢者雇用法 第四十四条・第四十五条

 市区町村 公益社団法人 沼津市シルバー人材センター等

      ※高齢者雇用法 第四十一条第四十三条の三

 

 

 

以上で高齢者雇用法第44条・第45条を終了します。

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高齢者雇用法第42条、第43条、第43条の2、第43条の3

2015年06月09日 17:19

高年齢者の雇用の安定等に関する法律

第42条(業務等)

 シルバー人材センターは、前条第一項の指定に係る区域(以下「センターの指定区域」という。)において、次に掲げる業務を行うものとする。

一 臨時的かつ短期的な就業(雇用によるものを除く。)又はその他の軽易な業務に係る就業(雇用によるものを除く。)を希望する高年齢退職者のために、これらの就業の機会を確保し、及び組織的に提供すること。

二 臨時的かつ短期的な雇用による就業又はその他の軽易な業務に係る就業(雇用によるものに限る。)を希望する高年齢退職者のために、職業紹介事業を行うこと。

三 高年齢退職者に対し、臨時的かつ短期的な就業及びその他の軽易な業務に係る就業に必要な知識及び技能の付与を目的とした講習を行うこと。

四 前三号に掲げるもののほか、高年齢退職者のための臨時的かつ短期的な就業及びその他の軽易な業務に係る就業に関し必要な業務を行うこと。

2 シルバー人材センターは、職業安定法第三十条第一項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出て、前項第二号の業務として、有料の職業紹介事業を行うことができる。

3 前項の規定による有料の職業紹介事業に関しては、シルバー人材センターを職

業安定法第四条第七項に規定する職業紹介事業者若しくは同法第三十二条の三第一

項に規定する有料職業紹介事業者又は雇用対策法第二条に規定する職業紹介機関

と、前項の規定による届出を職業安定法第三十条第一項の規定による許可とみなし

て、同法第五条の二から第五条の七まで、第三十二条の三、第三十二条の四第二

項、第三十二条の八第一項、第三十二条の九第二項、第三十二条の十から第三十二

条の十三まで、第三十二条の十五、第三十二条の十六、第三十三条の六から第三十

四条まで、第四十八条から第四十八条の四まで、第五十一条及び第六十四条から第

六十七条までの規定並びに雇用対策法第二章の規定を適用する。この場合におい

て、職業安定法第三十二条の三第一項中「第三十条第一項の許可受けた者」とあ

るのは「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第四十二条第二項の規定により届

け出て、有料の職業紹介事業を行う者」と、同法第三十二条の四第二項中「許可

の交付を受けた者は、当該許可証」とあるのは「高年齢者等の雇用の安定等に関す

る法律第四十二条第二項の規定により届出書を提出した者は、当該届出書を提出

た旨その他厚生労働省令で定める事項を記載した書類」と、同法第三十二条の九第

二項中「前項第二号又は第三号」とあるのは「前項第二号」とする。

4 前二項に定めるもののほか、第二項の規定による有料の職業紹介事業に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

5 シルバー人材センターは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者

の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第五条

第一項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に

届け出て、第一項第四号の業務として、その構成員である高年齢退職者のみを対象

として労働者派遣法第二条第四号に規定する一般労働者派遣事業(以下「一般労働者

派遣事業」という。)を行うことできる。

6 前項の規定による一般労働者派遣事業に関しては、労働者派遣法第五条第五項、第七条、第八条第一項及び第三項、第九条、第十条、第十一条第三項及び第四項、第十三条第二項、第十四条第一項第三号、第二章第二節第二款、第三十条並びに第五十四条の規定は適用しないものとし、労働者派遣法の他の規定の適用については、シルバー人材センターを労働者派遣法第二条第六号に規定する一般派遣元事業主と、前項の規定による届出を労働者派遣法第五条第一項の規定による許可とみなす。この場合において、次の表の上欄に掲げる労働者派遣法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

※次表略

7 前二項に定めるもののほか、第五項の規定による一般労働者派遣事業に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 

則第24条の4(有料の職業紹介事業の届出等)

 法第四十二条第二項の規定により有料の職業紹介事業を行おうとするシルバー人材センターは、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「管轄都道府県労働局長」という。)に届け出なければならない。

2 前項の届出に当たつては、有料の職業紹介事業の運営に関する規定を添付しな

ければならない。

3 管轄都道府県労働局長は、第一項の届出を受理したときは、受理した日付を届け出た者に通知しなければならない。

 第一項の届出の手続及び様式は、職業安定局長の定めるところによる。

5 法第四十二条第二項の規定により届出をして有料の職業紹介事業を行うシル

ー人材センターがその事業の全部又は一部を廃止したときは、その旨を、当該廃止

の日から十日以内に、文書により、管轄都道府県労働局長に届け出なければならな

い。

6 職業安定法施行規則(昭和二十二年労働省令第十二号)中、公共職業安定所に適用される規定は、職業安定局長の定めるところにより、シルバー人材センターの行う有料の職業紹介事業について準用する。

 

則第24条の5(報告書の提出等) 

 法第四十二条第二項の規定により届出をして有料の職業紹介事業を行うシルバー

人材センターは、職業安定局長の定める手続及び様式に従い、帳簿書類を備え付け

るとともに、報告書を作成し、これを管轄都道府県労働局長を経て、職業安定局長

に提出しなければならない。

 

則第24条の6(法第四十二条第三項の規定により読み替えて適用される職業安定法第三十二条の四第二項の厚生労働省令で定める事項)

 法第四十二条第三項の規定により読み替えて適用される職業安定法第三十二条の

四第二項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 名称及び代表者の氏名

二 事業所の名称及び所在地

 

則第24条の7(一般労働者派遣事業の届出)

 法第四十二条第五項の規定により一般労働者派遣事業を行おうとするシルバー

人材センターは、管轄都道府県労働局長に届け出なければならない。

 

則第24条の8(法第四十二条第六項の規定により読み替えて適用される労働者派遣法第八条第二項の厚生労働省令で定める事項)

 法第四十二条第六項の規定により読み替えて適用される労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第八条第二項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 名称及び代表者の氏名

二 事業所の名称及び所在地

 

則第24条の9(労働者派遣法施行規則の特例)

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号。以下「労働者派遣法施行規則」という。)第一条の二第一項の規定にかかわらず、法第四十二条第六項において読み替えて適用する労働者派遣法第五条第二項の届出書は、職業安定局長の定める様式によるものとする。

2 労働者派遣法施行規則第一条の二第三項の規定にかかわらず、シルバー人材セ

ターが労働者派遣法第五条第三項の規定により添付すべき事業計画書は、職業安

定局長の定める様式によるものとする。

3 労働者派遣法施行規則第八条第一項の規定にかかわらず、労働者派遣法第十一

条第一項の規定による届出をしようとするシルバー人材センターは、労働者派遣法

第五条第二項第四号に掲げる事項の変更の届出にあつては当該変更に係る事実のあ

つた日の翌日から起算して三十日以内に、同号に掲げる事項以外の事項の変更の届

出にあつては当該変更に係る事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、職業

安定局長の定める様式による届出書を管轄都道府県労働局長に提出しなければなら

ない。

4 労働者派遣法施行規則第十条の規定にかかわらず、労働者派遣法第十三条第一項の規定による届出をしようとするシルバー人材センターは、当該一般労働者派遣事業を廃止した日の翌日から起算して十日以内に、職業安定局長の定める様式による届出書を管轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

5 労働者派遣法施行規則第十七条第二項の規定にかかわらず、シルバー人材セン

ターが労働者派遣法第二十三条第一項の規定により提出すべき事業報告書及び収支

決算書は、それぞれ職業安定局長の定める様式によるものとする。

6 法第四十二条第五項の規定による一般労働者派遣事業に関する次の表の上欄に

掲げる労働者派遣法施行規則の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄

に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とし、労働者派遣法施行規則第一条の二

第二項第一号ヘ及び第四条の規定は適用しない。

※次表略

 

第43条(事業計画等)

 

 シルバー人材センターは、毎事業年度、厚生労働省令で定めるところによ

り、事業計画書及び収支予算書を作成し、都道府県知事に提出しなければなら

ない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 シルバー人材センターは、厚生労働省令で定めるところにより、毎事業

年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、都道府県知事に提出しなけれ

ばならない。

 

則第25条(事業計画書等の提出)

 法第四十三条第一項前段の事業計画書及び収支予算書の提出は、毎事業年度開始

前に(指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後遅滞なく)行わなけ

ればならない。

2 シルバー人材センターは、法第四十三条第一項後段の規定により事業計

画書は収支予算書を変更したときは、遅滞なく、変更した事項及びその理由を

記載した面を都道府県知事に提出しなければならない。

3 法第四十三条第二項の事業報告書及び収支決算書の提出は、毎事業年度

終了後三月以内に行わなければならない。

 

第43条の2(監督命令)

 

 都道府県知事は、この節の規定を施行するために必要な限度において、シルバー人材センターに対し、第四十二条第一項に規定する業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 

第43条の3(指定の取消し等)

 

 都道府県知事は、シルバー人材センターが次の各号のいずれかに該当するときは、第四十一条第一項の指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

一 第四十二条第一項に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

二 指定に関し不正の行為があつたとき。

三 この節の規定又は当該規定に基づく命令に違反したとき。

四 前条の規定に基づく処分に違反したとき。

 五 第五十三条第一項の条件に違反したとき。

2 都道府県知事は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示

しなければならない。

 

シルバー人材センターの実情 出典:厚生労働省作成「アフターサービス推進室活動報告書」抜粋

1.シルバー人材センターの数等の実情(H24)
 平成24年度現在、全国における団体数(センター数)は1,267団体となっており、センター数は、市町村合併により、平成15年の1,839団体をピークとして減少している。会員数は、平成20年度(764千人)をピークに、年々減少を続けており、平成24年度は744千人で平成20年度の764千人と比して約20千人の減少となっている。契約金額は平成19年度(3,270億円)をピークに、年々減少を続けており、平成24年度は2,982億円で平成20年度の3,198億円と比して約216億円の減少となっている。
 会員数の減少は、前記1)に見るように、高年齢者の雇用確保義務化の影響によることが原因と考えられ、今後会員の増加を図るには、魅力あるセンターの運営等により労働市場から退出過程にある団塊世代の受入を図るとともに、女性会員の参加促進の必要性が指摘されている。

冒頭文内閣府「平成25年版高齢社会白書」によると、我が国の65歳以上人口は、約3,079万人(総人口12,752万人に占める割合は24.1%)となっており、年々増加傾向にある。こうした中、国民の皆様の声(国民年金受給者の方)では、厚生労働省に「現在の年金額(月約8万円)では生活が苦しい。あと、4~5万円程度の収入を得たいが、ハローワークへ行っても経済状況が低迷する中、高齢を理由になかなか就職先が決まらない。もっと、高齢者の働く場を増やしてほしい。」というような声(ご意見)も寄せられているところである。

 高年齢者の就労(就業)支援では、ハローワークを始めとした行政機関の役割が重要であるが、これを補完するものとして、シルバー人材センターやNPO法人の役割もますます重要になってきている。本調査は、高年齢者の就業機会を確保するため、創意工夫し様々な取組を行っている「シルバー人材センター(注)」の取組みを紹介し関係者に今後の参考としていただくとともに、国民の皆様の声(意見)にあるような高年齢者就労(就業)対策の一層の向上・充実を図ること等に役立たせていただくことを目的とする調査である。

出典元HP:https://www.mhlw.go.jp/iken/after-service-vol13/dl/after-service-vol13.pdf#search='%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E4%BA%BA%E6%9D%90%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81'

 

シルバー人材センターの仕組み 

 「公益社団法人静岡県シルバー人材センター連合会」のHPより引用

  HP https://www.shizuoka-ksjc.ne.jp

1.シルバー人材センターの特徴

 センターは、公共的・公益的性格から、その運営にあたっては普遍性、中立性を堅持することとしています。発注者と会員との間、センターと会員との間には雇用関係は発生しません。いわゆる請負・委任の形態となります。ただし、お引き受けした仕事はセンターで責任を持って完成させます。

2.保険加入
 会員は、就業中・移動中の事故に備えて、シルバー保険に必ず加入します。

3.労働者派遣事業(派遣事業としての届出済みの場合)法第42条第5項関係

 シルバー派遣事業とは、シルバー会員を派遣労働者とし、公益社団法人 静岡県シルバー人材センター連合会と雇用関係を結び、「臨時的かつ短期的な就業又は軽易な業務」の範囲内で、派遣先である会社などの指揮命令によって働きます。
 センターは、シルバー派遣事業により、専門的な知識、経験などが求められる仕事も受託できるようになり、会員の働き方の選択肢を増やすことができます。
 また、「請負・委任」ではできなかった、会社の社員と共同で働くこともできるようになり、長年培った豊かな経験と知識、そして専門的な技能を有した会員を派遣することができます。

※「臨時的かつ短期的な就業又は軽易な業務」とは、月に10日程度の就業又は週20時間程度の、軽易な仕事をいいます。

4.有料職業紹介事業 法第42条第2項関係

 シルバー人材センターでは、60歳以上の方々の就職促進のために、ハローワークと連携して有料職業紹介事業を展開しています。高齢者の求人に関心のある事業所の皆様はお声を掛けてください。

※高齢者雇用法則第24条の4

 法第四十二条第二項の規定により有料の職業紹介事業を行おうとするシルバー人材センターは、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「管轄都道府県労働局長」という。)に届け出なければならない。

参考:職業安定法

第30条(有料職業紹介事業)

 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

 二 法人にあつては、その役員の氏名及び住所

 三 有料の職業紹介事業を行う事業所の名称及び所在地

 四 第三十二条の十四の規定により選任する職業紹介責任者の氏名及び住所

 五 その他厚生労働省令で定める事項

3 前項の申請書には、有料の職業紹介事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。

4 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、有料の職業紹介事業を行う事業所ごとの当該事業に係る求職者の見込数その他職業紹介に関する事項を記載しなければならない。

5 厚生労働大臣は、第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

6 第一項の許可を受けようとする者は、実費を勘案して厚生労働省令で定める額の手数料を納付しなければならない。

7.就職・就業に関して

 メールや電話でご相談を頂いた後、お見積りのうえ、センターと発注者間で契約を結びます。就業する会員については、センターが適任者を選任します。仕事は請負契約又は委任契約によってセンターがお引き受けし、責任をもって完成(遂行)いたします。センターは、公共的・公益的団体なので安心です。発注者と就業する会員との間に雇用関係はありません。会員は、臨時的かつ短期的な形で就業することとなっていますので、仕事の時間、内容に応じて交替制(ローテーション)で働きます(特別な知識、技能を必要とする仕事は、継続的に就業することもできます)。 

 会員は、発注者からの仕事の説明は受けますが、指揮命令は受けません。会員は、契約事項にない仕事は、原則としていたしません。仕事の内容を変更する場合はセンターにご相談ください。センターにはさまざまな分野の職業経験や資格を持っている会員がいます。また、技能講習、介護講習を通じて、技能・技術の向上を図っています。高年齢者であることから会員の安全就業には最大限の配慮をしていますので、危険・有害な仕事はお引き受けできません。 

 会員の就業中に、万一、事故が発生した場合は、シルバー人材センターが加入している団体傷害保険、総合賠償責任保険の範囲内で対応いたします。

 ※指揮命令を受けないことは、請負・委任業務の特徴です。

8.できない仕事(高齢法等に基づく)

※高齢者雇用法第42条第1項第1号 

 臨時的かつ短期的な就業(雇用によるものを除く。)又はその他の軽易な業務に係る就業(雇用によるものを除く。)を希望する高年齢退職者のために、これらの就業の機会を確保し、及び組織的に提供すること 

ア 危険有害な仕事

 ① 足場板等の設置高さが2メートル以上の高所作業

 ② クレーン・プレス機械等の重量機器の操作

 ③ 有害物質の取扱い作業

 ④ 重大な災害に結びつく恐れがある作業

 ⑤ その他高齢者にふさわしくないと思われる作業

イ 適正ではない作業

 ① 会員が1人で就業するにあたり「臨時的かつ短期的な(月10日程度以内)」又は・軽易な業務(週20時間を超えないもの)でなく、長時間・長期間継続する作業

 ② 発注者から直接指示を受ける作業(シルバー労働者派遣を除く)

ウ 他の法律で規制されている業務(警備業法・道路運送法・郵便物・古物営業等)

エ 反社会的な作業

 

シルバー人材センターの紹介で仕事をもらうにはどうしたらよいか

・甲府市シルバー人材センターの事例:会員登録の方法

 

◇甲府市内に居住する原則60歳以上の健康で働く意欲のある方。

◇シルバー人材センターの趣旨に賛同した方。

◇入会説明を受け、入会申込書を提出した方。

(当シルバー人材センターに入会を希望される方への入会説明会を毎月第3月曜日午後1時30分から湯田悠遊館で開催。第3月曜日が土曜、日曜、祝日に当たるときは翌日の平日)

◇年会費(4月1日~翌年3月31日)2,000円を納入した方。(途中入会の割引はありません。)

◇理事会の承認を得た者。

◇会員になっても、センターと雇用関係はありません。※就職を希望されている方は、ご入会できません。

 

 

 

以上で高齢者雇用法第42条・第43条・第43条の2・第43条の3を終了します。

 

 

 

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高齢者雇用法第40条、第41条

2015年06月09日 15:21

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第40条(国及び地方公共団体の講ずる措置)

 国及び地方公共団体は、定年退職者その他の高年齢退職者の職業生活の充実その他福祉の増進に資するため、臨時的かつ短期的な就業又は次条第一項の軽易な業務に係る就業を希望するこれらの者について、就業に関する相談を実施し、その希望に応じた就業の機会を提供する団体を育成し、その他その就業の機会の確保のために必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 

第41条(指定等)

 

 都道府県知事は、定年退職者その他の高年齢退職者の希望に応じた就業で、臨時的かつ短期的なもの又はその他の軽易な業務(当該業務に係る労働力の需給の状況、当該業務の処理の実情等を考慮して厚生労働大臣が定めるものに限る。次条において同じ。)に係るものの機会を確保し、及びこれらの者に対して組織的に提供することにより、その就業を援助して、これらの者の能力の積極的な活用を図ることができるようにし、もつて高年齢者の福祉の増進に資することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人(次項及び第四十四条第一項において「高年齢者就業援助法人」という。)であつて、次条に規定する業務に関し次に掲げる基準に適合すると認められるものを、その申請により、市町村(特別区を含む。第四十四条において同じ。)の区域(当該地域における臨時的かつ短期的な就業の機会の状況その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める基準に従い、次条第一号及び第二号に掲げる業務の円滑な運営を確保するために必要と認められる場合には、都道府県知事が指定する二以上の市町村の区域)ごとに一個に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。ただし、第四十四条第一項の指定を受けた者(以下「シルバー人材センター連合」という。)に係る同項の指定に係る区域(同条第二項又は第四項の変更があつたときは、その変更後の区域。以下「連合の指定区域」という。)については、この項の指定に係る区域とすることはできない。

一 職員、業務の方法その他の事項についての業務の実施に関する計画が適正なものであり、かつ、その計画を確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有すると認められること。

二 前号に定めるもののほか、業務の運営が適正かつ確実に行われ、高年齢者の福祉の増進に資すると認められること。

2 前項の指定は、その会員に同項の指定を受けた者(以下「シルバー人材センター」という。)を二以上有する高年齢者就業援助法人に対してはすることができない。

3 都道府県知事は、第一項の指定をしたときは、シルバー人材センターの名称及び住所、事務所の所在地並びに当該指定に係る地域を公示しなければならない。

4 シルバー人材センターは、その名称及び住所並びに事務所の所在地を変更しようとす

るときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

5 都道府県知事は、前項の届出があつたときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。

 

則第24条(法第四十一条第一項の厚生労働省令で定める基準)

 法第四十一条第一項の厚生労働省令で定める基準は、都道府県知事が指定しようとする二以上の市町村の区域が次に掲げる要件に該当することとする。

一 当該二以上の市町村の区域が近接し、かつ、当該区域に定年退職者その他の高年齢退職者が相当数存在すること。

二 当該二以上の市町村の区域において法第四十二条第一項に規定する業務が行われる場合には、単一の市町村の区域において当該業務が行われる場合に比し、臨時的かつ短期的な就業及びその他の軽易な業務に係る就業の機会の状況等にかんがみ、当該業務がより効率的に行われる見込みがあること。

 

則第24条の2(指定の申請)

 法第四十一条第一項の規定による指定を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 名称及び住所

二 代表者の氏名

三 事務所の所在地

2 前項の申請書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一 定款及び登記事項証明書

二 資産の総額並びにその種類及びこれを証する書類

三 法第四十二条第一項に規定する業務に関する基本的な計画

四 役員の氏名及び略歴を記載した書面

 

則第24条の3(名称等の変更の届出)

 法第四十一条第四項の規定による届出をしようとする同条第二項に規定するシルバー人材センター(以下「シルバー人材センター」という。)は、次の事項を記載した書面を都道府県知事に提出しなければならない。

一 変更後の名称若しくは住所又は事務所の所在地

二 変更しようとする日

三 変更の理由

 

法第40条の趣旨、まとめ

1.平成24年通達の関連項目(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律等の施行について) 

第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

 ⑹ 労働時間対策の推進
 高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策を推進する。
 ⑺ 高年齢者の安全衛生対策
 高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり、高年齢者の健康確保対策を推進する。
 ⑻ 多様な形態による雇用・就業機会の確保
 定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。
 ⑼ 高年齢者の起業等に対する支援
 高年齢者の能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、高年齢者が起業等により自ら就業機会を創出する場合に対して必要な支援を行う。
 ⑽ 地域における高年齢者の雇用・就業支援
 事業主団体と公共職業安定所の協力の下、企業及び高年齢者のニーズに合ったきめ細かな技能講習や面接会等を一体的に実施することにより、高年齢者の雇用・就業を支援する。
 ⑾ 雇用管理の改善の研究等
 高年齢者の雇用機会の着実な増大、高年齢者の雇用の安定を図り、また、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、企業において取り組まれている高年齢者の活用に向けた積極的な取組事例を収集、体系化し、各企業における活用を促進する。また、高年齢者雇用状況報告等に基づき、高年齢者の雇用の状況等の毎年度定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。さらに、国際的に高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進するとともに、年齢差別禁止など、高年齢者の雇用促進の観点について、さらに検討を深める。

 

都道府県雇用開発協会 法第40条関連

 

参考:都道府県雇用開発協会一覧 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/f05.html

都道府県の高年齢者雇用開発協会 (雇用開発協会・雇用対策協会・雇用促進協会・総合雇用推進協会) は都道府県知事又は都道府県労働局長の許可を受けて設立された団体 (一般社団法人又は一般財団法人) で、 各都道府県における高年齢者の安定した雇用の確保及び再就職援助を促進するための事業主に対する相談、 援助、 啓発及び給付金の受付・審査並びに労働者の高齢期における職業生活の設計に関する相談・援助等の業務を行っています。

 

シルバー人材センターの概要

1.公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会 法第46条関係

 HP https://www.zsjc.or.jp/about/about_02.html

 同事業協会の事業内容は、シルバー人材センターの健全な発展並びに定年退職者、その他の高年齢退職者の能力の積極的な活用を促進するための全国唯一の団体として労働大臣(現厚生労働大臣)の指定を受け、定款に定められた以下の事業を行っています。

① シルバー人材センター、シルバー人材センター連合の業務に関する普及・啓発事業
② シルバー人材センター、シルバー人材センター連合の業務に従事する者に対する研修事業
③ シルバー人材センター、シルバー人材センター連合の業務についての指導など事業
➃ シルバー人材センター、シルバー人材センター連合の業務に関する情報・資料の収集及び提供事業
⑤ その他シルバー人材センター、シルバー人材センター連合の健全な発展並びに定年退職者などの高年齢者の能力の積極的な活用、生きがいの充実及び社会参加などの推進を図るために必要な事業

2.都道府県シルバー人材センター連合 法第44条

 都道府県シルバー人材センター連合とは、知事の指定を受けた公益法人で、 都道府県が行う高齢社会対策と円滑な連携の下に、管内におけるシルバー人材センター事業の効果的な運営と 発展を図ることを目的としています。

 シルバー連合は、連合本部及び市(区)町村に置かれているシルバー人材センター(センター)で構成されています。

3.シルバー人材センター

 シルバー人材センター(センター)とは、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献する組織です。

 センターは、原則として市(区)町村単位に置かれており、基本的に都道府県知事の許可を受けた社団法人で、それぞれが独立した運営をしています。

 

①シルバー人材センターの業務 

 センターは、定年退職者などの高年齢者に、そのライフスタイルに合わせた 「臨時的かつ短期的又はその他の軽易な就業(その他の軽易な就業とは特別な知識、技能を必要とする就業)」 を提供するともに、ボランティア活動をはじめとするさまざまな社会参加を通じて、 高年齢者の健康で生きがいのある生活の実現と、地域社会の福祉の向上と、活性化に貢献しています。

②シルバー人材センターの設置単位

 センターは、原則として市(区)町村単位に置かれており、国や地方公共団体の高齢社会対策を支える重要な組織として、 「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」 に基づいて事業を行う、都道府県知事の許可を受けた公益法人です。センターは、「自主・自立、共働・共助」の理念に基づき、会員の総意と主体的な参画により運営する組織(社団法人が基本)です。

 
 
 

③シルバー人材センターの目的

 
 
 
 
 
 
 
 
 
センターでの働き方は「生きがいを得るための就業」を目的としていますので、一定した収入(配分金)の保障はありません。
 
 

 

➃シルバー人材センターの職員

 センターは、地域の家庭や企 業、公共団体などから請負又は委任契約により仕事(受託事業)を受注し、会員として登録した高年齢者の中から 適任者を選んでその仕事を遂行します。仕事の完成は、契約主体であるセンターが負います。

⑤その他

 事業所の社員と混在して就業する仕事や、発注者の指揮命令を必要とする仕事などの場合は、一般労働者派遣事業や無料職業紹介事業をご活用いただきます。

 なお、シルバー人材センターの概要は、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会のホームページを確認して下さい。

 

 

以上で高齢者雇用法第40条・第41条を終了します。

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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高齢者雇用法第27条、第28条、第29条、第30条、第31条

2015年06月08日 17:42

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第27条(就職促進指導官

 就職促進の措置としての職業指導は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一

号)第九条の二第一項の就職促進指導官に行わせるものとする。

 

第28条(報告の請求)

 

 公共職業安定所長は、第二十四条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対し、その就職活動の状況について報告を求めることができる。

 

第29条(特定地域における措置)

 

 厚生労働大臣は、特定地域に居住する中高年齢失業者等について、職業紹介、職

業訓練等の実施、就業の機会の増大を図るための事業の実施その他これらの者の雇

用を促進するため必要な事項に関する計画を作成し、その計画に基づき必要な措置

を講ずるものとする。

 

則第15条(法第二十九条の計画)

 法第二十九条の計画に定める事項は、次のとおりとする。

一 法第二条第二項の中高年齢失業者等の雇用の促進に関する基本方針

二 職業指導及び職業紹介並びに職業訓練に関する事項

三 法第三十条第一項の公共事業(以下「公共事業」という。)に係る同項の失業者吸収率の設定に関する事項

四 特定地域開発就労事業の実施に関する事項

五 公共事業の実施と特定地域開発就労事業の実施との調整に関する事項

 六 地方公共団体等関係機関との連携及び協力に関する事項

 

第30条

 

 厚生労働大臣は、特定地域における中高年齢失業者等の就職の状況等からみて必要があると認めるときは、当該特定地域において計画実施される公共事業(国及び特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人(その資本金の全部若しくは大部分が国からの出資による法人又はその事業の運営のために必要な経費の主たる財源を国からの交付金若しくは補助金によつて得ている法人であつて、政令で定めるものに限る。)(次項において「国等」という。)自ら又は国の負担金の交付を受け、若しくは国庫の補助により地方公共団体等が計画実施する公共的な建設又は復旧の事業をいう。以下同じ。)について、その事業種別に従い、職種別又は地域別に、当該事業に使用される労働者の数とそのうちの中高年齢失業者等の数との比率(以下「失業者吸収率」という。)を定めることができる。

2 失業者吸収率の定められている公共事業を計画実施する国等又は地方公共団体等(これらのものとの請負契約その他の契約に基づいて、その事業を施行する者を含む。以下「公共事業の事業主体等」という。)は、公共職業安定所の紹介により、常に失業者吸収率に該当する数の中高年齢失業者等を雇い入れていなければならない。

3 公共事業の事業主体等は、前項の規定により雇入れを必要とする数の中高年齢

失業者等を公共職業安定所の紹介により雇い入れることが困難な場合には、その困

難な数の労働者を、公共職業安定所の書面による承諾を得て、直接雇い入れること

ができる。

 

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第三十条第一項に基づき厚生労働大臣が定める失業者吸収率

経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律(平成十三年法律第三十五号)附則第二条第一項の規定によりその効力を有するものとされる特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法(昭和五十八年法律第三十九号)第十九条第二項の規定により読み替えて適用する高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第二十二条第一項の失業者吸収率は、同項に規定する公共事業のうち別表に掲げる事業種別に該当するものに使用される無技能者である労働者について、四十パーセントとする。ただし、当該事業に使用される無技能者である労働者の総数から公共職業安定所長が手持労働者と認定した者の数を控除した数の当該無技能者である労働者の総数に対する比率が四十パーセントより低い場合は、当該比率とする。

 

則第16条(公共事業における労働者の直接雇入れの承諾)

 法第三十条第三項の規定による公共職業安定所の承諾を得るには、同条第二項の公共事業の事業主体等(以下「公共事業の事業主体等」という。)は、職業安定局長の定める様式による申請書を、主たる事業実施の地域を管轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規則第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公共職業安定所とする。次条において同じ。)に提出するものとする。

 

則第17条(公共事業における使用労働者数の通知)

 公共事業の事業主体等は、事業開始前に(緊急に工事に着手する必要がある場合その他やむを得ない理由がある場合には、事業開始後すみやかに)、当該事業に使用すべき労働者の数を、職種別に、主たる事業実施の地域を管轄する公共職業安定所に通知するものとする。この場合において、当該公共職業安定所の長は、必要があると認めるときは、当該公共事業の事業主体等に対し、その雇用する労働者の氏名、住所及び生年月日を証明することができる書類その他当該労働者が雇用されていることを証する書類の提出を求めることができる。

 

第31条(厚生労働省令への委任)

 

 この節に定めるもののほか、手帳の発給、手帳の返納その他手帳に関し必要な事項、第二十四条第一項又は第二項の指示の手続に関し必要な事項及び公共事業への中高年齢失業者等の吸収に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 

逐条まとめ

第27条 就職促進指導官

職業安定法

第九条の二 公共職業安定所に就職促進指導官を置く。

② 就職促進指導官は、専門的知識に基づいて、主として、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第二十四条第一項又は第二項の指示を受けた者に対し、職業指導を行うものとする。

③ 前二項に定めるもののほか、就職促進指導官に関し必要な事項は、厚生労働大臣が定める。

 

就職促進指導官規程

(任命)
第1条 職業安定法(昭和22年法律第141号)第9条の2第1項の就職促進指導官(以下「就職促進指導官」という。)は、公共職業安定所に勤務する職員であって、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第6条第1項第1号イに規定する行政職俸給表(一)による職務の級(第3項において「職務の級」という。)が2級以上であるもののうちから、任命する。
2 就職促進指導官であって、別に任命するものは、主任就職促進指導官とする。
3 主任就職促進指導官は、職務の級が4級以上の就職促進指導官のうちから任命する。
(職務)
第2条 就職促進指導官は、上司の命を受け、専門的知識に基づいて高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)第24条第1項又は第2項の指示を受けた者に対し職業指導を行うほか、次の各号に掲げる事務に従事する。
(1) 法第20条の中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)の発給の申請をしたものに対し手帳の発給をするまでの間において行われる職業指導及び職業紹介に関すること。
(2) 法第24条第1項及び第2項の指示に関すること。
(3) 法第24条第1項及び第2項の指示を受けた者に対する職業紹介に関すること。
(4) 駐留軍関係離職者等臨時措置法(昭和33年法律第158号)第10条の2第1項の就職指導に関すること。
(5) 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法(昭和52年法律第94号)第5条第1項の就職指導に関すること。
(6) 前2号の就職指導を受ける者に対する職業紹介に関すること。
(7) 中高年齢者に対する職業指導及び職業紹介並びに高齢期における職業生活の設計を行うことを容易にするための助言又は指導に関すること。
(8) 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第2条第1号に規定する障害者に対する職業指導及び職業紹介に関すること。
(9) 社会的事情により就職が著しく阻害されている者(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(昭和46年労働省令第24号)第3条第2項第1号及び第2号に掲げる者を除く。)に対する職業指導及び職業紹介に関すること。
(10) 港湾労働法(昭和63年法律第40号)第2条第4号に規定する港湾労働者の雇用の安定のための指導に関すること。
(11) 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成23年法律第47号)第2条に規定する特定求職者(以下「特定求職者」という。)に対する同法第11条に規定する就職支援計画の作成及び同法第12条第1項の指示に関すること。
(12) 特定求職者に対する職業指導及び職業紹介その他就職に関する支援措置に関すること。
(13) 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省職業安定局長の定める特定の事由により就職が困難となっている者に対する職業指導及び職業紹介に関すること。
2 主任就職促進指導官は、上司の命を受け、高度な専門的知識及び経験に基づいて前項に定める事務に従事するほか、その担当する部門の所掌に係る事務の調整及び当該担当部門以外の部門との調整に関する事務に従事する。
(その他の事項)
第3条 この訓令に定めるもののほか、就職促進指導官に関し必要な事項は、厚生労働省大臣官房地方課長及び厚生労働省職業安定局長が定める。
 
2.第28条(報告の請求)

 公共職業安定所長は、中年齢失業者等求職手帳発給対象者に対し、就職活動の状況に関し報告を求めることが出来るとされています。

3.第29条(特定地域における措置)

○特定地域開発就労事業及び産炭地域開発就労事業生活相談員規程

平成18年3月6日

告示第29号

(設置)

第1条 特定地域開発就労事業及び産炭地域開発就労事業の紹介対象者(以下「紹介対象者」という。)等の将来の生活設計の樹立に資するため、就業、生活等全般にわたる相談に応じ、もって紹介対象者の円滑な自立を図ることを目的として、特定地域開発就労事業及び産炭地域開発就労事業生活相談員(以下「相談員」という。)を置く。

(委嘱及び解嘱)

第2条 相談員は、社会的信望があり、かつ、次条に規定する業務を行うのに必要な熱意と識見を有する健康な者のうちから町長が委嘱する。

2 本人の申出があった場合又は前項に掲げる要件を欠くに至った場合には、これを解嘱することができる。

(業務)

第3条 相談員は、町長の定めるところにより、次に掲げる業務を行う。

(1) 就業及び生活全般にわたり相談に応じ、必要な援助及び指導を行うこと。

(2) 関係行政機関等との連絡を行うこと。

(3) その他本制度の趣旨に沿う業務であって、町長が必要と認めるもの

(活動日数)

第4条 相談員の活動日数は、月15日とする。

(任期)

第5条 相談員の任期は、1年とし、原則として年度当初に委嘱することとするが、年度途中において委嘱する場合の任期は、当該年度末までとする。

(秘密を守る義務等)

第6条 相談員及び相談員であった者は、その職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。

(その他)

第7条 この規程に定めるもののほか、相談員に関し必要な事項は、町長が別に定める。

附 則

この規程は、平成18年3月6日から施行する。

 

4.第30条

 特定地域においては、公共事業を行う際には40%以上の中高年齢者を雇用する事となっている旨規定されています。

 

5.第31条 厚生労働省令(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則)への委任事項

 則第7条(手帳の発給)、則第8条(手帳の有効期間)、則第9条(手帳の失効)、則第10条(手帳の返納)、則第11条(手帳の再交付)、則第12条(中高年齢失業者等求職手帳受給者台帳)、則第14条(公共職業安定所長の指示)等が規定されています。

 

 

 

以上で高齢者雇用法第27条・第28条・第29条・第30条・第31条を終了します。

 

 

 

 

 

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高齢者雇用法第24条、第25条、第26条

2015年06月08日 16:30

高年齢者の雇用の安定等に関する法律

第24条(公共職業安定所長の指示

 公共職業安定所長は、手帳を発給するときは、手帳の発給を受ける者に対して、その者の知識、技能、職業経験その他の事情に応じ、当該手帳の有効期間中前条第一項の計画に準拠した同項各号に掲げる措置(以下「就職促進の措置」という。)の全部又は一部を受けることを指示するものとする。

2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者について当該手帳の有効期間を延長するときは、改めて、その延長された有効期間中就職促進の措置の全部又は一部を受けることを指示するものとする。

3 公共職業安定所長は、前二項の指示を受けた者の就職促進の措置の効果を高めるため

に必要があると認めたときは、その者に対する指示を変更することができる。

 

則第14条(公共職業安定所長の指示)

 法第二十四条第一項の指示は手帳の発給と同時に、同条第二項の指示は手帳の有効期間

の延長と同時に行なうものとする。

2 法第二十四条第一項及び第二項の指示は、次の各号に掲げる事項を手帳に記入するこ

とにより行なうものとする

一 受けるべき就職促進の措置の種類及びその順序

二 就職促進の措置を受ける期間並びにその開始及び終了の時期

三 法第二十三条第一項第一号に掲げる措置を受けることを指示する場合は、管轄公共職業安定所に定期的に出頭すべき日

四 法第二十三条第一項第二号又は第三号に掲げる措置(以下この号において「訓練」という。)を受けることを指示する場合は、訓練の職種及び施設

五 その他就職促進の措置を受けることに関し必要な事項で職業安定局長が定めるもの

3 管轄公共職業安定所の長は、法第二十四条第一項又は第二項の指示をする場合は、当

該指示に関し、あらかじめ、公共職業訓練施設の長その他就職促進の措置を実施する関係

機関と協議しなければならない。

4 管轄公共職業安定所の長は、法第二十四条第一項又は第二項の指示をした場合は、当該指示に係る就職促進の措置を実施する機関に対し、すみやかにその旨を通知しなければならない。

 

第25条(関係機関等の責務)

 職業安定機関、地方公共団体及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(第四十九条第二項及び第三項において「機構」という。)は、前条第一項又は第二項の指示を受けた者の就職促進の措置の円滑な実施を図るため、相互に密接に連絡し、及び協力するように努めなければならない。

2 前条第一項又は第二項の指示を受けた者は、その就職促進の措置の実施に当たる職員の指導又は指示に従うとともに、自ら進んで、速やかに職業に就くように努めなければならない。

 

第26条(手当の支給)

 国及び都道府県は、第二十四条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対して、その就職活動を容易にし、かつ、生活の安定を図るため、手帳の有効期間中、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)の規定に基づき、手当を支給することができる。

 

雇用対策法の規定による給付金 

雇用対策法第18条(職業転換給付金の支給

 国及び都道府県は、他の法令の規定に基づき支給するものを除くほか、労働者がその有する能力に適合する職業に就くことを容易にし、及び促進するため、求職者その他の労働者又は事業主に対して、政令で定める区分に従い、次に掲げる給付金(以下「職業転換給付金」という。)を支給することができる。

 一 求職者の求職活動の促進とその生活の安定とを図るための給付金

 二 求職者の知識及び技能の習得を容易にするための給付金

 三 広範囲の地域にわたる求職活動に要する費用に充てるための給付金

 四 就職又は知識若しくは技能の習得をするための移転に要する費用に充てるための給付金

 五 求職者を作業環境に適応させる訓練を行うことを促進するための給付金

 六 前各号に掲げるもののほか、政令で定める給付金

雇用対策法第19条(支給基準等

 職業転換給付金の支給に関し必要な基準は、厚生労働省令で定める。

2 前項の基準の作成及びその運用に当たつては、他の法令の規定に基づき支給する給付金でこれに類するものとの関連を十分に参酌し、求職者の雇用が促進されるように配慮しなければならない。

雇用対策法第20条(国の負担

 国は、政令で定めるところにより、都道府県が支給する職業転換給付金に要する費用の一部を負担する。

雇用対策法第21条(譲渡等の禁止

 職業転換給付金の支給を受けることとなつた者の当該支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、事業主に係る当該権利については、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

雇用対策法第22条(公課の禁止

 租税その他の公課は、職業転換給付金(事業主に対して支給するものを除く。)を標準として、課することができない。

雇用対策法第23条(連絡及び協力

 都道府県労働局、公共職業安定所、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、職業転換給付金の支給が円滑かつ効果的に行われるように相互に緊密に連絡し、及び協力しなければならない。

高齢者雇用法第24条~第26条まとめ

東京都の事例

・東京都職業訓練手当支給規則

第一条 (趣旨)この規則は、職業の知識及び技能を習得するため、職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第十五条の六第三項に規定する公共職業能力開発施設の行う職業訓練(以下「公共職業訓練」という。)及び職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成二十三年法律第四十七号)第四条第一項に規定する認定を受けた職業訓練(以下「認定職業訓練」という。)を受ける求職者に対する雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号。以下「法」という。)第十八条第二号の給付金のうち、雇用対策法施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)第二条第二項第一号、第三号から第八号の四まで及び第十号から第十二号まで並びに第三項並びに附則第二条第一項第二号に規定する訓練手当の支給に関し、必要な事項を定めるものとする。

第二条 (給付金の種類)東京都(以下「都」という。)が支給する法第十八条第二号の給付金は、基本手当、技能習得手当(受講手当及び通所手当とする。)及び寄宿手当(以下「訓練手当」と総称する。)とする。

第三条 (支給対象者)訓練手当は、都の区域内に所在する公共職業安定所の長の指示により、公共職業訓練又は認定職業訓練(以下「職業訓練」と総称する。)を受けている次の各号のいずれかに該当する求職者に対して支給する。

 一 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第二十条に基づき中高年齢失業者等求職手帳の発給を受けている者

 二 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第二十五条第一項に規定する広域職業紹介活動により職業のあつ旋を受けることが適当であると公共職業安定所長により認定された者

 三 雇用対策法施行規則第二条第二項第四号に規定する者

 四 雇用対策法施行規則第二条第二項第四号の二に規定する者

 五 へき地又は離島に居住している者

 六 雇用対策法施行規則第一条の四第一項第七号イ(1)から(4)までのいずれにも該当する者

 七 雇用対策法施行規則第二条第二項第七号に規定する者

 八 雇用対策法施行規則第二条第二項第七号の二に規定する者

 九 雇用対策法施行規則第二条第二項第八号に規定する者

 十 雇用対策法施行規則第二条第二項第八号の二に規定する者

 十一 雇用対策法施行規則附則第二条第一項第二号に規定する者

 十二 雇用対策法施行規則第一条の四第一項第四号の漁業離職者求職手帳所持者

 十三 雇用対策法施行規則第一条の四第一項第五号の一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者

 十四 雇用対策法施行規則第二条第三項の離農転職者

 十五 雇用対策法施行規則第一条の四第一項第六号の港湾運送事業離職者

 十六 雇用対策法施行規則第二条第二項第八号の三に規定する者

 十七 雇用対策法施行規則第二条第二項第八号の四に規定する者

第四条 (基本手当)基本手当は、前条の規定に該当する者(以下「支給対象者」という。)が、職業訓練を受ける期間の日数に応じて支給する。ただし、支給対象者が疾病若しくは負傷により引き続き十四日を超えて職業訓練を受けることができなかつた場合は当該十四日を超える期間、又は天災その他やむを得ない理由がないと認められるにもかかわらず職業訓練を受けなかつた場合は当該職業訓練を受けなかつた期間については支給しない。

2 基本手当の日額は、支給対象者の居住する地域により別表に掲げる地域の級地区分に従つて定める次の額とする。ただし、支給対象者が東京都の区域外に居住する者であるときは、当該居住する地域を管轄する道府県の定める級地区分によるものとする。

 一級地 四千三百十円

 二級地 三千九百三十円

 三級地 三千五百三十円

3 前項の規定にかかわらず、支給対象者が二十歳未満であるときの基本手当の日額は、三千五百三十円とする。

第五条 (技能習得手当)技能習得手当のうち受講手当は、支給対象者が職業訓練を受けた日数に応じて四十日分を限度として支給する。

2 受講手当の日額は、五百円とする。

3 技能習得手当のうち通所手当は、次の各号のいずれかに該当する支給対象者に対して支給する。

 一 支給対象者の住所又は居所から職業訓練を行う施設への通所(以下「通所」という。)のため、交通機関又は有料の道路(以下「交通機関等」という。)を利用してその運賃又は料金(以下「運賃等」という。)を負担することを常例とする者(交通機関等を利用しなければ通所することが著しく困難である者以外の者であつて、交通機関等を利用しないで徒歩により通所するものとした場合の通所の距離が片道二キロメートル未満であるもの及び第三号に該当する者を除く。)

 二 通所のため自動車その他の交通の用具(以下「自動車等」という。)を使用することを常例とする者(自動車等を使用しなければ通所することが著しく困難である者以外の者であつて、自動車等を使用しないで徒歩により通所するものとした場合の通所の距離が片道二キロメートル未満であるもの及び次号に該当する者を除く。)

 三 通所のため交通機関等を利用してその運賃等を負担し、かつ、自動車等を使用することを常例とする者(交通機関等を利用し、又は自動車等を使用しなければ通所することが著しく困難な者以外の者であつて、交通機関等を利用せず、かつ、自動車等を使用しないで徒歩により通所するものとした場合の通所の距離が片道二キロメートル未満であるものを除く。)

4 通所手当の月額は、次の各号に掲げる支給対象者の区分に応じて、当該各号に掲げる額とする。ただし、その額が四万二千五百円を超えるときは、四万二千五百円とする。

 一 前項第一号に該当する者 次項及び第六項に定めるところにより算定したその者の一か月の通所に要する運賃等の額に相当する額(以下「運賃等相当額」という。)

 二 前項第二号に該当する者 自動車等を使用する距離が片道十キロメートル未満である者にあつては三千六百九十円、片道十キロメートル以上である者にあつては五千八百五十円(前条第二項により定められた基本手当の日額の級地区分が三級地に該当する者であつて、自動車等を使用する距離が片道十五キロメートル以上であるものについては、八千十円)

 三 前項第三号に該当する者(交通機関等を利用しなければ通所することが著しく困難である者以外の者であつて、通常徒歩によることを例とする距離内においてのみ交通機関等を利用しているものを除く。)のうち、自動車等を使用する距離が片道二キロメートル以上である者及びその距離が片道二キロメートル未満であるが自動車等を使用しなければ通所することが著しく困難である者 運賃等相当額と前号に掲げる額との合計額

 四 前項第三号に該当する者のうち、運賃等相当額が第二号に掲げる額以上であるもの(前号に掲げる者を除く。) 第一号に掲げる額

 五 前項第三号に該当する者のうち、運賃等相当額が第二号に掲げる額未満であるもの(第三号に掲げる者を除く。) 第二号に掲げる額

5 運賃等相当額の算定は、運賃、時間、距離等の事情に照らし、最も経済的かつ合理的と認められる通所の経路及び方法による運賃等の額によつて行うものとする。

6 運賃等相当額は、次に掲げる額の合計額とする。

 一 交通機関等が定期乗車券(これに準ずるものを含む。以下同じ。)を発行している場合は、当該交通機関等の利用区間に係る通用期間一か月の定期乗車券(等級区分があるときは、最低の等級による。)の価額

 二 交通機関等が定期乗車券を発行していない場合は、当該交通機関等の利用区間についての通所二十一回分の運賃等の額であつて、最も低廉となるもの

7 職業訓練を受ける期間に属さない日及び第四条第一項ただし書の規定により基本手当を支給されない期間のある月の通所手当の月額は、第四項の規定にかかわらず、当該日数のその月の現日数に占める割合を同項の規定による額に乗じて得た額を減じた額とする。

 

第六条 (寄宿手当)寄宿手当は、支給対象者が職業訓練を受けるため、その者により生計を維持されている同居の親族(届出はしていないが事実上その者と婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)と別居して寄宿する期間の日数に応じて支給する。

2 寄宿手当の月額は、一万七百円とする。ただし、次の各号に掲げる期間のある月の寄宿手当の月額は、当該日数のその月の現日数に占める割合を一万七百円に乗じて得た額を減じた額とする。

 一 同居の親族と別居して寄宿していない期間

 二 職業訓練を受ける期間に属さない日及び第四条第一項ただし書の規定により基本手当を支給されない期間

第七条(調整) 訓練手当の支給を受けることができる者が同一の事由により、雇用保険法の規定による求職者給付その他法令又は条例の規定による訓練手当に相当する給付(以下「雇用保険基本手当等」という。)の支給を受けることができる場合は、当該支給事由によつては、訓練手当は支給しないものとする。ただし、その者が受ける雇用保険基本手当等の額が、この規則に定める当該給付に対応する訓練手当の額に満たないときは、その差額を支給する。

2 雇用保険法第三十九条第二項に規定する特例受給資格者(同法第四十一条第一項に該当する場合を除く。)が雇用保険法第四十条の規定による特例一時金の支給を受けた場合には、当該離職の日の翌日から起算して六か月が経過する日と、同条第三項の認定が行われた日から起算して四十日を経過する日のうち、いずれか早く到来する日までの間は訓練手当を支給しない。

 

第八条 (支給制限)訓練手当は、支給対象者が偽りその他不正の行為により法第十八条の職業転換給付金その他法令の規定によるこれに相当する給付の支給を受け、又は受けようとしたときは、支給しないことができる。

第九条 (公共職業訓練に係る受給資格の認定等)公共職業訓練に係る訓練手当の支給を受けようとする者は、都の区域内に所在する公共職業能力開発施設で訓練を受ける場合にあつては訓練手当受給資格認定申請書(別記様式第一号及び様式第一号の三)を、都の区域外に所在する公共職業能力開発施設で訓練を受ける場合にあつては訓練手当受給資格認定申請書(別記様式第一号の二及び様式第一号の三)を、当該公共職業訓練を受ける公共職業能力開発施設の長を経由して、知事に提出しなければならない。

2 知事は、前項の訓練手当受給資格認定申請書を提出した者について、受給資格を有するものと認定したときは当該公共職業能力開発施設の長を経由して訓練手当受給資格認定書(別記様式第二号。以下「認定書」という。)をその者に交付し、受給資格を有しないものと認定したときは当該公共職業能力開発施設の長を経由してその旨をその者に通知するものとする。

3 支給対象者は、第一項の訓練手当受給資格認定申請書の記載事項に係る事実に変更があつた場合には、速やかに、当該公共職業能力開発施設の長を経由して、知事に届け出るとともに前項の認定書を提出しなければならない。

4 知事は、前項の届出があつた場合には、その届出に係る事実を確認し、認定書に必要な改定を行つた上、これを当該公共職業能力開発施設の長を経由して当該支給対象者に返付するものとする。

第十条 (公共職業訓練に係る訓練手当の支給)前条第二項の規定により受給資格を有すると認定された者(以下この条において「被認定者」という。)が公共職業訓練に係る訓練手当の支給を受けようとする場合には、当該被認定者が訓練を受ける公共職業能力開発施設が都の区域内に所在するときは毎月二日までに前月分の訓練手当に係る訓練手当内訳書(別記様式第三号)又は訓練手当請求書兼領収書(別記様式第四号)を、当該公共職業能力開発施設が都の区域外に所在するときは毎月七日までに前月分の訓練手当に係る訓練手当支給調書(別記様式第五号)を、当該公共職業能力開発施設の長を経由して、知事に提出しなければならない。

2 被認定者(都の区域外に所在する公共職業能力開発施設で訓練を受ける者に限る。)は、公共職業訓練に係る訓練手当の支給を受けようとする場合には、当該公共職業能力開発施設の長を経由して、毎月七日までに前月分の訓練手当に係る訓練手当支給請求書(別記様式第六号)を知事に提出しなければならない。ただし、訓練手当支給請求書の提出を省略することを知事が認めた場合は、この限りでない。

3 公共職業訓練に係る訓練手当は、毎月一回、十六日(都の区域外に所在する公共職業能力開発施設で訓練を受ける者に係るものは、二十五日)までに支給するものとする。ただし、特別の事情がある場合には、別に定めることができる。

第十一条 (認定職業訓練に係る受給資格の認定等)認定職業訓練に係る訓練手当の支給を受けようとする者は、訓練手当受給資格認定申請書(別記様式第七号及び様式第八号)を知事に提出しなければならない。

2 知事は、前項の訓練手当受給資格認定申請書を提出した者について、受給資格を有するものと認定したときは認定書をその者に交付し、受給資格を有しないものと認定したときはその旨をその者に通知するものとする。

3 支給対象者は、第一項の訓練手当受給資格認定申請書の記載事項に係る事実に変更があつた場合には、速やかに知事に届け出るとともに前項の認定書を提出しなければならない。

4 知事は、前項の届出があつた場合には、その届出に係る事実を確認し、認定書に必要な改定を行つた上、これを当該支給対象者に返付するものとする。

 

第十二条 (認定職業訓練に係る訓練手当の支給)前条第二項の規定により受給資格を有すると認定された者(以下この条において「被認定者」という。)が認定職業訓練に係る訓練手当の支給を受けようとする場合には、認定職業訓練が行われる施設による受講証明を得た上で、毎月七日までに前月分の訓練手当に係る訓練手当支給請求書(別記様式第九号)を知事に提出しなければならない。

2 認定職業訓練に係る訓練手当は、毎月一回、二十五日までに支給するものとする。ただし、特別の事情がある場合には、別に定めることができる。

3 知事は、認定職業訓練に係る訓練手当の支給に当たり必要があると認めるときは、被認定者に対し、認定職業訓練を受けなかつた理由を証明する資料の提出を求めることができる。

4 前項の場合において、知事は、被認定者に係る認定職業訓練が行われる施設に対し、当該被認定者が認定職業訓練を受けなかつた理由その他必要な事項の報告を求めることができる。

第十三条 (補則)この規則に定めるもののほか、訓練手当の支給に関し必要な事項は、別に知事が定める。

雇用保険の基本手当等

 雇用保険に加入していた労働者が離職した場合には、原則的に雇用保険の基本手当を受給出来ます。基本手当の日額は、退職前の最後の日から6ヶ月間遡って支払われた賃金総額を180で割った額に、離職時の年齢及び賃金日額に応じて45%~80%を乗じて得た額です。ただし、毎年賃金日額(給付率を乗じる前の額)及び基本手当の日額には、年齢に応じた上限額が設けられていますし、一律の下限額も設けられています。

 平成26年8月1日以降の基本手当の最高額は、45歳以上59歳未満の年齢帯では7,805円で年齢共通の最低額は1,840円となっています。そして20年以上勤務した会社を解雇された場合に、なかなか再就職がかなわない時には、45歳以上60歳未満の労働者の場合で最長330日(約11ヶ月)の基本手当を受給できることとなります。高年齢者等であって、中高年齢者等失業手帳を所有している求職者も原則的に雇用保険の給付で保障されることとなります。そして、雇用保険の仕組みは若年者よりも高年齢者に手厚く又勤続年数が長い労働者に手厚い制度となっています。

 

以上で高齢者雇用法第24条・第25条・第26条を終了します。

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高齢者雇用法第20条、第21条、第22条、第23条

2015年06月08日 13:17

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第20条(中高年齢失業者等求職手帳の発給

 公共職業安定所長は、中高年齢失業者等であつて、次の各号に該当するものに対して、その者の申請に基づき、中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)を発給する。

一 公共職業安定所に求職の申込みをしていること。

二 誠実かつ熱心に就職活動を行う意欲を有すると認められること。

三 第二十三条第一項各号に掲げる措置を受ける必要があると認められること。

 四 前三号に掲げるもののほか、生活の状況その他の事項について厚生労働大臣が労働

   政策審議会の意見を聴いて定める要件に該当すること。

 

則第7条(手帳の発給)

 法第二十条の申請は、厚生労働省職業安定局長(以下「職業安定局長」という。)が定める手続及び様式に従い、当該申請者の住所(住所により難いときは、居所とする。)を管轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規則第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公共職業安定所とする。以下この節において「管轄公共職業安定所」という。)の長に対して、行うものとする。

2 法第二十条第四号の厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて定める要件は、次のとおりとする。

一 常用労働者(同一事業主に継続して雇用される労働者をいう。)として雇用されることを希望していること。

二 職業安定局長が定めるところにより算定したその者の所得の金額(配偶者(届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)に所得があるときは、職業安定局長が定めるところにより算定したその者の所得の金額を合算した額とする。)が、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)に規定する控除対象配偶者及び扶養親族の有無及び数に応じて、同法第八十三条、第八十四条及び第八十六条の規定を適用した場合に所得税が課せられないこととなる所得の最高額を基準として職業安定局長が定める額を超えていないこと。

三 法第二十条の中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)の発給を受けたことがある者については、次のいずれかに該当する場合を除き、手帳(二回以上手帳の発給を受けたことがある者については、最後に発給を受けた手帳)がその効力を失つた日から一年を経過していること。

イ 手帳の発給を受けた後就職した者(法第二十条第一号若しくは第二号若しくは前二号の要件のいずれかを欠くに至つたため、又は第九条第一項第一号若しくは第三号に該当したため手帳がその効力を失つた者を除く。)については、その者の責めに帰すべき理由又はその者の都合によらないで離職したとき。

ロ 第九条第一項第二号に該当したため手帳がその効力を失つた者については、同号の理由が消滅したとき。

四 駐留軍関係離職者等臨時措置法(昭和三十三年法律第百五十八号)第十条の二第一項又は第二項の規定により同条第一項又は第二項の認定を受けた者(当該認定が同条第四項又は第五項の規定によりその効力を失つた日から一年を経過している者を除く。)又は受けることができる者でないこと。

五 沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第七十八条第一項の規定により沖縄失業者求職手帳の発給を受けた者(当該沖縄失業者求職手帳が同条第二項の規定によりその効力を失つた日から一年を経過している者を除く。)又は受けることができる者でないこと。

六 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法(昭和五十二年法律第九十四号)第四条第一項又は国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法施行規則(昭和五十二年労働省令第三十号)第三条の二の規定により漁業離職者求職手帳の発給を受けた者(当該漁業離職者求職手帳が同法第四条第三項の厚生労働省令で定める期間を経過したことにより、又は同条第四項の規定によりその効力を失つた日から一年を経過している者を除く。)又は受けることができる者でないこと。

七 本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(昭和五十六年法律第七十二号)第十六条第一項若しくは第二項又は本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法に基づく就職指導等に関する省令(昭和五十六年労働省令第三十八号)第一条の規定により一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳の発給を受けた者(当該一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳が同法第十六条第三項の規定によりその効力を失つた日から一年を経過している者を除く。)又は受けることができる者でないこと。

八 雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成十七年厚生労働省令第八十二号)による改正前の雇用対策法施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)附則第八条又は第九条の規定により石炭鉱業離職者求職手帳の発給を受けた者(当該石炭鉱業離職者求職手帳が同令附則第十二条第一項に規定する期間が経過したことにより、又は同条第二項の規定によりその効力を失つた日から一年を経過している者を除く。)でないこと。

3 手帳の発給の申請があつたときは、管轄公共職業安定所の長は、申請を受理した日から原則として三十日以内に、申請者が法第二十条の規定に該当する者であるかどうかを審査し、該当する者であると認めるときは申請者に手帳を発給し、該当しない者であると認めるときはその旨を、申請者に対して、文書により通知するものとする。

4 管轄公共職業安定所の長は、前項の審査をする場合において必要があると認めるとき

は、申請対して、健康診断の結果に関する医師の証明書の提出を求め、又は技能、体

力、適性等に関する検査を実施するものとする。

5 手帳の様式は、職業安定局長が定めるところによる。

 

第21条(手帳の有効期間)

 手帳は、厚生労働省令で定める期間、その効力を有する。

 

2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者であつて、前項の手帳の有効期間を経過

してもなお就職が困難であり、引き続き第二十三条第一項各号に掲げる措置を実施する必

要があると認められるものについて、その手帳の有効期間を厚生労働省令で定める期間延

長することができる。

 

3 前二項の厚生労働省令で定める期間を定めるに当たつては、特定地域に居住する者について特別の配慮をすることができる。

 

則第8条(手帳の有効期間

 法第二十一条第一項の厚生労働省令で定める期間は、手帳の発給の日から起算して、六月とする。ただし、法第二十四条第一項の規定により管轄公共職業安定所の長が法第二十三条第一項の計画に準拠した同項第二号に掲げる措置又は同項第三号に掲げる措置(失業者に作業環境に適応することを容易にさせるために行なわれる訓練に限る。)受けることを指示した場合において、当該措置が当該六月の期間内に終了しないものであるときは、当該措置が終了するまでの間とする。

2 第二十一条第二項の規定による手帳の有効期間の延長は、手帳の発給を受けた者のうち次の各号のいずれかに該当する者であつて、引き続き法第二十三条第一項の計画に準拠した同項各号に掲げる措置(以下「就職促進の措置」という。)を実施する必要があると認められるものについて行なうものとする。

一 五十五歳以上六十五歳未満の者(第三号に掲げる者を除く。)

二 特定地域に居住する者にあつては、前号に掲げる者のほか、四十五歳以上五十五歳未満の者(次号に掲げる者を除く。)

 三 職業安定局長が定めた基準により管轄公共職業安定所の長が就職が特に困難であると認める者

3 法第二十一条第二項の厚生労働省令で定める期間は、第一項の期間の末日の翌日から起算して、前項第一号及び第三号に掲げる者であつて特定地域以外の地域に居住するもの及び同項第二号に掲げる者にあつては六月、同項第一号及び第三号に掲げる者であつて特定地域に居住するものにあつては一年とする。

 

第22条(手帳の失効

 

 手帳は、公共職業安定所長が当該手帳の発給を受けた者が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その効力を失う。

一 新たに安定した職業に就いたとき。

二 第二十条各号に掲げる要件のいずれかを欠くに至つたとき。

三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて定める要件に該当するとき。

2 前項の場合においては、公共職業安定所長は、その旨を当該手帳の発給を受けた者に通知するものとする。

 

則第9条(手帳の失効)

 法第二十二条第一項第三号の厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて定める要件は、次のとおりとする。

一 法第二十四条第一項若しくは第二項又は法第二十五条第二項の指示に従わない場合であつて、次のいずれにも該当しないとき。次のいずれかに該当するかどうかを判断する場合は、雇用保険法第三十二条第三項の基準に準じて職業安定局長が作成した基準によつて行う。

イ 指示された就職促進の措置又は紹介された職業がその者の能力からみて不適当であるとき。

ロ 指示された就職促進の措置を受けるため、又は紹介された職業に就くために、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であるとき。

ハ 就職先の賃金が同一地域における同種の業務及び技能に係る一般の賃金水準に比べて不当に低いとき。

ニ 職業安定法第二十条の規定に違反して、労働争議の発生している事業所に紹介されたとき。

ホ その他正当な理由があるとき。

二 疾病、負傷その他の理由により、就職促進の措置を受けることができず当該措置の効果を期待することが困難なとき。

三 偽りその他不正の行為により、雇用対策法第十八条の職業転換給付金、雇用保険法の規定による失業等給付その他法令又は条例の規定によるこれらに相当する給付の支給を受け、又は受けようとしたとき。ただし、やむを得ない理由があると認められるときを除く。

2 法第二十二条第二項の通知は、同条第一項の規定により失効した手帳を返納すべき期限を付して、文書により行なうものとする。

 

則第10条(手帳の返納)

 手帳の発給を受けた者は、第八条第一項又は第三項に規定する期間が経過することによ

手帳がその効力を失つた場合は当該期間の経過後すみやかに、法第二十二条第一項の規

定により手帳がその効力を失つた場合は前条第二項の期限までに、当該手帳を管轄公共職

業安定所の長に返納しなければならない。

 

則第11条(手帳の再交付)

 手帳を滅失し、又はき損した者は、職業安定局長が定める手続及び様式に従い、管轄公共職業安定所の長に手帳の再交付を申請することができる。

2 手帳を滅失したことにより手帳の再交付を受けた者は、滅失した手帳を発見したときは、これをすみやかに管轄公共職業安定所の長に返納しなければならない。

 

則第12条(中高年齢失業者等求職手帳受給者台帳)

 管轄公共職業安定所の長は、手帳の発給を受けた者ごとに中高年齢失業者等求職手帳受給者台帳を備え、これに手帳の発給及び失効その他手帳の発給を受けた者に関して必要な事項を記載するものとする。

 

第23条(計画の作成)

 厚生労働大臣は、手帳の発給を受けた者の就職を容易にするため、次の各号に掲げる措

置が効果的に関連して実施されるための計画を作成するものとする。

一 職業指導及び職業紹介

二 公共職業能力開発施設の行う職業訓練(職業能力開発総合大学校の行うものを含む。)

三 国又は地方公共団体が実施する訓練(前号に掲げるものを除く。)であつて、失業者に作業環境に適応することを容易にさせ、又は就職に必要な知識及び技能を習得させるために行われるもの(国又は地方公共団体の委託を受けたものが行うものを含む。)

 四 前三号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定めるもの

2 厚生労働大臣は、前項の計画を作成しようとする場合には、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

 

中高年齢失業者等求職手帳の効力

 手帳の所持の効果としては、都道府県条例による職業訓練手当の支給があります。このほかの施策については、各公共職業安定所にお問い合わせください。

参考:中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法

※改正後は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に改称

第一章 総則

第一条 (目的)この法律は、中高年齢者等に係る雇用及び失業の状況にかんがみ、これらの者がその能力に適合した職業につくことを促進するための特別の措置を講ずることにより、その職業の安定を図ることを目的とする。 

第二条 (定義)この法律において「中高年齢者」とは、労働省令で定める年齢以上の者をいう。

2 この法律において「中高年齢失業者等」とは、労働省令で定める範囲の年齢の失業者その他就職が特に困難な労働省令で定める失業者をいう。

3 この法律において「特定地域」とは、中高年齢者である失業者が就職することが著しく困難である地域として労働大臣が指定する地域をいう。 

第三条 (船員に対する適用除外)この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。

   第二章 中高年齢者に対する特別措置

第四条 (適職の研究等)労働大臣は、中高年齢者の能力に適合した職業、中高年齢者の労働能力の開発方法その他中高年齢者の雇用の促進に関し必要な事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるものとする。

第五条 (求人者等に対する指導及び援助)公共職業安定所は、中高年齢者にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、求人者に対して、年齢その他の求人の条件について指導するものとする。

2 公共職業安定所は、中高年齢者を雇用し、又は雇用しようとする者に対して、雇入れ、配置、作業の設備又は環境等中高年齢者の雇用に関する技術的事項について、必要な助言その他の援助を行なうことができる。

第六条 (職業紹介等を行なう施設の整備等)国は、中高年齢者に対する職業紹介等を効果的に行なうために必要な施設の整備に努めなければならない。

2 国は、地方公共団体等が、中高年齢者に対し職業に関する相談に応ずる業務を行なう施設を設置する等中高年齢者の雇用を促進するための措置を講ずる場合には、必要な援助を行なうことができる。

第七条 (雇用率の設定等)労働大臣は、政令で定めるところにより、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第二十条の規定により中高年齢者について選定した職種に応じ、中高年齢者の雇用率を設定することができる。

2 常時労働者を使用する事業所の事業主は、前項の規定により雇用率が設定された職種の労働者の雇入れについては、常時使用する当該職種の中高年齢者である労働者の数が、常時使用する当該職種の労働者の総数に、当該職種の中高年齢者の雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)以上であるように努めなければならない。

第八条 (求人の申込みの受理に関する特例)公共職業安定所は、常時使用する前条第一項の規定により雇用率が設定された職種の中高年齢者である労働者の数が同条第二項の規定により算定した数未満である事業所の事業主が、中高年齢者でないことを条件とする当該職種に係る求人の申込みをした場合には、これを受理しないことができる。

第九条 (雇入れの要請)労働大臣は、中高年齢者の雇用を促進するため特に必要があると認める場合には、常時百人以上の労働者を使用する事業所であつて、常時使用する第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の中高年齢者である労働者の数が同条第二項の規定により算定した数未満であり、かつ、その数を増加するのに著しい困難を伴わないと認められるものの事業主に対して、当該職種の中高年齢者である労働者の数が同項の規定により算定した数以上となるようにするために必要な措置をとることを要請することができる。

第十条 (事業主に対する給付金等)国及び都道府県は、中高年齢者(労働省令で定める範囲の年齢の者に限る。)が第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の労働者として雇用されることを促進するための作業環境に適応させる訓練を行なう事業主に対しては、雇用対策法の規定に基づき支給する当該訓練に係る給付金の額について特別の配慮を加えるものとする。

第十一条 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法(昭和三十六年法律第百十六号)第十九条第三項第一号の業務を行なうにあたつては、事業主が中高年齢者を第七条第一項の規定により雇用率が設定された職種の労働者として雇い入れることを促進するため、貸付けの実施基準等について特別の配慮を加えるものとする。

   第三章 中高年齢失業者等に対する特別措置

第十二条 中高年齢失業者等求職手帳の発給)公共職業安定所長は、中高年齢失業者等であつて、次の各号に該当するものに対して、その者の申請に基づき、中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)を発給する。

 一 公共職業安定所に求職の申込みをしていること。

 二 誠実かつ熱心に就職活動を行なう意欲を有すると認められること。

 三 第十五条第一項各号に掲げる措置を受ける必要があると認められること。

 四 前三号に掲げるもののほか、生活の状況その他の事項について労働大臣が中央職業安定審議会の意見をきいて定める要件に該当すること。

第十三条 (手帳の有効期間)手帳は、労働省令で定める期間、その効力を有する。

2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者であつて、前項の手帳の有効期間を経過してもなお就職が困難であり、引き続き第十五条第一項各号に掲げる措置を実施する必要があると認められるものについて、その手帳の有効期間を労働省令で定める期間延長することができる。

3 前二項の労働省令で定める期間を定めるにあたつては、特定地域に居住する者について特別の配慮をすることができる。

第十四条 (手帳の失効)手帳は、公共職業安定所長が当該手帳の発給を受けた者が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その効力を失う。

 一 新たに安定した職業についたとき。

 二 第十二条各号に掲げる要件のいずれかを欠くに至つたとき。

 三 前二号に掲げるもののほか、労働大臣が中央職業安定審議会の意見をきいて定める要件に該当するとき。

2 前項の場合においては、公共職業安定所長は、その旨を当該手帳の発給を受けた者に通知するものとする。

第十五条 (計画の作成)労働大臣は、手帳の発給を受けた者の就職を容易にするため、次の各号に掲げる措置が効果的に関連して実施されるための計画を作成するものとする。

 一 職業指導及び職業紹介

 二 公共職業訓練施設の行なう職業訓練

 三 国又は地方公共団体が実施する訓練(前号に掲げるものを除く。)であつて、失業者に作業環境に適応することを容易にさせ、又は就職に必要な知識及び技能を習得させるために行なわれるもの(国又は地方公共団体の委託を受けたものが行なうものを含む。)

 四 前三号に掲げるもののほか、労働省令で定めるもの

2 労働大臣は、前項の計画を作成しようとする場合には、中央職業安定審議会の意見をきかなければならない。

第十六条 (公共職業安定所長の指示)公共職業安定所長は、手帳を発給するときは、手帳の発給を受ける者に対して、その者の知識、技能、職業経験その他の事情に応じ、当該手帳の有効期間中前条第一項の計画に準拠した同項各号に掲げる措置(以下「就職促進の措置」という。)の全部又は一部を受けることを指示するものとする。

2 公共職業安定所長は、手帳の発給を受けた者について当該手帳の有効期間を延長するときは、あらためて、その延長された有効期間中就職促進の措置の全部又は一部を受けることを指示するものとする。

3 公共職業安定所長は、前二項の指示を受けた者の就職促進の措置の効果を高めるために必要があると認めたときは、その者に対する指示を変更することができる。

第十七条 (関係機関等の責務)職業安定機関、地方公共団体及び雇用促進事業団は、前条第一項又は第二項の指示を受けた者の就職促進の措置の円滑な実施を図るため、相互に密接に連絡し、及び協力するように努めなければならない。

2 前条第一項又は第二項の指示を受けた者は、その就職促進の措置の実施にあたる職員の指導又は指示に従うとともに、自ら進んで、すみやかに職業につくように努めなければならない。

第十八条 (手当の支給)国及び都道府県は、第十六条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対して、その就職活動を容易にし、かつ、生活の安定を図るため、手帳の有効期間中、雇用対策法の規定に基づき、手当を支給することができる。

第十九条 (就職促進指導官)就職促進の措置としての職業指導は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第九条の二第一項の就職促進指導官に行なわせるものとする。

第二十条 (報告の請求)公共職業安定所長は、第十六条第一項又は第二項の指示を受けて就職促進の措置を受ける者に対し、その就職活動の状況について報告を求めることができる。

第二十一条 (特定地域における措置)労働大臣は、特定地域に居住する中高年齢失業者等について、職業紹介、職業訓練等の実施、就業の機会の増大を図るための事業の実施その他これらの者の雇用を促進するため必要な事項に関する計画を作成し、その計画に基づき必要な措置を講ずるものとする。

第二十二条 労働大臣は、特定地域における中高年齢失業者等の就職の状況等からみて必要があると認めるときは、当該特定地域において計画実施される公共事業(国自ら又は国の負担金の交付を受け、若しくは国庫の補助により地方公共団体等が計画実施する公共的な建設又は復旧の事業をいう。以下同じ。)について、その事業種別に従い、職種別又は地域別に、当該事業に使用される労働者の数とそのうちの中高年齢失業者等の数との比率(以下「失業者吸収率」という。)を定めることができる。

2 失業者吸収率の定められている公共事業を計画実施する国又は地方公共団体等(これらのものとの請負契約その他の契約に基づいて、その事業を施行する者を含む。以下「公共事業の事業主体等」という。)は、公共職業安定所の紹介により、つねに失業者吸収率に該当する数の中高年齢失業者等を雇い入れていなければならない。

3 公共事業の事業主体等は、前項の規定により雇入れを必要とする数の中高年齢失業者等を公共職業安定所の紹介により雇い入れることが困難な場合には、その困難な数の労働者を、公共職業安定所の書面による承諾を得て、直接雇い入れることができる。

第二十三条 (労働省令への委任)この章に定めるもののほか、手帳の発給、手帳の返納その他手帳に関し必要な事項、第十六条第一項又は第二項の指示の手続に関し必要な事項及び公共事業への中高年齢失業者等の吸収に関し必要な事項は、労働省令で定める。

※現在は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に改正されています。なお、実情は手帳所持により就職活動が特段容易になるわけでは無い様子です。

雇用対策法施行令、施行規則

令第2条

 法第十八条第六号の政令で定める給付金は、次のとおりとする。
一 求職者が公共職業安定所の紹介により就職することを促進し、又は求職者が事業を開始することに要する費用に充てるための給付金
二 事業主が公共職業安定所の紹介により高年齢者、障害者その他就職が特に困難な者を雇い入れることを促進するための給付金
 

則第6条の2(特定求職者雇用開発助成金

令第二条第二号に掲げる給付金(以下「特定求職者雇用開発助成金」という。)は、次の各号のいずれにも該当する事業主に対して、支給するものとする。
一 次のいずれかに該当する六十五歳未満(リからカまでに該当する者にあつては、四十五歳以上六十五歳未満)の求職者であつて、法第十八条第一号又は第二号に掲げる給付金の支給を受け、又は受けることができるもの(公共職業安定所長の指示により作業環境に適応させる訓練(その期間が二週間(障害者雇用促進法第二条第二号に規定する身体障害者(以下この条において「身体障害者」という。)又は知的障害者であつて、その身体障害又は知的障害の程度を勘案して厚生労働大臣が定めるものに係る訓練にあつては、四週間)以内のものを除く。)を受け、又は受けたことのある求職者であつて、当該訓練を行い、又は行つた事業主に雇い入れられるもの及び同一の事由により、雇用保険法の規定による求職者給付又は就職促進給付その他法令又は条例の規定による当該給付金に相当する給付の支給を受け、又は受けることができる求職者を除く。)を公共職業安定所の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主であること。
イ 六十歳以上の者
ロ 身体障害者
ハ 知的障害者
ニ 精神障害者
ホ 母子家庭の母等
ヘ 父子家庭の父
ト 中国残留邦人等永住帰国者
チ 北朝鮮帰国被害者等
リ 認定駐留軍関係離職者
ヌ 沖縄失業者求職手帳所持者
ル 漁業離職者求職手帳所持者
ヲ 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(本四連絡橋特別措置法第五条第一項に規定する実施計画について同項の規定により認定を受けた事業主以外の事業主に雇い入れられるものに限る。)
ワ 港湾運送事業離職者(第一条の四第一項第六号に規定する事業規模の縮小等の実施について同号の規定により認定を受けた事業主以外の事業主に雇い入れられる者に限る。)
カ イからワまでのいずれかに該当する者のほか、公共職業安定所長が就職が著しく困難であると認める者
二 前号の雇入れの日の前日から起算して六箇月前の日から一年を経過した日までの間(次号において「基準期間」という。)において、当該雇入れに係る事業所の労働者を解雇した事業主(天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となつたこと又は労働者の責めに帰すべき理由により解雇した事業主を除く。)以外の事業主であること。
三 当該雇入れに係る事業所に雇用されていた者であつて基準期間に離職したもののうち当該基準期間に雇用保険法第二十三条第三項に規定する特定受給資格者として受給資格の決定がなされたものの数等から判断して、適正な雇用管理を行つていると認められる事業主であること。
四 当該事業所の労働者の離職状況及び第一号の雇入れに係る者に対する賃金の支払の状況を明らかにする書類を整備している事業主であること。
2 特定求職者雇用開発助成金の額は、前項第一号に該当する雇入れに係る者一人につき、五十万円(中小企業事業主(その資本金の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)を超えない事業主及びその常時雇用する労働者の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)を超えない事業主をいう。)にあつては、六十万円)とする。
3 第一項第一号に該当する雇入れであつて、短時間労働者(一週間の所定労働時間が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短く、かつ、雇用保険法第三十八条第一項第二号の厚生労働大臣の定める時間数未満である者をいう。以下この条において同じ。)として雇い入れる場合(次項各号に掲げる者を雇い入れる場合を除く。)における前項の規定の適用については、同項中「五十万円」とあるのは「三十万円」と、「六十万円」とあるのは「四十万円」とする。
4 第一項第一号に該当する雇入れであつて、短時間労働者として次に掲げる者を雇い入れる場合における第二項の規定の適用については、同項中「五十万円」とあるのは「三十万円」と、「六十万円」とあるのは「八十万円」とする。
一 身体障害者
二 知的障害者
三 精神障害者
5 第一項第一号に該当する雇入れであつて、次の各号のいずれかに該当する者を雇い入れる場合(短時間労働者として雇い入れる場合及び次項各号に掲げる者を雇い入れる場合を除く。)における第二項の規定の適用については、同項中「六十万円」とあるのは、「百二十万円」とする。
一 身体障害者
二 知的障害者
6 第一項第一号に該当する雇入れであつて、次の各号のいずれかに該当する者を雇い入れる場合(短時間労働者として雇い入れる場合を除く。)における第二項の規定の適用については、同項中「五十万円」とあるのは「百万円」と、「六十万円」とあるのは「二百四十万円」とする。
一 障害者雇用促進法第二条第三号に規定する重度身体障害者
二 障害者雇用促進法第二条第五号に規定する重度知的障害者
三 四十五歳以上の身体障害者(第一号に掲げる者を除く。)
四 四十五歳以上の知的障害者(第二号に掲げる者を除く。)
五 精神障害者
7 第一項の規定にかかわらず、国、地方公共団体、特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人(その資本金の全部若しくは大部分が国からの出資による法人又はその事業の運営のために必要な経費の主たる財源を国からの交付金若しくは補助金によつて得ている法人に限る。)、行政執行法人及び特定地方独立行政法人に対しては、特定求職者雇用開発助成金を支給しない。
8 第一項の規定にかかわらず、労働保険料の納付の状況が著しく不適切である、又は過去三年以内に偽りその他不正の行為により、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百二条の二に規定する雇用調整助成金その他の雇用保険法第四章の規定により支給される給付金の支給を受け、若しくは受けようとした事業主に対しては、特定求職者雇用開発助成金を支給しない。

 

 

以上で高齢者雇用法第20条・第21条・第22条・第23条を終了します。

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高齢者雇用法第18条の2、第19条

2015年06月07日 15:06

高年齢者等の雇用の安定等の法律

第18条の2(募集及び採用についての理由の提示等

 事業主は、労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(六十五歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、厚生労働省令で定める方法により、当該理由を示さなければならない。

 

2 厚生労働大臣は、前項に規定する理由の提示の有無又は当該理由の内容に関して必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

 

則第6条の5法第十八条の二第一項の厚生労働省令で定める方法)

 法第十八条の二第一項の厚生労働省令で定める方法は、同項に規定する理由(第三項において「理由」という。)を労働者の募集及び採用の用に供する書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)に併せて記載又は記録する方法とする。

 

2 前項の書面又は電磁的記録には、次の各号に掲げるものを含むものとする。

一 公共職業安定所又は職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)その他の法律の規定による許可を受けて、若しくは届出をして、職業紹介を行う者に事業主が求人を申し込む場合における当該求人の申込みの内容を記載し、又は記録したもの

二 職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、事業主がその被用者以外のものに委託して労働者の募集を行う場合における当該委託に係る募集の内容を記載し、又は記録したもの

三 職業安定法第四十五条の規定により労働者供給事業を行うものから事業主が労働者供給を受けようとする場合における供給される労働者が従事すべき業務の内容等を当該労働者供給事業者に対して明らかにしたもの

 

3 第一項の規定にかかわらず、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告その他こ

れに類する方法により労働者の募集及び採用を行う場合又は第一項の書面若しくは電

磁的記録がない場合において、あらかじめ同項の方法により理由を提示することが困

難なときは、求職者の求めに応じて、遅滞なく、次のいずれかの方法により理由を示

すことができる。

一 書面の交付の方法

二 電子情報処理組織(事業主の使用に係る電子計算機と、求職者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、求職者が当該方法により記録された電磁的記録を出力することによる書面を作成することができるもの

 

第19条(定年退職等の場合の退職準備援助の措置)

 事業主は、その雇用する高年齢者が定年その他これに準ずる理由により退職した後

においてその希望に応じ職業生活から円滑に引退することができるようにするために必要

な備えをすることを援助するため、当該高年齢者に対し、引退後の生活に関する必要な知

識の取得の援助その他の措置を講ずるように努めなければならない。

 

平成24年通達

募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等
 高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
 
・高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
1 高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項
 国は、高年齢者雇用確保措置が各企業の労使間での十分な協議の下に適切かつ有効に実施されるよう、次の⒧から⑷までの事項に重点をおいて施策を展開する。
 ⒧  高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の周知徹底
 65 歳未満定年の定めのある企業において、65 歳までの高年齢者雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65 歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第9条第3項に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24 年厚生労働省告示第560 号)の内容について、その周知徹底を図る。
 ⑵  高年齢者雇用確保措置に係る指導等
 都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において高年齢者雇用確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組む。
 その際、特に、企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者雇用確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。
 また、高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる。
                      

高齢者雇用法第18条の2 のまとめ

第1項 募集の際に年齢制限を付す場合の理由の付記

 募集の際に年齢制限を付す場合には、求人票等にその理由を付さなければなりません。ただし、その年齢制限が65歳未満の場合に限ります。また、新聞・雑誌等により求人広告を掲載し募集する場合において、あらかじめ年齢制限を付す理由を掲載することが困難な場合には、求職者の求めに応じて遅滞なく年齢制限の理由を付すことができるとされています。※則6条の5第3項

第2項 求人の際の年齢宣言の理由に付記する理由に関する措置

 厚生労働大臣は、事業主が付した年齢制限に関する理由について必要がある場合には、報告を求め、助言・指導・勧告をすることができるとされています。

平成24年通達 第19条関連

・高齢期の職業生活設計の援助
 労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発、指導に努める。
 また、個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、相談援助体制の整備に努める。
 
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、高齢者、障害者、事業主に対し、様々な情報提供等を行っています。
 
参考:機構HP https://www.jeed.or.jp
 
 
以上で高齢者雇用法第18条の2・第19条を終了します。
 
 
 
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高齢者雇用法第17条の2、第18条

2015年06月06日 16:52

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第17条の2(指導、助言及び勧告

 厚生労働大臣は、前条第一項の規定に違反している事業主に対し、必要な指導及び助言

をすることができる。

 

2 厚生労働大臣は、前項の規定による指導又は助言をした場合において、その事業主がなお前条第一項の規定に違反していると認めるときは、当該事業主に対し、求職活動支援書を作成し、当該求職活動支援書に係る高年齢者等に交付すべきことを勧告することができる。

 

第18条(求職活動支援書に係る労働者に対する助言その他の援助)

 求職活動支援書の交付を受けた労働者は、公共職業安定所に求職の申込みを行うとき

は、公共職業定所に、当該求職活動支援書を提示することができる。

 

2 共職業安定所は、前項の規定により求職活動支援書の提示を受けたときは、当該求

職活動支援書の記載内容を参酌し、当該求職者に対し、その職務の経歴等を明らかにす

る書面の作成に関する助言その他の援助を行うものとする。

 

3 公共職業安定所長は、前項の助言その他の援助を行うに当たり、必要と認めるときは、当該求職活動支援書を作成した事業主に対し、情報の提供その他必要な協力を求めることができる。

 

求職活動支援書関連の通達 

求職活動支援書の作成等
 離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、当該者の能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定者についても、当該離職予定者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める。※第17条関係、なお条文上は作成交付を義務付けています。
 求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。※則6条の3関係
 なお、求職活動支援書を作成する際には、交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができる「職業キャリアが長い方向けのジョブ・カード」の様式を積極的に活用する。
⑷ 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等
 求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
 また、公共職業安定所の求めに応じ、当該離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等公共職業安定所との連携、協力に努める。※則6条の4関係
⑸ 助成制度の有効な活用
求職活動支援書の作成及び交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。
 

高齢者雇用法第17条の2 まとめ

 離職する高年齢者等が希望しているにも拘らず、求職活動支援書を作成交付しない事業主に対して、厚生労働大臣は、指導、助言、及び求職活動支援書を作成交付するように勧告することが出来るとされています。

高齢者雇用法第18条 まとめ

第1項 離職した高年齢者等は、公共職業安定所に求職の申し込みを行う場合において、交付されている「求職活動支援書」を離職票等と併せて提出することができるとしています。 

第2項 求職活動支援書の提出を受けた公共職業安定所は、当該の高年齢者等が「職務経歴書」を作成する場合の助言等の援助を行うものとされています。

第3項 公共職業安定所長は、必要があれば、高年齢者等が提出した求職活動支援書の内容に関し作成した事業主に情報の提供等を求めることができるとされています。

 

 

以上で高齢者雇用法第17条の2・第18条を終了します。

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高齢者雇用法第17条

2015年06月06日 14:55

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第17条(求職活動支援書の作成等

 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、解雇等により離職することとなつている高年齢者等が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、当該高年齢者等の職務の経歴、職業能力その他の当該高年齢者等の再就職に資する事項(解雇等の理由を除く。)として厚生労働省令で定める事項及び事業主が講ずる再就職援助措置を明らかにする書面(以下「求職活動支援書」という。)を作成し、当該高年齢者等に交付しなければならない。

 

2 前項の規定により求職活動支援書を作成した事業主は、その雇用する者のうちから再

就職援担当者を選任し、その者に、当該求職活動支援書に基づいて、厚生労働省令で定

めるところにより、公共職業安定所と協力して、当該求職活動支援書に係る高年齢者

等の再就職の援助に関する務を行わせるものとする。

 

則第6条の3(求職活動支援書の作成等)

 事業主は、法第十七条第一項の求職活動支援書(以下「求職活動支援書」という。)を作成する前に、離職することとなつている対象高年齢者等(以下「高年齢離職予定者」という。)に共通して講じようとする再就職援助措置の内容について、当該求職活動支援書に係る事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くものとする。

 

2 事業主は、高年齢離職予定者の決定後速やかに、求職活動支援書の交付についての本人の希望を聴いて、これを作成し、交付するものとする。

 

3 事業主は、求職活動支援書の作成に当たつては、あらかじめ、当該求職活動支援書に係る高年齢離職予定者の再就職及び在職中の求職活動に関する希望の内容を聴くものとする。

 

4 事業主は、第二項の規定による求職活動支援書の交付に代えて、第六項で定めるところにより高年齢離職予定者の承諾を得て、第八項各号に掲げる事項(以下この条において「支援書情報」という。)を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、事業主は、求職活動支援書を交付したものとみなす。

一 電子情報処理組織(事業主の使用に係る電子計算機と、高年齢離職予定者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)使用する方法のうち、事業主の使用に係る電子計算機と高年齢離職予定者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて支援書情報を送信し、高年齢離職予定者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法

二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもつて調製するファイルに支援書情報を記録したものを交付する方法

 

5 前項各号に掲げる方法は、高年齢離職予定者がファイルへの記録を出力することによ

面を作成することができるものでなければならない。

 

6 事業主は、第四項の規定により支援書情報を提供しようとするときは、あらかじめ、当該高年齢離職予定者に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

一 第四項各号に規定する方法のうち事業主が使用するもの

二 ファイルへの記録の方式

 

7 前項の規定による承諾を得た事業主は、当該高年齢離職予定者から書面又は電磁

的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があつたときは、当該高年

齢離職予定者に対し、支援書情報の提供を電磁的方法によつてしてはならない。ただ

し、当該高年齢離職予定者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでな

い。

 

8 法第十七条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 高年齢離職予定者の氏名、年齢及び性別

二 高年齢離職予定者が離職することとなる日(離職することとなる日が決定していない場合には離職することとなる時期)

三 高年齢離職予定者の職務の経歴(従事した主な業務の内容、実務経験、業績及び達成事項を含む。)

四 高年齢離職予定者が有する資格、免許及び受講した講習

五 高年齢離職予定者が有する技能、知識その他の職業能力に関する事項

六 前三号に掲げる事項のほか、高年齢離職予定者が職務の経歴等を明らかにする書面を作成するに当たつて参考となる事項その他の再就職に資する事項

 

則第6条の4

 

 法第十七条第二項の規定による再就職援助担当者の業務は、次のとおりとする。

一 高年齢離職予定者に係る求人の開拓及び求人に関する情報の収集並びにこれらによつて得た求人に関する情報の高年齢離職予定者に対する提供

二 高年齢離職予定者に対する再就職を容易にするために必要な相談の実施

三 高年齢離職予定者の再就職の援助に関する公共職業安定所、公共職業能力開発施設等との連絡

四 前三号に掲げるもののほか、高年齢離職予定者の再就職の援助のために必要な業務

 

2 事業主は、再就職援助担当者に、その業務の遂行に係る基本的な事項について、求職

活動支援書に係る事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはそ

の労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数

を代表する者の意見を聴いてその業務を行うようにさせるものとする。

 

求職活動支援書

 厚生労働省のHPより原文のまま引用します。

ア 求職活動支援書

 事業主は、「事業主都合の解雇等」又は「継続雇用制度の対象となる高齢者に係る基準に該当しなかったこと」により離職することが予定されている高年齢者等(45歳以上65歳未満)が希望するときは、在職中のなるべく早い時期から高年齢者等が主体的に求職活動を行えるよう、自主的に職務経歴書を作成するための参考となる情報(高年齢者等の職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項)を記載した書面(求職活動支援書)を作成し、交付しなければならないこととされています。

イ 求職活動支援書の内容 

 求職活動支援書には、(1)離職予定者の氏名、年齢及び性別、(2)離職予定者が離職することとなる日(離職することとなる日が決定していない場合には離職することとなる時期)、(3)離職予定者の職務の経歴(従事した主な業務の内容、実務経験、業績及び達成事項を含む。)、(4)離職予定者が有する資格、免許及び受講した講習、(5)離職予定者が有する技能、知識その他の職業能力に関する事項、(6)職務の経歴等を明らかにする書面を作成するに当たって参考となる事項その他の再就職に関する事項、(7)事業主が講ずる再就職援助の措置(※2) 

 ※2 事業主が講ずる再就職援助の措置の具体例

(1) 職場体験講習の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇等の付与

(2) (1)の休暇日等についての賃金の支給、職場体験講習等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的支援

(3) 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん

(4) 再就職に資する職場体験講習、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん

(5) 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備

なお、再就職援助計画書の様式は、次からダウンロードできます。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/230401_1.pdf#search='%E5%86%8D%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%8F%B4%E5%8A%A9%E6%8B%85%E5%BD%93%E8%80%85'

 

再就職援助担当者

 再就職援助担当者は、解雇その他の理由により自社において高年齢離職者が発生する場合には、則第6条の4に定められている業務を行うものとされています。

① 解雇その他の理由により自社において高年齢離職者が発生する場合に、再就職に関する情報を高年齢離職予定者に対し提供すること

② 当該の高年齢離職者に対する再就職を容易にするために必要な相談の実施

③ 同じく再就職の援助に関する公共職業安定所、公共職業能力開発施設等との連絡

➃ その他、高年齢離職予定者の再就職の援助のために必要な業務

※なお、求職活動支援書を作成するに当たっては、労働組合等の意見を聴くこと、高年齢離職者本人の希望を聴くことなどが求められています。

 私見ですが、本人の希望が本法第17条の事業主の措置実施の要件ですから、法の趣旨達成の効果測定の見地から、実際の状況についてのモニタリング等を行う必要があるものと思料する次第です。

 

以上で高齢者雇用法第17条を終了いたします。

 

 

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高齢者雇用法第15条、第16条

2015年06月06日 13:17

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第15条(再就職援助措置

 事業主は、その雇用する高年齢者等(厚生労働省令で定める者に限る。以下この節

において同じ。)が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他これ

類するものとして厚生労働省令で定る理由(下「解雇等」という。)により

職する場合おいて、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、求人の開

その他当該高齢者等の再就職の援助に関し必要な措置(以下「再就職援助措置」

う。)を講ずるように努めなければならない。

 

2 公共職業安定所は、前項の規定により事業主が講ずべき再就職援助措置につ

て、当該事業主の求めに応じて、必要な助言その他の援助を行うものとする。

 

則第6条(再就職援助措置の対象となる高年齢者等の範囲等)

 法第十五条第一項の厚生労働省令で定める者は、四十五歳以上六十五歳未満の者であつて次の各号のいずれにも該当しないもの(以下「対象高年齢者等」という。)とする。

一 日々又は期間を定めて雇用されている者(同一の事業主に六月を超えて引き続き雇用されるに至つている者を除く。)

二 試みの使用期間中の者(同一の事業主に十四日を超えて引き続き雇用されるに至つている者を除く。)

三 常時勤務に服することを要しない者として雇用されている者

 

2 法第十五条第一項の厚生労働省令で定める理由は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成二十四年法律第七十八号)附則第三項の規定によりなおその効力を有することとされる同法による改正前の法第九条第二項の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における当該基準に該当しなかつたことその他事業主の都合とする。

 

第16条(多数離職の届出)

 

 事業主は、その雇用する高年齢者等のうち厚生労働省令で定める数以上の者が解雇等により離職する場合には、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならない。

 

2 前項の場合における離職者の数の算定は、厚生労働省令で定める算定方法により行うものとする。


則第6条の2(多数離職の届出の対象となる高年齢者等の数等)

 

 法第十六条第一項の厚生労働省令で定める数は、五人とする。

 

2 法第十六条第一項の規定による届出は、多数離職届(様式第一号)を当該届出に

係る離職が生ずる日(当該届出に係る離職の全部が同一の日に生じない場合にあつて

は、当該届出に係る最後の離職が生ずる日)の一月前までに当該事業所の所在地を管

轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規

(平成十三年厚生労働省令第一号)第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公

共職業安定所とする。)の長に提出することによつて行わなければならない。

 

3 法第十六条第二項の規定による離職者の数の算定は、同一の事業所において、一月以内の期間に、法第十五条第一項に規定する解雇等により離職する対象高年齢者等の数を合計することにより行うものとする。ただし、当該離職に係る対象高年齢者等のうちに既に雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)第二十七条第一項の規定に基づいて行われた届出(同法第二十四条第五項の規定により同法第二十七条第一項の大量雇用変動の届出をしたものとされる同法第二十四条第三項の認定の申請を含む。)に係る者(当該多数離職の届出に係る期間において法第十五条第一項に規定する解雇等により離職する者に限る。)がある場合には、その者の数を当該合計数から控除するものとする。

 

再就職援助措置

・再就職の援助に関する指針(平成24 年11 月9日 職発1109第2号)

 事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の⒧から⑸までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする
⒧ 再就職援助等の対象者
 再就職の援助の対象となる高年齢者は、離職日において45 歳以上65 歳未満の者であって、解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)又は改正法附則第3項の規定によりなおその効力を有することとされる改正法による改正前の法第9条第2項の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における、当該基準に該当しなかったことその他事業主の都合により離職する者をいう。
⑵ 再就職の援助等に関する措置の内容
 ⒧に該当する高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、次の①から⑤までの援助を必要に応じて行うよう努める
 ①  教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
 ②  ①の休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に
   対する経済的な支援
 ③  求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
 ④  再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
 ⑤  事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
⑶ 求職活動支援書の作成等
 離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、当該者の能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定者についても、当該離職予定者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める
 求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。
 なお、求職活動支援書を作成する際には、交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができる「職業キャリアが長い方向けのジョブ・カード」の様式を積極的に活用する。
⑷ 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等
 求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
 また、公共職業安定所の求めに応じ、当該離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等公共職業安定所との連携、協力に努める
⑸ 助成制度の有効な活用
 求職活動支援書の作成及び交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。

 

多数離職届

 多数離職届けは、高齢者雇用法施行規則の末尾に様式が定められています。例えば事業所が東京都内にある場合には、東京労働局のHPに様式集があり、その末尾に多数離職届がありますのでそちらからダウンロードしてください。

https://tokyoroudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu_zenkoku.html

 

 

以上で高齢者雇用法第15条・第16条を終了します。

 

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高齢者雇用法第12条、第13条、第14条

2015年06月06日 11:39

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第12条(再就職の促進等の措置の効果的な推進

 国は、高年齢者等の再就職の促進等を図るため、高年齢者等に係る職業指導、職業紹介、職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるように配慮するものとする。


第13条(求人の開拓等

 

 公共職業安定所は、高年齢者等の再就職の促進等を図るため、高年齢者等の雇用の機会が確保されるように求人の開拓等を行うとともに、高年齢者等に係る求人及び求職に関する情報を収集し、並びに高年齢者等である求職者及び事業主に対して提供するように努めるものとする。

 

第14条(求人者等に対する指導及び援助

 

 公共職業安定所は、高年齢者等にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、求人者に対して、年齢その他の求人の条件について指導するものとする。

 

2 公共職業安定所は、高年齢者等を雇用し、又は雇用しようとする者に対して、雇入

れ、配置、作業の設備又は環境等高年齢者等の雇用に関する技術的事項について、必要

な助言その他の援助を行うことができる。

 

高齢者職業安定対策基本指針の内容

高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項
⒧ 再就職の援助等に関する指針の周知徹底
 企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。
⑵ 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導
 離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用状況報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談や本人からの再就職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
 さらに、交付が義務付けられていない定年退職等の離職予定者についても、求職活動支援書の自主的な作成及び交付並びにこれに基づく計画的な求職者支援を実施するよう事業主に対して啓発を行う。
 なお、離職予定高年齢者の的確な把握に資するため各事業所における定年制の状況や解雇等の実施に係る事前把握の強化を図るほか、法において高年齢者雇用状況報告や多数離職届の提出が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
⑶ 助成制度の有効な活用等
 在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、高年齢者の円滑な労働移動の支援を図る。また、高年齢者の雇用の実情を踏まえた当該助成制度の必要な見直しに努める。
⑷ 公共職業安定所による再就職支援
 公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。
 また、在職中に再就職先が決定せず失業するに至った高年齢者については、その原因について的確な把握に努めつつ、必要に応じて職業生活の再設計に係る支援や担当者制による就労支援を行うなど、効果的かつ効率的な職業指導・職業紹介を実施し、早期の再就職の促進に努める。
 特に、有期契約労働者であった離職者については、離職・転職が繰り返されるおそれがあることから、公共職業安定所におけるマッチング支援、担当者制によるきめ細かな支援等の活用により、早期の再就職の促進に努める。
 さらに、事業主に対して、機構と連携し、求職活動支援書の作成等に必要な情報提供等を行う。
⑸ 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等
 高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
⒧ 生涯現役社会の実現に向けた取組
 生涯現役社会の実現を目指すため、高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理について、労働者自身の意識と取組や企業の取組への支援を行うほか、多様な就業ニーズに対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を図る。
 また、生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。
 このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう周知するなど必要な支援に積極的に取り組む。
 また、機構その他の関係団体においては、年齢にかかわりなく働ける企業の普及及び促進を図るため、都道府県労働局等との連携を図りつつ、事業主のほか国民各層への啓発などの必要な取組を進める。
⑵ 高齢期の職業生活設計の援助
 労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発、指導に努める。
 また、個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、相談援助体制の整備に努める。
⑶ 各企業における多様な職業能力開発の機会の確保
 労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、長期教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保する。
⑷ 職業能力の適正な評価等の促進
 高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われることを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な情報の収集、整理、提供に努める。また、技能検定制度等労働者の職業能力の公正な評価に資する制度の整備を図る。
⑸ 教育訓練給付制度等の周知徹底及び有効な活用
 高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため、雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
 また、高年齢者の雇用の継続を促進するため、雇用保険制度に基づく高年齢雇用継続給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
⑹ 労働時間対策の推進
 高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策を推進する。
⑺ 高年齢者の安全衛生対策
 高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり、高年齢者の健康確保対策を推進する。
⑻ 多様な形態による雇用・就業機会の確保
 定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。

 

第12条、第13条、第14条のまとめ

 第12条~第14条は、「高年齢者等の再就職の促進についての国の措置(第12条)」「高年齢者等の再就職の促進についてのハローワークの努力義務(第13条)」「求人者に対するハローワークの指導及び事業主に対する『高年齢者等の雇用に関する技術的事項』についての助言指導(第14条)」を定めています。

 

 

 

以上で第12条・第13条・第14条を終了します。

 

 

 

 

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高齢者雇用法第10条、第11条

2015年06月06日 10:24

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第10条(公表等)

 厚生労働大臣は、前条第一項の規定に違反している事業主に対し、必要な指導及び

助言をすることができる。

 

2 厚生労働大臣は、前項の規定による指導又は助言をした場合において、その事業

主がなお前条第一項の規定に違反していると認めるときは、当該事業主に対し、高

年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告することができる。

 

3 厚生労働大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた

者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

 

第11条(高年齢者雇用推進者)

 

 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者を選任するように努めなければならない。

 

則第5条(高年齢者雇用推進者の選任)

 

 事業主は、法第十一条の業務を遂行するために要な知識及び経験を有していると認め

られる者のうちから当該業務を担当する者を高年齢者雇用推進者として選任するものとす

る。

 

第10条企業名の公表 厚生労働省作成 高齢者雇用法改正に関するQ&Aより

 

Q1-8:高年齢者雇用確保措置が講じられていない企業については、企業名の公表などは行われるのでしょうか。

A1-8:改正高年齢者雇用安定法においては、高年齢者雇用確保措置が講じられていない企業が、高年齢者雇用確保措置の実施に関する勧告を受けたにもかかわらず、これに従わなかったときは、厚生労働大臣がその旨を公表できることとされていますので、当該措置の未実施の状況などにかんがみ、必要に応じ企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、ハローワークでの求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じることにしています。

 

第11条 高年齢者雇用推進者の選任

 高年齢者雇用推進者とは、「高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条

の整備を図るための業務を担当する者」とされており、則第5条により「必要な知識及び経験を有し

いると認められる者のうちから当該業務を担当する者」を選任するように務めることとされていま

す。

 下記の法第52条に基づく「雇用状況報告書」には、高齢者雇用推進者の選任状況の記載欄が設けら

れています。

 

高齢者雇用法第52条(雇用状況の報告

 事業主は、毎年一回、厚生労働省令で定めるところにより、定年及び継続雇用制度の状況その他高

年齢者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の毎年一回の報告のほか、この法律を施行するために必要があると認める

ときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業主に対し、同項に規定する状況について必要な事

項の報告を求めることができる。

則第33条(高年齢者の雇用状況の報告) 

 事業主は、毎年、六月一日現在における定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況を翌月十五日までに、高年齢者雇用状況報告書(様式第二号)により、その主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所(その公共職業安定所が二以上ある場合には、厚生労働省組織規則第七百九十二条の規定により当該事務を取り扱う公共職業安定所とする。以下「管轄公共職業安定所」という。)の長を経由して厚生労働大臣に報告しなければならない。

2 厚生労働大臣は、法第五十二条第二項の規定により、事業主から同条第一項に規定する状況につ

いて必要な事項の報告を求めるときは、当該報告すべき事項を書面により通知するものとする。

 

 

 

以上で高齢者雇用法第10条・第11条を終了します。

 

 

 

 

 

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高齢者雇用法第9条

2015年06月05日 10:37

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第9条(高年齢者雇用確保措置

 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ

二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

 三 当該定年の定めの廃止

 

2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支

配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事主と特殊の関係のある事

主として厚生労働令で定める事業主をいう。以下この項において同じ。)との間で、

当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定年後に雇用されることを希望するもの

をその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、

当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確する制度が含まれるものとする。

 

3 厚生労働大臣は、第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。

 

4 第六条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。

 

 

則第4条の3(特殊関係事業主)

 法第九条第二項に規定する厚生労働省令で定める事業主は、次の各号に掲げる者とす

る。

一 当該事業主の子法人等

二 当該事業主を子法人等とする親法人等

三 当該事業主を子法人等とする親法人等の子法人等(当該事業主及び前二号に掲げる者を除く。)

四 当該事業主の関連法人等

五 当該事業主を子法人等とする親法人等の関連法人等(前号に掲げる者を除く。)

 

2 前項に規定する「親法人等」とは、次の各号に掲げる法人等(会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下同じ。)とする。ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の法人等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配していないことが明らかであると認められるときは、この限りでない。

一 他の法人等(破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた他の法人等その他これらに準ずる他の法人等であつて、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の過半数を自己の計算において所有している法人等

二 他の法人等の議決権の百分の四十以上、百分の五十以下を自己の計算において所有している法人等であつて、次に掲げるいずれかの要件に該当するもの

イ 当該法人等が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、当該他の法人等の議決権の過半数を占めていること。

ロ 当該法人等の役員、業務を執行する社員若しくは使用人である者、又はこれらであつた者であつて当該法人等が当該他の法人等の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、当該他の法人等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること。

ハ 当該法人等と当該他の法人等との間に当該他の法人等の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。

ニ 当該他の法人等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半について当該法人等が融資(債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。)を行つていること(当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)。

ホ その他当該法人等が当該他の法人等の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。

三 法人等が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の法人等の議決権の過半数を占めている場合(当該法人等が自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)における当該法人等であつて、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの

 

3 第一項に規定する「子法人等」とは、親法人等によりその意思決定機関を支配されて

いる他の法人等をいう。この場合において、親法人等及び子法人等又は子法人等が他の法

人等の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人等は、その親法人等の子

法人等とみなす。

 

4 第一項に規定する「関連法人等」とは、次の各号に掲げるものとする。ただし、財務

は営業上若しくは事業上の関係からみて法人(当該法人等の子法人等を含む。)が子

法人等以外の他の法人等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与え

ことができないことが明らかであると認められるときは、この限りでない。

一 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が子法人等以外の他の法人等(破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた子法人等以外の他の法人等その他これらに準ずる子法人等以外の他の法人等であつて、当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められるものを除く。以下同じ。)の議決権の百分の二十以上を自己の計算において所有している場合における当該子法人等以外の他の法人等

二 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が子法人等以外の他の法人等の議決権の百分の十五以上、百分の二十未満を自己の計算において所有している場合における当該子法人等以外の他の法人等であつて、次に掲げるいずれかの要件に該当するもの

イ 当該法人等の役員、業務を執行する社員若しくは使用人である者、又はこれらであつた者であつて当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、その代表取締役、取締役又はこれらに準ずる役職に就任していること。

ロ 当該法人等から重要な融資を受けていること。

ハ 当該法人等から重要な技術の提供を受けていること。

ニ 当該法人等との間に重要な販売、仕入れその他の営業上又は事業上の取引があること。

ホ その他当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができることが推測される事実が存在すること。

三 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、子法人等以外の他の法人等の議決権の百分の二十以上を占めている場合(当該法人等が自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)における当該子法人等以外の他の法人等であつて、前号イからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの

 

平成24年通達

継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止(法第9条第2項及び改正法附則第3項)
 事業主は、事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度を導入したものとみなすものとしている仕組みを廃止することとしたこと。
 また、経過措置により、平成37 年3月31 日までの間、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢以上の者を対象に、利用することができることとしたこと。
 
継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大
(1)継続雇用制度における事業主間の契約(法第9条第2項)
 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であってその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれることとしたこと。
(2)特殊関係事業主の範囲(則第4条の3)
 ⅰ)厚生労働省令で定める事業主
 法第9条第2項に規定する厚生労働省令で定める事業主は、次に掲げる者としたこと。
 ① 当該事業主の子法人等
 ② 当該事業主を子法人等とする親法人等
 ③ 当該事業主を子法人等とする親法人等の子法人等(当該事業主、①及び②に掲げる者を除く。)
 ④ 当該事業主の関連法人等
 ⑤ 当該事業主を子法人等とする親法人等の関連法人等(④に掲げる者を除く。)
 ⅱ)親法人等
 則第4条の3に規定する「親法人等」について、次の①から③までに掲げる法人等(会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下同じ。)とすること。
 ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の法人等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配していないことが明らかであると認められるときは、この限りでない。
 ① 他の法人等(破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた他の法人等その他これらに準ずる他の法人等であって、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下このⅱにおいて同じ。)の議決権の過半数を自己の計算において所有している法人等
 ② 他の法人等の議決権の100 分の40 以上、100 分の50 以下を自己の計算において所有している法人等であって、次のイからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの。
   当該法人等が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、当該他の法人等の議決権の過半数を占めていること。
   当該法人等の役員、業務を執行する社員若しくは使用人である者、又はこれらであった者であって当該法人等が当該他の法人等の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、当該他の法人等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること。
  当該法人等と当該他の法人等との間に当該他の法人等の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。
   当該他の法人等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半について当該法人等が融資(債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。)を行っていること(当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)。
   その他当該法人等が当該他の法人等の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。
 ③ 法人等が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の法人等の議決権の過半数を占めている場合(当該法人等が自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)における当該法人等であって、②ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの。
 ⅲ)子法人等
 則第4条の3に規定する「子法人等」とは、親法人等によりその意思決定機関を支配されている他の法人等をいうこと。この場合において、親法人等及び子法人等又は子法人等が他の法人等の意思決定機関を支配している場合における当該他の法人等は、その親法人等の子法人等とみなす。
 ⅳ)関連法人等
 則第4条の3に規定する「関連法人等」について、次の①から③までに掲げるものとすること。ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が子法人等以外の他の法人等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないことが明らかであると認められるときは、この限りでない。
 ① 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が子法人等以外の他の法人等(破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた子法人等以外の他の法人等その他これらに準ずる子法人等以外の他の法人等であって、当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められるものを除く。以下同じ。)の議決権の100 分の20 以上を自己の計算において所有している場合における当該子法人等以外の他の法人等
 ② 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が子法人等以外の他の法人等の議決権の100 分の15 以上、100 分の20 未満を自己の計算において所有している場合における当該子法人等以外の他の法人等であって、次のイからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの
   当該法人等の役員、業務を執行する社員若しくは使用人である者、又はこれらであった者であって当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、その代表取締役、取締役又はこれらに準ずる役職に就任していること。
   当該法人等から重要な融資を受けていること。
   当該法人等から重要な技術の提供を受けていること。
   当該法人等との間に重要な販売、仕入れその他の営業上又は事業上の取引があること。
  その他当該法人等がその財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができることが推測される事実が存在すること。
 ③ 法人等(当該法人等の子法人等を含む。)が自己の計算において所有している議決権と当該法人等と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び当該法人等の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、子法人等以外の他の法人等の議決権の100 分の20 以上を占めている場合(当該法人等が自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)における当該子法人等以外の他の法人等であって、②イからホまでに掲げるいずれかの要件に該当するもの。

 

高齢者雇用法第9条の趣旨

第9条第1項

 第1号から第3号までのいずれかの措置を実施しなければならないとされています。

・第1号 定年年齢の引き上げ

 第1項の条文の文脈から、現在60歳等の定年を定めている場合には、事実上65歳以上の定年年齢に

引き上げることを意味します。この場合に、従来の定年年齢を超えた労働者の賃金等の処遇が問題と

なります。

 例えば次のような観点です。

 ア 役職等の処遇をどのようにするか(役職定年を設ける等)

 イ 退職金の取扱いをどのようにするか

 ウ 通常は、60歳以降の賃金を逓減させることとなるが、60歳前及び60歳以降の賃金制度の設計をどのようにするか

 エ 希望退職者がいる場合の処遇をどのようにするか 

 等々です。

・第2号 継続雇用制度を希望者全員雇用すること。

 平成25年4月1日から、65歳未満の定年制を設けている事業場においては、希望者全員を継続雇用し

なければなりません。ただし、平成25年3月31までに労使協定を締結している場合には、「経過措置

により、平成37 年3月31 日までの間、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を厚生年金報

酬比例部分の支給開始年齢以上の者を対象に、利用することができる」としています。

 

参考:厚生年金の報酬比例部分(定額部分)の支給開始年齢表

      生年月日       報酬比例部分支給開始年齢   平成27年満年齢

 男性 S16・4・2~S18・4・1生       60歳(61歳)     74歳~72歳

 女性 S21・4・2~S23・4・1生         〃         69歳~67歳

 男性 S18・4・2~S20・4・1生       60歳(62歳)     72歳~70歳

 女性 S23・4・2~S25・4・1生         〃         67歳~65歳

 男性 S20・4・2~S22・4・1生       60歳(63歳)     70歳~68歳

 女性 S25・4・2~S27・4・1生         〃         65歳~63歳

 男性 S22・4・2~S24・4・1生       60歳(64歳)     68歳~66歳

 女性 S27・4・2~S29・4・1生         〃         63歳~61歳

 男性 S24・4・2~S28・4・1生       60歳(老基65歳)   66歳~62歳

 女性 S29・4・2~S33・4・1生         〃         61歳~57歳

 男性 S28・4・2~S30・4・1生       61歳(老基65歳)   62歳~60歳

 女性 S33・4・2~S35・4・1生         〃         57歳~55歳

 男性 S30・4・2~S32・4・1生       62歳(老基65歳)   60歳~58歳

 女性 S35・4・2~S37・4・1生         〃         65歳~63歳

 男性 S32・4・2~S34・4・1生       63歳(老基65歳)   58歳~56歳

 女性 S37・4・2~S39・4・1生         〃         53歳~51歳

 男性 S34・4・2~S36・4・1生       64歳(老基65歳)   56歳~54歳

 女性 S39・4・2~S41・4・1生         〃         51歳~49歳

 男性 S36・4・2~    生       老厚・老基とも65歳   54歳~

 女性 S41・4・2~    生         〃         49歳~

                    ※かっこ内は定額部分

 ところで、継続雇用制度といっても一般的には再雇用制度を指すものと思います。これは、60歳の

定年年齢で一旦退職扱いとし、従来の処遇・退職金の支払い等を精算した上で、嘱託等の名称の別個

の労働条件で再雇用する形式です。この場合、従来よりも賃金は低下し、無期雇用から有期雇用に変

更され、従来の役職とは異なる業務に就くことが通常です。

・第3号 定年制度を廃止すること

 定年制度を廃止すると、現在雇用している労働者及び将来雇用する労働者について、①「労働者の

意思で退職する場合」、②「会社が正当な解雇をする場合」、③「死亡した場合」、➃「事業所を閉

鎖して整理解雇する場合」、⑤「会社が解散等した場合」のいずれかの場合以外は、労働者を雇用し

続けることとなります。この場合、文字通りの終身雇用制度となります。

 

第9条第2項 継続雇用制度の雇用先を子会社等の関連会社に拡大すること

 関連会社と継続雇用に関する契約を締結し、関連会社を含めて継続雇用制度を維持するように制度

設計が変更されました。従来、関連会社間で出向契約が取り交わされ、人事交流が行われて来たこと

はごく一般的に知られていましたが、平成25年4月以降はそれに加えて60歳以降の継続雇用制度につ

いて人事交流を拡大するように促す規定です。

 子会社等の内容は、施行規則第4条の3及び通達で詳細に定義されています。本条第2項の規定に

より、関連会社に再雇用(事実上の再就職です。)された場合には、本条第1項第2号の継続雇用制度

を導入しているものとみなさという趣旨です。

 

第9条第3項 指針(平成24年11月9日厚生労働省告示第560号

 それほど長くない文章ですから、そのまま引用します。

第1 趣旨
 この指針は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)第9条第3項の規定に基づき、事業主がその雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため講ずべき同条第1項に規定する高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下同じ。)に関し、その実施及び運用を図るために必要な事項を定めたものである。
第2 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用
 65歳未満の定年の定めをしている事業主は、高年齢者雇用確保措置に関して、労使間で十分な協議を行いつつ、次の1から5までの事項について、適切かつ有効な実施に努めるものとする。
 1 高年齢者雇用確保措置
 事業主は、高年齢者がその意欲と能力に応じて65歳まで働くことができる環境の整備を図るため、法に定めるところに基づき、65歳までの高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずる。
 2 継続雇用制度
 継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とする。この場合において法第9条第2項に規定する特殊関係事業主により雇用を確保しようとするときは、事業主は、その雇用する高年齢者を当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を、当該特殊関係事業主との間で締結する必要があることに留意する。
 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当する場合には、継続雇用しないことができる
 就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできる。また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる。なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号。以下「改正法」という。)の趣旨を没却するおそれがあることに留意する。
 ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。
 3 経過措置
 改正法の施行の際、既に労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めている事業主は、改正法附則第3項の規定に基づき、当該基準の対象者の年齢を平成37年3月31日まで段階的に引き上げながら、当該基準を定めてこれを用いることができる。
 4 賃金・人事処遇制度の見直し
 高年齢者雇用確保措置を適切かつ有効に実施し、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用の確保を図るために、賃金・人事処遇制度の見直しが必要な場合には、次の⒧から⑺までの事項に留意する。
 ⒧ 年齢的要素を重視する賃金・人事処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度に向けた見直しに努めること。
 この場合においては、当該制度が、その雇用する高年齢者の雇用及び生活の安定にも配慮した、計画的かつ段階的なものとなるよう努めること。
 ⑵ 継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。
 ⑶ 短時間勤務制度、隔日勤務制度など、高年齢者の希望に応じた勤務が可能となる制度の導入に努めること。
 ⑷ 継続雇用制度を導入する場合において、契約期間を定めるときには、高年齢者雇用確保措置が65歳までの雇用の確保を義務付ける制度であることに鑑み、65歳前に契約期間が終了する契約とする場合には、65歳までは契約更新ができる旨を周知すること。
 また、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。
 ⑸ 職業能力を評価する仕組みの整備とその有効な活用を通じ、高年齢者の意欲及び能力に応じた適正な配置及び処遇の実現に努めること。
 ⑹ 勤務形態や退職時期の選択を含めた人事処遇について、個々の高年齢者の意欲及び能力に応じた多様な選択が可能な制度となるよう努めること。
 この場合においては、高年齢者の雇用の安定及び円滑なキャリア形成を図るとともに、企業における人事管理の効率性を確保する観点も踏まえつつ、就業生活の早い段階からの選択が可能となるよう勤務形態等の選択に関する制度の整備を行うこと。
 ⑺ 継続雇用制度を導入する場合において、継続雇用の希望者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること。
 5 高年齢者雇用アドバイザー等の有効な活用
 高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずるに当たって、高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を図るため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーや雇用保険制度に基づく助成制度等の有効な活用を図る。
 
第9条第4項 指針に関する意見の聴取及び指針の公表
 第9条第3項の規定による指針を策定するに際しては、「策定前に、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。」こと、及び「指針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。」とされています。
 
 
 
以上で高齢者雇用法第9条を終了します。

 

 

 

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高齢者雇用法第7条、第8条

2015年06月04日 16:01

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第7条(適用除外)

 この法律は、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員については、適用しない。

 

2 前条、次章、第三章第二節、第四十九条及び第五十二条の規定は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。

 

第8条(定年を定める場合の年齢)

 

 事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。

 

則第4条の2(法第八条の業務)

 

 法第八条の厚生労働省令で定める業務は、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)

第四条に規定する事業における坑内作業の業務とする。

 

高齢者雇用法第7条(適用除外)

高齢者雇用法 第7条第1項 船員職業安定法第6条第1項の船員の適用除外

参考:船員職業安定法第6条第1項

 この法律で「船員」とは、船員法(昭和二十二年法律第百号)による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。

   船員法第1条第1項

 この法律において「船員」とは、日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう。

   船員法第2条

 この法律において「海員」とは、船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者をいう。

2 この法律において「予備船員」とは、前条第1項に規定する船舶に乗り組むため雇用されている者で船内で使用されていないものをいう。

 

第2項 国家公務員及び地方公務員(一部適用除外)

 国家公務員及び地方公務員が適用になるのは、第1条(目的)、第2条(定義)、第3条(基本理念)、第4条(事業主の責務)、第5条(国及び地方公共団体の責務)、第12条(再就職の促進等の措置の効果的な推進)第13条(求人の開拓等)、第14条(求人者等に対する指導及び援助)、第20条(中高年齢失業者等求職手帳の発給)、第21条(手帳の有効期間)、第22条(手帳の失効)、第23条(計画の作成)、第24条(公共職業安定所長の指示)、第25条(関係機関等の責務)、第26条(手当の支給)、第27条(就職促進指導官)、第28条(報告の請求)、第29条(特定地域における措置)、第30条、第31条(厚生労働省令への委任)、第40条(国及び地方公共団体の講ずる措置)、第41条(指定等)、第42条(シルバー人材センターの業務等)、第43条(事業計画等)、第43条の2(監督命令)、第43条の3(指定の取消し等)、第44条(指定等)、第45条(準用)、第46条(指定)、第47条(業務)、第48条(準用)、第50条(雇用管理の改善の研究等)、第51条(職業紹介等を行う施設の整備等)、第53条(指定の条件)、第53条の2(経過措置)、第54条(権限の委任)、第55条(罰則)、第56条、第57条の以上が国家公務員及び地方公務員に適用されます。

 

高齢者雇用法 第8条(定年年齢の定め)

 定年年齢の定めを60歳未満とすることができません。そして、定年年齢の定めは労働基準法第89条で就業規則に規定が義務付けられている「退職に関する事項(労働基準法第89条第3号)」に該当します。

 ところで定年とは、「停年制とは、停年後も特別の事情により引き続き継続雇用する旨の規定又は慣行のない限り、一般には一定年令に達することにより劃一的に当然雇用関係終了の効果を生ずる制度(昭和36年大阪地裁判決)」とされているとおり、労働契約の終期の定めと解されています。

 そこで、60歳未満の定年年齢を定めた場合にどうなるかを考察します。この場合例えば55歳と就業規則で定めた定年年齢は無効となり(高齢者雇用法第8条違反)、定年の定めがないものとして取り扱われると解されます。

 ※この事例の場合に、60歳定年を定めたものとみなすことは解釈の誤りと思われます。

 

 

以上で高齢者雇用法第7条・第8条を終了します。

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高齢者雇用法第6条

2015年06月04日 13:52

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第6条(高年齢者等職業安定対策基本方針

 厚生労働大臣は、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本となるべき

方針(以下「高年齢者等職業安定対策基本方針」という。)を策定するものとする。

 

2 高年齢者等職業安定対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

 

一 高年齢者等の就業の動向に関する事項

二 高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項

三 第四条第一項の事業主が行うべき職業能力の開発及び向上、作業施設の改善その他の諸条件の整備、再就職の援助等並びに同条第二項の事業主が行うべき高齢期における職業生活の設計の援助に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針となるべき事項

四 第九条に規定する高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項

五 高年齢者等の再就職の促進のため講じようとする施策の基本となるべき事項

六 前各号に掲げるもののほか、高年齢者等の職業の安定を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項

 

3 厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針を定めるに当たつては、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

 

4 厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。

 

5 前二項の規定は、高年齢者等職業安定対策基本方針の変更について準用する。

 

平成24年通達

・高年齢者等職業安定対策基本方針(法第6条第2項)
 高年齢者等職業安定対策基本方針に定めるべき高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項について、当該高年齢者を65 歳未満に限定しないこととしたこと。また、法第9条の事業主が講ずべき同条に規定する高年齢者雇用確保措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針となるべき事項を削除することとしたこと。
1 趣旨
 改正法の趣旨等を踏まえ、高年齢者等の雇用・就業についての目標及び施策の基本的考え方を、労使をはじめ国民に広く示すとともに、事業主が行うべき諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者等の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図るため、基本方針を策定することとしたものであること。
2 内容
(1)対象期間
 この基本方針の対象期間は、平成25 年度から平成29 年度までの5年間とするものであること。
(2)高年齢者等の就業の動向に関する事項(基本方針第1関係)
 高年齢者の雇用・就業の状況や、高年齢者に係る雇用制度の状況等について、最新の統計結果等を盛り込むものであること。
(3)高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項(基本方針第2関係)
 平成25 年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65 歳へ引き上げられることを踏まえ、希望者全員の65 歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において講じられるよう雇用の場の拡大に努めること等により、新成長戦略(平成22 年6月18 日閣議決定)で示された平成32 年までの目標(「平成32 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」等としていることが前提。)である60~64 歳の就業率を63%とすることを目指すとともに、同年までに65~69 歳の就業率を40%とすることを目指すものであること。
(4)事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項(基本方針第3関係)
 現行の基本方針に盛り込まれている内容に加え、再就職援助等の対象者について法施行規則の改正内容を踏まえて改めるものであること。
(5)高年齢者等の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項(基本方針第4関係)
 現行の基本方針に盛り込まれている内容に加え、新たに以下の内容を盛り込むものであること。
   高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介留保、助成金の不支給等の措置を講じること。
   特に有期契約労働者であった離職者については、公共職業安定所におけるマッチング支援、担当者制によるきめ細かな支援等の活用により、早期の再就職の促進に努めること。
   生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図ること。
 
基本方針(平成24年11月9日厚生労働省告示第559号)

 高年齢者等職業安定対策基本方針

はじめに
1 方針のねらい
 少子高齢化の急速な進行により、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国経済の活力を維持していくためには、若者、女性、高年齢者、障害者など働くことができる全ての人の就労促進を図り、そうした全ての人が社会を支える「全員参加型社会」の実現が求められている。高年齢者についても、その能力の有効な活用を図ることが重要な課題であることから、高年齢者の厳しい雇用環境が依然として続いている現状への的確な対応を図りつつ、高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(以下「生涯現役社会」という。)の実現を目指す必要がある。
 また、平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられることに対応し、雇用と年金の確実な接続等を図るため、平成24年第180回通常国会において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)の改正が行われた。
 この基本方針は、この法改正の趣旨等を踏まえ、高年齢者の雇用・就業についての目標及び施策の基本的考え方を、労使をはじめ国民に広く示すとともに、事業主が行うべき諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図るものである。
2 方針の対象期間
 この基本方針の対象期間は、平成25年度から平成29年度までの5年間とする。ただし、この基本方針の内容は平成24年の法改正を前提とするものであることから、高年齢者の雇用の状況や、労働力の需給調整に関する制度、雇用保険制度、年金制度、公務員に係る再任用制度等関連諸制度の動向に照らして、必要な場合は改正を行うものとする。
以下項目のみ
第1 高年齢者の就業の動向に関する事項、第2 高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項、第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項、第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
 
参考:高年齢者等職業安定対策基本方針 高齢者職業安定対策基本方針.pdf (295810)
 
高齢者雇用法第6条まとめ
1.労働政策審議会議事録(議事録写し)
A:平成24年10月2日 職業安定分科会雇用対策基本問題部会 議事録抜粋
○中山高齢者雇用対策課長 
 昨年度の当部会でご議論いただきました「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正」ですが、1月6日に建議いただきました。これに基づき法律の改正案を3月9日に国会に提出しまして、衆議院で一部修正の上、8月29日に可決・成立いたしました。9月5日に公布されたところです。本日は、この改正内容を来年4月1日から施行するに当たり、必要な政省令・告示の整備について、資料に沿ってご説明いたします。 
  お手元の資料に沿ってご説明させていただきます。資料1をご覧ください。今後のスケジュール案を示したものです。9月14日に職業安定分科会を開催し、先ほど申し上げた事項について、この雇用対策基本問題部会で検討することについてご了解をいただいております。その後、10月の中下旬までには労働政策審議会の職業安定分科会を開催し、本日の結果等をご報告して、また具体的な諮問、答申といった手続に入っていきたいと考えているところです。このほかに、ここには書いておりませんが、パブリックコメント等の手続があります。できるだけ早い公布を心がけておりますが、最短で11月初旬頃になるのではないかという状況です。
  裏側に政令事項、省令事項、告示事項の概要が出ております。政令事項については、附則の一部削除ということで、後ほど説明いたしますが、形式整備です。省令事項については、マル1特殊関係事業主の範囲を定めるもの。マル2再就職援助措置の対象となる高年齢者等の範囲、マル3高年齢者雇用状況報告書の整備。マル2、マル3は若干形式整備的な要素があります。告示事項については、高年齢者等職業安定対策基本方針、もう1つが高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針です。
  資料2は改正法の内容の資料です。皆さんは先刻ご承知と思いますが、概要だけ申し上げておきますと、資料2-1に法律の改正の概要が記されております。趣旨として、少子高齢化社会が進展する中で働くことができる人、全ての就労促進を図り、社会を支えていくという全員参加型の社会の実現が求められている中、高齢者の就労促進を進めていくことが必要であろうということが1つと、ここには明示的に書いてありませんが、老齢年金の支給開始年齢が明年4月から61歳に引き上げられることがあり、無収入、無年金の人が増えないようにということで、いわば雇用と年金の確実な接続を図る。そういった点から制度の改正が必要であるという判断に至って、このような法案を提出したものです。
  概要の1番目は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止です。現行法第9条第2項にあります継続雇用制度の対象となる高年齢者について、事業主が労使協定により定める基準により限定できる仕組みを廃止するというものです。
  2点目は、継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大です。継続雇用制度の対象となる高年齢者を雇用する範囲をグループ企業まで拡大する仕組みを設けるということで、後ほど省令事項のところでご説明申し上げます。
  3番目、義務違反の企業に対する公表規定の導入ということで、高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設けるということです。現在は指導・助言・勧告という内容が定められておりますが、さらに勧告に従わない企業についてはその企業名を公表できる規定を設けたものです。
  4点目は高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定です。現行法の第6条第3項の高年齢者等職業安定対策基本方針の中に、高年齢者雇用確保措置の指針となるべき事項が定められているわけですが、その根拠規定を高年齢者雇用確保措置の規定のある第9条に移して、独立した指針を設ける。そういう整備です。この4点目は衆議院の修正により加わった部分です。
  その他として、1のところで申し上げました今般廃止となる労使協定により定める基準により継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みについては、12年間の経過措置を設ける。そのほか、所要の規定の整備を行うということです。改正の概要は以上です。資料2-2、資料2-3に具体的な条文とか改正の際の、特に衆議院の修正の際の国会における議論といったものが付け加えてあります。
  資料3をご覧ください。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」です。資料3-1の内容に書いてありますとおり、政令の附則第4項から第6項までを削除するといった内容です。これは高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律により定められていた、これは平成16年の改正ですが、その際に現規則で経過措置期間を設けて、協議が整わない場合、就業規則で基準を定めることができる旨の規定があったわけですが、その根拠となっておりました高齢法の附則の第5条が削除されたことに伴い、こちらの政令についても第4項から第6項までを削除する。いわば、形式の整備です。
  資料4は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」です。次の頁に要旨が出ております。(1)は特殊関係事業主です。改正後の高齢法第9条第2項の中で、厚生労働省令で特殊関係事業主について定めるとされておりますので、その関係の省令を整備するものです。(2)は法第15条に定める再就職援助措置等の対象となる者について、継続雇用制度の対象者を限定する基準が廃止となることから見直しを行うものということで、経過措置に基づいて、省令の第6条において、基準が残るその部分についての手当をするものです。(3)の高年齢者雇用状況報告書については、文言整理等、継続雇用制度の対象者を限定する仕組みが廃止されたことに伴う省令の整備を行うものです。これについては、諮問事項ということで、厚生労働大臣 三井辧雄から労働政策審議会 会長 諏訪康雄殿宛で諮問文がついているものです。
  次は省令案要綱です。3頁の第1の特殊関係事業主、第1項の(一)号以下、当該事業主の子法人等、当該事業主を子法人等とする親法人等とありますが、子会社、親会社、親会社の子会社、関連会社、親会社の関連会社、従前から説明してきている内容を法文化するとこのような形になるといった規定です。基本的には、銀行法施行令等の内容に沿った形で案文を整備させていただいているものです。10頁と11頁は「高年齢者雇用状況報告書」です。10頁が改正案、11頁が現行のものです。右側の現行制度のマル10継続雇用制度、継続雇用制度の導入・改定予定、こういったところが左側の改正案では様式が整備されているというところです。
  資料5に「高年齢者等職業安定対策基本方針(案)」の関係資料が入っております。資料5-3に新旧対照表が入っておりますので、こちらで説明させていただきます。17頁目以降になります。右側が現行の基本方針、左側が改正案です。下線を付してある部分が変更点です。1頁の主要な改正点は第1パラグラフにあります。「全員参加型社会」、先ほど法改正の趣旨のところでも申し上げましたが、そういったことが求められている背景を書かせていただいております。もう少し下には「生涯現役社会」というワーディングの概念の整備もさせていただいております。
  2頁以降は「高年齢者の就業の動向に関する事項」ということで、統計データ等のリニューアルをしているものです。申し遅れましたが、全体の18頁のいちばん上のところに基本方針の対象期間は、平成25年度から平成29年度までの5年間とするということで、期間についても書かせていただいているところです。
  以下は、新旧対照でご覧いただいてお分かりいただけますように、データのリニューアル等が中心となっております。7頁の下に60歳から64歳の就業率、65歳から69歳の就業率についての目標が示されているところです。
  11頁以降は右側にありますように、高年齢者雇用確保措置に関する指針です。従来は基本方針の中で示されておりましたが、今般の改正により、独立した指針として制定されるということで、基本方針から落ちているわけです。13頁目以下は基本的に文言の整理等が内容となっているところです。
  19頁では、3番「その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項」があります。この中で個別の事項を書いておりましたところのいちばん前に、生涯現役社会の実現に向けた取組ということで、全体を貫く考え方を冒頭に書いております。これも従来あったものを整備したものです。
  資料6をご覧ください。こちらが「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(案)」です。これについては、いま申し上げましたように、従来、高年齢者等職業安定対策基本方針の中に規定されていたものを独立した指針として定めるといったものですので、基本方針との新旧対照表をご用意しております。
  資料6-3で説明させていただきます。第1では趣旨を書かせていただいたものです。第2は高年齢者雇用確保措置の実施及び運用ということです。高年齢者雇用確保措置の中の2ですが、継続雇用制度、高年齢者雇用確保措置はご案内のとおり、定年の引き上げ、定年の廃止、継続雇用制度の導入の3つほどあるわけですが、その中の継続雇用制度についての指針をここで記しております。継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とするということです。今般、第9条第2項の選定基準が廃止されますので、こういった考え方が具体的なものになっているわけですが、そのあとに、この場合において法第9条第2項に規定する特殊関係事業主が雇用を確保しようとするときについて書いていますが、当該関係事業主との間で契約を締結する必要があることに留意するという旨が書かれております。
  その次のパラグラフです。心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当する場合は、継続雇用しないことができるということです。1月の建議の中で示されたこと等が、ここに記述されているわけです。
  次のパラグラフは、就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に就業規則に定めることもできる。また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる。なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律の趣旨を没却するおそれがあることに留意するというパラグラフです。ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。この最後のパラグラフも1月6日の建議で書いていただいたものを書かせていただいています。
  3番目の経過措置ですが、先ほど改正法の中で紹介させていただきましたが、改正法の施行の際、既に労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めている事業主は改正法附則第3項の規定に基づき、当該基準の対象者の年齢を平成37年3月31日まで段階的に引き上げながら、当該基準を定めてこれを用いることができるという内容のものです。具体的な条文等については、先ほどの法律の改正の資料2に条文が出ております。こちらを参照していただければと思います。具体的には資料2-2の14頁です。このうちの第3項が経過措置規定です。
  4番の賃金・人事処遇制度の見直しについては、留意事項ということで列挙されております。基本的に従前のものを引用しているところです。3頁の下のところに契約期間が終了する契約とする場合には云々のところについては、表現を分かりやすくする観点から文の前後を入れ替えておりますが、書かれている内容については一緒です。関係資料の説明は以上です。
  資料7の参考資料は高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の関係条文。先ほど来申し上げております1月6日にまとめていただきました建議をつけさせていただいているところです。以上です。
○森戸委員 
 細かいことは分かりませんが、建前上というか理屈でいうと、既にQ&Aに書いてあることであり、この解釈についておそらく争いはないであろうと。今回の法改正で、このQ&Aのこの部分が変わったわけではないという意味では確かだと思います。その変わっていないものも含め、Q&Aをこの指針に格上げなのか何なのかは知りませんが書くとなると、ほかにもいろいろQ&Aには規定があると思いますので、それを全部含めて、これはこの際、指針に入れようとか入れないとか、そういう議論を全部本当はしなければいけなくて、これだけ指針に書くというのも、そこはそれこそ、あまり議論ができていないと思います。もちろんQ&Aに書いてあるから大事なことではあるのでしょうけれども、一応建前でいうと、今回の指針は、いろいろ改正の経緯があって第9条第3項に基づいた話で出てきているので、その事業主として、どういう措置を取れば高年法の継続雇用、高年齢者雇用確保措置義務違反にならないかということを定めるものですよね。 
  そうすると、Q&Aにあることは、どういう制度を作るかという話とは必ずしも直接は関係のないことです。一般的に、極めて民事的なというか、契約自由ですよと。再雇用の内容は労使の意見が一致しなければ駄目だし、別に労働者側の希望する条件で呑まなければいけないということはありませんよというのは制度として定めるものというのではなくて、そういう解釈になりますねという話なので、指針のほうは最低限就業規則や何かをどうすれば高年法違反になりませんよ、という話を最低限書くという原則でおそらくできているので、客観的合理的な理由とかは若干それからはみ出るけれども、ただそれは必要なので、それもここに書いておかないといけないというので入っていると思うので、なるべくその指針のほうは事業主が何をすればいいかということに純粋に関わるものを書くことにしていると思うので、Q&Aみたいに、より広く制度全般に関わることを全部入れてしまうと、改正法の趣旨にも反するのではないかなと思いますし、委員がご心配になるようなことは少なくとも今回の改正でQ&Aのこの点は変わっていないし、これはある意味、当然の前提になっている制度であると思うので、今回の指針案でも、使用者側の考えていらっしゃることにそんなに反した内容にはならないのではないかと私は思います。すみません、ちょっと長く喋りました。
 
B:平成24年11月2日 職業安定分科会 議事録抜粋
○高齢者雇用対策課長 
 高齢者雇用対策課長の中山です。9月14日に、本分科会が開催をされています。その際報告いたしましたとおり、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正し、来年4月1日から施行するに当たり、検討をお願いする政省令、告示の整備について、これからお手元の資料に基づいて説明をいたします。ただ今、分科会長からお話がありましたとおり、10月2日、雇用対策基本問題部会において議論をいただき、政省令案、告示案について妥当なものとして了承をいただいていることを申し添えさせていただきます。 
 初めに、改正の内容について、資料?5-3を御覧いただきたいと思います。既に御案内のとおりですが、今回の改正の趣旨は2つほどあります。1つ目は、少子高齢化が進展する中、働くことができる人全てで社会を支えていく「全員参加型社会」の実現が求められている中で、高齢者の就労促進を進めていくことが必要であること。また、ここには明示的には書いていませんが、老齢厚生年金の支給開始年齢が、来年4月から61歳に引き上げられるということで、無収入・無年金の人が生じないように、雇用と年金の確実な接続を図ることが必要である、といった2つの趣旨がこの改正法の背景にあるわけです。
 具体的な中身を申し上げます。1点目は、「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」です。現行法の第9条第2項には、継続雇用制度の対象となる高年齢者について、事業主が労使協定により定める基準により限定できる仕組みがありますが、これを廃止するということです。
 2点目は、「継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大」です。継続雇用制度の対象となる高年齢者を雇用する範囲を、グループ企業にまで拡大する仕組みを設けるということです。これが、後ほど説明いたします省令で規定する事項です。
 3点目は、「義務違反の企業に対する公表規定の導入」です。現在、高齢者雇用確保措置義務に関する助言、指導、勧告といった規定が設けられていますが、更に企業名を公表できるという規定を設けたものです。
 4点目は、「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定」です。現行法の第6条第3項、高年齢者等職業安定対策基本方針の中で、高年齢者雇用確保措置の指針となるべき事項が定められていますが、その根拠規定をこの高年齢者雇用確保措置の規定のあります第9条に移して、独立した指針を設けるという整備を行ったものです。この点については、衆議院の民自公3党による修正で加わったものです。この点は、後ほど大臣告示、指針のところで御説明いたします。
 最後は、「その他」事項です。1点目で申し上げました、今般廃止となる労使協定により対象者を定める基準により継続雇用制度の対象者を限定するという仕組みに、12年間の経過措置が設けられるということです。以上が、改正の概要です。
 続いて、当分科会で御検討いただく事項について、個々に御説明いたします。資料?1を御覧ください。こちらは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」です。資料?1-1に、内容が書かれています。これは、今回政令の附則第4項から第6項の削除、及びその他所用の整備を行うといった内容です。この附則第4項から第6項の削除については、平成16年の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」により定められていた経過措置期間が、平成22年度末で終了していまして、現在効力を有していませんので、その関係の政令の規定を削除すると。いわば形式の整備ということで、報告事項という形で整理をさせていただいているものです。
 続いて、資料?2です。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」です。これは綴じ方が反対からになっていますが、1枚めくっていただきますと要旨が出ています。内容を御覧いただきますと、(1)特殊関係事業主と書いてあります。これは、法律の第9条第2項に規定します、厚生労働省令で定めることとされている特殊関係事業主について規定するものです。(2)は、再就職援助措置の対象となる高年齢者の範囲等です。これは、継続雇用制度の対象者を限定する基準が廃止となることから見直しを行うもので、経過措置に基づいて省令の第6条において基準が残る部分についての手当てをするものです。(3)の高年齢者雇用状況報告書については、文言整理等、継続雇用制度の対象者を限定する仕組みが廃止されたことに伴う所用の整備を行うものです。
 なお、この省令については、先ほど分科会長からお話がありましたとおり、諮問事項ということで、資料?2-2に諮問文が付けられています。厚生労働大臣三井辨雄から労働政策審議会会長諏訪康雄殿宛てで、10月2日付、これは先ほどの基本問題部会が開催された日付けの諮問文が付いているものです。また、資料?2-4、同日の基本問題部会において、厚生労働省案は妥当と認めるという内容の部会報告をいただいていますので、それを添付させていただいています。
 省令案要綱の3ページについて御覧いただきたいと思います。第1の特殊関係事業主ですが、第1項の(1)に、「当該事業主の子法人等」と「当該事業主を子法人等とする親法人等」とありますが、子会社、親会社、親会社の子会社、関連会社、親会社の関連会社。従前から説明してきました、グループ企業まで継続雇用の範囲を拡大するという内容を法文化してまいりますと、このような形になります。それ以下については、親会社、子会社や関連会社等になる関係の議決権の割合等について書いています。これは、銀行法施行令や会社法などの規定を参考にして整備をしているものです。
 10、11ページですが、こちらは「高年齢者雇用状況報告書」の様式です。10ページが改正案、11ページは現行様式です。11ページの現行制度の⑩継続雇用制度、⑪継続雇用制度の導入・改定予定について、10ページの改正案において様式の整備がされているところです。
 続いて、資料?3を御覧ください。「高年齢者等職業安定対策基本方針(案)」です。資料?3-3の真ん中辺以降から新旧対照表が入っていますので、こちらを御覧ください。右側が現行の基本方針、左側が改正案です。下線を付けてある部分が変更点です。1ページ目の主要な改正点については、先ほど法改正の趣旨のところでも申し上げていますが、「全員参加型社会」が求められているといった点について、最初に1「方針のねらい」に書かせていただいています。更にその下には「生涯現役社会」といった考え方の整理もさせていただいています。更に、この基本方針の2ページの上に、この基本方針の対象期間が平成25年度から29年度までの5年間とするということも示させていただいています。そのあとは、「高年齢者の就業の動向に関する事項」ということで、新旧対照表を見ていただくとお分かりのように、統計データのリニューアル等が中心になっています。
 7ページの下辺りになりますが、高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項ということで、60歳から64歳までの就業率、65歳から69歳までの就業率について、目標が示されているところです。それから先は、高年齢者雇用確保措置の指針に関する事項ということで、今回は基本方針から新たに独立した指針に設けるほうに内容が移動しています。そのあとは、高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項が書かれているところです。
 続いて、資料?4を御覧ください。「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(案)」です。これについては先ほど申し上げたように、従来、高年齢者等職業安定対策基本方針の中に規定されていたものを、独立した指針として定めるものです。資料?4-2を御覧ください。先ほど、基本方針のところでも、省略してしまいましたが、このような形で厚生労働大臣三井辨雄から、労働政策審議会会長諏訪康雄殿宛てに諮問文が載っています。
 資料?4-2が指針案で、資料?4-3が新旧対照表の形にした指針の案です。旧のほうは、「高年齢者等職業安定対策基本方針」の中の高齢者確保措置に関する指針部分です。第1は「趣旨」です。第2は「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用」です。その中の2「継続雇用制度」を御覧ください。高年齢者雇用確保措置は、定年の引上げ、定年の廃止、継続雇用制度の導入の3つの中からいずれかを行っていただくことになります。その中の継続雇用制度についての指針となるべき事項が、ここに書かれています。
 最初に継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とすると書かれています。これは、先ほど来説明しています第9条第2項の継続雇用の対象者を選別する基準が廃止されますので、このような表現ぶりになっています。そのあとに書かれていることは、この場合において法第9条第2項に規定する特殊関係事業主が雇用を確保しようとするときについて、当該関係事業主の間で契約を締結する必要があることに留意する旨が書かれています。
 その次のパラグラフですが、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等、就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ)に該当する場合には、継続雇用しないことができる旨を示しています。これは、1月6日の審議会でまとめていただいた建議の中で示された点について、ここに記述をしています。
 次のパラグラフは、就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に就業規則に定めることもできる。また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる。なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律の趣旨を没却する恐れがあることに留意するという内容になっています。
 最後のパラグラフは、ただし継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意するとなっています。これも、1月6日の建議でまとめていただいたものを書かせていただいています。
 3番目の「経過措置」ですが、先ほど改正法の概要の説明の中で紹介をさせていただきました。この改正法の施行の際、既に労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めている事業主は、改正法附則第3項の規定に基づき、当該基準の対象者の年齢を平成37年3月31日まで段階的に引き上げながら、当該基準を定めてこれを用いることができるという内容です。
 4点目の「賃金・人事処遇制度の見直し」については、留意事項ということで列挙をしています。高年齢者になる前から関係してくるような事項も含めて、基本的に従前のものを引用しています。新旧対照表の指針の3ページと4ページの間辺りに線が付してありますが、これは「契約期間が終了する契約とする場合には云々」のところについては、表現を分かりやすくする観点から文の前後を入れていますが、内容については変わっていません。資料の説明は、以上です。
 なお、資料?5-4として、10月18日に公表しました平成24年高年齢者の雇用状況の集計結果が出ていますので、添付させていただきました。
 
2.まとめ
 高年齢者等の継続雇用制度は、現行法以前は希望者のうち一定の労働者について、就業規則その他に選抜基準を設定し、使用者側が継続雇用希望者等の一部のみを継続雇用する制度でした。最終改正が平成25年4月1日に施行され、65歳未満の定年制度を設けている事業所は、希望者全員を継続雇用しなければならないこととなりました。また、継続雇用の対象労働者をグループ企業まで拡大することとしています。
 
 
 
以上で高齢者雇用法第6条を終了します。
 
 
 
 
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高齢者雇用法第4条、第5条

2015年06月04日 12:40

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第4条(事業主の責務)

 事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施

の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再

就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の

機会の確保等が図られるよう努めるものとする。

 

2 事業主は、その雇用する労働者が高齢期においてその意欲及び能力に応じて就

することにより職業生活の充実を図ることができるようにするため、その高齢期

における職業生活の設計について必要な援助を行うよう努めるものとする。

 

第5条(国及び地方公共団体の責務)

 

 国及び地方公共団体は、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊

つつその実情に応じてこれらの者に対し必要な援助等を行うとともに、高年齢

者等の再就職の促進のために必要な職業紹介、職業訓練等の体制の整備を行う等、

高年齢者等の意欲及び能力に応じた雇用の機会その他の多様な就業の機会の確保等

図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする。

 

平成24年通達

事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項(法第4条)
1 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針
 事業主は、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意欲及び能力に応じて働き続けることができる社会の実現に向けて企業が果たすべき役割を自覚しつつ、労働者の年齢構成の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために次の⒧から⑺までの諸条件の整備に努めるものとする。
⒧ 募集・採用に係る年齢制限の禁止
 労働者の募集・採用に当たっては、労働者の一人ひとりに、より均等な働く機会が与えられるよう、雇用対策法(昭和41年法律第132号)において、募集・採用における年齢制限が禁止されているが、高年齢者の雇用の促進を目的として、60歳以上の高年齢者を募集・採用することは認められている
 なお、雇用対策法施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3第1項各号に該当する場合であって、上限年齢を設定するときには、法第18条の2に基づき、求職者に対してその理由を明示する。
⑵ 職業能力の開発及び向上
 高年齢者の有する知識、経験等を活用できる効果的な職業能力開発を推進するため、必要な職業訓練を実施する。その際には、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関において実施される職業訓練も積極的に活用する。
⑶ 作業施設の改善
 作業補助具の導入を含めた機械設備の改善、作業の平易化等作業方法の改善、照明その他の作業環境の改善、福利厚生施設の導入・改善を通じ、身体的機能の低下等に配慮することにより、体力等が低下した高年齢者が職場から排除されることを防ぎ、その職業能力を十分発揮できるように努める。
 その際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)が有する高年齢者のための作業施設の改善等に関する情報等の積極的な活用を図る。
⑷ 高年齢者の職域の拡大
 企業における労働者の年齢構成の高齢化に対応した職務の再設計を行うこと 等により、身体的機能の低下等の影響が少なく、高年齢者の能力、知識、経験等が十分に活用できる職域の拡大に努める。
 また、合理的な理由がないにもかかわらず、年齢のみによって高年齢者を職場から排除することのないようにする。
⑸ 高年齢者の知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
 高年齢者について、その意欲及び能力に応じた雇用機会を確保するため、職業能力を評価する仕組みや資格制度、専門職制度等の整備を行うことにより、その知識、経験等を活用することのできる配置、処遇を推進する。
⑹ 勤務時間制度の弾力化
 高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制等を活用した勤務時間制度の弾力化を図る。
⑺ 事業主の共同の取組の推進
 高年齢者の雇用機会の開発を効率的に進めるため、同一産業や同一地域の事業主が、高年齢者の雇用に関する様々な経験を共有しつつ、労働者の職業能力開発の支援、職業能力を評価する仕組みの整備、雇用管理の改善等についての共同の取組を推進する。
2 再就職の援助等に関する指針
 事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の⒧から⑸までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする。
⒧ 再就職援助等の対象者
 再就職の援助の対象となる高年齢者は、離職日において45歳以上65歳未満の者であって、解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)又は改正法附則第3項の規定によりなおその効力を有することとされる改正法による改正前の法第9条第2項の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における、当該基準に該当しなかったことその他事業主の都合により離職する者をいう。
⑵ 再就職の援助等に関する措置の内容
 ⒧に該当する高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、次の①から⑤までの援助を必要に応じて行うよう努める。
 ① 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与
 ② ①の休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援
 ③ 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん
 ④ 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん
 ⑤ 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備
⑶ 求職活動支援書の作成等
 離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、当該者の能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定者についても、当該離職予定者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める。
 求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。
 なお、求職活動支援書を作成する際には、交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができる「職業キャリアが長い方向けのジョブ・カード」の様式を積極的に活用する。
⑷ 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等
 求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。
 また、公共職業安定所の求めに応じ、当該離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等公共職業安定所との連携、協力に努める。
⑸ 助成制度の有効な活用
 求職活動支援書の作成及び交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。
3 職業生活の設計の援助に関する指針
 事業主は、その雇用する労働者が、様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、次の⒧及び⑵の事項の実施を通じて、その高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう努めるものとする。
 この場合において、労働者が就業生活の早い段階から将来の職業生活を考えることができるよう、情報の提供等に努める。
⒧ 職業生活の設計に必要な情報の提供、相談等
 職業生活の設計に関し必要な情報の提供を行うとともに、職業能力開発等に関するきめ細かな相談を行い、当該労働者自身の主体的な判断、選択によるキャリア設計を含めた職業生活の設計が可能となるよう配慮する。
また、労働者が職業生活の設計のために企業の外部における講習の受講その他の活動を行う場合に、勤務時間等について必要な配慮を行う。
⑵ 職業生活設計を踏まえたキャリア形成の支援
 労働者の職業生活設計の内容を必要に応じ把握しつつ、職業能力開発に対する援助を行う等により、当該労働者の希望や適性に応じたキャリア形成の支援を行う。
 
高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
1 高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項
 国は、高年齢者雇用確保措置が各企業の労使間での十分な協議の下に適切かつ有効に実施されるよう、次の⒧から⑷までの事項に重点をおいて施策を展開する。
⒧ 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の周知徹底
 65歳未満定年の定めのある企業において、65歳までの高年齢者雇用確保措置の速やかな実施、希望者全員の65歳までの安定した雇用の確保に関する自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第9条第3項に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年厚生労働省告示第560号)の内容について、その周知徹底を図る。
⑵ 高年齢者雇用確保措置に係る指導等
 都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において高年齢者雇用確保措置が講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組む。
 その際、特に、企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者雇用確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。
 また、高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる。
⑶ 高年齢者雇用アドバイザーとの密接な連携
 企業が高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずるに当たり高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合において、機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーが専門的・技術的支援を有効に行えるよう、公共職業安定所は、適切な役割分担の下で、機構と密接な連携を図る。
⑷ 助成制度の有効な活用等
 高年齢者の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主等に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、必要に応じて、当該助成制度について必要な見直しを行う。
2 高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項
⒧ 再就職の援助等に関する指針の周知徹底
 企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。
⑵ 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導
 離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用状況報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談や本人からの再就職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
 さらに、交付が義務付けられていない定年退職等の離職予定者についても、求職活動支援書の自主的な作成及び交付並びにこれに基づく計画的な求職者支援を実施するよう事業主に対して啓発を行う。
 なお、離職予定高年齢者の的確な把握に資するため各事業所における定年制の状況や解雇等の実施に係る事前把握の強化を図るほか、法において高年齢者雇用状況報告や多数離職届の提出が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。
⑶ 助成制度の有効な活用等
 在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図るとともに、高年齢者の円滑な労働移動の支援を図る。また、高年齢者の雇用の実情を踏まえた当該助成制度の必要な見直しに努める。
⑷ 公共職業安定所による再就職支援
 公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。
 また、在職中に再就職先が決定せず失業するに至った高年齢者については、その原因について的確な把握に努めつつ、必要に応じて職業生活の再設計に係る支援や担当者制による就労支援を行うなど、効果的かつ効率的な職業指導・職業紹介を実施し、早期の再就職の促進に努める。
 特に、有期契約労働者であった離職者については、離職・転職が繰り返されるおそれがあることから、公共職業安定所におけるマッチング支援、担当者制によるきめ細かな支援等の活用により、早期の再就職の促進に努める。
さらに、事業主に対して、機構と連携し、求職活動支援書の作成等に必要な情報提供等を行う。
⑸ 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等
 高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。
3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項
⒧ 生涯現役社会の実現に向けた取組
 生涯現役社会の実現を目指すため、高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理について、労働者自身の意識と取組や企業の取組への支援を行うほか、多様な就業ニーズに対応した雇用・就業機会の確保等の環境整備を図る。
また、生涯現役社会の実現に向けて、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討するなど、社会的な気運の醸成を図る。
 このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう周知するなど必要な支援に積極的に取り組む。
 また、機構その他の関係団体においては、年齢にかかわりなく働ける企業の普及及び促進を図るため、都道府県労働局等との連携を図りつつ、事業主のほか国民各層への啓発などの必要な取組を進める。
⑵ 高齢期の職業生活設計の援助
 労働者が、早い段階から自らのキャリア設計を含めた職業生活の設計を行い、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発、指導に努める。
 また、個々の労働者がそのキャリア設計に沿った職業能力開発を推進できるよう、相談援助体制の整備に努める。
⑶ 各企業における多様な職業能力開発の機会の確保
 労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、長期教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保する。
⑷ 職業能力の適正な評価等の促進
 高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われることを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な情報の収集、整理、提供に努める。また、技能検定制度等労働者の職業能力の公正な評価に資する制度の整備を図る。
⑸ 教育訓練給付制度等の周知徹底及び有効な活用
 高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため、雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
 また、高年齢者の雇用の継続を促進するため、雇用保険制度に基づく高年齢雇用継続給付制度の周知徹底及びその有効な活用を図る。
⑹ 労働時間対策の推進
 高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策を推進する。
⑺ 高年齢者の安全衛生対策
 高年齢者の労働災害防止対策、高年齢者が働きやすい快適な職場づくり、高年齢者の健康確保対策を推進する。
⑻ 多様な形態による雇用・就業機会の確保
 定年退職後等に、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を推進する。
⑼ 高年齢者の起業等に対する支援
 高年齢者の能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、高年齢者が起業等により自ら就業機会を創出する場合に対して必要な支援を行う。
⑽ 地域における高年齢者の雇用・就業支援
 事業主団体と公共職業安定所の協力の下、企業及び高年齢者のニーズに合ったきめ細かな技能講習や面接会等を一体的に実施することにより、高年齢者の雇用・就業を支援する。
⑾ 雇用管理の改善の研究等
 高年齢者の雇用機会の着実な増大、高年齢者の雇用の安定を図り、また、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、企業において取り組まれている高年齢者の活用に向けた積極的な取組事例を収集、体系化し、各企業における活用を促進する。また、高年齢者雇用状況報告等に基づき、高年齢者の雇用の状況等の毎年度定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。さらに、国際的に高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進するとともに、年齢差別禁止など、高年齢者の雇用促進の観点について、さらに検討を深める。
 
高齢者雇用法第4条、第5条まとめ
 本法第4条及び第5条では、事業主・都道府県等・国(公共職業安定所)の実施すべき措置等の努力義務を規定しています。
 若年者の失業対策、労使紛争、個別労働紛争、男女均等対策、労働基準、安全衛生、雇用保険、労災保険、障害者就労対策等々、旧労働省関係の施策は数多くあります。時の社会情勢や報道機関の注視など、クローズアップされる施策が時々遷り変わるわけですが、中長期の課題としての「少子高齢化」とこれに付随する「労働力人口の減少」に対応する施策としては、①女性の雇用環境の改善(均等法、育介法等の履行環境の整備・啓発)、②短時間労働者・有期雇用労働者等の雇用環境の改善(今般の労働契約法改正の改正点の実効性の担保)、③高年齢者等の就業環境の整備や生きがい・やりがいの創設、➃就労以外の生活で事情がありフルタイム就労が困難な仕事と他の項目の両立を希望する労働者への対応(いわゆるワーク・ライフ・バランス)、の以上四点が最も重点となるべき施策です。もちろん、少子高齢化等は従来から予測されていた社会状況ですから、各法制度により対応策はすでに取られてきたものと思います。
 近年長らく継続した経済の低成長及びデフレ下においては、それらの施策の重要度はおのずと相対的に下がってしまいます。しかし、現政権施策により、株価上昇、大企業を中心とした業績の改善、徐々に始まった賃金上昇、一部の人手不足による就職環境の改善等々により、ようやく高齢者雇用対策等への施策に力点を置く環境が整いつつあります。
 本法第4条・第5条とも、事業主・行政機関の努力義務として来た背景も上記のような事情によるものと推測しますが、今後は「豊富な人生経験や高いスキルをもつシニア労働者の活躍の場の創設」がより一層求められています。
 
 
以上で高齢者雇用法第4・5条を終了します。
 
 
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高齢者雇用法第3条

2015年06月04日 09:40

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第3条(基本的理念)

 高年齢者等は、その職業生活の全期間を通じて、その意欲及び能力に応じ、雇用の機会その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする。

 

2 労働者は、高齢期における職業生活の充実のため、自ら進んで、高齢期における

職業生活の設計を行い、その設計に基づき、その能力の開発及び向上並びにその健康の

保持及び増進に努めるものとする。

 

高齢者雇用法第3条の趣旨

1.基本指針抜粋 

 少子高齢化の急速な進行により、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国経済の活力を

維持していくためには、若者、女性、高年齢者、障害者など働くことができる全ての人の就労促進を

図り、そうした全ての人が社会を支える「全員参加型社会」の実現が求められている。高年齢者につ

いても、その能力の有効な活用を図ることが重要な課題であることから、高年齢者の厳しい雇用環境

が依然として続いている現状への的確な対応を図りつつ、高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り

年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(以下「生涯現役社会」という。)の実現を目指す

必要がある。

 平成24年6月1日現在、常用労働者が31人以上の企業のうち97.3%が年金支給開始年齢(平成24

年現在、64歳)までの改正前の法第9条第1項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置(定年の引上

げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き

続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下第1において同

じ。)を実施済みである。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は2.7%、定年の引

上げの措置を講じた企業の割合は14.7%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は82.5%

なっている。継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とする制度を導入した企業の割

合は42.8%、制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた企業の割合は57.2%となっている。

 また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は48.8%となっている(厚生労働省「高年齢者
雇用状況報告」(平成24年))。
 定年到達前の労働者が継続雇用時に希望する働き方と実際の状況を比較すると、正社員を希望する者の割合が44.2%と最も多いが、実際には正社員となる(または正社員の可能性が高い)者の割合は18.6%、嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる(または嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる可能性が高い)者の割合は45.7%となっている。また、フルタイムを希望する者の割合が51.6%であるのに対し、フルタイムとなる(またはフルタイムとなる可能性が高い)者の割合は33.2%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」(平成22年))。
2.高年齢者の勤労意欲の調査(出典:平成26年度内閣府高齢社会白書)
・就労に関する備え 
(1)65歳を超えても働くことを希望する人は 約半数 
 60歳以降の収入を伴う就労の意向と就労希 望年齢についてみると、「65歳くらいまで」と する人が 31.4%と最も多く、次いで「働けるう ちはいつまでも」が 25.7%、「70歳くらいまで」 が 20.9%となっている。 65歳を超えても働きたい人(「70歳くらいま で」、「75歳くらいまで」、「76歳以上」及び「働 けるうちはいつまでも」の合計)は、50.4%となっている。
(2)働きたい主な理由は「生活費を得たいか ら」 
 60歳以降に働くことを希望する理由につい ては、「生活費を得たいから」とする人が 76.7%と最も多く、次いで「自由に使えるお金 が欲しいから」が 41.4%、「仕事を通じて、友 人、仲間を得ることができるから」が 30.1%、 「生きがいが得られるから」が 28.9%となって いる。
(3)60歳以降は「パートタイム」を希望する 者が多い 
 60歳以降の希望する就労形態については、 「パートタイム(短時間勤務など)の社員・職 員」とする人が 53.9%と最も多く、次いで「フ ルタイムの社員・職員」が 24.2%、「自営業・個人事業主・フリーランス(家族従業者を含 む)」が 15.9%となっている。
 
高齢者雇用対策法第3条まとめ
 60歳を過ぎて一旦定年退職をしたのちは、悠々自適に趣味の世界に生きるなどしたいと思うことは、叶えたい夢の一つです。しかし、公的年金受給開始は原則65歳に引き上げられ、現在特別支給の老齢厚生年金を受給できる場合でも、生年月日により年々その支給開始年齢が引き上げられています。
 平成27年度の公的年金制度の財政見通しをみると、国民年金の支出見込みが約5.4兆円、厚生年金の支出見込みが約42.6兆円であり、両者合計が約48兆円となっています(出典:厚生労働省年金局作成、平成25年度年金制度のポイント)。
 比較のために平成27年度の国の予算をみると、税収が約54兆円、公債が約37兆円、支出予算の総額が約96兆円となっています。同じく平成27年度の国の特別会計の歳出純計額は約195兆円で、内社会保障関係給付費は約63兆円となっています。※出典:財務省発行、平成27年度予算のポイント及び特別会計の歳出(平成27年度予算)
 以上をもとに考察しますと、年金収入のみで余裕が有る生活を営むことができる社会制度は、今年予算で年金給付額が税収に匹敵する現状をみますと、今後はより一層の困難が予測されます。実際の年金受給額の平均をみても、老齢厚生年金額が約14万8千円/月、老齢基礎年金額が約1万8千円/月(出典:厚生労働省、厚生年金保険・国民年金事業年報)となっており、年金収入のみでは生活費が十分ではない実態があります。
 そこで、現状における最も合理的な生活設計の一般例としては、60歳~65歳は勤務先の継続雇用制度を希望して就労を続け、65歳以降であっても何らかの副収入を得るためわずかでも就労する必要があります。この現状をどのように見るかですが、健康なうちは無理がない範囲で就労することで健康維持にも役立ち、年金収入と併せて生活費にも余裕が出来るわけですから、働けるうちは働くという前提で60歳前から60歳以降の生活設計を模索しておくことが重要になります。
 以上のとおり、働けるうちは働くということを総合的に勘案して条文化したものが、本法第3条第2項であると言えるかと思います。
 
 
 
以上で高齢者雇用法第3条を終了します。
 
 
 
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高齢者雇用法第2条

2015年06月03日 14:05

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第2条(定義)

 この法律において「高年齢者」とは、厚生労働省令で定める年齢以上の者をいう。

 

2 この法律において「高年齢者等」とは、高年齢者及び次に掲げる者で高年齢者に該当

しないものをいう。

一 中高年齢者(厚生労働省令で定める年齢以上の者をいう。次項において同じ。)である求職者(次号に掲げる者を除く。)

二 中高年齢失業者等(厚生労働省令で定める範囲の年齢の失業者その他就職が特に困難な厚生労働省令で定める失業者をいう。第三章第三節において同じ。)

 

3 この法律において「特定地域」とは、中高年齢者である失業者が就職することが

著しく困難である地域として厚生労働大臣が指定する地域をいう。

 

則第1条 

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。以下「法」と

いう。)第二条第一項の厚生労働省令で定める年齢は、五十五歳とする。

 

則第2条

 法第二条第二項第一号の厚生労働省令で定める年齢は、四十五歳とする。

 

則第3条

 法第二条第二項第二号の厚生労働省令で定める範囲の年齢は、四十五歳以上六十五歳未満とする。

 

2 法第二条第二項第二号の就職が特に困難な厚生労働省令で定める失業者は、六十五歳未満の失業者であつて、次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第二条第二号の身体障害者

二 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第二十六条第一項の規定により保護観察に付された者及び更生保護法(平成十九年法律第八十八号)第四十八条各号又は第八十五条第一項各号に掲げる者であつて、その者の職業のあつせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があつたもの

三 その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者

 
則第4条

 法第二条第三項の特定地域(以下「特定地域」という。)の指定は、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第二十五条第一項に規定する広域職業紹介活動に係る地域であつて、次の各号に該当するものについて行うものとする。

一 法第二条第二項第一号の中高年齢者(以下「中高年齢者」という。)である求職者の数が著しく多いこと。

二 中高年齢者に係る求人の数に対する中高年齢者である求職者の数の比率が著しく高いこと。

三 中高年齢者である求職者のうち就職した者の割合が著しく小さいこと。

 

2 厚生労働大臣は、中高年齢者である失業者が多数発生することが見込まれ、前項各号に該当することとなると認められる地域その他前項の地域に準ずる地域であつて必要があると認めるものについても、特定地域の指定を行なうことができる。

 

3 特定地域の単位は、公共職業安定所の管轄区域とする。ただし、特別の事情がある場合には、別に厚生労働大臣が定める地域とする。

 

平成24年基本指針(平成24年11月9日厚生労働省告示第559号)

 

第1 高年齢者の就業の動向に関する事項
人口及び労働力人口の高齢化
 我が国の人口は、世界でも例を見ない急速な少子高齢化が進行しており、平成22年(2010年)から平成32(2020年)までの10年間においては、15~59歳の者が約492万人減少するのに対し、60歳以上の高年齢者が約418万人増加し、3人に1人が60歳以上の高年齢者となるものと見込まれる。
 また、60歳以上の労働力人口は平成22年で約1,183万人であり、平成24年から平成26年にかけていわゆる団塊の世代(昭和22年から昭和24年までに生まれた世代)が65歳に達することから、平成22年と労働力率が同じ水準であるとすれば、平成22年(2010年)から平成32年(2020年)までの10年間においては、60~64歳の労働力人口は154万人減少し、65歳以上の労働力人口は134万人増加すると見込まれる(総務省統計局「国勢調査」(平成22年)、「労働力調査」(平成22年)及び国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成24年)の中位推計)。
高年齢者の雇用・就業の状況
⑴ 高年齢者をめぐる雇用情勢
 高年齢者の雇用失業情勢を見ると、平成23年における完全失業率は、年齢計が4.5%であるのに対し、60~64歳層で5.1%となっており、これを男女別に見ると、男性については年齢計が4.8%、60~64歳層で6.2%であるのに対し、女性については年齢計が4.1%、60~64歳層では3.4%となっている(総務省統計局「労働力調査」(平成23年の数値は、岩手県、宮城県及び福島県を除く結果。以下同じ。))。
⑵ 高年齢者の就業状況
 常用労働者が31人以上の企業における60~64歳層の常用労働者数は、平成21年の約155万人から、平成24年の約196万人に増加している(厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」)。また、同年齢層の就業率は、平成17年に52.0%、平成23年に57.3%となっている。これを男女別に見ると、男性は、平成17年に65.9%、平成23年に70.9%となっている。また、女性は、平成17年に39.0%、平成23年に44.2%となっており、近年高まっている(総務省統計局「労働力調査」)。
 55~69歳の高年齢者の勤務形態を見ると、男性の雇用者に占めるフルタイム勤務以外の者の割合は、55~59歳層で13.2%、60~64歳層で35.0%、65~69歳層で64.4%となっている。また、女性の雇用者に占めるフルタイム勤務以外の者の割合は、55~59歳層で55.1%、60~64歳層で65.1%、65~69歳層で81.1%となっており、年齢層が高くなるほど高まっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」(平成22年))。
高年齢者に係る雇用制度の状況
⑴ 定年制及び継続雇用制度の動向
 平成24年6月1日現在、常用労働者が31人以上の企業のうち97.3%が年金支給開始年齢(平成24年現在、64歳)までの改正前の法第9条第1項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下第1において同じ。)を実施済みである。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は2.7%、定年の引上げの措置を講じた企業の割合は14.7%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は82.5%となっている。継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とする制度を導入した企業の割合は42.8%、制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた企業の割合は57.2%となっている。
 また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は48.8%となっている(厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」(平成24年))。
 定年到達前の労働者が継続雇用時に希望する働き方と実際の状況を比較すると、正社員を希望する者の割合が44.2%と最も多いが、実際には正社員となる(または正社員の可能性が高い)者の割合は18.6%、嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる(または嘱託・契約社員やパート・アルバイトとなる可能性が高い)者の割合は45.7%となっている。また、フルタイムを希望する者の割合が51.6%であるのに対し、フルタイムとなる(またはフルタイムとなる可能性が高い)者の割合は33.2%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」(平成22年))。
 また、高年齢者雇用確保措置を講じている企業で、継続雇用時の雇用契約期間を1年単位とする企業の割合は83.5%、1年を超える期間とする企業の割合は6.0%、期間を定めない企業の割合は2.1%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高齢者継続雇用に向けた人事労務管理の現状と課題」(平成19年))。
⑵ 賃金の状況
   賃金決定の要素
 過去3年間に賃金制度の改定を行った企業(46.3%)では、その改定内容(複数回答)として「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」(23.7%)、「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」(23.3%)、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」(22.1%)を多く挙げている。また、業績評価制度を導入している企業の割合は、45.6%と半分近くになっている(厚生労働省「就労条件総合調査」(平成19年))。
   転職者の賃金
 転職時の賃金変動の状況をみると、10%以上の減少となっている者の割合は、一般に年齢が高いほど高くなる傾向にあり、45~49歳で18.7%、50~54歳で20.0%、55~59歳で31.5%、60~64歳で55.2%となっている。ただし、65歳以上では39.2%となっており、その割合は減少している(厚生労働省「雇用動向調査」(平成23年上半期))。
   継続雇用時の賃金
 継続雇用時の年収の見通しについては、年金等も含めて定年到達前の年収の6~7割となる者の割合が31.6%、4~5割となる者の割合が27.6%となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「60歳以降の継続雇用と職業生活に関する調査」(平成20年))。
   継続雇用時の賃金水準決定の要素
 60代前半の継続雇用者の賃金水準決定の際に考慮している点(複数回答)をみると、「60歳到達時の賃金水準」(41.1%)、「高年齢雇用継続給付の受給状況」(25.0%)、「在職老齢年金の受給状況」(22.2%)、「担当する職務の市場賃金・相場」(21.7%)、「業界他社の状況」(18.9%)となっている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「高齢者の雇用・採用に関する調査」(平成22年))。
高年齢者の就業意欲
 60歳以上の男女の就業意欲についてみると、60歳くらいまで仕事をしたい者の割合が9.7%、65歳くらいまで仕事をしたい者の割合が19.2%、70歳くらいまで仕事をしたい者の割合が23.0%、75歳くらいまで仕事をしたい者の割合が8.9%、76歳以上まで仕事をしたい者の割合が2.4%、働けるうちはいつまでも仕事をしたい者の割合が36.8%となっている(内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年))。
 
第2 高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項
 高年齢者の職業の安定その他の福祉の増進を図るとともに、少子高齢化が進む中で経済社会の活力を維持するためには、生涯現役社会を実現することが必要である。
 また、平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられることから、雇用と年金の確実な接続を図ることが重要である。このため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号。以下「改正法」という。)に基づき、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において講じられるようにするとともに、年齢にかかわりなく働ける企業の普及を図り、高年齢者の雇用の場の拡大に努める。
 なお、高年齢者の雇用対策については、その知識、経験等を活かした安定した雇用の確保が基本となるが、それが困難な場合にあっては、在職中からの再就職支援等により、円滑に企業間の労働移動を行うことができるよう、また、有期契約労働者を含め離職する労働者に対しては、その早期再就職が可能となるよう再就職促進対策の強化を図る。
 また、高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等個人差が拡大し、その雇用・就業ニーズも雇用就業形態、労働時間等において多様化することから、このような多様なニーズに対応した雇用・就業機会の確保を図る。
 これらの施策により、新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)で示された平成32年までの目標(同戦略において、「平成32年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」等としていることを前提。)である60~64歳の就業率を63%とすることを目指すとともに、同年までに65~69歳の就業率を40%とすることを目指す。

 

高齢者雇用法第2条のまとめ

1.高年齢者の定義

  55歳以上の年齢の者

2.中高年齢者

  45歳以上の年齢の者

3.高年齢者等

  55歳以上の者、54歳未満の者及び45歳以上54歳までの求職者、45歳以上54歳の失業者、65歳未満の一定の失業者、保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があつた者、その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者

4.法第二条第三項の特定地域の指定要件

 ① 中高年齢者である求職者の数が著しく多い地域

 ② 中高年齢者である求職者の数の比率が著しく高い地域

 ③ 中高年齢者である求職者のうち就職した者の割合が著しく小さい地域

※実際に指定された地域の確認が出来ませんでした。

 

 

 

 

 
 

 

以上で高齢者雇用法第2条を終了します。

 

 

 

  

  

 

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高齢者雇用法第1条

2015年06月03日 11:22

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第1条(目的)

 この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。


法制定の経緯 

 昭和46年施行の本法は、定年年齢の引き上げ(55歳⇒60歳⇒65歳)、継続雇用制度の導入(現行制度は、希望者全員を継続雇用すること、再就職の促進、定年退職者等の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置、その結果高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図り、経済及び社会の発展に寄与することが目的とされています。

 ※高年齢者とは55歳以上、中高年齢者とは45歳以上の労働者をいいます。(施行規則第1条・第2条)

 

健康寿命の伸びと年金受給開始年齢の引き上げ

1.公的年金制度の改正

 昭和61年の厚生年金法・国民年金法等の大改正により、昭和36年4月2日以降生(女性は昭和41年4月2日以降生)の方は原則65歳以降に年金の受給ができることになりました。昭和16年4月1日以前(女性は昭和21年4月1日以前)生の方(男性は今日現在74歳以上、女性は69歳以上)は60歳から例外的に(特別支給の老齢厚生年金として)年金を受給されています。

 このように、今後60歳を迎える労働者は65歳までの生活設計を立てておく必要があります。そこで、この公的年金制度の改正を踏まえ、本法では第9条により①「定年年齢の引き上げ」又は②「継続雇用制度の導入」若しくは③「定年制度の廃止」のうちいずれかの措置を講ずるように義務付けています。

2.健康寿命の伸び 

 日本人の平均寿命は、平成24年時点で男性79.94歳、女性86.41歳となっています。※出典厚生労働省「簡易生命表」

 一方、平成22年の健康寿命の平均は男性70.42歳、女性73.62歳となっています。※出典:「健康寿命の指標化に関する研究」藤田保健衛生大学医学部衛生学講座教授 橋本 修二氏ほか

 健康寿命の定義は、「日常生活に制限のない期間、すなわちADL制限がない期間」とされています。その後、日常生活に制限のある期間の平均は、男性9.22年、女性12.77年となっており、男性は平均的に70歳まで概ね健康で過ごしその後約10年体に支障を持ちながら生活を続け、女性は73歳まで健康で過ごしその後約13年体に支障を持ちながら生活を続けるという統計結果となっています。

 このように、男性は70歳まで女性は73歳まで何らかの就労を行うことが可能であると推測され、65歳までどころか70歳まで、働けるものであれば働きたいと考えている人も多いと推測されます。

 特に、世代人口が多い「『団塊の世代 』(平成25年10月時点、60歳170万人、61歳179万人、62歳190万人、63歳204万人、64歳223万人、65歳221万人)出典:総務省統計局、年齢各歳別人口」が一斉に定年年齢を迎える今日、本法の目的達成は日本社会にとって意義深いものと考えます。

 

年齢別就労人口の実態

 平成27年4月時点の年齢階層別の就労者の人口は、15~24歳494万人、25~34歳1,119万人、35~44歳1,501万人、45~54歳1,383万人、55~64歳1,129万人、65歳以上710万人となっています。※出典:総務省統計局長期時系列データ

 若年者よりも65歳以上の高年齢者の就労人口が多く、時代に沿った実態が見て取れます。同じデータを昭和43年1月で見てみると。15~24歳1,086万人、25~34歳1,242万人、35~44歳1,148万人、45~54歳757万人、55~64歳492万人、65歳以上220万人となっています。昭和43年(1963年)当時は、労働力は明らかに若年層が担っており、15~24歳の年齢層では約2倍、一方の65歳以上の年齢層では就労人口は現在の約3割のみ就労しているに過ぎません。勿論、第二次大戦に出征した世代ですので人口そのものが少ないことも関係しています。

 参考までに、昭和50年の統計データは、15~24歳815万人、25~34歳1,357万人、35~44歳1,260万人、45~54歳973万人、55~64歳539万人、65歳以上247万人となっています。

 

参考:年齢階層別人口比較表:総務省統計局年齢各歳別人口(単位万人、すべて各年の1月度の数値)

       昭和43年  昭和50年  昭和60年  平成15年  平成25年  平成27年

15~24歳  1,086     815     710    613      486    491      

25~34歳  1,242    1,357    1,255   1,434    1,177   1,135

35~44歳  1,148    1,260    1,550   1,258    1,506   1,505

45~54歳   757      973    1,269   1,477    1,325    1,375

55~64歳   492      539       734   1,047    1,177    1,139

65歳以上   220     247     294     469     616    730

計      4,722    4,947    5,518   5,830    5,670   6,374

※15~24歳の就労人口は単純減少、65歳以上の就労人口は単純増加していることがわかります。

 

 

以上で高齢者雇用法第1条を終了します。

 

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管理監督者の拡大解釈

2015年06月02日 16:17

管理監督者の拡大解釈

労働基準法第41条

 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
 一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
 二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
 三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

自著「労働基準法の研究」より

・労働時間、休憩、休日の適用除外の規定です。

 昨今、名ばかり管理監督者の問題で度々話題に上る条文です。そこで、第41条については、少し丁寧に記述したいと考えています。今回も、まず判例から、法第41条第1項第2号に関して、重点的に確認してみたいと思います。

Ⅰ 参考判例・管理監督者
1)バズ(美容室副店長)事件 2008年4月22日 東京地 判決 
 原告は、自らの業務内容について、その内容及び時間を決定する上で裁量があり、副店長兼トップスタイリストとして、被告代表者、店長に継ぐ地位にあり、店舗経営(サロンワーク)に関しては、被告代表者ともに中心的な役割を担っていたといえるけれども、被告の経営、人事、労務管理等へ関与は限定的であり、格別の金銭的処遇を受けていたわけでもなく、自らの労働時間についても被告による出退勤管理を受けていたものであるから、労働条件の決定その他労務管理について経営者である被告と一体的立場にあるとまでいうことはできない
 したがって、原告は、労働基準法41条2号にいう「管理監督者」ではないというのが相当である。

※会社の「経営」「人事」「労務管理」等への関与が著しく、「労働条件の決定その他労務管理について経営者である被告と一体的立場にある」場合であって、相当の賃金(高額なもの)を得ている場合には、法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とされています。

2)日本ファースト証券事件 2008年2月8日 大阪地 判決 
 原告は、大阪支店の長として、三〇名以上の部下を統括する地位にあり、被告全体から見ても、事業経営上重要な上位の職責にあったこと、大阪支店の経営方針を定め、部下を指導監督する権限を有しており、中途採用者については実質的に採否を決する権限が与えられていたこと、人事考課を行い、係長以下の人事については原告の裁量で決することができ、社員の降格や昇格についても相当な影響力を有していたこと、部下の労務管理を行う一方、原告の出欠勤の有無や労働時間は報告や管理の対象外であったこと、月二五万円の職責手当を受け、職階に応じた給与と併せると賃金は月八二万円になり、その額は店長以下のそれより格段に高いことが認められる。
 このような原告の職務内容、権限と責任、勤務態様、待遇等の実態に照らしてみれば、原告は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある管理監督者にあたるというべきである。
 これに対し、原告は、大阪支店長とは名ばかりであり、経営方針の設定や社員の採否・昇降格・配置等の労務人事管理は、専ら本社のB副社長の指示によるものであって、原告には何らの権限もなかったと主張し、証拠中にはこれに沿う部分がある。
 しかし、毎朝のミーティングでの話題事項が、本社から逐一指示されてくるとは考え難い上、社員の配置や組織変更は、常に原告が支店経営上の必要性を考えて自ら発案したものであって、大阪支店を担当する副社長の了解を得ているとは言っても、経営方針の設定や社員の配置等についての実質的な決定権限は原告にあったということができる。
 また、本社が試験や面接を実施する新規採用の場合と異なり、中途採用の場合は、支店に直接応募してくるか、社員からの紹介に多くよることが多く、面接結果が唯一の資料となるところ、採否についての実質的な決定権限は面接を実施する原告に委ねられているというべきである。原告は、予め本社から採否が伝えられていた旨供述するが、にわかに信用し難い。

 社員の昇降格についても、原告には自らの人事評価に基づき意見を述べる機会を与えられていた上、原告の意見が容れられなかった例が実際にあるのかについては証拠上明らかでない。なお、原告は、自らも降格処分を受けていることをもって、自身に人事権がなかった証拠であると主張するが、証拠によれば、原告の降格は、部下の営業成績が悪かったことに対する管理者責任を問われた結果であることが認められ、かえって原告に支店の経営責任と労務管理責任があったことを裏付ける。
 さらに、原告は、新聞の購読すら支店長が自由に決定することができないなど、経費についての裁量は著しく乏しかった旨供述するが、証拠(省略)に照らしてにわかに信用し難い。
 また、原告は、外務員日誌の作成を求められるなど労働時間の管理を受けており、欠勤控除されなかったのは欠勤したことがなかったからにすぎず、現に後任のD支店長は欠勤控除されていると主張する。
 しかし、外務員日誌の作成が交通費の実費精算と営業経過の備忘のためであったことは、原告も認めているところであって、これをもって労働時間が管理されていたということはできない。
 また、証拠(省略)によれば、D支店長に対する賃金控除は、部下に対する監督責任を問われたものであると窺われ、少なくとも欠勤に対する控除であった否かは本件全証拠によっても判然としない。
 さらに、原告は、待遇としても、以前勤めていた会社では、被告での給与より、残業手当込みで月額一五万円以上高かったと述べ、被告における待遇は高いものではなかったと主張する。
 しかし、賃金体系も契約内容も異なる会社での給与額だけを単純に比較して、その多寡を決することはできないし、被告における月額八〇万円以上の給与が、原告の職務と権限に見合った待遇と解されないほど低額とも言いがたい。
 ほかに、前記の認定を覆すに足る証拠はない。
以上により、争点四についての被告の主張には理由があり、争点三について判断するまでもなく、原告の時間外割増賃金の請求には理由がない。 

※以下に、事例の2)の判決内容を整理してみます。なお、判決では管理監督者と認定されました。
1.大阪支店の長として、三〇名以上の部下を統括する地位にあった
2.会社全体から見ても、事業経営上重要な上位の職責にあった
3.大阪支店の経営方針を定め、部下を指導監督する権限を有していた
4.中途採用者については実質的に採否を決する権限が与えられていた
5.人事考課を行い、係長以下の人事については原告の裁量で決することができ、社員の降格や昇格についても相当な影響力を有していた
6.部下の労務管理を行う一方、原告の出欠勤の有無や労働時間は報告や管理の対象外であった
7.月二五万円の職責手当を受け、職階に応じた給与と併せると賃金は月八二万円になり、その額は店長以下のそれより格段に高かった

原告の主張は以下のとおり
1.大阪支店長とは名ばかりであり、経営方針の設定や社員の採否・昇降格・配置等の労務人事管理は、専ら本社の副社長の指示によるものであって、原告には何らの権限もなかった(認定されず)
2.社員の配置や組織変更は、常に原告が支店経営上の必要性を考えて自ら発案したものであって、大阪支店を担当する副社長の了解を得ていた(認定されず)
3.本社が試験や面接を実施する新規採用の場合と同様、中途採用の場合も予め本社から採否が伝えられていた(認定されず)
4.自らも降格処分を受けていることから、自身に人事権がなかった証拠である(認定されず)
5.新聞の購読すら支店長が自由に決定することができないなど、経費についての裁量は著しく乏しかった(認定されず)
6.外務員日誌の作成を求められるなど労働時間の管理を受けており、欠勤控除されなかったのは欠勤したことがなかったからにすぎず、現に後任の支店長は欠勤控除されている(認定されず)
7.待遇としても、以前勤めていた会社では、被告での給与より、残業手当込みで月額一五万円以上高かった(認定されず)

※この判例は、かなり具体的で参考になるかと思います。
 判決内容は、「割増賃金の請求には理由がない」としています。この点で、もう一つの考え方として、「割増賃金ではない通常の賃金はどうか」という点が疑問です。参考までに、通常の賃金の場合には、「労使の定めるところによる」との通達があります。

3)岡部製作所事件 2006年5月26日 東京地 判決 
 被告における原告の地位・立場に照らした実際の就労事情からすると、原告の被告への経営参画状況は極めて限定的であること、常時部下がいて当該部下の人事権なり管理権を掌握しているわけでもなく、人事労務の決定権を有せず、むしろ、量的にはともかく質的には原告の職務は原告が被告社内で養ってきた知識、経験及び人脈等を動員して一人でやり繰りする専門職的な色彩の強い業務であることが窺われること、勤務時間も実際上は一般の従業員に近い勤務をしており、原告が自由に決定できるものではないことなどが認められる。
 確かに、原告は被告の青梅工場の営業開発部(その後は技術開発部)の部長という肩書きを持ち、社内で管理職としての待遇を受け、役付手当として月11万円の支給を受けていることは認められるものの、これらをもってしては、未だ、労基法41条2号のいわゆる管理監督者に該当するとして労働時間に関する規定の適用除外者とまでは認めることができない
 他に本件証拠上、原告につき管理監督者と認めるに足りる有効なものは見当たらない。
 それゆえ、原告につき労基法上の休日割増賃金支給の対象には当たらないとする被告の主張は採用できない。
(原則勝訴)

※1.被告への経営参画状況は極めて限定的
 2.常時部下がいて当該部下の人事権なり管理権を掌握しているわけではない
 3.人事労務の決定権を有しない
 4.量的にはともかく質的には原告の職務は原告が被告社内で養ってきた知識、経験及び人脈等を動員して一人でやり繰りする専門職的な色彩の強い業務である
 5.勤務時間も実際上は一般の従業員に近い勤務をしており、原告が自由に決定できるものではない
 6.部長という肩書きを持ち、社内で管理職としての待遇を受け、役付手当として月11万円の支給を受けていることは認められる
 7.原告につき管理監督者と認めるに足りる有効なものは見当たらない

4)東建ジオテック事件 2002年3月28日 東京地 判決
 管理監督者とは、労働時間、休憩及び休日に関する同法の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要性が認められる者を指すから、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にあり、出勤・退勤等について自由裁量の権限を有し、厳格な制限を受けない者をいうものと解すべきであり、単に局長、部長、工場長等といった名称にとらわれることなく、その者の労働の実態に即して判断すべきものである。
 これを本件についてみると、前記認定事実によれば、原告らは、いずれも東京支店又は東北支店の技術部門に所属し、現場に赴いて自ら、あるいは他従業員を現場で指揮監督しつつ地質調査の業務に従事していたほか、原告らは、課長補佐以上の職にあった当時(調査役の職にあった時期を除く。)いずれも、支店の管理職会議に出席して支店の運営方針等について意見を述べる機会が与えられ、原告Cは、次長職にあった当時、週1回開かれる支店の幹部会議に出席し、また、原告D、同Eを除く原告らは、部下の人事評価に関与していたことが認められる。しかしながら、この管理職会議は、支店において開かれるもので、回数も年に2回にすぎず、その実態も、基本的に会社経営側の支店運営方針を下達する場であったと認められるから、上記のような管理職会議の場で意見具申の機会を与えられていたことをもって、被告の経営方針に関する意思決定に直接的に関与していたと評価することはできないし、原告Cが出席していた幹部会議も、被告がその経営方針にかかわることがらを決定する場であったとは認めがたい。また、原告D、同Eを除く原告らが行っていた人事考課についても、係長として部下の評価について意見を述べ、あるいは課長補佐以上の職にある者として自ら部下の評価を行うことはあったが、当該人事考課には上位者による考課がさらに予定され、最終的には支店長の評点が被考課者の総合評価とされていたのであり、労務管理の一端を担っていたことは否定できないものの、経営者と一体的立場にあったことを示す事実とはいいがたい
 その他、前示の本件請求期間中における原告らの職務内容及び勤務実態にもかかわらず、なお、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にあると評価しうるような事情を認めるに足りる証拠はなく、したがって、原告らは、いずれも管理監督者と認めることはできない

4)東建ジオテック事件 2002年3月28日 東京地 判決
※1.管理監督者とは、労働時間、休憩及び休日に関する同法の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要性が認められる者を指す
 2.労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にあり、出勤・退勤等について自由裁量の権限を有し、厳格な制限を受けない者をいうものと解すべき
 3.単に局長、部長、工場長等といった名称にとらわれることなく、その者の労働の実態に即して判断すべき
事例では、
 ア.支店の管理職会議に出席して支店の運営方針等について意見を述べる機会が与えられ
 イ.原告Cは、次長職にあった当時、週1回開かれる支店の幹部会議に出席し
 ウ.原告D、同Eを除く原告らは、部下の人事評価に関与していた
 エ.管理職会議は、支店において開かれるもので、回数も年に2回にすぎず、その実態も、基本的に会社経営側の支店運営方針を下達する場であった
 オ.管理職会議の場で意見具申の機会を与えられていたことをもって、被告の経営方針に関する意思決定に直接的に関与していたと評価することはできない
 カ.原告Cが出席していた幹部会議も、被告がその経営方針にかかわることがらを決定する場であったとは認めがたい
 キ.原告D、同Eを除く原告らが行っていた人事考課についても、係長として部下の評価について意見を述べ、あるいは課長補佐以上の職にある者として自ら部下の評価を行うことはあったが、当該人事考課には上位者による考課がさらに予定され、最終的には支店長の評点が被考課者の総合評価とされていたのであり、労務管理の一端を担っていたことは否定できないものの、経営者と一体的立場にあったことを示す事実とはいいがたい
※名目上の権限も実質的には、さらに上位者の決裁のもとに決定されているような場合には、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場」にあるとは言えないとされました。

5)育英舎事件 2002年4月18日 札幌地 判決
 労働基準法は、管理監督者に対しては、労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めている(41条2号)が、その趣旨とするところは、管理監督者は、その職務の性質上、雇用主と一体(ママ)なり、あるいはその意を体して、その権限の一部を行使する関係上、自らの労働時間を中心とした労働条件の決定等について相当な程度の裁量権を認められ、その地位に見合った相当な待遇を受けている者であるため、強行法規としての労働基準法所定の労働時間等に関する厳格な規制を及ぼす必要がなく、かつ、相当でもないとするところにあるものと解される。したがって、管理監督者に当たるかどうかを判断するに当たっては、その従業員が、雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているかどうか、自己の出退勤を始めとする労働時間について一般の従業員と同程度の規制管理を受けているかどうか、賃金体系を中心とした処遇が、一般の従業員と比較して、その地位と職責にふさわしい厚遇といえるかどうかなどの具体的な勤務実態に即して判断すべきものである。
 原告は、第3営業課長として、その課に属する5教室の人事管理を含むその運営に関する管理業務全般の事務を担当していたものであるが、それらの業務全般を通じて、形式的にも実質的にも裁量的な権限は認められておらず、急場の穴埋のような臨時の異動を除いては何の決定権限も有してはいなかった。
 また、原告は、営業課長として、社長及び他の営業課長ら及び事務局とで構成するチーフミーティングに出席し、被告の営業に関する事項についての協議に参加する資格を有していたが、そのミーティング自体が、いわば社長の決定に当たっての諮問機関の域を出ないものであって、それへの参加が何らかの決定権限や経営への参画を示すものではない。

 さらに、原告は、その勤務形態として、本部に詰めるか、あるいはまた、いつどの教室で執務をするかしないかについては、毎週本部で開かれるチーフミーティングに出席する場合を除いてその裁量に委ねられていたけれども、それは、市内に点在する5教室の管理を任されている関係上、いつどこの教室を回って、どのようにその管理業務を行うかについての裁量があるというに過ぎず、本部及び各教室における出退勤についてはタイムカードへの記録が求められていて、その勤怠管理自体は他の従業員と同様にきちんと行われており、各教室の状況について社長に日報で報告することが例とされているというその業務態様に照らしても、事業場に出勤をするかどうかの自由が認められていたなどということはないし、現に原告は、公休日を除いて毎日事業場には出勤をしていた。
 そして、原告が課長に昇進してからは、課長手当が支給されることになり、それまでの手当よりも月額で1万2000円ほど手当が上がったため、月額支給額が上がり、賞与も多少増額となり、接待費及び交通費として年間30万円の支出が認められ、また、業績に応じて平成11年に1度だけとはいえ、課長報奨金として70万円が支給されるなど、給与面等での待遇が上がっていることは確かであるが、賞与の支給率も、他の事務職員や教室長と比べ、総じて高いとはいえ、原告に匹敵する一般従業員もいることからすると、それは、その役職にふさわしい高率のものであるともいえない

※法41条2号の趣旨
 1.管理監督者は、その職務の性質上、雇用主と一体となり、あるいはその意を体して、その権限の一部を行使するものである
 2.自らの労働時間を中心とした労働条件の決定等について相当な程度の裁量権を認められ、その地位に見合った相当な待遇を受けている者である
 3.上記1.及び2.を理由として、(管理監督者には)強行法規としての労働基準法所定の労働時間等に関する厳格な規制を及ぼす必要がなく、かつ、相当でもないとするところにある
 4.管理監督者に当たるかどうかを判断するに当たっては、その従業員が、雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているかどうか
 5.同じく、自己の出退勤を始めとする労働時間について一般の従業員と同程度の規制管理を受けているかどうか
 6.賃金体系を中心とした処遇が、一般の従業員と比較して、その地位と職責にふさわしい厚遇といえるかどうか
 7.上記4.~6.の具体的な勤務実態に即して判断すべきである
※本件事例に関する判断
 1.原告は、第3営業課長として、その課に属する5教室の人事管理を含むその運営に関する管理業務全般の事務を担当していた
 2.原告の担当業務全般を通じて、形式的にも実質的にも裁量的な権限は認められていなかった
 3.急場の穴埋のような臨時の異動を除いては何の決定権限も有してはいなかった
 4.原告は、営業課長として、社長及び他の営業課長ら及び事務局とで構成するチーフミーティングに出席し、被告の営業に関する事項についての協議に参加する資格を有していた
 5.一方で、ミーティング自体が、いわば社長の決定に当たっての諮問機関の域を出ないものであって、それへの参加が何らかの決定権限や経営への参画を示すものではなかった
 6.原告は、その勤務形態として、本部に詰めるか、あるいはまた、いつどの教室で執務をするかしないかについては、毎週本部で開かれるチーフミーティングに出席する場合を除いてその裁量に委ねられていた
 7.しかし、市内に点在する5教室の管理を任されている関係上、いつどこの教室を回って、どのようにその管理業務を行うかについての裁量があるというに過ぎなかった
 8.本部及び各教室における出退勤についてはタイムカードへの記録が求められていて、その勤怠管理自体は他の従業員と同様にきちんと行われていた
 9.各教室の状況について社長に日報で報告することが例とされているというその業務態様に照らしても、事業場に出勤をするかどうかの自由が認められていたなどということはないし、現に原告は、公休日を除いて毎日事業場には出勤をしていた
 10.賞与の支給率も、他の事務職員や教室長と比べ、総じて高いとはいえ、原告に匹敵する一般従業員もいることからすると、それは、その役職にふさわしい高率のものであるともいえない(以上から、原告は管理監督者ではない)

6)風月荘事件 2001年3月26日 大阪地 判決 
 被告は、原告が労働基準法の労働時間等の規制の適用を除外される同法41条2号の管理監督者に該当するものであったと主張するところ、右管理監督者とは同法が規制する労働時間等の枠を超えて活動することが当然とされる程度に企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態もその規制に馴染まないような立場にある者をいうと解され、その判断に当たっては、経営方針の決定に参画し、あるいは労務管理上の指揮権限を有するなど経営者と一体的立場にあり、出退勤について厳密な規制を受けずに自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か等を具体的な勤務実態に即して検討すべきである。
 右認定事実及び前提事実によれば、確かに原告の賃金には住宅手当がないとはいえ、本件店舗の他の従業員の賃金等に比べ、風紀手当が格段に高額に設定されており、これは勤務が不規則になったり、勤務時間が長時間に及ぶことなどへの配慮がなされた結果であると推認できないではないが、原告には、被告の営業方針や重要事項の決定に参画する権限が認められていたわけではないし、タイムカードの打刻や原告の分をも含む日間面着表の提出が義務づけられ、ある時期まで残業手当も支給されており、日常の就労状況も査定対象とされ、出退勤や勤務時間が自由裁量であったとも認められず、本件店舗の人事権も有していなかったのであって、原告は、勤務状況等も含めて被告から管理されていたというべきであり、到底、経営者と一体的立場にあったなどとは認められず、企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態が労働時間の規制に馴染まないような立場にあったとはいえないから、労働基準法41条2号の管理監督者に該当するものではない。

※「到底、経営者と一体的立場にあったなどとは認められず、企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態が労働時間の規制に馴染まないような立場にあったとはいえない」としています。

7)ザ・スポーツコネクション事件 2000年8月7日 東京地 判決 
 労基法41条2号にいう管理監督者とは、経営方針の決定に参画し又は労務管理上の指揮権限を有する等、その実態から見て経営者と一体的な立場にあり、出勤退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者であると解されるが、右に述べた管理監督者の意義に照らせば、課長代理の役職以上の者が労基法41条2号にいう管理監督者に当たるかどうかについては課長代理の役職以上の者の勤務の実態に即して判断されるべきであるところ、課長代理の役職以上の者の出退社時間はタイムレコーダーによって管理されていなかったこと、課長代理の役職以上の者には残業代が支払われていないことは、当事者間に争いはないが、これらの事実だけでは、被告において課長代理の役職以上の者が労基法41条2号にいう管理監督者に当たると認めることはできない。そして、原告が平成8年4月1日以降経理課長の役職にあったことからすれば、原告は経理課に所属する従業員を管理監督する立場にあったといえること、原告は課長という役職に対する手当として1か月当たり約3万円程度の支給を受けていたこと、これらの事実を併せ考えても、原告が労基法41条2号にいう管理監督者に当たることを認めることはできない。

8)日本マクドナルド事件 2008(平成20)年01月28日 東京地裁 判決
争点抜粋:店長である原告は,労働基準法41条2号の「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という)」に当たるか。 
☆被告の主張
(1) 管理監督者とは,使用者のために他の労働者を指揮監督する者(監督の地位にある者)又は他の労働者の労務管理を職務とする者(管理の地位にある者)をいい,監督か管理の一方に職務内容を厳密に分類することができない者であっても,その職務の特質から労働時間管理が困難又は不適切であり,その賃金が職務の特質に適応した額,方法により支払われている場合は,管理監督者に当たるといえる。
(2) 被告の店長は,数十名の従業員(クルー,スウィングマネージャー,アシスタントマネージャー等)の勤務シフトを作成し,当該店舗における従業員の勤務の指揮監督を行っているから,監督の地位にある者に当たる。また,店長は,クルーの採用やスウィングマネージャーへの昇格,クルー及びスウィングマネージャーの人事考課,昇給等を決定するほか,社員の人事考課,昇給等の決定などの労務管理も行っているから,管理の地位にある者にも当たる。

(なお,仮に,管理監督者の該当性について,労務管理以外の職責や権限を考慮すべきであるとしても,被告における店長は,店舗の売上計画や予算の立案のほか,店舗における支出の決定,販売促進活動の企画,実施,店舗の衛生等の管理,店長会議等への参加を通じた被告の経営への参画など,重要な職責と権限を有していることは明らかである)
 そして,以上のような店長の職務は,労働時間の管理になじまないものであるし,その賃金についてはアシスタントマネージャーとは異なる報酬体系が採用され,その職務の特質に即した額,方法による賃金が支払われているから,店長が管理監督者に当たることは明らかである。

☆原告の主張
(1) 管理監督者とは,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいう。換言すると,管理監督者とは,労働時間や休日,休憩に関する労働基準法の規制を越えて活動することが要請されるほど重要な職務と責任を有し,それにふさわしい待遇を現実に受けており,現実の勤務形態も労働時間等の規制になじまない立場にある者を意味する。管理監督者に当たるか否かは,社内の名称にとらわれず,実態に即して判断すべきであるが,その判断の基本は,当該労働者の業務の実情に照らし,労働時間等の規制を適用しなくても当該労働者の保護に欠けることがないといえるか否かである。
(2)被告の店長は,店舗のアルバイト従業員を採用する権限はあるものの,何人でも自由に採用できるわけではなく,その時給を自由に決めることもできない。また,社員を採用する権限はなく,第1次評価者として社員の人事考課は行うが,その昇給,昇格を決定する権限はない。また,店長は,店舗従業員の勤務シフト案を作成するが,その最終的な決定はOCが行っている。さらに,店長は,店舗に関する次年度の売上計画や予算を策定するが,その策定に自由な裁量があるわけではないし,店舗の販売促進活動の内容を決定し,これを実行する権限もない。店長会議には参加するものの,店長会議は,被告が既に決定した店舗の業務に関する営業戦略や社員の人事考課に関する基本方針を店長に徹底させるためのものでしかない。
 このように,店長には経営者と一体といえるような権限,責任はなく,また,その職務は,すべて一定の時間内に行うことが可能な性質のものである。また,店長は,店舗責任者として,営業時間中は基本的に在店しなければならず,他のシフトマネージャーが確保されない営業時間帯には,自らシフトマネージャーとして勤務しているのであって,出退勤の自由はない。
 さらに,店長には,管理監督者としてふさわしい処遇がなされているとはいえず,時間外労働等の割増賃金が支払われるファーストアシスタントマネージャーよりも年収が少ないという逆転現象がしばしば起きている。
(3)以上によれば,店長である原告は,管理監督者に当たらない。

◇争点に対する判断(店長である原告は,管理監督者に当たるか)
(1)使用者は,労働者に対し,原則として,1週40時間又は1日8時間を超えて労働させてはならず(労働基準法32条),労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分,8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならないし(同法34条1項),毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないが(同法35条1項),労働基準法が規定するこれらの労働条件は,最低基準を定めたものであるから(同法1条2項),この規制の枠を超えて労働させる場合に同法所定の割増賃金を支払うべきことは,すべての労働者に共通する基本原則であるといえる。
 しかるに,管理監督者については,労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが(同法41条2号),これは,管理監督者は,企業経営上の必要から,経営者との一体的な立場において,同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され,また,賃金等の待遇やその勤務態様において,他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので,労働時間等に関する規定の適用を除外されても,上記の基本原則に反するような事態が避けられ,当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。

 したがって,原告が管理監督者に当たるといえるためには,店長の名称だけでなく,実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず,具体的には,

①職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか

②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か,

③給与(基本給,役付手当等)及び一時金において,管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か

 などの諸点から判断すべきであるといえる。
 この点,被告は,管理監督者とは,使用者のために他の労働者を指揮監督する者又は他の労働者の労務管理を職務とする者をいい,その職務の内容が監督か管理の一方に分類できない者でも,労働時間の管理が困難で,職務の特質に適応した賃金が支払われていれば,管理監督者に当たると主張するが,当該労働者が他の労働者の労務管理を行うものであれば,経営者と一体的な立場にあるような者でなくても労働基準法の労働時間等の規定の適用が排除されるというのは,上記検討した基本原則に照らして相当でないといわざるを得ず,これを採用することはできない。
(2)以上を前提に店長である原2 告の管理監督者性について検討するに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告の店長の権限,役割等については,次の事実が認められる(なお,以下の認定事実は,主として,本件で原告が時間外割増賃金等の請求対象としている平成15年12月から平成17年11月までの時期に関するものであり,店長の職務内容や労務管理の方法等に関しては,その後一部変更された部分もある)。
 ア 人事に関する事項
 店長は,前年度の実績を基に作成した店舗の損益計画を考慮しつつ,店舗のアルバイト従業員であるクルーを採用して,その時給額を決定したり,クルーのスウィングマネージャーへの昇格を決定する権限を有している(なお,平成17年ころ,原告が店長を務める店舗では,この昇格に際し,OCがスウィングマネージャー候補者の知識や技能を確認していたが(スウィングチェック),これは被告の当時の運用としては,スウィングマネージャーへの昇格のために不可欠の手続ではなかった)。
 また,店長は,クルーやスウィングマネージャーに対する人事考課を行い,その昇給を決定する権限も有している。
 他方,社員の採用権限は店長にはなく,社員の昇格についても,一定の基準(店舗でのオンザジョブ・トレーニングや被告が設置するハンバーガー大学の受講の有無)を満たす社員を店長が推薦し,OCがこれを決済することで決定されている。
 また,店長は,店舗に勤務するアシスタントマネージャーについて,一次評価者として,その人事考課を行う権限を有しているが,当該アシスタントマネージャーの人事評価は,OCによる2次評価,店長,OC及び評価対象者による三者面談,OMエリアごとに各店長やOC,OMが出席して開催される評価会議を経て最終的に決定され,その過程で,店長の一次評価についてOCが訂正を指示することもあった。
 イ.各店舗の従業員の就業時間等に関する事項
 店長は,毎月,店舗従業員の勤務シフト表(社員とスウィングマネージャーのものと,クルーのもの)を作成して被告に提出し,この作成に併せて店長自身の勤務スケジュールを決定している。
 また,店長は,被告から送付された協定書の雛形に則り,被告を代表して,店舗従業員の代表者との間で,時間外労働等に関する協定を締結したり,就業規則の変更に関する店舗従業員の代表者の意見を受領し,労働基準監督署長に就業規則を変更した旨の届出をしたり,従業員代表との間で,賃金控除に関する協定書を締結する権限を有している。
 ウ.各店舗の営業等に関する事項
 店長は,本社が店舗の前年度実績から作成した売上予想に基づき,次年度の店舗の売上予想や予算等を記載した損益計画を作成し,これを本社に提出する。なお,店長が作成した損益計画は,自ら定めた努力目標という位置付けであって,ノルマというものではなかった。また,店長は,毎月,その時点における店舗の実情に基づき,上記損益計画について月次の修正を行うことがあった。

 店長は,店舗の支出のうち,フードアンドペーパーコスト(食材の仕入れ原価,食材を廃棄した分の費用など),クルーレーバー(アルバイトの人件費),ユーティリティ(電気代,ガス代,水道代)に関し,決裁権限を有している。また,店舗の販売拡大のため,自店舗の商圏や競合データの収集,分析等を行う職責を負い,販売促進のため,20万円未満の範囲で,他社社員向け優待カードの発行,イベントの協賛,クーポンの配布,ポスターの掲示,金券の発行等の販売促進活動を実施する権限も有しているが,その実施に当たっては,予め本社に企画書を提出し,その承認を得る必要がある。
 店長は,形式的には,店舗の営業時間を変更する権限を有し,店長の判断により,開店時間を早めたり,閉店時間を延長するなどの営業時間の変更が行われた例もあった。
 しかし,平成17年1月に本社の営業時間延長プロジェクトチームから各店舗に「「営業時間についてのブランドイメージを再構築し,IEO市場における優位性を確立すること」は日本マクドナルドの重要な戦略であり,その第1段階として,同一時刻での“6:30amオープン”を決定しました」,「2005年2月1日(火)以降6:30am開店(物理的不可能な店舗は除きます)」と記載した通知がされたり,同年10月に被告の上記プロジェクトチームから各店舗に「深夜早朝IEOポテンシャルから更なるセールスを獲得するため,閉店時間の延長を実施致します。」,「”早朝から深夜まで営業しているマクドナルド”というイメージをお客様に浸透させていきます」,「2005年12月1日(木)以降インストア23:00閉店ドライブスルー0:00閉店(物理的不可能な店舗は除きます)」と記載した通知がされたように,本社から営業時間に関する方針が示されると,事実上,各店長は,これに従うことを余儀なくされていた。
 以上のほか,店長は,店舗や商品の衛生管理,店舗の安全管理,店舗の金銭や原材料の管理,近隣の商店街との折衝等を行う職責を負っている。
 なお,店長がシフトマネージャーとして在店したり,商品の調理や販売に従事することは,店長の固有の業務とはされていなかったが,店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーが在店する必要があったため,他の従業員からシフトマネージャーが確保できない場合には,店長がシフトマネージャーとして店舗に勤務しなければならず,勤務するクルーの数が足りない場合には,自ら商品の調理や販売に従事する必要があった。
 エ.被告の会議等への参加
 店長は,OMエリアやOCエリアごとに開催される店長会議に参加するが,これらの会議では,被告の営業方針,営業戦略,人事等に関する情報提供が行われるほか,店長から各店舗の成功事例の説明がされたり,互いの店舗経営について意見交換が行われることもある。
 そのほか,店長は,店長コンベンション(全国の店長が参加して年1回開催され,被告において導入される予定の新しいシステムの紹介や,被告の営業戦略等に関する情報提供などがされるもの)やキックオフミーティング(全国の店長が参加して年1回,通常は1月か2月に開催され,その年の全社的な戦略や目標のほか,店舗の営業のあり方(成功事例等)について,被告から情報提供されるもの)に参加する。
 オ.店長の労働時間の管理
 被告は,出退社時刻・時間外勤務一覧表あるいはパーソナルコンピュータ上の勤務表を用いて店舗従業員の労働時間を管理してきたが,上記出退社時刻・時間外勤務一覧表や勤務表には,店長も自身の出社時刻や退社時刻を記載,入力する運用がされていた
 店長は,前記第3,2( 2)イ(ア)記載のとおり,自身でその勤務スケジュールを決定し,早退や遅刻をした場合に,OCへの届出や承認は必要とされていなかった(なお,就業規則では,従業員の遅刻及び早退に関する手続が規定されているが(同規則12条),この規定の店長への適用は明示的に排除されている(同規則16条))。
 カ.店長に対する処遇
 平成16年4月に導入された被告の報酬制度によれば,管理監督者として扱われている店長には,管理監督者として扱われないファーストアシスタントマネージャー以下の従業員とは異なる勤務体系が適用されている。

 具体的には,①店長は,基準給(月額31万円)は固定されたうえで,それに加えて,S(店長全体の20パーセント),A(30パーセント),B(40パーセント),C(10パーセント)の4段階評価に基づく評価手当(S評価が10万円,A評価が6万,B評価が3万,C評価が0円)が支払われるが,ファーストアシスタントマネージャーは,基準給の最高給(28万円)と最低給(23万円)が定められ,その範囲内で定期昇給し,評価手当は支払われず,②店長の賞与は,上記の4段階の評価結果に基づき,在籍期間にかかわらず金額(半期の賞与として,S評価が125万円,A評価が107万5000円,B評価が95万円,C評価が85万円)が決定されるが,ファーストアシスタントマネージャーは,一定時点の基準給(月額)に業績評価と在籍期間に応じて決定される支給月数を乗じて算定される。
 以上を前提とした場合のS評価の店長の年額賃金(次項に記載するインセンティブは除く。以下同様)は779万2000円((基準給31万円+住宅手当3万1000円+評価手当10万円)×12+賞与125万円×2),A評価の店長の年額賃金は696万2000円((基準給31万円+住宅手当3万1000円+評価手当6万円)×12+賞与107万5000円×2),B評価の店長の年額賃金は635万2000円((基準給31万円+住宅手当3万1000円+評価手当3万円)×12+賞与95万円×2),C評価の店長の年額賃金は579万2000円((基準給31万円+住宅手当3万1000円)×12+賞与85万円×2)となる。
 また,被告は,従業員に対するインセンティブプランを設定し,平成16年には,売上に関する指標が一定レベルを上回った店舗の店長に対し,当該指標に応じて30万円から100万円を支給する内容のインセンティブプランが設けられた。また,平成17年にも一定の売上基準を満たした従業員(店長,アシスタントマネージャー等)に対するインセンティブプランが設定された。さらに,平成18年にも,四半期ごとの目標または年間目標を達成した店舗に一定額が支給され,これを店長等の従業員で分配するというインセンティブプランが設定された。
◇判断
①被告における店長は,店舗の責任者として,アルバイト従業員の採用やその育成,従業員の勤務シフトの決定,販売促進活動の企画,実施等に関する権限を行使し,被告の営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあるから,店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの,店長の職務,権限は店舗内の事項に限られるのであって,企業経営上の必要から,経営者との一体的な立場において,労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえような重要な職務と権限を付与されているとは認められない。
②店長は,被告の事業全体を経営者と一体的な立場で遂行するような立場にはなく,各種会議で被告から情報提供された営業方針,営業戦略や,被告から配布されたマニュアルに基づき,店舗の責任者として,店舗従業員の労務管理や店舗運営を行う立場であるにとどまるから,かかる立場にある店長が行う上記職務は,特段,労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容,性質であるとはいえない
③被告における店長は,その職務の内容,権限及び責任の観点からしても,その待遇の観点からしても,管理監督者に当たるとは認められない。

※マクドナルド事件裁判の整理
争点
(1原告が,労働契約上,労働1基準法36条に規定する労使協定が締結されるなどするまで,法定労働時間を超えて労働する義務を負っていないことの確認を求める訴え(請求の趣旨第1項)に確認の利益があるか。
(2) 店長である原告は,労働基準法41条2号の「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という)」に当たるか。(以下略)
判断
(1)原告は,本件訴訟において,これを前提に(具体的には原告が管理監督者に当たらないことを主張して)時間外割増賃金を請求している以上,これに加えて,上記の確認を求める法的な利益はないというべきである。
(2)被告における店長は,その職務の内容,権限及び責任の観点からしても,その待遇の観点からしても,管理監督者に当たるとは認められない。したがって,原告に対しては,時間外労働や休日労働に対する割増賃金が支払われるべきである。
※非常に長い引用ですが、ご参考に頂ければ幸いです。

管理監督者のまとめ

労働基準法第41条第2号の管理監督者に該当するか否かの判断基準

① 経営者(役員)と一体的な立場

 労働条件の決定その他労務管理(職務内容、権限と責任、勤務態様、待遇等の実態)について経営者である被告と一体的立場にあること

② 職責・職務権限

 事業経営上重要な上位の職責であるか、部下を指導監督する権限があるか、中途採用者については実質的に採否を決する権限があるか、人事考課を行い、係長以下の人事については原告の裁量で決することができ、社員の降格や昇格についても影響力があるか等

③ 給与

 その地位に見合った相当な待遇(賃金額)を受けているか否か

➃ 労働時間管理

 強行法規としての労働基準法所定の労働時間等に関する厳格な規制を及ぼす必要がなく、かつ、相当でもないか否か

 以上を総合的に勘案して、その役職または地位が労働基準法第41条第2号に該当するか否かを判断することとなります。そこで、一般に定時に出勤しなくて良い労働者(フレックスタイム制度適用者を除きます。)や出勤・休日を自由に判断できる労働者は、殆ど思い当たりませんので、一般には「定額時間外手当制度」を採用することが合理的だと言えます。つまり、月○○時間分の時間外手当(名称は役職手当等でも差し支えありませんが、何時間分の時間外労働に相当する手当かを明確にしておく必要があります。)として支給することが一般的です。この場合には、実際にみなしておく時間外労働を行ったか否かに拘らず同手当を支給する必要がありますし、他方で、実際の法定時間外労働分として算定した賃金が同手当を上回る場合には、その差額を支払う必要があります。

 いすれにしても、労働基準法第41条第2号に該当するとして法定の労働時間管理の対象外とすることには、重大な問題があります。

 

以上で「管理監督者の拡大解釈」を終了します。

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差別待遇の禁止

2015年06月01日 14:37

差別待遇の禁止

労働基準法第3条

 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

自著「労働基準法の研究」より

第3条による差別の趣旨

 第3条は、「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由とする差別的取扱いを禁止しているもの」であり、性別を理由とする差別的取り扱いはこれに含まれないとされます。一見不合理な感がありますが、実は労働基準法には妊産婦や女子の保護規定があり、両性の特性からあえて性別等を区別して、福祉の確保に努めています。しかしながら、憲法第14条や均等法により性差別を禁止する規定が設けられていることは、一般常識として知られているところです。 
 また、第4条において特に「賃金」に関する差別禁止規定が設けられています。

・憲法第14条
第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 (以下 略)

 日本国憲法第14条は、「法の下の平等」を規定しています。この「法の下の平等」とは、法適用の平等のみならず、法内容の平等も含むと言われています。裁判例としましては、日産自動車事件として定年年齢を男性60歳、女性55歳と定めた就業規則の違法性を判示したものがあります。

参考ⅰ:日産自動車女子定年制事件 昭和56年03月24日 最高裁第三小
 上告会社の就業規則は男子の定年年齢を六〇歳、女子の定年年齢を五五歳と規定しているところ、右の男女別定年制に合理性があるか否かにつき、原審は、上告会社における女子従業員の担当職種、男女従業員の勤続年数、高齢女子労働者の労働能力、定年制の一般的現状等諸般の事情を検討したうえ、上告会社においては、女子従業員の担当職務は相当広範囲にわたつていて、従業員の努力と上告会社の活用策いかんによつては貢献度を上げうる職種が数多く含まれており、女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、その全体を上告会社に対する貢献度の上がらない従業員と断定する根拠はないこと、しかも、女子従業員について労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡が生じていると認めるべき根拠はないこと、少なくとも六〇歳前後までは、男女とも通常の職務であれば企業経営上要求される職務遂行能力に欠けるところはなく、各個人の労働能力の差異に応じた取扱がされるのは格別、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないことなど、上告会社の企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められない旨認定判断したものであり、右認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができる。そうすると、原審の確定した事実関係のもとにおいて、上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効であると解するのが相当である(憲法一四条一項、民法一条ノ二参照)。

参考ⅱ:民法第90条
 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス

現行民法:第90条
 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

※日産自動車定年制事件で最高裁は、就業規則に定年年齢を男女別に定め女子を差別する規定であり、民法90条の公序良俗規定に反し、違法・無効であると判断しています。

参考ⅲ:民法第1条の2
 本法ハ個人ノ尊厳ト両性ノ本質的平等トヲ旨トシテ之ヲ解釈スヘシ
『本法(民法)は、個人の尊厳と男女の平等を旨として(主として、中心として)解釈しなければならない。』

 改正前の民法第1条の2は、憲法第14条、第13条、第24条の規定を集約し、「男性優位社会から、個人の尊厳を基礎とする、男女平等社会の到来」の宣言をしたと考えられています。
改正後の現行民法では、第2条に引き継がれています。

参考ⅳ:現行民法第2条(解釈の基準)
 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

・信条または社会的身分 (昭和22年 基発17号)

 通達では、「信条とは、特定の宗教的もしくは政治的信念をいい、社会的身分とは、生来の身分をいうこと。」としています。

・その他の労働条件 (昭和23年基収1365号 昭和63年基発150号)
 通達では、「『その他の労働条件』には解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む趣旨である。」とされています。

・均等法による男女差別の禁止(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)
 均等法による労働条件等の男女差別の禁止項目を以下にまとめます。
1)募集採用に係る性別を理由とする差別の禁止(同法第5条)
2)労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練(同法第6条第1号)
3)住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの(同法第6条第2号)
4)労働者の職種及び雇用形態の変更(同法第6条第3号)
5)退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新(同法第6条第4号)

参考ⅴ:均等法施行規則 第一条(福利厚生) 
 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「法」という。)第六条第二号の厚生労働省令で定める福利厚生の措置は、次のとおりとする。
一 生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付け
二 労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付
三 労働者の資産形成のために行われる金銭の給付
四 住宅の貸与

※均等法により以上の項目に関して、男女の差別が禁止されています。

・労働基準法第3条違反について
 第3条には罰則規定が設けられています。

参考ⅵ:労働基準法第119条第1号
 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 
一  第三条、第四条、(以下 略)

 労働基準法第3条違反に関しては、「現実に差別的取扱いをした場合に成立する」とされ、「労働協約、就業規則等に差別待遇を定めただけでは違反(労基法違反)にならない」とされています。
 ただし、就業規則に関しては「労働契約法」に規定があり、労基法違反の就業規則の規定はその合理性を否定されますので、就業規則の当該規定は無効とされます。

参考ⅵ:労働契約法
第七条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。 

従って、不合理な就業規則の規定は、労働条件とはならず効力を持たないとされています。

労働基準法第4条

 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

・通達でみる労働基準法第4条 昭和22年9月13日 基発第17号
 上記の通達では、労基法第4条を以下の通りに解釈しています。
1)本条の趣旨は我が国における従来の国民経済の封建的構造のため男子労働者に比較して一般に低位であった女子労働者の社会的経済的地位の向上を賃金に関する差別待遇の廃止という面から実現しようとするものであること。
2)職務能率技能等によって賃金に個人的の差異のあることは、本条に規定する差別待遇ではないこと。
3)しかしながら労働者が女子であることのみを理由として或いは社会的通念として若しくは当該事業場において女子労働者が一般的に又は平均的に能率が悪いことは知能が低いこと勤務年数が短いこと扶養家族が少ないこと等の理由によって女子労働者に対し賃金に差別をつけることは違法であること。

・ILO条約( 同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100号))
1)概要
この条約は同一の価値の労働に対しては性別による区別を行うことなく同等の報酬を与えなければならないと決めたものである。条約は報酬について定義を下し、金銭であると現物であるとを問わず、直接または間接に使用者が労働者に対して支払う報酬で労働者の雇用から生ずるものを含む、とする。
 報酬を同一労働に対して男女同等に支払う、という原則を確立する方法として、
   ①国内法令、
   ②法令によって設けられまたは認められた賃金決定制度、
   ③使用者と労働者との間で締結された労働協約、
   ④これらの各手段の組み合わせ、を規定している。
更に、行うべき労働を基礎とする職務の客観的評価がこの条約の規定を実施するのに役立つ場合にはこれを促進する措置をとることとする。

2)同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100号))抜粋
第 一 条
 この条約の適用上、
(a) 「報酬」とは、通常の、基本の又は最低の賃金又は給料及び使用者が労働者に対してその雇用を理由として現金又は現物により直接又は間接に支払うすべての追加的給与をいう。
(b) 「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」とは、性別による差別なしに定められる報酬率をいう。

第 二 条
1 各加盟国は、報酬率を決定するため行なわれている方法に適した手段によって、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則のすべての労働者への適用を促進し、及び前記の方法と両立する限り確保しなければならない。
2 この原則は、次のいずれによっても適用することができる。
 (a) 国内法令
 (b) 法令によって設けられ又は認められた賃金決定制度
 (c) 使用者と労働者との間の労働協約
 (d) これらの各種の手段の組合せ

第 三 条
1 行なうべき労働を基礎とする職務の客観的な評価を促進する措置がこの条約の規定の実施に役だつ場合には、その措置を執るものとする。
2 この評価のために採用する方法は、報酬率の決定について責任を負う機関又は、報酬率が労働協約によって決定される場合には、その当事者が決定することができる。
3 行なうべき労働における前記の客観的な評価から生ずる差異に性別と関係なく対応する報酬率の差異は、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則に反するものと認めてはならない。

・「女性であることを理由として」とは?
 通達によれば、「女性であることを理由として」とは、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において女性労働者が一般的又は平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないこと等を理由とすることの意であり、これらを理由として、女性労働者に対し賃金に差別をつけることは違法であること。」としています。
 従って、昭和22年9月13日 基発第17号にあるように「職務能率技能等によって賃金に個人的の差異のあることは、本条に規定する差別待遇ではないこと。」とされるように、一律な性別による賃金差別以外であって職務の差異や能率の差異等による賃金の差異は、本条違反とはなりません。

・差別待遇を定める就業規則 (昭和23年基収第4281号)
通達には、以下のような内容のものがあります。
「問】就業規則に労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをする趣旨の規定があって、現実に男女差別待遇の事実がない場合においても、法第4条に違反するものであると思料するが如何。」
「答】就業規則に法第4条違反の規定があるが現実に行われておらず、賃金の男女差別待遇の事実がな

・判例にみる労働基準法第4条違反 昭和シェル石油(賃金差別)事件 2007年6月28日  東京高  
 労働基準法四条は、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的な取扱いをしてはならない。」と定めている。〔中略〕しかし、均等法八条が「努めなければならない。」と努力義務を定めているのは、まさに事業者に努力する義務を法律上課しているのであって、「労働者の配置及び昇進について、女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをする」という法の定めた実現されるべき目標が、法律施行後に達成されていなくても、同法に違反するとして、行政上の規制や罰則の対象となるものはなく、民事上もそのことのみで、債務不履行や不法行為を構成するものではないが、他方、法が、事業者に同条の目標を達成するように努めるべきものと定めた趣旨を満たしていない状況にあれば、労働大臣あるいはその委任を受けた婦人少年室長が同法の施行に関し必要があると認めて事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導もしくは勧告をすることができる(同法三三条)という行政的措置をとることができるのであり、単なる訓示規定ではなく、実効性のある規定であることは均等法自体が予定しているのであり、上記目標を達成するための努力をなんら行わず、均等な取扱いが行われていない実態を積極的に維持すること、あるいは、配置及び昇進についての男女差別を更に拡大するような措置をとることは、同条の趣旨に反するものであり、被控訴人主張の不法行為の成否についての違法性判断の基準とすべき雇用関係についての私法秩序には、上記のような同条の趣旨も含まれるというべきである。 

・判例にみる労働基準法第4条違反Ⅱ 野村證券(男女差別)事件 2002年2月20日 東京地判決 
  労基法4条は、男女同一賃金の原則をうたっているとはいえ、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と規定しているにとどまるから、文言上、同条から差別を受けた女性の差額賃金請求権が直接発生するとすることは困難であり、同条に基づき、原告らが差額賃金請求権を有するとはいえない。

・差別的取り扱いの具体例 (昭和22年発基17号 他)
 通達では、「職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって、賃金に個人的差異のあることは、本条に規定する差別的取扱いではないが、例えばこれらが同一である場合において、男性はすべて月給制、女性はすべて日給制とし、男性たる月給者がその労働日数の如何にかかわらず月に対する賃金が前記の男性の一定額と異なる場合は法第4条違反であること。
 なお、差別的取扱いをするとは、不利に取扱う場合のみならず有利に取り扱う場合も含むものであること。」としています。

※差別的取扱いには、女性を有利に取扱う場合も含まれることに留意が必要です。

・労基法第4条違反
 第4条に違反して、女性を理由として賃金に関し、不利・有利に取扱いをすれば罰則の対象となります。

労働基準法第119条第1号
 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 
一  第三条、第四条、(以下 略)

・労基法第4条違反の場合の女性の差額賃金の請求権について
 上記の「野村證券(男女差別)事件」においては、「差額賃金請求権を有するとはいえない。」としています。
 一方「秋田相互銀行事件 1975年4月10日 秋田地裁判決」においては、「このように、労働契約において、使用者が、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱いをした場合には、労働契約の右の部分は、労働基準法四条に違反して無効であるから、女子は男子に支払われた金額との差額を請求することができるものと解するのを相当とする。けだし、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされ、この無効となった部分は、労働基準法で定める基準による旨の労働基準法一三条の趣旨は、同法四条違反のような重大な違反がある契約については、より一層この無効となった空白の部分を補充するためのものとして援用することができるものとみなければならないからである。 原告らの賃金差額を求める請求は理由がある。」
として、判例は分かれています。

参考:労基法第13条 (この法律違反の契約)
 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

労働基準法の差別待遇

 労働基準法の差別待遇が禁止される労働者とは、現に使用している労働者及び採用していた労働者に限られます。従って、求人に応じて来た採用前の労働者については、誰を採用するかについて事業主の経営権の範疇にあり、独断的に決定できます。そのあたりが、契約自由の原則の根本原理が維持されている点です。自由主義とは、機会の平等であり、結果の平等ではないことは一般的に周知の理念です。

 既述の均等法においても、あくまで「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」とされているに留まり、機会を与えることが義務付けられているのみです。

 

以上で「差別待遇」の禁止について終了します。

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賃金控除・使用者の債権と賃金の相殺

2015年06月01日 13:37

賃金控除等

労働基準法第17条(前借金相殺の禁止)

 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

労働基準法第24条(賃金の支払)

 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。(第2項略)

自著「労働基準法の研究」より

労基法第17条

・民法 第509条、第510条
(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止) 
第五百九条  債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。 

(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止) 
第五百十条  債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。 

※民法の規定の詳細な説明は避けますが、通常の法律行為では「相殺がごく一般的に行われている」わけです。

・民事執行法(差押禁止債権) 
第百五十二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。 
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権 
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 
2  退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。 
3  債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

※上記の第152条第1項第2号の「給与に係る債権」とは 、給与にかかわる(関する)債権と考えられます。

・前借金とはなにか。
 前借金とは、「労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の資金により弁済することを約する金銭をいう」とされています。
 通達では、「本条の規定は、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離し金銭貸借関係に基づく身分的拘束関係の発生を防止するのがその趣旨であるから、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融、弁済期の繰上げ等で明らかに身分拘束を伴わないものは、労働することを条件とする債権には含まれないこと。」(昭和33年基発90号他)とされています。
また、
法第一七条関係
(一) 弁済期の繰上げで明かに身分的拘束を伴わないものは労働することを条件とする債権には含まれないこと。
(二) 労働者が使用者から人的信用に基く貸借として金融を受ける必要がある場合には、賃金と相殺せず労働者の自由意志に基く弁済によらしめること。
とされています。
 これは、判例にも同様の趣旨のものがあり、「労働者の完全な自由意思による場合には、使用者が労働者に対し有する金銭債権を一定の範囲に限り賃金から控除できる」ことになっています。

・前借そのものは禁止されるのか。
 解釈では、「前借金制度そのものは禁止せず、単に賃金と前借金を相殺することを禁止するにとどめたもの」とされます。

・前借そのものは禁止されるのか。(続き)
 通達でも、「法第17条の規定は、前借金により身分的拘束を伴い労働が強制されるおそれがあること等を防止するため「労働することを条件とする前貸の債権」と賃金を相殺することを禁止するものであるから使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無とうを総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。」とされています。

※従って、前借が禁止されないことはもとより、「その貸付の原因、期間、金額、金利の有無とうを総合的に判断して労働することが条件となっていない」場合には、労基法第17条にも違反しないとしています。。

・判例にみる前借金等の相殺
判例1:日本勧業経済会事件 昭和36年最高裁大法廷 判決
  労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることは、労働政策の上から極めて必要なことであり、労働基準法二四条一項が、賃金は同項但書の場合を除きその全額を直接労働者に支払わねばならない旨を規定しているのも、右にのべた趣旨を、その法意とするものというべきである。しからば同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもつて相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであつても変りはない。(論旨引用の当裁判所第二小法廷判決は、使用者が、債務不履行を原因とする損害賠償債権をもつて、労働者の賃金債権に対し相殺することを得るや否やに関するものであるが、これを許さない旨を判示した同判決の判断は正当である。)
 なお、論旨は労働基準法一七条と二四条との関係をいうが、同法一七条は、従前屡々行われた前借金と賃金債権との相殺が、著しく労働者の基本的人権を侵害するものであるから、これを特に明示的に禁止したものと解するを相当とし、同法二四条の規定があるからといつて同法一七条の規定が無用の規定となるものではなく、また同法一七条の規定があるからといつて、同法二四条の趣旨を前述のように解することに何ら妨げとなるものではない。また所論のように使用者が反対債権をもつて賃金債権を差押え、転付命令を得る途があるからといつて、その一事をもつて同法二四条を前述のように解することを妨げるものでもない。されば、所論はすべて採るを得ない。(中略)
 多数意見は労働基準法(以下法とのみ言う)二四条が賃金はその全額を支払わなければならない云々とある規定を楯として、労働者の賃金債権に対しては労働者の不法行為に基く損害賠償債権を以てする相殺は許されないものであると解釈するのである。しかし、右にいわゆる賃金は全額を支払わなければならないとの意味は賃金は分割払をしてはならないとか、掛売代金と相殺してはならないとか、いうだけのものであつて、民法が前示のように特に所遇している不法行為に因る損害賠償債権を以てする相殺は許さないなどとは右条文はもとより、その他の規定においても一言半句も言つてはいないのである。もし法がそうした含みをもつているとするならば、法一七条は使用者は前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金とを相殺してはならないと規定しているのであるから、労働者の賃金債権に関しては不法行為に因る損害賠償債権を以てする相殺は許さない旨特にうたうべき筈である。それが民法に対する特別法たる法の当然にあるべき筋道であろう。然るに、そのようなうたい文句のないところを見ると法二四条は不法行為に基く損害賠償債権を以てする相殺に関しては何らタツチせず、その許否については民法の解釈に委ねているものと解釈するを相当と考えるのである。思うに、多数意見は昭和三元年一一月二日当裁判所第二小法廷判決の影響下に在るもののようである。しかし、右判決は多数意見も言つているとおり、債務不履行に因る損害賠償債権を以てする相殺に関するものであつて、本事案とはその内容を異にするものである。右判例は労働者の賃金債権に対する損害賠償債権を以てする相殺の中には本事案のような場合のあることを何らせんさくせず、漫然と「使用者は労働者のの賃金債権に対しては、損害賠償債権をもつて相殺することも許されない」と断じ去つているのである。(以下略)

・判例にみる前借金等の相殺(続き)

判例2:シンガーミシン事件 昭和48年 最高裁第二小法廷 判決
 右事実関係によれば、本件退職金は、就業規則においてその支給条件が予め明確に規定され、被上告会社が当然にその支払義務を負うものというべきであるから、労働基準法一一条の「労働の対償」としての賃金に該当し、したがつて、その支払については、同法二四条一項本文の定めるいわゆる全額払の原則が適用されるものと解するのが相当である。しかし、右全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃 金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、本件のように、労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、右全額払の原則が右意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。もつとも、右全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、右意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないものと解すべきであるが、原審の確定するところによれば、上告人は、退職前被上告会社の西日本における総責任者の地位にあつたものであり、しかも、被上告会社には、上告人が退職後直ちに被上告会社の一部門と競争関係にある他の会社に就職することが判明しており、さらに、被上告会社は、上告人の在職中における上告人およびその部下の旅費等経費の使用につき書面上つじつまの合わない点から幾多の疑惑をいだいていたので、右疑惑にかかる損害の一部を填補する趣旨で、被上告会社が上告人に対し原判示の書面に署名を求めたところ、これに応じて、上告人が右書面に署名した、というのであり、右認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯しうるところ、右事実関係に表われた諸事情に照らすと、右意思表示が上告人の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたものということができるから、右意思表示の効力は、これを肯定して差支えないというべきである。
 
判例3:日新製鋼事件 平成2年 最高裁第2小法廷 判決
  労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの。以下同じ。)二四条一項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である(最高裁昭和四四年(オ)第一〇七三号同四八年一月一九日第二小法廷判決・民集二七巻一号二七頁参照)。もっとも、右全額払の原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもないところである。(以下略)
 
※「労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」とされる通りに、労働基準法第17条に該当する場合であっても、労働者の自由な意思に基づきかつ民事執行法第百五十二条 の範囲内であれば、賃金と使用者が有する債権を相殺しても違法ではないとしています。

労基法第24条

・賃金支払の5原則
労基法の賃金支払の5原則等です。
1)通貨払いの原則
「この原則は、労働者に不利益な実物給与を禁止するもが本音であるから、公益上の必要がある場合又は労働者に不利益になるおそれが少ない場合には、例外を認めることが実情に沿うので、退職手当について銀行振出し小切手等の交付によることのほか、法令又は労働協約に定めのある場合には実物給与を認めている。
2)直接払いの原則
 これは、「親方や職業仲介人が代理受領によって中間搾取をし、又は年少工の賃金を親権者が奪い去る等の旧来の弊害を除去し、労務の提供をした労働者本人の手に賃金全額を帰属させるため、第59条(親権者の代理受領の禁止)とともに、民法の委任、代理等の規定の特例を設けたものである。」としています。
3)全額払いの原則
 これは、「賃金の一部を支払留保することによる労働者の足留めを封ずるとともに、直接払いの原則と相まって、労働の対価を残りなく労働者に帰属させるため、控除を禁止したものである。しかし、所得税の源泉徴収、社会保険料の控除のように公益上の必要があるもの及び社宅料、購入物品の代金等事理明白なものについては例外を認めることが手続の簡素化に質し、実情にも沿うので、法令に別段の定めがある場合又は労使の自主的協定がある場合には一部控除を認めている。」としています。(以下略)

・賃金とはなにか。
 労基法第24条でいう「賃金」とは、第11条の賃金のすべてをいうとされています。
そこで、第11条によれば賃金とは、

第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
 
として、定義されています。

・法の定めによる賃金控除

 法令に定めがある場合とは、所得税・住民税・健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料等です。

・直接労働者に支払うこと
 賃金は、「労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うこと、また労働者が金銭の借入を行っている場合に、その債権者に賃金を渡すこと等を含め、第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。」とされています。
 ただし、例えば入院中の労働者に代わって、配偶者が使者として賃金を受領する場合には、あくまで本人の使いにすぎないので、差支えないものとされています。
 昨今は、労働者本人の承諾の上で「労働者名義の金融機関等の口座に振り込む」方法が一般的です。この場合で問題となるのは、たとえ本人の要望であっても他者名義(配偶者、親、子等であっても不可)の口座に振り込むことです。例外は、労働者が死亡した場合において、相続人に未払いの賃金を支払う場合です。

差し押さえ処分の場合
 全額払いに抵触しない例として、1)「行政庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差し押さえ処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付すること。」、2)「民事執行法に基づく差し押さえ。」以上の2つが、本条に違反しないものと解されています。

・賃金債権の譲渡について
 労働者が他者に賃金債権を譲渡する契約を締結した場合であっても、その契約に基づく他者に賃金を支払い、直接労働者に支払わなかった場合には、本条違反になるとされます。
 この点は判例によって確認されており、「その譲渡を禁止する規定がないから、退職者またはその予定者が右退職手当の給付を受ける権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、同法(労基法)24条1項が『賃金は直接労働者に支払わなければならない。』旨を定めて、使用者に賃金支払義務者に対して罰則をもってその履行を強制している趣旨に徹すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがって、右賃金債権の譲受け人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である。」と判示しています。
 ただし、個別事例ながら「妻から賃金債権を譲り受けた夫にその賃金を支払っても、夫婦が生計を一にしないとの特別の事情でもない限り夫に支払われた妻の賃金は結局妻の自由な使用に委ねられたことに帰するから、直接払違反にはならない」とした裁判例があります。

○全額払いの趣旨
この「全額を支払う」の趣旨は、「賃金はその全額を支払わなければならないとするのは、賃金の一部を控除して支払うことを禁止するものである。」とされます。
 ここで「控除」とは、「履行期の到来している賃金債権についてその一部を差し引いて支払わないことをいう。また、それが事実行為によると法律行為によるとを問わない。」とされています。
 判例でも、「民法509条の法意に照らせば、労働者に使用者に対する明白かつ重大な不法行為であって、労働者の経済生活の保護の必要を最大限に考慮しても、なお使用者に生じた損害のてん補〈テンポ〉の必要を優越させるのでなければ権衡〈ケンコウ〉を失し、使用者にその不法行為債権による相殺を許さないで賃金全額の支払を命じることが社会通念上著しく不当であると認められるような特段の事情がある場合には、この相殺が許容されなければならないものと考えられる。」としたものがありますが、結局、「賃金控除によらなければ社会通念上著しく不当である場合」は、一般には存在せず、債務を賃金から控除出来ないこととなります。
 
 ただし、月例賃金、賞与、退職金であるとを問わず「労働者の完全な自由意思に基づく場合」には、労働者が有する債務を賃金から控除できると解されています。この場合であっても、民事執行法第152条第1項により、賃金の4分の3までは「差し押さえが禁止」されているため、賃金から控除できる額の上限は支払額の4分の1(33万円が上限)までとされています。

参考:民事執行法
第百五十二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。 
 一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権 
 二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 
2  退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。 
3  債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

民事執行法施行令
第二条  法第百五十二条第一項 各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)に係る同条第一項 (法第百六十七条の十四 及び第百九十三条第二項 において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める額は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。 
 一  支払期が毎月と定められている場合 三十三万円 
 二  支払期が毎半月と定められている場合 十六万五千円 
 三  支払期が毎旬と定められている場合 十一万円 
 四  支払期が月の整数倍の期間ごとに定められている場合 三十三万円に当該倍数を乗じて得た金額に相当する額 
 五  支払期が毎日と定められている場合 一万千円 
 六  支払期がその他の期間をもつて定められている場合 一万千円に当該期間に係る日数を乗じて得た金額に相当する額 
2  賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第百五十二条第一項 の政令で定める額は、三十三万円とする。

・控除額の限度
 本条ただし書の規定による賃金の一部控除については、「控除される金額が賃金額の一部である限り、控除額についての限度はない。」とされています。
 一方、過日記述しましたとおりに、民法506条による相殺を行う場合には、同法第510条及び民事執行法第152条の適用があるから、賃金額の4分の3に相当する部分については相殺することができない。(その額が民事執行法施行令第2条で定める額を超えるときは、同条で定める額に相当する部分)
 尚、退職手当の場合には、施行令第2条の定めによる額の制限は適用されません。

賃金放棄事例

・賃金債権の放棄
参考判例:総合労働研究所事件 2002年9月11日 東京地裁判決
 本件規定に基づく退職金は、就業規則に基づいてその支給条件が明確に規定されていて、使用者がその支払義務を負担するものであるから、労働基準法一一条にいう「賃金」に該当し、同法二四条一項本文の賃金全額払原則の適用がある。そして、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の生活を保護する同条項の趣旨によれば、本件規定に基づく退職金を免除する旨の意思表示は、労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、同条項に違反するとはいえないというべきであり、このことは、労働者が使用者に対し退職金を免除する旨の意思表示が、労使間の合意においてなされた場合についても妥当するというべきである(最高裁昭和四八年一月一九日第二小法廷判決)。
 原告らは、退職金免除の合意があるとしても、就業規則である本件規定が廃止されたことはないのであるから、退職金免除の合意は就業規則を下回る個別合意として労働基準法九三条により本件各免除は無効である旨主張する。しかし、労働者が就業規則に基づき発生する個別の権利について処分する行為は、労働者の一方的な意思表示によりなされる場合であれ、使用者との合意に基づきなされる場合であれ、これが労働者の自由な意思に基づいてなされたと認められる客観的な状況が存在する場合は、有効となるものであって(前掲最高裁判決参照)、「就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約」には該当せず、労働基準法九三条に反するとはいえない
労働基準法 (労働契約との関係)
第九十三条 労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十二条の定めるところによる。
労働契約法(就業規則違反の労働契約)
第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

※賃金債権の放棄に関して、「 労働者が就業規則に基づき発生する個別の権利について処分する行為は、労働者の一方的な意思表示によりなされる場合であれ、使用者との合意に基づきなされる場合であれ、これが労働者の自由な意思に基づいてなされたと認められる客観的な状況が存在する場合は、有効となる」として、自由な意思表示による賃金債権の放棄は認められるとしています。

・労働者の希望しない口座振込み
参考判例:御国ハイヤー事件 1981年9月22日 高松高裁判決
 労働者に対する賃金支払方法につき賃金を保護した労基法二四条一項の趣旨よりみて、前記基本通達における、賃金支払を口座払にするに必要な労働者の意思とは、労働者各人の自由な意思の趣意と解される。口座払の方法が通貨払と同一視できるほど便利なものであるかどうかはもっぱら個々の労働者の主観的事情によるとは、原判決の既に指摘するところであるが、その主観的事情は人によって異り得るのであるから、賃金保護の趣旨よりみて、先づ労働者各人の自由な意思が尊重されるべきことは多言を要しない。本件においても口座払の方法によることの合意は、各労働者と被告人ら会社側との間で個々的になされたものであり、したがって右支払方法の継続を希望しない労働者の合意の解除は、同様個々的に会社側との間になされなければならない。各労働者の個々的な口座等指定取消の通知なり、同意取消の通知なり、合意の解除申込なり、という性質を示すものが会社側に対しなされなければならない。その際においても保護さるべきは各労働者の賃金であり、重視さるべきは労働者個々の意思であり、たとえば、かりそめにもこれを組合がその斗争手段等として悪用したり組合の便宜のため左右したりしてはならないし、会社側としても、本人よりのものであると認められるものがあればそれが取消権の濫用等でない限り、誠実に対処し各労働者の意思を尊重すべきであると考える。 

※逆の場合、つまり労働者が口座振込みを希望しているが、使用者が現金払いを続けたときに、24条違反となるかどうかが気になります。しかし、法24条の趣旨からは、逆の場合には刑事的な違反とはならないと考えられます。ただし、民事的な問題は残るものと思います。

賃金相殺まとめ

 被服費等、労働契約上労働者がその全部又は一部を負担しなければならない場合において、何らの手続もなく使用者が当然にその価額を賃金から控除することは出来ません。また、民法の原則にかかわらず、使用者の債権を労働者の賃金から当然のごとく控除することはできません。

 

以上で「賃金相殺・使用者の債権と賃金の相殺」を終了します。

 

 

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労働者に賠償を求めること(一部禁止)

2015年06月01日 10:17

労働者に賠償を求めること

1.労働基準法第16条(賠償予定の禁止)

 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

自著「労働基準法の研究」第16条

労基法第16条の趣旨
 「労働契約の期間の途中において労働者が転職したり、帰郷する等労働契約の不履行や労働者の不法行為に対して一定額の損害賠償を支払うことを労働者本人又はその身元保証人と約束する慣行が従来我が国にみられたが、こうした制度は、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の事由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属せしめることとなるので、本条は、こうした違約金制度や損害賠償予定の制度を禁止し、労働者が違約金又は賠償予定額を支払わされることをおそれて心ならずも労働関係の継続を強いられること等を防止しようとするものである。」とされています。

・賠償予定の禁止の意味(通達 昭和22年9月13日 基発第17号)
 「本条は、金額を予定することを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと。」とされています。つまり、労働者の重大な過失や故意により顧客や第三者に損害を与えた場合には、使用者は賠償責任を免れませんが、一旦賠償した価額について全部又は一部を労働者に請求することができます。

参考:民法(使用者等の責任) 
第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。 
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

・違約金の内容
 違約金とは、「労働契約に基づく労働義務を労働者が履行しない場合に労働者本人若しくは親権者又は身元保証人の義務として課せられるものであり、労働義務不履行があれば、それによる損害賠償に有無にかかわらず、使用者は約定の違約金を取り立てることができる旨を定めたものである。」とされています。

(賠償額の予定) 
第四百二十条  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。 
2  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。 
3  違約金は、賠償額の予定と推定する。 

※違約金が交付されている場合、当事者は損害の発生と損害額の立証をせずに損害賠償を請求することができ、また、裁判所は原則として、その額を増減することができないとされています。

・判例4:野村證券(留学費用返還請求)事件 2002年4月16日 東京地 判決 (続き)
 他方、脱退原告の留学生選定においては勤務成績も考慮すること、脱退原告は被告に対し留学地域としてフランス語圏を指定し、ビジネス・スクールを中心として受験を勧め、それにはフランス語圏が重要な地域であること等、中長期的に基幹的な部署に配置することのできる人材を養成するという会社の方針があることが認められる。しかし、これらは派遣要綱1条の目的に従ったものと見ることができ、あくまでも将来の人材育成という範囲を出ず、そうであれば業務との関連性は抽象的、間接的なものに止まるといえる。したがって、本件留学は業務とは直接の関連性がなく労働者個人の一般的な能力を高め個人の利益となる性質を有するものといえる。
 その他、費用債務免除までの期間などを考慮すると、本件合意は脱退原告から被告に対する貸付たる実質を有し、被告の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものではなく、労働基準法16条に違反しないといえる。

※「本件留学は業務とは直接の関連性がなく労働者個人の一般的な能力を高め個人の利益となる性質を有するもの」である。また、「本件合意は脱退原告から被告に対する貸付たる実質を有し、被告の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものではなく」労基法第16条に違反しないとされます。

・判例5:新協運送事件 1999年2月17日 大阪地 判決
 本件債務負担の合意は、使用者が労働者に対してあらかじめ損害賠償を予定するものであって、労働基準法一六条所定の賠償予定の禁止に抵触すると解する余地がないではないが、右賠償予定の禁止は、現実の損害の発生いかんにかかわらず、一定金額の支払を損害発生前にあらかじめ定めることを禁止する趣旨にとどまり、使用者が労働者に対して現実に発生した損害の賠償を請求することを禁止するものではないところ、本件債務負担の合意は、現実の損害の発生を要件とし、しかも賠償額の上限を現実の損害額とし、事故態様によっては賠償額の上限を三万円に限定するものであるから、右規定に反するものではないというべきである。
 
※労基法第16条の規定の意味と比較してみます。
 労基法第16条の禁止することろは、「損害賠償の予定」であり、それは「債務不履行の場合に賠償すべき損害額を実害の如何にかかわらず一定の金額として定めておくこと」とされます。以下、「損害賠償の予定の契約があれば、債権者は債務不履行の事実さえ証明すれば損害の発生又はその損害額を証明しなくても予定額を請求することができるのであって、債務者は実際の損害額が少ないことを挙証して減額を請求することができないのみならず、実際の損害が絶無であることを挙証しても賠償責任を免れることができず、一方、債権者においても実際の損害額がもっと多額であることを挙証しても増額請求をすることができない。」とされます。

※損害賠償の予定とは、「もし,契約違反があった場合には、損害賠償額は50万円とする。」という合意をした場合、損害賠償として請求できる金額は50万円ということになります。請求者にとって見れば,損害額を立証する必要がない利点と、実際の損害がこれを上回る場合でも,50万円を上回る請求ができない、というリスクがあります。請求される側からすれば,請求される損害額の上限を決めておける(万が一のことがあっても,50万円を超えては請求されない。)という側面があります。
 また、損害賠償の予定額は,このように定額で決めることもできますし,「契約金額の○%とする。」というように損害額を計算する計算式でも表示することが可能とされます。

 ※民法の規定により、一般的には違約金等の損害賠償の予定ができます。

 そこで、法違反となる労働契約に付随する「損害賠償の予定」の例を考えてみます。労働者にとっての債務不履行とは、正確な量・質を有する労務の提供不能ですから、たとえば、「労働者であるトラック運転手が荷主から預かった貨物を運搬中に毀損してしまった。」であるとか、「理容師である労働者が散髪中に顧客に怪我をさせた。」であるとか、会社や事業主に求められている業務を求められている通りにきちんと行わなかった場合の「損害賠償の予定」であると考えられます。※これらは禁止されています。

・判例:アール企画事件 2003年3月28日 東京地 判決
 本件特約の目的は、原告を被告に平成12年末まで就労させることであるから、本件特約に基づく義務に違反した場合に当事者が相手方に支払うとされた金員(本件特約の第6条)は、この目的を確実に達成するため約束されたとするのが当事者間の合理的な意思と考えられるから、違約金と解するのが相当である。
 そうすると、本件特約の第6条のうち、原告が被告に対し負担する違約金を定めた部分は、労働契約に付随して合意された本件特約の債務不履行について違約金を定めたものであるから、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めることを禁止する労働基準法16条に反し、無効となるというべきである。

・判例2:徳島健康生活協同組合事件 2003年3月14日 高松高 判決
 研修規程11条は「万一、研修終了後健康生協に勤務しない場合は、研修期間中健康生協より補給された一切の金品を、3か月以内に本人の責任で一括返済しなければならない。」と規定する。
 同条項は、研修を受ける者が研修終了後被控訴人において勤務することを、研修受講者に対する義務とするという内容を定める範囲では有効であるが、勤務しない場合の賠償額を予定している部分(研修期間中被控訴人より支給された一切の金品を返還するという部分)は、労働基準法16条(賠償予定の禁止)に該当し、無効である。(以下 略)

※労働契約と金銭貸借契約は、別個のものと考えるべきであり、労働契約解除にともない金銭貸借契約も同時に解除されたとみなして、残金の一括返済を求める内容であれば、労働基準法第16条違反となるとされます。
 
・判例3:和幸会(看護学校修学資金貸与)事件 2002年11月1日 大阪地 判決
  (前略)このような本件貸与契約の内容と、学校法人と原告とを同一視し得るとの事情を合わせ考慮すると、本件貸与契約(被告甲)及び本件貸与契約(被告乙)は、いずれも単に、原告が、本来看護学校の学生が負担すべき運営にかかわる費用を貸与し、本来返還義務が伴う貸与金を例外的に免除しているにすぎないものであるとは言い難く、将来労働契約を締結することを前提として、原告と関連する看護学校の生徒の卒業後の原告への勤務を確保することを目的とし、看護婦獲得のためにその費用で修学させて資格を取らせ、かつその在学中から原告の経営する病院以外での就労を制限し、卒業後は一定期間内に免許を取得させて一定期間の就労を約束させるというのが実質であるというべきである。
 このように、本件貸与契約は、将来原告の経営する病院で就労することを前提として、2年ないし3年以上勤務すれば返還を免除するという合意の下、将来の労働契約の締結及び将来の退職の自由を制限するとともに、看護学校在学中から原告の経営する病院での就労を事実上義務づけるものであり、これに本件貸与契約締結に至る経緯、本件貸与契約が定める返還免除が受けられる就労期間、本件貸与契約に付随して被告甲及び被告乙が原告に提出した各誓約書(〈証拠略〉)の内容を合わせ考慮すると、本件貸与契約は、原告が経営する病院への就労を強制する経済的足止め策の一種であるといえる。
 したがって、以上によれば、本件貸与契約及び本件連帯保証契約は、労働基準法14条及び16条の法意に反するものとして違法であり、無効というべきである。

・判例4:野村證券(留学費用返還請求)事件 2002年4月16日 東京地 判決
 本件留学は勤続年数が短いにもかかわらず将来を嘱望される人材に多額の費用をかけて長期の海外留学をさせるという場合に該当する。
 本件海外留学決定の経緯を見るに、被告は人間の幅を広げたいといった個人的な目的で海外留学を強く希望していたこと、派遣要綱上も留学を志望し選考に応募することが前提とされていること、面談でも本人に留学希望を確認していること、(中略)が認められる。これによれば、仮に本件留学が形式的には業務命令の形であったとしても、その実態としては被告個人の意向による部分が大きく、最終的に被告が自身の健康状態、本件誓約書の内容、将来の見通しを勘案して留学を決定したものと推認できる。
 また、留学先での科目の選択や留学中の生活については、被告の自由に任せられ、脱退原告が干渉することはなかったのであるから、その間の行動に関しては全て被告自身が個人として利益を享受する関係にある。実際にも被告は獲得した経験や資格によりその後の転職が容易になるという形で現実に利益を得ている。

使用者の報奨責任・労働者の業務上の損害賠償の範囲

 独立行政法人労働政策研究・研修機構が「労働者の損害賠償責任とその制限」として事例検討を行っています。その元となった事例は「最一小判昭51.7.8」判決です。今回は、その内容をそのまま引用します。

1.概要

 石油等の輸送、販売を業とするX会社の従業員Yは、会社の業務としてタンクローリーで重油を輸送中に、同人の車両間隔不保持・前方不注意が原因で訴外A会社の車両に追突する事故を起こした。

 この事故によって、X会社は、事故車両の修理費用等につき、約33万円の損害を被った。また、X会社は、A会社に対し、損害賠償として約8万円を支払った。

 X会社は、これらの合計金額41万円余りの支払いをYに求め、本件訴訟を提起した。第一審判決(水戸地判昭48.3.27 民集30-7-695)、控訴審判決(東京高判昭49.7.30 民集30-7-699)がいずれも、上記金額の4分の1の限度でのみ請求を認容したので、これを不服としてXが上告した。

 なお、Xは、資本金800万円の株式会社であり、従業員約50名を擁し、業務上車両を20台近く保有しているが、経費節減のため、当該車両については対人賠償責任保険のみに加入し、対物賠償責任保険及び車両保険に未加入であった。また、Yは、普段は小型貨物自動車の運転業務に従事しており、タンクローリーには臨時的に乗務するに過ぎなかった。本件事故当時のYの賃金額は月額約4万5,000円であり、その勤務成績は普通以上であった。

2.判決

 使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により直接損害を被り、又は使用者としての損害賠償責任を負担したことにより損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができる

 本件の事実関係の下では、XがYに支払いを請求しうる額は信義則上Xが被った損害額の4分の1を限度とすべきであるとした原審の判断は正当として是認できる。

3.解説

 労働者が仕事上のミス等により使用者に損害を与えた場合、次に挙げるような形で、使用者に対して民法上の損害賠償責任を負うことがある(このほか、不正競争防止法4条などの特別な法律に基づいて労働者の損害賠償責任が生じることもある)。

 第一は、労働者の加害行為から、直接使用者に損害が生じる場合である(労働者の不注意による、使用者の商品や営業用器材の損傷・紛失、取引上の損失の発生など)。この場合、当該加害行為が労働契約上の債務不履行(民法416条)、又は不法行為(民法709条)に該当すると、これらの規定に基づく損害賠償責任が発生する。

 第二は、労働者の加害行為により、使用者以外の第三者に損害が生じる場合である(労働者のミスによる交通事故、顧客の損害など)。この場合、労働者の加害行為が職務に関連したもの(使用者の事業の執行についてのもの)であり、かつ、民法709条の不法行為に該当すると、使用者は被害を受けた第三者に対して損害賠償責任を負い(民法715条1項)、これに基づいて損害を賠償した使用者は、その負担を直接の加害者である労働者に求償する権利を持つ(民法715条3項参照)。

 このように、労働者が損害賠償責任(又は求償責任)を負うかどうかについては、民法上の一般原則に基づく判断がされるが、損害賠償責任を負う場合の賠償額については、社会通念に照らして加害行為によって生じたといいうる(加害行為との間に「相当因果関係」が認められる)損害額を賠償するという民法の原則は修正され、信義則(民法1条2項)を根拠として、上記の原則に基づく額からの減額が行われる。このような処理は、使用者と労働者の経済力の差や、労働者の活動から利益を得る使用者はそこから生じるリスクも負担すべき(報償責任)との考え方を考慮し、労働者・使用者間で損害の公平な負担を図るためのものと理解できる

4.原判決の判決理由

 使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償をすることができるものと解すべきである。

5.労働者の故意又は犯罪行為

 労働者が会社に損害を与える目的・意図で、取引先に損害を与え又は自社の資産等を毀損し、又は業務上の横領を行い、窃盗その他の犯罪行為を行った等の場合には、刑事告発とは別に会社が被った損害額の全額の賠償を労働者に求めることが出来ます。

6.危険負担、報奨責任

 危険負担とは、双務契約が成立した後に、債務者の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・毀損等してしまったことにより履行不能(後発的履行不能)となった場合において、そのリスクを当事者のいずれが負担するか、という問題のことをいいます。そして、労働契約においては、報奨責任の法理から労務提供者の労働者の故意や重大な過失の場合を除き、危険負担は原則的に使用者が負担することと解されています。

 報奨責任とは、使用者は被用者の活動によって利益を上げているので、利益の存するところには損失も帰するべきであるという考え方です。

7.まとめ

 使用者は、定額の賠償を予定する労働契約の締結はできません。

 そして、業務上生じた第三者の損害又は使用者の損害は、原則的に使用者がその損害を賠償します。また、第三者に業務上で被用者が損害を与えた場合には、使用者責任の規定により使用者が損害賠償の責任を負い、その際の「その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」被用者に求償することができるとされています。

 

 

以上で「労働者に賠償を求めること」を終了します。

 

 

 

 

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パートタイム労働法第30条、第31条

2015年06月01日 09:53

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第30条(過料)

 第十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の

過料に処する。

 

第31条

 

 第六条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。

 

通達によるまとめ

・過料(法第30条及び第31条関係)
(1) 法第18条第1項の助言、指導及び勧告を適切に行うためには、その前提として、同項の報告の徴収を適切に行う必要がある。このため、法第30条は、法第18条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対して、20万円以下の過料に処することとしたものであること。
(2) 法第31条は、法第6条第1項の規定による義務の履行を確保するため、同項の規定に違反した事業主に対して10万円以下の過料に処することとしたものであること。
(3) 過料については、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第5編の過料事件の規定により、管轄の地方裁判所において過料の裁判の手続を行うものとなること。都道府県労働局長は、法第30条又は第31条の要件に該当する事実がある場合には、管轄の地方裁判所に対し、当該事実に係る事業主について、法第30条又は第31条に基
づき過料に処すべき旨の通知を行うこととなること。
 
均等法の過料規定の再掲

 過料とは、一般に金銭を徴収する行政罰のこととされています。従って、刑事罰の科料とは異なり

す。

 ※罰金は1万円以上、科料は千円以上1万円未満の財産刑です。

 

参考:非訟事件手続法

第百十九条  過料事件(過料についての裁判の手続に係る非訟事件をいう。)は、他の法令に特別の

定めがある場合を除き、当事者(過料の裁判がされた場合において、その裁判を受ける者となる者を

いう。以下この編において同じ。)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

 

 

 

以上でパートタイム労働法第30条・第31条を終了します。

 

 

パート労働法第30・31条

 

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パートタイム労働法第28条、第29条

2015年06月01日 09:15

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第28条(雇用管理の改善等の研究等)

 厚生労働大臣は、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするため、短時間労働者のその職域の拡大に応じた雇用管理の改善等に関する措置その他短時間労働者の雇用管理の改善等に関し必要な事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるものとする。

 

第29条(適用除外)

 この法律は、国家公務員及び地方公務員並びに員職業安定法(昭和二十三年法律第

百三十号)条第一項に規定する船員については、適用しない。

 

通達による確認 

雑則(法第5章)
・雇用管理の改善等の研究等(法第28条関係)
 短時間労働者の職域の拡大に伴い、基幹的、恒常的な職務や専門的、技術的な職務に従事する短時間労働者も存在するなど、短時間労働者の就業の実態は多様化・複雑化している。
 このため、厚生労働大臣は、短時間労働者がその能力を有効に発揮できるようにするため、雇用管理の改善等に関する事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるものとしたものであること。
 具体的には、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する好事例を収集・分析することや、短時間労働者の雇用管理の改善等に資する評価制度についてガイドラインを作成すること等が考えられること。
 なお、評価制度についてのガイドラインの確認は出来ませんでした。 
 
パートタイム労働法第28条のまとめ  
 パートタイム労働者の調査研究に関しては、「公益財団法人21世紀職業財団」において行っています。同財団では、「パートタイム労働者雇用管理事例」として実例を公表しています。
 
参考:21世紀職業財団HP https://www.jiwe.or.jp
 
パートタイム労働法第29条まとめ 
 適用除外は、均等法においても規定されています。国家公務員、地方公務員、船員については、本法の適用を除外するとしています。
 
 
以上でパートタイム労働法の第28条・第29条を終了します。
 
 
パート労働法第28・29条
 
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パートタイム労働法第24条、第25条、第26条、第27条

2015年05月30日 14:26

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第24条(紛争の解決の援助

 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

 

2 事業主は、短時間労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間労

働者に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

第25条(調停の委任

 

 都道府県労働局長は、第二十三条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。

 

2 前条第二項の規定は、短時間労働者が前項の申請をした場合について準用する。

 

第26条(調停)

 

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待の確保等に関する法律(昭和四十七

律第百十三号)第十九条、第二十条第一項及び第二十一条から第二十六条までの規定は、前

条第一項の調停の手続について準用する。この場合において、同法第十九条第一項中「前

条第一項」とあるのは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十五条第一

項」と、同法第二十条第一項中「関係当事者」とあるのは「関係当事者又は関係当事者と

同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」と、同法第二十五条第一項中「第十八

条第一項」とあるのは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十五条第一

項」と読み替えるものとする。

 

第27条(厚生労働書への委任)

 

 この節に定めるもののほか、調停の手続に関し要な事項は、厚生労働省令で定め

る。

 

即第9条(準用)

 

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待の確保等に関する法律施行規則(昭和六

十一年働省令第二号)第三条から第十二条までの規定は、法第二十五条第一項の調停の手

続について準用する。この場合において、同令第三条第一項中「法第十八条第一項」と

あるのは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「短時間労働者法」とい

う。)第二十五条第一項」と、同項並びに同令第四条(見出しを含む。)、第五条(見出し

を含む。)及び第八条第一項中「機会均等調停会議」とあるのは「均衡待遇調停会議」

と、同令第六条中「法第十八条第一項」とあるのは「短時間労働者法第二十五条第一項」

と、「事業場」とあるのは「事業所」と、同令第八条第一項及び第三項中「法第二十条

第一項又は第二項」とあるのは「短時間労働者法第二十六条において準用する法第二十

条第一項」と、同項中「法第二十条第一項の」とあるのは「短時間労働者法第二十六

条において準用する法第二十条第一項の」と、同令第九条中「関係当事者」とあるのは

「関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」と、

同令第十条第一項中「第四条第一項及び第二項」とあるのは「短時間労働者の雇用管理

の改善等に関する法律施行規則第九条において準用する第四条第一項及び第二項」と、

「第八条」とあるのは「同令第九条において準用する第八条」と、同令第十一条第一項

中「法第二十一条」とあるのは「短時間労働者法第二十六条において準用する法第二十

一条」と、同令別記様式中「労働者」とあるのは「短時間労働者」と、「事業場」

とあるのは「事業所」と読み替えるものとする。

 

通達による確認

紛争の解決の援助(法第24条関係)
(1) 紛争の解決の援助(法第24条第1項)
 短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対して、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。
 イ 「紛争の当事者」とは、現に紛争の状態にある短時間労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないものであること。
 ロ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではないこと。
(2) 紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第24条第2項)
 イ 法第24条第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある短時間労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、短時間労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
 ロ 「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義については、それぞれ第3の11(5)ハ(ハ)及び(ニ)と同じであること。
調停の委任(法第25条関係)
(1) 調停の委任(法第25条第1項)
 イ 紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)間の紛争について、当事者間の自主的な解決、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争について、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせるものとすることとしたものであること。
 ロ 「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある短時間労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないものであること。
 ハ 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであること。
 ニ  次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。
 (イ) 申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るものであるとき
 (ロ) 申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているとき(関係当事者双方に、当該手続よりも調停を優先する意向がある場合を除く。)
 (ハ) 集団的な労使紛争にからんだものであるとき
 ホ 都道府県労働局長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、ニに該当しない場合は、法第22条による自主的解決の努力の状況も考慮の上、原則として調停を行う必要があると判断されるものであること。
(2) 調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第25条第2項)
 イ 法第25条第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある短時間労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、短時間労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
 ロ 「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義については、それぞれ第3の11(5)ハ(ハ)及び(ニ)と同じであること。
調停(法第25条及び第26条関係)
(1) 調停の手続については、法第26条において準用する男女雇用機会均等法第19条、第20条第1項及び第21条から第26条の規定及び則第9条の規定において準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「男女雇用機会均等法施行規則」という。)第3条から第12条の規定に基づき行われるものであること。
 法第22条の苦情の自主的解決の努力は委員会の調停を開始する要件ではないが、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことにかんがみ、調停を申し立てる前に苦情の自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。
(2) 委員会の会長は、調停委員のうちから、法第25条第1項の規定により委任を受けて同項に規定する紛争についての調停を行うための会議(以下「均衡待遇調停会議」という。)を主任となって主宰する調停委員(以下「主任調停委員」という。)を指名するものであること。また、主任調停委員に事故があるときは、あらかじめその指名する調停委員が、その職務を代理するものとなるものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第3条第1項及び第2項)。
(3) 均衡待遇調停会議は、主任調停委員が招集するものであること。
 また、均衡待遇調停会議は、調停委員2人以上が出席しなければ、開くことができないものであること。さらに、均衡待遇調停会議は、公開しないものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項から第3項)。
(4) 均衡待遇調停会議の庶務は、当該都道府県労働局雇用均等室において処理するものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第5条)。
(5) 法第25条第1項の調停の申請をしようとする者は、調停申請書を当該調停に係る紛争の関係当事者である労働者に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならないものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第6条及び別記様式)。
(6) 都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を会長及び主任調停委員に通知するものであること。また、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは関係当事者の双方に対して、調停を行わせないこととしたときは調停を申請した関係当事者に対して、遅滞なく、その旨を書面によって通知するものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第7条第1項及び第2項)。
(7) 調停は、3人の調停委員が行うこととされており、調停委員は、委員会のうちから、会長があらかじめ指名するものとされていること(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第19条第1項及び第2項)。
(8) 委員会は、調停のために必要があると認めるときは、関係当事者または関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人(以下「関係当事者等」という。)の出頭を求め、その意見を聴くことができるものとされていること(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第20条第1項)。ただし、この「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当事者等(法人である場合には、委員会が指定する者)により行われることが必要であること。
 「その他の参考人」とは、関係当事者である短時間労働者が雇用されている事業所に過去に雇用されていた者、同一の事業所で就業する派遣労働者などを指すものであること。
 委員会に「関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」の出頭を求めることができるとしたのは、委員会が通常の労働者との比較が問題となる短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争を扱うため、比較対象となる通常の労働者の就業の実態について明らかにすることが必要であり、また、調停案の内容によっては同一の事業所において雇用される他の短時間労働者等に対しても影響を及ぼし得ることから、これらの者を参考人として意見聴取することが必要な場合があるためであること。
(9) 委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て、補佐人を伴って出頭することができるものであり、補佐人は、主任調停委員の許可を得て陳述を行うことができるものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第1項及び第2項)。「補佐人」は、関係当事者等が陳述を行うことを補佐することができるものであること。なお、補佐人の陳述は、あくまでも関係当事者等の主張や説明を補足するためのものであり、補佐人が自ら主張を行ったり、関係当事者等に代わって意思表示を行ったりすることはできないこと。
(10) 委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て当該事件について意見を述べることができるほか、他人に代理させることができるものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第3項)。他人に代理させることについて主任調停委員の許可を得ようとする者は、代理人の氏名、住所及び職業を記載した書面に、代理権授与の事実を証明する書面を添付して主任調停委員に提出しなければならないものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第4項)。
(11) 委員会は、当該事件の事実の調査のために必要があると認めるときは、関係当事者等に対し、当該事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができるものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第9条)。
(12) 委員会は、必要があると認めるときは、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせることができるものであること。「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係当事者等からの事情聴取等が該当するものであること。この場合において、則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項及び第2項の規定は適用せず、則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条の規定の適用については、同条中「主任調停委員」とあるのは、「特定の調停委員」とするものであること。
 また、委員会は、必要があると認めるときは、当該事件の事実の調査を都道府県労働局雇用均等室の職員に委嘱することができるものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第10条第1項及び第2項)。
(13) 委員会は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から意見を聴くものとすることとされていること(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第21条)。「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」については、主要な労働者団体又は事業主団体に対して、期限を付して関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の氏名を求めるものとするものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項)。関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項により委員会の求めがあった場合には、当該労働者団体又は事業主団体は、当該事件につき意見を述べる者の氏名及び住所を委員会に通知するものとするものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第項)。
(14) 委員会は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができるものであること(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第22条)。調停案の作成は、調停委員の全員一致をもって行うものとするものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第1項)。また、「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。委員会は、調停案の受諾を勧告する場合には、関係当事者の双方に対し、受諾すべき期限を定めて行うものとするものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第2項)。関係当事者は、調停案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印した書面を委員会に提出しなければならないものであること(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第3項)。しかしながら、この「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではないこと。
(15) 委員会は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができ、その場合、その旨を関係当事者に通知しなければならないものとされていること(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第23条)。「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。
時効の中断(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第24条関係)
 本条は、調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の中断が生じることを明らかにしたものであること。
 「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。
 また、調停の過程において申請人が調停を求める事項の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。
 「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日の当日は期間の計算に当たり算入されないため、書面による調停打切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。
 「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。
訴訟手続の中止(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第25条関係)
 本条は、当事者が調停による紛争解決が適当であると考えた場合であって、調停の対象となる紛争のうち民事上の紛争であるものについて訴訟が係属しているとき、当事者が和解交渉に専念する環境を確保することができるよう、受訴裁判所は、訴訟手続を中止することができることとするものであること。
 具体的には、法第25条第1項に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、4月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨を決定することができるものであること。
(1) 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。
(2) (1)の場合のほか、関係当事者間に調停によって当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
 なお、受訴裁判所は、いつでも訴訟手続を中止する旨の決定を取り消すことができるものであること。また、関係当事者の申立てを却下する決定及び訴訟手続を中止する旨の決定を取り消す決定に対しては不服を申し立てることができないものであること。
資料提供の要求等(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第26条)
 委員会は、当該委員会に継続している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができるものであること。「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局や都道府県等の地方自治体が考えられるものであること。「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいうものであること。
 
紛争調整委員会(均等法の逐条考察第18条再掲)

第5条(あっせんの委任)

 都道府県労働局長は、前条第一項に規定する個別労働関係紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)について、当該個別労働関係紛争の当事者(以下「紛争当事者」という。)の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。

2 前条第三項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。

第6条(委員会の設置)

 都道府県労働局に、紛争調整委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、前条第一項のあっせんを行う機関とする。

 ※労働局の紛争調整委員会は両者(あっせん申請者と被申請者)の申し立て及び答弁を聴いた上で、両者にあっせん案(解決案)を提示し、両者がそのあっせん案を承諾すれば、和解契約としての効力が発生し両者を拘束します。

 

パンフレットによる整理

 通達の内容は非常に長文ですので、厚生労働省作成のパンフレットで紛争の調停制度についてまとめます。なお、本法による紛争調停制度は、均等法の調停制度と比べ調停に係る紛争内容以外は同一の制度です。

1.都道府県労働局長による紛争解決援助

 ① 援助対象者

   紛争の当事者たる短時間労働者、事業主

 ② 援助の対象となる紛争

  ・労働条件の文書交付等(法第6条)

  ・待遇の差別取扱い禁止(法第8条、第9条ほか)

  ・職務の遂行に必要な教育訓練(法第9条、第11条)

  ・福利厚生施設の利用の機会の配慮(法第9条、第12条)

  ・通常の労働者への転換を推進するための措置(第13条)

  ・待遇の決定についての説明(法第14条)

 ③ 援助の対象とならない紛争

  ・労働組合と事業主の間の紛争及び短時間労働者と他の労働者間の紛争

  ・援助対象事項からの逸脱がある場合

  ・すでに確定判決が出ているものと同一の紛争

  ・司法的救済又は労働局長の援助以外の行政的救済に係属している紛争

  ・その紛争が集団紛争に関係するもの

  ・すでに調停案受諾勧告が行われ、双方が受諾したか打ち切られた紛争(蒸し返し、一事不再理)

  ・事業主の措置が実施された日から1年経過した事案

 ➃ 労働局長による相談援助の流れ

  (1)申し立て(都道府県労働局均等室)

  (2)援助の実施( 同担当者 )

    事情聴取(申立者、被申立者、関係者)、必要な援助(助言、指導、勧告)

 ⑤ 相談援助の打切り

  ・当事者(被申立者)の受け入れ

  ・本人の死亡、法人の解散

  ・申し立ての取り下げ

  ・被申立者が非協力的で困難な場合

  ・対立が激しく、解決が困難な場合 

2.紛争調停制度

 ① 名称

   均等待遇調停会議

 ② 調停対象者

   紛争の当事者たる短時間労働者、事業主

 ③ 調停の対象となる紛争

   都道府県労働局長の相談援助対象の紛争と同一

 ➃ 調停の対象とならない紛争

   都道府県労働局長の相談援助の対象外の紛争と同一

 ⑤ 和解契約

   両者がそのあっせん案(調停案)を承諾すれば、和解契約としての効力が発生し両者を拘束します

 ⑥ 時効の中断

  調停が打ち切られた場合に当該調停の申請をした者が打ち切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の中断が生じることを定めるものであること。「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。また、調停の過程において申請人が調停を求める時効の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日は期間の計算に当り算入されないため、書面による調停打切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

  ※その他時効の中断に関する詳細は、均等法第24条の項目をご参照ください。

 ⑦ その他

  調停は、本来、事業主と労働者の二者の紛争の解決を主張するため、行為者の出頭を求めるに当たっては、事業主と労働者の二者だけでは紛争を解決するために必要な事実関係の確認が行えない場合に、委員会が調停のために必要があると認め、かつ、関係当時者が同意をした場合においては出頭を求めるものであること。

(4)則第8条第1項「補佐人」は、関係当時者が事情の陳情を行うことを補佐することができるものであること。補佐人の陳述は、関係当時者が直ちに意義を述べ又は訂正しない限り、関係当時者とみなされるものであること。

 なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。

(5)則第8条第3項の代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。

(6)法第21条の「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」とは、主要な労働関係団体が氏名する関係労働者を代表する者又は主要な事業主団体が指名する関係事業主を代表する者の意であること。

(7)則第11条の関係労使を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。

(8)法第22条の「受諾を勧告する」とは、両関係当時者に調停案の内容を示し、その受諾を求めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。

 則第12条第3項の「書面」は、関係当時者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当時者間において民事的効力をもつものではないこと。

(9)法第23条の「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当時者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当時者の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。

 ⑧ 均等待遇調停会議による調停手続きの流れ
   調停申請書の提出、調停申請書受理、調停会議の開催、調停案の作成・受諾勧告
 ⑨ 調停の打切り
   都道府県労働局長の相談援助にかかる打切り事由と同一
 
パンフレット掲載の調停事例 
ア 概要
 申請者は、正社員と同視すべき状態であるにも関わらず、正社員と比べ賃金に著しい差があるとして、賃金の差額分を請求する調停申請を行った。
イ パートタイム労働者の主張
 正社員とパートタイム労働者は、職務の内容、人材活用の仕組み・運用が同じであり、契約期間の定めはない。
 改正パートタイム労働法が施行されて以降、1 年分の賃金差額の支払いを求める。
ウ 事業主の主張
 正社員とパートタイム労働者では職務の内容が異なっている。
 現在支払っている賃金は労働契約で双方合意したものであり、問題がない。
エ 結果
 調停委員は、申請者について正社員と同視すべき状態であると判断したが、その状態の始期については、申請者が主張する1年前ではなく半年前であると判断し、半年間の賃金差額について支払うよう調停案の受諾を勧告。
 双方が受諾し、調停は終了した。
 
参考:都道府県労働局均等室管掌の紛争解決制度 紛争調停会議パンフ.pdf (852962)
 
パートタイム労働法第27条のまとめ
 現状では、本法の施行規則他において本法第27条に関する規定はありません。
 
以上でタートタイム労働法第24条・第25条・第26条・第27条を終了します。
 
 
パート労働法第24~27条
 

 

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パートタイム労働法第22条・第23条

2015年05月29日 16:46

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第22条(苦情の自主的解決)

 事業主は、第六条第一項、第九条、第十一条第一項及び第十二条から第十四条までに定

める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を

代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦

情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を

図るように努めるものとする。

 

第23条(紛争の解決の促進に関する特例)

 

 前条の事項についての短時間労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第二十七条までに定めるところによる。 

 

通達による確認 

紛争の解決(法第4章)
 法第4章は、紛争を解決するための仕組みとして第1節において苦情の自主的解決、都道府県労働局長による紛争の解決の援助について、第2節において調停制度について定めたものであること。
苦情の自主的解決(法第22条関係)
(1) 企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。
 なお、この他の事項に関する苦情についても自主的解決が望ましいことについては、第3の11(5)ロ(ハ)のとおりであること。
(2) 「苦情処理機関」とは、事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関等をいうものであること。これは、労働者の苦情については、まずはこのような苦情処理機関における処理に委ねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。
(3) 「苦情の処理を委ねる等」の「等」には、法第16条に基づく相談のための体制の活用や短時間雇用管理者が選任されている事業所においてはこれを活用する等労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。
(4) 苦情処理機関等事業所内における苦情の自主的解決のための仕組みについては、短時間労働者に対し、周知を図ることが望まれるものであること。
(5) 法では、短時間労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第24条第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、法第25条第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局長の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことにかんがみ、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。
紛争の解決の促進に関する特例(法第23条関係)
(1) 法第6条第1項、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に係る事業主の一定の措置についての短時間労働者と事業主との間の紛争(以下「短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争」という。)については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号。以下「個別労働関係紛争解決促進法」という。)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第24条から第27条までの規定によるものとしたものであること。
(2) これは、個別労働関係紛争解決促進法に係る紛争は、解雇等労使間の個別の事情に関わるものが多いことから、あっせん委員が労使の間に入って、その話し合いを促進するあっせんの手法が効果的であるのに対し、短時間労働者の均衡待遇等に係る紛争は、当該事業所における賃金制度等に由来するものであり、継続的な勤務関係にある中で、差別的取扱い等かどうかの認定を行った上で必要な制度の見直し案等の調停案を示し、受諾の勧告を行うことが有効であるという、両者の紛争の性格が異なるためであること。
(3) 「紛争」とは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置に係る事業主の一定の措置に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。
 
パートタイム労働法第22条、第23条のまとめ
1.第22条(自主的解決の促進)
 パートタイム労働法の規定は、努力義務規定と強行規定(義務規定)が混在します。そして、強行規定には罰則が設けられていません。(本法第18条第1項違反の際の過料のみ第30条に規定があります。)パートタイム労働法の趣旨の根底には、同一価値労働同一賃金という価値観があり、そして過去の裁判例では、均等法違反により不法行為を構成するとしたものや、本法でいう「通常の労働者」と同一視できる短時間労働者に当たらないとして、労働者の請求を退けたものもあります。
 従来の裁判所の考え方は、私が承知している限りでは、①「賃金等の労働条件は雇用形態により異なることがあり、その差異は当然には不法でも違法でもない。」、②「今現在の日本には、各労働に対する価値(賃金)が確定しているわけではない。」、③「そのため、労働契約法やパートタイム労働法においても、通常の労働者と同一視できる場合に、均衡考慮を義務付けているに留まる。」、➃「これらは、あくまで同じ事業所内での通常の労働者と有期契約又は短時間労働契約の労働者とを比較考量して、その両者間の均衡を判断もしくは両者の労働条件の差異の合理性を判断しなければならないと規定しているに留まる。」、⑤「労働契約法及びパートタイム労働法とも、非正規労働者の通常の労働者(正社員等)への転換請求権を認めていない。」となっています。
 以上を総合勘案しての現状の問題点の考察を行います。
ア 民事の限界
 民事上で、不法行為(民法第709条)による損害賠償(パートタイム労働法第8条違反等)は、原則として金銭の支払いにより行います。※民法第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
 従って、通常の労働者と同視できるにもかかわらず、短時間労働者の賃金が不合理に低かった場合には、パートタイム労働法施行後部分の差額請求ができるに留まります。
イ 無期労働契約かつフルタイムの非常勤労働者の救済
 無期契約かつフルタイムの労働条件であれば、原則的に通常の労働者と労働条件が異なっても、労働契約法及びパートタイム契約法の対象外となってしまいます。もっとも、民法第90条、その他の法律に照らして、どのような判断になるのかはまだ未検討です。
ウ 担当行政機関の一層の措置
 パートタイム基本方針(平成27年厚生労働省告示第142号)においても、第2,1(5)(6)において、「短時間労働者の均等・均衡待遇が確保され、短時間労働を選択することによって不合理な取扱いを受けることのないよう、法の実効性をより一層確保することが必要である。」さらに「短時間労働者に特有の課題だけでなく、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の基本的な労働に関する法令が遵守されていない場合も依然としてみられるため、それらの法令遵守の徹底が必要である。」とされているとおり、法の規定の周知及び遵守について、更なる措置が必要であると考えられます。
エ 契約は契約当事者の信頼関係によってのみ締結・維持・変更できる
 労働契約法の考察の際に、労働契約(雇用契約)とはそもそも何かについて記述しました。契約は、契約当事者の意思の合致にほかなりませんから、行政機関等の第三者に頼らずに契約当事者間で紛争解決を図ることがむしろ合理的です。
2.第23条
 パートタイム労働法に規定される内容の紛争は、個別紛争解決法の紛争解決の対象外としています。これは、均等法、育児介護休業法においても同様であることは、均等法の記述の際に既に述べました。
 パートタイム労働法に規定される紛争解決手段の詳細については、次条以降で記述します。
 
 
以上でパートタイム労働法第22条、第23条を終了します。
 
 
パート労働法第22・23条
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パートタイム労働法第18条、第19条、第20条、第21条

2015年05月29日 14:31

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第18条(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等)

 厚生労働大臣は、短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

 

2 厚生労働大臣は、第六条第一項、第九条、第十一条第一項、第十二条から第十四条まで及び第十六条の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

 

3 前二項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

 

則第8条(権限の委任)

 法第十八条第一項に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働大臣が全国的に重要であ

ると認めた事案に係るものを除き、事業主の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の

長が行うものとする。

 

第19条(事業主等に対する援助)

 国は、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るため、短時

労働者を雇用する事業主、事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用

理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができ

る。

 

第20条(職業訓練の実施等)

 国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び

短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するた

め、短時間労働者、短時間労働者になろうとする者その他関係者に対して職業能力の開発

及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の

配慮をするものとする。

 

第21条(職業紹介の充実等)

 国は、短時間労働者になろうとする者がその適性、能力、経験、技能の程度等にふさわしい職業を選択し、及び職業に適応することを容易にするため、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 

 

通達による確認 

報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等(法第18条関係)
(1) 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告(法第18条第1項関係)
 イ  法第18条第1項は、本法の目的を達成するため、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、短時間労働者の雇用管理の改善等を図るために必要があると認めるときは、事業主に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うことができることとしたものであること。
 ロ  本項の厚生労働大臣等の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。
 ハ  「短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるとき」とは、法及び指針によって事業主が講ずべき措置について、これが十分に講じられていないと考えられる場合において、その措置を講ずることが雇用管理の改善等を図るため必要であると認められるとき等をいうものであること。
 ニ  報告の徴収並びに助言、指導及び勧告は、おおむね(イ)~(ニ)のとおり実施するものであること。
 (イ) 報告の徴収
  報告の徴収は、法第18条第1項の助言、指導、勧告のために行う事実の調査として、文書の提出の要請、出頭を求めての事情聴取、事業所への現地実情調査等を行うことのほか、法の施行に関し必要な事項につき事業主から報告を求めることをいうものであること。
 (ロ) 助言
  法の規定(指針に規定された事項を含む。)に違反する状況を解消するために事業主に対して口頭又は文書により行うものであること。
 (ハ) 指導
  助言の対象となった事案のうち是正のためには強い要請が必要であると認められるものについて、事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により行うものであること。
 (ニ) 勧告
  指導の対象となった事案のうち是正のためには更に強い要請が特に必要であると認められるものについて、事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により行うものであること。
 また、勧告を行う場合であって、事業主が当該勧告に係る必要な是正措置を講じるまでに一定の期間を要すると認められるときは、必要に応じて、当該事業主に対し、当該勧告において是正措置の実施に至るまでのスケジュール等を明記した措置計画の作成を求めるものであること。
 なお、(ハ)の「是正のためには強い要請が必要であると認められるもの」とは、具体的には助言を行っても事業主に是正措置を講ずる意向が確認できないものを、また(ニ)の「是正のためには更に強い要請が特に必要であると認められるもの」とは、指導を行っても事業主に是正措置を講ずる意向が確認できないものをいうこと。
(2) 公表(法第18条第2項関係)
 短時間労働者について、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置を推進するためには、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いを禁止する等、事業主に一定の措置を義務付けるとともに、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果を高め、法の実効性を確保することが必要である。このような観点から、厚生労働大臣は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで及び第16条の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。
(3) 権限の委任(法第18条第3項関係)
 イ  法第18条第1項及び則第8条の規定に基づき、厚生労働大臣が助言、指導、勧告を行う全国的に重要である事案とは、おおむね以下のいずれかに該当する事案をいうものであること。
 (イ) 広範囲な都道府県にまたがり、事案の処理に当たり各方面との調整が必要であると考えられる事案
 (ロ) 事案の性質上広範な社会的影響力を持つと考えられる事案
 (ハ) 都道府県労働局長が勧告を行っても是正の意向がみられず、悪質かつ重大な事案
 なお、(ロ)については、企業の規模、事案に係るパートタイム労働者の数等を考慮すること。また、(ハ)における「悪質」とは、度重なる説得に応じない等遵法意識の見られない場合を、「重大」とは、事業主の措置により不利益を被る短時間労働者が多数いる場合や社会的影響が大きい場合をいうこと。
 ロ  法第18条第2項の規定に基づく厚生労働大臣による公表については、則第8条において、都道府県労働局長に権限の委任がなされていないものであること。
事業主等に対する援助(法第19条関係)
(1) 短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るためには、事業主に対する短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等の義務付け等の制度と相まって、短時間労働者の雇用管理の改善等の措置等を図る事業主等に対し、国が必要な援助を行うことが有効であると考えられる。
 このため、国は、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るため、短時間労働者を雇用する事業主、事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとしたものであること。
(2) 「その他の関係者」とは、事業主団体のほか、短時間労働者の雇用管理の改善等の支援を行っている団体を広く指すものであること。
(3) 「その他の必要な援助」としては、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての好事例等の情報提供や助成金の支給などが考えられること。
職業訓練の実施等(法第20条関係)
(1) 短時間労働者の中には、主要な仕事、高度な技術・技能が必要な仕事、責任のある仕事をしたいと希望する者がいるにもかかわらず、企業の対応は、教育訓練の実施率が低い等短時間労働者の能力をより有効に活用するための環境整備が十分になされているとはいえない。
 また、短時間労働者になろうとする者の中には、職業生活を一定期間中断していたこと等により、職業能力の減退、かつて習得した知識、技能の陳腐化等、就業しようとする職業に必要な能力に欠けるために希望する職業に従事できない者もいるところである。
 このようなことから、国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、職業能力の開発及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の配慮をすることとしたものであること。
(2) 「特別の配慮」とは、職業能力開発促進センター、都道府県立職業能力開発校における短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者等に対する普通職業訓練(短期課程)等の推進をいうものであること。
職業紹介の充実等(法第21条関係)
 短時間労働者になろうとする者については、職業生活を一定期間中断していた者が多く、職業に関する知識、自らの適性・能力等についての客観的な理解、就労に対する心構えが不十分であるとか、労働市場に関する知識・情報が不足している場合があることなどからきめ細かな配慮が必要とされる者が多いことにかんがみ、特に、その適性、能力、経験及び技能の程度等にふさわしい職業を選択し、並びに職業に適応することを容易にするため、国は、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めることとしたものであること。
 
罰則:パートタイム労働法第30条
 第十八条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
 
パートタイム労働法第18条~第21条のまとめ
1.第18条
 ・都道府県労働局長等は、必要があると認めるときは、事業主に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うことができる
 ・報告の徴収並びに助言、指導及び勧告の手順
 (イ)報告の徴収
   事実の調査として、文書の提出の要請、出頭を求めての事情聴取、事業所への現地実情調査等を行うことのほか、法の施行に関し必要な事項につき事業主から報告を求める
 (ロ)助言
   事業主に対して口頭又は文書により行う
 (ハ)指導
   事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により指導する
 (ニ)勧告
   事業主に対して文書の手交又は郵送の方法により勧告する
   また、場合により当該勧告において是正措置の実施に至るまでのスケジュール等を明記した措置計画の作成を求める
 ・公表
  厚生労働大臣は、法第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで及び第16条の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとした。
  ※都道府県労働局長は企業名を公表することができない。
2.第19条
 ・事業主の団体その他の関係者に対して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとしたもの
 ・「その他の必要な援助」としては、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての好事例等の情報提供や助成金の支給などが考えられる
3.第20条
 ・国、都道府県及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、短時間労働者及び短時間労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、職業能力の開発及び向上に関する啓発活動を行うように努めるとともに、職業訓練の実施について特別の配慮をすることとしたもの
4.第21条
 ・時間労働者になろうとする者については、職業生活を一定期間中断していた者が多く、職業に関する知識、自らの適性・能力等についての客観的な理解、就労に対する心構えが不十分であるとか、労働市場に関する知識・情報が不足している場合があることなどからきめ細かな配慮が必要とされる者が多いことにかんがみ、特に、その適性、能力、経験及び技能の程度等にふさわしい職業を選択し、並びに職業に適応することを容易にするため、国は、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めることとしたもの
 
 
第18条~第21条まとめ
 労働局長の指導・勧告については、労働局の均等室で短時間労働者の相談等を受けた後に、必要に応じて実施していると承知しています。これは、各都道府県労働局のホームページで相談事例等が確認できると思います。
 東京労働局のまとめでは、平成25年度において「295 事業所を対象にパートタイム労働法第 16 条(改正後第18条)に基づく報告徴収を実施し、このうち何 らかの違反があった 271 事業所に対して 725 件の是正指導を行った。」と公表しています。
 また、同じく東京労働局のまとめによれば、平成25年度の事業主からの相談件数は286件で全体の 63.2%を占めています。参考までに、労働者からの同相談件数は64件(14.2%)、その他の同相談件数は103件(22.7%)となっています。
 短時間労働者に対する職業訓練については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が主として実施しているようです。参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP https://www.jeed.or.jp/js/ このホームページによりその職業訓練内容等をご参照ください。
 さらに、短時間労働者に対する「雇用情報の提供」「職業指導及び職業紹介の充実」等必要な措置は、主として各ハローワーク及び都道府県労働局で行っていいます。
 例えば、短時間労働者向けの法令制度のパンフレットの作成、ハローワークの職業紹介時の説明、各都道府県労働局の雇用均等室での短時間労働者向けの相談指導の実施などがあります。また、事業主向けの助成金制度では、「キャリアアップ助成金(有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む。以下「有期契約労働者等」という)の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成をするもの)」「トライアル雇用助成金(職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成するものであり、それらの求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者および求人者の相互理解を促進すること等を通じて、その早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的とする)」等が設定されています。
 ただし、一般的に助成金等は年度により変更さたり(打切りもあります。)、窓口が複数存在しますので事前に詳しく調べる必要があります。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第18条、第19条、第20条、第21条を終了します。
 
 
 
パート労働法第18~21条
 
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パートタイム労働法第16条、第17条

2015年05月29日 12:56

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第16条(相談のための体制の整備)

 事業主は、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。

 

第17条(短時間雇用管理者)

 

 事業主は、常時厚生労働省令で定める数以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間雇用管理者を選任するように努めるものとする。

 

則第6条法第十七条の厚生労働省令で定める数)

 

 法第十七条の厚生労働省令で定める数は、十人とする。

 

則第7条(短時間雇用管理者の選任)

  

 事業主は、法第十七条に定める事項を管理するために必要な知識及び経験を有している

認められる者のうちから当該事項を管理する者を短時間雇用管理者として選任するもの

とする。

 

通達による確認 

1.相談のための体制の整備(法第16条関係)
(1) 短時間労働者は、就業の実態が多様であり、通常の労働者と待遇が異なる理由が分かりにくく、これが不満につながりやすい。このため、法においては、雇入れ時に雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間労働者から求めがあったときに待遇の決定に当たって考慮した事項を説明しなければならないこととしているところである(第3の10参照)。しかしながら、その待遇に係る疑義等について相談する体制が各事業所において十分に整っていなければ、短時間労働者に対する説明による納得性の向上の実効性は確保されない。このため、事業主は、雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないこととしたものであること。
(2) 「必要な体制」の整備とは、短時間労働者からの苦情を含めた相談に応じる窓口等の体制を整備することをいうこと。苦情を含めた相談に応じることができる窓口等であれば、その名称を問うものではなく、また、窓口等は組織であるか、個人であるかを問わないこと。例えば、雇用する労働者の中から相談担当者を決め、相談に対応させること、短時間雇用管理者を選任している事業所において、短時間雇用管理者を相談担当者として定め、短時間労働者からの相談に対応させること、事業主自身が相談担当者となり、相談に対応すること、外部専門機関に委託し、相談対応を行うこと等が考えられること。
 なお、本条においては、相談に応じる窓口等を設置すること自体が義務の対象となっていること。しかしながら、上記の相談に応じる窓口等においては、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応することが求められること。
(3) 相談窓口は、法第6条第1項の特定事項であり、雇入れ時の文書等による明示事項となされていること(則第2条第1項)。また、雇入れ時の文書等による明示のほか、事業所内の短時間労働者が通常目にすることができる場所に設置されている掲示板への掲示等により、短時間労働者に周知することが望まれること。
2.短時間雇用管理者(法第17条関係) 
(1) 短時間労働者については、通常の労働者と異なる雇用管理が行われていることに加えて、個々の短時間労働者の間でも個別多様に労働条件が設定されることが多く、多くの短時間労働者を雇用する事業主は自らがすべての短時間労働者についてきめ細かな管理を行うことは困難な面が多い。そこで、事業所における短時間労働者の雇用管理の改善等を図るための体制を整備するために、事業主は、短時間労働者を常時厚生労働省令で定める数(則第6条により10人と定められている。)以上雇用する事業所ごとに、短時間雇用管理者を選任するように努めるものとしたものであること。
(2) 則第7条においては、短時間雇用管理者は、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから事業主が選任することとされていること。この「必要な知識及び経験を有していると認められる者」とは、短時間雇用管理者の職務を遂行するに足る能力を有する者をいい、事業所の人事労務管理について権限を有する者が望ましいものであること。
(3) 短時間雇用管理者が担当すべき業務としては次のものが含まれること。
 イ  法に定める事項は言うまでもなく、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項について、事業主の指示に従い必要な措置を検討し、実施するとともに、必要に応じ、関係行政機関との連絡を行うこと。
 ロ 短時間労働者の労働条件、就業環境に係る事項等に関し、短時間労働者の相談に応ずること。
 
パートタイム労働法第16条まとめ
 本法第16条では、「その雇用する短時間労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない」として、相談担当者や相談窓口等の設置を義務付けています。
 具体的には、「相談担当者の配置」「短時間雇用管理者を相談担当者とすること」「事業主自身が相談担当となること」「外部専門機関に委託すること」等が想定されます。
 さらに、短時間労働者の相談窓口は本法第6条の文書で明示すべき事項とされており、併せて掲示等の方法で窓口の設置を周知すべきこととなっています。
 
パートタイム労働法第17条まとめ
 短時間雇用管理者は、短時間労働者を常時10人以上雇用する事業所ごとに配置するように務める必要があります。また、短時間雇用管理者は、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから事業主が選任することとされています。
 平成15年調査の10人以上パートを雇用している事業所の短時間雇用管理者の選任状況をみると、「選任している」が、44.8%となっています。※出典:(財)21世紀職業財団作成、「パートタイム労働者実態調査」
 実態としては、短時間雇用管理者がその趣旨に沿って活躍している印象は少ないものと考察します。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第16条、第17条を終了します。
 
 
パート労働法第16・17条

 

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パートタイム労働法第15条

2015年05月29日 09:46

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第15条(指針)

 厚生労働大臣は、第六条から前条に定めるもののほか、第三条第一項の事業主が講ずべ

雇用管理の改善等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な

指針(以下この節において「指針」という。)を定めるものとする。

 

2 第五条第三項から第五項までの規定は指針の策定について、同条第四項及び第五項の

規定は指針の変更について準用する。

 

通達による確認 

・指針(法第15条関係)
(1) 法第15条第1項は、法第6条から第14条までに定めるもののほか、第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めることとしているものであること。
 指針の策定については法第5条第3項から第5項までの規定が、指針の変更については法第5条第4項及び第5項の規定が準用されること。したがって、指針は短時間労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定めなければならず、指針の策定及び変更に当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならないこと。
(2) 指針第1は、指針と法の関係を明らかにしようとするものであり、指針が法第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために法第6条から第14条までに定めるもののほかに必要な事項を定めたものであることを明らかにしたものであること。
(3) 指針第2は、事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっての基本的考え方を明らかにしたものであること。
 指針第2の1は、短時間労働者にも労働基準法、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働契約法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働に関する法令が適用され、事業主がこれを遵守しなければならないものであることを確認的に明記したものであること。
 指針第2の2は、事業主は法の規定に従い、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずる必要があることを確認的に明記するとともに、事業主は、短時間労働者の多様な就業実態を踏まえ、その職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、待遇に係る措置を講ずるよう努めるものとしたものであること。本規定は、すべての短時間労働者に及ぶ基本的考え方を述べたものであり、事業主は、法及び指針において具体的に規定されていない場合においても、この考え方に基づき措置を講ずべきであること。
  指針第2の3の前段は、法に基づく短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、その雇用する通常の労働者その他の労働者の労働条件を合理的な理由なく一方的に不利益に変更することは法的に許されないものであることを確認的に明記したものであること。「その他の労働者」には、短時間労働者をはじめ、当該事業所で雇用されるすべての労働者が含まれるものであること。
 指針第2の3の後段は、法に基づく短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、所定労働時間が通常の労働者と同一である有期契約労働者は法の定める短時間労働者とはならないが、このような者についても、法の趣旨が考慮されるべきであることを明記したものであること。
(4) (3)イにおける労働に関する法令の主な内容は、以下のとおりであること。
 労働条件の明示
 労働基準法第15条第1項の規定に基づき、事業主は、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、当該短時間労働者に対して、同項に規定する厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる労働条件に関する事項を明示する義務があること。
(イ) 労働契約の期間
(ロ) 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
(ハ) 就業の場所及び従事すべき業務
(ニ) 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
(ホ) 賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、一か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当を除く。以下この(ホ)において同じ。)の決定、計算及び支払いの方法並びに賃金の締切り及び支払の時期
(ヘ) 退職(解雇の事由を含む。)
 就業規則の整備
 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法第89条の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則を作成する義務があること。
 年次有給休暇
 事業主は、短時間労働者に対しても、労働基準法第39条の定めるところにより、別表に定める日数の年次有給休暇を付与する義務があること。
 なお、年次有給休暇の付与に係る「継続勤務」の要件に該当するか否かについては、勤務の実態に即して判断すべきものであるので、期間の定めのある労働契約を反復して短時間労働者を使用する場合、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではないことに留意すること。
 期間の定めのある労働契約
 事業主は、短時間労働者のうち期間の定めのある労働契約(以下この項において「有期労働契約」という。)を締結するものについては、労働基準法第14条第2項の規定に基づき定められた有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
 (イ) 雇止めの予告
 事業主は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。(ロ)の②において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
 (ロ) 雇止めの理由の明示
 ① (イ)の場合において、事業主は、短時間労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
 ② 有期労働契約が更新されなかった場合において、事業主は、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(ハ) 契約期間についての配慮
 事業主は、有期労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
  解雇の予告
(イ) 事業主は、短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法の定めるところにより、少なくとも30日前にその予告をする義務があること。30日前に予告をしない事業主は、30日分以上の平均賃金を支払う義務があること。
(ロ) (イ)の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができること。
 退職時等の証明
 事業主は、短時間労働者が、①退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合、②解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、労働基準法第22条の定めるところにより、遅滞なくこれを交付する義務があること。
  健康診断
 事業主は、健康診断については、短時間労働者に対し、労働安全衛生法第66条に基づき、次に掲げる健康診断を実施する必要があること。
(イ) 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ロ) 深夜業を含む業務等に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
(ハ) 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
(ニ) その他必要な健康診断
 この場合において、事業主が同法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
 ① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
 ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
 なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。
 ①の括弧書中の「引き続き使用」の意義については、上記ハのなお書の趣旨に留意すること。
 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
 有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申込みにより無期労働契約に転換されるものであること。
  期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件が相違する場合において、職務の内容、人材活用の仕組み、運用等その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないも
のであること。
  妊娠中及び出産後における措置
 事業主は、妊娠中及び出産後1年以内の短時間労働者に対し、労働基準法及び男女雇用機会均等法の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
(イ) 産前及び産後の休業の措置
(ロ) 健康診査等を受けるために必要な時間の確保及び健康診査等に基づく医師等の指導事項を守ることができるようにするために必要な措置
(ハ) その他必要な措置
 なお、(ハ)の措置としては、労働基準法第64条の3に定める危険有害業務の就業制限、同法第65条第3項に定める軽易業務転換、同法第66条に定める時間外労働、休日労働及び深夜業の禁止並びに変形労働時間制の適用制限、同法第67条に基づく育児時間等があること。
 育児休業及び介護休業に関する制度等
 事業主は、短時間労働者について、育児・介護休業法の定めるところにより、次に掲げる措置を講ずる必要があること。
(イ) 育児休業又は介護休業に関する制度
(ロ) 子の看護休暇に関する制度
(ハ) 介護休暇に関する制度
(ニ) 所定外労働の制限に関する制度
(ホ) 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する者又は要介護状態にある家族を介護する者に対する時間外労働の制限又は深夜業の制限の措置
(ヘ) 3歳に満たない子を養育する者に対する所定労働時間の短縮措置又は育児休業に関する制度に準ずる措置若しくは始業時刻変更等の措置又は要介護状態にある家族を介護する者に対する所定労働時間の短縮その他の措置
 なお、次の点に留意すること。
 ① 育児・介護休業法第6条第1項及び第2項並びに第12条第2項の規定により、雇用期間が1年に満たない労働者等であって労使協定で育児休業及び介護休業をすることができないものとして定められたものについては、(イ)の措置の対象とはならないこと。
 また、育児・介護休業法第16条の3第2項及び第16条の6第2項の規定により、雇用期間が6か月に満たない労働者等であって労使協定で子の看護休暇及び介護休暇を取得することができないものとして定められたものについては、(ロ)及び(ハ)の措置の対象とはならないこと。
 ② 育児・介護休業法第5条第1項及び第11条第1項の期間を定めて雇用される者について、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号。以下「育介指針」という。)第2の1において、労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、育児休業及び介護休業の対象となるものであるが、その判断に当たっては、同指針第2の1の(1)の事項に留意することとされていること。
 ③ 育児・介護休業法第5条第1項の規定により、期間を定めて雇用される者のうち育児休業をすることができるものは、育児休業申出時点で当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、かつ、その養育する子の1歳到達日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者であり、この場合、当該子の1歳到達日から1年を経過する日までの間に、労働契約が完了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者は除くこととされているところであるが、期間を定めて雇用される者が育児・介護休業法第5条第1項各号に定める要件を満たす労働者か否かの判断に当たっては、育介指針第2の1の(2)の事項に留意することとされていること。
 ④ 育児・介護休業法第11条第1項の規定により、期間を定めて雇用される者のうち介護休業をすることができるものは、介護休業申出時点で当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、かつ、介護休業開始予定日から起算した93日経過日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者であり、この場合、93日経過日から1年を経過する日までの間に、労働契約が完了し、かつ、当該労働契約の更新が明らかである者は除くこととされているところであるが、期間を定めて雇用される者が育児・介護休業法第11条第1項各号に定める要件を満たす労働者か否かの判断に当たっては、育介指針第2の1の(2)の事項に留意することとされていること。
 ⑤ 育児・介護休業法施行規則第33条の2の規定及び平成21年12月28日付け職発1228第4号、雇児発第1228号第2号「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」の記の第9の7の(7)のイにおいて、所定労働時間が1日6時間以下の労働者については、(ヘ)の措置を講ずる必要は基本的にはないものとされていること。
 雇用保険の適用
 事業主は、一定の要件を満たす短時間労働者は雇用保険の被保険者となるが、雇用保険の被保険者に該当する者であるにもかかわらず適用手続をとっていない短時間労働者については、雇用保険法に基づき必要な手続をとらねばならないものであること。
ワ  高年齢者の短時間労働の促進
 少子高齢化社会において、経済社会の活力を維持し発展させていくためには、高年齢者の高い就業意欲を活かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要であり、今後特に高年齢者の雇用対策は重要となる。これらの者については、健康、体力等の状況によって個人差が大きくなり、就業ニーズも多様化し、短時間労働を希望する者も増大するので、これに対応して、事業主は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の趣旨にしたがい、短時間労働を希望する高年齢者に対して適切な雇用機会を提供するよう努める必要があること。
(5) 指針第3は、指針第2の基本的考え方に立って、次の点について適切な措置を講ずるべきとしたものであること。
短時間労働者の雇用管理の改善等(指針第3の1関係)
(イ) 労働時間(指針第3の1の(1)関係)
 短時間労働者の多くは、家庭生活との両立等のため、短時間かつ自己の都合に合う一定の就業時間帯を前提として勤務している者であり、事業主は、このような短時間労働者の事情を十分考慮して労働時間・労働日を設定するように努め、できるだけ所定労働時間外又は所定労働日外に労働させないように努めるものとしたものであること。
(ロ) 退職手当その他の手当(指針第3の1の(2)関係)
 事業主は、法第9条及び第10条に定めるもののほか、短時間労働者の退職手当、通勤手当その他の職務の内容と密接な関連を有しない手当についても、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとしたものであること。
  なお、通勤手当については、通勤手当という名称で支払われていても職務の内容に密接に関連して支払われるものについては、法第10条の対象であり、その旨は則第3条第1号括弧書において明確化されていること。
 「均衡等」の「等」とは、就業の実態を前提として通常の労働者とのバランスを考慮しただけでは十分でない場合に必要に応じて同業他社の状況などを考慮することを指すものであること。
 なお、就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した結果、通常の労働者と異なる定め方をすることは、合理的理由があれば許容されるものであること。
(ハ) 福利厚生(指針第3の1の(3)関係)
 企業が行っている福利厚生について短時間労働者には適用しないなどの例があり、これが短時間労働者に不公平感を生んでいる場合がある。このため、法第9条において、通常の労働者と同視すべき短時間労働者については福利厚生の取扱いについて短時間労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないこととしているとともに、法第12条において、事業主は健康を保って働くための施設や業務を円滑に遂行するための施設である給食施設、休憩室、更衣室については、短時間労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければならないこととしている。指針においては、これら法第9条及び第12条に定めるもののほか、物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設その他これらに準ずる施設の利用及びそれ以外の事業主が行う福利厚生の措置(慶弔休暇の付与等)についても、短時間労働者に対してその就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするよう努めるものとしたものであること。
 なお、就業の実態や通常の労働者との均衡等を考慮した結果、通常の労働者と異なる取扱いをすることは、合理的理由があれば許容されるものであること。
 労使の話合いの促進(指針第3の2関係)
 企業内における労使の自主的な取組を促進する観点から、労使の話合いの促進のための措置の実施に係る規定を設けたものであること。
 (イ) 待遇についての説明(指針第3の2の(1)関係)
 事業主は、法第14条第2項に定めるもののほか、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者から本人の待遇について説明を求められたときには、当該短時間労働者の待遇に係るその他の事項についても、誠意をもって説明するように努めるものとしたものであること。
 「説明」に当たっては、短時間労働者と通常の労働者の職務の内容等との関係についても説明をするなどにより納得性を高めることが重要であること。また、短時間労働者が待遇についての「説明」を求めたことを理由として、当該短時間労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないことは当然のことであること。
(ロ) 意見を聴く機会を設けるための適当な方法の工夫(指針第3の2の(2)関係)
 事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっては、当該事業所における関係労使の十分な話合いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとしたものであること。
 「関係労使」とは、集団的労使関係に限定されるものではないこと。
 また、「意見を聴く機会を設けるための適当な方法」は事業所の事情に応じ、各事業所において工夫されるべきものであるが、例として、職場での労使協議、職場懇談会、意見聴取、アンケート等が挙げられること。
(ハ) 苦情の自主的な解決(指針第3の2の(3)関係)
 事業主は、法第22条に定めるもののほか、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した待遇に係るその他の事項についても、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとしたものであること。
 「苦情処理の仕組みを活用する等」とは、事業所内の苦情処理制度や法第16条に基づく相談のための体制の活用のほか、短時間雇用管理者が選任されている事業所においては、これを活用すること等が考えられること。
 このような苦情処理の仕組み等について、特定事項として文書の交付等により明示することとされている相談窓口以外のものについても、短時間労働者に対し、周知を図ることが望まれること。
 不利益取扱いの禁止(指針第3の3関係)
(イ) 指針第3の3の(1)は、事業主は、短時間労働者が法第7条に定める過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしていたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことを明記したものであること。
(ロ) 指針第3の3の(2)の前段は、事業主は、短時間労働者が法第14条第2項に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことを明記したものであること。
 これは、説明を求めた短時間労働者に対して事業主が法第14条第2項により求められる範囲の説明を行ったにもかかわらず、繰り返し説明を求めてくるような場合に、職務に戻るよう命じ、それに従わない場合に当該不就労部分について就業規則に従い賃金カットを行うようなこと等まで、不利益な取扱いとして禁止する趣旨ではないこと。
 指針第3の3の(2)の後段は、法第14条第2項に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めることにより、事業主から不利益な取扱いを受けることをおそれて、短時間労働者が本項に基づき説明を求めることができなくなることがないようにすることを明記したものであること。
 具体的には、説明を求めることにより、不利益な取扱いを受けると想起されかねないような言動及び行動をすべきでないこと。また、法第16条に基づく相談対応のための体制の整備を適切に実施すること等により、短時間労働者が不利益な取扱いを受けることへの危惧を持つことなく説明を求めることができるような職場環境としていくことが望まれること。
(ハ) 「理由として」とは、短時間労働者が「過半数代表であること若しくは過半数代表者になろうとしていたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたこと」又は「待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたこと」について、事業主が当該短時間労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
(ニ) 「不利益な取扱い」とは、解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、労働契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。
(ホ) 指針第3の3の(3)は、事業主は、短時間労働者が親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当でないことを明記したものであること。
 「親族の葬儀等」とは、親族の死に際して行われる葬儀等の行事をいい、「親族」及び「葬儀等」の範囲や「勤務しなかった」日数等については、社会通念上勤務しないことが許容される範囲のものが該当するものと考えられること。
 「理由として」とは、短時間労働者が「親族の葬儀等のために勤務しなかったこと」について、事業主が当該短時間労働者に対して解雇等を行うことと因果関係があることをいうものであること。
 また、「解雇等」には、労働契約の更新拒否等が含まれるとともに、「親族の葬儀等のために勤務しなかったこと」を理由として直接的に解雇等を行う場合のみならず、出勤率、欠勤日数等を解雇等の判断基準として採用している場合に、当該勤務しなかった日を当該出勤率、欠勤日数等の算定に当たって計算に含めて、解雇等を行うことも含まれるものであること。
  短時間雇用管理者の氏名の周知(指針第3の4関係)
 事業主は、短時間雇用管理者を選任したときは、その氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとしたものであること。
 なお、短時間雇用管理者の氏名の周知の方法としては、短時間雇用管理者の氏名及び短時間雇用管理者である旨を事業所の見やすい場所に掲示することのほか、例えば、これらの事項を書面に記載し短時間労働者に交付することでも差し支えないものであること。
 また、短時間雇用管理者を法第16条に基づく相談体制とし、法第6条第1項の特定事項である相談窓口として文書の交付等により明示する場合においては、同項による文書の交付等による明示の際に、相談窓口となる者が短時間雇用管理者であることを併せて明示することでも差し支えないものであること。
 
 
事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針の概要 (平成19年告示第326号)
 通達は非常に長文ですので、基本指針の内容を以下で整理してまとめます。
第一 趣旨
 事業主が講ずべき措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るため、短時間労働者法第六条から第十四条までに定めるもののほかに必要な事項を定めたもの
第二 基本的考え方
 一 労働基準法、最低賃金法、労働契約法、均等法、育児介護休業法、労災保険法、雇用保険法の遵守
 二 パートタイム労働法第6条~第14条の雇用管理の改善等に関する措置の実施、合理的な待遇に関する措置
 三 パート労働者の労働条件の一方的不利益変更の禁止
第三 事業主が講ずべき措置
 一 雇用管理の改善等
 (一)労働時間
 イ 労働時間・労働日の決定変更に関して、当人の事情を考慮すること
 ロ 所定外労働及び休日労働の支持を控えること
 (二)退職金等
  通常の労働者との均衡を考慮して定める努力をすること
 (三)福利厚生
  通常の労働者との均衡を考慮して定める努力をすること
 二 話し合いの促進
 (一)雇い入れ時の説明
 (二)短時間労働者の意見を聞く機会を設ける
 (三)苦情の申出についての自主的な解決の促進
 三 不利益取扱いの禁止
 (一)就業規則意見書作成の過半数代表短時間労働者に対する不利益取扱いの禁止
 (二)待遇決定についての説明を求めた短時間労働者に対する不利益取扱いの禁止
 (三)親族の葬儀参列の短時間労働者に対する解雇等の禁止
 四 短時間雇用管理者の氏名の周知
  短時間雇用管理者を選任したときは、短時間労働者に指名を周知させるように努めること
 
 
パートタイム労働法第15条まとめ
 本条に関しては、特段記述する項目がありません。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第15条を終了します。
 
 
 
パート労働法第15条
 
 
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パートタイム労働法第14条

2015年05月28日 14:39

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)

 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、第九条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間労働者に説明しなければならない。

 

2 事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、第六条、第七条及び第九条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない。

 

第14条の分解解析
・事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、労働基準法第15条・本法第6条による労働条件の明示と併せて、本法第9条から第13条までの規定に基づく制度をその短時間労働者に説明しなければならない。(第1項)
・事業主は、雇用する短時間労働者から求めがあった場合には、本法第6条、第7条、第9条から第13条までの規定により講ずるべきとなっている措置の説明をしなければならない。(第2項)
 

通達による確認

・事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容等の説明(法第14関係)

(1) 短時間労働者は、通常の労働者に比べ労働時間や職務の内容が多様であり、その労働条件が不明確になりやすいことなどから、通常の労働者の待遇との違いを生じさせている理由がわからず、不満を抱く場合も少なくない状況にある。また、そもそも事業主が短時間労働者についてどのような雇用管理の改善等の措置を講じているのか、短時間労働者が認識していない場合も多いと考えられ、こうしたことが、短時間労働者の不安や不満につながっていると考えられる。短時間労働者がその有する能力を十分に発揮するためには、このような状況を改善し、その納得性を高めることが有効であることから、法第6条の文書の交付等と併せて、事業主に対し、短時間労働者の雇入れ時に当該事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないこととしたものであること。
(2) 法第14条第1項は、事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、法第9条から法第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
 労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び法第6条第1項の特定事項については、労働基準法又は法により、別途、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本項による説明義務の対象とはしていないこと。
(3) 法第14条第1項に基づく説明については、事業主が短時間労働者を雇い入れたときに、個々の短時間労働者ごとに説明を行うほか、雇入れ時の説明会等において複数の短時間労働者に同時に説明を行う等の方法によっても、差し支えないこと。
 また、本項に基づく説明は、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間労働者が的確に理解することができるよう、口頭により行うことが原則であるが、説明すべき事項を漏れなく記載した短時間労働者が容易に理解できる内容の文書を短時間労働者に交付すること等によっても、本項の義務の履行といえること。
 なお、口頭による説明の際に、説明する内容等を記した文書を併せて交付することは、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間労働者が的確に理解することができるようにするという観点から、望ましい措置といえること。
 短時間労働者の労働契約に期間の定めがある場合であって、その更新をするときについては、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度本項による説明が必要となるものであること。
(4) 法第14条第2項は、事業主は、雇い入れた後、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、法第6条、第7条及び第9条から第13条までの規定により措置を講ずべきとされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
 なお、11(5)ハ(ロ)にあるように、事業主は、短時間労働者が、本項に基づき説明を求めたことを理由として当該短時間労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。
 また、説明を求めることにより、事業主から不利益な取扱いを受けることをおそれて、短時間労働者が本項に基づき説明を求めることができないことがないようにするものであること。具体的には、説明を求めることにより、不利益な取扱いを受けると想起されかねないような言動をすべきでないこと。
 また、法第16条に基づく相談のための体制の整備を適切に実施すること等により、短時間労働者が不利益な取扱いを受けることへの危惧を持つことなく説明を求めることができるような職場環境としていくことが望まれること。
(5) 本条により事業主に説明義務が課されている事項には、第1項については法第10条及び第11条第2項の規定により、第2項については法第6条第2項、第7条、第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然含むものであること。
(6) 本条による説明は、本条による説明義務に係る各条項の規定により求められている措置の範囲内で足りるものであること。このため、本条第1項については、法第11条、第12条に関し、通常の労働者についても実施していない又は利用させていない場合は講ずるべき措置がないことから、この場合に同項により説明する内容は「ない」旨を説明しなくとも同項に違反するものではないこと。しかしながら、第2項については、通常の労働者にこうした措置がないためであることを説明する必要があること。
(7) 本条第1項の説明内容としては、事業所において法に基づき事業主が実施している各種制度等について説明することが考えられること。例えば、法第9条については、雇い入れる短時間労働者が通常の労働者と同視すべき短時間労働者の要件に該当する場合、通常の労働者との差別的な取扱いをしない旨を説明することが考えられること。
 法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素を勘案したどのような賃金制度となっているかを説明することが考えられること。法第11条については、短時間労働者に対しどのような教育訓練が実施されるかを説明することが考えられること。法第12条については、短時間労働者がどのような福利厚生施設を利用できるかを説明することが考えられること。法第13条については、どのような通常の労働者への転換推進措置を実施しているかを説明することが考えられること。
 第2項の説明内容としては、短時間労働者から求められた内容に応じて、事業主が実施している各種制度等がなぜそのような制度であるのか又は事業主が実施している各種制度等について説明を求めた短時間労働者にどのような理由で適用され若しくは適用されていないかを説明することが考えられること。例えば、法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素をなぜ勘案しているか、また、当該説明を求めた短時間労働者について当該要素をどのように勘案しているかを説明することが考えられること。
(8) 本条の規定による説明により短時間労働者が納得することについては、本条の義務の履行とは関係がないものであること。
 
通達抜粋
ア 趣旨
 どのような雇用管理の改善等の措置を講じているのか、短時間労働者が認識していない場合も多いため、法第6条の文書の交付等と併せて、事業主に対し、短時間労働者の雇入れ時に当該事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間労働者から求めがあったときは、待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないこととしたもの
イ 労働基準法の明示
 労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び法第6条第1項の特定事項については、労働基準法又は法により、別途、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本項による説明義務の対象とはしていない
ウ 説明の方法
 口頭により行うことが原則であるが、説明すべき事項を漏れなく記載した短時間労働者が容易に理解できる内容の文書を短時間労働者に交付すること等によっても、本項の義務の履行といえる
エ 第2項の趣旨
 その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、法第6条、第7条及び第9条から第13条までの規定により措置を講ずべきとされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない
オ 新規採用短時間労働者(本条第1項)及び既存短時間労働者の求め(第2項)に応じた説明の内容
 事業主に説明義務が課されている事項には、第1項に ついては法第10条及び第11条第2項の規定により、第2項については法第6条第2項、第7条、第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然含む
・新規採用の短時間労働者向けの説明(第1項)
 (ア)通常の労働者と同一視できる短時間労働者の差別待遇の禁止(第9条)
 (イ)短時間労働者(通常の労働者と同一視出来る場合を除く)と通常の労働者との配慮決定の努力義務(第10条)
 (ウ)短時間労働者(通常の労働者と同一視出来る場合を除く)についての通常の労働者と同様の教育訓練の実施(第11条)
 (エ)短時間労働者についての通常の労働者と同様の福利厚生施設(更衣室等)の使用をみとめる(第12条)
 (オ)短時間労働者についての通常の労働者への転換機会(措置)(第13条)
・すでに就労している短時間労働者の求めに応じた説明(第2項)
 上記の(ア)~(オ)に加え、
 (カ)短時間労働者の採用時の特定事項(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口)の明示義務(労働基準法第15条の項目を除く)等(第6条)
 (キ)短時間労働者に関する就業規則の作成・変更時の短時間労働者の代表者からの意見聴取の努力義務(第7条)
 
法第14条まとめ
 正規社員・正規職員は幹部候補労働者、非常勤社員・非常勤職員はあくまで定形的な非常勤労働者といった、あたかも江戸時代の身分制度(士・農・工・商)のごとき両者の区分けを廃止し、一貫した総合的な人事制度の導入を促している規定と考えられます。
 たしかに、新入社員を年功制度の上で、長期的な視点で育成・配置する制度は、ある意味で合理性を有しています。一方で、現代のような、女性の就労期間の長期化の実現、家族介護を行う労働者等のワーク・ライフ・バランスの観点からは、一貫した総合的な人事制度(すなわち、一貫した資格・等級制度=賃金制度)の構築が最も合理的かつ労働者の納得を得られるものと考えます。また、定期採用以外の労働者や臨時採用の労働者に対し、将来の希望を与える制度とすることで、それらの労働者のモチベーションも維持向上できます。
 例えば、育児休業を取得する女性労働者は、育児休業後も従前と同一格付け(すなわち同一の基本賃金)で職場復帰できることが保障されているならば、安心して育児休業に入ることができます。この場合、仮に休業前の職位と異なる職位の職場復帰であっても、大幅に賃金が低下することは考えにくく(もちろん諸手当の設定によりますが)、女性労働者(男性労働者を含め)の育児休業の取得率の向上にも資すると考えます。また、労働契約法の改正により将来的に期間の定めのない労働者の割合が増加することが見込まれ、付随して育児・介護休業の対象となる労働者が増加することが予想されます。その際にも一貫した総合的人事制度の導入により、従来育児・介護休業の対象外であった雇用契約の労働者についての育児・介護制度の構築も、総合人事制度に関連した制度として設計することでその導入が容易になります。
 
 
 
 
以上でパートタイム労働法第14条を終了します。
 
 
パート労働法第14条
 
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パートタイム労働法第13条

2015年05月28日 13:00

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第13条(通常の労働者への転換)

 事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。

一 通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間労働者に周知すること。

二 通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間労働者に対して与えること

三 一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること

 

通達による確認 

・通常の労働者への転換(法第13条関係)
(1) 短時間労働者の中には、通常の労働者として働くことを希望していても、その雇用の機会がないためにやむを得ず短時間労働者として働いている者もいるほか、現状では一度短時間労働者になると通常の労働者としての就業に移ることが困難な状況にある。そのような状況は、労働者個人の働く意欲の維持、キャリア形成の観点から問題であるだけでなく、社会の活力・公正の観点からみても問題であるため、法第13条は通常の労働者への転換を推進する措置を事業主に義務付けたものであること。
(2) 具体的には以下に例示された措置のいずれかを講ずることが求められるものであること。
イ  通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に関する事項を当該事業所において雇用する短時間労働者に周知すること。
ロ  通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間労働者に対して与えること。
ハ  一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けること。
ニ  イからハまでに掲げるもののほか、通常の労働者として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行う等、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。
(3) (2)イは、事業主は、通常の労働者を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間労働者に対しても募集情報を周知することにより、通常の労働者への応募の機会を付与するものとしたものであること。最終的に採用するかどうかは、公正な採用選考である限り事業主の判断に委ねられるが、周知したのみで、応募を受け付けないなど実際に応募の機会を付与しない場合は、本条を満たしたものとはいえないこと。「その他の当該募集に係る事項」とは、求人者が求人の申込みに当たり明示することとされている労働契約期間や就業の場所等の事項を指すものであること。例えば、事業主は公共職業安定所に求人票を出す場合、併せてその募集案内を社内掲示板に掲示することにより、当該事業所で雇用する短時間労働者にも応募の機会を与えることなどが考えられること。また、周知の方法としては、事業所内の短時間労働者が通常目にすることができる場所に設置されている掲示板への掲示のほか、回覧による方法や電子メールによる一斉送信等が考えられるが、募集期間終了までに希望者が見ることのできる状態にあることが必要であること。また、募集する求人の業務内容が専門的資格を必要とするものであって当該事業所に有資格である短時間労働者が存在しないことが明らかである場合については、募集に係る事項を周知しなくても、本条違反とはならないものであること(そのような事情がなければ周知することとされていることが前提である)。なお、他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を通常の労働者として採用するものは、(2)イの「通常の労働者の募集を行う場合」には該当しないものであること。
(4) (2)ロは、企業外に通常の労働者に係る募集を出す前に、企業内の短時間労働者に配置の希望を申し出る機会を与えるものであり、いわゆる優先的な応募機会の付与をいうものであること。また、社内から通常の労働者のポストへの応募を積極的に受け付ける「社内公募」制度のようなものも(2)ロに該当するものであること。なお、この優先的な応募機会の付与は、優先的な採用まで義務付けるものではないことは言うまでもないこと。
(5) (2)イ及びロについては、通常の労働者の募集の必要がないときにまで募集を行うことを求めるものではないが、(10)にあるとおり、そのような措置を講ずる予定であるとしてあらかじめ周知することが求められるものであること。
(6) (2)ハは、その雇用する短時間労働者を通常の労働者へ登用するための制度として、一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を事業所内に設けることとしたものであること。「一定の資格」としては、例えば勤続年数やその職務に必要な資格等があり得るものであること。ただし、当該「一定の資格」として著しく長い勤続期間を要することとするなど、当該事業所の雇用管理の実態から見ても制限的なものと考えられ、対象者がほとんど存在しないようなものは、この(2)ハの措置を行ったとは言えないものであること。
(7) (2)ニは、通常の労働者への転換を推進するための措置としては、(2)イからハまでに掲げる措置以外のものでも差し支えない旨を明らかにしたものであり、一例として、通常の労働者として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行うことを挙げたものであること。この「必要な援助」としては、自ら教育訓練プログラムを提供することのほか、他で提供される教育訓練プログラムの費用の経済的な援助や当該訓練に参加するための時間的な配慮を行うこと等も考えられるものであること。
(8) 本条の措置としては、短時間労働者から通常の労働者への転換を直接図ることが可能となる措置が望ましいことは言うまでもないが、例えば、短時間労働者からいわゆる契約社員など、通常の労働者以外のフルタイム労働者への転換制度を設け、さらに契約社員には通常の労働者への転換制度が設けられているような、複数の措置の組み合わせにより通常の労働者への転換の道が確保されている場合も本条の義務の履行と考えられること。
 なお、本条は、多様な就業形態間の移動の障壁を除去する政策をとるものであることから、当該事業所においていわゆる正規型の労働者とフルタイムの基幹的労働者が通常の労働者として存在する場合に、事業主が講ずる措置がフルタイムの基幹的労働者への転換を推進するものにとどまる場合は、就業形態間の障壁が残ることになることから、本条の義務の履行とはいえないこと。他方、いわゆる「短時間正社員」(他の正規型のフルタイムの労働者と比較しその所定労働時間が短い、正規型の労働者をいう。)については、一般的に、時間の制約が比較的大きい短時間労働者であっても就業しやすい形態であることから、例えば通常の労働者への転換を推進するに当たっての一つの経由点として設定することは、望ましいと考えられること。
(9) 本条の措置は、制度として行うことを求めているものであり、合理的な理由なく事業主の恣意により通常の労働者の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合や、転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに事業主の気に入った人物を通常の労働者に転換するような場合は、本条の義務の履行とはいえないこと。
(10) 本条の趣旨を踏まえると、当該事業所において講じられている通常の労働者への転換を推進するための措置が短時間労働者に対して周知されていることが求められ、(2)イやロの措置のように、一定の機会が到来したときに初めて措置を講ずることとなるものについても、そのような措置を講ずる予定であるとしてあらかじめ周知することが求められるものであること。
(11) 本条においては、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずることが求められているのであって、その結果として短時間労働者を通常の労働者に転換することまで求められるものではないが、長期間にわたって通常の労働者に転換された実績がない場合については、転換を推進するための措置を講じたとはいえない可能性があり、周知のみで応募はしにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないか検証すべきものであること。
 
通達のまとめ 
ア 法第13条は通常の労働者への転換を推進する措置を事業主に義務付けたもの
イ 次のいずれかを講ずることが求められる
 (ア)従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に関する事項を当該事業所において雇用する短時間労働者に周知する
 (イ)当該配置の希望を申し出る機会を与える
 (ウ)通常の労働者の配置を新たに行う場合において、通常の労働者への転換のための試験制度を設ける
 (エ)試験制度その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること
ウ 事業主は、通常の労働者を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間労働者に対しても募集情報を周知することにより、通常の労働者への応募の機会を付与するものとしたものであること
エ 他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を通常の労働者として採用するものは、上記ウの「通常の労働者の募集を行う場合」には該当しない
オ 上記ウは、すでに雇用している短時間労働に優先的な応募機会の付与をいうものであること
カ その雇用する短時間労働者を通常の労働者へ登用するための制度として、一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を事業所内に設けることとしたものである
キ その他教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行うこと
ク 本条の措置は、制度として行うことを求めているものであり、合理的な理由なく事業主の恣意により通常の労働者の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合や、転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに事業主の気に入った人物を通常の労働者に転換するような場合は、本条の義務の履行とはいえない
ケ 本条の措置は、結果として短時間労働者を通常の労働者に転換することまで求められるものではない
 
本法第11条で記述した「総合人事制度」の構築と本法第13条 
 そもそも、本法でいう「通常の労働者」と「短時間労働者等の非正規労働者」との間の雇用契約が全く別の雇用管理制度となっていることが、問題の本質です。本法第11条で例示しましたように、雇用する労働者については、A分類、B分類、C分類のように区分することなく、一貫した人事制度内の格付けにより運用することで、本法第13条の趣旨に沿った問題解消ができます。 
 現在の雇用制度でいわゆる非正規雇用(短時間労働者、有期雇用労働者、フルタイム無期雇用であっても正社員等のプロパー以外の労働者等)の処遇は、多くの企業では将来性を否定されている労働者群です。ここでいう、将来性とは、必ずしも経営担当にまで上り詰めることではなく、少しづつでも昇格・昇給(=昇給)が望める制度のことです。
 正規労働者は、定期採用を中心に長期育成し、幹部従業員として重用する制度はもはや過去のものであると考えます。一貫した総合的な人事制度の構築は、労働者の労働市場における自由な流通という観点においても意義があります。これにより、ある会社で将来の希望を絶たれた労働者も、多くの企業がこの一貫した総合的な人事制度の採用することにより、他の企業で再チャレンジの機会が与えられるものと思料いたします。
 ※軍隊においても、下士官を士官に任用する制度が存在します。
 
 
以上でパートタイム労働法第13条を終了します。
 
 
パート労働法第13条
 
 
 
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パートタイム労働法第12条

2015年05月28日 10:13

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第12条(福利厚生施設)

 事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。

 

施行規則第5条

法第十二条の厚生労働省令で定める福利厚生施設は、次に掲げるものとする。

一 給食施設

二 休憩室

三 更衣室

 

通達による確認(平成26年通達)

・福利厚生施設(法第12条関係)
(1) 事業主が実施する福利厚生の内容は多様であるが、職務の遂行に関連の深い福利厚生施設の利用については、通常の労働者と短時間労働者との間で差を設けるべきではない。それゆえ、法第12条は、事業主は健康を保って働くための施設や業務を円滑に遂行するための施設である給食施設、休憩室、更衣室(以下「3施設」という。)については、短時間労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければならないことを明らかにしたものであること。
 法第12条における「通常の労働者」には、当該事業所におけるすべての通常の労働者が含まれることから、ある短時間労働者と職務内容が同一の通常の労働者のみならず、職務内容が異なる通常の労働者との関係も考慮するべきであること。ただし、ある短時間労働者の従事する業務には更衣室が必要なく、当該業務に従事している通常の労働者も同様の実態にある場合には、他の業務に従事している通常の労働者が更衣室を利用しているからといって当該短時間労働者に更衣室の利用の機会を与える必要はないことが通常であると考えられること。
(2) 「配慮」とは、施設の定員の関係等でその雇用する労働者全員に施設の利用の機会を与えられないような場合に、増築等により結果として全員に利用の機会が与えられるようにすることまでは求めないが、通常の労働者と同じ利用規程を適用したり、利用時間帯に幅を設けることにより短時間労働者にも利用の機会が拡大する措置を講ずる等の具体的措置を求めるものであること。すなわち、施設の定員の関係等で利用の機会が制限されている場合においても、定員を理由としてその利用を通常の労働者に限定することは本条に違反することとなるものであること。
(3) 本条の対象となる3施設の運営を事業主ではなく、労使が運営する共済会等が実施している場合には、本条により事業主が講じなければならない措置の対象外となるものであること。ただし、共済会で運営している場合でも、会員からの出資がなく、運営について事業主の負担で運営されている場合には本条の対象となるものであること。
 なお、本条に定めるもののほか、指針の定めに従い、その他の福利厚生についても、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするように努める必要があること(11(5)イ(ハ)参照)。
 
・高年齢者雇用確保措置の適用との関係
高年齢者の継続雇用制度の導入等が行われる事業所において、当該制度の対象となる高年齢者が短時間労働者である場合に法第9条の適用関係が問題となり得る。
 継続雇用制度が講じられた事業所においては、再雇用等により定年年齢を境として、職務の内容が比較対象となる通常の労働者と同一であったとしても、人材活用の仕組み、運用等が異なっている等の実態があれば、法第9条の要件に該当しないものであること。
 また、定年の引上げ等により、60歳を超えた定年の定めを行っている事業所においては、職務の内容が比較対象となる通常の労働者と同一であり、特段人材活用の仕組み、運用等も異ならないのであれば、法第9条の要件に該当する可能性があること。しかしながら、法第9条の適用がない場合であっても、法第10条から法第12条までに規定する措置については、それぞれの規定の適用要件に応じて講ずるべきものであること。
 
給食施設、休憩室、更衣室
 給食施設・休憩室・更衣室については、短時間労働者についても正規社員・正規職員と同一の待遇であることがむしろ一般的かと思います。
 この点が差別待遇となっている場合については、短時間労働者のモチベーションの問題が生じますので、改善が望ましいと考えます。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第12条を終了します。
 
 
パート労働法第12条

 

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パートタイム労働法第11条

2015年05月26日 17:30

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第11条(教育訓練)

 事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。以下この項において同じ。)が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならない。

2 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。

 

則第4条(法第十一条第一項の厚生労働省令で定める場合)

 法第十一条第一項の厚生労働省令で定める場合は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(法第九条に規定する通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。)が既に当該職務に必要な能力を有している場合とする。

 

通達による確認(平成26年)

・教育訓練(法第11条関係)
(1) 法第11条第1項は、職務の内容が通常の労働者と同じ短時間労働者について、事業主が通常の労働者に対して職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための教育訓練を実施している場合には、既にそのような能力を有している場合を除き、当該短時間労働者に対しても実施されなければならないものであることを定めたものであること。
 これは、短時間労働者の職務の内容が通常の労働者と同じである場合は、短時間労働者に対しても職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための教育訓練を実施することは当然であることから、そのような場合の事業主の教育訓練の実施義務を定めたものである。
(2) 「既に当該職務に必要な能力を有している場合」とは、短時間労働者が以前同業他社に勤務し、当該教育訓練と同様の内容の教育訓練を受講している場合など職務の遂行に必要な知識や技術を身に付けている場合を指すものであること。
 なお、本条の規定は、他の法律において、教育訓練等を受講することが義務付けられている場合についてまで、その義務を免除する趣旨ではないこと。
 また、教育訓練を実施する場合には、短時間労働者の勤務時間帯など短時間労働者側の事情も考慮して実施する必要があること。
(3) 法第11条第2項は、当然の措置を求めている第1項の規定に加えて、事業主は、職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための教育訓練以外の教育訓練及び職務の内容が通常の労働者と異なる短時間労働者に対する職務の遂行に必要な能力を身に付けさせるための教育訓練についても、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じて、短時間労働者に対して実施するよう努める必要があることを定めたものであること。
 これは、労働力人口が減少する中で、我が国の経済の活力を維持するためには、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することが重要であるところ、短時間労働者がキャリアアップするための企業内での教育訓練の機会が乏しく、通常の労働者との待遇の格差の原因となっている現状を改善するため、短時間労働者に対しても積極的な教育訓練の実施を求める趣旨であること。したがって、この教育訓練は、事業主が中長期的な視点から行うキャリアアップのための教育訓練などを指すものであるが、幹部候補生の養成のために実施するような、長期の研修や海外留学等の実施までを求める趣旨ではないこと。
 なお、企業内における中長期的な人材育成システムからは外れがちである短時間労働者についても、その職務の内容、職務の成果等に応じた教育訓練を行い、活用を図っていくことは、言うまでもなく企業においてもメリットがあるものであること。
 なお、「通常の労働者との均衡を考慮しつつ」とは、第10条の場合と同様、短時間労働者と職務の内容が同一である通常の労働者及び職務の内容が異なる通常の労働者の双方との均衡を考慮することになること。
(4) 教育訓練の実施に当たって、通常の労働者との均衡を考慮した結果、実施内容やカリキュラム等が異なることもあり得るものであること。
 
労働安全衛生法における教育訓練の規定
第五十九条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
第六十条 事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
一 作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。
二 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの
第六十条の二 事業者は、前二条に定めるもののほか、その事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行うように努めなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の教育の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができる。
 
施行令
第十九条 法第六十条の政令で定める業種は、次のとおりとする。
一 建設業
二 製造業。ただし、次に掲げるものを除く。
イ 食料品・たばこ製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。)
ロ 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。)
ハ 衣服その他の繊維製品製造業
ニ 紙加工品製造業(セロフアン製造業を除く。)
ホ 新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業
三 電気業
四 ガス業
五 自動車整備業
六 機械修理業
 
施行規則
(雇入れ時等の教育)
第三十五条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
2 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。
(特別教育を必要とする業務)
第三十六条 法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一 研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務
二 動力により駆動されるプレス機械(以下「動力プレス」という。)の金型、シヤーの刃部又はプレス機械若しくはシヤーの安全装置若しくは安全囲いの取付け、取外し又は調整の業務
三 アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等(以下「アーク溶接等」という。)の業務
四 高圧(直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超え、七千ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(七千ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧(直流にあつては七百五十ボルト以下、交流にあつては六百ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務
五 最大荷重一トン未満のフオークリフトの運転(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第一号の道路(以下「道路」という。)上を走行させる運転を除く。)の業務
五の二 最大荷重一トン未満のシヨベルローダー又はフオークローダーの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
五の三 最大積載量が一トン未満の不整地運搬車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
六 制限荷重五トン未満の揚貨装置の運転の業務
六の二 伐木等機械(伐木、造材又は原木若しくは薪炭材の集積を行うための機械であつて、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
六の三 走行集材機械(車両の走行により集材を行うための機械であつて、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
七 機械集材装置(集材機、架線、搬器、支柱及びこれらに附属する物により構成され、動力を用いて、原木又は薪炭材(以下「原木等」という。)を巻き上げ、かつ、空中において運搬する設備をいう。以下同じ。)の運転の業務
七の二 簡易架線集材装置(集材機、架線、搬器、支柱及びこれらに附属する物により構成され、動力を用いて、原木等を巻き上げ、かつ、原木等の一部が地面に接した状態で運搬する設備をいう。以下同じ。)の運転又は架線集材機械(動力を用いて原木等を巻き上げることにより当該原木等を運搬するための機械であつて、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
八 胸高直径が七十センチメートル以上の立木の伐木、胸高直径が二十センチメートル以上で、かつ、重心が著しく偏している立木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木でかかつている木の胸高直径が二十センチメートル以上であるものの処理の業務(第六号の二に掲げる業務を除く。)
八の二 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務(前号に掲げる業務を除く。)
九 機体重量が三トン未満の令別表第七第一号、第二号、第三号又は第六号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
九の二 令別表第七第三号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの以外のものの運転の業務
九の三 令別表第七第三号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものの作業装置の操作(車体上の運転者席における操作を除く。)の業務
十 令別表第七第四号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
十の二 令別表第七第五号に掲げる機械の作業装置の操作の業務
十の三 ボーリングマシンの運転の業務
十の四 建設工事の作業を行う場合における、ジャッキ式つり上げ機械(複数の保持機構(ワイヤロープ等を締め付けること等によつて保持する機構をいう。以下同じ。)を有し、当該保持機構を交互に開閉し、保持機構間を動力を用いて伸縮させることにより荷のつり上げ、つり下げ等の作業をワイヤロープ等を介して行う機械をいう。以下同じ。)の調整又は運転の業務
十の五 作業床の高さ(令第十条第四号の作業床の高さをいう。)が十メートル未満の高所作業車(令第十条第四号の高所作業車をいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
十一 動力により駆動される巻上げ機(電気ホイスト、エヤーホイスト及びこれら以外の巻上げ機でゴンドラに係るものを除く。)の運転の業務
十二 削除
十三 令第十五条第一項第八号に掲げる機械等(巻上げ装置を除く。)の運転の業務
十四 小型ボイラー(令第一条第四号の小型ボイラーをいう。以下同じ。)の取扱いの業務
十五 次に掲げるクレーン(移動式クレーン(令第一条第八号の移動式クレーンをいう。以下同じ。)を除く。以下同じ。)の運転の業務
イ つり上げ荷重が五トン未満のクレーン
ロ つり上げ荷重が五トン以上の跨線テルハ
十六 つり上げ荷重が一トン未満の移動式クレーンの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
十七 つり上げ荷重が五トン未満のデリツクの運転の業務
十八 建設用リフトの運転の業務
十九 つり上げ荷重が一トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務
二十 ゴンドラの操作の業務
二十の二 作業室及び気こう室へ送気するための空気圧縮機を運転する業務
二十一 高圧室内作業に係る作業室への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクを操作する業務
二十二 気こう室への送気又は気こう室からの排気の調整を行うためのバルブ又はコツクを操作する業務
二十三 潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクを操作する業務
二十四 再圧室を操作する業務
二十四の二 高圧室内作業に係る業務
二十五 令別表第五に掲げる四アルキル鉛等業務
二十六 令別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業に係る業務
二十七 特殊化学設備の取扱い、整備及び修理の業務(令第二十条第五号に規定する第一種圧力容器の整備の業務を除く。)
二十八 エツクス線装置又はガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
二十八の二 加工施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第十三条第二項第二号に規定する加工施設をいう。)、再処理施設(同法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設をいう。)又は使用施設等(同法第五十三条第二号に規定する使用施設等(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第四十一条に規定する核燃料物質の使用施設等に限る。)をいう。)の管理区域(電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号。以下「電離則」という。)第三条第一項に規定する管理区域をいう。次号において同じ。)内において核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。次号において同じ。)若しくは使用済燃料(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二条第十項に規定する使用済燃料をいう。次号において同じ。)又はこれらによつて汚染された物(原子核分裂生成物を含む。次号において同じ。)を取り扱う業務
二十八の三 原子炉施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二十三条第二項第五号に規定する試験研究用等原子炉施設及び同法第四十三条の三の五第二項第五号に規定する発電用原子炉施設をいう。)の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物を取り扱う業務
二十八の四 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(平成二十三年厚生労働省令第百五十二号。以下「除染則」という。)第二条第七項第二号イ又はロに掲げる物その他の事故由来放射性物質(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により当該原子力発電所から放出された放射性物質をいう。)により汚染された物であつて、電離則第二条第二項に規定するものの処分の業務
二十九 粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号。以下「粉じん則」という。)第二条第一項第三号の特定粉じん作業(設備による注水又は注油をしながら行う粉じん則第三条各号に掲げる作業に該当するものを除く。)に係る業務
三十 ずい道等の掘削の作業又はこれに伴うずり、資材等の運搬、覆工のコンクリートの打設等の作業(当該ずい道等の内部において行われるものに限る。)に係る業務
三十一 マニプレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む。以下この号において同じ。)を有し、記憶装置の情報に基づきマニプレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械(研究開発中のものその他厚生労働大臣が定めるものを除く。以下「産業用ロボツト」という。)の可動範囲(記憶装置の情報に基づきマニプレータその他の産業用ロボツトの各部の動くことができる最大の範囲をいう。以下同じ。)内において当該産業用ロボツトについて行うマニプレータの動作の順序、位置若しくは速度の設定、変更若しくは確認(以下「教示等」という。)(産業用ロボツトの駆動源を遮断して行うものを除く。以下この号において同じ。)又は産業用ロボツトの可動範囲内において当該産業用ロボツトについて教示等を行う労働者と共同して当該産業用ロボツトの可動範囲外において行う当該教示等に係る機器の操作の業務
三十二 産業用ロボツトの可動範囲内において行う当該産業用ロボツトの検査、修理若しくは調整(教示等に該当するものを除く。)若しくはこれらの結果の確認(以下この号において「検査等」という。)(産業用ロボツトの運転中に行うものに限る。以下この号において同じ。)又は産業用ロボツトの可動範囲内において当該産業用ロボツトの検査等を行う労働者と共同して当該産業用ロボツトの可動範囲外において行う当該検査等に係る機器の操作の業務
三十三 自動車(二輪自動車を除く。)用タイヤの組立てに係る業務のうち、空気圧縮機を用いて当該タイヤに空気を充てんする業務
三十四 ダイオキシン類対策特別措置法施行令(平成十一年政令第四百三十三号)別表第一第五号に掲げる廃棄物焼却炉を有する廃棄物の焼却施設(第九十条第五号の三を除き、以下「廃棄物の焼却施設」という。)においてばいじん及び焼却灰その他の燃え殻を取り扱う業務(第三十六号に掲げる業務を除く。)
三十五 廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉、集じん機等の設備の保守点検等の業務
三十六 廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉、集じん機等の設備の解体等の業務及びこれに伴うばいじん及び焼却灰その他の燃え殻を取り扱う業務
三十七 石綿障害予防規則(平成十七年厚生労働省令第二十一号。以下「石綿則」という。)第四条第一項各号に掲げる作業に係る業務
三十八 除染則第二条第七項の除染等業務及び同条第八項の特定線量下業務
(特別教育の科目の省略)
第三十七条 事業者は、法第五十九条第三項の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
(特別教育の記録の保存)
第三十八条 事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。
(特別教育の細目)
第三十九条 前二条及び第五百九十二条の七に定めるもののほか、第三十六条第一号から第十三号まで、第二十七号及び第三十号から第三十六号までに掲げる業務に係る特別教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める。
(職長等の教育)
第四十条 法第六十条第三号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 法第二十八条の二第一項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
二 異常時等における措置に関すること。
三 その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること。
2 法第六十条の安全又は衛生のための教育は、次の表の上欄に掲げる事項について、同表の下欄に掲げる時間以上行わなければならないものとする。
事項
時間
法第六十条第一号に掲げる事項
一 作業手順の定め方
二 労働者の適正な配置の方法
二時間
法第六十条第二号に掲げる事項
一 指導及び教育の方法
二 作業中における監督及び指示の方法
二・五時間
前項第一号に掲げる事項
一 危険性又は有害性等の調査の方法
二 危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置
三 設備、作業等の具体的な改善の方法
四時間
前項第二号に掲げる事項
一 異常時における措置
二 災害発生時における措置
一・五時間
前項第三号に掲げる事項
一 作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法
二 労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法
二時間
3 事業者は、前項の表の上欄に掲げる事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる者については、当該事項に関する教育を省略することができる。
(平一二労令四一・平一八厚労令一・一部改正)
(指針の公表)
第四十条の二 第二十四条の規定は、法第六十条の二第二項の規定による指針の公表について準用する。
(昭六三労令二四・追加)
(指定事業場等における安全衛生教育の計画及び実施結果報告)
第四十条の三 事業者は、指定事業場又は所轄都道府県労働局長が労働災害の発生率等を考慮して指定する事業場について、法第五十九条又は第六十条の規定に基づく安全又は衛生のための教育に関する具体的な計画を作成しなければならない。
2 前項の事業者は、四月一日から翌年三月三十一日までに行つた法第五十九条又は第六十条の規定に基づく安全又は衛生のための教育の実施結果を、毎年四月三十日までに、様式第四号の五により、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
 
※労働安全衛生法の規定は、安全及び衛生の観点からの教育について規定されています。
  ただし、安全衛生のための教育であっても、スキルアップに繋がる項目が多々含まれていると思われます。本法第11条では、専ら「当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するための」教育訓練についての規定ですが、比較して参考にできるかと思います。
 
○組織論と同一労働同一賃金について
1.軍隊の組織
 組織の本来の機能を100%発揮し、必要な際には持てるすべての能力を発揮できるように目指している組織は「軍隊」です。例えば、大規模災害時においては、消防・警察・自治体などの組織が十分に機能しないことは周知の事実ですが、そのような非常時にあっても、持てる力を十分に発揮できる組織が軍隊です。そこで、組織としての軍隊をみると、階級(格付け)と職位及び権限が相関している(或いは相関させている場合が殆どです。ただし、自衛隊においては、給与は同一階級においても勤続年数に応じて等級(号俸)が上がりますから、いわゆる年功賃金の要素も一部含まれています。
  そこで例えば、NATOにおいては、下士官及び兵の給与はOR-1~OR-9、準士官の給与はWO-1~WO-5、見習い士官の給与はOF(D)、士官の給与はOF-1~OF-10のように規定されています。厳密な階級は各国により若干異なりますが、概ね、兵・下士官・準士官・尉官・左官・将官に分かれます。
  一般的にいって、軍隊に入るには、兵は入隊申し込み後、身体検査等の診査及び試験等を経て、例えば自衛隊の場合には二士に任用されます。また、尉官以上の士官になるには、幹部候補生学校の入学試験を受験して合格する必要があります。そして、合格すると下士官待遇の士官候補生に任用されます。その後、候補生学校を卒業した時点で、自衛隊の場合には三尉に任官されます。
 
 次に、陸軍の歩兵部隊の組織を参考にしてみます。会社の仮の役職も参考までに記述します。
    
組織単位  人数    階級        役割          会社  
兵         三等兵~兵長 指揮を受けて任務に当たる 非正規社員・平社員
分隊長  8~12人 三等軍曹~曹長   分隊の指揮    基幹パート・正社員・主任 
小隊長  40~60人 少尉・中尉    小隊の指揮     主任・係長・課長
中隊長  100人以上 中尉・大尉     中隊の指揮   課長・部長補佐・グループ長
大隊長  500人以上 少佐・中佐     大隊の指揮    営業所長・部長
旅団長  2~6千人 大佐・少将     旅団の指揮    取締役部長・方面部長
師団長  1万人以上  中将      師団の指揮    取締役支社長・方面本部長
軍団司令官 10万人単位 中将以上     全体の指揮   代表取締役・持株会社の役員
 ※労働者が一万人を超える企業は数少ないと思われます。
 
2.組織論のまとめ
  軍隊という組織は、階級と職務が概ね一致しています。支払われる給与も階級と相関関係があります。すなわち、能力が上昇し成果が上がれば階級(等級)が上がり付随して給与が上がります。また、階級に応じて職位も上がります。これは、間接的に同一任務・同一給与が実現した組織であると言えます。
  一般企業においても、賃金の資格等級制度が採用されている(特に大企業)ケースが多いと思われます。その資格等級制度の構築と運用について、従来の「雇用形態別」の賃金体系の枠をなくし、総合的な等級制度を構築することにより、従来の非正規・正規労働者の垣根を廃止することに繋がり、法の趣旨に沿った組織改革が成し遂げられるものと考えます。付け加えるならば、性別はもちろん、学歴・年齢別の入社試験制度を廃止し、例えば「一般職(プライベート職1級~8級)」「初級管理職(基幹職1級~10級)」「中級管理職(マネージメント職1級~5級)」「上級管理職(シニアマネージメント職1級~5級)」「経営担当(統括職1級~5級)」のような区分に応じた資格等級を設定し、入社試験は「一般職採用選考」「初級管理職採用選考」「中級管理職採用選考」(それ以降の上級資格は、昇級のみ)等を実施し、採用後は採用選考区分に応じた格付けを行う仕組みなどが想定されます。
  ところで、前記の従業員の格付け制度について、例えば一般職から初級管理職に格上げする場合には、試験及び上級職の職務研修が行われ、それらの試験や研修において一定の成績の者を格上げするなどの制度とすることで、下級の等級の従業員に対する昇級・昇格・昇職の機会を設けておくことができます。
 
 
 
以上でパートタイム労働法第11条を終了します。
 
 
 
パート労働法第11条
 
 
 
 

 

 

 

 

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パートタイム労働法第10条

2015年05月26日 15:15

短時間労働者の雇用の管理の改善等に関する法律

第10条(賃金)

事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第二項及び第十二条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。)を決定するように努めるものとする。

 

則第3条(法第十条の厚生労働省令で定める賃金)

法第十条の厚生労働省令で定める賃金は、次に掲げるものとする。

一 通勤手当(職務の内容(法第八条に規定する職務の内容をいう。以下同じ。)に密接に関連して支払われるものを除く。)

二 退職手当

三 家族手当

四 住宅手当

五 別居手当

六 子女教育手当

七 前各号に掲げるもののほか、名称の如何を問わず支払われる賃金のうち職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外のもの

 

通達による確認(平成26年通達)

・賃金(法第10条関係)
(1) 法第10条については、法第9条の対象となる短時間労働者以外のすべての短時間労働者が対象となるものである。これは、短時間労働者が勤続年数を重ねてもほとんど賃金に反映されないことや昇給が最低賃金の改定に応じて決定されるなど、働きや貢献とは関係のない要素で賃金が決定されることが多いことから、職務の内容、成果等に応じて賃金を決定するよう努めることとしたものであること。
 その対象となる賃金は、基本給、賞与、役付手当等の勤務手当及び精皆勤手当など職務の内容に密接に関連して支払われる賃金であり、通勤手当(職務の内容に密接に関連して支払われるものを除く。)、退職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当その他名称の如何を問わず、職務の内容と密接な関連を有する賃金(以下「職務関連賃金」という。)以外の賃金については、本条の対象外となるものであること(則第3条)。
 なお、通勤手当について、則第3条第1号括弧書中の「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」については、現実に通勤に要する交通費等の費用の有無や金額如何にかかわらず、一律の金額が支払われている場合など、名称は「通勤手当」であるが、実態としては基本給などの職務関連賃金の一部として支払われているものが該当するものであること。
 なお、手当について職務関連賃金に該当するかを判断するに当たっては、通勤手当以外についても、名称のみならず、支払い方法、支払いの基準等実態を見て判断する必要があるものであること。例えば、家族手当について家族の有無にかかわらず、一律に支払われている場合については、名称は「家族手当」であっても職務関連賃金の一部となっている可能性があること。
(2) 「短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し」とは、短時間労働者がその働き・貢献に見合った賃金決定がなされるよう、働き・貢献を評価する要素である職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験等を勘案要素の例示として挙げているものであること。これらの要素のうち、どの要素によることとするかは各企業の判断に委ねられるものであるが、その勘案については、法第14条第2項に基づく説明を求められることを念頭に、どの要素によることとしたのか、また、その要素をどのように勘案しているのかについて合理的な説明ができるものとされるべきであること。
 「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等」を勘案した措置の例としては、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を踏まえた①賃金水準の見直し、②昇給・昇格制度や成績等の考課制度の整備、③職務手当、役職手当、成果手当の支給等が考えられること。例えば、職務の内容を勘案する場合、責任の重さや業務の困難度で賃金等級に差を設けることなどが考えられるが、本条の趣旨は、この措置の結果として短時間労働者の集団の中で賃金の差を生じさせることにあるのではなく、職務の内容、職務の成果等を適切に賃金に反映させることにより、結果として通常の労働者の待遇との均衡を図っていくことにある点に留意すべきであること。
 なお、「経験等」の「等」としては、例えば、勤続年数が考えられること。
(3) 「通常の労働者との均衡を考慮しつつ」とは、短時間労働者と職務の内容が同一である通常の労働者だけでなく、職務の内容が異なる通常の労働者との均衡も考慮することを指しているものであること。具体的には、通常の労働者の賃金決定に当たっての勘案要素を踏まえ、例えば職務の内容が同一の通常の労働者の賃金が経験に応じて上昇する決定方法となっているならば、短時間労働者についても経験を考慮して賃金決定を行うこととする等、「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等」に応じた待遇に係る措置等を講ずることになること。
(4) 法第10条の措置を講ずる時期については、通常の労働者の定期昇給や賃金表の改定に合わせて実施すること等が考えられるが、例えば、期間の定めのある労働契約を締結している場合においては、当該契約を改定する際又は更新する際に、あわせて賃金の決定方法について均衡を考慮したものとなるよう見直すことも考えられるものであること。
(5) 本条に定めるもののほか、指針の定めに従い、退職金その他の手当についても、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするように努める必要があること(11(5)イ(ロ)参照)。
 
労働条件のうち、賃金の重要性ほか
 平成27年通達により「法第10条については、法第9条の対象となる短時間労働者以外のすべての短時間労働者が対象となるものである。」とされています。
 従って、通常の労働者と同視できる場合以外の短時間労働者の賃金を通常の労働者との均衡を考慮して決めなければならいとしています。ただし、通常の労働者と均衡を図るべき賃金の中には、「職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外のもの(通勤手当、退職手当、家族手当等)」は除外します。
 そして、本法第10条にいう短時間労働者には通常の労働者と同一視できる短時間労働者は含まれないとされます。その理由は、通常の労働者と同一視できる短時間労働者については、賃金を含めた広範囲の労働条件の均衡を図るべき旨を第9条により定められているからです。
 そこで、労働条件のうち賃金について考察します。
 裁判例による賃金の意義
① 昭和49年 (ワ) 623
 歩合給といえども、その実質に鑑み、労働基準法上の賃金に該当するものというべきであり、しかも、それがいわゆる基本給の額との関係において賃金全体に対して影響を有するものと認められる場合には、雇傭契約関係終了の理由如何にかかわらず、その時点において、本来これを調整する余地を残すものとみられるところであるから、かかる給与の構成下にある社員が、売買契約を締結させた後その入金前に退職した場合にあっても、それを基礎として、後、他の社員により登記の完了、代金の入金を了するに至ったような場合には、特段の事情のない限り、退職社員によってなされた顧客の発見、交渉、現地案内、契約締結等のすでになされた労務の提供という事実を、労働の対償としての賃金額に反映、評価するのが公平であり、従って提供された労務が、その契約についての入金完了までに要する全労務に対する割合等に応じて、歩合給を請求することができるものと解するのが相当である。
 ※民法上の賃金債権の発生時点は、労務の提供が完了した時点で発生します。つまり、労働者が賃金の請求をできる単位は、1日・1週・1月等の決められた単位ではなく、1分・1時間等のごく一部の労務の提供であっても、既にその労務の提供が完了した時点で賃金請求権が発生しています。ただし、実際に賃金を請求できるのは賃金計算期間ごとにその応答する賃金支払日以降(労働基準法第23条及び第25条の場合を除く)に限られます。
② 昭和53年 (ワ) 8938
 従業員は、労働契約により従業員としての一般的な地位を取得すると共に所定の労働力を使用者の下に提供して就労することを義務づけられ、これに対し使用者は「労働の対償」としての賃金を支払うこととなる。そして、現実に支払われている賃金をみてみると、日々の労働の提供に対応して交換的に支払われる部分(以下、交換的部分の賃金という)と生活保障的に従業員の地位に対して支払われる部分(以下、生活保障的部分の賃金という)とに大分され、トライキによって控除し得る賃金は、労働協約等に別段の定めがある場合のほかは、拘束された勤務時間に応じて支払われる交換的部分の賃金としての性格を有するものに限られると解されることは、つとに指摘されるところである。
 ※賃金は、基本給と支給理由別の諸手当に区分されます。そして、本法第10条で均衡を図るべき賃金は、則第3条で規定しているように、職務の内容に密接に関係して支払われる賃金に限られます。
イ まとめ
 労働条件のうち、賃金は最も重要なものです。過去にすでに記述していますが、労働とは、労働者が使用者に対し労務を売っていることであり、使用者は労働契約に基づいた単価で個別の労働者が提供する労務(労働)を買取ります。言い換えると、賃金は労働者にとって労働契約の本旨である債権ですから、労働契約上の最も重要な事項です。
 そこで、同じ労務の提供であれば、同じ賃金単価であるべきだとする考え方が本法第10条の趣旨ですが、例えば、入社したばかりの正社員とベテラン短時間労働者では、提供する労務の質は後者の方が高いと思われますが、賃金単価はむしろ前者の方が高いと思われます。これは一見不合理ですが、その理由としては、正社員は幹部候補生として将来の期待値の賃金前払い部分が含まれること、正社員は時間外労働が一般的であり、実際には短時間労働者が行っている業務以外の業務を負担していることなどがその理由です。
 このように、労働条件のうち最も重要な労働条件である賃金は、短時間労働者と通常の労働者間で一見不合理な格差がある場合であっても、総合的に勘案すれば一定の合理性が認められる場合があります。そのため、本条第10条の短時間労働者と通常の労働者間の賃金格差の是正措置は、事業主の努力義務とされています。日本の雇用慣習から、仮に合理的であるにしても急激な賃金制度の変更は、様々な支障が起きる恐れがあることに配慮したものと思います。
 
 
以上でパートタイム労働法第10条を終了します。
 
 
パート労働法第10条
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パートタイム労働法第9条

2015年05月24日 17:06

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第9条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)

 事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。


2 前項の期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。

 

パートタイム労働法(この項目では「本法」といいます。)第9条の条文分析

 法第9条は、長文のため意味がわかりにくい面があります。そこでまず通達を確認する前に、条文の分解分析を行います。

 ① 事業主は

  法第9条の趣旨は、「事業主は、通常の労働者と同視できる短時間労働者について差別的取扱い」をしてはならないこと

 ② 事業主が、差別的取扱いをしてはならない前提条件

  ア 業務の内容及びその業務に伴う責任の程度が通常の労働者と同一の短時間労働者が対象

  イ アの短時間労働者のうち期間の定めがない労働契約を締結している短時間労働者に限られること

   ただし、第2項の規定により「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することができる短時間労働者」が含まれる

  ウ アかつイの短時間労働者のうち、その職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれる短時間労働者に限り

  エ ア~ウの前提を踏まえ短時間労働者であることを理由として、差別的取扱いをしてはならない。

 ③ 比較対象となる通常の労働者とは(本法第2条)

  「通常の労働者」とは、その業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいる場合は、当該正規型の労働者であるが、当該業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいない場合については、当該業務に基幹的に従事するフルタイム労働者(以下「フルタイムの基幹的労働者」という。)が法の趣旨に鑑みれば通常と考えられることから、この者が「通常の労働者」となる。

 ➃ 差別的取扱いをしてはならない内容

  ア 賃金の決定

  イ 教育訓練の実施

  ウ 福利厚生施設の利用

  エ その他の待遇

 以上をまとめると、本法第9条の規定から「事業主が差別的取扱いをしてはならない短時間労働者」とは、いわゆる短時間正社員や人事異動の対象となる準社員、一部の嘱託社員等に限られると思われます。

  従って、多くの割合を占める「有期労働契約を締結し、職務の内容及び配置の変更の範囲が明らかに通常の労働者と異なる」いわゆる「パートタイム労働者」は、本条の対象外であると考えられます。また、フルタイムの基幹労働者と短時間労働者(パートタイム労働者)のみの事業場においては、殆どの労働者が低賃金で就労している場合でも、本条の適用を受けないこととなります。※フルタイム基幹労働者を含めすべての労働者が低賃金であれば、「差別的取扱いに該当しない」ため。

  景気回復とデフレ解消がなされた現在、この点については最低賃金の順次の上方改訂を待つしか手立てがありません。ただし、業種によっては長時間の待機時間が存在する業種(タクシー業等)があり、最低賃金法の見直しを含めて検討が必要です。言い換えると、労働時間と判断されている待機時間等のすべてについて、通常の最低賃金の適用を受けてしまうと、使用者に対し著しいコスト増を強いる現状があります。実際上は、労働時間と休憩時間の中間の位置付けの拘束時間が存在し、その全てに通常の最低賃金を適用することの方がむしろ不合理だと思料する次第です。もちろん、待機時間等をすべて無給とすることは出来ません。

  また、労働契約法第20条・パートタイム労働法の規定の双方とも、同一労働・同一待遇の義務付けを行っているとは言えない点にも留意すべきかと思います。つまり、非正規労働者であっていわゆる正規労働者と同一の業務に従事していたり、同一の責任を有していると判断できる場合(正規労働者と同一視できる場合)でも、その非正規労働者が使用者に対し「正社員に転換を請求できる権利」を有している訳ではありません。

 ※労働契約法第19条は、継続5年超の有期労働契約労働者の無期労働契約への転換請求権を定めているに過ぎません。

 

通達の内容確認(平成26年通達)

・通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(法第9条関係)
(1) 短時間労働者の職務の内容や人材活用の仕組み、運用等といった就業の実態が通常の労働者と同様であるにもかかわらず賃金などの取扱いが異なるなど、短時間労働者の待遇は就業の実態に見合った公正なものとなっていない場合がある。就業の実態が通常の労働者と同じ短時間労働者については、すべての待遇について通常の労働者と同じ取扱いがなされるべきであり、法第9条において、そのような場合の差別的取扱いの禁止を規定したものであること。
(2) 法第9条は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならないものとしたものであること。
(3) 法第9条の判断に当たっては、具体的には、以下のイ及びロの事項について、(4)から(9)により行うこととなること。
イ  職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること。
ロ  人材活用の仕組み、運用等が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること。
(4) (3)イの「職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること」とは、その業務の内容や当該業務に伴う責任の程度が同一であるかを判断することとなる。その判断に当たっては、第1の3の(2)ロに従い行うものであること。
(5) (3)ロの「人材活用の仕組み、運用等が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であること」とは、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものであることであり、職務の内容や配置が将来にわたって通常の労働者と同じように変化するかについて判断することとなるものであること。これは、我が国における雇用管理が長期的な人材育成を前提になされていることが多い現状にかんがみ、差別的取扱いの禁止の規定の適用に当たっては、ある一時点において短時間労働者と通常の労働者が従事する職務が同じかどうかだけでなく、長期的な人材活用の仕組み、運用等についてもその同一性を判断する必要があるためであること。具体的には、第1の3(2)ハで示したとおり同一であるかどうかを判断するものであること。
(6) 「当該事業所における慣行」とは、当該事業所において繰り返し行われることによって定着している人事異動等の態様を指すものであり、「その他の事情」とは、例えば人事規程等により明文化されたものや当該企業において、当該事業所以外に複数事業所がある場合の他の事業所における慣行等が含まれるものであること。
 なお、ここでいう「その他の事情」とは、人材活用の仕組み、運用等を判断するに当たって、当該事業所における「慣行」と同じと考えられるべきものを指すものであり、短時間労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する考慮要素としての法第8条の「その他の事情」とは異なるものであること。
(7) 「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」とは、当該短時間労働者が通常の労働者と職務の内容が同一となり、かつ、人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と同一となってから雇用関係が終了するまでの間であること。すなわち、事業所に雇い入れられた後、上記要件を満たすまでの間に通常の労働者と職務の内容が異なり、また、人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と異なっていた期間があっても、その期間まで「全期間」に含めるものではなく、同一となった時点から将来に向かって判断するものであること。
(8) 「見込まれる」とは、将来の見込みも含めて判断されるものであること。したがって、期間の定めのある労働契約を締結している者の場合にあっては、労働契約が更新されることが未定の段階であっても、更新をした場合にはどのような扱いがされるかということを含めて判断されるものであること。
(9) 法第9条の要件を満たした場合については、事業主は短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等労働時間以外のすべての待遇について差別的取扱いをしてはならないものであること。
 この場合、待遇の取扱いが同じであっても、個々の労働者について査定や業績評価等を行うに当たり、意欲、能力、経験、成果等を勘案することにより個々の労働者の賃金水準が異なることは、通常の労働者間であっても生じうることであって問題とはならないが、当然、当該査定や業績評価は客観的に行われるべきであること。また、労働時間が短いことに比例した取扱いの差異として、査定や業績評価が同じである場合であっても賃金が時間比例分少ないといった合理的な差異は許容されることは、言うまでもないこと。
 なお、経営上の理由により解雇を行う場合には、解雇対象の選定が妥当である必要があるが、通常の労働者と同視すべき短時間労働者については、労働時間が短いことのみをもって通常の労働者より先に解雇する場合には、解雇対象者の選定基準の設定において差別的取扱いがなされていることとなり、法第9条違反となるものであること。
 
裁判例による短時間労働者に該当しているか否かの判断例
法第8条で参考にした裁判例の判決理由から、短時間労働者と同一視できる場合の判断例を確認します。
1. 平成18年(ワ)3346 京都地裁判決 判決文抜粋
 一般職員については事実上,教員免許,社会教育主事等の資格を有している者を採用していること,一般職員は職務ローテーション(終身雇用を前提とする職場においては,オンザジョブトレーニング[OJT]によって組織全体の職務を把握しながら管理職員として処遇されていくために,職務ローテーションを伴うことが多い。)を実施しており,異なった業務に就くことがあること,被告に対する苦情対応については,嘱託職員が行うのではなく,一般職員が引き継ぎを受けた事後の責任ある処理をすることとされているなど責任の度合いが異なること,一般職員には自らのスキルアップのために一旦退職をして大学等で学んだ後に必ず再雇用するといった保障があるわけではないこと,これに対して,原告の勤務内容は相談員としての相談業務及びこれに関連する業務を中心とするものであり,雇用期間を1年間とする契約を締結し同旨の契約を更新していたのであって,職務ローテーションの対象とはなっておらず,また,本件雇用期間前ではあるが,原告は研究のため一旦退職するなどしていることが認められる。
 このような事実を考慮すると,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当するとまでは認め難く,原告に形式的に一般職員の給与表を適用して賃金水準の格差ないし適否を論ずることは適切なものとはいえない。
 
2. 平成24年(ワ)557 大分地裁判決 判決文抜粋(通常の労働者と同一視の判断)
 
転勤,役職への任命等の点における正社員と準社員の差の有無について
 
ア 転勤,役職への任命等
(ア) 転勤・出向
a 正社員就業規則40条1項は「会社は,業務のつごうにより社員に就業の場所または従事する業務の変更を命ずることがある。」と定め,同条2項は「前項の場合,本人の意志を努めて考慮するが,正当な理由がないときはこれを拒むことができない。」と定めている。また,正社員就業規則47条1項は「会社は,業務のつごうにより社員を関連会社に出向させることがある。」と定め,同条2項は「前項の場合,本人の意志を努めて考慮するが,正当な理由がないときは,これを拒むことができない。」と定めている。正社員就業規則3条によれば,正社員就業規則のうち準社員に適用されるのは,第5章(安全および衛生),第6章(災害補償)のみであり,上記の40条,47条が規定されている第4章(人事)は準社員には適用されず,正社員に適用される。
他方,準社員就業規則38条は「会社は,準社員に転居を必要とする就業場所の変更を命ずることはない。」と定め,準社員就業規則39条は「会社は,準社員に転居を必要とする関係会社等への出向を命じることはない。」と定める。
b 正社員ドライバーの転勤・出向の実績は,別紙5のとおりであった。これによれば,全国で,管外転勤は,平成18年2名,平成19年3名,平成20年3名,平成22年2名であり,いずれも九州管外における異動であった。他社出向は,平成21年に5名あった他はなかった。そして,九州管内の異動は,平成10年8名,平成11年11名,平成12年14名,平成13年9名で,これらの理由は,いずれもドライバー余剰のためであり,平成14年以降,九州管内では転勤・出向はなかった。なお,上記の別紙5の記載以外には,北海道で平成24年10月1日付けの転勤(同年9月26日通知)があり,関東支店管内で,出向先から戻る同年2月1日付け(同年1月31日通知),及び同年5月1日付け(同年4月27日通知)の異動があった。別紙1に示された正社員ドライバーの総数と比べると,転勤,出向をした者の数は少なかったものと認められる。
 他方,準社員には,転勤・出向した者はいなかった
(イ) チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者への任命
a 被告において,グループ長は,5ないし7名の運転手からなるグループの責任者であり,チーフは,複数のグループ長を監督する立場にある。
 運行管理者は,貨物自動車運送事業法に基づき,一般貨物自動車運送事業者が,事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため,選任を義務づけられているものであり,運行管理者の選任,解任は,国土交通大臣に届け出なければならないとされている(貨物自動車運送事業法18条)。
 運行管理補助者は,運行管理者の履行補助者であり,点呼に関する業務の一部などを行うことができるが,選任,解任について監督官庁への届出は必要ない。
b (a) 被告の準社員賃金規程には,準社員がチーフ,グループ長になった場合の職務手当,準社員が運行管理者,整備管理者,毒物・劇物取扱主任者,自動車整備主任者等の法規管理者になった場合の法規管理者手当を定めた規定があったが,平成24年7月1日の準社員賃金規程の変更の際に削除された
(b) 被告においては,平成20年4月1日以前は,準社員の労働条件を定めた準社員就業規則,準社員賃金規程は,各支店で独自に定めて運用管理しており,労働時間や賃金の計算方法等が支店や事業所により異なっていた。そして,1日の所定労働時間が7時間の準社員がおり,準社員がチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理補助者(運行管理代務者)に任命されていることもあった。
(c) 平成20年4月1日,準社員就業規則,準社員賃金規程,それらの運用管理を規定上全国統一基準としたが,準社員の就業状況等を考慮し,1日の所定労働時間については当面7時間と8時間を併用するが順次8時間に統一すること,準社員がチーフ,グループ長や運行管理者となっている場合は速やかに解任することとした。その後,多くの支店・事業所では,全国統一基準による運用管理がされたが,一部の支店・営業所では,1日の所定労働時間が7時間の準社員がおり,準社員がチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理補助者を務めていた。
(d) チーフ,グループ長に任命されているドライバーは全国で410名余りいるが,平成24年3月の時点で,準社員のチーフは1名,グループ長は4名存在した。この準社員のチーフは,四日市事業所で定年前からチーフに任命されており,平成18年10月の定年後,シニア社員として再雇用され,平成21年10月,準社員として再雇用されたものであり,平成24年6月末にチーフを解任された。また,上記グループ長4名は,隠岐事業所1名,福岡事業所2名,鹿児島事業所1名であったが,平成24年7月1日付けでいずれも正社員に登用された。平成24年3月の時点で,運行管理者に任命されていた準社員はおらず,運行管理補助者に任命されていた準社員は大分事業所に3名存在したが,これらの者は,同年4月7日,同年5月28日,同年6月18日に解任された。平成24年7月1
日に準社員就業規則,準社員賃金規程の変更を行い,準社員の1日の所定労働時間を8時間に統一し,全国統一基準の実施を徹底した。
 なお,Eは,その証人尋問において,準社員は運行管理者になれない旨証言するが,被告の準社員賃金規程には,準社員が運行管理者,整備管理者,毒物・劇物取扱主任者,自動車整備主任者等の法規管理者になった場合の法規管理者手当を定めた規定があったことからすると,従前は,準社員が運行管理者を務める場合があったものと推認される。)
 

イ  転勤等,役職への任命等に関する差の有無

(ア) 就業規則上,転勤・出向は,正社員にはあるが,準社員にはなく,実際にも,正社員には転勤・出向の実績はあるが,準社員には,転勤・出向した者がなかった。しかし,正社員の転勤自体,少なく,九州管内では,平成14年以降,転勤・出向はなかった。被告の準社員賃金規程には,平成24年7月1日の準社員賃金規程の変更の際に削除されるまで,準社員がチーフ,グループ長になった場合の職務手当を定めた規定があった。平成20年3月31日までは,準社員をチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理補助者に任命することが行われており,同年4月1日以降,準社員について,チーフ,グループ長や運行管理者から解任することとされたが,依然として準社員がチーフ,グループ長や運行管理者に任命されている例があった。平成24年3月の時点で,運行管理者に任命されていた準社員はいなかったが,運行管理補助者に任命されていた準社員は大分事業所に3名存在した。運行管理補助者は,運行管理者の履行補助者ではあるが,点呼の一部を行うことができるなど,事業用自動車の運行の安全の確保に関して重要な業務を担当しているものということができる。
 そうすると,正社員と準社員との間には,転勤・出向の点において,大きな差があったとは認められない。また,正社員と準社員は,チーフ,ループ長,運行管理者,運行管理補助者等への任命の点において,平成20年3月31日までは差はなく,同日の後,準社員のチーフ,グループ長や運行管理者は減少したが,平成24年3月の時点で,運行管理補助者に任命されていた準社員は大分事業所に3名存在したから,チーフ,ループ長,運行管理者,運行管理補助者への任命の有無によって,正社員と準社員の間で,配置の変更の範囲が大きく異なっていたとまではいえない。
(イ) なお,被告は,準社員ドライバーは,正社員ドライバーと異なり,新規業務,事故トラブルへの対応など,緊急の対処が必要な業務,対外的な交渉が必要な業務には従事しないと主張し、その旨証言する。しかし,これらの業務は,その性質に照らすと,営業や庶務を主に担当する支店や事業所の事務職の職責に属するものと解され,正社員ドライバーがそれに関与することがあるとしても,ドライバーという職務上の地位に鑑みれば,責任者を補助する立場で関与するにとどまると解される。また,これらの職務を行うドライバーは,経験が長く交渉等の能力のある者であり,正社員の中でもそのような職務に就く者は少なく,ドライバーがそのような業務に関与する頻度も明らかでないことからすると,仮に,ドライバーのうちでそのような業務にかかわる者が正社員のみであったとしても,それをもって,正社員ドライバーと準社員ドライバーの職務内容の相違点として重視することはできない
 
期間の定めのない労働契約の終了との同一性,更新の合理的期待について
 
(1) 原被告間の労働契約は,期間の定めのある有期労働契約であったが,平成18年4月1日以降,継続して更新されていた原告の業務は正社員の業務と同じであり,原告の労働時間,賃金は,前記第2,2(5)イのとおりであった。そして,準社員就業規則には,準社員の労働契約を更新する際に面談すべきことが記載されていたが,原告の労働契約の更新に際して必ず面接が行われていたとは認められず,また,準社員の労働契約の契約書に,契約更新の有無について考慮すべき事由が記載されており,仮に何らかの形により面接が行われたとしても,労働期間の制限があることについて従業員の理解を得られるような説明をしていたとは認められない。また,準社員の有期労働契約についての更新拒絶の件数は,少なかった。そして,正社員と準社員との間には,転勤・出向の点において,大きな差があったとは認められず,チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者への任命の有無によって,正社員と準社員の間で,配置の変更の範囲が大きく異なっていたとまではいえない。さらに,準社員ドライバーが,正社員ドライバーと異なり,緊急の対処が必要な業務,対外的な交渉が必要な業務に従事しないことは,正社員ドライバーと準社員ドライバーの職務内容の相違点として重視することはできず,正社員ドライバーの中には,事務職に職系転換して主任,事業所長又は課長に任命された者があるのに対し,準社員に,そのように事務職に職系転換した者はいないとしても,この点をもって,正社員ドライバーの配置の範囲が準社員ドライバーと異なるとはいえない
(2) 前記(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の有期労働契約は,過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時にその有期労働契約を更新しないことによりその有期労働契約
を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることによりその期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められ(労働契約法19条1号),仮にそうでなくとも,原告において,その有期労働契約の契約期間の満了後にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる(労働契約法19条2号)。
 
結論「通常の労働者と同視すべき短時間労働者への該当性」
 
 前記2(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の労働契約は,反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約(パート
タイム労働法8条2項)に該当するものと認められる。そして,原告は,「事業の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって,当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)」(パートタイム労働法8条1項)に該当したものと認められる
 
同一性判断のまとめ
 平成24年(ワ)557大分地裁判決においては、正社員及び準社員についての就業規則の関連規定、さらに正社員及び準社員の就業の実態を細かく比較分析し、「通常の労働者と短時間労働者との同一性の判断」を行っています。
 個人的な印象では、同一視の判断はかなりハードルが高いと感じました。今後、期間の定めがない短時間労働者が増加することを踏まえ、パートタイム労働法第9条違反の裁判が増加することが見込まれます。
 
 
以上でパートタイム労働法第9条を終了します。
 
 
パート労働法
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パートタイム労働法第8条

2015年05月24日 14:38

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第8条(短時間労働者の待遇の原則)

 事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

通達による確認(平成26年通達)

・短時間労働者の待遇の原則(法第8条関係)
(1) 平成19年の法改正により、短時間労働者と通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図るため、通常の労働者と就業の実態が同じ短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止が規定されるとともに、就労の実態が一定の類型に該当する短時間労働者ごとに、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して、事業主がどのような措置を講ずべきかを示す規定が整備された。しかしながら、短時間労働者の働き方が一層多様化してきている中で、依然として、その待遇が必ずしも働き・貢献に見合ったものとなっていない場合もあること、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)により、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」の規定(労働契約法(平成19年法律第128号)第20条)が新たに設けられたこと等を踏まえ、労働契約法第20条の規定にならい、法第8条において、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方として、すべての短時間労働者を対象とする短時間労働者の待遇の原則を規定したものであること。
(2) 法第8条は、事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないという短時間労働者の待遇の原則を明らかにしたものであること。
 したがって、短時間労働者と通常の労働者との間で待遇の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、当該待遇の相違が法第8条に列挙されている要素を考慮して、不合理と認められるかどうかが判断されるものであること。
 また、法第8条の不合理性の判断の対象となるのは、待遇の「相違」であり、この待遇の相違は、「短時間労働者であることを理由とする待遇の相違」であるが、法は短時間労働者について通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ろうとするものであり、法第8条の不合理性の判断の対象となる待遇の相違は、「短時間労働者であることを理由とする」待遇の相違であることが自明であることから、その旨が条文上は明記されていないことに留意すること。
(3) 短時間労働者と通常の労働者との「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同の判断は、第1の3の(2)ロ及びハに従い行うものであること。
 また、「その他の事情」については、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。
(4) 「待遇」には、すべての賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等労働時間以外の全ての待遇が含まれること。
(5) 法第8条の不合理性の判断は、短時間労働者と通常の労働者との間の待遇の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の待遇ごとに判断されるものであること。
(6) 法第8条は、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方を明らかにしたものであることから、法第18条に基づく事業主に対する報告の徴収並びに助言、指導及び勧告は、事業主が講ずべき措置を個々具体的に規定している法第9条から第12条までの規定について行い、直接法第8条について行うものではないこと。
 しかしながら、事業主は、法第8条で明らかにされた考え方を念頭に、短時間労働者の雇用管理の改善を図ることが期待されること。
(7) 本条は、労働契約法第20条にならった規定であること。労働契約法第20条については、平成24年8月10日付け基発第0810第2号「労働契約法の施行について」において「法第20条は民事的効力のある規定であること。法第20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、法第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、期間の定めのない労働契約(以下「無期契約」という。)を締結している労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。」とされていること。
(8) また、同通達において、労働契約法第20条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、「有期契約労働者が労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける事実を主張立証し、他方で使用者が当該労働条件が期間の定めを理由とする合理的なものであることを基礎づける事実の主張立証を行うという形でなされ、同条の司法上の判断は、有期契約労働者及び使用者双方が主張立証を尽くした結果が総体としてなされるものであり、立証の負担が有期契約労働者側に一方的に負わされることにはならないと解されるものであること」とされていること。
 
パートタイム労働法(以下「本法」)第8条の分解分析
 ① 差別待遇の合理性
  通常の労働者と短時間労働者の間の待遇の相違は、不合理と認められるものであってはならない
  ※不合理の指摘は、労働者側が行い、不合理に該当しない立証は使用者側が行うと想定される
 ② 通常の労働者と短時間労働者の区分
  通常の労働者と短時間労働者の区分けは、本法第2条の規定により判断されること
 ③ 待遇の相違の合理性判断の前提
  ア 当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をそれぞれ判断する
  イ 次に、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮する
  ウ ア及びイを判断した後、通常の労働者と短時間労働者間の待遇の相違の合理性の判断を行う
   従って、短時間労働者の労働条件が通常の労働者と異なる場合でも、直ちに不法行為となるわけではないこと
 
裁判例の考察
ア 平成18年(ワ)3346 京都地裁判決 判決文抜粋
・判示事項の要旨:嘱託職員に対して一般職員より低い賃金処遇をしたことが違法ではないとされた事案

・判決の理由抜粋:このような非正規雇用者の賃金について,一定の法律上の枠組みが設定されたのは短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年12月1日施行)が初めてであり,同法においては,「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短期時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし,もってその福祉の増進を図り,あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とすることを定め(1条),賃金等の待遇に関しては,「事業主は,業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事務所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって,当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれる者(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については,短時間雇用者であることを理由として,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,差別的取扱いをしてはならない」と規定し(8条),通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当しない短時間労働者については,通常の労働者との均衡を考慮して,その雇用する短時間労働者の職務の内容,職務の成果,意欲,能力又は経験等を勘案し,その賃金を決定するように務めるものとすることが規定された(9条)にすぎず,これらの定めにより通常の労働者と同視すべき短時間労働者については同一価値労働同一賃金の原則を貫徹するような規定が置かれたもののそこまでの事情が認められないパートタイマーについては努力義務規定が置かれたにすぎないことは明らかである

 また,近時制定された労働契約法においても,その3条2項で均衡処遇の原則(労働契約は,労働者及び使用者が,就業の実態に応じて,均衡を考慮しつつ締結し,又は,変更すべきものとする。)と規定されているにすぎず,同一価値労働同一賃金の原則の採用を正面から義務付けるような規定は置かれていない
 そして,低賃金を余儀なくされているパートタイマーへの対策として制定された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の規定内容及びその後制定された労働契約法の内容にかんがみると,これらの法律の施行後においても,いまだ労働基準法4条にILO100号条約等の条約の内容をそのまま反映させるような解釈をすることは困難である。
 しかしながら,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条,10条の趣旨を,私人間の雇用関係を律するにあたって参酌することは許されるものと解される。そして,本件全証拠によるも,現時点の日本において,特定の労働がいかなる価値を有するかを評価する基準が確立し,それに対していかなる水準の賃金が支払われるべきかの判断基準が確立しているとはいえないこのことは,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律及び労働契約法が同一価値労働に対して同一賃金の支払をすべき旨の文言を用いず,均衡を考慮するとの文言を用いていることからも窺える。
 さらに,本件全証拠によっても,日本において成果主義賃金の原則が貫徹されているとまでは認められず,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に反するという事情がある場合を除けば,社会通念上年功的要素を考慮した賃金配分が行われることが違法視されているとまでいうことは困難である。
 以上によれば,憲法14条及び労働基準法4条の根底にある均等待遇の理念,上記各条約等が締約されている下での国際情勢及び日本において労働契約法等が制定されたことを考慮すると,(公序というか否かはともかく)証拠から短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に反していることないし同一価値労働であることが明らかに認められるのに,給与を含む待遇については使用者と労働者の交渉結果・業績等に左右される側面があること及び年功的要素を考慮した賃金配分方法が違法視されているとまではいい難いことなどを考慮してもなお,当該労働に対する賃金が相応の水準に達していないことが明らかであり,かつ,その差額を具体的に認定し得るような特段の事情がある場合には,当該賃金処遇は均衡処遇の原則に照らして不法行為を構成する余地があるというべきである
 
参考ILO100号:同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約

        日本の批准状況:1967年8月24日批准

概要:この条約は同一の価値の労働に対しては性別による区別を行うことなく同等の報酬を与えなければならないと決めたものである。条約は報酬について定義を下し、金銭であると現物であるとを問わず、直接または間接に使用者が労働者に対して支払う報酬で労働者の雇用から生ずるものを含む、とする。

報酬を同一労働に対して男女同等に支払う、という原則を確立する方法として、

  1. 国内法令、
  2. 法令によって設けられまたは認められた賃金決定制度、
  3. 使用者と労働者との間で締結された労働協約、
  4. これらの各手段の組み合わせ、を規定している。

 更に、行うべき労働を基礎とする職務の客観的評価がこの条約の規定を実施するのに役立つ場合にはこれを促進する措置をとることとする。   

※労働基準法第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

イ 平成24年(ワ)557 大分地裁判決 判決文抜粋

事案の要旨

 本件は,使用者である被告との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者である原告が,被告が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶したこと(以下,更新の申込みを拒絶したことを「更新拒絶」,それによって賃金を得られなかった期間を「更新拒絶期間」ということがある。)は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,被告は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされたと主張して(労働契約法19条),被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,1),更新拒絶期間中の月額賃金(前記第1,2),更新拒絶期間中の賞与(前記第1,3),更新拒絶による慰謝料(前記第1,4)を請求するとともに,被告が原告に対して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」という。)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して,同項に基づき,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認(前記第1,5),被告の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,6),同項に違反する差別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している(前記第1,7ないし10)事案である。なお,原告は,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求(前記第1,5)の理由として,準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束が被告との間で成立したことも主張しており,また,パートタイム労働法8条1項の要件を充足する場合には,期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条も充足すると主張する。

 
判決の理由抜粋
 前記2(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の労働契約は,反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約(パートタイム労働法8条2項)に該当するものと認められる。そして,原告は,「事業の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって,当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)」(パートタイム労働法8条1項)に該当したものと認められる。
 前記(2)のとおり,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当すると認められ,年間賞与額について正社員と準社員に40万円を超える差を設けることについて合理的な理由があるとは認められず,このような差別的取扱いは,短時間労働者であることを理由として行われているものと認められる。
 正社員,準社員のいずれについても,休日は,就業規則により,日曜日,年末年始(12月31日ないし1月3日),国民の祝日,週休日とされている(乙10の14条,乙11の11条)。しかし,週休日の日数が,平成23年7月1日から平成24年6月30日までにおいて,正社員は39日であるのに対し,準社員は6日であり,30日を超える差がある(乙10の14条,乙11の11条)。この差の日数について,準社員が勤務した場合は通常の賃金しか得られないのに対し,正社員が勤務すれば時間外の割増賃金を得ることができるから,この点において,準社員は,賃金の決定について,正社員と比較して差別的取扱いを受けているものと認められる。
 しかし,上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上,パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり,同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから,上記の地位確認の請求はいずれも理由がないものと解される。
 なお,原告は,平成24年7月1日から,変更後の準社員就業規則,準社員賃金規程の適用を受け,1日の所定労働時間が正社員と同じ8時間となり,1年の勤務日数も正社員と同じ258日となったから(前記5(2)),パートタイム労働法2条の短時間労働者に該当しなくなったものと認められ,平成24年7月1日以降については,同法8条1項の適用の前提を欠くことになり,この点からも,同項に基づく地位確認の請求はできない。
 したがって,原告の上記地位確認の請求は,いずれも理由がない。
 
 パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ,原告は,被告に対し,その損害賠償を請求することができる。

 被告は,パートタイム労働法8条1項に違反したことによって不法行為が成立するとすれば,その損害は,通常の労働者の賃金と短時間労働者の賃金の差額であるとした上で,賃金請求権の消滅時効期間は2年であるから,パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効も2年と解すべきであると主張する(前記第3,7(1))。しかし,パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害の額が賃金の差額と同額となるとしても,不法行為に基づく賠償請求権の消滅時効は,民法724条により3年と解すべきであり,被告の上記主張は,採用することができない。

事実認定

① 会社の概要

 被告は,石油製品,同副製品その他の保管及び搬出入作業,貨物自動車運送事業,貨物利用運送事業等を目的とする株式会社である(当事者間に争いがない。)。被告の従業員は,就業規則等により,期間の定めのない労働契約を締結した正社員,期間の定めのある労働契約を締結した準社員,冬期需要増に対する業務遂行のために採用された,期間の定めのある労働契約を締結した期間社員などに分類されている

② 原告労働者

 原告は,平成16年10月15日,被告との間で,同日から平成17年4月14日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇用された。

 原告は,被告との間で,平成17年10月1日から平成18年3月31日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇用された(当事者間に争いがない。)。

 原告は,被告との間で,平成18年4月1日,同日から平成19年3月31日までの1年間を期間とする労働契約を締結し,準社員として被告に雇用され,以後,原告と被告はこの契約を更新し,平成24年4月1日には,同日から平成25年3月31日までの1年間を期間とする労働契約に更新した(当事者間に争いがない。)。
 
 期間社員,準社員であった原告の職務は,貨物自動車の運転手として,タンクローリーによる危険物等の配送及び付帯事業に従事することであり,正社員の職務と同じであった(当事者間に争いがない。なお,後記第3,5(2)のとおり,被告は,転勤等,役職への任命等の点において,準社員は正社員と異なると主張する。)。
 
 ③ 紛争調停、労働審判
 原告は,平成23年11月7日,前記アの紛争についてパートタイム労働法22条に基づいて調停の申請を行い,大分紛争調整委員会は,平成24年1月24日,被告に対し,調停案受諾の勧告をしたが(甲8),被告はこれを受諾しなかった。
 原告は,平成24年5月1日,当庁に労働審判を申し立て,同年8月2日,労働審判が行われ,被告は,同月9日,異議を申し立てた(当裁判所に顕著な事実)。
 
 ➃ 雇い止め
 被告は,平成25年3月23日,原告に対し,同月31日をもって労働契約を終了し,労働契約の更新をしないことを通知した。その通知書には,労働契約の更新をしない理由として,原告が本件訴訟において様々な点において事実と異なることを主張していること,本件訴訟と無関係の第三者である被告の従業員を多数本件訴訟に巻き込んでいることが記載されていた。
 
 原告は,平成25年3月25日,労働契約の更新をしないとの通知の撤回を求めたが,被告は,同日,原告に対し,撤回の意思はない旨回答した。
 
二つの裁判例から読み取れる本法第8条の要旨まとめ
 

一審判決ではありますが、パートタイム労働法の解釈について参考にできる判断がいくつかあります。

ア パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり,同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解される

イ 労働契約法においても,同一価値労働同一賃金の原則の採用を正面から義務付けるような規定は置かれていない

ウ 現時点の日本において,特定の労働がいかなる価値を有するかを評価する基準が確立し,それに対していかなる水準の賃金が支払われるべきかの判断基準が確立しているとはいえない

エ 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については同一価値労働同一賃金の原則を貫徹するような規定が置かれたもののこまでの事情が認められないパートタイマーについては努力義務規定が置かれたにすぎないことは明らかである

オ パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ,原告は,被告に対し,その損害賠償を請求することができる。


 

以上でパートタイム労働法第8条を終了します。

 

パート労働法第8条

 

 

 


 

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パートタイム労働法第7条

2015年05月24日 12:35

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第7条(就業規則作成の手続)

 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。

通達による確認(平成26年通達)

就業規則の作成の手続(法第7条関係)

(1) 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法第89条の定めるところにより、就業規則を作成する義務があるが、その作成又は変更に当たっては、同法第90条において、使用者は事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等の意見を聴かなければならないこととされている。短時間労働者に適用される就業規則についてもこの手続がとられなければならないことはもちろんであるが、短時間労働者に適用される就業規則の作成又は変更に当たっては、これに加えて、就業規則の適用を受ける短時間労働者の意見が反映されることが望ましいため、事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとしたものであること。
(2) 「短時間労働者の過半数を代表すると認められるもの」は、事業所の短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は短時間労働者の過半数を代表する者が考えられること。
この場合の過半数代表者の適格性としては、次のいずれにも該当するものとするものであること。
イ  労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
ロ  就業規則の作成又は変更に係る意見を事業主から聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
(3) (2)ロの選出方法については、①その者が短時間労働者の過半数を代表することの適否について判断する機会が当該事業所の短時間労働者に与えられており、すなわち、使用者の指名などその意向に沿って選出するようなものであってはならず、かつ、②当該事業所の過半数の短時間労働者がその者を支持していると認められる民主的な手続がとられていること、すなわち、短時間労働者の投票、挙手等の方法により選出されること等が考えられること。
なお、法は意見の聴取を要請するものであって、就業規則を労働基準監督署に届け出る際に意見書の添付を義務付けるものではないこと。
 
労働契約法の復習より再掲
 

① 労働基準法第89条の確認

労働基準法第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

一 始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 ここで、上記の第1号から第3号までは、就業規則を作成する場合に必ず記載しなければならない事項(いわゆる絶対的記載事項)であり、第3号の2から第9号までは、定めをする場合に限り記載する事項(相対的記載事項)となっています。また、一部の労働者ごとに適用条件が異なる場合には、その労働条件が異なる労働者ごとに規定を変えて記載するか、労働条件が異なる労働者ごとに別規程として定める必要があります。この場合、例えば正社員用の就業規則のみ作成・届出を行っており、パート労働者の労働条件は個別の労働契約で定めていた場合には、パート労働者にも正社員の労働条件(就業規則による有利な労働条件)が適用されることが起こります。このことは、労働契約法第7条のところで既に確認しました。また、常時10人以上の労働者を使用する事業場の定義についても既に記述していますが、「一時的に10人を下回っても、通年で10人以上の事業場のこと」であり、この場合には、アルバイト等の臨時労働者や事業場の責任者等の管理監督者もこの人数に加算します。」

 

② 就業規則に記載する事項の号別確認

ア 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項

 始業・終業時刻とは、所定労働時間の開始時刻と終了時刻を定めるということですが、「毎月定める勤務表による」等の定めをすることも可能です。特に、早番、中番、遅番、準夜勤、夜勤等々の勤務シフトにより24時間体制で交替勤務する事業場(病院の看護師等)では、個人ごとに、また特定日ごとに将来の勤務内容が特定されていればよい訳です。また、勤務が日付をまたぐ様な場合には、始業時刻の属する日の一の勤務として取り扱われます。

 休憩時間については、少なくとも労働基準法第34条の実働6時間以上で45分以上、8時間を超える実働で60分以上の規定を設ける必要があります。この休憩は、例えば12:00から12:45を休憩時間とする等の規定が好ましいですが、就労時間中に交替で45分の休憩を与える等の規定でも差し支えありません。また、休憩は勤務時間の途中であれば、分割して与えることも可能ですから、その様な規定もできます。

 休日は、労働基準法第35条により、「毎週1日以上若しくは4週4日以上の休日」を与える旨の規定が必要です。ここで、週とは就業規則に起算曜日を定める場合(毎週月曜から日曜日等)にはその規定に従い、特段の定めをしない場合には、暦週(毎週日曜日から土曜日)をもって1週間とします。また、4週4日以上の休日の定めをする場合にも、その起算日を特定する必要があります。さらに、休日は、土曜日・日曜日・祝祭日とは無関係であり、就業規則で定められる特定日がその事業場の休日となります。

 蛇足ですが、休日とは「労務の提供義務が免除される日」のことです。また、休日とは原則暦日(午前零時から午後24時までの24時間)のことであり、一部の例外を除いて単なる24時間は、休日として取り扱われません。夜勤明けの日などの取り扱いの際に留意が必要です。

 休暇は、労働基準法に規定される、年次有給休暇(労働基準法第39条)や産前産後の休暇(労働基準法第64条第1項)、育児介護休業等の法令の定めによる休暇を含め、忌引きや結婚休暇等の会社独自の慶弔休暇等、事業場の労働者に適用するすべての休暇を定める必要があります。ところで、休暇を有給にするか無給にするかについては、年次有給休暇等の法令に定めがある場合を除き、就業規則に定める規定内容によります。もちろん、従来有給としていた生理休暇を無給とする旨の規定変更を行えば、不利益変更に該当しますので留意が必要です。

 休暇とは、本来労働日である日について、労働者の請求等により労働義務を免除する日のことです。したがって、年次有給休暇を休日に取得することは出来ない訳ですが、この点を誤解している場合もまれに見受けられます。

 就業時転換に関する事項とは、工場などで24時間操業を行う際に、業務に支障が起きないように、手順・引継ぎ等について、定めをするものです。

イ 臨時の賃金を除く賃金の決定、計算、支払いの方法、賃金の締め切り、支払いの方法

 賃金の支払いについては、労働基準法第24条、第25条、第26条、第28条等に規定があります。ここでは、同法第24条を見てみます。

労働基準法第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を決めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。 

a 臨時の賃金とは何か?

 労働基準法施行規則第8条 法第24条第2項但し書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。

一 一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当

二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

三 一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

b 賃金の決定、計算、支払いの方法

 賃金の決定・計算方法は、時給、日給、週給、月給、年俸、歩合等様々あります。いずれの方法をとっても、1時間当たりの賃金単価が最低賃金を下回る定めをすることはできませんし、実際の支払額が最低賃金を下回ってもいけません。賃金の計算方法は、時間外労働分や深夜労働分及び休日出勤分の割り増し賃金、その他法令の規定を最低基準として定める必要があります。年次有給休暇を取得した際の賃金等、賃金の支払いが生じるすべての場合をもれなく規定します。また、賃金の支払いの方法は、原則、通貨で直接労働者にその全額を手渡しで支払う必要があります。しかし、現在は労働者の指定する労働者本人名義の口座に振り込む方法で支払う方法が一般的です。賃金の支払を振込み等の方法で行うことは、労働基準法施行規則第7条の2に規定がありますが、労働者の同意が前提となっています。ところで、賃金を支払う際に、振り込み手数料を控除したり、制服代金、昼食代金その他の費用を当然に賃金から控除することは出来ません。労働基準法第24条に規定する労使協定の締結によって可能となります。この協定は、監督署への届出義務がありませんが労働基準法第106条の規定により労働者に周知することが必要ですし、きちんと保管する義務(同法109条)があります。

 この項目では、家族手当、通勤手当等の支払いをする場合にも規定が必要です。

 ところで、労働基準法第24条但し書の労使協定を締結すれば、制限なく賃金控除が出来る訳ではありません。現物給付の脱法措置としての賃金控除(製品等の労働者への販売代金控除)や一賃金支払い時期の賃金額の75%以上の額の控除はできない(民法第510条及び民事執行法第52条)こととなっています。

c 賃金の締切り、支払いの時期、昇給に関する事項

 賃金の締切りは、労働基準法第24条第2項の毎月払いの規定により、毎週土曜日、毎月20日等少なくとも1ヶ月以内の期間内で定める必要があります。また、支払いの時期についても、締切り時期と関連して、毎月1回以上の特定の日を定める必要があります。この支払い日については、例えば「毎月第3月曜日等」の規定による場合は、その月により支払日が変化するため、同法24条第2項の一定期日に該当しないとされています。一方、昇給に関する規定は、昇給期間、昇給額又は昇給額の決定方法、若しくは昇給なし等の規定をすることとなっています。

ウ 退職に関する事項

 退職に関する事項は、契約期間満了による退職、解雇する場合はその理由手続き、労働者の申請による合意退職の手続き等を定める必要があります。また、定年退職の場合、休職期間満了の場合、その他労働契約が終了する際の全てのケースを想定して規定しておく必要があります。

エ 退職手当の定めをする場合の適用労働者、退職金の額の決定・計算・支払いの時期

 退職金は、法律上当然に使用者に支払い義務があるものではありません。退職金規程等就業規則に定めをした場合にはじめて、それが労働契約の内容となり、使用者に支払い義務が生じます。退職金についても、過去に裁判で数多く争われていますので、退職金を支給する場合には、あいまいな点を排除した規定を設ける必要があります。

オ 臨時の賃金等及び最低賃金額の定め

 臨時の賃金とは、先の精勤手当等(労働基準法施行規則第8条)及び賞与の規定であり、これも退職金と同様に使用者に法令で支払いを義務付けていませんが、支払いをする場合には就業規則に規定する必要があります。他方、最低賃金額の定めはあまり一般的ではありません。

カ 食費、作業用品、その他の実費負担

 会社の制服は、貸し出しの場合と買取の場合がありますが、労働者に負担させる場合には、規定が必要です。ただし、一般に業務に付随して使用する備品、工具、消耗品、設備等については、全額使用者側で負担すべきものと思います。それらは、売り上げ原価に相当する部分ですし、使用者側に報償責任があり危険負担をすべき立場にあるからです。※生産工場等で、不良品を出した労働者に対して、その不良品分の原価分の賃金を控除する等は出来ない訳です。他方で、食事の提供までも使用者に義務付けがありませんから、労働者に会社の用意した食事代金の支払いを求めることは当然のことです。そこで、食事代金分の控除をする場合にも就業規則に規定が必要です。

キ 安全・衛生に関する規定

 危険な機械や特に衛生面で留意が必要な業務(弁当の製造など)は勿論、その他の事業についても作業面でのマニュアルを作成することが一般的です。施設管理、防災、その他の緊急事態、通常の作業時の安産管理等様々な規程類の作成が行われます。

ク 職業訓練に関する規定 

 労働安全衛生法では、雇い入れ時の教育や職長教育(同法第59条、第60条)を義務付けています。また、同法第60条の2には、総合的な安全衛生教育をするように定めています(努力義務)。定期的な職業訓練の実施と就業規則への規定が必要となります。

ケ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定め

 労働者災害保険法の災害補償の規定により、労働基準法の使用者の補償義務の免責については、すでに記述しました。ここでいう、災害補償に関する規定は、労災保険等の規定を上回る補償を定める場合や、休日等に怪我した際の治療費などの支給規定を指しています。

コ 表彰および制裁の定め(種類及び程度)

 表彰の定めは、使用者が労働者の際立った成績、功績、その他の特筆すべき点を処遇するもので、ルールとして決めておく場合には、就業規則に規定します。問題は、制裁の定めです。就業規則の懲戒規定においても刑法の法理が適用され、「罪刑法定主義」「不遡及の原則」「一事不再理」等の原則が重視されます。また、実際の運用に際しては、行為と処分の均衡や他者の類似の行為に対する処分との均衡等が求められます。

サ 労働者のすべてに適用される事項

 旅費に関する事項、休職に関する事項、社内預金規程、保養所の利用に関する規定等の労働者のすべてに関わる可能性がある規定も、本号により定めをすることとなっています。

 

③ 労働基準法第90条の確認

労働基準法第90条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

 

労基法第89条・第90条、パートタイム労働法第7条のまとめ


 労働基準法の規定による就業規則の内容及び作成手続は既に記述したとおりです。そこで、パートタイム労働法第7条の「短時間労働者の意見を聴く」とは、どのようなことか考えてみます。
 これは、通達に「就業規則の適用を受ける短時間労働者の意見が反映されることが望ましいため、事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとした」とあるように、本来の就業規則については、その就業規則の規定により短時間労働者の適用が除外されていない限り、その本来の就業規則の適用を当然受けるわけですが、正規労働者と短時間労働者等は労働条件が異なる部分が多いため、短時間労働者に適用される就業規則を別規程とするケースが多くみられます。その別規程の就業規則についても、届出の際に事業場全体の過半数組合又は事業場全体の労働者(正規労働者及び非正規労働者のすべて)の過半数代表者の意見書を添付する必要があります。そして、短時間労働者の就業規則の作成の場合であっても意見を求める者は、必ずしも短時間労働者加入の労働組合又は短時間労働者である過半数代表者であるとは限りません。
 従って、パートタイム労働法第7条において、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成・変更する場合においては、短時間労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように務めることとしています。

 なお、短時間労働者の過半数を代表する者とは、事業所の短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は短時間労働者の過半数を代表する者とされています。

※就業規則に関するより詳しい内容は、自著「労働基準法の研究」の第89条・第90条の項目をご参照ください。

労働基準法の研究:労働基準法の研究.doc (2,3 MB)

 

以上で、パートタイム労働法第7条を終了します。

 

パート労働法第7条

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パートタイム労働法第6条

2015年05月23日 15:38

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第6条(労働条件に関する文書の交付等)

  事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。

 2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する時効のうち特定事項及び労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように務めるものとする。

 パートタイム労働法施行規則

 則第2条(法第六条第一項の明示事項及び明示の方法)

   法第六条第一項の厚生労働省令で定める短時間労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。

一 昇給の有無

二 退職手当の有無

三 賞与の有無

四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

2 法第六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを当該短時間労働者が希望した場合における当該方法とする。

一 ファクシミリを利用してする送信の方法

二 電子メールの送信の方法(当該短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)

3 前項第一号の方法により行われた法第六条第一項に規定する特定事項(以下本項において「特定事項」という。)の明示は、当該短時間労働者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、前項第二号の方法により行われた特定事項の明示は、当該短時間労働者の使用に係る通信端末機器により受信した時に、それぞれ当該短時間労働者に到達したものとみなす。

 

通達による確認(平成26年)
 労働条件に関する文書の交付等(法第6条関係)
(1) 労働条件の明示については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条において、賃金、労働時間その他の労働条件について労働契約の締結に際し明示することが使用者に義務付けられているが、短時間労働者に対する労働条件は、通常の労働者とは別に、かつ、個々の事情に応じて多様に設定されることが多いことから、雇入れ後に疑義が生じやすくなっている。そのため、法第6条第1項においては、労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のもののうち、特に短時間労働者にとって重要な事項であるものを厚生労働省令で特定事項として定め、事業主が文書の交付等により明示しなければならないものとし、それ以外の事項は同条第2項において文書の交付等の努力義務を課したものであること。
 なお、法第6条第1項の文書の交付等の義務に違反した者に対して、都道府県労働局長による助言、指導、勧告を行っても履行されない場合には、公表の対象となるとともに、法第31条に基づき、10万円以下の過料に処するものとされていること。
(2) 「特定事項」とは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無及び相談窓口であること(則第2条第1項)。
(3) 「昇給」とは、一つの契約期間の中での賃金の増額を指すものであること。したがって、有期労働契約の契約更新時の賃金改定は、「昇給」に当たらないものであること。
 「退職手当」とは、①労使間において、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確になっていること、②その受給権は退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化する債権であること、の要件を満たすものであればよく、その支給形態が退職一時金であるか、退職年金であるかを問わないものであること。
 「賞与」とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうものであること。
 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」(以下「相談窓口」という。)とは、事業主が労働者からの苦情を含めた相談を受け付ける先をいうものであること。
 「昇給」等については、これらの要件に該当するものであれば、その名称は問わないものであること。
(4) 昇給及び賞与が業績等に基づき実施されない又は支給されない可能性がある場合や、退職手当が勤続年数に基づき支給されない可能性がある場合は、制度としては「有り」と明示しつつ、その旨が明示されるべきものであること。
(5) 「昇給」に係る文書の交付等に当たって、「賃金改定(増額):有」等「昇給」の有無が明らかである表示をしている場合には法第6条第1項の義務の履行といえるが、「賃金改定:有」と表示し、「賃金改定」が「昇給」のみであるか明らかでない場合等「昇給」の有無が明らかでない表示にとどまる場合には同項の義務の履行とはいえないこと。
(6) 「相談窓口」は法第16条に基づき相談のための体制として整備することとされているものであること。
(7) 「相談窓口」の明示の具体例としては、担当者の氏名、担当者の役職又は担当部署等が考えられること。
(8) 「文書の交付等」の「等」とは、ファクシミリを利用してする送信、電子メールの送信のいずれかの方法によることを当該短時間労働者が希望した場合における当該方法が含まれるものであること。ただし、電子メールの送信の方法による場合には、短時間労働者が当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができる場合に限られるものであること(則第2条第2項)。
 なお、これらの方法による場合を短時間労働者が希望した場合に限定したのは、これらの方法が文書の交付に比べて簡便な側面がある一方で、誤送信等のリスクも高いことによる。この「希望した場合」とは、短時間労働者が自ら事業主に対して申し出た場合のみでなく、事業主から電子メールの送信等による方法もあることを提示して、短時間労働者がそれを選択した場合も含まれるが、選択を強制することになってはならないものであること。
 また、「当該電子メールの記録を出力することによる書面を作成することができる」場合とは、短時間労働者が望めばプリンターに接続して書面を作成することが可能である場合を指すが、これは事業主が送信した労働条件の明示にかかる事項の全文が見えることが必要であり、その場合には、電子メールのソフト等を搭載したパソコンに限らず、電子メール機能を有する携帯電話等でも差し支えないものであること。さらに、チャットのように受信直後に内容が消えてしまうようなものは適当ではなく、電子メールのソフト等において保存が可能なものであることが必要であること。
(9) ファクシミリを利用してする送信の方法により行われた明示は、短時間労働者が使用するファクシミリ機器に受信された時に到達したものとみなされるものであること。また、電子メールの送信の方法により行われた明示は、短時間労働者が使用する通信端末機器に受信された時に到達したものとみなされるものであること(則第2条第3項)。この場合の「通信端末機器」には、前述のとおり、パソコンのほか、携帯電話等も含まれるが、POPサーバーや携帯電話会社のメールセンター等、事業主と短時間労働者の間で行われる電気通信の途中に介在する場所に到達しただけではこの要件を満たさないものであること。なお、ファクシミリ及び電子メールに係る通信端末機器は、短時間労働者が所有しているものに加え、短時間労働者以外の者が所有しているものも短時間労働者がその利用を希望している場合には含まれるものであること。
 なお、事業主はファクシミリを利用してする送信の方法又は電子メールの送信の方法により明示を行う場合には、短時間労働者との間で明示がなされたかどうか争いが起こることを避けるため、後日、短時間労働者に受信したかどうかを確認する、短時間労働者が電子メールを受信した後に電子メールを返信させる等によりその到達状況を確認しておくことが望ましいものであること。
(10) 法第6条第2項は、特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外の事項についても文書の交付等により明示するよう努めるものとしたものであること。
(11) 法第6条第2項により、明示するよう努めるべき事項のうち、主要なものとしては、以下のような事項が挙げられるものであること。
イ  昇給(特定事項を除く。)
ロ  退職手当(特定事項を除く。)、臨時に支払われる賃金、賞与(特定事項を除く。)、一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
ハ  所定労働日以外の日の労働の有無
ニ  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
ホ  安全及び衛生
へ  教育訓練
ト  休職
(12) 労働基準法第15条第1項に基づく明示については、「労働契約の締結に際し」て履行することが求められている一方、法第6条に基づく明示については、「短時間労働者を雇い入れたとき」が履行時点であるが、法第6条に基づく明示については、労働基準法第15条第1項に基づく明示の履行に併せて行うことによっても、履行したものとなること。また、法第6条に基づく明示事項が、労働基準法第15条第1項に基づく明示により、又は就業規則を交付することにより明らかにされている場合は、当該措置で足りるものであること。
(13) 短時間労働者の労働契約に期間の定めがある場合であって、その更新をするときについては、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度法第6条の明示が必要となるものであること。
 
労働契約法の復習
 労働契約法第4条 
 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

法令上の書面作成及び提示の義務又は要請

ア 職業安定法の規定

  職業安定法は、公共職業安定所(ハローワーク)の設置や有料・無料職業紹介事業、公共職業訓練、労働者を募集する者に関する規制、労働力の需給調整に関する事等を定めています。

 そこで、同法第5条の3に規定されている、労働条件の明示義務者は、「公共職業安定所」「職業紹介事業者」「労働者の募集を行う者(個人と法人)「求職者募集受託者」「労働者供給事業者(労働組合等)」とされています。また、明示する対象者は、「求職者」「募集に応じて労働者になろうとする者」「供給される労働者」となっています。※労働者供給事業は、同法で禁止されています(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。ただし、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けた場合には、無料の労働者供給事業を行えます。また、労働者派遣業も労働者供給事業の一つですが、労働者派遣法の規定に従って行うことができます。

 さらに、明示すべき労働条件としては、「従事すべき業務の内容」「賃金」「労働時間その他の労働条件」を明示しなければならないと規定されています。職業安定法施行規則第4条の2には、この労働条件の明示に関して、さらに詳細に規定しています。

 則第4条の2 法第5条の3第3項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

二 労働契約の期間に関する事項

三 就業の場所に関する事項

四 始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間に関する事項

五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第8条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項

六 健康保険法(大正11年法律第70号)による健康保険、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)による厚生年金、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法(昭和49年法律第116号)による雇用保険の適用に関する事項

2 法第5条の3第3項の厚生労働省令で定める方法は、前項各号に掲げる事項(以下この項及び事項において「明示事項」という。)が明らかとなる次のいずれかの方法とする。ただし、職業紹介の実施について緊急の必要があるためあらかじめこれらの方法によることができない場合において、明示事項をあらかじめこれらの方法以外の方法により明示したときは、この限りでない。

一 書面の交付の方法

二 電子情報処理組織(書面交付者(明示事項を前項の方法により明示する場合において、書面の交付を行うべきものをいう。以下のこ号において同じ。)の使用に係る電子計算機と、書面被交付者(明示事項を前号の方法により明示する場合において、書面の交付をうけるべき者をいう。以下この号および次項において同じ。)の使用に係る電子計算機とを電気通信回路で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法のうち書面交付者の使用に係る電子計算機と書面被交付者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、書面被交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法(書面被交付者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものに限る。)によることを書面被交付者が希望した場合における当該方法

3 前項第2号の方法により行われた明示事項の明示は、書面交付者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されたときに当該書面交付者に到達したものとみなす。

4 求人者は、公共職業安定所から求職者の紹介を受けたときは、当該公共職業安定所に、その者を採用したかどうかを及び採用しないときはその理由を、速やかに、通知するものとする。

※上記第2項の規定は、求人者等は原則労働条件を書面で求職労働者に交付すること(第1号)、また求職労働者が希望しかつプリントアウトできる環境であれば、求職労働者宛の電子メールでも明示できる(第2号)旨規定しています。

イ 労働基準法の労働条件明示規定

 労働基準法では、採用する労働者に採用時(労働契約締結時)に労働条件の明示を義務付けています。では、労働契約法第4条第2項は、書面による明示をなぜ努力義務としているのかが疑問です。それは、労働基準法の明示義務が労働契約の締結時に限られていて、求職者(求人への応募者で採用未決者)や採用後の労働者向けの労働条件の明示が労働基準法の対象外のため、パートタイム労働法の規定も踏まえつつ、労働契約法でこのように定めたものです。

さて、労働基準法の第15条を確認します。

労働基準法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法施行規則第5条 使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする、ただし、第1号の2に掲げる事項については期間の定めがある労働契約であって当該労働契約の期間終了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第4号の2から第11号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りではない。

一 労働契約の期間に関する事項

一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項

一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて終業させる場合における就業転換に関する事項

三 賃金(退職手当及び第5号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期並びに昇給に関する事項

四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定。計算及び支払の方法並びに支払いの時期に関する事項

五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)賞与及び第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

七 安全及び衛生に関する事項 

八 職業訓練に関する事項

九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

十 表彰及び制裁に関する事項

十一 休職に関する事項

2 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める事項は、前段第1号から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

3 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。

 さて、労働基準法で義務付けられている労働者の採用時(労働契約の締結時)の書面の交付は、労働契約の効力に影響しません。従って、労働条件の明示を行っていない使用者もママ見受けられます。ただし、労働条件の明示義務違反は、30万円以下の罰金刑が規定(労働基準法第120条)されています。労働条件を書面で交付する場合に、その様式は自由であり、また、就業規則の関係規定を明示してそれを交付する方法でも差し支えありません。なお、就業規則の法定された記載事項(絶対・相対記載事項)は、上記の明示事項と内容が似ています。

ウ パートタイム労働法における労働条件の明示

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定る方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。

2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。

 パートタイム労働者に関しては、就業規則を別途作成すること、短時間労働管理者を設置すること、労基法の明示項目の規定に加え「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」について書面で明示する義務(罰則有り)があり、その他の労働条件についても書面で明示するように努めなければならないことになっています。

○労働条件の明示に関する問題点

ア 法の不知

 使用者が、労働者の採用時に労働基準法等の規定に従い、労働条件の明示を行うべきことは、大部分の事業主は承知していると思います。しかしながら、アルバイト等の労働者への文書の不交付や知っていてあえて文書交付を行わない場合もあるかと思います。そもそも、求職労働者側からすれば、採用決定時に会社から労働契約書(又は労働条件通知書)や就業規則等の交付、或いは提示がない場合には、その会社の就業管理他の管理状況に不安を持つかと思います。たかが文書、されど文書です。同じ会社で、何十年も勤務していれば労働条件が度々変更されることが通常かと思います。どうせ変わるものなら、労働条件の書面交付は「無駄」という観点もありますが、そこは、まずもって法令遵守です。一時が万事、几帳面に法令を守ろうとする態度こそが、企業の社会的信用を構築します。更には、法令遵守により、リスク管理の観点からも会社の大怪我防止につながります。

イ 募集時の労働条件(職業安定法)と採用時の労働条件(労働基準法)

 募集時の労働条件に虚偽の内容を書き込み、採用時には別の労働条件を提示し、または求職者に承諾させるケースがあります。また、募集時の労働条件と全く異なる労働条件で就労させるケースがあります。裁判になる場合もありますが、判決はケース・バイ・ケースです。会社の信用で求職者は判断せざるを得ないわけですが、募集時と異なる労働条件で働かされては、すぐに辞めざるを得ない場合も起こります。求職者としては、一般的に募集時と採用時の労働条件は、別物であると考えておく必要があります。他方、求人者側は、良い人材が応募してくれば労働条件の詳細の説明は後回しにして、まずは応募者の入社の意思確認を行うべきと考えるかと思います。昨今、離職率の問題が社会問題化していますが、新卒者であろうが中高年の再就職者であろうが、会社との信頼関係がその会社で長く勤務するための必要条件です。決して、雇ってやってる、置いてやっている訳ではなく、双務契約たる労働契約関係に基づいて、互いに債務の履行(労働者は使用者の定める合理的な規則や指揮命令に従って労務を提供し、使用者は契約内容以上の賃金を支払います。)を行っているということが本質です。繰り返しですが、契約である上は「信義則が根本原理」である旨が労働契約法第3条に規定されています。

パートタイム労働法第6条のまとめ

 パートタイム労働法第6条の規定により、労基法第15条及び同法則第5条の項目に加えて短時間労働者に明示しなければならない項目は次の通りです。

一 昇給の有無

二 退職手当の有無

三 賞与の有無

四 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

 

同じく、パートタイム労働法第6条第2項の規定により、短時間労働者に明示するように務める

べき項目は次の事項です。 

 イ  昇給(特定事項を除く。)
 ロ  退職手当(特定事項を除く。)、臨時に支払われる賃金、賞与(特定事項を除く。)、一箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当及び一箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
 ハ  所定労働日以外の日の労働の有無
 ニ  所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させる程度
 ホ  安全及び衛生
 へ  教育訓練
 ト  休職
 
 法第6条第1項の明示義務がある項目については、短時間労働者への労働条件の明示を怠ると10万円以下の過料に処される規定(第47条)があります。
 
 
以上で、パートタイム労働法第6条を終了します。
 
 
パート労働法第6条

 

 

 

 

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パートタイム労働法第5条

2015年05月23日 14:41

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第5条(基本指針)

 厚生労働大臣は、短時間労働者の福祉の増進を図るため、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進、職業能力の開発及び向上等に関する施策の基本となるべき方針(以下この条において「短時間労働者対策基本方針」という。)を定めるものとする。

2  短時間労働者対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

一  短時間労働者の職業生活の動向に関する事項

二  短時間労働者の雇用管理の改善等を促進し、並びにその職業能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項

三  前二号に掲げるもののほか、短時間労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項

3  短時間労働者対策基本方針は、短時間労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。

4  厚生労働大臣は、短時間労働者対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。

5  厚生労働大臣は、短時間労働者対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6  前二項の規定は、短時間労働者対策基本方針の変更について準用する。

 

通達による確認(平成26年)

短時間労働者対策基本方針(法第2章第5条関係)
法第2章は、短時間労働者の福祉の増進を図るため、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進、職業能力の開発及び向上等に関する施策の基本となるべき方針である短時間労働者対策基本方針について規定したものであること。
1  趣旨
 短時間労働者の福祉の増進を図るための施策は、法に基づくもののほか、他の関係法律に基づく施策等多岐にわたっており、これらの諸施策を円滑かつ効率的に実施していくためには、短時間労働者の職業生活の動向を的確に見通した上で短時間労働者対策の総合的かつ計画的な展開の方向を労使をはじめ国民全体に示し、これに沿って対策を講ずることが必要である。
 そのため、厚生労働大臣は、短時間労働者対策基本方針を定め、これを公表するものとしたものであること。
2  内容
短時間労働者対策基本方針に定める事項は、次のとおりであること。
(1) 短時間労働者の職業生活の動向に関する事項
(2) 短時間労働者の雇用管理の改善等を促進し、並びにその職業能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
(3) その他短時間労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
3 短時間労働者対策基本方針は、短時間労働者の労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならないこととされていること。
4 短時間労働者対策基本方針の策定、変更に当たっては、労働政策審議会の意見を聴かなければならないものとされているが、短時間労働者対策基本方針の内容が他の審議会の所掌に係る事項を含む場合には、その審議会
の意見を聴くことを排除するものではない(第3の11(1)において同じ。)。
 
 
パートタイム労働法第5条のまとめ
 短時間労働者対策基本指針(平成27年3月26日厚生労働省告示第142号)は、短時間労働者の雇用管理の改善についてのガイドラインという内容です。労働基準法は、個々の労働条件について規制し、1週40時間(原則)以上就労させてはならないなどの制限を設け、最低賃金法は時間換算で都道府県別に定められた最低賃金を下回ってはならないなどの制限を設けています。そして、労働基準法や最低賃金法などの多くの規定は罰則をもってその実効性を担保しています。
 パートタイム労働法においては、事業主がなすべき措置等又は一定の禁止事項が定められているものの、殆どの規定の内容は義務規定ではなくすべき規定ですから、指針の内容のあるべき姿に近づける努力をお願いしますという内容です。
 その理由は、過剰な又性急な規制開始により契約自由の原則を侵害し同時に経済活動の柔軟性を削いでしまうことを避ける意図があるものと思料します。
 
 
以上で、パートタイム労働法第5条を終了します。
 
 
パート労働法第5条
 
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パートタイム労働法第4条

2015年05月23日 13:09

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第4条(国及び地方公共団体の責務)

 国は、短時間労働者の雇用管理の改善等について事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な指導、援助等を行うとともに、短時間労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るために必要な広報その他の啓発活動を行うほか、その職業能力の開発及び向上等を図る等、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする

地方公共団体は、前項の国の施策と相まって、短時間労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとする。

○通達による確認(平成26年通達)

国及び地方公共団体の責務(法第4条関係)
(1) 国の責務(法第4条第1項関係)
 国は、短時間労働者の雇用管理の改善等について、事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じて必要な指導、援助等を行うとともに、短時間労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るために必要な広報その他の啓発活動を行うほか、その職業能力の開発及び向上等を図る等、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとしていること。
 具体的内容は、指針の策定、事業主に対する報告徴収、助言、指導、勧告及び公表、調停の実施を含む紛争の解決の援助、啓発活動の実施、事業主等に対する援助の実施、職業訓練の実施、職業紹介の充実等であること。
(2) 地方公共団体の責務(法第4条第2項関係)
 地方公共団体は、国の施策と相まって短時間労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとしていること。
 具体的内容は、広報啓発活動、職業能力開発校等における職業訓練の実施、労政事務所等における講習等の開催等であること。
 
パートタイム労働法第4条のまとめと考察
 日本の民主主義は、第2次大戦後アメリカのGHQ(General Headquarters、連合国軍最高司令官総司令部)により植えつけられたものです。江戸時代はもちろん、明治維新後も身分制度は事実上存続していました。
 そこで、戦後の民主化により真に法の下の平等が成し遂げられたのかといえば、依然として様々な形の身分制度(階層制度)が存続していると考えられます。この点を企業社会についてみると、その階級は、大株主兼代表取締役(いわゆるオーナー社長)>取締役(代表取締役)>執行役員>部長その他の上位管理職>管理職階層(課長、補佐、係長、主任等、配置位置による上下含む)>正社員(非管理職)>契約社員・準社員>いわゆるパートタイム労働者等>アルバイト等の臨時労働者、といった階層に区分できるかと思います。
 欧米の能力主義・成果主義については、過度なものについては、日本の雇用形態としてはなじまず、職階型・年功型の労務管理が重視されている実情が続いています。そのため、労働条件も雇用形態別・職階別の労働条件が一般的であり、職能型賃金・成果型賃金・労働の内容別賃金は、採用されている企業においても支給している賃金の一定の割合(各種手当等の形式が通常)に限られます。
 一般に、業務の内容を金員に正確に置換することは困難であり、その意味で真に合理性を有する「同一労働=同一賃金」の制度の構築は、特に日本社会においては難しい面が多いと考察します。
 
 正規労働者であるが故の高単価賃金及び非正規雇用労働者であるが故の低単価賃金は、是正をすべきことは勿論ですが、権限の移譲や管理責任の度合いに応じた賃金額の決定への移行が望まれています。
 
 
以上でパートタイム労働法第4条を終了します。
 
パート労働法第4条
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パートタイム労働法第3条

2015年05月22日 16:43

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第3条(事業主の責務)

 事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態等を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換(短時間労働者が雇用される事業所において通常の労働者として雇い入れられることをいう。以下同じ。)の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。

2  事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する短時間労働者の雇用管理の改善等に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めるものとする。

 

通達による確認

事業主等の責務(法第3条関係)
(1) 事業主の責務(法第3条第1項関係)
イ  基本的考え方
 労働者の待遇をどのように設定するかについては、基本的には契約自由の原則にのっとり、個々の契約関係において当事者の合意により決すべきものであるが、現状では、短時間労働者の待遇は必ずしもその働き・貢献に見合ったものとなっていないほか、他の就業形態への移動が困難であるといった状況も見られる。このような中では、短時間労働者の待遇の決定を当事者間の合意のみに委ねていたのでは短時間労働者は「低廉な労働力」という位置付けから脱することができないと考えられるところ、それでは、少子高齢化、労働力人口減少社会において期待されている短時間労働者の意欲や能力の有効な発揮がもたらされるような公正な就業環境を実現することは難しい。
 そこで、法は、第1条に定める法の目的である「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができる」ことを実現するために、短時間労働者の適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)について、事業主が適切に措置を講じていく必要があることを明らかにするため、法第3条において、短時間労働者について、その就業の実態等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとすることを事業主の責務としたものであること。
 法第3章以下の事業主の講ずべき措置等に関する規定は、この法第3条の事業主の責務の内容として、法の目的を達成するために特に重要なものを明確化したものであること。また、法第15条に基づく指針については、当該責務に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要なものを具体的に記述したものであること。
ロ  短時間労働者の就業の実態等
 法第3条において考慮することとされている「その就業の実態等」の具体的な内容としては、短時間労働者の「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、経験、能力、成果、意欲等をいい、「等」の内容には、それらだけでは十分でない場合に、必要に応じて同業他社の状況も考慮することを含むものであること。
 なお、責務を具体化した法第3章以下及び指針の措置規定のいくつかにおいては、就業の実態等を特に考慮すべき場合やその考慮方法について、待遇の種類ごとに明らかにされていること。
ハ  雇用管理の改善等に関する措置等
 「雇用管理の改善等に関する措置等」とは、法第3章第1節に規定する「雇用管理の改善等に関する措置」と、法第22条に規定する苦情の自主的解決に努める措置をいうものであること。
ニ  通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等
 法は、短時間労働者について、就業の実態等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇を確保することを目指しているが、これは、一般に短時間労働者の待遇が通常の労働者と比較して働きや貢献に見合ったものとなっておらず低くなりがちであるという状況を前提として、通常の労働者との均衡(バランス)をとることを目指した雇用管理の改善を進めていくという考え方であること。
 通常の労働者と短時間労働者の「均衡のとれた待遇」は、就業の実態に応じたものとなるが、その就業の実態が同じ場合には、「均等な待遇」を意味する。
 他方、通常の労働者と短時間労働者との間で、就業の実態が異なる場合、その「均衡のとれた待遇」とはどのようなものであるかについては、一義的に決まりにくい上、待遇と言ってもその種類(賃金の決定、教育訓練の実施及び福利厚生施設の利用)、性格(職務との関連性、実施に当たっての事業主の裁量の程度等)は一様でない。
 そのような中で、事業主が雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図っていくため、法第3章第1節においては、講ずべき措置を定めたものであること。
 具体的には、法第8条において、すべての短時間労働者を対象に、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」及び「その他の事情」を考慮して、不合理なものであってはならないとする短時間労働者の待遇の原則を明らかにしている。その上で、法第9条から第12条までにおいては、短時間労働者の態様を就業の実態から見て3つに分類し、待遇を賃金の決定、教育訓練の実施及び福利厚生施設の利用の3つについて、どのような者のどのような待遇について、どのような措置をもって均衡とするのかを個々具体的に明らかにしているものであること。具体的には、法第11条第1項は、職務の内容が同一であるという就業の実態が通常の労働者に近く、また、職務との関連性が高い待遇であること、といった事情を踏まえて具体的な措置の内容を明らかにしたものであり、法第12条は、すべての通常の労働者との関係で普遍的に講じられるべき措置の内容について明らかにしたものであること。他方、法第10条、法第11条第2項については、就業の実態が多様な短時間労働者全体にかかる措置として、具体的に勘案すべき就業の実態の内容を明記(職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験等)したものであること。これらの勘案すべき就業の実態の内容を明記しているのは、これらの要素が通常の労働者の待遇の決定に当たって考慮される傾向にあるのとは対照的に、短時間労働者について十分に考慮されている現状にあるとは言い難く、短時間労働者についても、これらに基づく待遇の決定を進めていくことが公正であると考えられることによること。
 「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等」の「等」としては、・ 短時間労働者であることに起因して、待遇に係る透明性・納得性が欠如していることを解消すること(適正な労働条件の確保に関する措置及び事業主の説明責任により達成される)、・ 通常の労働者として就業することを希望する者について、その就業の可能性をすべての短時間労働者に与えること(通常の労働者への転換の推進に関する措置により達成される)、等が含まれるものであること。
(2) 均衡のとれた待遇の確保の図り方について
イ  基本的考え方
 短時間労働者についての、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保に当たっては、短時間労働者の就業の実態等を考慮して措置を講じていくこととなるが、法第3章第1節においては、「就業の実態」を表す要素のうちから「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」の2つを具体の措置が求められる法の適用要件としている。これは、現在の我が国の雇用システムにおいては、一般に、通常の労働者の賃金をはじめとする待遇の多くがこれらの要素に基づいて決定されることが合理的であると考えられている一方で、短時間労働者については、これらが通常の労働者と全く同じ、又は一部同じであっても、所定労働時間が短い労働者であるということのみを理由として待遇が低く抑えられている場合があることから、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図る際に、短時間労働者の就業の実態をとらえるメルクマールとして、これらの要素を特に取り上げるものであること。
 なお、法第9条から第12条までに規定される事業主が講ずべき措置の前提となる考え方として、すべての短時間労働者を対象とする短時間労働者の待遇の原則として規定された法第8条においては、労働契約法にならい、短時間労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」のほかに、「その他の事情」を規定しているが、「その他の事情」については、合理的な労使慣行など考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること(第3の3(3)参照)。
ロ 「職務の内容」について
(イ) 定義
 「職務の内容」とは、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいい、労働者の就業の実態を表す要素のうちの最も重要なものであること。
「業務」とは、職業上継続して行う仕事であること。
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指す。責任は、外形的にはとらえにくい概念であるが、実際に判断する際には、責任の違いを表象的に表す業務を特定して比較することが有効であること。
 また、責任の程度を比較する際には、所定外労働も考慮すべき要素の一つであるが、これについては、例えば、通常の労働者には所定外労働を命ずる可能性があり、短時間労働者にはない、といった形式的な判断ではなく、実態として業務に伴う所定外労働が必要となっているかどうか等を見て、判断することとなること。例えば、トラブル発生時、臨時・緊急時の対応として、また、納期までに製品を完成させるなど成果を達成するために所定外労働が求められるのかどうかを実態として判断すること。なお、ワークライフバランスの観点からは、基本的に所定外労働のない働き方が望ましく、働き方の見直しにより通常の労働者も含めてそのような働き方が広まれば、待遇の決定要因として所定外労働の実態が考慮されること自体が少なくなっていくものと考えられるところであること。
(ロ) 職務の内容が同一であることの判断手順
 「職務の内容」については、法第9条等の適用に当たって、通常の労働者と短時間労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となる。具体的には以下の手順で比較していくこととなるが、「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるものではなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味するものであること。
 したがって、具体的には、「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断し、次いで「責任の程度」が「著しく異なって」いないかを判断するものであること。
 まず、第一に、業務の内容が「実質的に同一」であることの判断に先立って、「業務の種類」が同一であるかどうかをチェックする。
 これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」と判断することとなること。
 他方、業務の種類が同一であると判断された場合には、次に、比較対象となる通常の労働者及び短時間労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」と言えるものをそれぞれ抽出すること。
 「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、以下の基準に従って総合的に判断すること。
① 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
 通常の労働者と短時間労働者について、抽出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断することとなること。なお、抽出した「中核的業務」が一見すると異なっている場合は、当該業務に必要とされる知識や技能の水準等も含めて比較した上で、「実質的に同一」と言えるかどうかを判断するものであること。
 ここまで比較した上で業務の内容が「実質的に同一である」と判断された場合には、最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックすること。そのチェックに当たっては、「責任の程度」の内容に当たる以下のような事項について比較を行うこと。
① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)
② 業務の成果について求められる役割
③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
④ ノルマ等の成果への期待の程度
⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度
 この比較においては、例えば管理する部下の数が一人でも違えば、責任の程度が異なる、といった判断をするのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見るものであること。
 なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要である。
以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、通常の労働者と短時間労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」こととなること。
ハ 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれる」ことについて
(イ) 定義
① 「職務の内容及び配置の変更の範囲」
現在の我が国の雇用システムにおいては、長期的な人材育成を前提として待遇に係る制度が構築されていることが多く、このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられている。法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を均衡待遇を推進する上での考慮要素又は適用要件の一つとして位置付けている。人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等(以下「人事異動等」という。)の有無や範囲を総合判断するものであるが、これを法律上の要件としては「職務の内容及び配置の変更の範囲」と規定したものであること。
 「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、現実にそれらが生じる際には重複が生じ得るものであること。つまり、「職務の内容の変更」とは、配置の変更によるものであるか、そうでなく業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合を指すこと。他方、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあるものであること。
 それらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容又は配置の広がりを指すものであること。
② 同一の範囲
 職務の内容及び配置の変更が「同一の範囲」であるとの判断に当たっては、一つ一つの職務の内容及び配置の変更の態様が同様であることを求めるものではなく、それらの変更が及びうると予定されている範囲を画した上で、その同一性を判断するものであること。
 例えば、ある事業所において、一部の部門に限っての人事異動等の可能性がある者と、全部門にわたっての人事異動等の可能性がある者とでは、「配置の変更の範囲」が異なることとなり、人材活用の仕組み、運用等が同一であるとは言えないこと。
 ただし、この同一性の判断は、「範囲」が完全に一致することまでを求めるものではなく、「実質的に同一」と考えられるかどうかという観点から判断すること。
③ 「変更されると見込まれる」
 職務の内容及び配置の変更の範囲の同一性を判断することについては、将来にわたる可能性についてもみるものであるため、変更が「見込まれる」と規定したものであること。ただし、この見込みについては、事業主の主観によるものではなく、文書や慣行によって確立されているものなど客観的な事情によって判断されるものであること。また、例えば、通常の労働者の集団は定期的に転勤等があることが予定されているが、ある職務に従事している特定の短時間労働者についてはこれまで転勤等がなかったという場合にも、そのような形式的な判断だけでなく、例えば、同じ職務に従事している他の短時間労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して具体的な見込みがあるかどうかで判断するものであること。
 なお、育児又は家族介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情を配慮した結果として、その労働者の人事異動等の有無や範囲が他と異なることがあるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに当たって、そのような事情を考慮すること。考慮の仕方としては、例えば、通常の労働者や短時間労働者のうち、人事異動等があり得る人材活用の仕組み、運用等である者が、育児又は家族介護に関する一定の事由(短時間労働者についても通常の労働者と同じ範囲)で配慮がなされ、その配慮によって異なる取扱いを受けた場合、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに際しては、その取扱いについては除いて比較することが考えられること。
(ロ) 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれる」ことの判断手順
 「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれる」ことについては、法第9条の適用に当たって、通常の労働者と短時間労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となる。この検証は(2)ロ(ロ)において示した手順により、職務の内容が同一であると判断された通常の労働者と短時間労働者について行うものであること。
 まず、通常の労働者と短時間労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれない」と判断することとなること。
 次に、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれない」と判断することとなること。
 転勤が双方ともない場合及び、双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較すること。まずは、職務の内容の変更(事業所内における配置の変更の有無を問わない。)の有無を比較し、この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されると見込まれない」と判断することとなること。同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断するものであること。
(3) 事業主の団体の責務(法第3条第2項関係)
 短時間労働者の労働条件等については、事業主間の横並び意識が強い場合が多く、事業主の団体を構成している事業にあっては、事業主の団体の援助を得ながら構成員である複数の事業主が同一歩調で短時間労働者の雇用管理の改善等を進めることが効果的である。そこで、事業主の団体の責務として、その構成員である事業主の雇用する短時間労働者の雇用管理の改善等に関し必要な助言、協力その他の援助を行うように努めることを明らかにしたものであること。
(4) なお、これら事業主及び事業主の団体の責務を前提に、国は必要な指導援助を行うこととされ(法第4条)、短時間労働者を雇用する事業主、事業主の団体等に対して、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとされている(法第19条)こと。
 
第3条の趣旨とまとめ
 第3条の趣旨は、通達に記載されているとおりですが、第3条の趣旨の概略をまとめてみます。
1. パートタイム労働者の実態
 ア パートタイム労働者が正規雇用に転換されることは少ない
 企業の労務体制の構築は、もとより事業主の経営権の範囲で任意に行うことができます。従って、どのような体系の社員構成にするか、どのような役職を設けて個々に権限移譲を行うか、さらにはそれぞれの役職にどのような労働条件の労働者を配置するか、職場の教育をどのように行いそれぞれの労働者を将来的にどのように育成するか等については、事業主が自由に設計できるわけです。
 そのため、採用から教育育成、人事異動、職務管掌、組織の創設や廃止、だれがどのような責任の上でどのような業務を行うか、その業務(労務の提供)の対価として、いくらの賃金を支払うかについて、組織づくりに経営者は腐心するわけですが、法令等による一定の規制の範囲内で行う必要があります。
 一般に、企業は労働契約別に従業員の呼称を設け、異なる労働条件の労働者のグループにより業務を行わせています。以下に事例を記述します。
ア 正社員(管理職及び管理職候補)
 入社選考の上、一般職又は総合職別に採用し格付けを行うことがある。原則的にすべての事業所に異動させることが前提となる。通常、賞与や退職金の支給対象となり、非正規労働者の管理を行う。
イ 契約社員(準社員)
 有期労働契約の従業員であり、入社選考は一般に正社員よりも簡易な手続きで採用する。また、賃金体系は正社員と別の体系が適用され、正社員よりも一般的に賃金額が少ない。また、一定以上の管理職には就けない場合が多い。所定労働時間はフルタイムである場合が多い。
ウ パートタイム社員
 有期労働契約の従業員であり、時給の場合が多い。また、一定以上の管理職には就けない場合が多い。さらに、担当業務は定型的なものが多く、賞与や退職金の対象外の場合が多い。従来は、有期労働契約を反復継続して長期間就労している場合が多い。短時間労働の場合もフルタイムの労働の場合も両方ある。
エ アルバイト
 臨時的な有期労働契約の従業員であり、繁忙期をすぎれば契約満了で退社することが多い。ただし、継続的に就労する場合もある。他方で、主たる職業をもつ労働者や学生が副業的に従事するためにアルバイトと呼称することが一般的である。短時間労働である場合が多い。賃金形態は時給が一般的である。
 
2. 通達の冒頭文のまとめ
ア 契約自由の原則
 労働者の待遇をどのように設定するかについては、基本的には契約自由の原則にのっとり、個々の契約関係において当事者の合意により決すべきものである
イ 短時間労働者の労働条件の実情
 短時間労働者の待遇は必ずしもその働き・貢献に見合ったものとなっていない
ウ 短時間労働者の就業転換
 他の就業形態への移動が困難であるといった状況
エ 短時間労働者の事業主の捉え方
 短時間労働者は「低廉な労働力」という位置付け
オ 短時間労働者の待遇の改善の必要性
 現状では、少子高齢化、労働力人口減少社会において期待されている短時間労働者の意欲や能力の有効な発揮がもたらされるような公正な就業環境を実現することは難しい
 
3. 基本指針にみる短時間労働者の待遇の状況(平成27年告示第147号)
(1) 短時間労働者の役職
 短時間労働者の職場における役割をみると、定型的で軽易な職務に従事する短時間労働者だけでなく基幹的役割を担う短時間労働者も長期的には増加している。例えば、実態調査において「同じ内容の業務を行っている正社員がいる」と回答している「パート」は48.9%であり、そのうちの36.0%の「パート」が「責任の重さが同じである正社員がいる」と回答している。また、「パートの役職者がいる」と回答している事業所は、「正社員とパートの両方を雇用している事業所」の6.5%を占めており、そのうち25.4%の事業所が「所属組織の責任者等ハイレベルの役職(店長、工場長等)まで」の役職者がいると回答している。
(2)短時間労働者の賃金
 賃金についてみると、「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)により、平成26年における短時間労働者の1時間当たり所定内給与額を一般労働者(短時間労働者以外の者)と比較すると、56.6%となっている。また、短時間労働者の1時間当たり所定内給与額は、年齢や勤続年数によって大きくは変わらない
 ※短時間労働者の賃金は、長期間勤務してスキルアップしても伸びないことが伺えます。
(3)短時間労働者の手当、賞与、退職金
 ア 通勤手当の支給割合は、65.1%の事業所が支給している
 イ 精勤手当、役職手当、家族手当、住宅手当の支給事業所の割合は、10%未満である
 ウ 賞与の支給事業所の割合は、37.3%である
 エ 退職金の支給事業所の割合は、13.0%である
※通勤手当は、就業規則等において支給する旨の規定がない場合は、事業主に支給義務がありません。賞与・退職金・諸手当も同様です。
(4)短時間労働者の教育訓練
 実態調査において、「正社員とパートの両方を雇用している事業所」のうち「パート」に対し、「日常的な業務を通じた計画的な教育訓練(OJT)」を実施する事業所は54.4%(「正社員」に対しては67.1%)、「入職時のガイダンス(OFF-JT)」を実施する事業所は32.1%(同46.2%)となっている。また、「職務の遂行に必要な能力を付与する教育訓練(OFF-JT)」を実施する事業所は26.5%(同51.5%)、「将来のためのキャリアアップのための教育訓練(OFF-JT)」を実施する事業所は9.2%(同35.3%)となっている。
 
4.短時間労働者の待遇改善に向けての課題(基本指針の抜粋)
 第1でみたような動向の中で、賃金を始めとする均等・均衡待遇の確保や通常の労働者への転換等、次の六つの課題に取り組み、短時間労働者が公正な待遇を受けるとともに能力を十分に発揮できるような条件を整備することが必要である。
(1) 働き・貢献に見合った公正な待遇の確保
 短時間労働は、事業主及び労働者のニーズに応じて、労働時間や職務の内容等が様々であるが、必ずしも待遇が働き・貢献に見合ったものになっていない場合があるため、均等・均衡待遇のより一層の確保が必要である。
(2) 明確な労働条件等の設定・提示
 短時間労働者の労働条件は個々の事情に応じて多様に設定されることが多いため、不明確になりやすく、労働条件等を短時間労働者が雇入れ時から正確に把握できるようにすることが必要である。
(3) 納得性の向上
 短時間労働者の働き方は多様であり、通常の労働者と待遇が異なる理由が分からない場合もあると考えられる。短時間労働者の納得性が高まるよう、雇用管理の改善等について講ずる措置について、短時間労働者が事業主から適切に説明を受けられるようにするとともに、短時間労働者が待遇に係る疑問等について相談できる体制が事業所で整備されることが必要である。
(4) 通常の労働者への転換を始めとするキャリアアップ
 通常の労働者としての就職機会を得ることができず、非自発的に短時間労働者となる者も一定割合存在しており、通常の労働者への転換を希望する者については、転換の機会が与えられることが必要である。また、短時間労働者が職業生活を通じて職業能力の開発及び向上を図ることを促進する等により、希望に応じてキャリアアップが図られることが必要である。
(5) 法の履行確保
 法違反を把握した場合については、都道府県労働局雇用均等室で、報告徴収並びに助言、指導及び勧告により是正を図る必要がある。短時間労働者の均等・均衡待遇が確保され、短時間労働を選択することによって不合理な取扱いを受けることのないよう、法の実効性をより一層確保することが必要である。
(6) その他労働関係法令の遵守
 短時間労働者に特有の課題だけでなく、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の基本的な労働に関する法令が遵守されていない場合も依然としてみられるため、それらの法令遵守の徹底が必要である。
なお、(1)から(6)までの課題のほか、税制や社会保障制度については、働き方の選択に対して中立的な制度にしていくよう検討が進められている。 
 
 パートタイム労働法第3条は、短時間労働者の就労実態実情を踏まえ就労条件の改善に向けた措置を講ずるように事業主は努めなければならず、その結果いわゆる正社員(正規職員)と均衡がとれた待遇の確保を図り、短時間労働者が有する能力を有効に発揮することが出来るように努力すべきとしています。
 
 
以上でパートタイム労働法第3条を終了します。
 
 
パート労働法第3条
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